説明

燃料電池システム

【課題】空気が混合された状態で水素含有燃料が供給された場合であっても、熱自立運転が可能な燃料電池システムを提供する。
【解決手段】制御部11の測定部101は、測定によって実際の排ガスの中の酸素の量を取得することができる。従って、制御部11の比較部103は、理想値としての演算値と、実際の酸素の量を示す測定値とを比較することで、燃料に空気が混合されていることを把握することができる。また、制御部11の調整部104は、比較部103による比較結果に基づいて燃料の供給量を調整することにより、燃料電池システム1の運転状態を、燃料に空気が混合されていない場合と同様な理想的な状態とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池システムとして、特許文献1に示すものが知られている。この燃料電池システムは、燃料ガス中のメタン系炭化水素の一部の成分の濃度を検出するガス濃度検出手段と、当該ガス濃度検出手段により検出したガス濃度から燃料ガス中の総発熱量を算出し、この総発熱量から燃料流量を算出する燃料流量算出手段と、この燃料流量から運転に適した燃料ガス流量を調整する燃料ガス流量調整手段と、を備えている。この燃料電池システムは、燃料ガス濃度に基づいて燃料ガス流量を調整することで、燃料ガスの季節的な変動に対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−320625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、水素含有燃料を供給する供給源は、供給圧を一定にするために、供給圧が低下した場合に空気を混合させて水素含有燃料を燃料電池システムに供給する場合がある。このような場合、従来の燃料電池システムは、特定の燃料にしか対応することができず、空気が混合された水素含有燃料の流量を正確に検出することができない。これによって、燃料電池システムが熱自立運転を行うことが出来ないという問題が生じる。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、空気が混合された状態で水素含有燃料が供給された場合であっても、熱自立運転が可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る燃料電池システムは、水素含有燃料を含む燃料を用いて水素含有ガスを発生させる水素発生部と、水素含有ガスを用いて発電を行うセルスタックと、を備える燃料電池システムであって、排ガスの中の酸素の量を測定する測定部と、排ガスの中の酸素の量を演算する演算部と、測定部による測定値と演算部による演算値とを比較する比較部と、比較部による比較結果に基づいて、燃料の供給量を調整する調整部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
燃料に空気が混合されていない状態であれば、排ガスの中の酸素の量は、燃料電池システムに供給される酸化剤及び燃料の量から、演算可能である。従って、演算部は、燃料に空気が混合されていない状態における理想値として、排ガスの中の酸素の量を演算することができる。一方、燃料に空気が混合されている場合、排ガスの中の酸素の量は、理想値とは異なるものとなる。測定部は、測定によって実際の排ガスの中の酸素の量を取得することができる。従って、比較部は、理想値としての演算値と、実際の酸素の量を示す測定値とを比較することで、燃料に空気が混合されていることを把握することができる。また、調整部は、比較部による比較結果に基づいて燃料の供給量を調整することにより、燃料電池システムの運転状態を燃料に空気が混合されていない場合と同様とすることができる。以上によって、燃料電池システムは、空気が混合された状態で水素含有燃料が供給された場合であっても、熱自立運転を行うことが可能となる。
【0008】
燃料電池システムにおいて、調整部は、測定値が演算値より大きい場合、燃料の供給量を増加させ、測定値が演算値より小さい場合、燃料の供給量を減少させ、比較部は、調整部による調整の後、再び測定値と演算値との比較を行うことが好ましい。これによって、燃料供給量の調整、及び測定値と演算値との比較が繰り返し実行される。当該繰り返しにより、燃料電池システムの運転状態を徐々に最適な状態へ近づけることができる。例えば、最適な燃料供給量を演算により導き出すことは、演算の負荷を大きくすることにつながる。燃料供給量の調整を繰り返し行うことで、演算の負荷を小さくすると共に、素早く運転状態を最適な状態にすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、空気が混合された状態で水素含有燃料が供給された場合であっても、燃料電池システムの熱自立運転が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池システムの構成を示すブロック構成図である。
【図2】図2は、制御部の構成を示すブロック構成図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態に係る燃料電池システムの制御処理の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
図1に示されるように、燃料電池システム1は、脱硫部2と、水気化部3と、水素発生部4と、セルスタック5と、オフガス燃焼部6と、水素含有燃料供給部7と、水供給部8と、酸化剤供給部9と、パワーコンディショナー10と、制御部11と、を備えている。燃料電池システム1は、水素含有燃料及び酸化剤を用いて、セルスタック5にて発電を行う。燃料電池システム1におけるセルスタック5の種類は特に限定されず、例えば、固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)、固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)、リン酸形燃料電池(PAFC:Phosphoric Acid Fuel Cell)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC:Molten Carbonate Fuel Cell)、及び、その他の種類を採用することができる。なお、セルスタック5の種類、水素含有燃料の種類、及び改質方式等に応じて、図1に示す構成要素を適宜省略してもよい。
【0013】
水素含有燃料として、例えば、炭化水素系燃料が用いられる。炭化水素系燃料として、分子中に炭素と水素とを含む化合物(酸素等、他の元素を含んでいてもよい)若しくはそれらの混合物が用いられる。炭化水素系燃料として、例えば、炭化水素類、アルコール類、エーテル類、バイオ燃料が挙げられ、これらの炭化水素系燃料は従来の石油・石炭等の化石燃料由来のもの、合成ガス等の合成系燃料由来のもの、バイオマス由来のものを適宜用いることができる。具体的には、炭化水素類として、メタン、エタン、プロパン、ブタン、天然ガス、LPG(液化石油ガス)、都市ガス、タウンガス、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油が挙げられる。アルコール類として、メタノール、エタノールが挙げられる。エーテル類として、ジメチルエーテルが挙げられる。バイオ燃料として、バイオガス、バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオジェットが挙げられる。
【0014】
酸化剤として、例えば、空気、純酸素ガス(通常の除去手法で除去が困難な不純物を含んでもよい)、酸素富化空気が用いられる。
【0015】
脱硫部2は、水素発生部4に供給される水素含有燃料の脱硫を行う。脱硫部2は、水素含有燃料に含有される硫黄化合物を除去するための脱硫触媒を有している。脱硫部2の脱硫方式として、例えば、硫黄化合物を吸着して除去する吸着脱硫方式や、硫黄化合物を水素と反応させて除去する水素化脱硫方式が採用される。脱硫部2は、脱硫した水素含有燃料を水素発生部4へ供給する。
【0016】
水気化部3は、水を加熱し気化させることによって、水素発生部4に供給される水蒸気を生成する。水気化部3における水の加熱は、例えば、水素発生部4の熱、オフガス燃焼部6の熱、あるいは排ガスの熱を回収する等、燃料電池システム1内で発生した熱を用いてもよい。また、別途ヒータ、バーナ等の他熱源を用いて水を加熱してもよい。なお、図1では、一例としてオフガス燃焼部6から水素発生部4へ供給される熱のみ記載されているが、これに限定されない。水気化部3は、生成した水蒸気を水素発生部4へ供給する。
【0017】
水素発生部4は、脱硫部2からの水素含有燃料を用いて水素リッチガスを発生させる。水素発生部4は、水素含有燃料を改質触媒によって改質する改質器を有している。水素発生部4での改質方式は、特に限定されず、例えば、水蒸気改質、部分酸化改質、自己熱改質、その他の改質方式を採用できる。なお、水素発生部4は、セルスタック5に要求される水素リッチガスの性状によって、改質触媒により改質する改質器の他に性状を調整するための構成を有する場合もある。例えば、セルスタック5のタイプが固体高分子形燃料電池(PEFC)やリン酸形燃料電池(PAFC)であった場合、水素発生部4は、水素リッチガス中の一酸化炭素を除去するための構成(例えば、シフト反応部、選択酸化反応部)を有する。水素発生部4は、水素リッチガスをセルスタック5のアノード12へ供給する。
【0018】
セルスタック5は、水素発生部4からの水素リッチガス及び酸化剤供給部9からの酸化剤を用いて発電を行う。セルスタック5は、水素リッチガスが供給されるアノード12と、酸化剤が供給されるカソード13と、アノード12とカソード13との間に配置される電解質14と、を備えている。セルスタック5は、パワーコンディショナー10を介して、電力を外部へ供給する。セルスタック5は、発電に用いられなかった水素リッチガス及び酸化剤をオフガスとして、オフガス燃焼部6へ供給する。なお、水素発生部4が備えている燃焼部(例えば、改質器を加熱する燃焼器など)をオフガス燃焼部6と共用してもよい。
【0019】
オフガス燃焼部6は、セルスタック5から供給されるオフガスを燃焼させる。オフガス燃焼部6によって発生する熱は、水素発生部4へ供給され、水素発生部4での水素リッチガスの発生に用いられる。
【0020】
水素含有燃料供給部7は、脱硫部2へ水素含有燃料を供給する。水供給部8は、水気化部3へ水を供給する。酸化剤供給部9は、セルスタック5のカソード13へ酸化剤を供給する。水素含有燃料供給部7、水供給部8、及び酸化剤供給部9は、例えばポンプによって構成されており、制御部11からの制御信号に基づいて駆動する。
【0021】
パワーコンディショナー10は、セルスタック5からの電力を、外部での電力使用状態に合わせて調整する。パワーコンディショナー10は、例えば、電圧を変換する処理や、直流電力を交流電力へ変換する処理を行う。
【0022】
制御部11は、燃料電池システム1全体の制御処理を行う。制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び入出力インターフェイスを含んで構成されたデバイスによって構成される。制御部11は、水素含有燃料供給部7、水供給部8、酸化剤供給部9、パワーコンディショナー10、その他、図示されないセンサや補機と電気的に接続されている。制御部11は、燃料電池システム1内で発生する各種信号を取得すると共に、燃料電池システム1内の各機器へ制御信号を出力する。
【0023】
燃料電池システム1に対して燃料を供給する供給源(例えばパイプラインなど)は、昇圧のために水素含有燃料に空気を混合して供給する場合がある。この場合、水素含有燃料供給部7から水素発生部4に供給される水素含有燃料にも空気が混合されている。本実施形態に係る燃料電池システム1は、水素含有燃料に空気が混合されていた場合であっても、適切に熱自立運転を行うことができる。以下の説明においては、水素含有燃料供給部7から水素発生部4へ供給されるものを「燃料」と称する。燃料は、少なくとも前述の水素含有燃料を含んでおり、水素含有燃料に空気が混合された空気混合燃料である場合と、空気が混合されていない場合がある。燃料電池システム1は、排ガスを排出する排ガスラインL1と、排ガスの中の酸素を検出するセンサー18と、を更に備えている。図2に示すように、制御部11は、測定部101と、演算部102と、比較部103と、調整部104と、を備えている。
【0024】
排ガスは、システム内における燃焼によって発生するガスである。図1の例では、排ガスは、セルスタック5からのオフガスをオフガス燃焼部6にて燃焼させることによって発生する。排ガスは、オフガス燃焼部6から排ガスラインL1を介して排出される。システム内に供給される酸素量が、セルスタック5での発電で用いられる酸素量、及びオフガス燃焼部6で用いられる酸素量よりも多い場合、排ガスには、酸素が含まれる。燃料に空気が混合されていない場合における排ガスの中の酸素の量は、システム内に供給される酸化剤の供給量と燃料の供給量に基づいて演算可能である。一方、燃料に空気が混合されている場合、燃料供給側からもシステム内へ酸素が供給される。また、空気に占められる分、燃料中の水素含有燃料の供給量が減るので、水素リッチガスの水素含有量も減り、オフガスに含有される水素含有量も減る。従って、燃料に空気が混合されている場合、排ガスの中の実際の酸素の量は、理想値(演算により導き出される値)よりも多くなる。
【0025】
センサー18は、排ガスラインL1に配置される。センサー18は、排ガスラインL1中のどの位置に配置されていてもよい。例えば、排ガスラインL1に熱交換器が配置されている場合、センサー18は、熱交換器の上流側と下流側のいずれに配置されていてもよい。センサー18は、排ガスに含まれている酸素を検出する。センサー18は、排ガス中の酸素濃度を検出することができる。センサー18は、制御部11と電気的に接続されており、検出結果を制御部11へ出力する。
【0026】
制御部11の測定部101は、センサー18の検出結果を取得する機能を有している。制御部11の測定部101は、センサー18の検出結果に基づいて、排ガス中の酸素の量を測定し、測定値を取得する機能を有している。測定値は、センサー18の検出結果に基づいて得られる値であればよく、センサー18からの検出値をそのまま測定値として用いてもよく、センサー18からの検出値を演算処理して導き出した値を用いてもよい。例えば、制御部11の測定部101は、センサー18で検出した酸素濃度を測定値として用いてもよく、センサー18で検出した酸素濃度を平均処理して測定値を演算してもよい。
【0027】
制御部11の演算部102は、排ガスの中の酸素の量を演算する機能を有している。制御部11の演算部102は、システム内に供給される酸化剤の供給量と、システム内に供給される燃料の供給量に基づいて、排ガスの中の酸素の量の理想値(演算値)を演算する。理想値は、システム内に供給される燃料に空気が含まれておらず、全て水素含有燃料であった場合における排ガスの中の酸素の量を示す値である。例えば、制御部11の演算部102は、酸化剤供給部9による酸化剤の供給量(酸化剤供給部9に対する指示値)及び水素含有燃料供給部7による燃料の供給量(水素含有燃料供給部7に対する指示値)に基づいて、排ガスの酸素濃度の理想値を演算することができる。なお、図1では、酸化剤はカソード13へのみ供給されているが、燃料電池システム1内の他の部分から供給されて排ガスの中の酸素の量に影響を及ぼす酸化剤がある場合、制御部11の演算部102は、当該他の部分で供給される酸化剤の供給量も考慮して演算を行う。例えば、水素発生部4に酸化剤(PROXエアーなど)が供給される場合や、オフガス燃焼部6に燃焼用の酸化剤が直接供給される場合、制御部11はそれらの酸化剤の供給量も考慮して演算を行う。
【0028】
制御部11の比較部103は、測定によって取得した測定値と演算によって取得した演算値とを比較する機能を有している。すなわち、制御部11の比較部103は、演算によって取得した酸素の量の理想値と、センサー18を用いて取得した実際の酸素の量とを比較する。また、制御部11の調整部104は、測定値と理想値との比較結果に基づいて、燃料の供給量を調整する機能を有している。制御部11の調整部104は、測定値が理想値より大きい場合、燃料の供給量を増加させ、測定値が理想値より小さい場合、燃料の供給量を減少させる。燃料に空気が混合されていた場合、制御部11の調整部104は、燃料の供給量を増加させることによって所望の水素含有燃料が得られるように制御し、最適な運転状態にて燃料電池システム1を運転させる。また、燃料供給量の調整後に燃料の空気混合量が減少することで水素含有燃料が多くなった場合は、排ガスの中の酸素の量が減少するので、制御部11の調整部104は、燃料の供給量を減少させることによって、最適な運転状態を維持することができる。
【0029】
制御部11の調整部104は、理想状態(燃料に空気が混合されていない)における水素含有燃料流量指示値を補正し、調整された燃料供給量が得られるような指示値を水素含有燃料供給部7へ出力する。制御部11は、測定値と理想値の比較処理と燃料調整処理とを繰り返し行うことができる。この場合、制御部11の調整部104は、予め定められた所定量ずつ燃料を増加させ、または所定量ずつ燃料を減少させる。例えば、調整部104は、燃料利用率を1ポイントずつ減らし(燃料供給量は増加)、または燃料利用率を1ポイントずつ増やす(燃料供給量は減少)。これによって、制御部11は、燃料に空気が混合されていた場合であっても、燃料電池システム1の運転状態を徐々に最適な状態に近づけることができる。
【0030】
次に、図3を参照して、本実施形態に係る燃料電池システム1の制御処理の一例について説明する。図3に示す処理は、制御部11において所定のタイミングで繰り返し実行される。
【0031】
図3に示すように、制御部11の演算部102は、排ガスの酸素濃度の理想値を演算するためのパラメータを取得する(ステップS10)。また、制御部11の演算部102は、S10で取得したパラメータに基づいて、排ガスの酸素濃度の理想値Xsを演算する(ステップS20)。
【0032】
具体的に、制御部11の演算部102は、式(1)を用いて演算する。制御部11の演算部102は、S10のパラメータ取得処理において、空気流量指示値と、水素含有燃料流量指示値と、空気中の窒素濃度と、空気中の酸素濃度と、燃料の平均炭素分子数と、燃料の平均水素分子数と、を取得する。制御部11の演算部102は、予め記憶していたデータに基づいて、空気中の窒素濃度と、空気中の酸素濃度と、燃料の平均炭素分子数と、燃料の平均水素分子数を取得する。窒素濃度及び酸素濃度の単位は、例えば、%である。空気流量指示値は、熱自立運転状態で目標電力を得られるように、制御部11より酸化剤供給部9へ出力される指示値である。水素含有燃料流量指示値は、熱自立運転状態で目標電力を得られるように、制御部11より水素含有燃料供給部7へ出力される指示値である。ただし、調整部104が燃料調整処理によって補正された指示値を出力する場合、ここでの水素含有燃料流量指示値は、水素含有燃料供給部7へ出力される補正後の指示値ではなく、補正前の状態の指示値である。すなわち、S20で用いられる空気流量指示値及び水素含有燃料流量指示値は、調整部104の燃料調整処理によっては変化せず、燃料電池システム1自体の目標電力などが変わるときに変化する。空気流量指示値及び水素含有燃料流量指示値の単位は、両者の単位が同一であれば特に限定されず、例えば、NLM、mol/minである。なお、空気以外の酸化剤が用いられる場合、当該酸化剤の流量、窒素濃度、酸素濃度が用いられる。また、システム内に酸化剤供給部(排ガスの酸素濃度に影響を与えるもの)が複数設けられている場合、空気流量指示値は、全ての酸化剤供給部に対する指示値の総和となる。なお、数式の一例である式(1)は、水素含有燃料として酸素原子が含まれない燃料を用いた場合に適用できる式である。水素含有燃料として酸素原子が含まれる燃料を用いる場合、例えば、式(1)の分子及び分母に、水素含有燃料中の酸素原子を酸素分子換算して追加した式を用いればよい。
【0033】
【数1】



air:空気流量指示値
fuel:水素含有燃料流量指示値
N2:空気中の窒素濃度
O2:空気中の酸素濃度
m:燃料の平均炭素分子数
n:燃料の平均水素分子数
【0034】
制御部11の測定部101は、センサー18の検出結果に基づいて排ガスの酸素濃度の測定値X1を取得する(ステップS30)。制御部11の比較部103は、S20で演算した理想値XsとS30で測定した測定値X1とを比較する(ステップS40、ステップS50)。制御部11の調整部104は、S40、S50の比較結果に基づいて燃料の供給量の調整を行う(ステップS60、ステップS70)。具体的に、制御部11の比較部103は、測定値X1が理想値Xsより小さいか否かを判定する(ステップS40)。S40において測定値が理想値Xs以上であると判定された場合、制御部11の比較部103は、測定値X1が理想値Xsより大きいか否かを判定する(ステップS50)。S40において測定値が理想値Xs以下であると判定された場合、測定値X1が理想値Xsに一致しているため、調整部104は燃料の供給量の調整を行うことなく図3の処理を終了する。S50において測定値X1が理想値Xsより大きいと判定された場合、制御部11の調整部104は、水素含有燃料供給部7へ出力する指示値を補正し、燃料の供給量を増加させる(ステップS60)。S60の後、図3の処理が終了する。S40において測定値X1が理想値Xsより小さいと判定された場合、制御部11の調整部104は、水素含有燃料供給部7へ出力する指示値を補正し、燃料の供給量を減少させる(ステップS70)。S70の後、図3の処理が終了する。図3の処理が終了すると、再びS10から処理が実行される。
【0035】
具体的なケースに当てはめて図3の説明を行う。熱自立運転を行っている燃料電池システム1に対し、燃料に空気が混合されていない状態から、昇圧のために燃料に空気が混合される状態となった場合の制御処理について説明する。まず、水素含有燃料供給部7は、燃料に空気が混合される前と同じく、所定の水素含有燃料流量指示値に従って作動している。水素含有燃料流量指示値が一定なので、水素含有燃料供給部7が供給する燃料の流量に変化はないが、当該燃料に含まれる水素含有燃料の流量は空気流量分だけ減少する。従って、排ガスの酸素濃度は理想値よりも大きくなる。制御部11の演算部102は、パラメータを取得すると共に(S10)、所定の水素含有燃料指示値に基づいて排ガスの酸素濃度の理想値Xsを演算する(S20)。制御部11の測定部101は、排ガスの酸素濃度を測定し、測定値X1を取得する(S30)。制御部11の比較部103は、S50において、測定値X1は理想値Xsよりも大きいと判定する。これによって、制御部11の比較部103は、燃料に空気が混合されていると判断する。制御部11の調整部104は、燃料供給量が所定量増加するように、水素含有燃料供給部7に対する指示値を補正する(S60)。その後、再びS10〜S30の処理が繰り返される。S20では、補正前の水素含有燃料流量指示値を用いるため、理想値Xsに変化はない。一方、S30では、燃料供給量が増加することによって水素含有燃料の供給量も増加するため、測定値X1は減少する。S50において、比較部103によって測定値X1が理想値Xsよりも大きいと判断されると、S60において水素含有燃料供給部7に対する指示値が更に補正される。これによって、燃料供給量が更に増加する。このような処理を繰り返すことによって、燃料供給量が徐々に増加し、排ガスの酸素濃度の測定値X1は徐々に理想値Xsに近づく。測定値X1と理想値Xsとが同一となったら、比較部103は燃料電池システム1の熱自立運転において最適な状態になったと判断し、調整部104は燃料供給量の増加をストップする。その後、当該燃料供給量にて運転及び図3の処理が繰り返し行われる。
【0036】
次に、燃料に空気が混合されている状態に対して燃料供給量が最適な量に調整された後に、燃料中の空気の混合量が低下した(あるいは、空気が無くなった)場合の制御処理について説明する。まず、水素含有燃料供給部7は、燃料中の空気の混合量が低下する前と同じく、燃料供給量が増加するように補正された指示値に従って作動している。指示値が一定なので、水素含有燃料供給部7が供給する燃料の流量に変化はないが、当該燃料に含まれる水素含有燃料の流量は空気流量の減少分だけ増加する。従って、排ガスの酸素濃度は理想値よりも小さくなる。制御部11の演算部102は、パラメータを取得すると共に(S10)、補正前の水素含有燃料指示値に基づいて排ガスの酸素濃度の理想値Xsを演算する(S20)。ただし、目標電力などが変わらない限り、補正前の水素含有燃料指示値に変化はないので、理想値Xsは燃料中の空気混合量の変化に関わらず一定である。制御部11の測定部101は、排ガスの酸素濃度を測定し、測定値X1を取得する(S30)。制御部11の比較部103は、S40において、測定値X1は理想値Xsよりも小さいと判定する。これによって、制御部11の比較部103は、燃料に混合されている空気が減少したと判断する。制御部11の調整部104は、燃料供給量が所定量減少するように、水素含有燃料供給部7に対する指示値を補正する(S70)。これは、元々の水素含有燃料指示値に加算されていた補正値を減少させることで、指示値を補正前の水素含有燃料指示値に近づけることに等しい。その後、再びS10〜S30の処理が繰り返される。S20では、補正がなされていない水素含有燃料流量指示値を用いるため、理想値Xsに変化はない。一方、S30では、燃料供給量が減少することによって水素含有燃料の供給量も減少するため、測定値X1は増加する。S40において、比較部103によって測定値X1が理想値Xsよりも小さいと判断されると、S70において水素含有燃料供給部7に対する指示値が更に補正される(加算されていた補正値が減少する)。これによって、燃料供給量が更に減少する。このような処理を繰り返すことによって、燃料供給量が徐々に減少し、排ガスの酸素濃度の測定値X1は徐々に理想値Xsに近づく。測定値X1と理想値Xsとが同一となったら、比較部103は燃料電池システム1の熱自立運転において最適な状態になったと判断し、調整部104は燃料供給量の減少をストップする。その後、当該燃料供給量にて運転及び図3の処理が繰り返し行われる。なお、燃料中の空気の混合量が再び増加した場合は、燃料供給量を増加させる処理が再び行われる。また、燃料中の空気の混合量が更に増加する場合は、燃料供給量を更に増加させる処理が行われる。その後、燃料中の空気の混合量に応じて、適宜燃料供給量の調整が行われる。
【0037】
燃料の空気の混合量に応じて燃料供給量の調整が行われた状態で、燃料電池システム1の目標電力などが変更されると、発電のために必要とされる酸化剤の量と水素含有燃料の量が変化する。すなわち、S10で取得される空気流量指示値及び水素含有燃料指示値が変化し、S20で演算される排ガスの酸素濃度の理想値Xsも変化する。このとき、目標電力などが変更したとしても、供給される燃料の空気の混合量には変化がないと考えられる。従って、調整部104が水素含有燃料指示値を補正して水素含有燃料供給部7へ出力していた場合、新たな水素含有燃料指示値に対しても当該補正が維持された状態にて、図3の制御処理が実行されることが好ましい。その後、新たな理想値Xsに対する燃料供給量の微調整が行われる。これによって、S60、S70の繰り返し回数を減少させることができる。ただし、燃料電池システム1の目標電力などが変更された時点で、既存の補正状態をキャンセルしてもよい。
【0038】
次に、燃料電池システム1の作用・効果について説明する。
【0039】
燃料に空気が混合されていない状態であれば、排ガスの中の酸素の量は、燃料電池システム1に供給される酸化剤及び燃料の量から、演算可能である。従って、制御部11の演算部102は、燃料に空気が混合されていない状態における理想値として、排ガスの中の酸素の量を演算することができる。一方、燃料に空気が混合されている場合、排ガスの中の酸素の量は、理想値とは異なるものとなる。制御部11の測定部101は、測定によって実際の排ガスの中の酸素の量を取得することができる。従って、制御部11の比較部103は、理想値としての演算値と、実際の酸素の量を示す測定値とを比較することで、燃料に空気が混合されていることを把握することができる。また、制御部11の調整部104は、比較部103による比較結果に基づいて燃料の供給量を調整することにより、燃料電池システム1の運転状態を、燃料に空気が混合されていない場合と同様な理想的な状態とすることができる。以上によって、燃料電池システム1は、空気が混合された状態で水素含有燃料が供給された場合であっても、熱自立運転を行うことが可能となる。
【0040】
燃料電池システム1において、制御部11の調整部104は、測定値X1が理想値Xsより大きい場合、燃料の供給量を増加させ、測定値X1が理想値Xsより小さい場合、燃料の供給量を減少させる。制御部11の比較部103は、調整部104による調整の後、再び測定値X1と理想値Xsとの比較を行う。これによって、燃料供給量の調整、及び測定値X1と理想値Xsとの比較が繰り返し実行される。当該繰り返しにより、燃料電池システム1の運転状態を徐々に最適な状態へ近づけることができる。例えば、最適な燃料供給量を演算により導き出すことは、演算の負荷を大きくすることにつながる。燃料供給量の調整を繰り返し行うことで、演算の負荷を小さくすると共に、素早く運転状態を最適な状態にすることができる。
【0041】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明に係る燃料電池システムは、実施形態に係る上記燃料電池システム1に限定されない。
【0042】
例えば、図3に示す制御処理では、測定値X1が理想値Xsと一致するまで燃料供給量の調整が行われた。しかし、測定値X1と理想値Xsとが完全に一致していなくとも、測定値X1と理想値Xsとの差が所定の閾値内に入っていれば、燃料供給量の調整をストップしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…燃料電池システム、4…水素発生部、5…セルスタック、11…制御部、18…センサー(測定部)、101…測定部、102…演算部、103…比較部、104…調整部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素含有燃料を含む燃料を用いて水素含有ガスを発生させる水素発生部と、
前記水素含有ガスを用いて発電を行うセルスタックと、を備える燃料電池システムであって、
排ガスの中の酸素の量を測定する測定部と、
前記排ガスの中の酸素の量を演算する演算部と、
前記測定部による測定値と前記演算部による演算値とを比較する比較部と、
前記比較部による比較結果に基づいて、前記燃料の供給量を調整する調整部と、を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記調整部は、前記測定値が前記演算値より大きい場合、前記燃料の供給量を増加させ、前記測定値が前記演算値より小さい場合、前記燃料の供給量を減少させ、
前記比較部は、前記調整部による調整の後、再び前記測定値と前記演算値との比較を行うことを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate