説明

燃料電池を制御するための直流電流の計算

燃料電池発電装置内の直流電流の決定方法は、発電装置の電力調整システムのパワーエレクトロニクスコンバータからの電流値を決定するステップと、コンバータ内の損失に基づいて補正因子を決定するステップと、燃料電池内の直流電流を決定するために、コンバータからの電流値を、補正因子を用いて補正するステップと、を含む。さらに、この方法は、所望の直流電流値を決定するために、コンバータ内の電圧を決定するステップと、補正された電流と共にこの電圧を使用するステップと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池発電装置の動作およびその制御に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に直流電流は、商業用および住宅用発電装置内の燃料を制御する手段である。現在まで、制御用に用いられる直流電流は、ホール効果デバイスを用いて測定されてきた。システムの精度要件によっては、ホール効果センサは高価なデバイスになり得る。さらに、湿気によってセンサが故障し得るという点で、これらのデバイスは信頼性の観点から問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発電装置の制御に用いるために直流電流を決定することに対する改良方法が求められている。したがって、本発明の主目的は、潜在的な欠陥を含むセンサに依存せずに、直流電流を決定することである。
【0004】
本発明の他の目的は、発電装置の複雑さとコストを低減をさせつつ、直流電流を正確に決定することである。
【0005】
本発明の他の目的および利点については、以下で述べる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上記の目的および利点は容易に実現される。
【0007】
本発明によれば、燃料電池発電装置内の直流電流の決定方法であって、発電装置の電力調整システムのパワーエレクトロニクスコンバータからの電流値を決定するステップと、コンバータ内の損失に基づいて補正因子を決定するステップと、燃料電池内の直流電流を決定するために、コンバータからの電流値を、補正因子を用いて補正するステップと、を含む方法が提供される。有利には、コンバータ内の電圧も決定され、本発明に従って、所望のように燃料電池内の直流電流を決定するために用いることができる。
【0008】
さらに本発明によれば、直流電流を測定する能力を備える燃料電池発電装置であって、燃料電池発電装置と、この発電装置に動作可能に接続され、かつパワーエレクトロニクスコンバータを有する電力調整システムと、発電装置内の直流電流を決定するために、電流信号推定パラメータを受けるようにコンバータと接続された制御要素と、を備える装置が提供される。
【0009】
添付の図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について以下に詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は燃料電池発電装置に関し、より具体的には、発電装置の制御に関連して有利に用いることができる、燃料電池発電装置内の直流電流を決定する方法に関する。
【0011】
上述のように、直流電流を測定する従来の方法は、信頼性が低く発電装置のコストを増す追加のセンサを必要とする。
【0012】
本発明によれば、発電装置の電力調整システム内のインバータなどのパワーエレクトロニクスコンバータを用いてすでに得られている測定値が用いられる。これらの測定値は、機器を追加せずに、所望の測定値を得るように補正され、それによって発電装置の信頼性が向上され、発電装置の部品数およびコストが低減される。
【0013】
本発明によれば、正確な直流電流の決定は、インバータからの総電力をインバータ内の損失に関して補正することによってなされ、所望の直流電流の測定値に対応する値を得られることが判明した。次に、この値を直流リンク電圧と共に用いて所望の直流電流値を決定することができる。コンバータは交流出力または直流出力を有する可能性があり、本発明の装置および方法は両システムにおいて有用である。交流出力コンバータの場合は、コンバータからの交流総電力(Pacgross)が用いられる。出力が直流であるコンバータの場合は、コンバータによって測定された直流総電力を補正することにより、直流電流が得られる。
【0014】
インバータ内の損失を補正することにより、有利には、直流電流を十分正確に決定することが可能になり、その結果、この測定値に基づいて発電装置の制御を行うことができ、従来必要であった複雑で高価かつ信頼性の低いセンサの必要性を排除できる。
【0015】
本発明によれば、直流電流は、電力調整システム(PCS,Power Conditioning System)内で計算され、あるいは他の実施例においては、発電装置コントローラ(PPC,Power Plant Controller)内で計算され、各々は、機器を追加せずに所望の直流電流を得ることができるように、パラメータの測定による値を備えており、または備えることができる。本発明によれば、これらのシステムによって測定されたパラメータは、所望の測定値を得るために補正することができ、このような補正によって、所望するような十分正確な結果が得られることが判明した。
【0016】
補正は、コンバータ、例えばPCSインバータに入る電力が、PCSインバータから出る電力からインバータによる損失を差し引いたものに等しいという、修正型電力保存アルゴリズムに基づく。
【0017】
本発明によれば、交流出力システムに適用される補正または計算は、次の通りである。
【0018】
dc=(Pacgross−Ploss)/Vdc、ただし、
acgrossは、インバータからの交流総電力であり、
dcは、インバータによって測定された直流リンク電圧であり、
lossは、動作パラメータの関数としてのインバータ内の損失である。直流システムの場合も、同様に計算することができる。
【0019】
したがって、燃料電池内の直流電流(Idc)は、どちらのタイプのコンバータにも当てはまるように、次のように決定される。
【0020】
dc=(Pgross−Ploss)/Vdc、ただし、
grossは、コンバータからの総電力であり、
dcは、コンバータによって測定された直流リンク電圧であり、
lossは、動作パラメータの関数としてのコンバータ内の損失である。
【0021】
grossの値、またはコンバータからの電流は、周知のコンバータでは一般に容易に利用可能な測定値である。Plossは、必要なら実験的に決定可能であり、あるいはコンバータに付属する情報である場合もあるが、いずれにしても検出機器を追加せずに決定可能である。Vdcも、周知のコンバータでは一般的に決定され、したがってVdcも追加のセンサなどを必要とせずに利用可能である。
【0022】
さらに、図1は、この補正を概略的に示し、固有のPloss因子を有するインバータを示している。特定の動作レベルでインバータ内で生じる損失は、容易に決定することができ、情報(データ)に定式化され、本発明の方法の過程で迅速に得ることができる。例えば、このデータは、蓄積されて、ルックアップテーブル、または一連のルックアップテーブルに組み立てることができ、このデータを、本発明の方法を実行する制御ユニットがアクセス可能なデータベースに記憶することができる。したがって、インバータによって測定されるまたは供給されるパラメータと、ルックアップテーブルからのデータと、の組合せに基づいて、所望の直流電流の測定値を容易に決定することができる。
【0023】
本発明による直流電流の計算によって、有利には、部品数を削減し、発電装置のコストを低減するとともに、故障しやすい部品を除去することによって発電装置の信頼性を改善する。部品数の削減には、必要とされない電流センサが含まれるだけでなく、センサに電力を供給するのに用いられる電源の一部や、制御部が使用可能な情報にセンサ出力を変換するために必要とされる信号処理およびインターフェース回路や、電力および信号を伝送するために必要とされるセンサへの配線あるいはセンサからの配線、の削減にも拡張される。
【0024】
図2を参照すると、本発明によるシステムが概略的に示されている。図2は、燃料供給装置12、燃料電池システム14、電力調整システム(PCS)16、発電装置コントローラ(PPC)18、およびこれらの構成要素間の様々な動作上の接続手段を含むシステム10を示す。PCS16は、本発明による直流電流の決定の基準を形成する、調整された単相または3相交流、あるいは調整された直流電流を生成するために用いることができる。図2のシステムでは、PPC18は、本発明による直流電流の決定がそこからなされる信号を生成する。当然ながら、本発明の方法は、その他のシステムにも適合させることができ、図2で概略的に示されるシステムは、本発明によるシステムの一実施例であり、これに限定されない。
【0025】
一実施例においては、電力調整システム(PCS)16と発電装置コントローラ(PPC)18との間において配置された制御ユニットは、上述のように利用可能な情報からIdcを決定するように構成される。この制御ユニットは、コンバータからの電流値、損失補正因子、コンバータ内の電圧など、信号推定パラメータを受け、これらのパラメータを、所望の燃料電池内の直流電流値を決定するために用いる。当然ながら、制御ユニットは、上記のいずれの構成要素内でも一体化することができ、あるいは、既存の構成要素に別個に追加することができ、これらはすべて本発明の範囲に広く含まれる。
【0026】
本発明は、発明を実施するための最良の形態の例示的なものにすぎないとみなされる本明細書で説明し示した例示に限定されるものではなく、あるいは形態、大きさ、部品配置、および動作の詳細が変更され得る本明細書で説明し示した例示に限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲によって規定される本発明の精神および範囲に含まれるそのような変更すべてを包含するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】インバータ内の様々な動作条件の測定、および所望の実際の直流電流を決定するために用いられる補正を示す概略図。
【図2】本発明による直流電流測定システムを備えた燃料電池発電装置を示す概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電装置の電力調整システムのパワーエレクトロニクスコンバータからの電流値を決定するステップと、
前記コンバータ内の損失に基づいて補正因子を決定するステップと、
燃料電池内の直流電流を決定するために、前記コンバータからの前記電流値を、前記補正因子を用いて補正するステップと、
を含むことを特徴とする燃料電池発電装置内の直流電流(Idc)の決定方法。
【請求項2】
前記電流値を決定するステップが、前記コンバータからの総電力を測定するステップを含み、かつ前記補正するステップが、補正された電流を供給するために、前記コンバータ内の損失に対して前記総電力を補正するステップと、前記補正された電流および前記コンバータへのリンク電圧から前記直流電流を決定するステップと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池発電装置内の直流電流(Idc)の決定方法。
【請求項3】
前記補正するステップが、以下の計算、すなわち
dc=(Pgross−Ploss)/Vdcを含み、ここで
grossが、コンバータからの総電力であり、
dcが、コンバータへの直流リンク電圧であり、
lossが、動作パラメータの関数としてのコンバータ内の損失である請求項1に記載の燃料電池発電装置内の直流電流(Idc)の決定方法。
【請求項4】
燃料電池発電装置と、
前記発電装置に動作可能に接続され、かつパワーエレクトロニクスコンバータを備える電力調整システムと、
前記発電装置内の直流電流を決定するために、電流信号推定パラメータを受けるように前記コンバータと接続された制御要素と、
を備えることを特徴とする直流電流測定手段を備えた燃料電池発電装置システム。
【請求項5】
前記制御要素が、前記コンバータからの電流値の信号と、前記インバータ内の損失を表す補正因子と、を受けるように、かつ前記発電装置内の直流電流(Idc)を決定するように、構成されることを特徴とする請求項4に記載の直流電流測定手段を備えた燃料電池発電装置システム。
【請求項6】
燃料電池発電装置と、
前記発電装置に動作可能に接続され、かつパワーエレクトロニクスコンバータを備える電力調整システムと、
前記発電装置内の直流電流を規定する電流信号を受けるように、前記コンバータと接続された制御要素と、
を備えることを特徴とする直流電流測定手段を備えた燃料電池発電装置システム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−519400(P2008−519400A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539112(P2007−539112)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/038774
【国際公開番号】WO2006/050028
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(500477447)ユーティーシー パワー コーポレイション (138)
【Fターム(参考)】