燃料電池システム
【課題】この発明は、燃料電池セルへのガス供給量の制御を容易に行うことができる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【解決手段】燃料電池スタック10は、ガス流入孔14を有する燃料電池セル12を複数積層してなる。ガス流入孔14が並ぶ方向に、それぞれのガス流入孔14に連通して水素を供給するアノードガス供給内部マニホールド20が設けられる。アノードガス供給内部マニホールド20内に回転自在に備えられ、その表面がガス流入孔14とアノードガス供給マニホールド20との連通を制限し、ガス流入孔14とアノードガス供給マニホールド20との連通を制限する面積が軸まわりの回転角度に応じて変化するロータリーバルブ50を設ける。
【解決手段】燃料電池スタック10は、ガス流入孔14を有する燃料電池セル12を複数積層してなる。ガス流入孔14が並ぶ方向に、それぞれのガス流入孔14に連通して水素を供給するアノードガス供給内部マニホールド20が設けられる。アノードガス供給内部マニホールド20内に回転自在に備えられ、その表面がガス流入孔14とアノードガス供給マニホールド20との連通を制限し、ガス流入孔14とアノードガス供給マニホールド20との連通を制限する面積が軸まわりの回転角度に応じて変化するロータリーバルブ50を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池システムに係り、特に、車両への搭載に適した燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特開平9−312168号公報に開示されているように、スリットを形成したプレートを用いて、燃料電池セルへのガス供給量を制御する燃料電池システムが知られている。このプレートは、スリットの位置が個々の燃料電池セルのガス流入孔の位置に対応するように、燃料電池スタック上に配置される。このプレートを摺動させてスリットの位置を移動させることにより、ガス流入孔の開閉を行うことができる。
【0003】
燃料電池システムを運転する際には、その運転状況などに応じて、特定の燃料電池セルへのガス供給量を調整する場合がある。上記従来の技術では、前述したプレートを用いて、それらの燃料電池セルのガス流入孔をスリットによって適宜開閉し、ガス供給量を制御することとしている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−312168号公報
【特許文献2】特開2004−179061号公報
【特許文献3】特開平5−129032号公報
【特許文献4】特開昭63−291364号公報
【特許文献5】特開2004−342596号公報
【特許文献6】特開平9−161828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のシステムでは、燃料電池セルのガス流入孔の寸法に合わせて、プレートにスリットを形成する必要がある。また、ガス流入孔の開閉を行う際には、ガス流入孔とスリットの位置合わせを精度良く行う必要がある。ガス流入孔の幅が狭い場合には、それに伴ってスリットの形成やプレートの位置制御に高い精度が求められるようになり、ガス供給量の制御が難しくなる可能性がある。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、燃料電池セルへのガス供給量の制御を容易に行うことができる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、燃料電池システムであって、
ガス流入孔を有する燃料電池セルを積層してなる燃料電池スタックと、
前記ガス流入孔に連通し該ガス流入孔にガスを供給するガス供給マニホールドと、
前記ガス供給マニホールド内に回転自在に備えられ、その表面が少なくとも一部の前記燃料電池セルの前記ガス流入孔と該ガス供給マニホールドとの連通を制限する状態と該ガス流入孔を開放する状態とを実現し、該ガス流入孔と該ガス供給マニホールドとの連通を制限する連通制限面積が回転角度に応じて変化するロータリーバルブと、
を有する。
【0008】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記ガス供給マニホールドは、前記ガス流入孔に水素を供給し、その一端が水素タンクに連通するアノードガス供給マニホールドを含み、
前記燃料電池セルは前記ガス流入孔から流入した水素が流出するガス流出孔を有し、
前記ガス流出孔に連通し、その一端がアノードガス排出系に連通するアノードガス排出マニホールドを有し、
前記ロータリーバルブは、前記積層された前記燃料電池セルのうち、水素が流通し易い該燃料電池セルの前記ガス流入孔の前記連通制限面積が大きく、水素が流通し難い該燃料電池セルの該ガス流入孔の該連通制限面積が小さくなるように該ガス流入孔と前記アノードガス供給マニホールドとの連通を制限する第一状態と、いずれの該ガス流入孔と該アノードガス供給マニホールドとの連通も制限しない第二状態とを実現する形状を有し、
回転動力を発生する動力機構と、
前記ロータリーバルブに前記動力機構が発生させた回転動力を伝達する伝達機構と、
前記動力機構が発生させる回転動力を制御して前記ロータリーバルブの回転角度を調整し、前記燃料電池スタックの始動時に、前記ロータリーバルブを前記第一状態として所定時間保持した後、該ロータリーバルブを前記第二状態とするアノードガス供給量制御手段と、
を有する。
【0009】
また、第3の発明は、第2の発明において、
前記積層された前記燃料電池セルの前記ガス流入孔のそれぞれが一方向に並んで位置し、前記アノードガス供給マニホールドは該一方向に沿って伸びてそれぞれの該ガス流入孔に連通し、
前記ガス流出孔は前記一方向に並んだ前記ガス流出孔と略平行な方向に並んで位置し、前記アノードガス排出マニホールドは該略平行な方向に沿って伸びてそれぞれの該ガス流出孔に連通し、
前記アノードガス供給マニホールドの前記一端と前記アノードガス排出マニホールドの前記一端とがともに前記燃料電池スタックの一方の面側に位置する。
【0010】
また、第4の発明は、第2または第3の発明において、
前記燃料電池スタックの内部における水素分布が均等となったか否かを判定するアノード水素置換判定手段を有し、
前記所定時間は、前記燃料電池スタックの始動から前記アノード水素置換判定手段によって前記水素分布が均等となったとの前記判定がなされるまでの時間である。
【0011】
また、第5の発明は、第1乃至4の発明において、
前記ガス供給マニホールドは前記ガス流入孔に空気を供給するカソードガス供給マニホールドを含み、
前記ロータリーバルブは、前記燃料電池スタックの端側に位置する前記燃料電池セルの該ガス流入孔の前記連通制限面積が小さく、該燃料電池スタックの中央側に位置する前記燃料電池セルの該ガス流入孔の前記連通制限面積が大きくなるように該ガス流入孔と前記カソードガス供給マニホールドとの連通を制限する第三状態を実現する形状を有し、
前記燃料電池セルで水閉塞が生じているか否かを判定する水閉塞判定手段と、
回転動力を発生する動力機構と、
前記ロータリーバルブに前記動力機構が発生させた回転動力を伝達する伝達機構と、
前記動力機構が発生させる回転動力を制御して前記ロータリーバルブの回転角度を調整し、前記燃料電池スタックの発電中に前記水閉塞判定手段によって前記燃料電池セルで水閉塞が生じていると判定されたら該ロータリーバルブを前記第三状態とするカソードガス供給量制御手段と、
を有する。
【0012】
また、第6の発明は、第5の発明において、
前記水閉塞判定手段は、前記燃料電池スタックの少なくとも一部の前記燃料電池セルの電圧を検知するセル電圧検知手段を含み、前記セル電圧検知手段が検知した電圧値に基づいて前記水閉塞が生じているか否かを判定する。
【0013】
また、第7の発明は、第1乃至6の発明において、
前記ガス供給マニホールドは前記ガス流入孔に空気を供給するカソードガス供給マニホールドを含み、
前記ロータリーバルブは、前記燃料電池スタックの端側の前記燃料電池セルでは該ガス流入孔の前記連通制限面積が小さく、中央側に位置する前記燃料電池セルでは該ガス流入孔の前記連通制限面積が大きくなるように該ガス流入孔と前記カソードガス供給マニホールドとの連通を制限する第三状態を実現する形状を有し、
回転動力を発生する動力機構と、
前記ロータリーバルブに前記動力機構が発生させた回転動力を伝達する伝達機構と、
前記動力機構が発生させる回転動力を制御して前記ロータリーバルブの回転角度を調整し、前記燃料電池スタックの停止時に前記ロータリーバルブを前記第三状態として前記カソードガス供給マニホールドから空気が流入する状態を所定時間保持する停止時ガス流入量制御手段と、
を有する。
【0014】
また、第8の発明は、第2乃至7の発明において、
前記燃料電池スタックは、前記複数積層された前記燃料電池セルをその積層方向から挟むように取り付けられるスタックエンドプレートを含み、
前記伝達機構は、前記ロータリーバルブに備えられる第一の磁石と、前記動力機構に備えられる第二の磁石とを含み、該第一の磁石が前記スタックエンドプレートを挟んで該第二の磁石の回転に追随することで該ロータリーバルブに回転が伝達されることにより、該ロータリーバルブに該動力機構が発生させた回転動力を伝達する。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、燃料電池セルのガス流入孔とガス供給マニホールドとの間の連通状態を制限するロータリーバルブが、ガス供給マニホールド内に備えられる。ロータリーバルブをガス供給マニホールド内で回転させることにより、その回転角度に応じて、ロータリーバルブの表面がガス流入孔とガス供給マニホールドとの間の連通を制限する面積(連通制限面積)を変化させることができる。これにより、ガス流入孔に対するガス供給量の制御を容易に実現することができる。
【0016】
また、第2の発明によれば、第1の発明において、ガス供給マニホールドが、ガス流入孔に水素を供給するアノードガス供給マニホールドを含む。そして、燃料電池システムの始動時に、始動時に水素が流れ込み易い燃料電池セルのガス流入孔の連通制限面積が大きく、始動時に水素が流れ込み難い燃料電池セルのガス流入孔の連通制限面積が小さくなるように、ガス流入孔とアノードガス供給マニホールドとの連通が制限される。これにより、燃料電池スタックの始動時に、それぞれの燃料電池セルにおける水素置換の進行が不均一となるのを緩和することができる。
【0017】
また、第3の発明によれば、第2の発明において、燃料電池スタックの一方の面に近い燃料電池セルではガスが流れ込み易く、当該一方の面から遠い燃料電池セルではガスが流れ込み難くなる。これに対応させて、ロータリーバルブの表面積を当該一方の面側で相対的に大きくし、その開閉制御を行うことによって不均一な水素置換の進行を緩和する効果を得ることができる。このような構成によれば、ロータリーバルブの形状を簡易なものとすることができる。
【0018】
また、第4の発明によれば、第3の発明において、燃料電池スタック内の水素分布が等しくなったことが検知されるまで、ガス流入孔とアノードガス供給マニホールドとの連通が制限される。このようにすることで、それぞれの燃料電池セルにおける水素置換の進行が不均一となるのを確実に避けることができる。
【0019】
また、第5の発明によれば、第1乃至第4のいずれかの発明において、ガス供給マニホールドが、ガス流入孔に空気を供給するカソードガス供給マニホールドを含む。燃料電池システムの運転中に、燃料電池スタック内の燃料電池セルに水閉塞が生じたと判定されたら、端側に位置する燃料電池セルのガス流入孔の連通制限面積が小さく、中央側に位置する燃料電池セルのガス流入孔の連通制限面積が大きくなるように、ガス流入孔とアノードガス供給マニホールドとの連通を制限する。これにより、端側に位置する燃料電池セルに対する空気供給量を増加させ、燃料電池セルの水閉塞を解消するための回復措置を行うことができる。
【0020】
また、第6の発明によれば、第5の発明において、燃料電池システムの運転中に、燃料電池セルの出力電圧に基づいて水閉塞が発生していることを判定する。これにより、燃料電池セルの水閉塞を解消するための回復措置を確実に行うことができる。
【0021】
また、第7の発明によれば、第1乃至第6のいずれかの発明において、燃料電池システムの停止時に、燃料電池スタックの端側の燃料電池セルに対して多くの空気を供給する状態を、所定時間保持する。これにより、端側の燃料電池セルの保水量が多い状態で燃料電池システムが停止されるのを、確実に避けることができる。
【0022】
また、第8の発明によれば、第2乃至第7のいずれかの発明において、燃料電池スタックの端に位置するスタックエンドプレートを挟むように備えられる磁石によって、ロータリーバルブに回転力を伝達する。このようにすることで、スタックエンドプレートを貫通する例えばシャフトなどの構造物を利用することなく、ロータリーバルブを回転させることができる。その結果、燃料電池スタックの密閉性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
図1は、本発明の実施の形態1の燃料電池システムの構成を説明するための図である。図1は、本実施形態の燃料電池システムのアノード側の構成を示している。
【0024】
本実施形態は、燃料電池スタック10を備えている。燃料電池スタック10は、その内部に、複数積層された燃料電池セル12を備えている。燃料電池スタック10の端側(紙面左右側)には、積層された燃料電池セル12を挟み込むように、スタックエンドプレート40および42が備えられる。
【0025】
燃料電池スタック10内部において、燃料電池セル12の紙面上方側には、アノードガス供給内部マニホールド20が設けられている。アノードガス供給内部マニホールド20は、スタックエンドプレート40を貫通して、紙面左方側で管路24に連通する。管路24は、図示しない水素タンクに連通している。水素タンクから供給される水素が、管路24を通ってアノードガス供給内部マニホールド20へと流入する。
【0026】
アノードガス供給内部マニホールド20には、それぞれの燃料電池セル12の端面が露出している。露出しているそれぞれの燃料電池セル12の端面には、それぞれガス流入孔14(燃料電池セル12における水素の入口)が設けられている。ガス流入孔14は、燃料電池セル12内部のアノードに連通している。水素タンクからアノードガス供給内部マニホールド20に至った水素は、ガス流入孔14を通って、燃料電池セル12のアノードへと流入する。その後、この水素はアノードで消費され、燃料電池セル12で生ずる発電反応に寄与することとなる。
【0027】
アノードガス供給内部マニホールド20の内部には、それぞれのガス流入孔14への水素の流入量を制御するために、ロータリーバルブ50が備えられている。ロータリーバルブ50は、円筒の一部を切り欠いた形状を有しており、紙面左右方向に向かう直線を回転軸として回転可能な状態とされる。
【0028】
ロータリーバルブ50の紙面右方端には、シャフト60が取り付けられている。シャフト60は、スタックエンドプレート42を貫通して、外部のモータ62に連通している。モータ62が回転することにより、その回転がシャフト60によって伝達され、ロータリーバルブ50が回転することとなる。モータ62の回転量は、CPU64によって制御される。すなわち、CPU64によって、ロータリーバルブ50の回転角度が制御されることとなる。
【0029】
ロータリーバルブ50の回転によって、ロータリーバルブ50がガス流入孔14を遮蔽することによりガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通が制限されている状態、若しくは、いずれのガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通も制限されない状態(即ち、全てのガス流入孔14が開放された状態)が実現される。
【0030】
そして、その回転角度に応じて、ロータリーバルブ50がガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20と連通を制限する面積(実施の形態1ではロータリーバルブ50がガス流入孔14を遮蔽する面積であり、以下の説明では、この面積を「連通制限面積」とも呼称する)が変化するようになっている。連通制限面積の増減に伴い、ガス流入孔14の開度が変化してガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との間の連通制限量が変化し、その結果、ガス流入孔14への水素の流入量も変化する。
【0031】
燃料電池セル12の紙面下方側には、アノードガス排出内部マニホールド22が設けられている。アノードガス排出内部マニホールド22に露出するそれぞれの燃料電池セル12の端面には、ガス流出孔16(燃料電池セル12における水素の出口)がそれぞれ設けられている。ガス流出孔16は、ガス流入孔14と同じく、燃料電池セル12のアノードに連通している。ガス流入孔14から流入した水素は燃料電池セル12面内(アノード)を流通する過程で消費され、消費されなかった水素を含むガスがガス流出孔16から流出する。その後、燃料電池セル12内部のガスは、ガス流出孔16からアノードガス排出内部マニホールド22へと流入し、その後、管路26を介して、図示しないアノードガス排出系へと流れる。
【0032】
個々の燃料電池セル12には、発電電圧をそれぞれ検知(モニタリング)するための電圧センサ(図示せず)が備えられている。個々の燃料電池セル12の電圧測定値は、適宜、CPU64に収集される。CPU64は、電圧測定値などの情報に基づき、ロータリーバルブ50の回転角度を制御する機能を有する。
【0033】
(ロータリーバルブの構造)
図2は、実施の形態1におけるロータリーバルブ50を説明する図である。図2(A)は、ロータリーバルブ50の斜視図である。前述したように、ロータリーバルブ50は、円筒の一部を切り欠いた形状を有している。図2に示すように、紙面左方端側から紙面右方端に近づくにつれ、徐々に切り欠かれる面積が大きくなっている。
【0034】
その結果、紙面左方側ではロータリーバルブ50の表面積が大きくなり、逆に、紙面右方側ほど表面積が小さくなっている。図2(B)および図2(C)は、図2(A)のロータリーバルブ50を、紙面左方および紙面右方から見た図にそれぞれ相当する。
【0035】
(ロータリーバルブ50によるガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通の制限)
以下、図3乃至図4を用いて、ロータリーバルブ50によるガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通が制限される際の様子について説明する。
【0036】
図3は、図1におけるアノードガス供給内部マニホールド20の内部を、紙面上方から(矢印Iの方向に)見た様子を示す図である。燃料電池セル12にそれぞれ設けられたガス流入孔14が、紙面左右方向に並んでいる。そして、ガス流入孔14に対して、紙面の手前側に、ロータリーバルブ50が位置している。
【0037】
前述したように、ロータリーバルブ50は、紙面左方端でその表面積が大きく、紙面右方端へいくほどその表面積が小さくなっている。このため、図3に示すように、紙面左方側に位置するガス流入孔14には、ロータリーバルブ50のうち表面積が大きい部分が対応することとなる。また、紙面右方側のガス流入孔14に対しては、ロータリーバルブ50の表面積が小さい部分が対応することとなる。
【0038】
そのため、ロータリーバルブ50がガス流入孔14を遮蔽する際には、紙面左方側のガス流入孔14では、ロータリーバルブ50によってガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20と連通が制限される面積、すなわち前述した連通制限面積が大きくなり、連通が大きく制限されることとなる。そして、紙面右方側のガス流入孔14では、連通の制限が少なくなるか、或いはほとんど連通が制限されない状態となる。
【0039】
図4は、ロータリーバルブ50が一部のガス流入孔14を遮蔽している状態で、図1のアノードガス供給内部マニホールド20内部を、紙面右方から(矢印IIの方向に)見た様子を示す図である。
【0040】
アノードガス供給内部マニホールド20に露出する燃料電池セル12の端面は、図4に示すように、ロータリーバルブ50の表面に対応する形状となっている。具体的には、ガス流入孔14が位置する燃料電池セル12の端面が、ロータリーバルブ50と略同一の曲率半径を有する半円筒形上の曲面となっている。このようにすることで、ロータリーバルブ50がガス流入孔14を遮蔽する際には、その表面でガス流入孔14が確実に遮蔽され、ガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通が遮断されることとなる。
【0041】
ロータリーバルブ50の表面は、回転に伴い、ガス流入孔14上をなぞるように摺動する。回転角度を制御することにより、ロータリーバルブ50の表面とガス流入孔14の相対位置を変化させることができる。これにより、ガス流入孔14の開閉を容易に行うことができる。
【0042】
図4に示した状態では、ロータリーバルブ50の表面が、それぞれのガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通の制限している状態(すなわち、ガス流入孔14を遮蔽している状態であり、実施の形態1では、「第一状態」とも呼称する)となる。
【0043】
一方、図4の状態から、紙面貫通方向を回転軸としてロータリーバルブ50を180度回転させることにより、いずれのガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通も制限されない状態(すなわち、いずれのガス流入孔14も遮蔽されない状態であり、実施の形態1では、「第二状態」とも呼称する)が実現される。このような回転制御を行うことにより、ロータリーバルブ50の表面がガス流入孔14を遮蔽する面積を、容易に変化させることができる。
【0044】
[実施の形態1の動作]
以下、図1乃至図4を参照して、実施の形態1の燃料電池システムの動作について説明する。実施の形態1の燃料電池システムにおいては、その始動時に、燃料電池スタック10内部に窒素が充満している場合を想定している。
【0045】
燃料電池システムが始動すると、管路24から燃料電池スタック10へと、水素が供給される。それに伴い、燃料電池スタック10内で窒素が存在していた場所が、徐々に水素に置換される。窒素から水素への置換(以下、水素置換と呼称する)は、アノードガス供給内部マニホールド20内を、管路24側(以下、水素入口側と呼称する)から紙面右方向に向かって徐々に進行する。
【0046】
水素の置換がガス流入孔14の位置まで進み、当該位置のガス流入孔14が開放されていると、このガス流入孔14から燃料電池セル12の内部へ水素が流入し始める。水素の流入により、燃料電池セル12内部でも、紙面下方側に向かって徐々に水素置換が進む。
【0047】
水素置換は水素入口側から徐々に進行するため、全てのガス流入孔14が等しく開放された状態では、紙面左方側の燃料電池セル12から順に水素置換が始まる。このような場合、紙面左方側(水素入口側)の燃料電池セル12では、紙面右方側の燃料電池セル12よりも早く、その内部に水素が行き渡る(水素置換が完了する)こととなる。
【0048】
水素は、窒素に比較して、より粘性が低く、流れ易いという性質を有している。これに起因して、紙面左方側の燃料電池セル12の水素置換が完了し、一旦水素の流通経路が形成されると、当該位置に多くの水素が流れ、他の位置の水素置換が進みにくくなる。その結果、燃料電池スタック10全体に水素を行き渡らせるまでに、時間を要することとなる。また、水素置換が進みにくい燃料電池セル12では、当該燃料電池セル12内部においても水素分布が不均一な状態が長時間続き、好ましくない。
【0049】
実施の形態1では、このような事態に対処するために、燃料電池システムの始動時に、水素置換が進み易い燃料電池セル12に対しては水素の供給を抑制する。具体的には、燃料電池システムの始動時に、ロータリーバルブ50を第一状態とする。
【0050】
前述したように、ロータリーバルブ50は、水素入口側(管路24側)のガス流入孔14に対する連通制限面積が、他の位置のガス流通孔14よりも相対的に大きくなるような形状を有している。このため、ロータリーバルブ50によって、水素置換が進み易い燃料電池セル12のガス流入孔14の連通制限面積が大きく、逆に、水素置換が進みにくい燃料電池セル12のガス流入孔14の連通制限面積が小さくなるように、ガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通の制限が行われる。
【0051】
その結果、燃料電池システムの始動時に、水素入口側(紙面左方側)のガス流入孔14への水素流入が抑制され、紙面右方側のガス流入孔14への水素流入が促進される。以上の動作によれば、燃料電池スタック10内の水素置換が不均一になるのを緩和し、水素置換の進行をより均一に進めることができる。
【0052】
このようなガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通の制限のために、実施の形態1では、ロータリーバルブ50を用いている。図4を用いて述べたように、ロータリーバルブ50の表面は、ガス流入孔14が設けられた燃料電池セル12の端面に、ほぼ一致する形状となっている。そして、その回転により、ロータリーバルブ50の表面が、ガス流入孔14上をなぞるように摺動する。このような構造によれば、ロータリーバルブ50の回転角度を制御することでガス流入孔14の開閉を行うことができ、ガス流入孔14の開閉制御を容易に行うことができる。
【0053】
[実施の形態1の具体的処理]
以下、図5を用いて、実施の形態1の燃料電池システムが行う具体的処理を説明する。図5は、本実施形態の燃料電池システムが行う具体的処理を示すフローチャートであり、燃料電池システムの始動時に実行される。この処理は、例えば、燃料電池システムが車両に搭載された状態で実行することができる。
【0054】
図5に示すルーチンでは、先ず、始動時に、バルブ閉状態とされる(ステップ100)。具体的には、ロータリーバルブ50によってガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通が制限される状態となる。これにより、水素入口側(管路24側)に位置するガス流入孔14では水素流入が抑制される状態となる。その後、本実施の形態では、水素が、管路24を介して燃料電池スタック10へと供給される。
【0055】
管路24を介してガス供給内部マニホールド20に流入した水素は、それぞれのガス流入孔14へと流入する。実施の形態1では、ロータリーバルブ50の遮蔽によって、水素入口側のガス流入孔14に対しては水素の流入量が少なく、逆に、ガス入口側から離れた位置のガス流入孔14ほど、そのガス流入量が多くなる。これにより、燃料電池スタック10内の水素置換が不均一になることが緩和され、水素置換の進行がより均一に進行することとなる。
【0056】
続いて、燃料電池スタック10の発電電圧の状態がOKか否かが判別される(ステップ110)。先ず、スタックエンドプレート42近傍に位置する燃料電池セル12の電圧値が、当該位置の燃料電池セル12に設けられた電圧センサにより検知される。この電圧値が、CPU64によって取得される。また、燃料電池スタック10の中央側に位置する燃料電池セル12の電圧値も、当該中央側の燃料電池セル12に設けられた電圧センサにより検知され、CPU64に取得される。
【0057】
CPU64は、取得した電圧値が同じであるか否か(若しくは、許容範囲内であるか否か)を判別する。比較した電圧値が同等でないと判別された場合には、燃料電池スタック10内の水素分布が均等ではなく、水素が未だ十分に行き渡っていないと判断される。従って、ロータリーバルブ50の閉状態を継続する。
【0058】
比較した電圧値が同等になったと判別された場合には、燃料電池スタック10内の水素分布が均等となり、水素が概ね行き渡ったと判断される。その後、ロータリーバルブ50が開状態とされ(ステップ120)、今回のルーチンが終了する。これにより、いずれのガス流入孔14も遮蔽されない状態となり、通常運転へ移行することとなる。
【0059】
以上の処理によれば、燃料電池システムの始動時に、ロータリーバルブ50によって、燃料電池スタック10内部の水素置換が均等に進むように、それぞれの燃料電池セル12に対するガス供給量が制御される。そして、燃料電池スタック10内の水素置換が完了しているか否かが、電圧センサの検知およびCPU64の判別(ステップ110)により確実に判断される。これにより、それぞれの燃料電池セルへのガス供給量制御を、確実に、かつ容易に実現することができる。
【0060】
尚、上述した実施の形態1では、ガス流入孔14が前記第1の発明における「ガス流入孔」に、燃料電池セル12が前記第1の発明における「燃料電池セル」に、燃料電池スタック10が前記第1の発明における「燃料電池スタック」に、それぞれ相当する。
【0061】
また、ガス供給内部マニホールド20が前記第1の発明における「ガス供給マニホールド」に、ロータリーバルブ50が前記第1の発明における「ロータリーバルブ」に、ロータリーバルブ50の表面がガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通を制限する面積(ロータリーバルブ50の表面がガス流入孔14を遮蔽する面積)が前記第1の発明における「連通制限面積」に、それぞれ相当する。
【0062】
また、上述した実施の形態1では、アノードガス供給内部マニホールド20が、前記第2の発明における「アノードガス供給マニホールド」に、ガス流出孔16が、前記第2の発明における「ガス流出孔」に、アノードガス排出内部マニホールド22が、前記第2の発明における「アノードガス排出マニホールド」に、それぞれ相当する。
【0063】
また、ロータリーバルブ50が、紙面左方側のガス流入孔14では連通制限面積が大きく、紙面右方のガス流入孔14では連通制限面積が小さくなるようにガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通を制限する状態が、前記第2の発明における「第一状態」に相当する。また、ロータリーバルブ50が、いずれのガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通も制限しない状態が、前記第2の発明における「第二状態」に相当する。また、モータ62が、前記第2の発明の「動力機構」に、シャフト60が、前記第2の発明の「伝達機構」に、それぞれ相当する。
【0064】
また、実施の形態1の具体的処理では、ステップ110において、燃料電池スタック10内部に水素が行き渡ったと判別されるまでに経過する時間が、前記第2の発明における「所定時間」に相当する。また、ステップ100から120の処理が、前記第2の発明における「アノードガス供給量制御手段」に相当する。
【0065】
また、上述した実施の形態1では、燃料電池スタック10のスタックエンドプレート40側の面が、前記第3の発明における「燃料電池スタックの一方の面」に相当する。また、上述した実施の形態1では、燃料電池スタック10の中央側の燃料電池セル12に設けられる電圧センサ、燃料電池スタック10の端側の燃料電池セル12に設けられる電圧センサ、およびステップ110の処理が、前記第4の発明における「アノード水素置換判定手段」に相当する。
【0066】
なお、上述した実施の形態1では、ロータリーバルブ50の表面が、ガス流入孔14を確実に遮蔽し、ガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通が遮断される構成とした。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。すなわち、ロータリーバルブ50が介在することによりガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通が制限され、ガス流入孔14を介して燃料電池セル12に供給される水素量が調整されうる構造であればよい。従って、ロータリーバルブの形状と燃料電池セルの端面の形状も、図4に示したような、両者がほぼ完全に対応するような形状に限られるものではない。
【0067】
[実施の形態1の変形例]
(第1変形例)
実施の形態1では、ロータリーバルブ50とモータ62とを接続するために、スタックエンドプレート42を貫通させて、シャフト60を設けた。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。図6は、実施の形態1の第1変形例を説明するための図であり、図1におけるシャフト60の近傍位置に相当する図である。なお、図6では、ロータリーバルブ50の形状などを、簡略化して示している。
【0068】
第1変形例では、図6のように、ロータリーバルブ50の一端にマグネット80を取り付ける。マグネット80を回転自在に収納しうるように、スタックエンドプレート82に凹部86を設ける。スタックエンドプレート82の凹部86近傍は、樹脂若しくはセラミックを用いて形成することとする。
【0069】
スタックエンドプレート82を介してマグネット80に対向する位置には、磁力によってその動きが追随しうる距離を保って、マグネット84が備えられる。マグネット84は、モータ62と接続されている。モータ62を駆動させることにより、回転がマグネット84からマグネット80へと伝達される。
【0070】
その結果、スタックエンドプレート82に対して貫通孔などを設けることなく、ロータリーバルブ50の回転制御を行うことが可能となる。これにより、燃料電池スタック10の密閉性を高めることができる。なお、スタックエンドプレート82はマグネットの磁力が伝達されうる構造であればよく、凹部86近傍を、例えば薄板の金属を用いて形成することも可能である。
【0071】
なお、第1変形例では、マグネット80とマグネット84とが、前記第8の発明の伝達機構に含まれ、マグネット80が、前記第8の発明の「第一の磁石」に、マグネット84が、前記第8の発明の「第二の磁石」に、それぞれ相当する。また、スタックエンドプレート82が、前記第8の発明の「スタックエンドプレート」に、モータ62が、前記第8の発明の「動力機構」に相当する。
【0072】
(第2変形例)
実施の形態1では、燃料電池スタック10内部での水素置換の進行を、燃料電池セル12に設けた電圧センサによって、その発電電圧を検知することにより行った。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。発電電圧の測定を行う替わりに、水素センサを用いて、燃料電池スタック10内部での水素置換の進行を検知することとしてもよい。
【0073】
前述したとおり、燃料電池スタック10において、水素入口(管路24)側から遠い燃料電池セル12ほど、水素置換が進みにくい。第2変形例では、これに対応するように、燃料電池スタック10における、スタックエンドプレート42側に位置する燃料電池セル12のガス流出孔16付近(アノードガス排出内部マニホールド22内)に、水素センサを設けることとする。
【0074】
このような構成で、前述した具体的処理のステップ110において、水素センサが検知を行うまでロータリーバルブ50を閉状態とし、検知がなされたらロータリーバルブ50を開状態とする。これにより、スタックエンドプレート42側に位置する燃料電池セル12の水素置換が完了したことを確実に検知し、それぞれの燃料電池セル12へのガス供給量を制御することができる。
【0075】
(第3変形例)
実施の形態1では、ロータリーバルブ50を、紙面左方のガス流入孔14側では表面積が大きくなり、紙面右方のガス流入孔14側では表面積が小さくなるような形状とした。ロータリーバルブ50の形状(表面積)は、より好ましくは、次のようにして定めることができる。
【0076】
前述したように、実施の形態1の燃料電池システムの始動時には、水素入口側の燃料電池セル12では水素置換が進み易く、水素入口から遠い燃料電池セル12では水素置換が進みにくい。このような水素置換の進み易さに対応させて、水素入口側の燃料電池セル12および水素入口から遠い燃料電池セル12にそれぞれ供給すべき水素量の比(配分比)を算出する。
【0077】
この配分比に基づいて、ガス流入孔14を遮蔽する際の連通制限面積の比(各々のガス流入孔14の遮蔽率)に対応するように、ロータリーバルブ50の形状を定めることができる。これによれば、それぞれのガス流入孔14に対する水素の分配がより好ましいものとなり、燃料電池スタック10の水素置換を均一に進める効果が、より高いものとなる。
【0078】
(第4変形例)
また、上述した実施の形態1では、ステップ110において燃料電池スタック10内部に水素が行き渡ったと判別されるまでの時間、ロータリーバルブ50を閉状態とした。しかし、本発明はこれに限られるものではない。例えば、予め実験などにより燃料電池スタック10内部に水素が行き渡るまでの時間を定め、この時間に基づいてロータリーバルブ50の開閉制御を行うこととしてもよい。
【0079】
また、ロータリーバルブ50を用いたガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通の制限は、必ずしも、完全に水素が行き渡るまでの時間以上行わなくともよい。燃料電池システムの始動時に、一定時間、水素入口側の燃料電池セル12への水素供給量を抑制することにより、水素置換の不均一を緩和する効果を得ることができる。
【0080】
なお、上述した実施の形態1には、ロータリーバルブを用いて燃料電池スタックにおける水素供給制御を容易に行うという思想と、燃料電池システムの始動時に水素入口側(管路24側)の燃料電池セルへの水素供給量の抑制を行うという思想とが含まれている。
【0081】
これらの思想は、必ずしも組み合わせて用いる必要は無く、それぞれの思想を個別に用いることとしてもよい。その場合には、水素入口側(管路24側)の燃料電池セル12への水素供給量の抑制を行うという思想を、ロータリーバルブ以外の、例えばスリット構造を有するプレートを用いて実現することとしてもよい。
【0082】
実施の形態2.
[実施の形態2の構成]
図7は、本発明の実施の形態2の燃料電池システムの構成を説明するための図である。図7は、本実施形態の燃料電池システムのカソード側の構成を示している。
【0083】
本実施形態のカソード側は、実施の形態1で述べたアノード側と、概ね類似の構造となっている。実施の形態1と実施の形態2では、アノード側の構造とカソード側の構造であるという点と、ロータリーバルブの形状、およびそのロータリーバルブの制御に関して、主に相違する。
【0084】
本実施形態は、燃料電池スタック210を備えている。燃料電池スタック210は、その内部に、実施の形態1と同様に、積層された複数の燃料電池セル212を備えている。燃料電池スタック210は、実施の形態1と同様に、スタックエンドプレート240および242を有している。燃料電池セル212は、実施の形態1の燃料電池セル12と同様の構造を有しており、燃料電池スタック210全体の構成は、実施の形態1の燃料電池スタック10とほぼ同様となっている。
【0085】
燃料電池スタック210の内部には、実施の形態1の構造と同様に、カソードガス供給内部マニホールド220、およびカソードガス排出内部マニホールド222がそれぞれ設けられている。カソードガス供給内部マニホールド220は、スタックエンドプレート240を貫通して、管路224に連通している。管路224は、図示しない空気供給系に連通している。また、カソードガス排出内部マニホールド222には、燃料電池セル212の端面に備えられるガス流出孔(実施の形態2では符号を付さない)から流出するガスが流れ込む。カソードガス排出内部マニホールド222も、同様に、管路226を介して、図示しない空気排出系に連通している。
【0086】
カソードガス供給内部マニホールド220内には、ロータリーバルブ250が備えられる。ロータリーバルブ250は、実施の形態1のロータリーバルブ50と同様に、カソードガス供給内部マニホールド220内に回転自在に設けられる。そして、それぞれの燃料電池セル212のガス流入孔214に流入する空気の量を、制御する機能を有している。
【0087】
ロータリーバルブ250は、シャフト260を介してモータ262に接続される。モータ262はCPU264と接続している。このような構造により、実施の形態1同様に、ロータリーバルブ250の回転角度が制御される。
【0088】
また、個々の燃料電池セル212には、発電電圧をそれぞれ検知(モニタリング)するための電圧センサ(図示せず)が備えられている。個々の燃料電池セル212の電圧測定値は、適宜、CPU64に収集される。
【0089】
(ロータリーバルブの構造)
図8は、実施の形態2におけるロータリーバルブ250を説明する図である。図8(A)は、ロータリーバルブ250の斜視図である。ロータリーバルブ250は、円筒の一部を切り欠いた形状である点では、実施の形態1のロータリーバルブ50に類似している。しかし、実施の形態1と異なり、中央側では大きな表面積を有し、両端では表面積が小さくなるように切り欠かれている。図8(B)および図8(C)は、図8(A)のロータリーバルブ250を、紙面左方および紙面右方から見た図にそれぞれ相当する。
【0090】
(ロータリーバルブ250によるガス流入孔214とカソードガス供給内部マニホールド220との連通の制限)
実施の形態2のカソードガス供給内部マニホールド220内部は、実施の形態1の図3および図4で述べたアノードガス供給内部マニホールド20と同様の構造となっている。即ち、ロータリーバルブ250は、ロータリーバルブ50と同様に、一列に並んだそれぞれのガス流入孔214上に配置される。
【0091】
ロータリーバルブ250は、実施の形態1とは異なり、中央側の表面積が大きくなっている。従って、燃料電池スタック210において、中央側に位置するガス流入孔214の連通制限面積が大きくなる。そして、両端に位置するガス流入孔214においては、連通制限面積が小さくなる。
【0092】
なお、図4で述べた実施の形態1の構造と同様に、実施の形態2においても、ロータリーバルブ250と燃料電池セル212の端面の形状を対応させる。これにより、ロータリーバルブ250の回転角度に応じて、いずれのガス流入孔214とカソードガス供給内部マニホールド220との連通も制限されない状態(すなわち、いずれのガス流入孔214も遮蔽されない状態であり、実施の形態2では、「運転状態」とも呼称する)と、前述したように中央側に位置するガス流入孔214とカソードガス供給内部マニホールド220との連通を優先的に制限する状態(実施の形態2では、「第三状態」とも呼称する)を実現することができる。
【0093】
[実施の形態2の動作]
以下、図7を用いて、実施の形態2の燃料電池システムの動作について説明する。燃料電池スタック210の中央側に位置する燃料電池セル212は、他の燃料電池セル212と隣接しているため、その放熱性が比較的低い。逆に、端側に位置する燃料電池セル212は、発熱がスタックエンドプレートを介して放出されやすいので、比較的、放熱性が高くなる。
【0094】
このため、端側に位置する燃料電池セル212は、発電中の温度が、比較的、低くなり易い。燃料電池システムの発電中に、燃料電池セル212の温度が低くなると、当該燃料電池セル212内部に多くの水が滞留する要因となる。これに起因して、発電中、端部側の燃料電池セル212内部のガス流路に水閉塞(水づまり)が生じ、燃料電池セル212内部のガス流通を阻害する場合がある。
【0095】
実施の形態2は、これに対処するために、端部側に位置する燃料電池セル212で水閉塞が生じた場合には、ロータリーバルブ250を閉状態とする(第三状態)。ロータリーバルブ250が閉状態の場合は、前述したように、燃料電池スタック210の中央側に位置するガス流入孔214の連通制限面積が大きく、端側に位置するガス流入孔214の連通制限面積が小さくなる。
【0096】
これにより、端側に位置するガス流入孔214に流入する空気の量を増加させることができる。これにより、端側の燃料電池セル212における水の持ち去り量を増加させ、当該燃料電池セル212における水閉塞を解消させることができる。
【0097】
上記のようなガス流入孔214の遮蔽のために、実施の形態2では、ロータリーバルブ250を用いている。このような構造によれば、実施の形態1と同様に、ロータリーバルブ250の回転角度を制御することでガス流入孔214の開閉を行い、ガス流入孔214の開閉制御を容易に行うことが可能となる。
【0098】
[実施の形態2の具体的処理]
以下、図9を用いて、実施の形態2の燃料電池システムが行う具体的処理を説明する。図9は、本実施形態の燃料電池システムが行う具体的処理を示すフローチャートであり、燃料電池システムの発電中に実行される。この処理は、例えば、燃料電池システムが車両に搭載された状態で実行することができる。
【0099】
実施の形態3では、燃料電池システムの発電中に、ロータリーバルブ250を開状態(「運転状態」)とする。発電中、バルブ開状態で、図9のルーチンが実行される。
【0100】
ルーチンが開始されると、先ず、燃料電池スタック210における発電電圧の状態がOKか否かが判別される(ステップ300)。具体的には、端側に位置する燃料電池セル212において、水閉塞が生じているか否かが判別される。実施の形態2では、次に述べる「カソード電圧判定処理」と「電圧偏差算出処理」により、判定を行うこととする。
【0101】
(「カソード電圧判定処理」)
実施の形態2の燃料電池システムは、燃料電池スタック210の発電状態を監視する「カソード電圧判定処理」を有している。燃料電池セル212において水閉塞が生じると、当該燃料電池セル212の電圧値が低くなりやすい。これを利用し、「カソード電圧判定処理」では、水閉塞の生じ易い端側の燃料電池セル212の電圧を、中央側の燃料電池セル212と比較することにより、水閉塞が発生しているか否かの判定を行う。
【0102】
この判定処理は、具体的には、次のような手順で進行する。先ず、CPU264が、電圧センサ(図示せず)により、燃料電池スタック210の端側に位置する燃料電池セル212の電圧値を取得する。更に、中央側に位置するいくつかの燃料電池セル212の電圧値を取得し、その平均値(以下、平均電圧値と称す)を算出する。
【0103】
次に、CPU264により、端側の電圧値と中央側の平均電圧値とが比較され、端側の電圧値が中央側の平均電圧値を所定値を超えて下回ったか否かが判別される。この所定値は、例えば実験などにより予め定めた、端側の燃料電池セルの水閉塞を検知しうる値とすることができる。端側の電圧値が中央側の平均電圧値を所定値下回っていない場合には、燃料電池スタック210の発電状態がOKであるとの判定が下される。
【0104】
端側の電圧値が中央側の平均電圧値を所定値以上下回った場合には、端側の燃料電池セル212において水閉塞が生じていると判別される。この場合には、燃料電池スタック210の発電状態がOKではないとの判定が下される。
【0105】
(「電圧偏差判定処理」)
実施の形態2の燃料電池システムは、燃料電池スタック210の発電状態を監視する「電圧偏差判定処理」を有している。燃料電池セル212で水閉塞が生じると、当該燃料電池セル212の電圧値の時間当たりの変動が大きくなりやすい。これを利用し、「電圧偏差判定処理」では、水閉塞が生じ易い端側の燃料電池セル212における時間当たりの電圧偏差を監視することにより、水閉塞が生じているか否かを判定する。
【0106】
この判定処理は、具体的には、次のような手順で進行する。先ず、燃料電池スタック210の端側に位置する燃料電池セル212の電圧値を所定時間取得し、得られた電圧値から時間当たりの電圧偏差を算出する。
【0107】
その後、算出された電圧偏差が、所定A/cm2時にσが所定電圧値を超えているか否かが判別される。判別に用いられるこれらの所定値は、例えば実験などにより予め定めた、端側の燃料電池セルの水閉塞を検知しうる電圧偏差値とすることができる。電圧偏差がこの判定値を超えているとの成立が認められない場合には、燃料電池スタック210の発電状態がOKであるとの判定が下される。成立が認められた場合には、端側の燃料電池セル212において水閉塞(水づまり)が生じていると判別され、燃料電池スタック210の発電状態がOKではないとの判定が下される。
【0108】
上記説明した「カソード電圧判定処理」と「電圧偏差算出処理」の両方が電圧OKとの判別をした場合には、発電電圧の状態がOKであると判断され、今回のルーチンが終了する。その後、通常の発電状態が継続される。
【0109】
「カソード電圧判定処理」と「電圧偏差判定処理」のうち少なくとも一方が、燃料電池スタック210において水閉塞が発生しているとの判別をした場合には、電圧がOKではないと判断される。
【0110】
電圧がOKでないとの判定がなされた場合には、バルブ閉の処理がなされる(ステップ310)。具体的には、ロータリーバルブ250が前述した「第三状態」とされる。これにより、端側に位置するガス流入孔214に流入する空気の量が増加し、端側に位置する燃料電池セル214の水閉塞に対して、回復措置がとられる。
【0111】
その後、燃料電池スタック210における発電電圧の状態が、水閉塞から回復したか否かが判別される(ステップ320)。具体的には、前述した「カソード電圧判定処理」と「電圧偏差判定処理」のうち、ステップ300で電圧がOKでないと判定されたものが、電圧OKの状態に回復したか否かが判別される。ステップ300において電圧OKでないと判定された状態が未だ回復していない場合には、引き続きバルブ閉状態とされ、端側に位置する燃料電池セル214に対して、水閉塞の回復措置がとられる。
【0112】
電圧OKの状態に回復した場合には、燃料電池セル214の水閉塞が解消されたと判断され、バルブ開状態へと戻される(ステップ330)。その後、通常の発電状態となる。
【0113】
以上の処理によれば、燃料電池システムの発電中において、燃料電池スタック210の端側の燃料電池セル212に水閉塞が生じたことが、確実に検知される。そして、ロータリーバルブ250によって、端側の燃料電池セル212に対する空気供給量の増加が容易に実現される。このように、実施の形態2によれば、燃料電池セルに生ずる水閉塞の回復を、確実に、かつ容易に行うことができる。
【0114】
また、前述した「カソード電圧判定処理」では、中央側のいくつかの燃料電池セル212の平均電圧値を求め、これを判定に利用した。しかし、本発明はこれに限られるものではない。平均電圧値のかわりに、中央側に位置する燃料電池セル212のうち所定の燃料電池セル212の電圧値を、代表値として利用してもよい。
【0115】
また、前述した実施の形態2の処理では、「カソード電圧判定処理」と「電圧偏差算出処理」の両方を用いて、端側の燃料電池セル212の水閉塞を判定した。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。必要に応じ、「カソード電圧判定処理」と「電圧偏差算出処理」のどちらか一方のみを用いて、水閉塞を判定してもよい。
【0116】
また、前述した実施の形態2の処理では、燃料電池セル212の電圧値を利用して、燃料電池セル212の水閉塞を判定した。しかし、本発明はこれに限られるものではなく、水閉塞を検知しうる種々の方法を、本発明に適用することができる。
【0117】
尚、上述した実施の形態2では、カソードガス供給内部マニホールド220が前記第5の発明の「カソードガス供給マニホールド」に、前述した「第三状態」が、前記第5の発明の「第三状態」に相当する。また、モータ262が、前記第5の発明の「動力機構」に、シャフト260が前記第5の発明の「伝達機構」にそれぞれ相当する。
【0118】
また、上述した実施の形態2の具体的処理では、ステップ300の処理が、前記第5の発明の「水閉塞判定手段」に相当し、ステップ300からステップ330までの一連の処理が、前記第5の発明の「カソードガス供給量制御手段」に相当する。また、実施の形態2では、燃料電池スタック210の燃料電池セル212の電圧を検知する電圧センサ(図示せず)が、前記第6の発明の「セル電圧検知手段」に相当する。
【0119】
[実施の形態2の変形例]
(第1変形例)
実施の形態2では、ロータリーバルブ250を、シャフト260を介して、モータ262に固定している。そして、シャフト260は、スタックエンドプレート242を貫通して設けられている。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。図10は、実施の形態2の第1変形例を説明するための図であり、図7におけるシャフト260の近傍位置に相当する図である。なお、図10では、ロータリーバルブ250の形状などを、簡略化して示している。
【0120】
実施の形態2の第1変形例は、実施の形態1の第1変形例と同様の思想に基づいている。即ち、シャフト構造を用いずに、マグネットによってロータリーバルブの回転を行う方法である。図10に示すように、スタックエンドプレート282に設けられた凹部286に、マグネット280が回転可能に収納される。マグネット280はロータリーバルブ250と接続している。
【0121】
スタックエンドプレート282を介して、マグネット280がマグネット284の回転に追随することにより、ロータリーバルブ250へと回転力が伝達される。以上の構造によれば、燃料電池スタック210の密閉性を保ちつつ、ロータリーバルブ250の回転制御を行うことができる。
【0122】
(第2変形例)
実施の形態1では、ロータリーバルブ250を、燃料電池スタック210の中央側に位置するガス流入孔214の連通制限面積が大きく、端側に位置するガス流入孔214の連通制限面積が小さくなるような形状とした。より好ましくは、ロータリーバルブ250の形状(表面積)は、端側に位置するガス流入孔214への空気量の配分比を考慮して、次のようにして定めることができる。
【0123】
ロータリーバルブ250のうちガス流入孔214を遮蔽する部分の面積をSとし、下記の式を満たすようにする。
S≧L×X×s
但し、
s:一つのガス流入孔214の開口面積
X:燃料電池セル212のうち水閉塞を起こし易い燃料電池セル212の枚数
L:燃料電池セル212一枚あたりに水閉塞が生じた場合に、その水閉塞を回復させるために必要な空気流入量の増加率
とする。
【0124】
上記の関係を満たすようにロータリーバルブ250の形状(表面積)を決定することにより、バルブ閉状態としたときに、水閉塞を回復させるために必要な空気流入量の増加率が実現される。これにより、燃料電池セル212の水閉塞を確実に解消しうるように、ガス流入孔214の連通の制限を行うことができる。
【0125】
実施の形態3.
[実施の形態3の構成]
図11は、実施の形態3の燃料電池システムの構成を説明するための図である。図11は、実施の形態3のカソード側の構成を示している。実施の形態3は、実施の形態2とほぼ同一の構成を有している。
【0126】
実施の形態3は、燃料電池スタック410を有している。燃料電池スタック410は、実施の形態2の燃料電池スタック210と同様の構造を有しており、CPU464が実施の形態2のCPU264と相違する。その他実施の形態2と同一の構造に関しては、実施の形態2と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0127】
CPU464は、実行されるルーチンが異なる点で、CPU264と相違する。また、CPU464は、その内部に、時間計測用のタイマ(図示せず)を含んでいる。CPU464は、実施の形態2のCPU264と同様に、ロータリーバルブ250の開閉を制御する。これにより、実施の形態2で述べた「運転状態」と「第三状態」とが実現される。
【0128】
[実施の形態3の動作]
実施の形態2で述べたように、燃料電池スタック410の端側に位置する燃料電池セル212では、内部に滞留する水の量が多くなりやすい。これに起因して、燃料電池システムの運転停止の要求があった際に、端側に位置する燃料電池セル212の保水量が多い状態になっている場合がある。この状態で燃料電池システムの運転停止処理がなされると、端側の燃料電池セル212の保水量が多い状態でシステムが停止してしまう。
【0129】
実施の形態3では、これを回避するために、燃料電池システムの運転停止時に、所定時間ロータリーバルブ250を閉状態(第三状態)とし、端側の燃料電池セル212に対して多くの空気を供給する。これにより、当該燃料電池セルにおける水の持ち去り量を増加させることができる。その結果、端側の燃料電池セル212の保水量が多い状態でシステムの運転が停止するのを、確実に避けることができる。
【0130】
[実施の形態3の具体的処理]
以下、図12を用いて、実施の形態3の燃料電池システムが行う具体的処理を説明する。図12は、本実施形態の燃料電池システムが行う具体的処理を示すフローチャートであり、燃料電池システムの運転停止時に実行される。この処理は、例えば、燃料電池システムが車両に搭載された状態で実行することができる。
【0131】
図12のルーチンでは、まず燃料電池スタック410の運転停止の要求があったか否かが判別される(ステップ500)。運転停止の要求がないと判別された場合には、引き続き燃料電池スタック410が運転状態とされる。
【0132】
運転停止の要求があったと判別された場合には、バルブ閉の処理がなされる(ステップ510)。具体的には、CPU464による制御が行われ、ロータリーバルブ250がガス流入孔214とカソードガス供給内部マニホールド220との連通を制限する状態(第三状態)とされる。この状態でカソードガス供給内部マニホールド220に空気が流入することにより、保水量の多い端側の燃料電池セル212に対して、より多くの空気が供給される。その結果、端側の燃料電池セル212から持ち去られる水の量を増加させることができる。
【0133】
その後、所定時間が経過したか否かが判別される(ステップ520)。具体的には、CPU464が有するタイマにより、上記ステップ510のバルブ閉処理後に経過した時間のカウントが行われる。その後、カウントされた時間が、予め定められた、端側の燃料電池セル212からの水の持ち去りが十分に行われる時間を経過したか否かが判別される。所定時間が経過していない場合には、引き続きバルブ閉の状態が保持される。
【0134】
所定時間が経過していると判別された場合には、端側の燃料電池セル212に対する空気供給が十分に行われたとの判断がなされ、バルブ開の処理がなされる(ステップ530)。その後、このルーチンが終了し、システムの停止処理が続行される。
【0135】
以上の処理によれば、燃料電池システムの運転停止時に、保水量の多い燃料電池セル212に対する水の持ち去り量を増加させることができる。これにより、当該燃料電池セル212内部に滞留する水を減少させることができ、端側の燃料電池セル212の保水量が多い状態でシステムの運転が停止するのを避けることができる。
【0136】
尚、上記の実施の形態3では、カソードガス供給内部マニホールド220が、前記第7の発明の「カソードガス供給マニホールド」に、前述した第三状態が、前記第7の発明の「第三状態」に、それぞれ相当する。また、モータ262が、前記第7の発明の「動力機構」に、シャフト260が、前記第7の発明の「伝達機構」に、それぞれ相当する。
【0137】
また、上記の実施の形態3の具体的処理では、ステップ500からステップ520の処理が前記第7の発明の「停止時ガス流入量制御手段」に、ステップ520においてCPU464のタイマが計測した時間が前記第7の発明の「所定時間」に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明の実施の形態1の燃料電池システムの構成を説明するための図である。
【図2】実施の形態1のロータリーバルブを説明するための図である。
【図3】実施の形態1のロータリーバルブとガス流入孔を説明する図である。
【図4】実施の形態1のロータリーバルブがガス流入孔とアノードガス供給内部マニホールドとの連通を制限する様子を説明するための図である。
【図5】実施の形態1の燃料電池システムで実行されるフローチャートである。
【図6】実施の形態1の変形例を説明するための図である。
【図7】本発明の実施の形態2の燃料電池システムの構成を説明するための図である。
【図8】実施の形態2のロータリーバルブを説明するための図である。
【図9】実施の形態2の燃料電池システムで実行されるフローチャートである。
【図10】実施の形態2の変形例を説明するための図である。
【図11】本発明の実施の形態3の燃料電池システムの構成を説明するための図である。
【図12】実施の形態3の燃料電池システムで実行されるフローチャートである。
【符号の説明】
【0139】
燃料電池スタック 10、210、410 燃料電池セル 12、212
ガス流入孔 14、214 ロータリーバルブ 50、250
アノードガス供給内部マニホールド 20
アノードガス排出内部マニホールド 22
カソードガス供給内部マニホールド 220
アノードガス排出内部マニホールド 222
シャフト 60、260 モータ 62、262
CPU 64、264、464
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池システムに係り、特に、車両への搭載に適した燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特開平9−312168号公報に開示されているように、スリットを形成したプレートを用いて、燃料電池セルへのガス供給量を制御する燃料電池システムが知られている。このプレートは、スリットの位置が個々の燃料電池セルのガス流入孔の位置に対応するように、燃料電池スタック上に配置される。このプレートを摺動させてスリットの位置を移動させることにより、ガス流入孔の開閉を行うことができる。
【0003】
燃料電池システムを運転する際には、その運転状況などに応じて、特定の燃料電池セルへのガス供給量を調整する場合がある。上記従来の技術では、前述したプレートを用いて、それらの燃料電池セルのガス流入孔をスリットによって適宜開閉し、ガス供給量を制御することとしている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−312168号公報
【特許文献2】特開2004−179061号公報
【特許文献3】特開平5−129032号公報
【特許文献4】特開昭63−291364号公報
【特許文献5】特開2004−342596号公報
【特許文献6】特開平9−161828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のシステムでは、燃料電池セルのガス流入孔の寸法に合わせて、プレートにスリットを形成する必要がある。また、ガス流入孔の開閉を行う際には、ガス流入孔とスリットの位置合わせを精度良く行う必要がある。ガス流入孔の幅が狭い場合には、それに伴ってスリットの形成やプレートの位置制御に高い精度が求められるようになり、ガス供給量の制御が難しくなる可能性がある。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、燃料電池セルへのガス供給量の制御を容易に行うことができる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、燃料電池システムであって、
ガス流入孔を有する燃料電池セルを積層してなる燃料電池スタックと、
前記ガス流入孔に連通し該ガス流入孔にガスを供給するガス供給マニホールドと、
前記ガス供給マニホールド内に回転自在に備えられ、その表面が少なくとも一部の前記燃料電池セルの前記ガス流入孔と該ガス供給マニホールドとの連通を制限する状態と該ガス流入孔を開放する状態とを実現し、該ガス流入孔と該ガス供給マニホールドとの連通を制限する連通制限面積が回転角度に応じて変化するロータリーバルブと、
を有する。
【0008】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記ガス供給マニホールドは、前記ガス流入孔に水素を供給し、その一端が水素タンクに連通するアノードガス供給マニホールドを含み、
前記燃料電池セルは前記ガス流入孔から流入した水素が流出するガス流出孔を有し、
前記ガス流出孔に連通し、その一端がアノードガス排出系に連通するアノードガス排出マニホールドを有し、
前記ロータリーバルブは、前記積層された前記燃料電池セルのうち、水素が流通し易い該燃料電池セルの前記ガス流入孔の前記連通制限面積が大きく、水素が流通し難い該燃料電池セルの該ガス流入孔の該連通制限面積が小さくなるように該ガス流入孔と前記アノードガス供給マニホールドとの連通を制限する第一状態と、いずれの該ガス流入孔と該アノードガス供給マニホールドとの連通も制限しない第二状態とを実現する形状を有し、
回転動力を発生する動力機構と、
前記ロータリーバルブに前記動力機構が発生させた回転動力を伝達する伝達機構と、
前記動力機構が発生させる回転動力を制御して前記ロータリーバルブの回転角度を調整し、前記燃料電池スタックの始動時に、前記ロータリーバルブを前記第一状態として所定時間保持した後、該ロータリーバルブを前記第二状態とするアノードガス供給量制御手段と、
を有する。
【0009】
また、第3の発明は、第2の発明において、
前記積層された前記燃料電池セルの前記ガス流入孔のそれぞれが一方向に並んで位置し、前記アノードガス供給マニホールドは該一方向に沿って伸びてそれぞれの該ガス流入孔に連通し、
前記ガス流出孔は前記一方向に並んだ前記ガス流出孔と略平行な方向に並んで位置し、前記アノードガス排出マニホールドは該略平行な方向に沿って伸びてそれぞれの該ガス流出孔に連通し、
前記アノードガス供給マニホールドの前記一端と前記アノードガス排出マニホールドの前記一端とがともに前記燃料電池スタックの一方の面側に位置する。
【0010】
また、第4の発明は、第2または第3の発明において、
前記燃料電池スタックの内部における水素分布が均等となったか否かを判定するアノード水素置換判定手段を有し、
前記所定時間は、前記燃料電池スタックの始動から前記アノード水素置換判定手段によって前記水素分布が均等となったとの前記判定がなされるまでの時間である。
【0011】
また、第5の発明は、第1乃至4の発明において、
前記ガス供給マニホールドは前記ガス流入孔に空気を供給するカソードガス供給マニホールドを含み、
前記ロータリーバルブは、前記燃料電池スタックの端側に位置する前記燃料電池セルの該ガス流入孔の前記連通制限面積が小さく、該燃料電池スタックの中央側に位置する前記燃料電池セルの該ガス流入孔の前記連通制限面積が大きくなるように該ガス流入孔と前記カソードガス供給マニホールドとの連通を制限する第三状態を実現する形状を有し、
前記燃料電池セルで水閉塞が生じているか否かを判定する水閉塞判定手段と、
回転動力を発生する動力機構と、
前記ロータリーバルブに前記動力機構が発生させた回転動力を伝達する伝達機構と、
前記動力機構が発生させる回転動力を制御して前記ロータリーバルブの回転角度を調整し、前記燃料電池スタックの発電中に前記水閉塞判定手段によって前記燃料電池セルで水閉塞が生じていると判定されたら該ロータリーバルブを前記第三状態とするカソードガス供給量制御手段と、
を有する。
【0012】
また、第6の発明は、第5の発明において、
前記水閉塞判定手段は、前記燃料電池スタックの少なくとも一部の前記燃料電池セルの電圧を検知するセル電圧検知手段を含み、前記セル電圧検知手段が検知した電圧値に基づいて前記水閉塞が生じているか否かを判定する。
【0013】
また、第7の発明は、第1乃至6の発明において、
前記ガス供給マニホールドは前記ガス流入孔に空気を供給するカソードガス供給マニホールドを含み、
前記ロータリーバルブは、前記燃料電池スタックの端側の前記燃料電池セルでは該ガス流入孔の前記連通制限面積が小さく、中央側に位置する前記燃料電池セルでは該ガス流入孔の前記連通制限面積が大きくなるように該ガス流入孔と前記カソードガス供給マニホールドとの連通を制限する第三状態を実現する形状を有し、
回転動力を発生する動力機構と、
前記ロータリーバルブに前記動力機構が発生させた回転動力を伝達する伝達機構と、
前記動力機構が発生させる回転動力を制御して前記ロータリーバルブの回転角度を調整し、前記燃料電池スタックの停止時に前記ロータリーバルブを前記第三状態として前記カソードガス供給マニホールドから空気が流入する状態を所定時間保持する停止時ガス流入量制御手段と、
を有する。
【0014】
また、第8の発明は、第2乃至7の発明において、
前記燃料電池スタックは、前記複数積層された前記燃料電池セルをその積層方向から挟むように取り付けられるスタックエンドプレートを含み、
前記伝達機構は、前記ロータリーバルブに備えられる第一の磁石と、前記動力機構に備えられる第二の磁石とを含み、該第一の磁石が前記スタックエンドプレートを挟んで該第二の磁石の回転に追随することで該ロータリーバルブに回転が伝達されることにより、該ロータリーバルブに該動力機構が発生させた回転動力を伝達する。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、燃料電池セルのガス流入孔とガス供給マニホールドとの間の連通状態を制限するロータリーバルブが、ガス供給マニホールド内に備えられる。ロータリーバルブをガス供給マニホールド内で回転させることにより、その回転角度に応じて、ロータリーバルブの表面がガス流入孔とガス供給マニホールドとの間の連通を制限する面積(連通制限面積)を変化させることができる。これにより、ガス流入孔に対するガス供給量の制御を容易に実現することができる。
【0016】
また、第2の発明によれば、第1の発明において、ガス供給マニホールドが、ガス流入孔に水素を供給するアノードガス供給マニホールドを含む。そして、燃料電池システムの始動時に、始動時に水素が流れ込み易い燃料電池セルのガス流入孔の連通制限面積が大きく、始動時に水素が流れ込み難い燃料電池セルのガス流入孔の連通制限面積が小さくなるように、ガス流入孔とアノードガス供給マニホールドとの連通が制限される。これにより、燃料電池スタックの始動時に、それぞれの燃料電池セルにおける水素置換の進行が不均一となるのを緩和することができる。
【0017】
また、第3の発明によれば、第2の発明において、燃料電池スタックの一方の面に近い燃料電池セルではガスが流れ込み易く、当該一方の面から遠い燃料電池セルではガスが流れ込み難くなる。これに対応させて、ロータリーバルブの表面積を当該一方の面側で相対的に大きくし、その開閉制御を行うことによって不均一な水素置換の進行を緩和する効果を得ることができる。このような構成によれば、ロータリーバルブの形状を簡易なものとすることができる。
【0018】
また、第4の発明によれば、第3の発明において、燃料電池スタック内の水素分布が等しくなったことが検知されるまで、ガス流入孔とアノードガス供給マニホールドとの連通が制限される。このようにすることで、それぞれの燃料電池セルにおける水素置換の進行が不均一となるのを確実に避けることができる。
【0019】
また、第5の発明によれば、第1乃至第4のいずれかの発明において、ガス供給マニホールドが、ガス流入孔に空気を供給するカソードガス供給マニホールドを含む。燃料電池システムの運転中に、燃料電池スタック内の燃料電池セルに水閉塞が生じたと判定されたら、端側に位置する燃料電池セルのガス流入孔の連通制限面積が小さく、中央側に位置する燃料電池セルのガス流入孔の連通制限面積が大きくなるように、ガス流入孔とアノードガス供給マニホールドとの連通を制限する。これにより、端側に位置する燃料電池セルに対する空気供給量を増加させ、燃料電池セルの水閉塞を解消するための回復措置を行うことができる。
【0020】
また、第6の発明によれば、第5の発明において、燃料電池システムの運転中に、燃料電池セルの出力電圧に基づいて水閉塞が発生していることを判定する。これにより、燃料電池セルの水閉塞を解消するための回復措置を確実に行うことができる。
【0021】
また、第7の発明によれば、第1乃至第6のいずれかの発明において、燃料電池システムの停止時に、燃料電池スタックの端側の燃料電池セルに対して多くの空気を供給する状態を、所定時間保持する。これにより、端側の燃料電池セルの保水量が多い状態で燃料電池システムが停止されるのを、確実に避けることができる。
【0022】
また、第8の発明によれば、第2乃至第7のいずれかの発明において、燃料電池スタックの端に位置するスタックエンドプレートを挟むように備えられる磁石によって、ロータリーバルブに回転力を伝達する。このようにすることで、スタックエンドプレートを貫通する例えばシャフトなどの構造物を利用することなく、ロータリーバルブを回転させることができる。その結果、燃料電池スタックの密閉性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
図1は、本発明の実施の形態1の燃料電池システムの構成を説明するための図である。図1は、本実施形態の燃料電池システムのアノード側の構成を示している。
【0024】
本実施形態は、燃料電池スタック10を備えている。燃料電池スタック10は、その内部に、複数積層された燃料電池セル12を備えている。燃料電池スタック10の端側(紙面左右側)には、積層された燃料電池セル12を挟み込むように、スタックエンドプレート40および42が備えられる。
【0025】
燃料電池スタック10内部において、燃料電池セル12の紙面上方側には、アノードガス供給内部マニホールド20が設けられている。アノードガス供給内部マニホールド20は、スタックエンドプレート40を貫通して、紙面左方側で管路24に連通する。管路24は、図示しない水素タンクに連通している。水素タンクから供給される水素が、管路24を通ってアノードガス供給内部マニホールド20へと流入する。
【0026】
アノードガス供給内部マニホールド20には、それぞれの燃料電池セル12の端面が露出している。露出しているそれぞれの燃料電池セル12の端面には、それぞれガス流入孔14(燃料電池セル12における水素の入口)が設けられている。ガス流入孔14は、燃料電池セル12内部のアノードに連通している。水素タンクからアノードガス供給内部マニホールド20に至った水素は、ガス流入孔14を通って、燃料電池セル12のアノードへと流入する。その後、この水素はアノードで消費され、燃料電池セル12で生ずる発電反応に寄与することとなる。
【0027】
アノードガス供給内部マニホールド20の内部には、それぞれのガス流入孔14への水素の流入量を制御するために、ロータリーバルブ50が備えられている。ロータリーバルブ50は、円筒の一部を切り欠いた形状を有しており、紙面左右方向に向かう直線を回転軸として回転可能な状態とされる。
【0028】
ロータリーバルブ50の紙面右方端には、シャフト60が取り付けられている。シャフト60は、スタックエンドプレート42を貫通して、外部のモータ62に連通している。モータ62が回転することにより、その回転がシャフト60によって伝達され、ロータリーバルブ50が回転することとなる。モータ62の回転量は、CPU64によって制御される。すなわち、CPU64によって、ロータリーバルブ50の回転角度が制御されることとなる。
【0029】
ロータリーバルブ50の回転によって、ロータリーバルブ50がガス流入孔14を遮蔽することによりガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通が制限されている状態、若しくは、いずれのガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通も制限されない状態(即ち、全てのガス流入孔14が開放された状態)が実現される。
【0030】
そして、その回転角度に応じて、ロータリーバルブ50がガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20と連通を制限する面積(実施の形態1ではロータリーバルブ50がガス流入孔14を遮蔽する面積であり、以下の説明では、この面積を「連通制限面積」とも呼称する)が変化するようになっている。連通制限面積の増減に伴い、ガス流入孔14の開度が変化してガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との間の連通制限量が変化し、その結果、ガス流入孔14への水素の流入量も変化する。
【0031】
燃料電池セル12の紙面下方側には、アノードガス排出内部マニホールド22が設けられている。アノードガス排出内部マニホールド22に露出するそれぞれの燃料電池セル12の端面には、ガス流出孔16(燃料電池セル12における水素の出口)がそれぞれ設けられている。ガス流出孔16は、ガス流入孔14と同じく、燃料電池セル12のアノードに連通している。ガス流入孔14から流入した水素は燃料電池セル12面内(アノード)を流通する過程で消費され、消費されなかった水素を含むガスがガス流出孔16から流出する。その後、燃料電池セル12内部のガスは、ガス流出孔16からアノードガス排出内部マニホールド22へと流入し、その後、管路26を介して、図示しないアノードガス排出系へと流れる。
【0032】
個々の燃料電池セル12には、発電電圧をそれぞれ検知(モニタリング)するための電圧センサ(図示せず)が備えられている。個々の燃料電池セル12の電圧測定値は、適宜、CPU64に収集される。CPU64は、電圧測定値などの情報に基づき、ロータリーバルブ50の回転角度を制御する機能を有する。
【0033】
(ロータリーバルブの構造)
図2は、実施の形態1におけるロータリーバルブ50を説明する図である。図2(A)は、ロータリーバルブ50の斜視図である。前述したように、ロータリーバルブ50は、円筒の一部を切り欠いた形状を有している。図2に示すように、紙面左方端側から紙面右方端に近づくにつれ、徐々に切り欠かれる面積が大きくなっている。
【0034】
その結果、紙面左方側ではロータリーバルブ50の表面積が大きくなり、逆に、紙面右方側ほど表面積が小さくなっている。図2(B)および図2(C)は、図2(A)のロータリーバルブ50を、紙面左方および紙面右方から見た図にそれぞれ相当する。
【0035】
(ロータリーバルブ50によるガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通の制限)
以下、図3乃至図4を用いて、ロータリーバルブ50によるガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通が制限される際の様子について説明する。
【0036】
図3は、図1におけるアノードガス供給内部マニホールド20の内部を、紙面上方から(矢印Iの方向に)見た様子を示す図である。燃料電池セル12にそれぞれ設けられたガス流入孔14が、紙面左右方向に並んでいる。そして、ガス流入孔14に対して、紙面の手前側に、ロータリーバルブ50が位置している。
【0037】
前述したように、ロータリーバルブ50は、紙面左方端でその表面積が大きく、紙面右方端へいくほどその表面積が小さくなっている。このため、図3に示すように、紙面左方側に位置するガス流入孔14には、ロータリーバルブ50のうち表面積が大きい部分が対応することとなる。また、紙面右方側のガス流入孔14に対しては、ロータリーバルブ50の表面積が小さい部分が対応することとなる。
【0038】
そのため、ロータリーバルブ50がガス流入孔14を遮蔽する際には、紙面左方側のガス流入孔14では、ロータリーバルブ50によってガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20と連通が制限される面積、すなわち前述した連通制限面積が大きくなり、連通が大きく制限されることとなる。そして、紙面右方側のガス流入孔14では、連通の制限が少なくなるか、或いはほとんど連通が制限されない状態となる。
【0039】
図4は、ロータリーバルブ50が一部のガス流入孔14を遮蔽している状態で、図1のアノードガス供給内部マニホールド20内部を、紙面右方から(矢印IIの方向に)見た様子を示す図である。
【0040】
アノードガス供給内部マニホールド20に露出する燃料電池セル12の端面は、図4に示すように、ロータリーバルブ50の表面に対応する形状となっている。具体的には、ガス流入孔14が位置する燃料電池セル12の端面が、ロータリーバルブ50と略同一の曲率半径を有する半円筒形上の曲面となっている。このようにすることで、ロータリーバルブ50がガス流入孔14を遮蔽する際には、その表面でガス流入孔14が確実に遮蔽され、ガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通が遮断されることとなる。
【0041】
ロータリーバルブ50の表面は、回転に伴い、ガス流入孔14上をなぞるように摺動する。回転角度を制御することにより、ロータリーバルブ50の表面とガス流入孔14の相対位置を変化させることができる。これにより、ガス流入孔14の開閉を容易に行うことができる。
【0042】
図4に示した状態では、ロータリーバルブ50の表面が、それぞれのガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通の制限している状態(すなわち、ガス流入孔14を遮蔽している状態であり、実施の形態1では、「第一状態」とも呼称する)となる。
【0043】
一方、図4の状態から、紙面貫通方向を回転軸としてロータリーバルブ50を180度回転させることにより、いずれのガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通も制限されない状態(すなわち、いずれのガス流入孔14も遮蔽されない状態であり、実施の形態1では、「第二状態」とも呼称する)が実現される。このような回転制御を行うことにより、ロータリーバルブ50の表面がガス流入孔14を遮蔽する面積を、容易に変化させることができる。
【0044】
[実施の形態1の動作]
以下、図1乃至図4を参照して、実施の形態1の燃料電池システムの動作について説明する。実施の形態1の燃料電池システムにおいては、その始動時に、燃料電池スタック10内部に窒素が充満している場合を想定している。
【0045】
燃料電池システムが始動すると、管路24から燃料電池スタック10へと、水素が供給される。それに伴い、燃料電池スタック10内で窒素が存在していた場所が、徐々に水素に置換される。窒素から水素への置換(以下、水素置換と呼称する)は、アノードガス供給内部マニホールド20内を、管路24側(以下、水素入口側と呼称する)から紙面右方向に向かって徐々に進行する。
【0046】
水素の置換がガス流入孔14の位置まで進み、当該位置のガス流入孔14が開放されていると、このガス流入孔14から燃料電池セル12の内部へ水素が流入し始める。水素の流入により、燃料電池セル12内部でも、紙面下方側に向かって徐々に水素置換が進む。
【0047】
水素置換は水素入口側から徐々に進行するため、全てのガス流入孔14が等しく開放された状態では、紙面左方側の燃料電池セル12から順に水素置換が始まる。このような場合、紙面左方側(水素入口側)の燃料電池セル12では、紙面右方側の燃料電池セル12よりも早く、その内部に水素が行き渡る(水素置換が完了する)こととなる。
【0048】
水素は、窒素に比較して、より粘性が低く、流れ易いという性質を有している。これに起因して、紙面左方側の燃料電池セル12の水素置換が完了し、一旦水素の流通経路が形成されると、当該位置に多くの水素が流れ、他の位置の水素置換が進みにくくなる。その結果、燃料電池スタック10全体に水素を行き渡らせるまでに、時間を要することとなる。また、水素置換が進みにくい燃料電池セル12では、当該燃料電池セル12内部においても水素分布が不均一な状態が長時間続き、好ましくない。
【0049】
実施の形態1では、このような事態に対処するために、燃料電池システムの始動時に、水素置換が進み易い燃料電池セル12に対しては水素の供給を抑制する。具体的には、燃料電池システムの始動時に、ロータリーバルブ50を第一状態とする。
【0050】
前述したように、ロータリーバルブ50は、水素入口側(管路24側)のガス流入孔14に対する連通制限面積が、他の位置のガス流通孔14よりも相対的に大きくなるような形状を有している。このため、ロータリーバルブ50によって、水素置換が進み易い燃料電池セル12のガス流入孔14の連通制限面積が大きく、逆に、水素置換が進みにくい燃料電池セル12のガス流入孔14の連通制限面積が小さくなるように、ガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通の制限が行われる。
【0051】
その結果、燃料電池システムの始動時に、水素入口側(紙面左方側)のガス流入孔14への水素流入が抑制され、紙面右方側のガス流入孔14への水素流入が促進される。以上の動作によれば、燃料電池スタック10内の水素置換が不均一になるのを緩和し、水素置換の進行をより均一に進めることができる。
【0052】
このようなガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通の制限のために、実施の形態1では、ロータリーバルブ50を用いている。図4を用いて述べたように、ロータリーバルブ50の表面は、ガス流入孔14が設けられた燃料電池セル12の端面に、ほぼ一致する形状となっている。そして、その回転により、ロータリーバルブ50の表面が、ガス流入孔14上をなぞるように摺動する。このような構造によれば、ロータリーバルブ50の回転角度を制御することでガス流入孔14の開閉を行うことができ、ガス流入孔14の開閉制御を容易に行うことができる。
【0053】
[実施の形態1の具体的処理]
以下、図5を用いて、実施の形態1の燃料電池システムが行う具体的処理を説明する。図5は、本実施形態の燃料電池システムが行う具体的処理を示すフローチャートであり、燃料電池システムの始動時に実行される。この処理は、例えば、燃料電池システムが車両に搭載された状態で実行することができる。
【0054】
図5に示すルーチンでは、先ず、始動時に、バルブ閉状態とされる(ステップ100)。具体的には、ロータリーバルブ50によってガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通が制限される状態となる。これにより、水素入口側(管路24側)に位置するガス流入孔14では水素流入が抑制される状態となる。その後、本実施の形態では、水素が、管路24を介して燃料電池スタック10へと供給される。
【0055】
管路24を介してガス供給内部マニホールド20に流入した水素は、それぞれのガス流入孔14へと流入する。実施の形態1では、ロータリーバルブ50の遮蔽によって、水素入口側のガス流入孔14に対しては水素の流入量が少なく、逆に、ガス入口側から離れた位置のガス流入孔14ほど、そのガス流入量が多くなる。これにより、燃料電池スタック10内の水素置換が不均一になることが緩和され、水素置換の進行がより均一に進行することとなる。
【0056】
続いて、燃料電池スタック10の発電電圧の状態がOKか否かが判別される(ステップ110)。先ず、スタックエンドプレート42近傍に位置する燃料電池セル12の電圧値が、当該位置の燃料電池セル12に設けられた電圧センサにより検知される。この電圧値が、CPU64によって取得される。また、燃料電池スタック10の中央側に位置する燃料電池セル12の電圧値も、当該中央側の燃料電池セル12に設けられた電圧センサにより検知され、CPU64に取得される。
【0057】
CPU64は、取得した電圧値が同じであるか否か(若しくは、許容範囲内であるか否か)を判別する。比較した電圧値が同等でないと判別された場合には、燃料電池スタック10内の水素分布が均等ではなく、水素が未だ十分に行き渡っていないと判断される。従って、ロータリーバルブ50の閉状態を継続する。
【0058】
比較した電圧値が同等になったと判別された場合には、燃料電池スタック10内の水素分布が均等となり、水素が概ね行き渡ったと判断される。その後、ロータリーバルブ50が開状態とされ(ステップ120)、今回のルーチンが終了する。これにより、いずれのガス流入孔14も遮蔽されない状態となり、通常運転へ移行することとなる。
【0059】
以上の処理によれば、燃料電池システムの始動時に、ロータリーバルブ50によって、燃料電池スタック10内部の水素置換が均等に進むように、それぞれの燃料電池セル12に対するガス供給量が制御される。そして、燃料電池スタック10内の水素置換が完了しているか否かが、電圧センサの検知およびCPU64の判別(ステップ110)により確実に判断される。これにより、それぞれの燃料電池セルへのガス供給量制御を、確実に、かつ容易に実現することができる。
【0060】
尚、上述した実施の形態1では、ガス流入孔14が前記第1の発明における「ガス流入孔」に、燃料電池セル12が前記第1の発明における「燃料電池セル」に、燃料電池スタック10が前記第1の発明における「燃料電池スタック」に、それぞれ相当する。
【0061】
また、ガス供給内部マニホールド20が前記第1の発明における「ガス供給マニホールド」に、ロータリーバルブ50が前記第1の発明における「ロータリーバルブ」に、ロータリーバルブ50の表面がガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通を制限する面積(ロータリーバルブ50の表面がガス流入孔14を遮蔽する面積)が前記第1の発明における「連通制限面積」に、それぞれ相当する。
【0062】
また、上述した実施の形態1では、アノードガス供給内部マニホールド20が、前記第2の発明における「アノードガス供給マニホールド」に、ガス流出孔16が、前記第2の発明における「ガス流出孔」に、アノードガス排出内部マニホールド22が、前記第2の発明における「アノードガス排出マニホールド」に、それぞれ相当する。
【0063】
また、ロータリーバルブ50が、紙面左方側のガス流入孔14では連通制限面積が大きく、紙面右方のガス流入孔14では連通制限面積が小さくなるようにガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通を制限する状態が、前記第2の発明における「第一状態」に相当する。また、ロータリーバルブ50が、いずれのガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通も制限しない状態が、前記第2の発明における「第二状態」に相当する。また、モータ62が、前記第2の発明の「動力機構」に、シャフト60が、前記第2の発明の「伝達機構」に、それぞれ相当する。
【0064】
また、実施の形態1の具体的処理では、ステップ110において、燃料電池スタック10内部に水素が行き渡ったと判別されるまでに経過する時間が、前記第2の発明における「所定時間」に相当する。また、ステップ100から120の処理が、前記第2の発明における「アノードガス供給量制御手段」に相当する。
【0065】
また、上述した実施の形態1では、燃料電池スタック10のスタックエンドプレート40側の面が、前記第3の発明における「燃料電池スタックの一方の面」に相当する。また、上述した実施の形態1では、燃料電池スタック10の中央側の燃料電池セル12に設けられる電圧センサ、燃料電池スタック10の端側の燃料電池セル12に設けられる電圧センサ、およびステップ110の処理が、前記第4の発明における「アノード水素置換判定手段」に相当する。
【0066】
なお、上述した実施の形態1では、ロータリーバルブ50の表面が、ガス流入孔14を確実に遮蔽し、ガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通が遮断される構成とした。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。すなわち、ロータリーバルブ50が介在することによりガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通が制限され、ガス流入孔14を介して燃料電池セル12に供給される水素量が調整されうる構造であればよい。従って、ロータリーバルブの形状と燃料電池セルの端面の形状も、図4に示したような、両者がほぼ完全に対応するような形状に限られるものではない。
【0067】
[実施の形態1の変形例]
(第1変形例)
実施の形態1では、ロータリーバルブ50とモータ62とを接続するために、スタックエンドプレート42を貫通させて、シャフト60を設けた。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。図6は、実施の形態1の第1変形例を説明するための図であり、図1におけるシャフト60の近傍位置に相当する図である。なお、図6では、ロータリーバルブ50の形状などを、簡略化して示している。
【0068】
第1変形例では、図6のように、ロータリーバルブ50の一端にマグネット80を取り付ける。マグネット80を回転自在に収納しうるように、スタックエンドプレート82に凹部86を設ける。スタックエンドプレート82の凹部86近傍は、樹脂若しくはセラミックを用いて形成することとする。
【0069】
スタックエンドプレート82を介してマグネット80に対向する位置には、磁力によってその動きが追随しうる距離を保って、マグネット84が備えられる。マグネット84は、モータ62と接続されている。モータ62を駆動させることにより、回転がマグネット84からマグネット80へと伝達される。
【0070】
その結果、スタックエンドプレート82に対して貫通孔などを設けることなく、ロータリーバルブ50の回転制御を行うことが可能となる。これにより、燃料電池スタック10の密閉性を高めることができる。なお、スタックエンドプレート82はマグネットの磁力が伝達されうる構造であればよく、凹部86近傍を、例えば薄板の金属を用いて形成することも可能である。
【0071】
なお、第1変形例では、マグネット80とマグネット84とが、前記第8の発明の伝達機構に含まれ、マグネット80が、前記第8の発明の「第一の磁石」に、マグネット84が、前記第8の発明の「第二の磁石」に、それぞれ相当する。また、スタックエンドプレート82が、前記第8の発明の「スタックエンドプレート」に、モータ62が、前記第8の発明の「動力機構」に相当する。
【0072】
(第2変形例)
実施の形態1では、燃料電池スタック10内部での水素置換の進行を、燃料電池セル12に設けた電圧センサによって、その発電電圧を検知することにより行った。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。発電電圧の測定を行う替わりに、水素センサを用いて、燃料電池スタック10内部での水素置換の進行を検知することとしてもよい。
【0073】
前述したとおり、燃料電池スタック10において、水素入口(管路24)側から遠い燃料電池セル12ほど、水素置換が進みにくい。第2変形例では、これに対応するように、燃料電池スタック10における、スタックエンドプレート42側に位置する燃料電池セル12のガス流出孔16付近(アノードガス排出内部マニホールド22内)に、水素センサを設けることとする。
【0074】
このような構成で、前述した具体的処理のステップ110において、水素センサが検知を行うまでロータリーバルブ50を閉状態とし、検知がなされたらロータリーバルブ50を開状態とする。これにより、スタックエンドプレート42側に位置する燃料電池セル12の水素置換が完了したことを確実に検知し、それぞれの燃料電池セル12へのガス供給量を制御することができる。
【0075】
(第3変形例)
実施の形態1では、ロータリーバルブ50を、紙面左方のガス流入孔14側では表面積が大きくなり、紙面右方のガス流入孔14側では表面積が小さくなるような形状とした。ロータリーバルブ50の形状(表面積)は、より好ましくは、次のようにして定めることができる。
【0076】
前述したように、実施の形態1の燃料電池システムの始動時には、水素入口側の燃料電池セル12では水素置換が進み易く、水素入口から遠い燃料電池セル12では水素置換が進みにくい。このような水素置換の進み易さに対応させて、水素入口側の燃料電池セル12および水素入口から遠い燃料電池セル12にそれぞれ供給すべき水素量の比(配分比)を算出する。
【0077】
この配分比に基づいて、ガス流入孔14を遮蔽する際の連通制限面積の比(各々のガス流入孔14の遮蔽率)に対応するように、ロータリーバルブ50の形状を定めることができる。これによれば、それぞれのガス流入孔14に対する水素の分配がより好ましいものとなり、燃料電池スタック10の水素置換を均一に進める効果が、より高いものとなる。
【0078】
(第4変形例)
また、上述した実施の形態1では、ステップ110において燃料電池スタック10内部に水素が行き渡ったと判別されるまでの時間、ロータリーバルブ50を閉状態とした。しかし、本発明はこれに限られるものではない。例えば、予め実験などにより燃料電池スタック10内部に水素が行き渡るまでの時間を定め、この時間に基づいてロータリーバルブ50の開閉制御を行うこととしてもよい。
【0079】
また、ロータリーバルブ50を用いたガス流入孔14とアノードガス供給内部マニホールド20との連通の制限は、必ずしも、完全に水素が行き渡るまでの時間以上行わなくともよい。燃料電池システムの始動時に、一定時間、水素入口側の燃料電池セル12への水素供給量を抑制することにより、水素置換の不均一を緩和する効果を得ることができる。
【0080】
なお、上述した実施の形態1には、ロータリーバルブを用いて燃料電池スタックにおける水素供給制御を容易に行うという思想と、燃料電池システムの始動時に水素入口側(管路24側)の燃料電池セルへの水素供給量の抑制を行うという思想とが含まれている。
【0081】
これらの思想は、必ずしも組み合わせて用いる必要は無く、それぞれの思想を個別に用いることとしてもよい。その場合には、水素入口側(管路24側)の燃料電池セル12への水素供給量の抑制を行うという思想を、ロータリーバルブ以外の、例えばスリット構造を有するプレートを用いて実現することとしてもよい。
【0082】
実施の形態2.
[実施の形態2の構成]
図7は、本発明の実施の形態2の燃料電池システムの構成を説明するための図である。図7は、本実施形態の燃料電池システムのカソード側の構成を示している。
【0083】
本実施形態のカソード側は、実施の形態1で述べたアノード側と、概ね類似の構造となっている。実施の形態1と実施の形態2では、アノード側の構造とカソード側の構造であるという点と、ロータリーバルブの形状、およびそのロータリーバルブの制御に関して、主に相違する。
【0084】
本実施形態は、燃料電池スタック210を備えている。燃料電池スタック210は、その内部に、実施の形態1と同様に、積層された複数の燃料電池セル212を備えている。燃料電池スタック210は、実施の形態1と同様に、スタックエンドプレート240および242を有している。燃料電池セル212は、実施の形態1の燃料電池セル12と同様の構造を有しており、燃料電池スタック210全体の構成は、実施の形態1の燃料電池スタック10とほぼ同様となっている。
【0085】
燃料電池スタック210の内部には、実施の形態1の構造と同様に、カソードガス供給内部マニホールド220、およびカソードガス排出内部マニホールド222がそれぞれ設けられている。カソードガス供給内部マニホールド220は、スタックエンドプレート240を貫通して、管路224に連通している。管路224は、図示しない空気供給系に連通している。また、カソードガス排出内部マニホールド222には、燃料電池セル212の端面に備えられるガス流出孔(実施の形態2では符号を付さない)から流出するガスが流れ込む。カソードガス排出内部マニホールド222も、同様に、管路226を介して、図示しない空気排出系に連通している。
【0086】
カソードガス供給内部マニホールド220内には、ロータリーバルブ250が備えられる。ロータリーバルブ250は、実施の形態1のロータリーバルブ50と同様に、カソードガス供給内部マニホールド220内に回転自在に設けられる。そして、それぞれの燃料電池セル212のガス流入孔214に流入する空気の量を、制御する機能を有している。
【0087】
ロータリーバルブ250は、シャフト260を介してモータ262に接続される。モータ262はCPU264と接続している。このような構造により、実施の形態1同様に、ロータリーバルブ250の回転角度が制御される。
【0088】
また、個々の燃料電池セル212には、発電電圧をそれぞれ検知(モニタリング)するための電圧センサ(図示せず)が備えられている。個々の燃料電池セル212の電圧測定値は、適宜、CPU64に収集される。
【0089】
(ロータリーバルブの構造)
図8は、実施の形態2におけるロータリーバルブ250を説明する図である。図8(A)は、ロータリーバルブ250の斜視図である。ロータリーバルブ250は、円筒の一部を切り欠いた形状である点では、実施の形態1のロータリーバルブ50に類似している。しかし、実施の形態1と異なり、中央側では大きな表面積を有し、両端では表面積が小さくなるように切り欠かれている。図8(B)および図8(C)は、図8(A)のロータリーバルブ250を、紙面左方および紙面右方から見た図にそれぞれ相当する。
【0090】
(ロータリーバルブ250によるガス流入孔214とカソードガス供給内部マニホールド220との連通の制限)
実施の形態2のカソードガス供給内部マニホールド220内部は、実施の形態1の図3および図4で述べたアノードガス供給内部マニホールド20と同様の構造となっている。即ち、ロータリーバルブ250は、ロータリーバルブ50と同様に、一列に並んだそれぞれのガス流入孔214上に配置される。
【0091】
ロータリーバルブ250は、実施の形態1とは異なり、中央側の表面積が大きくなっている。従って、燃料電池スタック210において、中央側に位置するガス流入孔214の連通制限面積が大きくなる。そして、両端に位置するガス流入孔214においては、連通制限面積が小さくなる。
【0092】
なお、図4で述べた実施の形態1の構造と同様に、実施の形態2においても、ロータリーバルブ250と燃料電池セル212の端面の形状を対応させる。これにより、ロータリーバルブ250の回転角度に応じて、いずれのガス流入孔214とカソードガス供給内部マニホールド220との連通も制限されない状態(すなわち、いずれのガス流入孔214も遮蔽されない状態であり、実施の形態2では、「運転状態」とも呼称する)と、前述したように中央側に位置するガス流入孔214とカソードガス供給内部マニホールド220との連通を優先的に制限する状態(実施の形態2では、「第三状態」とも呼称する)を実現することができる。
【0093】
[実施の形態2の動作]
以下、図7を用いて、実施の形態2の燃料電池システムの動作について説明する。燃料電池スタック210の中央側に位置する燃料電池セル212は、他の燃料電池セル212と隣接しているため、その放熱性が比較的低い。逆に、端側に位置する燃料電池セル212は、発熱がスタックエンドプレートを介して放出されやすいので、比較的、放熱性が高くなる。
【0094】
このため、端側に位置する燃料電池セル212は、発電中の温度が、比較的、低くなり易い。燃料電池システムの発電中に、燃料電池セル212の温度が低くなると、当該燃料電池セル212内部に多くの水が滞留する要因となる。これに起因して、発電中、端部側の燃料電池セル212内部のガス流路に水閉塞(水づまり)が生じ、燃料電池セル212内部のガス流通を阻害する場合がある。
【0095】
実施の形態2は、これに対処するために、端部側に位置する燃料電池セル212で水閉塞が生じた場合には、ロータリーバルブ250を閉状態とする(第三状態)。ロータリーバルブ250が閉状態の場合は、前述したように、燃料電池スタック210の中央側に位置するガス流入孔214の連通制限面積が大きく、端側に位置するガス流入孔214の連通制限面積が小さくなる。
【0096】
これにより、端側に位置するガス流入孔214に流入する空気の量を増加させることができる。これにより、端側の燃料電池セル212における水の持ち去り量を増加させ、当該燃料電池セル212における水閉塞を解消させることができる。
【0097】
上記のようなガス流入孔214の遮蔽のために、実施の形態2では、ロータリーバルブ250を用いている。このような構造によれば、実施の形態1と同様に、ロータリーバルブ250の回転角度を制御することでガス流入孔214の開閉を行い、ガス流入孔214の開閉制御を容易に行うことが可能となる。
【0098】
[実施の形態2の具体的処理]
以下、図9を用いて、実施の形態2の燃料電池システムが行う具体的処理を説明する。図9は、本実施形態の燃料電池システムが行う具体的処理を示すフローチャートであり、燃料電池システムの発電中に実行される。この処理は、例えば、燃料電池システムが車両に搭載された状態で実行することができる。
【0099】
実施の形態3では、燃料電池システムの発電中に、ロータリーバルブ250を開状態(「運転状態」)とする。発電中、バルブ開状態で、図9のルーチンが実行される。
【0100】
ルーチンが開始されると、先ず、燃料電池スタック210における発電電圧の状態がOKか否かが判別される(ステップ300)。具体的には、端側に位置する燃料電池セル212において、水閉塞が生じているか否かが判別される。実施の形態2では、次に述べる「カソード電圧判定処理」と「電圧偏差算出処理」により、判定を行うこととする。
【0101】
(「カソード電圧判定処理」)
実施の形態2の燃料電池システムは、燃料電池スタック210の発電状態を監視する「カソード電圧判定処理」を有している。燃料電池セル212において水閉塞が生じると、当該燃料電池セル212の電圧値が低くなりやすい。これを利用し、「カソード電圧判定処理」では、水閉塞の生じ易い端側の燃料電池セル212の電圧を、中央側の燃料電池セル212と比較することにより、水閉塞が発生しているか否かの判定を行う。
【0102】
この判定処理は、具体的には、次のような手順で進行する。先ず、CPU264が、電圧センサ(図示せず)により、燃料電池スタック210の端側に位置する燃料電池セル212の電圧値を取得する。更に、中央側に位置するいくつかの燃料電池セル212の電圧値を取得し、その平均値(以下、平均電圧値と称す)を算出する。
【0103】
次に、CPU264により、端側の電圧値と中央側の平均電圧値とが比較され、端側の電圧値が中央側の平均電圧値を所定値を超えて下回ったか否かが判別される。この所定値は、例えば実験などにより予め定めた、端側の燃料電池セルの水閉塞を検知しうる値とすることができる。端側の電圧値が中央側の平均電圧値を所定値下回っていない場合には、燃料電池スタック210の発電状態がOKであるとの判定が下される。
【0104】
端側の電圧値が中央側の平均電圧値を所定値以上下回った場合には、端側の燃料電池セル212において水閉塞が生じていると判別される。この場合には、燃料電池スタック210の発電状態がOKではないとの判定が下される。
【0105】
(「電圧偏差判定処理」)
実施の形態2の燃料電池システムは、燃料電池スタック210の発電状態を監視する「電圧偏差判定処理」を有している。燃料電池セル212で水閉塞が生じると、当該燃料電池セル212の電圧値の時間当たりの変動が大きくなりやすい。これを利用し、「電圧偏差判定処理」では、水閉塞が生じ易い端側の燃料電池セル212における時間当たりの電圧偏差を監視することにより、水閉塞が生じているか否かを判定する。
【0106】
この判定処理は、具体的には、次のような手順で進行する。先ず、燃料電池スタック210の端側に位置する燃料電池セル212の電圧値を所定時間取得し、得られた電圧値から時間当たりの電圧偏差を算出する。
【0107】
その後、算出された電圧偏差が、所定A/cm2時にσが所定電圧値を超えているか否かが判別される。判別に用いられるこれらの所定値は、例えば実験などにより予め定めた、端側の燃料電池セルの水閉塞を検知しうる電圧偏差値とすることができる。電圧偏差がこの判定値を超えているとの成立が認められない場合には、燃料電池スタック210の発電状態がOKであるとの判定が下される。成立が認められた場合には、端側の燃料電池セル212において水閉塞(水づまり)が生じていると判別され、燃料電池スタック210の発電状態がOKではないとの判定が下される。
【0108】
上記説明した「カソード電圧判定処理」と「電圧偏差算出処理」の両方が電圧OKとの判別をした場合には、発電電圧の状態がOKであると判断され、今回のルーチンが終了する。その後、通常の発電状態が継続される。
【0109】
「カソード電圧判定処理」と「電圧偏差判定処理」のうち少なくとも一方が、燃料電池スタック210において水閉塞が発生しているとの判別をした場合には、電圧がOKではないと判断される。
【0110】
電圧がOKでないとの判定がなされた場合には、バルブ閉の処理がなされる(ステップ310)。具体的には、ロータリーバルブ250が前述した「第三状態」とされる。これにより、端側に位置するガス流入孔214に流入する空気の量が増加し、端側に位置する燃料電池セル214の水閉塞に対して、回復措置がとられる。
【0111】
その後、燃料電池スタック210における発電電圧の状態が、水閉塞から回復したか否かが判別される(ステップ320)。具体的には、前述した「カソード電圧判定処理」と「電圧偏差判定処理」のうち、ステップ300で電圧がOKでないと判定されたものが、電圧OKの状態に回復したか否かが判別される。ステップ300において電圧OKでないと判定された状態が未だ回復していない場合には、引き続きバルブ閉状態とされ、端側に位置する燃料電池セル214に対して、水閉塞の回復措置がとられる。
【0112】
電圧OKの状態に回復した場合には、燃料電池セル214の水閉塞が解消されたと判断され、バルブ開状態へと戻される(ステップ330)。その後、通常の発電状態となる。
【0113】
以上の処理によれば、燃料電池システムの発電中において、燃料電池スタック210の端側の燃料電池セル212に水閉塞が生じたことが、確実に検知される。そして、ロータリーバルブ250によって、端側の燃料電池セル212に対する空気供給量の増加が容易に実現される。このように、実施の形態2によれば、燃料電池セルに生ずる水閉塞の回復を、確実に、かつ容易に行うことができる。
【0114】
また、前述した「カソード電圧判定処理」では、中央側のいくつかの燃料電池セル212の平均電圧値を求め、これを判定に利用した。しかし、本発明はこれに限られるものではない。平均電圧値のかわりに、中央側に位置する燃料電池セル212のうち所定の燃料電池セル212の電圧値を、代表値として利用してもよい。
【0115】
また、前述した実施の形態2の処理では、「カソード電圧判定処理」と「電圧偏差算出処理」の両方を用いて、端側の燃料電池セル212の水閉塞を判定した。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。必要に応じ、「カソード電圧判定処理」と「電圧偏差算出処理」のどちらか一方のみを用いて、水閉塞を判定してもよい。
【0116】
また、前述した実施の形態2の処理では、燃料電池セル212の電圧値を利用して、燃料電池セル212の水閉塞を判定した。しかし、本発明はこれに限られるものではなく、水閉塞を検知しうる種々の方法を、本発明に適用することができる。
【0117】
尚、上述した実施の形態2では、カソードガス供給内部マニホールド220が前記第5の発明の「カソードガス供給マニホールド」に、前述した「第三状態」が、前記第5の発明の「第三状態」に相当する。また、モータ262が、前記第5の発明の「動力機構」に、シャフト260が前記第5の発明の「伝達機構」にそれぞれ相当する。
【0118】
また、上述した実施の形態2の具体的処理では、ステップ300の処理が、前記第5の発明の「水閉塞判定手段」に相当し、ステップ300からステップ330までの一連の処理が、前記第5の発明の「カソードガス供給量制御手段」に相当する。また、実施の形態2では、燃料電池スタック210の燃料電池セル212の電圧を検知する電圧センサ(図示せず)が、前記第6の発明の「セル電圧検知手段」に相当する。
【0119】
[実施の形態2の変形例]
(第1変形例)
実施の形態2では、ロータリーバルブ250を、シャフト260を介して、モータ262に固定している。そして、シャフト260は、スタックエンドプレート242を貫通して設けられている。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。図10は、実施の形態2の第1変形例を説明するための図であり、図7におけるシャフト260の近傍位置に相当する図である。なお、図10では、ロータリーバルブ250の形状などを、簡略化して示している。
【0120】
実施の形態2の第1変形例は、実施の形態1の第1変形例と同様の思想に基づいている。即ち、シャフト構造を用いずに、マグネットによってロータリーバルブの回転を行う方法である。図10に示すように、スタックエンドプレート282に設けられた凹部286に、マグネット280が回転可能に収納される。マグネット280はロータリーバルブ250と接続している。
【0121】
スタックエンドプレート282を介して、マグネット280がマグネット284の回転に追随することにより、ロータリーバルブ250へと回転力が伝達される。以上の構造によれば、燃料電池スタック210の密閉性を保ちつつ、ロータリーバルブ250の回転制御を行うことができる。
【0122】
(第2変形例)
実施の形態1では、ロータリーバルブ250を、燃料電池スタック210の中央側に位置するガス流入孔214の連通制限面積が大きく、端側に位置するガス流入孔214の連通制限面積が小さくなるような形状とした。より好ましくは、ロータリーバルブ250の形状(表面積)は、端側に位置するガス流入孔214への空気量の配分比を考慮して、次のようにして定めることができる。
【0123】
ロータリーバルブ250のうちガス流入孔214を遮蔽する部分の面積をSとし、下記の式を満たすようにする。
S≧L×X×s
但し、
s:一つのガス流入孔214の開口面積
X:燃料電池セル212のうち水閉塞を起こし易い燃料電池セル212の枚数
L:燃料電池セル212一枚あたりに水閉塞が生じた場合に、その水閉塞を回復させるために必要な空気流入量の増加率
とする。
【0124】
上記の関係を満たすようにロータリーバルブ250の形状(表面積)を決定することにより、バルブ閉状態としたときに、水閉塞を回復させるために必要な空気流入量の増加率が実現される。これにより、燃料電池セル212の水閉塞を確実に解消しうるように、ガス流入孔214の連通の制限を行うことができる。
【0125】
実施の形態3.
[実施の形態3の構成]
図11は、実施の形態3の燃料電池システムの構成を説明するための図である。図11は、実施の形態3のカソード側の構成を示している。実施の形態3は、実施の形態2とほぼ同一の構成を有している。
【0126】
実施の形態3は、燃料電池スタック410を有している。燃料電池スタック410は、実施の形態2の燃料電池スタック210と同様の構造を有しており、CPU464が実施の形態2のCPU264と相違する。その他実施の形態2と同一の構造に関しては、実施の形態2と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0127】
CPU464は、実行されるルーチンが異なる点で、CPU264と相違する。また、CPU464は、その内部に、時間計測用のタイマ(図示せず)を含んでいる。CPU464は、実施の形態2のCPU264と同様に、ロータリーバルブ250の開閉を制御する。これにより、実施の形態2で述べた「運転状態」と「第三状態」とが実現される。
【0128】
[実施の形態3の動作]
実施の形態2で述べたように、燃料電池スタック410の端側に位置する燃料電池セル212では、内部に滞留する水の量が多くなりやすい。これに起因して、燃料電池システムの運転停止の要求があった際に、端側に位置する燃料電池セル212の保水量が多い状態になっている場合がある。この状態で燃料電池システムの運転停止処理がなされると、端側の燃料電池セル212の保水量が多い状態でシステムが停止してしまう。
【0129】
実施の形態3では、これを回避するために、燃料電池システムの運転停止時に、所定時間ロータリーバルブ250を閉状態(第三状態)とし、端側の燃料電池セル212に対して多くの空気を供給する。これにより、当該燃料電池セルにおける水の持ち去り量を増加させることができる。その結果、端側の燃料電池セル212の保水量が多い状態でシステムの運転が停止するのを、確実に避けることができる。
【0130】
[実施の形態3の具体的処理]
以下、図12を用いて、実施の形態3の燃料電池システムが行う具体的処理を説明する。図12は、本実施形態の燃料電池システムが行う具体的処理を示すフローチャートであり、燃料電池システムの運転停止時に実行される。この処理は、例えば、燃料電池システムが車両に搭載された状態で実行することができる。
【0131】
図12のルーチンでは、まず燃料電池スタック410の運転停止の要求があったか否かが判別される(ステップ500)。運転停止の要求がないと判別された場合には、引き続き燃料電池スタック410が運転状態とされる。
【0132】
運転停止の要求があったと判別された場合には、バルブ閉の処理がなされる(ステップ510)。具体的には、CPU464による制御が行われ、ロータリーバルブ250がガス流入孔214とカソードガス供給内部マニホールド220との連通を制限する状態(第三状態)とされる。この状態でカソードガス供給内部マニホールド220に空気が流入することにより、保水量の多い端側の燃料電池セル212に対して、より多くの空気が供給される。その結果、端側の燃料電池セル212から持ち去られる水の量を増加させることができる。
【0133】
その後、所定時間が経過したか否かが判別される(ステップ520)。具体的には、CPU464が有するタイマにより、上記ステップ510のバルブ閉処理後に経過した時間のカウントが行われる。その後、カウントされた時間が、予め定められた、端側の燃料電池セル212からの水の持ち去りが十分に行われる時間を経過したか否かが判別される。所定時間が経過していない場合には、引き続きバルブ閉の状態が保持される。
【0134】
所定時間が経過していると判別された場合には、端側の燃料電池セル212に対する空気供給が十分に行われたとの判断がなされ、バルブ開の処理がなされる(ステップ530)。その後、このルーチンが終了し、システムの停止処理が続行される。
【0135】
以上の処理によれば、燃料電池システムの運転停止時に、保水量の多い燃料電池セル212に対する水の持ち去り量を増加させることができる。これにより、当該燃料電池セル212内部に滞留する水を減少させることができ、端側の燃料電池セル212の保水量が多い状態でシステムの運転が停止するのを避けることができる。
【0136】
尚、上記の実施の形態3では、カソードガス供給内部マニホールド220が、前記第7の発明の「カソードガス供給マニホールド」に、前述した第三状態が、前記第7の発明の「第三状態」に、それぞれ相当する。また、モータ262が、前記第7の発明の「動力機構」に、シャフト260が、前記第7の発明の「伝達機構」に、それぞれ相当する。
【0137】
また、上記の実施の形態3の具体的処理では、ステップ500からステップ520の処理が前記第7の発明の「停止時ガス流入量制御手段」に、ステップ520においてCPU464のタイマが計測した時間が前記第7の発明の「所定時間」に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明の実施の形態1の燃料電池システムの構成を説明するための図である。
【図2】実施の形態1のロータリーバルブを説明するための図である。
【図3】実施の形態1のロータリーバルブとガス流入孔を説明する図である。
【図4】実施の形態1のロータリーバルブがガス流入孔とアノードガス供給内部マニホールドとの連通を制限する様子を説明するための図である。
【図5】実施の形態1の燃料電池システムで実行されるフローチャートである。
【図6】実施の形態1の変形例を説明するための図である。
【図7】本発明の実施の形態2の燃料電池システムの構成を説明するための図である。
【図8】実施の形態2のロータリーバルブを説明するための図である。
【図9】実施の形態2の燃料電池システムで実行されるフローチャートである。
【図10】実施の形態2の変形例を説明するための図である。
【図11】本発明の実施の形態3の燃料電池システムの構成を説明するための図である。
【図12】実施の形態3の燃料電池システムで実行されるフローチャートである。
【符号の説明】
【0139】
燃料電池スタック 10、210、410 燃料電池セル 12、212
ガス流入孔 14、214 ロータリーバルブ 50、250
アノードガス供給内部マニホールド 20
アノードガス排出内部マニホールド 22
カソードガス供給内部マニホールド 220
アノードガス排出内部マニホールド 222
シャフト 60、260 モータ 62、262
CPU 64、264、464
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流入孔を有する燃料電池セルを積層してなる燃料電池スタックと、
前記ガス流入孔に連通し該ガス流入孔にガスを供給するガス供給マニホールドと、
前記ガス供給マニホールド内に回転自在に備えられ、その表面が少なくとも一部の前記燃料電池セルの前記ガス流入孔と該ガス供給マニホールドとの連通を制限する状態と該ガス流入孔を開放する状態とを実現し、該ガス流入孔と該ガス供給マニホールドとの連通を制限する連通制限面積が回転角度に応じて変化するロータリーバルブと、
を有する燃料電池システム。
【請求項2】
前記ガス供給マニホールドは、前記ガス流入孔に水素を供給し、その一端が水素タンクに連通するアノードガス供給マニホールドを含み、
前記燃料電池セルは前記ガス流入孔から流入した水素が流出するガス流出孔を有し、
前記ガス流出孔に連通し、その一端がアノードガス排出系に連通するアノードガス排出マニホールドを有し、
前記ロータリーバルブは、前記積層された前記燃料電池セルのうち、水素が流通し易い該燃料電池セルの前記ガス流入孔の前記連通制限面積が大きく、水素が流通し難い該燃料電池セルの該ガス流入孔の該連通制限面積が小さくなるように該ガス流入孔と前記アノードガス供給マニホールドとの連通を制限する第一状態と、いずれの該ガス流入孔と該アノードガス供給マニホールドとの連通も制限しない第二状態とを実現する形状を有し、
回転動力を発生する動力機構と、
前記ロータリーバルブに前記動力機構が発生させた回転動力を伝達する伝達機構と、
前記動力機構が発生させる回転動力を制御して前記ロータリーバルブの回転角度を調整し、前記燃料電池スタックの始動時に、前記ロータリーバルブを前記第一状態として所定時間保持した後、該ロータリーバルブを前記第二状態とするアノードガス供給量制御手段と、
を有する請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記積層された前記燃料電池セルの前記ガス流入孔のそれぞれが一方向に並んで位置し、前記アノードガス供給マニホールドは該一方向に沿って伸びてそれぞれの該ガス流入孔に連通し、
前記ガス流出孔は前記一方向に並んだ前記ガス流出孔と略平行な方向に並んで位置し、前記アノードガス排出マニホールドは該略平行な方向に沿って伸びてそれぞれの該ガス流出孔に連通し、
前記アノードガス供給マニホールドの前記一端と前記アノードガス排出マニホールドの前記一端とがともに前記燃料電池スタックの一方の面側に位置する請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記燃料電池スタックの内部における水素分布が均等となったか否かを判定するアノード水素置換判定手段を有し、
前記所定時間は、前記燃料電池スタックの始動から前記アノード水素置換判定手段によって前記水素分布が均等となったとの前記判定がなされるまでの時間である請求項2または3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記ガス供給マニホールドは前記ガス流入孔に空気を供給するカソードガス供給マニホールドを含み、
前記ロータリーバルブは、前記燃料電池スタックの端側に位置する前記燃料電池セルの該ガス流入孔の前記連通制限面積が小さく、該燃料電池スタックの中央側に位置する前記燃料電池セルの該ガス流入孔の前記連通制限面積が大きくなるように該ガス流入孔と前記カソードガス供給マニホールドとの連通を制限する第三状態を実現する形状を有し、
前記燃料電池セルで水閉塞が生じているか否かを判定する水閉塞判定手段と、
回転動力を発生する動力機構と、
前記ロータリーバルブに前記動力機構が発生させた回転動力を伝達する伝達機構と、
前記動力機構が発生させる回転動力を制御して前記ロータリーバルブの回転角度を調整し、前記燃料電池スタックの発電中に前記水閉塞判定手段によって前記燃料電池セルで水閉塞が生じていると判定されたら該ロータリーバルブを前記第三状態とするカソードガス供給量制御手段と、
を有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記水閉塞判定手段は、前記燃料電池スタックの少なくとも一部の前記燃料電池セルの電圧を検知するセル電圧検知手段を含み、前記セル電圧検知手段が検知した電圧値に基づいて前記水閉塞が生じているか否かを判定する請求項5に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記ガス供給マニホールドは前記ガス流入孔に空気を供給するカソードガス供給マニホールドを含み、
前記ロータリーバルブは、前記燃料電池スタックの端側の前記燃料電池セルでは該ガス流入孔の前記連通制限面積が小さく、中央側に位置する前記燃料電池セルでは該ガス流入孔の前記連通制限面積が大きくなるように該ガス流入孔と前記カソードガス供給マニホールドとの連通を制限する第三状態を実現する形状を有し、
回転動力を発生する動力機構と、
前記ロータリーバルブに前記動力機構が発生させた回転動力を伝達する伝達機構と、
前記動力機構が発生させる回転動力を制御して前記ロータリーバルブの回転角度を調整し、前記燃料電池スタックの停止時に前記ロータリーバルブを前記第三状態として前記カソードガス供給マニホールドから空気が流入する状態を所定時間保持する停止時ガス流入量制御手段と、
を有する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記燃料電池スタックは、前記複数積層された前記燃料電池セルをその積層方向から挟むように取り付けられるスタックエンドプレートを含み、
前記伝達機構は、前記ロータリーバルブに備えられる第一の磁石と、前記動力機構に備えられる第二の磁石とを含み、該第一の磁石が前記スタックエンドプレートを挟んで該第二の磁石の回転に追随することで該ロータリーバルブに回転が伝達されることにより、該ロータリーバルブに該動力機構が発生させた回転動力を伝達する請求項2乃至7のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項1】
ガス流入孔を有する燃料電池セルを積層してなる燃料電池スタックと、
前記ガス流入孔に連通し該ガス流入孔にガスを供給するガス供給マニホールドと、
前記ガス供給マニホールド内に回転自在に備えられ、その表面が少なくとも一部の前記燃料電池セルの前記ガス流入孔と該ガス供給マニホールドとの連通を制限する状態と該ガス流入孔を開放する状態とを実現し、該ガス流入孔と該ガス供給マニホールドとの連通を制限する連通制限面積が回転角度に応じて変化するロータリーバルブと、
を有する燃料電池システム。
【請求項2】
前記ガス供給マニホールドは、前記ガス流入孔に水素を供給し、その一端が水素タンクに連通するアノードガス供給マニホールドを含み、
前記燃料電池セルは前記ガス流入孔から流入した水素が流出するガス流出孔を有し、
前記ガス流出孔に連通し、その一端がアノードガス排出系に連通するアノードガス排出マニホールドを有し、
前記ロータリーバルブは、前記積層された前記燃料電池セルのうち、水素が流通し易い該燃料電池セルの前記ガス流入孔の前記連通制限面積が大きく、水素が流通し難い該燃料電池セルの該ガス流入孔の該連通制限面積が小さくなるように該ガス流入孔と前記アノードガス供給マニホールドとの連通を制限する第一状態と、いずれの該ガス流入孔と該アノードガス供給マニホールドとの連通も制限しない第二状態とを実現する形状を有し、
回転動力を発生する動力機構と、
前記ロータリーバルブに前記動力機構が発生させた回転動力を伝達する伝達機構と、
前記動力機構が発生させる回転動力を制御して前記ロータリーバルブの回転角度を調整し、前記燃料電池スタックの始動時に、前記ロータリーバルブを前記第一状態として所定時間保持した後、該ロータリーバルブを前記第二状態とするアノードガス供給量制御手段と、
を有する請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記積層された前記燃料電池セルの前記ガス流入孔のそれぞれが一方向に並んで位置し、前記アノードガス供給マニホールドは該一方向に沿って伸びてそれぞれの該ガス流入孔に連通し、
前記ガス流出孔は前記一方向に並んだ前記ガス流出孔と略平行な方向に並んで位置し、前記アノードガス排出マニホールドは該略平行な方向に沿って伸びてそれぞれの該ガス流出孔に連通し、
前記アノードガス供給マニホールドの前記一端と前記アノードガス排出マニホールドの前記一端とがともに前記燃料電池スタックの一方の面側に位置する請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記燃料電池スタックの内部における水素分布が均等となったか否かを判定するアノード水素置換判定手段を有し、
前記所定時間は、前記燃料電池スタックの始動から前記アノード水素置換判定手段によって前記水素分布が均等となったとの前記判定がなされるまでの時間である請求項2または3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記ガス供給マニホールドは前記ガス流入孔に空気を供給するカソードガス供給マニホールドを含み、
前記ロータリーバルブは、前記燃料電池スタックの端側に位置する前記燃料電池セルの該ガス流入孔の前記連通制限面積が小さく、該燃料電池スタックの中央側に位置する前記燃料電池セルの該ガス流入孔の前記連通制限面積が大きくなるように該ガス流入孔と前記カソードガス供給マニホールドとの連通を制限する第三状態を実現する形状を有し、
前記燃料電池セルで水閉塞が生じているか否かを判定する水閉塞判定手段と、
回転動力を発生する動力機構と、
前記ロータリーバルブに前記動力機構が発生させた回転動力を伝達する伝達機構と、
前記動力機構が発生させる回転動力を制御して前記ロータリーバルブの回転角度を調整し、前記燃料電池スタックの発電中に前記水閉塞判定手段によって前記燃料電池セルで水閉塞が生じていると判定されたら該ロータリーバルブを前記第三状態とするカソードガス供給量制御手段と、
を有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記水閉塞判定手段は、前記燃料電池スタックの少なくとも一部の前記燃料電池セルの電圧を検知するセル電圧検知手段を含み、前記セル電圧検知手段が検知した電圧値に基づいて前記水閉塞が生じているか否かを判定する請求項5に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記ガス供給マニホールドは前記ガス流入孔に空気を供給するカソードガス供給マニホールドを含み、
前記ロータリーバルブは、前記燃料電池スタックの端側の前記燃料電池セルでは該ガス流入孔の前記連通制限面積が小さく、中央側に位置する前記燃料電池セルでは該ガス流入孔の前記連通制限面積が大きくなるように該ガス流入孔と前記カソードガス供給マニホールドとの連通を制限する第三状態を実現する形状を有し、
回転動力を発生する動力機構と、
前記ロータリーバルブに前記動力機構が発生させた回転動力を伝達する伝達機構と、
前記動力機構が発生させる回転動力を制御して前記ロータリーバルブの回転角度を調整し、前記燃料電池スタックの停止時に前記ロータリーバルブを前記第三状態として前記カソードガス供給マニホールドから空気が流入する状態を所定時間保持する停止時ガス流入量制御手段と、
を有する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記燃料電池スタックは、前記複数積層された前記燃料電池セルをその積層方向から挟むように取り付けられるスタックエンドプレートを含み、
前記伝達機構は、前記ロータリーバルブに備えられる第一の磁石と、前記動力機構に備えられる第二の磁石とを含み、該第一の磁石が前記スタックエンドプレートを挟んで該第二の磁石の回転に追随することで該ロータリーバルブに回転が伝達されることにより、該ロータリーバルブに該動力機構が発生させた回転動力を伝達する請求項2乃至7のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−34135(P2008−34135A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203722(P2006−203722)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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