燃料電池システム
【課題】負荷変動が生じた場合であっても、発電動作を安定的に実行することができる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池システム10は、平面配列された燃料電池モジュール20a、20bを有する。燃料電池モジュール20a、20bは、それぞれ、平面配列された複数の膜電極接合体を含み、燃料電池モジュール20a、20bのアノードに燃料カートリッジ30に吸蔵されている水素が供給可能になっている。制御部40は、燃料電池システム10に接続された外部負荷が所定の閾値以内であり、かつ燃料電池モジュール20aの温度、燃料電池モジュール20bの温度の少なくとも一方が所定の閾値温度以下の場合に、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bを交互に外部負荷に接続する制御を行う。
【解決手段】燃料電池システム10は、平面配列された燃料電池モジュール20a、20bを有する。燃料電池モジュール20a、20bは、それぞれ、平面配列された複数の膜電極接合体を含み、燃料電池モジュール20a、20bのアノードに燃料カートリッジ30に吸蔵されている水素が供給可能になっている。制御部40は、燃料電池システム10に接続された外部負荷が所定の閾値以内であり、かつ燃料電池モジュール20aの温度、燃料電池モジュール20bの温度の少なくとも一方が所定の閾値温度以下の場合に、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bを交互に外部負荷に接続する制御を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。より具体的には、本発明は平面配列型の燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は水素と酸素とから電気エネルギーを発生させる装置であり、高い発電効率を得ることができる。燃料電池の主な特徴としては、従来の発電方式のように熱エネルギーや運動エネルギーの過程を経ない直接発電であるので、小規模でも高い発電効率が期待できること、窒素化合物等の排出が少なく、騒音や振動も小さいので環境性が良いことなどが挙げられる。このように、燃料電池は燃料のもつ化学エネルギーを有効に利用でき、環境にやさしい特性を持っているので、21世紀を担うエネルギー供給システムとして期待され、宇宙用から自動車用、携帯機器用まで、大規模発電から小規模発電まで、種々の用途に使用できる将来有望な新しい発電システムとして注目され、実用化に向けて技術開発が本格化している。
【0003】
中でも、固体高分子形燃料電池は、他の種類の燃料電池に比べて、作動温度が低く、高い出力密度を持つ特徴が有り、特に近年、携帯機器(携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータ、PDA、MP3プレーヤ、デジタルカメラあるいは電子辞書、電子書籍)などの電源への利用が期待されている。携帯機器用の固体高分子形燃料電池としては、複数の単セルを平面状に配列した平面配列型の燃料電池が知られている(特許文献1参照)。燃料としては、特許文献1に示したメタノールの他、水素吸蔵合金や水素ボンベに格納された水素を利用することが研究されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−244715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
周囲環境の変化や負荷電力変動により燃料電池の熱バランスが変化することにより、燃料電池に温度変化が生じる。負荷電力が大きい場合には、燃料電池の温度が高くなることにより、燃料電池の電解質膜が乾燥して性能が低下することが考えられる。特に、同一平面状にセルが配置された平面配列型の燃料電池においては、大気に開放される面が大きいために電解質膜が乾燥しやすくなる。乾燥を防ぐために燃料電池の空気極(カソード)側を覆う多孔質体(空気/水蒸気の流通部)を用いる構成が知られている。しかし、多孔質体の開孔率はドライアウトを防止することを目的として設計されるために、負荷電力が低い場合には生成水と熱とのバランスの関係で発熱が十分でなくなり、生成水が結露しやすくなるという問題(フラッディング)が生じる課題があった。
【0006】
また、各燃料電池モジュール間で性能にばらつきがある場合には、並列接続したときに最も性能の高い燃料電池モジュールでは燃料電池の温度が高くなり、最も性能の低い燃料電池モジュールでは燃料電池の温度が低くなる。このため、発電時(特に最大出力時)では燃料電池の温度差が大きくなり、温度の高い燃料電池ではドライアウトが発生する場合がある。また、個別に冷却制御が可能な冷却システムが必要である場合がある。
【0007】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、負荷電力変動が生じた場合であっても、発電動作を安定的に実行することができる燃料電池システムの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、燃料電池システムである。当該燃料電池システムは、負荷に対して電気的に並列接続されているn個[nは2以上の整数]の燃料電池モジュールと、各燃料電池モジュールと負荷との接続状態を切り替え可能な接続切替手段と、少なくとも1つの燃料電池モジュールの温度が所定の温度以下の場合に、負荷電力に応じて、負荷に同時に接続される燃料電池モジュールの数がm[m=1、2、・・・、n−1]になるように接続切替手段を用いて負荷に接続される燃料電池モジュールを切り替える切替運転を実行させる制御部と、を備えることを特徴とする。ここで、負荷とは、外部負荷(アプリケーション)と二次電池負荷(燃料電池システム内に内蔵されている二次電池)の和のことを指す。
【0009】
この態様によれば、負荷電力に応じて、負荷に接続されている燃料電池モジュールの数を変化させたり、負荷に接続される燃料電池モジュールを異ならせたりすることにより、負荷が変動しても、各燃料電池モジュールに流れる電流の値を同等にすることができる。この結果、燃料電池モジュールの温度が一定の範囲内で推移することでドライアウトや生成水の結露が抑制され、ひいては燃料電池システムの発電動作をより安定化させることができる。
【0010】
上記態様の燃料電池システムにおいて、n個の燃料電池モジュールが平面状に配列されていてもよい。また、隣接する燃料電池モジュールの主表面が互いに向かい合うようにn個の燃料電池モジュールが並設されていてもよい。
【0011】
上記態様の燃料電池システムにおいて、制御部は、一定時間経過毎に、負荷に接続される燃料電池モジュールの組み合わせを切り替えてもよい。また、制御部は、各燃料電池モジュールの温度がいずれも所定の温度より高くなった場合に、n個の燃料電池モジュールを負荷に接続させてもよい。また、制御部は、切替運転の際に、負荷に接続する対象となる燃料電池モジュールを負荷に接続し、所定の時間経過後に、負荷から切り離す対象となる燃料電池モジュールを負荷から切り離す処理を実行させてもよい。また、制御部は、負荷電力が最大のm/n以下になった場合に、負荷に同時に接続される燃料電池モジュールの数がmになるように接続切替手段を用いて負荷に接続される燃料電池モジュールを順に切り替える切替運転を実行させてもよい。
【0012】
また、上述した態様の燃料電池システムにおいて、制御部は、特定の燃料電池モジュールの温度が各燃料電池モジュールの温度の平均値に対して所定の値より大きい場合に、当該燃料電池モジュールの温度に応じて当該燃料電池モジュールの電流を制限してもよい。また、上述した態様の燃料電池システムにおいて、制御部は、全燃料電池モジュールの温度の中で最大温度と最小温度との差が所定値より大きい場合に、全燃料電池モジュールの中で温度が高い順に1つあるいは複数の燃料電池モジュールについて、その温度に応じて当該燃料電池モジュールの電流を制限してもよい。
【0013】
なお、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれうる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の燃料電池システムによれば、負荷電力の変動が生じた場合であっても、負荷電力に応じた発電を行うように燃料電池モジュールの接続数を切替えることができ、燃料電池モジュールの分割数や同時に接続する燃料電池モジュールの接続数を増やすことによって、より広範囲の負荷の範囲で発電動作を安定的に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態に係る燃料電池システムの概略構成を示す分解斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿った断面の要部断面図である。
【図3】実施の形態に係る燃料電池システムにおける燃料供給経路を示すブロック図である。
【図4】実施の形態に係る燃料電池システムの回路構成を示す回路図である。
【図5】実施の形態に係る燃料電池システムの動作を示す第1のフローチャートである。
【図6】燃料電池モジュールのI−V特性、I−P特性、温度の電流依存性および生成水の電流依存性を示すグラフである。
【図7】実施の形態に係る燃料電池システムの動作例1を示すタイミングチャートである。図7(A)は、負荷電力の時間変化を示す。図7(B)、(C)は、各燃料電池モジュールの接続状態(オンオフの状態変化)を示す。図7(D)は、各燃料電池モジュールの電力の変化を示す。
【図8】従来の制御方法における、燃料電池システムの温度変化を示すグラフである。
【図9】動作例1の制御方法における、燃料電池システムの温度変化を示すグラフである。
【図10】ドライアウト温度およびフラッディング温度の湿度依存性を示すグラフである。
【図11】実施の形態に係る燃料電池システムの動作例2を示すタイミングチャートである。図11(A)は、負荷電力の時間変化を示す。図11(B)、(C)は、各燃料電池モジュールの接続状態(オンオフの状態変化)を示す。図11(D)は、各燃料電池モジュールの電力の変化を示す。
【図12】実施の形態に係る燃料電池システムの動作を示す第2のフローチャートである。
【図13】図13は、燃料電池システムの動作例3を示すタイミングチャートである。図13(A)は、負荷電力の時間変化を示す。図13(B)、(C)は、それぞれ、燃料電池モジュール20a、20bの接続状態(オンオフの状態変化)を示す。図13(D)は、各燃料電池モジュールの電力の変化を示す。
【図14】実施の形態に係る燃料電池システムの動作を示す第3のフローチャートである。
【図15】変形例1に係る燃料電池システムの概略構成を示す分解斜視図である。
【図16】変形例2に係る燃料電池システムの概略構成を示す分解斜視図である。
【図17】図16のA−A線に沿った断面の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0017】
(実施の形態)
図1は、実施の形態に係る燃料電池システムの概略構成を示す分解斜視図である。図2は、実施の形態に係る燃料電池システムの概略構成を示す要部断面図である。燃料電池システム10は、燃料電池モジュール20a、20b(以下、燃料電池モジュール20a、20bを総称して燃料電池モジュール20と呼ぶ場合がある)、燃料電池モジュール20a、20bに供給される水素を貯蔵する水素吸蔵合金カートリッジ(以下、単に「燃料カートリッジ」という)30、制御部40、二次電池50、燃料カートリッジ30内の水素を燃料電池モジュール20に供給するための関連部材(レギュレータ60、燃料供給プレート70など)、ならびに、以上の部材の収容するための上側筐体80aおよび下側筐体80bを備える。
【0018】
図2に示すように、各燃料電池モジュール20は、主に、膜電極接合体200、カソードハウジング210およびアノードハウジング220を備える。
【0019】
膜電極接合(単セル)200は、電解質膜202と、電解質膜202の一方の面に離間して配設されている複数のカソード触媒層204と、電解質膜202の他方の面にカソード触媒層204に対応して配設されているアノード触媒層206とを含む。本実施の形態では、複数のカソード触媒層204が電解質膜202の一方の面に離間して配設されており、カソード触媒層204にそれぞれ対応して、複数のアノード触媒層206が電解質膜202の他方の面に離間して配設されている。
【0020】
電解質膜202は、湿潤状態において良好なイオン伝導性を示すことが好ましく、カソード触媒層204とアノード触媒層206との間でプロトンを移動させるイオン交換膜として機能する。電解質膜202は、含フッ素重合体や非フッ素重合体等の固体高分子材料によって形成され、例えば、スルホン酸型パーフルオロカーボン重合体、ポリサルホン樹脂、ホスホン酸基又はカルボン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体等を用いることができる。スルホン酸型パーフルオロカーボン重合体の例として、ナフィオン(デュポン社製:登録商標)112などが挙げられる。また、非フッ素重合体の例として、スルホン化された、芳香族ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホンなどが挙げられる。電解質膜202の厚さは、たとえば10〜200μmである。
【0021】
カソード触媒層204は、電解質膜202の一方の面に形成されている。カソード触媒層204には、上側筐体80aに設けられた空気取込口82およびカソードハウジング210に設けられた開口212を経由して外部から空気が供給される。また、アノード触媒層206は、電解質膜202の他方の面に形成されている。アノード触媒層206には、燃料カートリッジ30から放出された水素が供給される。一対のカソード触媒層204とアノード触媒層206との間に電解質膜が202が狭持されることにより単セルが構成され、単セルは水素と空気中の酸素との電気化学反応により発電する。
【0022】
カソード触媒層204およびアノード触媒層206は、それぞれイオン交換樹脂ならびに触媒粒子、場合によって炭素粒子や炭素繊維を有する。
【0023】
カソード触媒層204およびアノード触媒層206が有するイオン交換樹脂は、触媒粒子と電解質膜202とを接続し、両者間においてプロトンを伝達する役割を持つ。このイオン交換樹脂は、電解質膜202と同様の高分子材料から形成されてよい。触媒金属としては、Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Pt、Os、Ir、ランタノイド系列元素やアクチノイド系列の元素の中から選ばれる合金や単体が挙げられる。また触媒を担持する場合には炭素粒子として、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブなどを用いてもよい。なお、カソード触媒層204およびアノード触媒層206の厚さは、それぞれ、たとえば10〜40μmである。
【0024】
電解質膜202のカソード側に、カソード触媒層204を覆うように、多孔質体90が形成されている。多孔質体90の材料は、たとえば、フッ素樹脂である。カソード触媒層204の上に多孔質体90を形成することにより、外部からカソード触媒層204への空気および水蒸気の流通を確保しつつ、各単セルにおいてドライアウトが発生することを抑制することができる。多孔質体90の空孔率は、各単セルの乾燥を抑制する範囲で設計される。
【0025】
隣接する単セルのうち、一方の単セルのアノード触媒層206と他方の単セルのカソード触媒層204とをインターコネクターなどの電気接続部材(図示せず)を用いて電気的に接続することにより、複数の単セルが直列に接続されている。
【0026】
電解質膜202の外縁部に沿って、カソードハウジング210の側壁の縁とアノードハウジング220の側壁の縁とが向かい合わせになることで、燃料電池モジュール20の筐体が形成されている。
【0027】
カソードハウジング210には、燃料電池モジュール20のカソード触媒層204に対向する面に開口212が設けられている。上側筐体80aに設けられている空気取込口82、カソードハウジング210に設けられている開口212、多孔質体90を経由して、燃料電池モジュール20のカソード触媒層204に空気が供給される。なお、開口212の周縁のカソードハウジング210により多孔質体90の周縁部が保持されており、カソード触媒層204と多孔質体90との密着性の向上が図られている。
【0028】
電解質膜202と対向するアノードハウジング220の面は、アノード触媒層206から離間して設けられており、アノード触媒層206とアノードハウジング220との間に、燃料ガス室230が形成されている。アノードハウジング220には、燃料電池モジュール20のアノード触媒層206に対向する面に燃料取込口214が設けられている。燃料カートリッジ30から供給された水素は、燃料取込口214を経由して、燃料ガス室230に導入され、各単セルの発電に用いられる。なお、アノードハウジング220の側壁の縁と、電解質膜202の外縁部との間にはパッキン213が配設されており、燃料ガス室230の気密性が高められている。
【0029】
隣接する燃料電池モジュール20の間、言い換えると、燃料電池モジュール20の区画の境界部分に、断熱材を配置することが望ましい。これによれば、発電中の燃料電池モジュール20から発電を停止している燃料電池モジュール20に熱が逃げにくくなるため、後述する効果をより発揮させることができる。
【0030】
図3は、実施の形態に係る燃料電池システムにおける燃料供給経路を示すブロック図である。
【0031】
燃料充填口62に補給用の水素を貯蔵する外部ボンベ(図示せず)を接続することにより、燃料カートリッジ30内の水素吸蔵合金に水素を補充することができる。なお、燃料充填口62と燃料カートリッジ30との間の配管には逆止弁63が設けてあり、燃料カートリッジ30に貯蔵された水素が外部に漏れることが抑制されている。
【0032】
燃料カートリッジ30に貯蔵された水素は、レギュレータ60を介して燃料供給プレート70に供給される。レギュレータ60により、外部ボンベから水素吸蔵合金に水素が補充される際や、水素吸蔵合金から水素が放出される際に、燃料供給プレート70に供給される水素の圧力が低減され、各燃料電池モジュール20のアノードが保護される。
【0033】
燃料供給プレート70には、レギュレータ60を経由した水素を各燃料電池モジュール20に分配するための燃料流路72が設けられている(図2参照)。燃料流路72の出口は、燃料電池モジュール20に設けられた燃料取込口214に対応して設けられており、燃料流路72を通過した水素は、燃料流路72の出口から燃料取込口214を経由して、燃料電池モジュール20の燃料ガス室230に導入される。なお、燃料流路72の出口と燃料取込口214との間が密閉空間になるように、燃料電池モジュール20と燃料供給プレート70との間にパッキン74が設けられている。
【0034】
レギュレータ60から燃料供給プレート70への水素の供給は、燃料遮断スイッチ64により遮断可能である。燃料電池システムを使用しない場合に、燃料遮断スイッチ64により水素の供給を遮断することにより、燃料電池モジュール20から微量の水素が散逸することで燃料が消費されることを抑制することができる。また、燃料電池システム10に異常が発生した場合などに、燃料遮断スイッチ64により水素の供給を緊急遮断することにより、安全の確保を図ることができる。
【0035】
図4は、実施の形態に係る燃料電池システムの回路構成を示す回路図である。燃料電池モジュール20aと燃料電池モジュール20bとが並列接続されており、接続ノード300と燃料電池モジュール20aの正極との間にスイッチ310aが設けられている。スイッチ310aのオンオフは、制御部40によって制御されており、スイッチ310aをオンオフさせることにより、燃料電池モジュール20aが外部負荷320に接続されている状態と外部負荷320から切り離されている状態とを切り替えることができる。また、接続ノード300と燃料電池モジュール20bの正極との間にスイッチ310bが設けられている。スイッチ310bのオンオフは、制御部40によって制御されており、スイッチ310bをオンオフさせることにより、燃料電池モジュール20bが外部負荷320に接続されている状態と外部負荷から切り離されている状態とを切り替えることができる。なお、外部負荷320は、携帯機器などの電源負荷である。
【0036】
燃料電池モジュール20a、20bの温度は、それぞれ温度センサー22a、22bにより計測される。温度センサー22a、22bにより計測された温度は、それぞれ制御部40に送信される。なお、温度センサー22aにより計測される温度は、燃料電池モジュール20aの電解質膜202近傍の温度、または燃料電池モジュール20aの電解質膜202近傍の温度に比例する温度である。同様に、温度センサー22bにより計測される温度は、燃料電池モジュール20bの電解質膜202近傍の温度、または燃料電池モジュール20bの電解質膜202近傍の温度に比例する温度である。また、温度センサー22zは、外部雰囲気温度を計測している。
【0037】
燃料電池モジュール20にて発生した直流電力は、DC/DCコンバータ(変換回路)330により所定電圧(たとえば24V)の直流電力に変換された後、並列接続された二次電池50および外部負荷320に供給される。なお、DC/DCコンバータ330により昇圧される所定電圧は、制御部40によって設定される。
【0038】
二次電池50は、たとえば、リチウムイオン二次電池である。二次電池50の放電または充電は、二次電池制御回路52によって制御される。
【0039】
外部負荷320の負荷電力を計測するには、DC/DCコンバータ330の出力電圧が一定である場合は、電流値の計測により負荷電力の算出が可能となる。電流値は、たとえば、シャント抵抗器などの抵抗器の両端の電圧を計測することにより算出が可能である。具体的には、接続ノード300とDC/DCコンバータ330との間に設けられた電流検出器340によって計測された電流値が、制御部40に送信され、送信された電流値に基づいて制御部40において外部負荷電力の値が算出される。出力電圧が変化する場合には、電流値と電圧値の両方を計測し、それらを演算することにより、外部負荷電力の算出が可能となる。また、二次電池制御回路52にも同様の電流検出器を設けて、二次電池負荷電力も計測可能であり、外部負荷電力と二次電池負荷電力を合計し、負荷電力の算出が可能となる。
【0040】
制御部40は、CPU、RAM、ROM等を備えるマイクロコンピュータとして構成されており、ROMに記憶されたプログラムに従って、燃料電池システム10の運転を制御する。具体的には、制御部40は、入力された各燃料電池モジュール20の温度情報、電流検出器340で計測された電流値を用いて算出された外部負荷と二次電池制御回路部55で計測された二次電池の充電時の負荷の値の合計に基づいて、スイッチ310a、310bのオンオフを制御する。制御部40による、スイッチ310a、310bのオンオフを制御については後述する。
【0041】
(燃料電池システムの動作フロー)
図5は、実施の形態に係る燃料電池システム10の動作を示す第1のフローチャートである。まず、燃料電池システム10と電気的に接続された外部負荷と二次電池の充電時の負荷の合計が所定の閾値Wth以下であるか否かが判定される(S10)。
【0042】
ここで、閾値Wthは、外部負荷が最大になるときの最大負荷の1/2である。負荷が所定の閾値Wth以下である場合には(S10のYes)、燃料電池モジュール20aの温度T1が所定の閾値Tth以下であるか、あるいは、燃料電池モジュール20bの温度T2が所定の閾値Tth以下であるかが判定される(S20)。なお、閾値Tthは、各燃料電池モジュール20においてフラッディングが生じるおそれがある温度であり、たとえば、外部雰囲気温度が25℃の場合は、35℃である。この閾値Tthは、外部雰囲気温度に応じて変化する。
【0043】
燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bの少なくとも一方の温度が所定の閾値Tth以下である場合には(S20のYes)、燃料電池モジュール20aと燃料電池モジュール20bとが交互に切り替えられて外部負荷に接続した状態で燃料電池システム10が運転(以下、切替運転という)される(S30)。切替運転時に、燃料電池モジュール20a、20bを切り替えるタイミングは、たとえば、一方の燃料電池モジュール20を外部負荷に接続したときの経過時間が一定時間に達したタイミングであり、5〜300秒である。
【0044】
一方、外部負荷が所定の閾値Wthを超えた場合(S10のNo)や、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bの両方の温度が所定の閾値Tthを超えた場合(S20のNo)には、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bの両方が外部負荷に接続される(S40)。
【0045】
図6は、燃料電池モジュールのI−V特性、I−P特性、温度の電流依存性および生成水の電流依存性を示すグラフである。全ての燃料電池モジュールが常に外部負荷に接続されている場合には、外部負荷に応じて燃料電池モジュールの電流が大きく変化する。最大負荷の1/2の負荷の場合における燃料電池モジュールの電流I2は、最大負荷の場合における電流I1の1/2になる。このように、燃料電池モジュールの電流が外部負荷に依存して変化すると、電流に依存して燃料電池モジュールの温度および生成水の量が大きく変化することがわかる。これに対して、上述した切替運転を行う場合には、最大負荷の1/2の負荷の場合における個々の燃料電池モジュールの電流I2’を最大負荷時の電流I1と同等にすることができるため、最大負荷時と低負荷時とで、燃料電池モジュールの温度および生成水の量を同等に維持することができる。
【0046】
(動作例1の説明)
図7は、燃料電池システムの動作例1を示すタイミングチャートである。図7(A)は、外部負荷の時間変化を示す。図7(B)、(C)は、それぞれ、燃料電池モジュール20a、20bの接続状態(オンオフの状態変化)を示す。図7(D)は、各燃料電池モジュールの電力の変化を示す。なお、本例では、システムに二次電池50と二次電池制御回路52がない場合を示す。
【0047】
初期状態(時刻t0)において、外部負荷は生じておらず、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bの温度(周囲の温度)は、それぞれ閾値Tth以下である。この状態では、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bは、ともに発電を行っておらず、外部負荷からも切り離されている。
【0048】
時刻t1において、外部負荷が起動する。このときの外部負荷は低負荷であり、所定の閾値Wth以下である。時刻t1を基点として、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bで発電が開始される。この状態では、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bの温度は、ともに閾値Tth以下の状態が継続している。このため、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bが交互に外部負荷に接続される。すなわち、外部負荷に見合う電力が燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bのいずれか一方の発電により賄われている。
【0049】
時刻t2において、燃料電池モジュール20aの温度が閾値Tthより高くなるが、燃料電池モジュール20bの温度が閾値Tth以下であるため、引き続き、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bが交互に外部負荷に接続される。
【0050】
時刻t3において、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bの温度が、ともに閾値Tthより高くなる。このため、時刻t3を基点として、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bの両方が外部負荷に接続される。すなわち、この状態では、外部負荷に見合う電力が燃料電池モジュール20aによる発電と燃料電池モジュール20bによる発電により分担され、個々の燃料電池モジュール20に対する負荷が軽減されている。
【0051】
時刻t4において、外部負荷が停止すると、燃料電池モジュール20aおよび燃料電池モジュール20bが外部負荷から切り離される。
【0052】
次に、時刻t5において、外部負荷が所定の閾値Wthより高い高負荷状態(最大負荷)で起動する。この場合には、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bの両方が外部負荷に接続され、外部負荷に見合う電力が燃料電池モジュール20aによる発電と燃料電池モジュール20bによる発電により分担される。このときの燃料電池モジュール20に流れる電流は、低負荷時の切替運転時に燃料電池モジュール20に流れる電流と同等である。
【0053】
(実施例)
図8と図9は、本実施の効果を示すグラフである。燃料電池システムが2つの燃料電池モジュールで構成されており、温度20℃、湿度50%RHの環境条件で定格出力電力の半分の出力電力で動作させたときのデータをそれぞれ図8と図9で示す。図8は、従来の制御方法であり、2つの燃料電池モジュールを負荷に接続した場合を示す。図9は、動作例1の接続方法で、2つの燃料電池モジュールを負荷に1分間毎に交互で接続した場合を示す。
【0054】
図8と図9を比較すると、システム運転開始30分で燃料電池モジュールの平均表面温度が従来例の制御方法で23度、動作例1の制御方法で26度となり、3℃の温度差が生じた。また、従来例では燃料電池モジュールには表面に生成水の結露が生じていたが、動作例1では生成水の結露は生じなかった。動作例1では温度20℃、湿度50%RHの環境条件でのみ試験を行ったが、さらに低温、高湿度の環境条件で試験を行えば、従来例ではフラッディングにより燃料電池の運転が不安定になった可能性がある。動作例1では、環境条件が変わった場合でも燃料電池の分割数を増やすことにより、安定して動作する環境条件の範囲が広がる。このことを説明するために、外部環境の温度変化と湿度変化に対する燃料電池システムでのドライアウトとフラッディングについて説明する。図10は、ドライアウト温度T4およびフラッディング温度T1の湿度依存性を示すグラフである。ドライアウト温度T4およびフラッディング温度T1は、湿度の上昇に伴い上昇する。このように、燃料電池のドライアウトおよびフラッディング開始温度は湿度に依存して変化し、たとえば、高湿度条件ではフラッディング温度T3が高くなるため、フラッディングしやすくなる。このため、外部環境の湿度変化に応じた温度制御が必要となる。図10のグラフは一例であり、燃料電池システムの出力に応じて変化する。
【0055】
図10において、温度T4’は、ドライアウト温度T4の下限値(低湿度条件、たとえば、湿度20%におけるドライアウト温度)である。また、温度T3’は、フラッディング温度T3の上限値(高湿度条件、たとえば、湿度80%におけるフラッディング温度)である。図10に示すように、温度T3’から温度T4’の温度範囲では、湿度が変化してもドライアウトおよびフラッディングのいずれも生じない。このため、温度T3’から温度T4’の温度範囲は、燃料電池が湿度に依存せず安定的に発電可能な温度範囲である。動作例1の制御を行なうことによって、湿度に依存せずに安定的に発電可能な温度範囲が広がる。
【0056】
(動作例2の説明)
図11は、燃料電池システムの動作例2を示すタイミングチャートである。図11(A)は、外部負荷の時間変化を示す。図11(B)、(C)は、それぞれ、燃料電池モジュール20a、20bの接続状態(オンオフの状態変化)を示す。図11(D)は、各燃料電池モジュールの電力の変化を示す。
【0057】
動作例1と動作例2との違いは、時刻t1から時刻t3までの燃料電池モジュール20a,燃料電池モジュール20bの切替運転の区間において、燃料電池モジュール20aと燃料電池モジュール20bとが切り替わるときに、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bの両方が外部負荷に接続される区間Sが存在することである。これにより、各燃料電池モジュール20における急激な負荷変動が抑制されるため、各単セルまたは燃料電池モジュール20の劣化を防ぐことが可能となる。また、これにより、各燃料電池モジュール20の出力を安定化させることができる。また、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bの切り替え動作をよりスムースに行うことができる。
【0058】
以上説明した燃料電池システムによれば、外部負荷に応じて、外部負荷に接続されている燃料電池モジュールの数を変化させることにより、外部負荷が変動しても、各燃料電池モジュール20に流れる電流の値を同等にすることができる。この結果、燃料電池モジュール20の温度が一定の範囲内で推移することでドライアウトや生成水の結露が抑制され、ひいては燃料電池システム10の発電動作をより安定化させることができる。
【0059】
また、外部負荷が小さいときに燃料電池モジュール20の外部負荷への接続を順に切替えることにより、各燃料電池モジュール20で発生した生成水が蒸発する時間を与えることが可能となる。また、切替運転を行うことで各単セルの面内の温度分布を均一にすることができる。
【0060】
本実施の形態の燃料電池システムは、循環ポンプや加湿器等の補機類を用いずにパッシブ方式で空気(酸素)をカソードに供給し、反応により消費した燃料(水素)を補うように燃料を補給するデッドエンド方式で燃料をアノードに供給する場合に有効である。
【0061】
なお、アクティブ方式(空気や燃料を外部動力を使って供給する方式)の燃料電池システムにおいては、電流負荷のオンオフに応じて、燃料や空気の供給を個々の燃料電池モジュールごとにオンオフすることにより、パッシブ方式の燃料電池システムと同様な効果を得ることができる。
【0062】
(燃料電池システムの第2の動作フロー)
図12は、実施の形態に係る燃料電池システム10の動作を示す第2のフローチャートである。本動作におけるS10、S20、S30およびS40の各処理は、燃料電池システム10の第1の動作と同様である。本動作においては、S40において燃料電池モジュール20a、20bの両方を負荷に接続した後、各燃料電池モジュールの温度T1、T2からそれぞれ平均値を引いて得られる差分S1、S2が閾値Sthより大きいか否かが判定される(S50)。平均値とは、燃料電池モジュール20aの温度T1と燃料電池モジュール20bの温度T2の平均値である。上記差分が閾値Sth以下である場合には(S50のNo)、S10の処理に戻る。一方、上記差分が閾値Sthより大きい場合には(S50のYes)、該当する燃料電池モジュールの制限電流値Iを決定する(S60)。制限電流値Iの決定方法として、たとえば、電流制御の対象となる燃料電池モジュールの温度と平均値との差分に応じて制限電流値Iをメモリ等に予め設定しておくことが挙げられる。続いて、電流制御の対象となる燃料電池モジュールに対応して設けられたスイッチを連続的にオンオフすることにより、該当する燃料電池モジュールに流れる電流が制限電流値Iになるように制御する(S70)。電流が制御された燃料電池モジュールは、発電量の減少に伴い、発熱量が減少し、ひいては、温度の上昇速度が鈍るか、温度が下降する。一方、電流制御がされない燃料電池モジュールは、電流制御された燃料電池の出力を賄うために発電量が増加する。これにより、電流制御がされない燃料電池モジュールの発熱量が増加し、温度も上昇する。この結果、各燃料電池モジュールの温度差が低減される。電流制御を所定時間(たとえば、1秒)実施した後、各燃料電池モジュールの温度から平均値を引いて得られる差分が閾値Sth以下であるか否かが判定される(S80)。差分が閾値Sth以下である場合(S80のYes)には、S10の判定に戻る。一方、差分が閾値Sthより大きい場合(S80のNo)には、S70に戻り、引き続き電流制御が行われる。
【0063】
なお、本フローチャートでは、燃料電池モジュールの数が2であるが、燃料電池モジュールの数が3以上の場合にも本動作が適用されうる。この場合には、S50の判断における平均値は、3以上の燃料電池モジュールの温度の平均値であり、各燃料電池モジュールについて、S50〜S80のステップが実施される。
【0064】
(動作例3の説明)
図13は、燃料電池システムの動作例3を示すタイミングチャートである。図13(A)は、外部負荷の時間変化を示す。図13(B)、(C)は、それぞれ、燃料電池モジュール20a、20bの接続状態(オンオフの状態変化)を示す。図13(D)は、各燃料電池モジュールの電力の変化を示す。
【0065】
図13は、負荷>閾値Wth(S10のNo)の場合の動作を示す。初期状態(時刻t0)において、外部負荷は生じておらず、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bの温度(周囲の温度)は、それぞれ閾値Tth以下である。この状態では、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bは、ともに発電を行っておらず、外部負荷からも切り離されている。
【0066】
時刻t1において、外部負荷が起動する。このときの外部負荷は高負荷であり、所定の閾値Wthより高い。時刻t1を基点として、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bで発電が開始され、外部負荷に見合う電力が燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bの両方の発電により賄われる。
【0067】
時刻t2において、燃料電池モジュール20aの温度T1から平均値を引いた差分S1が閾値Sthより高くなると、燃料電池モジュール20aの負荷を瞬間的(数100Hz〜数MHz)にオンオフすることにより、燃料電池モジュール20aの電流を制限電流値Iとする。なお、燃料電池モジュール20aの電流を制御する場合には、燃料電池モジュール20aのオンオフのDuty比を所定の値にすればよい。燃料電池モジュール20aの電流が制御されている間、燃料電池モジュール20aの出力を補うために、燃料電池モジュール20bの電流値が増加する。燃料電池モジュール20aの電流が制御されている間、燃料電池モジュール20bの出力は燃料電池モジュール20aの出力に比べて大きくなる。t2以降、電流制御される燃料電池モジュール20aの温度上昇が鈍り、電流制御されない燃料電池モジュール20bの温度上昇が増大し、両者の温度差が低減される。
【0068】
時刻t3において、燃料電池モジュール20aの温度T1から平均値を引いた差分S1が閾値Sth以下になると、燃料電池モジュール20aの電流制御が解除される。以降、時刻t4において一方の燃料電池モジュールの電流制御が開始され、時刻t5で電流制御が解除される。
【0069】
(燃料電池システムの第3の動作フロー)
図14は、実施の形態に係る燃料電池システム10の第3の動作を示すフローチャートである。本動作におけるS10、S20、S30およびS40の各処理は、燃料電池システム10の第1の動作と同様である。本動作においては、S40において燃料電池モジュール20a、20bの両方を負荷に接続した後、最大温度Tmax−最小温度Tminが閾値Uthより大きいか否かが判定される(S50)。なお、最大温度Tmaxとは、複数の燃料電池モジュールの中で、温度が最大となる燃料電池モジュールの温度であり、最小温度Tminとは、複数の燃料電池モジュールの中で、温度が最小となる燃料電池モジュールの温度である。本フローでは、燃料電池モジュール20aの温度が最大温度Tmaxであり、燃料電池モジュール20bの温度が最小温度Tminである。最大温度Tmax−最小温度Tminが閾値Uth以下である場合には(S50のNo)、S10の処理に戻る。一方、最大温度Tmax−最小温度Tminが閾値Uthより大きい場合には(S50のYes)、温度が所定順位内の燃料電池モジュールの制限電流値Iを決定する(S60)。たとえば、本フローのように、燃料電池モジュールの数が2である場合には、温度が高い方の燃料電池モジュールの制限電流値Iが決定される。また、燃料電池モジュールの数がn(nは3以上)である場合には、温度が高い順番(1以上n−1)までの燃料電池モジュールの制限電流値Iが決定される。続いて、電流制御の対象となる燃料電池モジュールに対応して設けられたスイッチを連続的にオンオフすることにより、該当する燃料電池モジュールに流れる電流が制限電流値Iになるように制御する(S70)。電流が制御された燃料電池モジュールは、発電量の減少に伴い、発熱量が減少し、ひいては、温度の上昇速度が鈍るか、温度が下降する。一方、電流制御がされない燃料電池モジュールは、電流制御された燃料電池の出力を賄うために発電量が増加する。これにより、電流制御がされない燃料電池モジュールの発熱量が増加し、温度も上昇する。この結果、各燃料電池モジュールの温度差が低減される。電流制御を所定時間(たとえば、1秒)実施した後、最大温度Tmax−最小温度Tminが閾値Uth以下であるか否かが判定される(S80)。差分が閾値Uth以下である場合(S80のYes)には、S10の判定に戻る。一方、差分が閾値Uthより大きい場合(S80のNo)には、S70に戻り、引き続き電流制御が行われる。
【0070】
以上説明した、第2および第3のフローチャートに従う動作によれば、燃料電池モジュールの温度にばらつきが生じた場合に温度差を小さくし、燃料電池モジュールの温度を均一化することができる。これにより、燃料電池モジュールを個別に冷却する機構、制御をする必要がなくなるため、燃料電池システムの構成を簡便化することができる。
【0071】
(変形例1)
外部負荷に並列接続される燃料電池モジュールの数は2個に限られず、3個以上であってもよい。たとえば、図15に示すように、変形例1に係る燃料電池システム10は、4個の燃料電池モジュール20a〜dを備える。4個の燃料電池モジュール20a〜dが外部負荷に並列接続される場合には、燃料電池モジュール20のを切替運転を行う場合に、外部負荷に同時に接続する燃料電池モジュール20の数を1、2、3のいずれかに設定することができる。外部負荷に同時に接続する燃料電池モジュール20の数が1、2、3の場合に適した外部負荷は最大負荷に対して、それぞれ25%、50%、75%である。
【0072】
【表1】
【0073】
表1は、外部負荷に並列接続される燃料電池モジュール20の数が4個の場合に、50%負荷に対応して切替運転するときの各燃料電池モジュール20の接続状態を示す。表1において、「ON」は外部負荷に接続されていることを示し、「OFF」は外部負荷から切り離されていることを示す。切替運転時の接続状態は、接続状態1→接続状態2→接続状態3→接続状態4→接続状態1の順で繰り返し推移する。各接続状態において、4個の燃料電池モジュール20のうち、2個の燃料電池モジュール20が外部負荷に接続されている。このため、個々の燃料電池モジュール20に対する負荷は25%負荷となり、最大負荷時における個々の燃料電池モジュール20に対する負荷と同等となる。すなわち、個々の燃料電池モジュール20の電流密度は、負荷が変動しても一定の値に維持される。この結果、燃料電池モジュール20の温度が一定の範囲内で推移することでドライアウトや生成水の結露が抑制され、ひいては燃料電池システム10の発電動作をより安定化させることができる。
【0074】
負荷に電気的に並列接続される燃料電池モジュールの数をnに一般化すると、少なくとも1つの燃料電池モジュールの温度が所定の温度以下の場合に、負荷に応じて、負荷に同時に接続される燃料電池モジュールの数をm/n[m=1、2、・・・、n−1]に設定して、切替運転を実行することができる。より具体的には、負荷が最大負荷を基準としてm/n以下になった場合に、負荷に同時に接続される燃料電池モジュールの数がmになるように接続切替手段を用いて負荷に接続される燃料電池モジュールが順に切り替えられる。
【0075】
(変形例2)
上述した実施の形態および変形例では、複数の燃料電池モジュールが平面状に配列されているが、燃料電池モジュールの配列の形態はこれに限られない。図16は、変形例2に係る燃料電池システムの概略構成を示す分解斜視図である。図17は、変形例2に係る燃料電池システムの概略構成を示す要部断面図である。
【0076】
本変形例では、隣接する燃料電池モジュール20の主表面が互いに向かい合うように複数の燃料電池モジュールが並設されている。本変形例の燃料電池システム10は、燃料電池モジュール20の配列の仕方が異なるが、動作に関しては上述した実施の形態の燃料電池システム10と同様である。
【0077】
2組の燃料電池モジュール20に対応して、燃料供給プレート70から上方に突出する燃料供給プレート71が設けられている。各燃料供給プレート71の内部には燃料流路72と連通する燃料流路73が設けられている。燃料供給プレート71の両主表面には、それぞれ、燃料流路73の出口となる開口部75が設けられている。
【0078】
燃料供給プレート71の両主表面にアノード側が向くようにそれぞれ燃料電池モジュール20が設けられている。燃料電池モジュール20を構成する電解質膜202の周囲と燃料供給プレート71との間にパッキン213が設けられており、燃料供給プレート71と燃料電池モジュール20のアノード側との間に水素を閉じ込めるアノード空間310が形成されている。
【0079】
水素は、燃料流路72から各燃料流路73に分配され、燃料供給プレート71の両主表面に配設された2組の燃料電池モジュール20のアノード触媒層206に供給される。
【0080】
上側筐体80aの上面および側面に空気取込口82が設けられている。空気取込口82から流入した空気は多孔質体90を通過して、各燃料電池モジュール20のカソード触媒層204に供給される。
【0081】
以上説明した本変形例の燃料電池システムに実施の形態の燃料電池システムの動作を適用することにより、複数の燃料電池モジュール20の主表面が互いに向かい合うように配列された構造においても実施の形態の燃料電池システムと同様な効果が得られる。
【0082】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。
【0083】
たとえば、上述の実施の形態では、各燃料電池モジュールは複数のセルで構成させているが、各燃料電池モジュールは単セルで構成されていてもよい。この場合には、電圧調整回路を設け、切替運転時に外部負荷の電圧に応じて各燃料電池モジュールの出力電圧を昇圧させることにより、外部負荷を駆動させることができる。
【符号の説明】
【0084】
10 燃料電池システム、20a,20b,20c,20d 燃料電池モジュール、30 燃料カートリッジ、40 制御部、50 二次電池、60、レギュレータ、70 燃料供給プレート、200 膜電極接合体、202 電解質膜、204 カソード触媒層、206 アノード触媒層
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。より具体的には、本発明は平面配列型の燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は水素と酸素とから電気エネルギーを発生させる装置であり、高い発電効率を得ることができる。燃料電池の主な特徴としては、従来の発電方式のように熱エネルギーや運動エネルギーの過程を経ない直接発電であるので、小規模でも高い発電効率が期待できること、窒素化合物等の排出が少なく、騒音や振動も小さいので環境性が良いことなどが挙げられる。このように、燃料電池は燃料のもつ化学エネルギーを有効に利用でき、環境にやさしい特性を持っているので、21世紀を担うエネルギー供給システムとして期待され、宇宙用から自動車用、携帯機器用まで、大規模発電から小規模発電まで、種々の用途に使用できる将来有望な新しい発電システムとして注目され、実用化に向けて技術開発が本格化している。
【0003】
中でも、固体高分子形燃料電池は、他の種類の燃料電池に比べて、作動温度が低く、高い出力密度を持つ特徴が有り、特に近年、携帯機器(携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータ、PDA、MP3プレーヤ、デジタルカメラあるいは電子辞書、電子書籍)などの電源への利用が期待されている。携帯機器用の固体高分子形燃料電池としては、複数の単セルを平面状に配列した平面配列型の燃料電池が知られている(特許文献1参照)。燃料としては、特許文献1に示したメタノールの他、水素吸蔵合金や水素ボンベに格納された水素を利用することが研究されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−244715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
周囲環境の変化や負荷電力変動により燃料電池の熱バランスが変化することにより、燃料電池に温度変化が生じる。負荷電力が大きい場合には、燃料電池の温度が高くなることにより、燃料電池の電解質膜が乾燥して性能が低下することが考えられる。特に、同一平面状にセルが配置された平面配列型の燃料電池においては、大気に開放される面が大きいために電解質膜が乾燥しやすくなる。乾燥を防ぐために燃料電池の空気極(カソード)側を覆う多孔質体(空気/水蒸気の流通部)を用いる構成が知られている。しかし、多孔質体の開孔率はドライアウトを防止することを目的として設計されるために、負荷電力が低い場合には生成水と熱とのバランスの関係で発熱が十分でなくなり、生成水が結露しやすくなるという問題(フラッディング)が生じる課題があった。
【0006】
また、各燃料電池モジュール間で性能にばらつきがある場合には、並列接続したときに最も性能の高い燃料電池モジュールでは燃料電池の温度が高くなり、最も性能の低い燃料電池モジュールでは燃料電池の温度が低くなる。このため、発電時(特に最大出力時)では燃料電池の温度差が大きくなり、温度の高い燃料電池ではドライアウトが発生する場合がある。また、個別に冷却制御が可能な冷却システムが必要である場合がある。
【0007】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、負荷電力変動が生じた場合であっても、発電動作を安定的に実行することができる燃料電池システムの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、燃料電池システムである。当該燃料電池システムは、負荷に対して電気的に並列接続されているn個[nは2以上の整数]の燃料電池モジュールと、各燃料電池モジュールと負荷との接続状態を切り替え可能な接続切替手段と、少なくとも1つの燃料電池モジュールの温度が所定の温度以下の場合に、負荷電力に応じて、負荷に同時に接続される燃料電池モジュールの数がm[m=1、2、・・・、n−1]になるように接続切替手段を用いて負荷に接続される燃料電池モジュールを切り替える切替運転を実行させる制御部と、を備えることを特徴とする。ここで、負荷とは、外部負荷(アプリケーション)と二次電池負荷(燃料電池システム内に内蔵されている二次電池)の和のことを指す。
【0009】
この態様によれば、負荷電力に応じて、負荷に接続されている燃料電池モジュールの数を変化させたり、負荷に接続される燃料電池モジュールを異ならせたりすることにより、負荷が変動しても、各燃料電池モジュールに流れる電流の値を同等にすることができる。この結果、燃料電池モジュールの温度が一定の範囲内で推移することでドライアウトや生成水の結露が抑制され、ひいては燃料電池システムの発電動作をより安定化させることができる。
【0010】
上記態様の燃料電池システムにおいて、n個の燃料電池モジュールが平面状に配列されていてもよい。また、隣接する燃料電池モジュールの主表面が互いに向かい合うようにn個の燃料電池モジュールが並設されていてもよい。
【0011】
上記態様の燃料電池システムにおいて、制御部は、一定時間経過毎に、負荷に接続される燃料電池モジュールの組み合わせを切り替えてもよい。また、制御部は、各燃料電池モジュールの温度がいずれも所定の温度より高くなった場合に、n個の燃料電池モジュールを負荷に接続させてもよい。また、制御部は、切替運転の際に、負荷に接続する対象となる燃料電池モジュールを負荷に接続し、所定の時間経過後に、負荷から切り離す対象となる燃料電池モジュールを負荷から切り離す処理を実行させてもよい。また、制御部は、負荷電力が最大のm/n以下になった場合に、負荷に同時に接続される燃料電池モジュールの数がmになるように接続切替手段を用いて負荷に接続される燃料電池モジュールを順に切り替える切替運転を実行させてもよい。
【0012】
また、上述した態様の燃料電池システムにおいて、制御部は、特定の燃料電池モジュールの温度が各燃料電池モジュールの温度の平均値に対して所定の値より大きい場合に、当該燃料電池モジュールの温度に応じて当該燃料電池モジュールの電流を制限してもよい。また、上述した態様の燃料電池システムにおいて、制御部は、全燃料電池モジュールの温度の中で最大温度と最小温度との差が所定値より大きい場合に、全燃料電池モジュールの中で温度が高い順に1つあるいは複数の燃料電池モジュールについて、その温度に応じて当該燃料電池モジュールの電流を制限してもよい。
【0013】
なお、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれうる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の燃料電池システムによれば、負荷電力の変動が生じた場合であっても、負荷電力に応じた発電を行うように燃料電池モジュールの接続数を切替えることができ、燃料電池モジュールの分割数や同時に接続する燃料電池モジュールの接続数を増やすことによって、より広範囲の負荷の範囲で発電動作を安定的に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態に係る燃料電池システムの概略構成を示す分解斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿った断面の要部断面図である。
【図3】実施の形態に係る燃料電池システムにおける燃料供給経路を示すブロック図である。
【図4】実施の形態に係る燃料電池システムの回路構成を示す回路図である。
【図5】実施の形態に係る燃料電池システムの動作を示す第1のフローチャートである。
【図6】燃料電池モジュールのI−V特性、I−P特性、温度の電流依存性および生成水の電流依存性を示すグラフである。
【図7】実施の形態に係る燃料電池システムの動作例1を示すタイミングチャートである。図7(A)は、負荷電力の時間変化を示す。図7(B)、(C)は、各燃料電池モジュールの接続状態(オンオフの状態変化)を示す。図7(D)は、各燃料電池モジュールの電力の変化を示す。
【図8】従来の制御方法における、燃料電池システムの温度変化を示すグラフである。
【図9】動作例1の制御方法における、燃料電池システムの温度変化を示すグラフである。
【図10】ドライアウト温度およびフラッディング温度の湿度依存性を示すグラフである。
【図11】実施の形態に係る燃料電池システムの動作例2を示すタイミングチャートである。図11(A)は、負荷電力の時間変化を示す。図11(B)、(C)は、各燃料電池モジュールの接続状態(オンオフの状態変化)を示す。図11(D)は、各燃料電池モジュールの電力の変化を示す。
【図12】実施の形態に係る燃料電池システムの動作を示す第2のフローチャートである。
【図13】図13は、燃料電池システムの動作例3を示すタイミングチャートである。図13(A)は、負荷電力の時間変化を示す。図13(B)、(C)は、それぞれ、燃料電池モジュール20a、20bの接続状態(オンオフの状態変化)を示す。図13(D)は、各燃料電池モジュールの電力の変化を示す。
【図14】実施の形態に係る燃料電池システムの動作を示す第3のフローチャートである。
【図15】変形例1に係る燃料電池システムの概略構成を示す分解斜視図である。
【図16】変形例2に係る燃料電池システムの概略構成を示す分解斜視図である。
【図17】図16のA−A線に沿った断面の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0017】
(実施の形態)
図1は、実施の形態に係る燃料電池システムの概略構成を示す分解斜視図である。図2は、実施の形態に係る燃料電池システムの概略構成を示す要部断面図である。燃料電池システム10は、燃料電池モジュール20a、20b(以下、燃料電池モジュール20a、20bを総称して燃料電池モジュール20と呼ぶ場合がある)、燃料電池モジュール20a、20bに供給される水素を貯蔵する水素吸蔵合金カートリッジ(以下、単に「燃料カートリッジ」という)30、制御部40、二次電池50、燃料カートリッジ30内の水素を燃料電池モジュール20に供給するための関連部材(レギュレータ60、燃料供給プレート70など)、ならびに、以上の部材の収容するための上側筐体80aおよび下側筐体80bを備える。
【0018】
図2に示すように、各燃料電池モジュール20は、主に、膜電極接合体200、カソードハウジング210およびアノードハウジング220を備える。
【0019】
膜電極接合(単セル)200は、電解質膜202と、電解質膜202の一方の面に離間して配設されている複数のカソード触媒層204と、電解質膜202の他方の面にカソード触媒層204に対応して配設されているアノード触媒層206とを含む。本実施の形態では、複数のカソード触媒層204が電解質膜202の一方の面に離間して配設されており、カソード触媒層204にそれぞれ対応して、複数のアノード触媒層206が電解質膜202の他方の面に離間して配設されている。
【0020】
電解質膜202は、湿潤状態において良好なイオン伝導性を示すことが好ましく、カソード触媒層204とアノード触媒層206との間でプロトンを移動させるイオン交換膜として機能する。電解質膜202は、含フッ素重合体や非フッ素重合体等の固体高分子材料によって形成され、例えば、スルホン酸型パーフルオロカーボン重合体、ポリサルホン樹脂、ホスホン酸基又はカルボン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体等を用いることができる。スルホン酸型パーフルオロカーボン重合体の例として、ナフィオン(デュポン社製:登録商標)112などが挙げられる。また、非フッ素重合体の例として、スルホン化された、芳香族ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホンなどが挙げられる。電解質膜202の厚さは、たとえば10〜200μmである。
【0021】
カソード触媒層204は、電解質膜202の一方の面に形成されている。カソード触媒層204には、上側筐体80aに設けられた空気取込口82およびカソードハウジング210に設けられた開口212を経由して外部から空気が供給される。また、アノード触媒層206は、電解質膜202の他方の面に形成されている。アノード触媒層206には、燃料カートリッジ30から放出された水素が供給される。一対のカソード触媒層204とアノード触媒層206との間に電解質膜が202が狭持されることにより単セルが構成され、単セルは水素と空気中の酸素との電気化学反応により発電する。
【0022】
カソード触媒層204およびアノード触媒層206は、それぞれイオン交換樹脂ならびに触媒粒子、場合によって炭素粒子や炭素繊維を有する。
【0023】
カソード触媒層204およびアノード触媒層206が有するイオン交換樹脂は、触媒粒子と電解質膜202とを接続し、両者間においてプロトンを伝達する役割を持つ。このイオン交換樹脂は、電解質膜202と同様の高分子材料から形成されてよい。触媒金属としては、Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Pt、Os、Ir、ランタノイド系列元素やアクチノイド系列の元素の中から選ばれる合金や単体が挙げられる。また触媒を担持する場合には炭素粒子として、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブなどを用いてもよい。なお、カソード触媒層204およびアノード触媒層206の厚さは、それぞれ、たとえば10〜40μmである。
【0024】
電解質膜202のカソード側に、カソード触媒層204を覆うように、多孔質体90が形成されている。多孔質体90の材料は、たとえば、フッ素樹脂である。カソード触媒層204の上に多孔質体90を形成することにより、外部からカソード触媒層204への空気および水蒸気の流通を確保しつつ、各単セルにおいてドライアウトが発生することを抑制することができる。多孔質体90の空孔率は、各単セルの乾燥を抑制する範囲で設計される。
【0025】
隣接する単セルのうち、一方の単セルのアノード触媒層206と他方の単セルのカソード触媒層204とをインターコネクターなどの電気接続部材(図示せず)を用いて電気的に接続することにより、複数の単セルが直列に接続されている。
【0026】
電解質膜202の外縁部に沿って、カソードハウジング210の側壁の縁とアノードハウジング220の側壁の縁とが向かい合わせになることで、燃料電池モジュール20の筐体が形成されている。
【0027】
カソードハウジング210には、燃料電池モジュール20のカソード触媒層204に対向する面に開口212が設けられている。上側筐体80aに設けられている空気取込口82、カソードハウジング210に設けられている開口212、多孔質体90を経由して、燃料電池モジュール20のカソード触媒層204に空気が供給される。なお、開口212の周縁のカソードハウジング210により多孔質体90の周縁部が保持されており、カソード触媒層204と多孔質体90との密着性の向上が図られている。
【0028】
電解質膜202と対向するアノードハウジング220の面は、アノード触媒層206から離間して設けられており、アノード触媒層206とアノードハウジング220との間に、燃料ガス室230が形成されている。アノードハウジング220には、燃料電池モジュール20のアノード触媒層206に対向する面に燃料取込口214が設けられている。燃料カートリッジ30から供給された水素は、燃料取込口214を経由して、燃料ガス室230に導入され、各単セルの発電に用いられる。なお、アノードハウジング220の側壁の縁と、電解質膜202の外縁部との間にはパッキン213が配設されており、燃料ガス室230の気密性が高められている。
【0029】
隣接する燃料電池モジュール20の間、言い換えると、燃料電池モジュール20の区画の境界部分に、断熱材を配置することが望ましい。これによれば、発電中の燃料電池モジュール20から発電を停止している燃料電池モジュール20に熱が逃げにくくなるため、後述する効果をより発揮させることができる。
【0030】
図3は、実施の形態に係る燃料電池システムにおける燃料供給経路を示すブロック図である。
【0031】
燃料充填口62に補給用の水素を貯蔵する外部ボンベ(図示せず)を接続することにより、燃料カートリッジ30内の水素吸蔵合金に水素を補充することができる。なお、燃料充填口62と燃料カートリッジ30との間の配管には逆止弁63が設けてあり、燃料カートリッジ30に貯蔵された水素が外部に漏れることが抑制されている。
【0032】
燃料カートリッジ30に貯蔵された水素は、レギュレータ60を介して燃料供給プレート70に供給される。レギュレータ60により、外部ボンベから水素吸蔵合金に水素が補充される際や、水素吸蔵合金から水素が放出される際に、燃料供給プレート70に供給される水素の圧力が低減され、各燃料電池モジュール20のアノードが保護される。
【0033】
燃料供給プレート70には、レギュレータ60を経由した水素を各燃料電池モジュール20に分配するための燃料流路72が設けられている(図2参照)。燃料流路72の出口は、燃料電池モジュール20に設けられた燃料取込口214に対応して設けられており、燃料流路72を通過した水素は、燃料流路72の出口から燃料取込口214を経由して、燃料電池モジュール20の燃料ガス室230に導入される。なお、燃料流路72の出口と燃料取込口214との間が密閉空間になるように、燃料電池モジュール20と燃料供給プレート70との間にパッキン74が設けられている。
【0034】
レギュレータ60から燃料供給プレート70への水素の供給は、燃料遮断スイッチ64により遮断可能である。燃料電池システムを使用しない場合に、燃料遮断スイッチ64により水素の供給を遮断することにより、燃料電池モジュール20から微量の水素が散逸することで燃料が消費されることを抑制することができる。また、燃料電池システム10に異常が発生した場合などに、燃料遮断スイッチ64により水素の供給を緊急遮断することにより、安全の確保を図ることができる。
【0035】
図4は、実施の形態に係る燃料電池システムの回路構成を示す回路図である。燃料電池モジュール20aと燃料電池モジュール20bとが並列接続されており、接続ノード300と燃料電池モジュール20aの正極との間にスイッチ310aが設けられている。スイッチ310aのオンオフは、制御部40によって制御されており、スイッチ310aをオンオフさせることにより、燃料電池モジュール20aが外部負荷320に接続されている状態と外部負荷320から切り離されている状態とを切り替えることができる。また、接続ノード300と燃料電池モジュール20bの正極との間にスイッチ310bが設けられている。スイッチ310bのオンオフは、制御部40によって制御されており、スイッチ310bをオンオフさせることにより、燃料電池モジュール20bが外部負荷320に接続されている状態と外部負荷から切り離されている状態とを切り替えることができる。なお、外部負荷320は、携帯機器などの電源負荷である。
【0036】
燃料電池モジュール20a、20bの温度は、それぞれ温度センサー22a、22bにより計測される。温度センサー22a、22bにより計測された温度は、それぞれ制御部40に送信される。なお、温度センサー22aにより計測される温度は、燃料電池モジュール20aの電解質膜202近傍の温度、または燃料電池モジュール20aの電解質膜202近傍の温度に比例する温度である。同様に、温度センサー22bにより計測される温度は、燃料電池モジュール20bの電解質膜202近傍の温度、または燃料電池モジュール20bの電解質膜202近傍の温度に比例する温度である。また、温度センサー22zは、外部雰囲気温度を計測している。
【0037】
燃料電池モジュール20にて発生した直流電力は、DC/DCコンバータ(変換回路)330により所定電圧(たとえば24V)の直流電力に変換された後、並列接続された二次電池50および外部負荷320に供給される。なお、DC/DCコンバータ330により昇圧される所定電圧は、制御部40によって設定される。
【0038】
二次電池50は、たとえば、リチウムイオン二次電池である。二次電池50の放電または充電は、二次電池制御回路52によって制御される。
【0039】
外部負荷320の負荷電力を計測するには、DC/DCコンバータ330の出力電圧が一定である場合は、電流値の計測により負荷電力の算出が可能となる。電流値は、たとえば、シャント抵抗器などの抵抗器の両端の電圧を計測することにより算出が可能である。具体的には、接続ノード300とDC/DCコンバータ330との間に設けられた電流検出器340によって計測された電流値が、制御部40に送信され、送信された電流値に基づいて制御部40において外部負荷電力の値が算出される。出力電圧が変化する場合には、電流値と電圧値の両方を計測し、それらを演算することにより、外部負荷電力の算出が可能となる。また、二次電池制御回路52にも同様の電流検出器を設けて、二次電池負荷電力も計測可能であり、外部負荷電力と二次電池負荷電力を合計し、負荷電力の算出が可能となる。
【0040】
制御部40は、CPU、RAM、ROM等を備えるマイクロコンピュータとして構成されており、ROMに記憶されたプログラムに従って、燃料電池システム10の運転を制御する。具体的には、制御部40は、入力された各燃料電池モジュール20の温度情報、電流検出器340で計測された電流値を用いて算出された外部負荷と二次電池制御回路部55で計測された二次電池の充電時の負荷の値の合計に基づいて、スイッチ310a、310bのオンオフを制御する。制御部40による、スイッチ310a、310bのオンオフを制御については後述する。
【0041】
(燃料電池システムの動作フロー)
図5は、実施の形態に係る燃料電池システム10の動作を示す第1のフローチャートである。まず、燃料電池システム10と電気的に接続された外部負荷と二次電池の充電時の負荷の合計が所定の閾値Wth以下であるか否かが判定される(S10)。
【0042】
ここで、閾値Wthは、外部負荷が最大になるときの最大負荷の1/2である。負荷が所定の閾値Wth以下である場合には(S10のYes)、燃料電池モジュール20aの温度T1が所定の閾値Tth以下であるか、あるいは、燃料電池モジュール20bの温度T2が所定の閾値Tth以下であるかが判定される(S20)。なお、閾値Tthは、各燃料電池モジュール20においてフラッディングが生じるおそれがある温度であり、たとえば、外部雰囲気温度が25℃の場合は、35℃である。この閾値Tthは、外部雰囲気温度に応じて変化する。
【0043】
燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bの少なくとも一方の温度が所定の閾値Tth以下である場合には(S20のYes)、燃料電池モジュール20aと燃料電池モジュール20bとが交互に切り替えられて外部負荷に接続した状態で燃料電池システム10が運転(以下、切替運転という)される(S30)。切替運転時に、燃料電池モジュール20a、20bを切り替えるタイミングは、たとえば、一方の燃料電池モジュール20を外部負荷に接続したときの経過時間が一定時間に達したタイミングであり、5〜300秒である。
【0044】
一方、外部負荷が所定の閾値Wthを超えた場合(S10のNo)や、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bの両方の温度が所定の閾値Tthを超えた場合(S20のNo)には、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bの両方が外部負荷に接続される(S40)。
【0045】
図6は、燃料電池モジュールのI−V特性、I−P特性、温度の電流依存性および生成水の電流依存性を示すグラフである。全ての燃料電池モジュールが常に外部負荷に接続されている場合には、外部負荷に応じて燃料電池モジュールの電流が大きく変化する。最大負荷の1/2の負荷の場合における燃料電池モジュールの電流I2は、最大負荷の場合における電流I1の1/2になる。このように、燃料電池モジュールの電流が外部負荷に依存して変化すると、電流に依存して燃料電池モジュールの温度および生成水の量が大きく変化することがわかる。これに対して、上述した切替運転を行う場合には、最大負荷の1/2の負荷の場合における個々の燃料電池モジュールの電流I2’を最大負荷時の電流I1と同等にすることができるため、最大負荷時と低負荷時とで、燃料電池モジュールの温度および生成水の量を同等に維持することができる。
【0046】
(動作例1の説明)
図7は、燃料電池システムの動作例1を示すタイミングチャートである。図7(A)は、外部負荷の時間変化を示す。図7(B)、(C)は、それぞれ、燃料電池モジュール20a、20bの接続状態(オンオフの状態変化)を示す。図7(D)は、各燃料電池モジュールの電力の変化を示す。なお、本例では、システムに二次電池50と二次電池制御回路52がない場合を示す。
【0047】
初期状態(時刻t0)において、外部負荷は生じておらず、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bの温度(周囲の温度)は、それぞれ閾値Tth以下である。この状態では、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bは、ともに発電を行っておらず、外部負荷からも切り離されている。
【0048】
時刻t1において、外部負荷が起動する。このときの外部負荷は低負荷であり、所定の閾値Wth以下である。時刻t1を基点として、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bで発電が開始される。この状態では、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bの温度は、ともに閾値Tth以下の状態が継続している。このため、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bが交互に外部負荷に接続される。すなわち、外部負荷に見合う電力が燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bのいずれか一方の発電により賄われている。
【0049】
時刻t2において、燃料電池モジュール20aの温度が閾値Tthより高くなるが、燃料電池モジュール20bの温度が閾値Tth以下であるため、引き続き、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bが交互に外部負荷に接続される。
【0050】
時刻t3において、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bの温度が、ともに閾値Tthより高くなる。このため、時刻t3を基点として、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bの両方が外部負荷に接続される。すなわち、この状態では、外部負荷に見合う電力が燃料電池モジュール20aによる発電と燃料電池モジュール20bによる発電により分担され、個々の燃料電池モジュール20に対する負荷が軽減されている。
【0051】
時刻t4において、外部負荷が停止すると、燃料電池モジュール20aおよび燃料電池モジュール20bが外部負荷から切り離される。
【0052】
次に、時刻t5において、外部負荷が所定の閾値Wthより高い高負荷状態(最大負荷)で起動する。この場合には、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bの両方が外部負荷に接続され、外部負荷に見合う電力が燃料電池モジュール20aによる発電と燃料電池モジュール20bによる発電により分担される。このときの燃料電池モジュール20に流れる電流は、低負荷時の切替運転時に燃料電池モジュール20に流れる電流と同等である。
【0053】
(実施例)
図8と図9は、本実施の効果を示すグラフである。燃料電池システムが2つの燃料電池モジュールで構成されており、温度20℃、湿度50%RHの環境条件で定格出力電力の半分の出力電力で動作させたときのデータをそれぞれ図8と図9で示す。図8は、従来の制御方法であり、2つの燃料電池モジュールを負荷に接続した場合を示す。図9は、動作例1の接続方法で、2つの燃料電池モジュールを負荷に1分間毎に交互で接続した場合を示す。
【0054】
図8と図9を比較すると、システム運転開始30分で燃料電池モジュールの平均表面温度が従来例の制御方法で23度、動作例1の制御方法で26度となり、3℃の温度差が生じた。また、従来例では燃料電池モジュールには表面に生成水の結露が生じていたが、動作例1では生成水の結露は生じなかった。動作例1では温度20℃、湿度50%RHの環境条件でのみ試験を行ったが、さらに低温、高湿度の環境条件で試験を行えば、従来例ではフラッディングにより燃料電池の運転が不安定になった可能性がある。動作例1では、環境条件が変わった場合でも燃料電池の分割数を増やすことにより、安定して動作する環境条件の範囲が広がる。このことを説明するために、外部環境の温度変化と湿度変化に対する燃料電池システムでのドライアウトとフラッディングについて説明する。図10は、ドライアウト温度T4およびフラッディング温度T1の湿度依存性を示すグラフである。ドライアウト温度T4およびフラッディング温度T1は、湿度の上昇に伴い上昇する。このように、燃料電池のドライアウトおよびフラッディング開始温度は湿度に依存して変化し、たとえば、高湿度条件ではフラッディング温度T3が高くなるため、フラッディングしやすくなる。このため、外部環境の湿度変化に応じた温度制御が必要となる。図10のグラフは一例であり、燃料電池システムの出力に応じて変化する。
【0055】
図10において、温度T4’は、ドライアウト温度T4の下限値(低湿度条件、たとえば、湿度20%におけるドライアウト温度)である。また、温度T3’は、フラッディング温度T3の上限値(高湿度条件、たとえば、湿度80%におけるフラッディング温度)である。図10に示すように、温度T3’から温度T4’の温度範囲では、湿度が変化してもドライアウトおよびフラッディングのいずれも生じない。このため、温度T3’から温度T4’の温度範囲は、燃料電池が湿度に依存せず安定的に発電可能な温度範囲である。動作例1の制御を行なうことによって、湿度に依存せずに安定的に発電可能な温度範囲が広がる。
【0056】
(動作例2の説明)
図11は、燃料電池システムの動作例2を示すタイミングチャートである。図11(A)は、外部負荷の時間変化を示す。図11(B)、(C)は、それぞれ、燃料電池モジュール20a、20bの接続状態(オンオフの状態変化)を示す。図11(D)は、各燃料電池モジュールの電力の変化を示す。
【0057】
動作例1と動作例2との違いは、時刻t1から時刻t3までの燃料電池モジュール20a,燃料電池モジュール20bの切替運転の区間において、燃料電池モジュール20aと燃料電池モジュール20bとが切り替わるときに、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bの両方が外部負荷に接続される区間Sが存在することである。これにより、各燃料電池モジュール20における急激な負荷変動が抑制されるため、各単セルまたは燃料電池モジュール20の劣化を防ぐことが可能となる。また、これにより、各燃料電池モジュール20の出力を安定化させることができる。また、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bの切り替え動作をよりスムースに行うことができる。
【0058】
以上説明した燃料電池システムによれば、外部負荷に応じて、外部負荷に接続されている燃料電池モジュールの数を変化させることにより、外部負荷が変動しても、各燃料電池モジュール20に流れる電流の値を同等にすることができる。この結果、燃料電池モジュール20の温度が一定の範囲内で推移することでドライアウトや生成水の結露が抑制され、ひいては燃料電池システム10の発電動作をより安定化させることができる。
【0059】
また、外部負荷が小さいときに燃料電池モジュール20の外部負荷への接続を順に切替えることにより、各燃料電池モジュール20で発生した生成水が蒸発する時間を与えることが可能となる。また、切替運転を行うことで各単セルの面内の温度分布を均一にすることができる。
【0060】
本実施の形態の燃料電池システムは、循環ポンプや加湿器等の補機類を用いずにパッシブ方式で空気(酸素)をカソードに供給し、反応により消費した燃料(水素)を補うように燃料を補給するデッドエンド方式で燃料をアノードに供給する場合に有効である。
【0061】
なお、アクティブ方式(空気や燃料を外部動力を使って供給する方式)の燃料電池システムにおいては、電流負荷のオンオフに応じて、燃料や空気の供給を個々の燃料電池モジュールごとにオンオフすることにより、パッシブ方式の燃料電池システムと同様な効果を得ることができる。
【0062】
(燃料電池システムの第2の動作フロー)
図12は、実施の形態に係る燃料電池システム10の動作を示す第2のフローチャートである。本動作におけるS10、S20、S30およびS40の各処理は、燃料電池システム10の第1の動作と同様である。本動作においては、S40において燃料電池モジュール20a、20bの両方を負荷に接続した後、各燃料電池モジュールの温度T1、T2からそれぞれ平均値を引いて得られる差分S1、S2が閾値Sthより大きいか否かが判定される(S50)。平均値とは、燃料電池モジュール20aの温度T1と燃料電池モジュール20bの温度T2の平均値である。上記差分が閾値Sth以下である場合には(S50のNo)、S10の処理に戻る。一方、上記差分が閾値Sthより大きい場合には(S50のYes)、該当する燃料電池モジュールの制限電流値Iを決定する(S60)。制限電流値Iの決定方法として、たとえば、電流制御の対象となる燃料電池モジュールの温度と平均値との差分に応じて制限電流値Iをメモリ等に予め設定しておくことが挙げられる。続いて、電流制御の対象となる燃料電池モジュールに対応して設けられたスイッチを連続的にオンオフすることにより、該当する燃料電池モジュールに流れる電流が制限電流値Iになるように制御する(S70)。電流が制御された燃料電池モジュールは、発電量の減少に伴い、発熱量が減少し、ひいては、温度の上昇速度が鈍るか、温度が下降する。一方、電流制御がされない燃料電池モジュールは、電流制御された燃料電池の出力を賄うために発電量が増加する。これにより、電流制御がされない燃料電池モジュールの発熱量が増加し、温度も上昇する。この結果、各燃料電池モジュールの温度差が低減される。電流制御を所定時間(たとえば、1秒)実施した後、各燃料電池モジュールの温度から平均値を引いて得られる差分が閾値Sth以下であるか否かが判定される(S80)。差分が閾値Sth以下である場合(S80のYes)には、S10の判定に戻る。一方、差分が閾値Sthより大きい場合(S80のNo)には、S70に戻り、引き続き電流制御が行われる。
【0063】
なお、本フローチャートでは、燃料電池モジュールの数が2であるが、燃料電池モジュールの数が3以上の場合にも本動作が適用されうる。この場合には、S50の判断における平均値は、3以上の燃料電池モジュールの温度の平均値であり、各燃料電池モジュールについて、S50〜S80のステップが実施される。
【0064】
(動作例3の説明)
図13は、燃料電池システムの動作例3を示すタイミングチャートである。図13(A)は、外部負荷の時間変化を示す。図13(B)、(C)は、それぞれ、燃料電池モジュール20a、20bの接続状態(オンオフの状態変化)を示す。図13(D)は、各燃料電池モジュールの電力の変化を示す。
【0065】
図13は、負荷>閾値Wth(S10のNo)の場合の動作を示す。初期状態(時刻t0)において、外部負荷は生じておらず、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bの温度(周囲の温度)は、それぞれ閾値Tth以下である。この状態では、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bは、ともに発電を行っておらず、外部負荷からも切り離されている。
【0066】
時刻t1において、外部負荷が起動する。このときの外部負荷は高負荷であり、所定の閾値Wthより高い。時刻t1を基点として、燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bで発電が開始され、外部負荷に見合う電力が燃料電池モジュール20a、燃料電池モジュール20bの両方の発電により賄われる。
【0067】
時刻t2において、燃料電池モジュール20aの温度T1から平均値を引いた差分S1が閾値Sthより高くなると、燃料電池モジュール20aの負荷を瞬間的(数100Hz〜数MHz)にオンオフすることにより、燃料電池モジュール20aの電流を制限電流値Iとする。なお、燃料電池モジュール20aの電流を制御する場合には、燃料電池モジュール20aのオンオフのDuty比を所定の値にすればよい。燃料電池モジュール20aの電流が制御されている間、燃料電池モジュール20aの出力を補うために、燃料電池モジュール20bの電流値が増加する。燃料電池モジュール20aの電流が制御されている間、燃料電池モジュール20bの出力は燃料電池モジュール20aの出力に比べて大きくなる。t2以降、電流制御される燃料電池モジュール20aの温度上昇が鈍り、電流制御されない燃料電池モジュール20bの温度上昇が増大し、両者の温度差が低減される。
【0068】
時刻t3において、燃料電池モジュール20aの温度T1から平均値を引いた差分S1が閾値Sth以下になると、燃料電池モジュール20aの電流制御が解除される。以降、時刻t4において一方の燃料電池モジュールの電流制御が開始され、時刻t5で電流制御が解除される。
【0069】
(燃料電池システムの第3の動作フロー)
図14は、実施の形態に係る燃料電池システム10の第3の動作を示すフローチャートである。本動作におけるS10、S20、S30およびS40の各処理は、燃料電池システム10の第1の動作と同様である。本動作においては、S40において燃料電池モジュール20a、20bの両方を負荷に接続した後、最大温度Tmax−最小温度Tminが閾値Uthより大きいか否かが判定される(S50)。なお、最大温度Tmaxとは、複数の燃料電池モジュールの中で、温度が最大となる燃料電池モジュールの温度であり、最小温度Tminとは、複数の燃料電池モジュールの中で、温度が最小となる燃料電池モジュールの温度である。本フローでは、燃料電池モジュール20aの温度が最大温度Tmaxであり、燃料電池モジュール20bの温度が最小温度Tminである。最大温度Tmax−最小温度Tminが閾値Uth以下である場合には(S50のNo)、S10の処理に戻る。一方、最大温度Tmax−最小温度Tminが閾値Uthより大きい場合には(S50のYes)、温度が所定順位内の燃料電池モジュールの制限電流値Iを決定する(S60)。たとえば、本フローのように、燃料電池モジュールの数が2である場合には、温度が高い方の燃料電池モジュールの制限電流値Iが決定される。また、燃料電池モジュールの数がn(nは3以上)である場合には、温度が高い順番(1以上n−1)までの燃料電池モジュールの制限電流値Iが決定される。続いて、電流制御の対象となる燃料電池モジュールに対応して設けられたスイッチを連続的にオンオフすることにより、該当する燃料電池モジュールに流れる電流が制限電流値Iになるように制御する(S70)。電流が制御された燃料電池モジュールは、発電量の減少に伴い、発熱量が減少し、ひいては、温度の上昇速度が鈍るか、温度が下降する。一方、電流制御がされない燃料電池モジュールは、電流制御された燃料電池の出力を賄うために発電量が増加する。これにより、電流制御がされない燃料電池モジュールの発熱量が増加し、温度も上昇する。この結果、各燃料電池モジュールの温度差が低減される。電流制御を所定時間(たとえば、1秒)実施した後、最大温度Tmax−最小温度Tminが閾値Uth以下であるか否かが判定される(S80)。差分が閾値Uth以下である場合(S80のYes)には、S10の判定に戻る。一方、差分が閾値Uthより大きい場合(S80のNo)には、S70に戻り、引き続き電流制御が行われる。
【0070】
以上説明した、第2および第3のフローチャートに従う動作によれば、燃料電池モジュールの温度にばらつきが生じた場合に温度差を小さくし、燃料電池モジュールの温度を均一化することができる。これにより、燃料電池モジュールを個別に冷却する機構、制御をする必要がなくなるため、燃料電池システムの構成を簡便化することができる。
【0071】
(変形例1)
外部負荷に並列接続される燃料電池モジュールの数は2個に限られず、3個以上であってもよい。たとえば、図15に示すように、変形例1に係る燃料電池システム10は、4個の燃料電池モジュール20a〜dを備える。4個の燃料電池モジュール20a〜dが外部負荷に並列接続される場合には、燃料電池モジュール20のを切替運転を行う場合に、外部負荷に同時に接続する燃料電池モジュール20の数を1、2、3のいずれかに設定することができる。外部負荷に同時に接続する燃料電池モジュール20の数が1、2、3の場合に適した外部負荷は最大負荷に対して、それぞれ25%、50%、75%である。
【0072】
【表1】
【0073】
表1は、外部負荷に並列接続される燃料電池モジュール20の数が4個の場合に、50%負荷に対応して切替運転するときの各燃料電池モジュール20の接続状態を示す。表1において、「ON」は外部負荷に接続されていることを示し、「OFF」は外部負荷から切り離されていることを示す。切替運転時の接続状態は、接続状態1→接続状態2→接続状態3→接続状態4→接続状態1の順で繰り返し推移する。各接続状態において、4個の燃料電池モジュール20のうち、2個の燃料電池モジュール20が外部負荷に接続されている。このため、個々の燃料電池モジュール20に対する負荷は25%負荷となり、最大負荷時における個々の燃料電池モジュール20に対する負荷と同等となる。すなわち、個々の燃料電池モジュール20の電流密度は、負荷が変動しても一定の値に維持される。この結果、燃料電池モジュール20の温度が一定の範囲内で推移することでドライアウトや生成水の結露が抑制され、ひいては燃料電池システム10の発電動作をより安定化させることができる。
【0074】
負荷に電気的に並列接続される燃料電池モジュールの数をnに一般化すると、少なくとも1つの燃料電池モジュールの温度が所定の温度以下の場合に、負荷に応じて、負荷に同時に接続される燃料電池モジュールの数をm/n[m=1、2、・・・、n−1]に設定して、切替運転を実行することができる。より具体的には、負荷が最大負荷を基準としてm/n以下になった場合に、負荷に同時に接続される燃料電池モジュールの数がmになるように接続切替手段を用いて負荷に接続される燃料電池モジュールが順に切り替えられる。
【0075】
(変形例2)
上述した実施の形態および変形例では、複数の燃料電池モジュールが平面状に配列されているが、燃料電池モジュールの配列の形態はこれに限られない。図16は、変形例2に係る燃料電池システムの概略構成を示す分解斜視図である。図17は、変形例2に係る燃料電池システムの概略構成を示す要部断面図である。
【0076】
本変形例では、隣接する燃料電池モジュール20の主表面が互いに向かい合うように複数の燃料電池モジュールが並設されている。本変形例の燃料電池システム10は、燃料電池モジュール20の配列の仕方が異なるが、動作に関しては上述した実施の形態の燃料電池システム10と同様である。
【0077】
2組の燃料電池モジュール20に対応して、燃料供給プレート70から上方に突出する燃料供給プレート71が設けられている。各燃料供給プレート71の内部には燃料流路72と連通する燃料流路73が設けられている。燃料供給プレート71の両主表面には、それぞれ、燃料流路73の出口となる開口部75が設けられている。
【0078】
燃料供給プレート71の両主表面にアノード側が向くようにそれぞれ燃料電池モジュール20が設けられている。燃料電池モジュール20を構成する電解質膜202の周囲と燃料供給プレート71との間にパッキン213が設けられており、燃料供給プレート71と燃料電池モジュール20のアノード側との間に水素を閉じ込めるアノード空間310が形成されている。
【0079】
水素は、燃料流路72から各燃料流路73に分配され、燃料供給プレート71の両主表面に配設された2組の燃料電池モジュール20のアノード触媒層206に供給される。
【0080】
上側筐体80aの上面および側面に空気取込口82が設けられている。空気取込口82から流入した空気は多孔質体90を通過して、各燃料電池モジュール20のカソード触媒層204に供給される。
【0081】
以上説明した本変形例の燃料電池システムに実施の形態の燃料電池システムの動作を適用することにより、複数の燃料電池モジュール20の主表面が互いに向かい合うように配列された構造においても実施の形態の燃料電池システムと同様な効果が得られる。
【0082】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。
【0083】
たとえば、上述の実施の形態では、各燃料電池モジュールは複数のセルで構成させているが、各燃料電池モジュールは単セルで構成されていてもよい。この場合には、電圧調整回路を設け、切替運転時に外部負荷の電圧に応じて各燃料電池モジュールの出力電圧を昇圧させることにより、外部負荷を駆動させることができる。
【符号の説明】
【0084】
10 燃料電池システム、20a,20b,20c,20d 燃料電池モジュール、30 燃料カートリッジ、40 制御部、50 二次電池、60、レギュレータ、70 燃料供給プレート、200 膜電極接合体、202 電解質膜、204 カソード触媒層、206 アノード触媒層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部負荷に対して電気的に並列接続されているn個[nは2以上の整数]の燃料電池モジュールと、
各燃料電池モジュールと前記外部負荷との接続状態を切り替え可能な接続切替手段と、
少なくとも1つの燃料電池モジュールの温度が所定の温度以下の場合に、外部負荷に応じて、前記外部負荷に同時に接続される燃料電池モジュールの数がm[m=1、2、・・・、n−1]になるように前記接続切替手段を用いて前記外部負荷に接続される燃料電池モジュールを切り替える切替運転を実行させる制御部と、
を備える燃料電池システム。
【請求項2】
前記n個の燃料電池モジュールが平面状に配列されている請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
隣接する燃料電池モジュールの主表面が互いに向かい合うように前記n個の燃料電池モジュールが並設されている請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記制御部は、一定時間経過毎に、前記外部負荷に接続される燃料電池モジュールの組み合わせを切り替える請求項1乃至3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記制御部は、各燃料電池モジュールの温度がいずれも所定の温度より高くなった場合に、n個の燃料電池モジュールを前記外部負荷に接続させる請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記切替運転の際に、前記外部負荷に接続する対象となる燃料電池モジュールを前記外部負荷に接続し、所定の時間経過後に、前記外部負荷から切り離す対象となる燃料電池モジュールを前記外部負荷から切り離す処理を実行させる請求項1乃至5のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記外部負荷が最大負荷を基準としてm/n以下になった場合に、前記外部負荷に同時に接続される前記燃料電池モジュールの数がmになるように前記接続切替手段を用いて前記外部負荷に接続される燃料電池モジュールを順に切り替える切替運転を実行させる請求項1乃至6のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
請求項1乃至3の燃料電池システムにおいて、
前記制御部は、特定の燃料電池モジュールの温度が各燃料電池モジュールの温度の平均値に対して所定の値より大きい場合に、当該燃料電池モジュールの温度に応じて当該燃料電池モジュールの電流を制限する燃料電池システム。
【請求項9】
請求項1乃至3の燃料電池システムにおいて、
前記制御部は、全燃料電池モジュールの温度の中で最大温度と最小温度との差が所定値より大きい場合に、全燃料電池モジュールの中で温度が高い順に1つあるいは複数の燃料電池モジュールについて、その温度に応じて当該燃料電池モジュールの電流を制限する燃料電池システム。
【請求項1】
外部負荷に対して電気的に並列接続されているn個[nは2以上の整数]の燃料電池モジュールと、
各燃料電池モジュールと前記外部負荷との接続状態を切り替え可能な接続切替手段と、
少なくとも1つの燃料電池モジュールの温度が所定の温度以下の場合に、外部負荷に応じて、前記外部負荷に同時に接続される燃料電池モジュールの数がm[m=1、2、・・・、n−1]になるように前記接続切替手段を用いて前記外部負荷に接続される燃料電池モジュールを切り替える切替運転を実行させる制御部と、
を備える燃料電池システム。
【請求項2】
前記n個の燃料電池モジュールが平面状に配列されている請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
隣接する燃料電池モジュールの主表面が互いに向かい合うように前記n個の燃料電池モジュールが並設されている請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記制御部は、一定時間経過毎に、前記外部負荷に接続される燃料電池モジュールの組み合わせを切り替える請求項1乃至3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記制御部は、各燃料電池モジュールの温度がいずれも所定の温度より高くなった場合に、n個の燃料電池モジュールを前記外部負荷に接続させる請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記切替運転の際に、前記外部負荷に接続する対象となる燃料電池モジュールを前記外部負荷に接続し、所定の時間経過後に、前記外部負荷から切り離す対象となる燃料電池モジュールを前記外部負荷から切り離す処理を実行させる請求項1乃至5のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記外部負荷が最大負荷を基準としてm/n以下になった場合に、前記外部負荷に同時に接続される前記燃料電池モジュールの数がmになるように前記接続切替手段を用いて前記外部負荷に接続される燃料電池モジュールを順に切り替える切替運転を実行させる請求項1乃至6のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
請求項1乃至3の燃料電池システムにおいて、
前記制御部は、特定の燃料電池モジュールの温度が各燃料電池モジュールの温度の平均値に対して所定の値より大きい場合に、当該燃料電池モジュールの温度に応じて当該燃料電池モジュールの電流を制限する燃料電池システム。
【請求項9】
請求項1乃至3の燃料電池システムにおいて、
前記制御部は、全燃料電池モジュールの温度の中で最大温度と最小温度との差が所定値より大きい場合に、全燃料電池モジュールの中で温度が高い順に1つあるいは複数の燃料電池モジュールについて、その温度に応じて当該燃料電池モジュールの電流を制限する燃料電池システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−175963(P2011−175963A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267394(P2010−267394)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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