説明

燃料電池システム

【課題】燃料電池スタック内の面圧分布を高精度且つ確実に測定することができ、高性能な燃料電池スタックを得ることを可能にする。
【解決手段】燃料電池システム10を構成する静電容量型面圧測定装置14は、発電セル16の発電面内に位置して設けられる複数の誘電体50と、前記発電セル16の発電面方向に沿って延在するとともに、前記誘電体50の積層方向の厚さよりも薄肉状に設定され、前記誘電体50間に積層方向に向かって電流を流す導電部52と、前記発電面内の面圧測定を開始する際に、燃料電池スタック12に前記積層方向に荷重を付与し、前記誘電体50の厚さを前記導電部52の厚さと同一の厚さに圧縮させる初期荷重付与機構21とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質の両側に一対の電極が配設される電解質・電極構造体を有し、前記電解質・電極構造体とセパレータとを有する発電セルが積層される燃料電池スタックと、前記燃料電池スタック内に配設され、前記発電セルの面圧を測定するための静電容量型面圧測定装置とを備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる電解質膜(電解質)の両側に、それぞれアノード側電極及びカソード側電極を配設した電解質膜・電極構造体(以下、MEAともいう)を、セパレータによって挟持した発電セルを備えている。この種の燃料電池は、通常、所定の数の発電セルを積層するとともに、積層方向両端には、ターミナルプレート、絶縁プレート及びエンドプレートが配置されることにより、燃料電池スタックを構成している。燃料電池スタックは、例えば、燃料電池自動車等の燃料電池車両に搭載されている。
【0003】
この燃料電池スタックでは、エンドプレート間に、締め付けボルトやケーシング等によって発電セルの積層方向に締め付け荷重を付与している。その際、発電セルの電極面の面圧にばらつき(面圧分布)が発生すると、接触抵抗が増大して端子電圧が低下するおそれがある。
【0004】
そこで、燃料電池スタック内の面圧を測定する必要があり、例えば、特許文献1に開示されている燃料電池スタックが知られている。この燃料電池スタックは、図10に示すように、面圧センサモジュール1を備えており、前記面圧センサモジュール1が、図示しない燃料電池の積層方向の任意の位置、例えば、略中央に設けられている。面圧センサモジュール1は、一対のセパレータ2間に凹部3を介して面圧センサ4が配置されている。
【0005】
この面圧センサ4は、コンデンサー型又は歪みゲージのセンサ5を樹脂6で被覆して構成されている。面圧センサ4は、セパレータ2間に、例えば、2つ挟持されており、前記面圧センサ4を介して燃料電池内の面圧分布を測定することができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−120346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1では、面圧センサモジュール1を構成する一対のセパレータ2には、面圧センサ4を配置するために凹部3が設けられており、他の燃料電池に用いられるセパレータとは異なる構成を有している。従って、面圧センサモジュール1に対して、専用のセパレータ2を用意しなければならず、経済的ではないという問題がある。
【0008】
さらに、セパレータ2の面内には、2以上の面圧センサ4を配置することが記載されているものの、この種の面圧センサ4は、センサ5を樹脂6で被覆するとともに、リード線7が設けられている。このため、セパレータ2の面内には、多数の面圧センサ4を配置することが実質的に困難であり、発電面内の面圧を高精度に測定することができないという問題がある。
【0009】
一方、通常、多数のセンサを配置すると、発電時の正常な電流の分布が阻害される。その結果、局所的に大電流が印加される可能性があり、ジュール熱による損傷が発生する可能性がある。
【0010】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、燃料電池スタック内の面圧分布を高精度且つ確実に測定することができ、高性能な燃料電池スタックを得ることが可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、電解質の両側に一対の電極が配設される電解質・電極構造体を有し、前記電解質・電極構造体とセパレータとを有する発電セルが積層される燃料電池スタックと、前記燃料電池スタック内に配設され、前記発電セルの面圧を測定するための静電容量型面圧測定装置とを備える燃料電池システムに関するものである。
【0012】
この燃料電池システムでは、静電容量型面圧測定装置は、発電セルの発電面内に位置して設けられる複数の誘電体と、前記発電セルの発電面方向に沿って延在するとともに、前記誘電体の積層方向の厚さよりも薄肉状に設定され、前記誘電体間に積層方向に向かって電流を流す導電部と、前記発電面内の面圧測定を開始する際に、燃料電池スタックに前記積層方向に荷重を付与し、前記誘電体の厚さを前記導電部の厚さと同一の厚さに圧縮させる初期荷重付与機構とを備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、静電容量型面圧測定装置は、誘電体の積層方向の厚さが導電部の前記積層方向の厚さよりも厚肉状に設定されている。このため、初期荷重付与機構を介して、燃料電池スタックに積層方向に初期荷重が付与されると、誘導体が圧縮変形される。従って、誘電体の厚さが、導電部の厚さと同一の厚さになった状態では、前記誘電体の厚さ変化による出力感度が向上するとともに、導電部は積層方向に向かって電流を確実に流すことができる。
【0014】
これにより、燃料電池スタックの使用荷重領域を網羅して、発電面内の面圧を良好に測定することが可能になる。このため、発電時に正常な電流が阻害されることがなく、燃料電池スタック内の面圧分布を高精度且つ確実に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料電池システムの斜視説明図である。
【図2】前記燃料電池システムの一部断面説明図である。
【図3】前記燃料電池システムを構成する発電セルの分解斜視説明図である。
【図4】前記燃料電池システムを構成する静電容量型面圧測定装置の要部分解斜視図である。
【図5】前記静電容量型面圧測定装置の要部斜視図である。
【図6】前記静電容量型面圧測定装置の、図5中、VI−VI線断面図である。
【図7】前記静電容量型面圧測定装置を構成する誘電体の厚さと使用可能領域との関係説明図である。
【図8】前記誘電体のヤング率と使用可能領域との関係説明図である。
【図9】前記静電容量型面圧測定装置の要部分解斜視図である。
【図10】特許文献1に開示されている燃料電池システムの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係る燃料電池システム10は、燃料電池スタック12と、前記燃料電池スタック12内に配設される静電容量型面圧測定装置14とを備える。この燃料電池システム10は、例えば、燃料電池自動車等の燃料電池車両に搭載されている。
【0017】
燃料電池スタック12は、複数の発電セル16が矢印A方向に積層されるとともに、積層方向両端には、ターミナルプレート17a、17b及び絶縁プレート18a、18bを介装してエンドプレート20a、20bが配置される(図2参照)。
【0018】
エンドプレート20a、20bは、初期荷重付与機構21を構成する、例えば、複数の締め付けボルト21aにより積層方向に締め付けられる。なお、エンドプレート20bには、締め付けボルト21aがねじ込まれるねじ孔(図示せず)が形成されている。あるいは、エンドプレート20bに貫通孔を形成し、締め付けボルト21aの先端にナット(図示せず)を螺合してもよい。
【0019】
また、エンドプレート20a、20b間にプレート(図示せず)を介装して前記エンドプレート20a、20b間の距離を調整することにより締め付け荷重を付与してもよい。さらに、エンドプレート20aと絶縁プレート18aとの間、又はエンドプレート20bと絶縁プレート18bとの間に、皿ばね(図示せず)を介装して荷重を加えてもよい。
【0020】
図2及び図3に示すように、各発電セル16は、電解質膜・電極構造体22と、前記電解質膜・電極構造体22を挟持する第1セパレータ24及び第2セパレータ26とを備える。第1セパレータ24及び第2セパレータ26は、例えば、カーボンセパレータで構成されているが、金属セパレータを使用してもよい。第1セパレータ24及び第2セパレータ26間には、電解質膜・電極構造体22を収容してガスケット27が介装される。
【0021】
図3に示すように、発電セル16の矢印B方向の一端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガス(空気等)を供給するための酸化剤ガス供給連通孔28a、冷却媒体、例えば、純水やエチレングリコール等を供給するための冷却媒体供給連通孔30a、及び燃料ガス、例えば、水素含有ガスを排出するための燃料ガス排出連通孔32bが設けられる。
【0022】
発電セル16の矢印B方向の他端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを供給するための燃料ガス供給連通孔32a、冷却媒体を排出するための冷却媒体排出連通孔30b、及び酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス排出連通孔28bが設けられる。
【0023】
電解質膜・電極構造体22は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜34と、前記固体高分子電解質膜34を挟持するアノード側電極36及びカソード側電極38とを備える。
【0024】
アノード側電極36及びカソード側電極38は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層(図示せず)と、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が前記ガス拡散層の表面に一様に塗布されて形成される電極触媒層(図示せず)とを有する。電極触媒層は、固体高分子電解質膜34の両面に形成される。
【0025】
第1セパレータ24は、電解質膜・電極構造体22に向かう面24aに燃料ガス流路40を設ける。燃料ガス流路40は、矢印B方向に延在する複数の流路溝を有し、燃料ガス供給連通孔32a及び燃料ガス排出連通孔32bに連通する。第1セパレータ24の面24bには、冷却媒体流路42が形成される。この冷却媒体流路42は、矢印B方向に延在する複数の流路溝を有し、冷却媒体供給連通孔30a及び冷却媒体排出連通孔30bに連通する。
【0026】
第2セパレータ26には、電解質膜・電極構造体22に向かう面26aに酸化剤ガス流路44が形成される。この酸化剤ガス流路44は、矢印B方向に延在する複数の流路溝を有し、酸化剤ガス供給連通孔28a及び酸化剤ガス排出連通孔28bに連通する。第2セパレータ26の面26bは、平坦状に構成される。
【0027】
静電容量型面圧測定装置14は、図2に示すように、燃料電池スタック12内に積層されている発電セル16の積層方向略中央に配置される。図4に示すように、静電容量型面圧測定装置14は、複数の誘電体50を、発電セル16の発電面内に位置し矢印B方向及び矢印C方向に配列して収容する導電部52と、前記誘電体50を両側から一体に挟持する第1電極部54及び第2電極部56とを備える。
【0028】
静電容量型面圧測定装置14は、静電容量式センサを構成しており、例えば、ポリプロピレンやポリエステル等の絶縁体で形成される複数の誘電体50を設ける。
【0029】
導電部52は、発電セル16の発電面方向に沿って延在する長方形状導電部材であり、例えば、銀、銀合金、金、金合金、銅、銅合金、アルミニウム又はアルミニウム合金等の低電気抵抗材料(電気抵抗率2×10−7Ωm以下)により構成される。導電部52の表面には、必要に応じて酸化防止用の金、又は金合金によるメッキ処理が施される。
【0030】
導電部52の第1電極部54に向かう面52aには、矢印B方向に延在し且つ矢印C方向に配列される複数の第1溝部58aが形成される。導電部52の第2電極部56に向かう面52bには、矢印C方向に延在し且つ矢印B方向に配列される複数の第2溝部58bが形成される。
【0031】
第1溝部58aと第2溝部58bとの合計深さは、導電部52の厚さよりも大きな寸法に設定される。第1溝部58aと第2溝部58bとが交差する部位には、各誘電体50を配置するための開口部60が設けられる。
【0032】
第1電極部54は、導電部52の第1溝部58aに収容される複数の長尺状第1電極62を設ける。第1電極62は、例えば、銅又は金等で構成されており、厚さが0.1mm以下に設定されるとともに、必要に応じて、図示しない高分子材料製の絶縁膜により囲繞される。
【0033】
第2電極部56は、上記の第1電極部54と同様に、導電部52の第2溝部58bに収容される複数の長尺状第2電極64を設ける。第2電極64は、例えば、銅又は金等で構成されており、厚さが0.1mm以下に設定されるとともに、必要に応じて、図示しない高分子材料製の絶縁膜により囲繞される。第1電極62及び第2電極64は、それぞれ図示しないコネクタを介して外部の制御装置66に接続される(図1参照)。
【0034】
図5に示すように、導電部52の各開口部60に誘電体50が配置され、第1溝部58aに収容される第1電極62と、第2溝部58bに収容される第2電極64とは、前記誘電体50を挟んで互いに直交する方向に、所謂、井桁状に配列される。
【0035】
図5及び図6に示すように、誘電体50の積層方向(矢印A方向)の厚さt1は、導電部52の積層方向の厚さt2よりも厚肉状(t1>t2)に設定される。誘電体50の積層方向の両面は、導電部52の積層方向の両面から外方に突出して配置される。
【0036】
誘電体50の厚さt1は、燃料電池スタック12の使用荷重領域(後述する荷重Pmin以上)に対応して設定される。具体的には、厚さt1が相当に肉厚(t1>t2)に設定された静電容量型面圧測定装置14a、厚さt1が比較的肉薄(t1>t2)に設定された静電容量型面圧測定装置14a、及び厚さt1が厚さt2よりも薄肉状(t1<t2)に設定された静電容量型面圧測定装置14cの使用可能状態は、図7に示される。
【0037】
静電容量型面圧測定装置14aでは、燃料電池スタック12の使用荷重領域の最小値(荷重Pmin)を超えても、導電部52による電流の供給が開始されないため、使用することができない。一方、静電容量型面圧測定装置14cでは、誘電体50が荷重を受けないため、面圧検出処理ができない。
【0038】
これに対して、静電容量型面圧測定装置14bでは、燃料電池スタック12の使用荷重領域に入る前の荷重P1(<荷重Pmin)で、既に誘電体50による面圧検出処理が可能な状態となっており、この静電容量型面圧測定装置14bが採用される。
【0039】
また、誘電体50のヤング率が設定される。図8に示すように、誘電体50のヤング率が低い静電容量型面圧測定装置14b1と、前記誘電体50のヤング率が高い静電容量型面圧測定装置14b2とでは、荷重に対する各誘電体50の変形状態が異なる。
【0040】
静電容量型面圧測定装置14b2では、誘電体50が変形し難く、燃料電池スタック12の使用荷重領域の最小値(荷重Pmin)を超えても、導電部52による電流の供給が開始されないため、使用することができない。
【0041】
これに対して、静電容量型面圧測定装置14b1では、燃料電池スタック12の使用荷重領域に入る前の荷重P2(<荷重Pmin)で、既に誘電体50による面圧検出処理が可能な状態となっており、この静電容量型面圧測定装置14b1が採用される。すなわち、誘電体50は、厚さt1及びヤング率が所定の値(範囲)に設定される必要がある。
【0042】
図9に示すように、静電容量型面圧測定装置14は、両面に導電性シート(例えば、カーボンペーパやカーボンクロス等)68を介装して第1セパレータ24と第2セパレータ26とに挟持される。静電容量型面圧測定装置14は、実質的に、図3に示す電解質膜・電極構造体22と同一の寸法(厚さを含む)を有するとともに、第1及び第2セパレータ24、26間に挟持されることにより、発電セル16と同一の寸法及び形状に構成される。
【0043】
静電容量型面圧測定装置14は、燃料ガスや酸化剤ガスに曝されることがないように、第1セパレータ24の前記静電容量型面圧測定装置14側の面には、燃料ガス供給連通孔32a及び燃料ガス排出連通孔32bを樹脂シール(図示せず)で周回する一方、第2セパレータ26の前記静電容量型面圧測定装置14側の面には、酸化剤ガス供給連通孔28a及び酸化剤ガス排出連通孔28bを樹脂製シール(図示せず)で周回する。
【0044】
このように構成される燃料電池システム10の動作について、以下に説明する。
【0045】
先ず、図1に示すように、燃料電池スタック12は、複数の発電セル16が矢印A方向に積層されるとともに、積層方向両端には、ターミナルプレート17a、17b及び絶縁プレート18a、18bを介装してエンドプレート20a、20bが配置される。そして、エンドプレート20a、20bは、複数の締め付けボルト21aにより積層方向に締め付けられて、初期荷重が付与される。
【0046】
次に、酸化剤ガスは、燃料電池スタック12の酸化剤ガス供給連通孔28aに供給される一方、燃料ガスは、燃料電池スタック12の燃料ガス供給連通孔32aに供給される。また、冷却媒体は、燃料電池スタック12の冷却媒体供給連通孔30aに供給される。
【0047】
燃料電池スタック12内では、図3に示すように、酸化剤ガスは、酸化剤ガス供給連通孔28aから第2セパレータ26の酸化剤ガス流路44に導入され、電解質膜・電極構造体22のカソード側電極38に沿って移動する。一方、燃料ガスは、燃料ガス供給連通孔32aから第1セパレータ24の燃料ガス流路40に導入され、電解質膜・電極構造体22のアノード側電極36に沿って移動する。
【0048】
従って、各電解質膜・電極構造体22では、カソード側電極38に供給される酸化剤ガスと、アノード側電極36に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費され、発電が行われる。
【0049】
次いで、カソード側電極38に供給されて消費された酸化剤ガスは、酸化剤ガス排出連通孔28bに沿って流動した後、エンドプレート20aに排出される。同様に、アノード側電極36に供給されて消費された燃料ガスは、燃料ガス排出連通孔32bに排出されて流動した後、エンドプレート20aに排出される。
【0050】
また、純水やエチレングリコール等の冷却媒体は、第1セパレータ24及び第2セパレータ26間の冷却媒体流路42に導入された後、矢印B方向に沿って流動する。この冷却媒体は、電解質膜・電極構造体22を冷却した後、冷却媒体排出連通孔30bに移動し、エンドプレート20aに排出されて循環使用される。
【0051】
この場合、本実施形態では、図5及び図6に示すように、誘電体50の積層方向の厚さt1が、導電部52の前記積層方向の厚さt2よりも厚肉状に設定されている。このため、初期荷重付与機構21を介して、燃料電池スタック12に積層方向に初期荷重が付与されると、誘電体50が圧縮変形される。
【0052】
従って、誘電体50の厚さt1が、導電部52の厚さt2と同一の厚さになった状態では、前記誘電体50の厚さ変化による出力感度が向上するとともに、前記導電部52は、積層方向に向かって電流を確実に流すことができる。
【0053】
その際、図7に示すように、静電容量型面圧測定装置14(14b)では、所定の厚さt1に設定されるため、燃料電池スタック12の使用荷重領域に入る前の荷重P1(<荷重Pmin)で、既に誘電体50による面圧検出処理が可能な状態となっている。しかも、図8に示すように、静電容量型面圧測定装置14(14b1)では、所定のヤング率に設定されるため、燃料電池スタック12の使用荷重領域に入る前の荷重P2(<荷重Pmin)で、既に誘電体50による面圧検出処理が可能な状態になっている。
【0054】
これにより、燃料電池スタック12の使用荷重領域を網羅して発電面内の面圧を良好に測定することが可能になる。このため、発電時に正常な電流が阻害されることがなく、燃料電池スタック12内の面圧分布を高精度且つ確実に測定することができるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0055】
10…燃料電池システム 12…燃料電池スタック
14…静電容量型面圧測定装置 16…発電セル
21…初期荷重付与機構 21a…締め付けボルト
22…電解質・電極構造体 24、26…セパレータ
34…固体高分子電解質膜 36…アノード側電極
38…カソード側電極 40…燃料ガス流路
42…冷却媒体流路 44…酸化剤ガス流路
50…誘電体 52…導電部
54、56…電極部 58a、58b…溝部
60…開口部 62、64…電極
68…導電性シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質の両側に一対の電極が配設される電解質・電極構造体を有し、前記電解質・電極構造体とセパレータとを有する発電セルが積層される燃料電池スタックと、前記燃料電池スタック内に配設され、前記発電セルの面圧を測定するための静電容量型面圧測定装置とを備える燃料電池システムであって、
前記静電容量型面圧測定装置は、前記発電セルの発電面内に位置して設けられる複数の誘電体と、
前記発電セルの発電面方向に沿って延在するとともに、前記誘電体の積層方向の厚さよりも薄肉状に設定され、前記誘電体間に積層方向に向かって電流を流す導電部と、
前記発電面内の面圧測定を開始する際に、前記燃料電池スタックに前記積層方向に荷重を付与し、前記誘電体の厚さを前記導電部の厚さと同一の厚さに圧縮させる初期荷重付与機構と、
を備えることを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−113847(P2012−113847A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259628(P2010−259628)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】