説明

燃料電池システムおよびその制御方法

【課題】 本発明では、構造を複雑化せずに、MHタンク内の水素ガスを迅速に燃料電池へ戻すことができる燃料電池システムおよびその制御方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 燃料電池システムSは、燃料電池4と、燃料電池4に水素ガスを供給する高圧水素タンク7と、燃料電池4と高圧水素タンク7とを繋ぐ水素ガス供給路8と、高圧水素タンク7から放出される水素ガスを減圧する1次レギュレータR1と、1次レギュレータR1で減圧された水素ガスを減圧する2次レギュレータR2と、水素吸蔵合金31を内蔵したMHタンク3と、水素ガス供給路8の中圧水素ライン8bとMHタンク3とを繋ぐ水素導入排出路32と、を備えている。そして、水素ガス供給路8と水素導入排出路32の接続部8dと、1次レギュレータR1との間には、水素ガス供給路8の連通状態を切り替えるための中圧バルブ81が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素吸蔵合金を利用して燃料電池の暖機を行う燃料電池システムおよびその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池自動車の動力源などとして、クリーンでエネルギ効率の優れた燃料電池が注目されている。この燃料電池では、カソード側に酸素を含んだ空気を供給するとともにアノード側に水素を供給することで、これらの水素と酸素を反応させて電気を発生させている。
【0003】
ところで、前記したような燃料電池は、ある温度でその発電性能を最大に発揮するようになっており、温度が低いと発電性能が低下するといった特性を有している。そのため、冬季や寒冷地で燃料電池を起動する場合は、燃料電池を暖機(所定温度まで加温)する必要がある。このような問題に対する技術としては、従来、燃料電池の起動時において、燃料電池へ供給するための水素ガスを一時的に水素吸蔵合金に吸蔵させることで、この水素吸蔵合金を発熱させて燃料電池の暖機を行うとともに、暖機終了後には、水素吸蔵合金から水素ガスを放出させて燃料電池に戻すことで水素ガスの再利用を図ることができる燃料電池システムが知られている。以下に、このような燃料電池システムについて、二つの例を挙げて説明することとする。
【0004】
第一の燃料電池システムとしては、燃料電池と、燃料電池に水素ガスを供給するための高圧水素タンクと、燃料電池と高圧水素タンクとを繋ぐ水素供給路と、高圧水素タンク内の高圧の水素ガスを段階的に減圧してから燃料電池へ供給するために前記水素供給路に上流側から順に配設される1次レギュレータおよび2次レギュレータと、水素吸蔵合金を内蔵したMHタンクと、前記水素供給路のうちの1次レギュレータと2次レギュレータの間の部分とMHタンクとを繋ぐ一本の配管とを備えたものが知られている(特許文献1,2参照)。なお、以下の説明においては、便宜上、高圧水素タンクと1次レギュレータとの間の部分を「高圧水素ライン」、1次レギュレータと2次レギュレータとの間の部分を「中圧水素ライン」、2次レギュレータと燃料電池との間の部分を「低圧水素ライン」と呼ぶこととする。この燃料電池システムによれば、中圧水素ラインからMHタンクへの水素ガスの導入やMHタンクから中圧水素ラインへの水素ガスの戻しを、一本の配管によって行うことができるので、構造を簡略化できるといったメリットがある。
【0005】
第二の燃料電池システムとしては、前記した構造に加え、低圧水素ラインとMHタンクとを繋ぐ別の配管を設けることにより、暖機時には中圧水素ラインからMHタンク内へ水素ガスを導入し、水素吸蔵合金で吸蔵した水素ガスを燃料電池に戻す際にはMHタンクから低圧水素ラインへ水素ガスを戻すものが知られている(特許文献3参照)。この燃料電池システムによれば、MHタンク内の水素ガスを中圧水素ラインよりも低い圧力となる低圧水素ラインに戻せばよいので、MHタンク内を迅速に空にすることができるといったメリットがある。
【0006】
【特許文献1】特開2004−22365号公報
【特許文献2】特開2003−86213号公報
【特許文献3】特開2002−222658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記した第一の燃料電池システムでは、その構造を簡略化できるといったメリットはあるが、MHタンク内の水素ガスを中圧水素ラインに戻す際に、MHタンク内を中圧水素ラインよりも高い圧力としなければならないので、MHタンク内を空にするのに時間が掛かるといった問題があった。また、前記した第二の燃料電池システムでは、MHタンク内を迅速に空にすることができるといったメリットはあるが、MHタンク内の水素ガスを低圧水素ラインに戻す際に、MHタンクから低圧水素ラインに導入された水素ガスが外乱とならないように絞り等を設ける必要があるため、構造が複雑化するといった問題があった。
【0008】
そこで、本発明では、構造を複雑化することなく、MHタンク内の水素ガスを迅速に燃料電池へ戻すことができる燃料電池システムおよびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決する本発明のうち請求項1に記載の発明は、水素ガスと酸化剤ガスとの反応により発電する燃料電池と、前記燃料電池に水素ガスを供給する水素供給手段と、前記燃料電池と前記水素供給手段とを繋ぐ水素ガス供給路と、前記水素供給手段から放出される水素ガスを減圧する1次レギュレータと、前記1次レギュレータで減圧された水素ガスをさらに減圧する2次レギュレータと、水素吸蔵合金を内蔵したMHタンクと、前記水素ガス供給路のうちの前記1次レギュレータと前記2次レギュレータとの間の部分と、前記MHタンクとを繋ぐMH用流路と、を備えた燃料電池システムであって、前記水素ガス供給路と前記MH用流路との接続部と、前記1次レギュレータとの間に、前記水素ガス供給路の連通状態を切り替えるための中圧バルブを設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、燃料電池の暖機時においては、中圧バルブを開けることによって、水素供給手段からMHタンク内に水素ガスが供給されて、その内部の水素吸蔵合金が発熱するため、この熱を例えば冷却水を介して燃料電池に与えることによって、燃料電池の暖機を行うことができる。また、MHタンク内に蓄えた水素ガスを燃料電池に戻す際には、中圧バルブを手動または自動で閉じるとともに、例えば燃料電池の発電で生じる熱を冷却水を介してMHタンクに与えることによって、MHタンク内の水素吸蔵合金から水素ガスを中圧水素ラインへ放出させる。このとき、中圧バルブを閉じることによって、中圧バルブよりも下流側にある水素ガスが燃料電池で消費されて、その下流側の圧力が徐々に下がっていくため、MHタンクから中圧水素ラインへの水素ガスの放出を容易に行うことが可能となる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の燃料電池システムであって、前記水素吸蔵合金から水素ガスを放出させる際に、前記中圧バルブを閉じる制御部を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、水素吸蔵合金から水素ガスを放出させる際には、制御部によって中圧バルブが閉じられて、水素吸蔵合金からの水素ガスの放出が促進される。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の燃料電池システムの制御方法であって、前記水素吸蔵合金から水素ガスを放出させる際に、前記中圧バルブを閉じることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、水素吸蔵合金から水素ガスを放出させる際には、中圧バルブが閉じられるので、MHタンクから中圧水素ラインへの水素ガスの放出が容易となる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1または請求項3に記載の発明によれば、中圧水素ラインに中圧バルブを設けるだけで、中圧バルブよりも下流側の圧力を下げて、MHタンクから中圧水素ラインへの水素ガスの放出を行い易くすることができるので、構造を複雑化することなく、MHタンク内の水素ガスを迅速に燃料電池へ戻すことができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、水素吸蔵合金から水素ガスを放出させる際には、制御部によって中圧バルブが自動的に閉じられるので、中圧バルブを手動で閉める場合に比べて、水素ガスの中圧水素ラインへの放出を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明に係る一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。参照する図面において、図1は本実施形態に係る燃料電池システムを示す構成図である。
【0018】
図1に示すように、燃料電池システムSは、空気供給系1と、水素供給系2と、MHタンク3と、燃料電池4と、ECU(制御部)5とで主に構成されている。
【0019】
空気供給系1は、空気を圧縮して供給するコンプレッサ6と、このコンプレッサ6からの空気を燃料電池4に導く空気供給流路61と、燃料電池4から排出される空気を外部に導く空気排出流路62と、を主に備えている。なお、空気排出流路62には、カソード極側の圧力(背圧)を制御する図示しない背圧弁が設けられている。
【0020】
水素供給系2は、高圧水素タンク(水素供給手段)7と、水素ガス供給路8と、循環流路9とを主に備えている。
【0021】
高圧水素タンク7内には、高圧の水素ガスが充填されており、この水素ガスは、高圧水素タンク7に備えられた図示しない遮断弁や、後記する中圧バルブ81が開放されることで、水素ガス供給路8を通って燃料電池4へ供給されるようになっている。また、この高圧水素タンク7内の水素ガスは、前記した遮断弁や中圧バルブ81の他に後記するMH用遮断弁33が開放されることで、MHタンク3内にも供給されるようになっている。
【0022】
水素ガス供給路8は、高圧水素タンク7と燃料電池4とを繋ぐ流路であり、その適所には、高圧水素タンク7側から順に1次レギュレータR1、中圧バルブ81、2次レギュレータR2が設けられている。1次レギュレータR1および2次レギュレータR2は、上流側から供給されてくる水素ガスの圧力を減圧させるための減圧弁である。そのため、高圧水素タンク7から燃料電池4までの圧力関係は、高圧水素タンク7から1次レギュレータR1までが最も高く、その次に1次レギュレータR1から2次レギュレータR2までが高く、2次レギュレータR2から燃料電池4までが最も低いといった関係になっている。なお、以下の説明においては、便宜上、高圧水素タンク7と1次レギュレータR1の間のラインを高圧水素ライン8a、1次レギュレータR1と2次レギュレータR2の間のラインを中圧水素ライン8b、2次レギュレータR2と燃料電池4の間のラインを低圧水素ライン8cと呼ぶこととする。
【0023】
中圧バルブ81は、水素ガス供給路8の連通状態(遮断/連通)を切り替えるための弁であり、中圧水素ライン8bの適所(詳しくは、水素ガス供給路8と後記する水素導入排出路32との接続部8dと、1次レギュレータR1との間)に設けられている。そして、この中圧バルブ81を燃料電池4の稼動中において閉じると、この中圧バルブ81よりも下流側の中圧水素ライン8bおよび低圧水素ライン8c内の水素ガスが燃料電池4で消費されることで、中圧水素ライン8bおよび低圧水素ライン8c内が減圧されていくようになっている。
【0024】
循環流路9は、燃料電池4から排出される未使用の水素ガスを再度燃料電池4に戻すべく、燃料電池4の出口4bと低圧水素ライン8cとに接続されている。なお、この循環流路9には、図示は省略するが、水素ガスを循環させるためのエゼクタまたはポンプが適宜設けられている。また、この循環流路9には、その内部に溜まっている水素ガス中の不純物や燃料電池4内で生成される水を含んだ水素ガスを図示せぬ希釈器へ排出するためのパージ水素配管91が接続されている。なお、この循環流路9内の水素ガスは、パージ水素配管91の適所に設けられたパージ弁92がECU5により適宜開閉されることで、燃料電池4から前記希釈器へ間欠的にパージ(排出)されるようになっている。
【0025】
MHタンク3は、水素吸蔵合金31を内部に収容した容器であり、高圧水素タンク7から供給される水素ガスを水素吸蔵合金31に吸蔵させることで発熱し、その熱が冷却水を介して燃料電池4に伝達されるようになっている。また、このMHタンク3は、燃料電池4の発電により発生する熱が冷却水を介して伝達されるようになっており、この熱によって内部の水素吸蔵合金31が加熱されることによって、水素吸蔵合金31で吸蔵していた水素ガスを中圧水素ライン8bに戻すように構成されている。そして、前記したようなMHタンク3への水素ガスの導入や、MHタンク3から中圧水素ライン8bへの水素ガスの排出は、一本の水素導入排出路(MH用流路)32によって行われるようになっている。
【0026】
水素吸蔵合金31は、所定の温度(第一温度)まで冷却されることで周囲の水素ガスを吸蔵することが可能となり、また、前記第一温度よりも高い所定の温度(第二温度)まで加熱されることで吸蔵していた水素を水素ガスとして放出することが可能となる性質を有している。また、この水素吸蔵合金31は、同じ温度条件下においては、その周囲の圧力が所定の圧力(放出圧)以下となると水素ガスを周囲に放出し、その周囲の圧力が前記放出圧よりも高い所定の圧力(吸蔵圧)以上になると周囲の水素ガスを吸蔵する性質を有している。
【0027】
さらに、この水素吸蔵合金31は、水素ガスを吸蔵する際に発熱し、かつ水素ガスを放出する際に吸熱する性質をも有している。なお、このような水素吸蔵合金31としては、例えば以下のようなものを使用することができる。
AB2型合金(ラーベス相合金);TiCr2、(Zr,Ti)(Ni,Mn,V,Fe)2・・AB5型合金;LaNi5、MnNi5・・BCC系合金;Ti−V−Cr、Ti−V−Mn・・その他;Mg系合金
【0028】
水素導入排出路32は、中圧水素ライン8b(詳しくは中圧バルブ81と2次レギュレータR2との間の部分)とMHタンク3とを繋ぐ流路であり、その適所に水素導入排出路32の連通状態を切り替えるためのMH用遮断弁33が設けられている。
【0029】
燃料電池4は、高圧水素タンク7に貯留された燃料となる水素ガスと、コンプレッサ6から供給される空気(酸化剤ガス)との電気化学反応により発電を行うものである。そして、燃料電池4のアノード側には、その入口4aに水素ガス供給路8が接続され、その出口4bに循環流路9が接続されている。
【0030】
ECU5は、燃料電池システムSの各機器、主にコンプレッサ6、前記した背圧弁や遮断弁、中圧バルブ81、MH用遮断弁33、パージ弁92などの制御を行っている。特に、このECU5は、燃料電池4の起動時において、中圧バルブ81やMH用遮断弁33を適宜制御することによって、MHタンク3による燃料電池4の加熱(以下、「暖機」ともいう。)やMHタンク3から燃料電池4への水素ガスの排出(以下、「MH再生」ともいう。)を良好に行うように作動している。
【0031】
具体的には、このECU5は、燃料電池4の起動指令(例えばイグニッションスイッチのON信号)を受信したときに、前記した遮断弁、中圧バルブ81およびMH用遮断弁33を開放させる機能を有している。これにより、燃料電池4の起動時において、高圧水素タンク7からMHタンク3に水素ガスが供給されるようになっている。
【0032】
なお、本実施形態では、燃料電池4の起動指令を受信したときに、前記した遮断弁、中圧バルブ81およびMH用遮断弁33を開放させるようにしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、燃料電池4の起動指令と、燃料電池4の現在の温度とに基づいて、燃料電池4を暖機する必要があるか否かを判断し、暖機する必要がある場合に、前記した遮断弁、中圧バルブ81およびMH用遮断弁33を開放させ、暖機する必要がない場合には、前記した遮断弁および中圧バルブ81のみを開放させるようにしてもよい。これによれば、燃料電池4を無駄に暖機することを防止して、燃料電池4の起動を迅速に行うことが可能となる。
【0033】
また、ECU5は、前記したような燃料電池4の暖機処理が終わったか否かを判断し、終わったと判断した場合に、中圧バルブ81を閉じる機能を有している。これにより、燃料電池4の暖機後にMH再生する場合において、閉塞された中圧バルブ81によってその下流側が減圧されるので、MH再生を迅速に行うことが可能となる。
【0034】
なお、前記したような暖機処理の終了判断の方法としては、例えば燃料電池4に設けた温度センサからの信号に基づいて燃料電池4の温度が所定値以上となったか否かを判断する方法や、単純に暖機処理を開始してから所定時間が経過したか否かを判断する方法など、どのような方法を用いてもよい。
【0035】
次に、本実施形態に係る燃料電池システムSの起動時におけるECU5の動作について図2および図3を参照して説明する。参照する図面において、図2は燃料電池の暖機時におけるECUの動作を示す構成図であり、図3はMH再生時におけるECUの動作を示す構成図である。
【0036】
図2に示すように、燃料電池4を起動させるべく図示せぬイグニッションスイッチをONにすると、燃料電池4の起動指令がECU5に送信され、このECU5によって図示せぬ遮断弁や、中圧バルブ81およびMH用遮断弁33が開放される。これにより、高圧水素タンク7内の水素ガスは、その一部がMHタンク3内に供給され、その残りが燃料電池4に供給されることとなる。
【0037】
このようにMHタンク3内に水素ガスが供給されると、このMHタンク3内の水素吸蔵合金31は、水素ガスを吸蔵するとともに、この吸蔵に伴って発熱し、その熱が冷却水を介して燃料電池4に伝達されることとなる。そのため、燃料電池4が良好に暖機されることとなる。ここで、MHタンク3内に供給される水素ガスは、1次レギュレータR1のみで減圧された比較的高めの圧力(中圧)となっているので、水素吸蔵合金31による吸蔵も良好に行われるようになっている。
【0038】
そして、燃料電池4の暖機が終了すると、ECU5は、図3に示すように、中圧バルブ81を閉塞させる。これにより、中圧バルブ81よりも下流側の圧力が、燃料電池4による水素ガスの消費により徐々に低下していき、中圧となっているMHタンク3内の水素ガス(水素吸蔵合金31の周囲にある水素ガス)が、減圧された中圧水素ライン8bへと流れ出していく。また、燃料電池4の暖機が終了した後は、燃料電池4による発電が開始されるため、この発電で生じる熱が、冷却水を介してMHタンク3へ伝達されることとなる。そのため、MHタンク3内の水素吸蔵合金31から水素ガスが放出されることとなり、この放出された水素ガスも、減圧された中圧水素ライン8bへと流れていくこととなる。
【0039】
すなわち、中圧バルブ81を設けていない従来の構造では、燃料電池4の暖機終了後に、MHタンク3内の圧力を中圧水素ライン8bよりも高くなるように加熱する必要があるため、暖機終了後からMH再生までに時間が掛かるが、本実施形態では、燃料電池4の暖機終了後に中圧バルブ81を閉じることによって、暖機終了後即座にMH再生を行うことが可能となっている。
【0040】
以上によれば、本実施形態において、次のような効果を得ることができる。
中圧水素ライン8bに中圧バルブ81を設けるだけで、中圧バルブ81よりも下流側の圧力を下げて、MHタンク3から中圧水素ライン8bへの水素ガスの放出を行い易くすることができるので、構造を複雑化することなく、MHタンク3内の水素ガスを迅速に燃料電池4へ戻すことができる。
【0041】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されることなく、様々な形態で実施される。
本実施形態では、燃料電池4とMHタンク3との間で冷却水を循環させるようにしているが、本発明はこれに限定されず、冷却水をラジエータにも循環させるようにしてもよい。なお、この場合は、MHタンクやラジエータ近傍に、これらを迂回するための迂回路を設けるのが望ましい。このように構成することにより、例えば通常運転時においては、MHタンクを迂回させて、冷却水を燃料電池とラジエータとの間でのみ循環させることで、燃料電池を効率良く冷却することができ、また、暖機時においては、ラジエータを迂回させて、冷却水を燃料電池とMHタンクとの間でのみ循環させることで、燃料電池を効率良く暖機することができる。
【0042】
本実施形態では、暖機終了後に中圧バルブ81を閉じるようにしたが、本発明はこれに限定されず、水素吸蔵合金31から水素ガスを放出させる際に、中圧バルブ81を閉じればよい。すなわち、例えばMHタンク3内に蓄えた水素ガスを燃料電池4の停止時に使用する場合には、その際に中圧バルブ81を閉じればよい。
【0043】
本実施形態では、一本の水素導入排出路32が特許請求の範囲にいう「MH用流路」に相当しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本実施形態におけるMHタンク3と中圧水素ライン8bとの間に二本の流路(MHタンク3に水素ガスを導入させるための導入用流路およびMHタンク3から中圧水素ライン8bへ水素ガスを排出させるための排出用流路)を設ける場合には、そのうちの排出用流路が特許請求の範囲にいう「MH用流路」に相当することとなる。すなわち、このように二本の流路を設けた場合には、排出用流路と1次レギュレータとの間に中圧バルブを設ければ、仮に中圧バルブが導入用流路の下流側に配設されたとしても、本発明の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本実施形態に係る燃料電池システムを示す構成図である。
【図2】燃料電池の暖機時におけるECUの動作を示す構成図である。
【図3】MH再生時におけるECUの動作を示す構成図である。
【符号の説明】
【0045】
S 燃料電池システム
1 空気供給系
2 水素供給系
3 MHタンク
31 水素吸蔵合金
32 水素導入排出路(MH用流路)
33 MH用遮断弁
4 燃料電池
5 ECU(制御部)
7 高圧水素タンク(水素供給手段)
8 水素ガス供給路
8a 高圧水素ライン
8b 中圧水素ライン
8c 低圧水素ライン
81 中圧バルブ
R1 1次レギュレータ
R2 2次レギュレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスと酸化剤ガスとの反応により発電する燃料電池と、
前記燃料電池に水素ガスを供給する水素供給手段と、
前記燃料電池と前記水素供給手段とを繋ぐ水素ガス供給路と、
前記水素供給手段から放出される水素ガスを減圧する1次レギュレータと、
前記1次レギュレータで減圧された水素ガスをさらに減圧する2次レギュレータと、
水素吸蔵合金を内蔵したMHタンクと、
前記水素ガス供給路のうちの前記1次レギュレータと前記2次レギュレータとの間の部分と、前記MHタンクとを繋ぐMH用流路と、を備えた燃料電池システムであって、
前記水素ガス供給路と前記MH用流路との接続部と、前記1次レギュレータとの間に、前記水素ガス供給路の連通状態を切り替えるための中圧バルブを設けたことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記水素吸蔵合金から水素ガスを放出させる際に、前記中圧バルブを閉じる制御部を備えたことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料電池システムの制御方法であって、
前記水素吸蔵合金から水素ガスを放出させる際に、前記中圧バルブを閉じることを特徴とする燃料電池システムの制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate