説明

燃料電池システム

【課題】本発明は燃料電池システムに関するもので、システムの稼動状態の悪化を抑制することを目的とするものである。
【解決手段】そしてこの目的を達成するために本発明は、燃料電池11と、この燃料電池11で発生した直流電力を交流電力に変換し、負荷に交流電力を供給する直流交流変換手段12と、この直流交流変換手段12から家庭内負荷13側への出力波形を計測する交流出力電流波形計測手段15と、前記直流交流変換手段15からの出力波形中の直流分を検出する検出回路23と、前記燃料電池13、直流交流変換手段12、交流出力電流波形計測手段15、検出回路23の動作を制御する運転制御手段14とを備え、前記交流出力電流波形計測手段15により、過電流を検出してからの所定時間は、前記検出回路23からの出力を実質的に無効化する構成としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池を用いて発電を行う燃料電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池システムとして、交流電力出力波形計測手段により、直流交流変換手段からの出力波形を逐一計測し、直流交流変換手段の故障診断をする燃料電池システムがあった。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図9は、前記特許文献1に記載された従来の燃料電池システムを示すものである。
【0004】
図9において、都市ガスのようなメタン等の炭化水素を含む燃料を原料として燃料電池1で発電が行われる。直流交流変換手段2は、燃料電池1からの直流電力を交流電力に変換し、商用電源とともに家庭内負荷3に交流電力を供給する。
【0005】
運転制御手段4は、この燃料電池システムにおける、起動から発電までの一連の動作を制御する。
【0006】
また交流電力出力波形計測手段5は、直流交流変換手段2の出力端に接続され、直流交流変換手段2から家庭内負荷3へと出力される交流電力の出力電流波形と、商用電源の電圧波形とを計測する。
【0007】
運転制御手段4は、交流電力出力波形計測手段5により、直流交流変換手段2から家庭内負荷3へと出力される交流電力の出力電流波形を逐一計測し、商用電源からの電圧波形が正常であるのにもかかわらず、出力電流波形が異常である場合は、直流交流変換手段2の内部回路の故障と判断していた。
【特許文献1】特開2006−310116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記従来の構成では、交流電力出力波形計測手段5により出力過電流を検出した場合、運転制御手段4により、この燃料電池システムの動作を一旦停止状態とする。
【0009】
また直流交流変換手段2からの出力中に直流分を検出した場合には、運転制御手段4により、この燃料電池システムの動作を継続的な停止状態とする。
【0010】
しかしながら、実質的に問題とならない商用電源側の電圧波形の乱れにより、直流分が検出されただけであるにもかかわらず、この燃料電池システムを継続的に動作停止してしまうと、不要な動作停止となり、システム稼動状態の悪化となる。
【0011】
そこで本発明は、システムの稼動状態の悪化を抑制することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そしてこの目的を達成するために本発明は、燃料電池と、この燃料電池で発生した直流電力を交流電力に変換し、負荷に交流電力を供給する直流交流変換手段と、この直流交流変換手段から負荷側への出力波形を計測する交流出力電流波形計測手段と、前記直流交流変換手段から負荷側への出力波形中の直流分を検出する検出回路と、前記燃料電池、直流交流変換手段、交流出力電流波形計測手段、検出回路の動作を制御する運転制御手段とを備え、前記交流出力電流波形計測手段により、過電流検出してからの所定時間は、前記検出回路からの出力を実質的に無効化する構成としたものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0013】
以上のごとく本発明は、交流出力電流波形計測手段により、過電流所定を検出してからの所定時間は、前記検出回路からの出力を実質的に無効化する構成としたものであって、この場合にはシステムを継続的に動作停止させないので、システムの稼動状態の悪化を抑制することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における燃料電池システムの構成図である。
【0016】
図1において、都市ガスのようなメタン等の炭化水素を含む燃料から改質した水素と、大気中の酸素とを燃料電池11にて反応させ、発電が行われる。
【0017】
直流交流変換手段12は、燃料電池11からの直流電力を交流電力に変換し、商用電源とともに家庭内負荷13に交流電力を供給する。
【0018】
また交流出力電流波形計測手段15は直流交流変換手段12の出力端に接続され、直流交流変換手段12から家庭内負荷13へと出力される交流電力(交流電流の出力波形)を計測するものである。
【0019】
直流分検出無効化手段16は、交流出力電流波形計測手段15により、過電流検出してからの所定時間は、前記検出回路(図2の23)からの出力を実質的に無効化する構成としたものであり、一時的な直流分流出検出では、運転制御手段14がシステムを継続的に動作停止させないようにするものである。
【0020】
運転制御手段14は起動から発電、動作停止までの一連の動作を制御するもので、燃料電池11、直流交流変換手段12、交流出力電流波形計測手段15、直流分検出無効化手段16の動作制御を行うものである。
【0021】
ここで、交流電流中の直流分について説明する。
【0022】
図2の交流出力電流中における直流分流出原理図において、通常は斜線部AとBが、A=Bで面積は等しくなり、直流分はゼロとなる。
【0023】
しかし、図2にようにゼロ点がプラス側にずれることによりA<Bとなり、負の直流分が発生することになる。また逆にゼロ点がマイナス側にずれることによりA>Bとなり、正の直流分が発生することになる。
【0024】
規格では直流分は交流電流分の±1%以下とされており、交流電流の実効値が5Aであれば、±50mA以上の直流分が発生すれば直流分流出異常と判断される。直流分が商用電源側に流出されると、電柱にある柱上変圧器等への不都合が発生する恐れがあるので、この流出を防止しなければならない。
【0025】
そこで本実施形態では、直流交流変換手段12中に図4に示す手段を設けて、直流分の検出をし、直流分検出時には、基本的には直ちに運転制御手段14によりシステムの動作停止をさせるような構成となっている。
【0026】
次に、直流交流変換手段12からの交流出力電流中の直流分検出について、図4を用いて説明する。
【0027】
直流交流変換手段12の主回路21は直流交流変換手段12中の直流電流および交流電流が実際に流れる回路であり、直流分センサ22は直流交流変換手段12の出力端付近に設けられたもので、交流電流中の直流分を検出するセンサである。
【0028】
検出回路23は直流分センサ22の微少信号を増幅する回路であり、この検出回路23の一部であるCPU24はマイコン等で構成される集積回路であり、このCPU24にて直流分の発生と大きさを判定している。
【0029】
つまり、直流交流変換手段12における直流分センサ22の信号を検出回路23に入力し、増幅等の処理後、マイコン等のCPU24に入力させ、直流分の発生と大きさを判定しているのである。
【0030】
直流分センサ22は微少な直流分を検出するため、ここでは0.01Ωの抵抗を2個並列、つまり0.005Ωの抵抗値としたシャント抵抗を使用しているが、これに限らず他のセンサを使用してもよい。
【0031】
また検出回路23は、直流分センサ22の微少電圧を増幅し、アイソレーションアンプ等の絶縁された増幅回路を経由して、アクティブ・ローパス・フィルタ(ここでは4次フィルタ)により高周波成分をカットしたものを、この検出回路23の一部であるマイコン等のCPU24に出力する。
【0032】
また検出回路23の一部であるマイコン等のCPU24内では、入力された信号により直流分の補正バイアスを設定し、それに直流分のバイアスリミッタを設けて、実際の出力電流波形生成に反映されるものである。
【0033】
再び図1に戻って説明を進めると、直流交流変換手段12に接続された直流分検出無効化手段16は、上記検出回路23の一部であるマイコン等のCPU24内にて、ソフト的に直流分をゼロと判断しり、CPU24への入力信号そのものを無視したりする等の動作を行わせることにより、下記に示す特定の状況(交流出力電流波形計測手段15により過電流を検出した直後)時だけは、運転制御手段14によるシステムの継続的動作停止を回避するように構成されている。
【0034】
さて、図1に示す構成においては、運転制御手段14の制御下において、交流出力電流波形計測手段15により、直流交流変換手段12から家庭内負荷13へと出力される交流電力(交流電流の出力波形)を逐一計測している。
【0035】
そして、交流出力電流波形計測手段15により過電流を検出した場合には、直ちに運転制御手段14により、システムを一時的動作停止状態とする。
【0036】
またこのように交流出力電流波形計測手段15により過電流を検出した場合には、その時点から、所定時間の間だけ、直流分検出無効化手段16により、交流出力電流中における直流分検出を無効化し、システムが継続的動作停止モードへと移行するのを防止する。
【0037】
図3の電流波形は直流交流変換手段12からの出力電流波形を示す。ここで通常の出力電流Iacの実効値はIac(rms)=5Aであり、ピーク値はその√2倍でIac(peak)=7.07Aであるが、ピーク値Iac(peak)の150%の相当する10.6A以上の過電流ピークIaco(閾値レベル)以上となったことを検出した直後に、上述のごとく直ちに運転制御手段14により、システムを一時的動作停止状態とする。
【0038】
したがってこれ以降は図3のごとく、出力電流は減衰することとなる。
【0039】
しかしこの図3に示すように、過電流が発生してから出力電流が停止するまでの間には、直流交流変換手段12からの出力電流波形は、正負のバランスがくずれて、あたかも直流分が発生したかのようなふるまいをしてしまう。
【0040】
この時、実際には、直流交流変換手段12の回路や制御上の不具合により上述の直流分が発生したわけではないのにもかかわらず、直流分流出異常と誤判定してしまうので、交流出力電流波形計測手段15により過電流を検出した場合には、この過電流検出から出力停止するまでのtrの間、つまり数msから数十ms間は、直流分検出無効化手段16により、直流分検出による不要なシステムの継続的動作停止モードへの移行をさせないようにしている。
【0041】
以上のごとく本実施形態では、交流出力電流波形計測手段15により、所定値以上の直流分を検出してからの所定時間は、交流出力電流中における直流分検出を無効化し、システムが継続的動作停止モードへと移行するのを防止するので、システムの稼動状態の悪化を抑制することが出来る。
【0042】
図8は、交流出力電流波形計測手段15により過電流を検出し、直ちに運転制御手段14により、システムを一時的動作停止状態とした後の、動作を説明するものである。
【0043】
すなわち、システムの上記一時停止状態の後、運転制御手段14により、自動的にシステムの再起動が行われるのであるが、直流交流変換手段12からの出力が徐々に大きくなるように、いわゆるソフトスタートを行うようになっている。
【0044】
(実施の形態2)
図5は本発明の実施の形態2における燃料電池システムの構成図である。図5において図1と同じ構成要素については同一符号を用い、説明を簡略化する。
【0045】
図5において、直流分検出無効化手段17は、交流出力電流中の直流分検出をする検出レベルの閾値レベルを上昇させる構成としたものである。
【0046】
ここで、運転制御手段14は、交流出力電流波形計測手段15により、出力過電流を検出した直後は、直流分検出無効化手段17により直流分検出レベルの閾値を上げ、直流分の検出をしにくくし、これにより、前記運転制御手段14による継続的動作停止モードを実質的に無効化するものであって、直ちにシステムを継続的に動作停止させないので、システムの稼動状態の悪化を抑制することが出来る。
【0047】
(実施の形態3)
図6は本発明の実施の形態3における燃料電池システムの構成図である。図6において図1または図5と同じ構成要素については同一符号を用い、説明を簡略化する。
【0048】
図6において、直流分検出無効化手段18は、検出された直流分に対する補正バイアスのゲインを上げるものである。
【0049】
ここで、運転制御手段14は、交流出力電流波形計測手段15により、出力過電流を検出した直後は、前記交流出力電流波形計測手段15により、所定値以上の直流分を検出してからの所定時間、直流分検出無効化手段18により、交流出力電流中の直流分検出レベルを閾値レベル以下に降下させる構成としており、これにより、前記運転制御手段14による継続的動作停止モードを実質的に無効化するものであって、直ちにシステムを継続的に動作停止させないので、システムの稼動状態の悪化を抑制することが出来る。
【0050】
(実施の形態4)
図7は本発明の実施の形態4における燃料電池システムの構成図である。図7において図1と同じ構成要素については同一符号を用い、説明を簡略化する。
【0051】
本実施形態では、交流出力電流波形計測手段15と家庭内負荷13間に、単層三線の1:1の絶縁トランス19を設けたものである。
【0052】
つまり単層三線の1:1の絶縁トランス19を設ければ、一次側と二次側との分離により、直流分をカットすることが出来るのである。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の燃料電池システムは、交流出力電流波形計測手段により、過電流所定を検出してからの所定時間は、前記検出回路からの出力を実質的に無効化する構成としたものであって、この場合にはシステムを継続的に動作停止させないので、システムの稼動状態の悪化を抑制することが出来る。
【0054】
したがって、燃料電池を用いて経済的で安全な発電が行われることとなり、地球環の悪化抑制に大きく貢献するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態1における燃料電池システムのブロック構成図
【図2】本発明の実施の形態1における燃料電池システムの交流出力電流における直流分流出原理図
【図3】本発明の実施の形態1における燃料電池システムの交流出力電流波形の一例を示す波形図
【図4】本発明の実施の形態1における燃料電池システムの直流分検出回路のブロック構成図
【図5】本発明の実施の形態2における燃料電池システムのブロック構成図
【図6】本発明の実施の形態3における燃料電池システムのブロック構成図
【図7】本発明の実施の形態4における燃料電池システムのブロック構成図
【図8】本発明の実施の形態1における燃料電池システムの動作を説明するための波形図
【図9】従来の燃料電池システムのブロック構成図
【符号の説明】
【0056】
11 燃料電池
12 直流交流変換手段
13 家庭内負荷
14 運転制御手段
15 交流出力電流波形計測手段
16 直流分検出無効化手段
17 直流分検出無効化手段
18 直流分検出無効化手段
21 直流交流変換手段の主回路
22 直流分センサ
23 検出回路
24 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、この燃料電池で発生した直流電力を交流電力に変換し、負荷に交流電力を供給する直流交流変換手段と、この直流交流変換手段から負荷側への出力波形を計測する交流出力電流波形計測手段と、前記直流交流変換手段から負荷側への出力波形中の直流分を検出する検出回路と、前記燃料電池、直流交流変換手段、交流出力電流波形計測手段、検出回路の動作を制御する運転制御手段とを備え、前記交流出力電流波形計測手段により、過電流検出してからの所定時間は、前記検出回路からの出力を実質的に無効化する構成とした燃料電池システム。
【請求項2】
運転制御手段には、前記交流出力電流波形計測手段により、過電流を検出してからの所定時間、前記検出回路からの出力を実質的に無効化する直流分検出無効化手段を接続した請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
直流分検出無効化手段は、前記交流出力電流波形計測手段により、所定値以上の直流分を検出してからの所定時間、前記検出回路における直流分検出閾値レベルを上昇させる構成とした請求項2記載の燃料電池システム。
【請求項4】
直流分検出無効化手段は、前記交流出力電流波形計測手段により、過電流を検出してからの所定時間、検出回路の直流分検出レベルを閾値レベル以下に降下させる構成とした請求項2記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−43522(P2009−43522A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206538(P2007−206538)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】