説明

燃料電池システム

【課題】運転状態での電流検出器の故障検知が容易な燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池システムは,燃料電池と,前記燃料電池から出力される直流電流を第1の周波数の交流電流に変換して負荷に供給するインバータと,前記インバータから前記負荷に供給されるインバータ側交流電流を前記第1の周波数より小さい第2の周波数で変動させる変動制御部と,電力系統から前記負荷に供給される系統側電流を検出する電流検出部で検出される系統側電流から,前記第2の周波数に対応する周波数成分を抽出する抽出部と,前記抽出される周波数成分を所定の閾値と比較して,前記電流検出部の故障の有無を判定する判定部と,を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池と電力系統(商用電源)が連系して,負荷に電力を供給する燃料電池・電力系統連系システムが用いられている。燃料電池・電力系統連系システムでは,電力系統から負荷に供給される電力が電流検出器によって測定され,電力系統および燃料電池から供給される電力のバランスが適正になるように,燃料電池が制御される。
ここで,電流検出器の誤接続を簡単に診断できるコージェネレーションシステムの診断装置が開示されている(特許文献1参照)。
この診断装置では,発電機の運転を停止した状態において,電流検出器の検出電流に基づいて電流検出器の接続状態を診断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-286785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,この診断装置では,発電機の運転状態での電流検出器の状態診断は困難である。即ち,この診断装置では,システム設置時等の負荷が電力を消費していない状態であることを前提としているが,運転状態では発電機の停止が困難である。また,負荷の電力消費は必ずしも一定ではないため,発電機からの出力電圧を変動させても,負荷の電力消費の変動との識別が必ずしも容易ではない。
本発明は,運転状態での電流検出器の故障検知が容易な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る燃料電池システムは,燃料電池と,前記燃料電池から出力される直流電流を第1の周波数の交流電流に変換して負荷に供給するインバータと,前記インバータから前記負荷に供給されるインバータ側交流電流を前記第1の周波数より小さい第2の周波数で変動させる変動制御部と,電力系統から前記負荷に供給される系統側電流を検出する電流検出部で検出される系統側電流から,前記第2の周波数に対応する周波数成分を抽出する抽出部と,前記抽出される周波数成分を所定の閾値と比較して,前記電流検出部の故障の有無を判定する判定部と,を具備する。
【0006】
インバータ(燃料電池システム)から負荷に第1の周波数の交流電流が供給される。ここで,インバータ(燃料電池システム)から前記負荷に供給されるインバータ側(燃料電池システム側)交流電流を前記第1の周波数より小さい第2の周波数で変動させる。そして,電力系統から負荷に供給される系統側電流を検出する電流検出部で検出される系統側電流から,第2の周波数に対応する周波数成分を抽出し,所定の閾値と比較して,前記電流検出部の故障の有無を判定する。即ち,燃料電池システム側から供給される電力を第2の周波数で変動させ,電力系統側の電流検出部で変動に対応する周波数成分が抽出されるか否かによって,電流検出部の故障の有無を判定する。この結果,燃料電池システムの運転状態での電流検出部の故障検知が容易となる。
【0007】
(1)インバータ側電圧を変動させるのに,種々の手法を用いることができる。
(a)例えば,前記変動制御部が,インバータ側電圧を変動することで,前記インバータ側交流電流を変動させても良い。
(b)追加負荷と,前記追加負荷の前記インバータへの接続の有無を切り替える切替部と,前記変動制御部が,前記切替部を制御することで,前記インバータ側交流電流を変動させてもよい。
即ち,インバータ側電圧や追加負荷の接続の有無を制御することで,インバータ側交流電流を変動できる。
【0008】
(2)前記電流検出部で検出される系統側電流を周波数分析する分析部と,前記分析部での周波数分析の結果に基づいて,前記第2の周波数を決定する決定部と,をさらに具備しても良い。
系統側電流を周波数分析することで,例えば,系統側電流の変動の傾向を考慮して,第2の周波数を適切に決定し,判定誤りを防止できる。
【0009】
(3)前記判定部が,前記電流検出部が故障していると判断した場合,前記燃料電池を停止させる停止制御部をさらに具備しても良い。
電流検出部が故障していると判断した場合,燃料電池を停止させることで,例えば,燃料電池から電力系統側への逆潮流を防止できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば,運転状態での電流検出器の故障検知が容易な燃料電池システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係る燃料電池・電力系統連系システムを表すブロック図である。
【図2】FIRフィルタのアルゴリズムを表す模式図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る燃料電池・電力系統連系システムを表すブロック図である。
【図4】消費電力の時間的変化の一例を表すグラフである。
【図5】燃料電池システムからの電力供給を変化させたときの,消費電力の時間的変化の一例を表すグラフである。
【図6】燃料電池システムからの電力供給を変化させたときの,消費電力の時間的変化の一例を表すグラフである。
【図7】燃料電池システムからの電力供給を変化させたときの,消費電力の周波数分析結果の一例を表すグラフである。
【図8】消費電力の時間的変化の一例を表すグラフである。
【図9】燃料電池システムからの電力供給を変化させたときの,消費電力の時間的変化の一例を表すグラフである。
【図10】燃料電池システムからの電力供給を変化させたときの,消費電力の時間的変化の一例を表すグラフである。
【図11】燃料電池システムからの電力供給を変化させたときの,消費電力の周波数分析結果の一例を表すグラフである。
【図12】消費電力の時間的変化の一例を表すグラフである。
【図13】燃料電池システムからの電力供給を変化させたときの,消費電力の時間的変化の一例を表すグラフである。
【図14】燃料電池システムからの電力供給を変化させたときの,消費電力の時間的変化の一例を表すグラフである。
【図15】燃料電池システムからの電力供給を変化させたときの,消費電力の周波数分析結果の一例を表すグラフである。
【図16】本発明の第3実施形態に係る燃料電池・電力系統連系システムを表すブロック図である。
【図17】本発明の第4実施形態に係る燃料電池・電力系統連系システムを表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下,図面を参照して,本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る燃料電池・電力系統連系システムを表す図である。この燃料電池・電力系統連系システムは,燃料電池システム10,分電盤20,負荷L1,L2,電流検出器SC2,SC3を有する。燃料電池システム10,分電盤20(電力系統側)から負荷L1,L2に電力が供給される。
【0013】
燃料電池システム10は,燃料電池11,DC−DCコンバータ12,DC−ACインバータ13,フィルタ14,制御部15,抽出部16,リレーR1,R2,電圧検出器SV1,SV2,SV3,電流検出器SC1,ブレーカBR1〜BR3,端子TU1,TN1,TV1を有する。分電盤20は,電力系統側であり,変圧器に接続される端子TU2,TN2,TV2を有する。
【0014】
燃料電池11は,例えば,燃料ガス(水素,炭化水素ガス等)と酸化剤ガス(酸素等)の反応により電力(DC電圧)を発生する。
【0015】
DC−DCコンバータ12およびDC−ACインバータ13の組み合わせは,燃料電池11から出力される直流電流を第1の周波数(周波数f1)の交流電流に変換して負荷に供給するインバータとして機能する。
DC−DCコンバータ12は,燃料電池11からのDC電圧(直流電流)を昇圧して出力する。
DC−ACインバータ13は,DC−DCコンバータ12から出力されるDC電圧(直流電流)を,例えば,約200Vで,周波数f1(例えば,50[Hz],60[Hz])のAC電圧(交流電流)に変換する。
【0016】
フィルタ14は,DC−ACインバータ13から出力されるAC電圧に含まれるノイズ成分(高周波成分)を除去する。
【0017】
制御部15は,次の変動制御部,判定部,および停止制御部として機能する。
・インバータから前記負荷に供給されるインバータ側交流電流を前記第1の周波数より小さい第2の周波数で変動させる変動制御部
・抽出される周波数成分を所定の閾値と比較して,前記電流検出部の故障の有無を判定する判定部
・判定部が前記電流検出部が故障していると判断した場合,前記燃料電池を停止させる停止制御部
なお,後述のように,本実施形態では,制御部15(変動制御部)が,インバータ側電圧(電圧V1)を変動することで,インバータ側交流電流(電流I1)を変動させる。
【0018】
抽出部16は,電流検出器SC2,SC3で検出された電流の測定結果(系統側電流の時間変化)から周波数f2に対応する周波数成分を抽出する。
【0019】
周波数成分の抽出は,CPU(Central Processing Unit),MCU(Micro Controller Unit),DSP(Digital Signal Processor)による計算により実行できる。計算方法として,図2に示すFIRフィルタ(Finite Impulse Response Filter)を利用できる。FIRフィルタでは,サンプリング間隔Tで入力されるサンプルx[i]に係数a[i]を乗算し,加算することで,必要な周波数成分y[i]を算出できる。
y[n]=Σi=0 a[i]・x[n−i]
【0020】
リレーR1,R2は,フィルタ14からブレーカBR1〜BR3(端子TU1,TN1,TV1)への電圧の印加の有無を切り替えるスイッチである。
【0021】
電流検出器SC1は,リレーR2からの電流(端子TV1から端子TU1への電流I1)を検出する。電流検出器SC1として,例えば,カレント・トランス(CT)を利用できる。なお,これは,電流検出器SC2,SC3でも同様である。
【0022】
電圧検出器SV1,SV2,SV3はそれぞれ,ブレーカBR1,BR3間(端子TU1,TV1間)の電圧V1(インバータ側電圧),ブレーカBR1,BR2間(端子TU1,TN1間)の電圧V2,ブレーカBR2,BR3間(端子TN1,TV1間)の電圧V3を検出する。
ブレーカBR1〜BR3はそれぞれ,端子TU2,TN2,TV2での電流が所定値を越えると電流を切断するスイッチである。
【0023】
端子TU1,TN1,TV1は,燃料電池システム10側の単相3線に対応する。端子TU1,TV1には,互いに逆位相の電圧が印加され,端子TN1は,中性線(グランド)に対応する。
【0024】
端子TU2,TN2,TV2は,変圧器(例えば,柱上トランス)に接続され電力系統側の単相3線に対応する。端子TU2,TV2は,互いに逆位相の電圧が印加され,端子TN2は,中性線(グランド)に対応する。端子TU2,TN2間の電圧V4,端子TN2,TV2間のAC電圧V5の実効値は100[V]である。
【0025】
電流検出器SC2,SC3は,分電盤20の端子TU2,TV2からの電流I2,I3を検出するものであり,電力系統から負荷L1,L2に供給される系統側電流を検出する電流検出部として機能する。
【0026】
負荷L1,L2は,例えば,電気機器であり,燃料電池システム10および電力系統の双方から電力が供給される。負荷L1は,端子TU1,TU2および端子TN1,TN2に接続される。負荷L2は,端子TV1,TV2および端子TN1,TN2に接続される。
【0027】
燃料電池・電力系統連系システムでは,負荷L1,L2が基本的に燃料電池システム10からの電力で動作し,電力系統からの電力の供給が小さいことが好ましい。一方,燃料電池システム10から電力系統への送電(逆潮流)は規制(禁止)されている。
【0028】
従い,燃料電池システム10では,電流検出器SC2,SC3によって,電力系統から負荷L1,L2に供給される電流I2,I3を測定し,この電流の和(I2+I3)の平均値が0[A]以上となるように(逆潮流が発生しないように),燃料電池11を制御する。このため,電流検出器SC2,SC3が正常に動作することは重要であり,燃料電池システム10は電流検出器SC2,SC3の故障を検出する機能を有する。
【0029】
負荷L1,L2それぞれの消費電力をP1[W],P2[W]とする。このとき,負荷L1,L2それぞれでの電流I4,I5は,P1/V4,P2/V5である。このとき,電流I2,I3はそれぞれ,(I4−I1),(I5−I1)である。電流I2,I3の和I0は次の式で表される。なお,既述のように,電力系統側電圧(電圧V4,V5)の実効値を100[V]とする。
I0=I2+I3
=I4+I5−2・I1
=P1/V4+P2/V5−2・I1
=(P1+P2)/100−2・I1
【0030】
このように,負荷L1,L2での消費電力P1,P2に対応して,燃料電池システム10からの電流I1を制御することで,逆潮流の発生を防止した状態(I0≧0)で,燃料電池システム10から負荷L1,L2への電力の供給を大きくすることができる。燃料電池システム10での電圧V1(インバータ側電圧)を制御することで,電流I1の変化が可能である。具体的には,制御部15がDC−DCコンバータ12およびDC−ACインバータ13の一方または双方を制御し,DC−DCコンバータ12またはDC−ACインバータ13からの出力電圧を変化させる。
【0031】
負荷L1,L2の消費電力P1,P2を,例えば,200[W],500[W]とすると,電流I3,I4はそれぞれ2[A],5[A]となる。このとき,電流I1が3.5[A]以下であれば,逆潮流は発生しない。
【0032】
電流I1を3.5[A]とすると,電流I2,I3はそれぞれ,−1.5[A],1.5[A]となる。このとき,電流I0は0[A]であり逆潮流は発生しない。また,電流I1を3.25[A]とすると,電流I2,I3はそれぞれ,−1.25[A],1.75[A]となる。このとき,電流I0は0.5[A]であり逆潮流は発生しない。一方,電流I1を3.75[A]とすると,電流I2,I3はそれぞれ,−1.75[A],1.25[A]となる。このとき,電流I0は−0.5[A]であり逆潮流が発生する。
【0033】
燃料電池システム10では,制御部15が電流I1を所定周波数f2で周期的に変動させる。例えば,電流I1を3.5[A],3.25[A]の間で,周波数f2で変化させる。電流I1は,3.5[A],3.25[A]の2値で切り替えることができる。また,電流I1を3.5[A],3.25[A]の間で連続的に変化させてもよい。
【0034】
周波数f2は,周波数f1より小さい値,例えば,0.2mHz〜1Hzの範囲の値を採用できる。周波数f2が大きいと,負荷L1,L2(電気機器)へのノイズ等の原因となる。一方,周波数f2が小さいと電流検出器SC2,SC3の故障の検出に時間を要する。周波数f2の成分を抽出するためには,この周波数f2の周期の繰り返しをサンプリングする必要があるため,小さい周波数の成分(周期の長い成分)の抽出には時間を要する。検知の速度をそれほど問題としなければ,例えば,周波数f2を1mHz程度とすることができる。
【0035】
電流I2,I3は,電流I1に応じて,周期的に変化する。このため,電流検出器SC2,SC3で検出された電流から所定周波数f2の成分を抽出することで,電流検出器SC2,SC3の故障の有無を判別できる。例えば,抽出された所定周波数f2の成分(周波数成分)のピーク値を閾値と比較することで,故障の有無を検出できる。周波数f2の成分のピーク値の絶対値が閾値より小さければ,電流検出器SC2,SC3の検出結果が不備であり,電流検出器SC2,SC3に故障が発生していると判定できる。
本実施形態では,電流検出器SC2,SC3の双方において,故障を検出しているが,電流検出器SC2,SC3の一方のみでの故障を検出してもよい。
【0036】
なお,電流検出器SC2,SC3に故障が発生していると判定した場合,制御部15は燃料電池11を停止させ,逆潮流の発生等を防止できる。
【0037】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施形態を説明する。
図3は本発明の第2実施形態に係る燃料電池・電力系統連系システムを表す図である。この燃料電池・電力系統連系システムは,燃料電池システム10a,分電盤20,負荷L1,L2,電流検出器SC2,SC3を有する。
【0038】
燃料電池システム10aは,燃料電池11,DC−DCコンバータ12,DC−ACインバータ13,フィルタ14,制御部15a,抽出部16,リレーR1,R2,電圧検出器SV1,SV2,SV3,電流検出器SC1,ブレーカBR1〜BR3,端子TU1,TN1,TV1,追加負荷L3,スイッチSWを有する。
【0039】
追加負荷L3,スイッチSWは,電流I2,I3を変動させるためのものである。スイッチSWは,追加負荷の前記インバータへの接続の有無を切り替える切替部として機能する。
【0040】
制御部15aは,第1の実施形態と同様,変動制御部,判定部,および停止制御部として機能する。但し,制御部15aは,制御信号CSによって,スイッチSW(切替部)を制御することで,インバータ側交流電流(電流I1)を変動させる。
【0041】
負荷L1,L2の消費電力P1,P2を200[W],500[W],電流I1を3.5[A]とし,追加負荷L3の消費電力P3を50[W]とする。スイッチSWがOFF状態の場合,電流I2,I3はそれぞれ−1.5[A],1.5[A]である。スイッチSWをON状態とすると,追加負荷L3に0.25[A]の電流I6が流れる。その結果,電流I2,I3はそれぞれ−1.25[A],1.75[A]となる。このように追加負荷L3をON/OFFさせても,電流I2,I3を変動できる。
【0042】
図4のグラフG1,図5のグラフG2aが,夏の消費電力P0の時間変化の一例を示すグラフである。グラフG1,G2aは,横軸のスケールが異なるが,同一のデータである。図5のグラフG2bは,燃料電池システム10での制御により消費電力Pを変動させた変動電力ΔPを表す。ここでは,15分を1周期(周波数f2=4/(60*60)=0.0011Hz=1.11[mHz])として,電力が変化している。図5のグラフG2c,図6のグラフG3は,電力Pと変動電力ΔPを合計した消費電力P1(=P0+ΔP)を表す。図7のグラフG4a,G4bはそれぞれ,消費電力P1,P0を周波数分析した結果を表す。グラフG4aに示されるように,1.11[mHz]の周波数f2に対応するピークPK1が検出される。
【0043】
図8のグラフG5,図9のグラフG6aが,冬の消費電力P0の時間変化の一例を示すグラフである。図9のグラフG6bは,燃料電池システム10での制御により消費電力Pを変動させた変動電力ΔPを表す。ここでは,15分を1周期(周波数f2=1.11[mHz])として,電力が変化している。図9のグラフG6c,図10のグラフG7は,電力Pと変動電力ΔPを合計した消費電力P1(=P0+ΔP)を表す。図11のグラフG8a,G8bはそれぞれ,消費電力P1,P0を周波数分析した結果を表す。グラフG8aに示されるように,1.11[mHz]の周波数f2に対応するピークPK2が検出される。
【0044】
図12のグラフG9,図13のグラフG10aが,春・秋の消費電力P0の時間変化の一例を示すグラフである。図13のグラフG10bは,燃料電池システム10での制御により消費電力Pを変動させた変動電力ΔPを表す。ここでは,15分を1周期(周波数f2=1.11[mHz])として,電力が変化している。図13のグラフG10c,図14のグラフG11は,電力Pと変動電力ΔPを合計した消費電力P1(=P0+ΔP)を表す。図15のグラフG12a,G12bはそれぞれ,消費電力P1,P0を周波数分析した結果を表す。グラフG12aに示されるように,1.11[mHz]の周波数f2に対応するピークPK3が検出される。
【0045】
以上のように,夏,冬,春・秋(中間期)の何れでも,周波数分析によって,電気機器等の使用状態に起因する消費電力Pの時間的変動と分離して,燃料電池システム10による周波数f2での消費電力Pの変動を検出できる。
なお,これらは,文献(「電機」2008年10月,頁21,図4)に示されるデータに基づく,シミュレーションの結果である。即ち,図4,図8,図12は,この文献の図4に対応している。
【0046】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施形態を説明する。
図16は本発明の第3実施形態に係る燃料電池・電力系統連系システムを表す図である。この燃料電池・電力系統連系システムは,燃料電池システム10b,分電盤20,負荷L1,L2,電流検出器SC2,SC3を有する。
【0047】
燃料電池システム10bは,燃料電池11,DC−DCコンバータ12,DC−ACインバータ13,フィルタ14,制御部15b,抽出部16,分析部17,リレーR1,R2,電圧検出器SV1,SV2,SV3,電流検出器SC1,ブレーカBR1〜BR3,端子TU1,TN1,TV1を有する。
【0048】
本実施形態は,第1の実施形態に対応し,電圧V1の実効値を周波数f2で周期的に変動することで,電流I1,ひいては電流I2,I3を周波数f2で周期的に変動させる。
【0049】
分析部17は,電流検出器SC2,SC3での検出結果(系統側電流の時間的変化)を周波数分析する。即ち,系統側電流を周波数成分毎に分解し,それぞれの周波数成分でのピーク値を算出する。
【0050】
制御部15bは,第1,第2の実施形態と同様,変動制御部,判定部,および停止制御部として機能する。
【0051】
さらに,制御部15bは,分析部17での分析結果に基づき,周波数f2を決定する(決定部として機能する)。例えば,電流I1を一定(周期的変動しない)状態として,電流検出器SC2,SC3によって電力系統側の電流の時間的変化を測定し,ピークの小さい周波数f2を決定する。この結果,制御部15bによる電流検出器SC2,SC3の故障検出の精度を向上できる。
【0052】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施形態を説明する。
図17は本発明の第4実施形態に係る燃料電池・電力系統連系システムを表す図である。この燃料電池・電力系統連系システムは,燃料電池システム10c,分電盤20,負荷L1,L2,電流検出器SC2,SC3を有する。
【0053】
燃料電池システム10bは,燃料電池11,DC−DCコンバータ12,DC−ACインバータ13,フィルタ14,制御部15b,抽出部16,分析部17,リレーR1,R2,電圧検出器SV1,SV2,SV3,電流検出器SC1,ブレーカBR1〜BR3,端子TU1,TN1,TV1,追加負荷L3,スイッチSWを有する。
【0054】
本実施形態は,第2の実施形態に対応し,追加負荷L3を周波数f2で周期的にON/OFFすることで,電流I1,ひいては電流I2,I3を周波数f2で周期的に変動させる。この他の点では,本実施形態は第3の実施形態と大きく異なる訳でないので,詳細な説明を省略する。
【0055】
(その他の実施形態)
本発明の実施形態は上記の実施形態に限られず拡張,変更可能であり,拡張,変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
10 燃料電池システム
11 燃料電池
12 DC−DCコンバータ
13 DC−ACインバータ
14 フィルタ
15 制御部
16 抽出部
17 分析部
20 分電盤
BR1−BR3, ブレーカ
SC1−SC3 電流検出器
L1,L2 負荷
L3 追加負荷
R1,R2 リレー
SW スイッチ
TU1,TN1,TV1 端子
TU2,TN2,TV2 端子
SV1,SV2,SV3 電圧検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と,
前記燃料電池から出力される直流電流を第1の周波数の交流電流に変換して負荷に供給するインバータと,
前記インバータから前記負荷に供給されるインバータ側交流電流を前記第1の周波数より小さい第2の周波数で変動させる変動制御部と,
電力系統から前記負荷に供給される系統側電流を検出する電流検出部で検出される系統側電流から,前記第2の周波数に対応する周波数成分を抽出する抽出部と,
前記抽出される周波数成分を所定の閾値と比較して,前記電流検出部の故障の有無を判定する判定部と,
を具備することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記変動制御部が,インバータ側電圧を変動することで,前記インバータ側交流電流を変動させる
ことを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項3】
追加負荷と,
前記追加負荷の前記インバータへの接続の有無を切り替える切替部と,
前記変動制御部が,前記切替部を制御することで,前記インバータ側交流電流を変動させる
ことを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記電流検出部で検出される系統側電流を周波数分析する分析部と,
前記分析部での周波数分析の結果に基づいて,前記第2の周波数を決定する決定部と,
をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記判定部が,前記電流検出部が故障していると判断した場合,前記燃料電池を停止させる停止制御部,
をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−186027(P2012−186027A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48478(P2011−48478)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】