説明

燃料電池システム

【課題】燃料電池の電解質膜に生じる永久歪みの進行を好適に検知する。
【解決手段】燃料電池システムは、吸湿によって膨張する特性を有する電解質膜を備えた燃料電池と、当該特性に起因して生じる電解質膜の塑性変形の程度に対応した指標値を取得する取得部と、取得した指標値が所定値以上である場合に、予め定められた対処動作を行う対処部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関し、特に、電解質膜の塑性変形を検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池に用いられる電解質膜は、吸湿によって膨張する特性を有している。かかる電解質膜は、燃料電池の運転状態の変化、例えば、燃料電池の電気化学反応に伴い発生する生成水の量の変化などによって、含水量が増加すると膨張し、含水量が低下すると収縮する。通常、電解質膜の周縁部はガスケットなどに固定されているので、電解質膜が膨張すると、電解質膜に緩みが生じることとなる。このようにして生じた電解質膜の緩みは、電解質膜が収縮すると緩和されるが、所定以上の緩み(変形)が生じた場合には、電解質膜が塑性変形して永久歪みを生じ、電解質膜が収縮しても、もとの緩みのない状態には戻らなくなる。このような永久歪みが進行すると、緩んだ電解質膜が不規則に折れた形状(以下、膜シワともいう)となり、燃料ガスとしての水素ガスがイオン化しないまま電解質膜を透過するクロスリークの量が増大し、発電性能が低下するおそれがあった。かかる問題は、固体高分子形燃料電池に限らず、吸湿によって膨張する特性を有する電解質膜を用いた燃料電池、例えば、ダイレクトメタノール形燃料電池などにも共通する問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−282644号公報
【特許文献2】特開2009−48949号公報
【特許文献3】WO2007/052500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の問題の少なくとも一部を考慮し、本発明が解決しようとする課題は、燃料電池の電解質膜に生じる永久歪みの進行を好適に検知することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]燃料電池システムであって、
吸湿によって膨張する特性を有する電解質膜を備えた燃料電池と、
前記特性に起因して生じる前記電解質膜の塑性変形の程度に対応した指標値を取得する取得部と、
前記取得した指標値が所定値以上である場合に、予め定められた対処動作を行う対処部と
を備えた燃料電池システム。
【0007】
かかる構成の燃料電池システムは、吸湿によって膨張する電解質膜の塑性変形の程度に対応した指標値を取得するので、電解質膜が塑性変形して生じる永久歪みの進行を好適に検知することができる。しかも、指標値が所定値以上である場合に対処動作を行うので、永久歪みが進行して発電性能を悪化させることを抑制することができる。
【0008】
[適用例2]前記取得部は、前記電解質膜の含水の程度との相関を有する前記燃料電池の発電の状況を表すパラメータの経時的な値に基づいて、前記指標値を算出する適用例1記載の燃料電池システム。
【0009】
かかる構成の燃料電池システムは、電解質膜の含水の程度との相関を有する燃料電池の発電の状況を表すパラメータの経時的な値に基づいて、指標値を算出する。電解質膜の含水の程度と、燃料電池システムの発電運転時間とは、電解質膜の塑性変形の程度との相関を有するので、かかるパラメータの経時的な値は、電解質膜の塑性変形の程度に対応した好適な指標値となり、電解質膜の永久歪みの進行を好適に検知することができる。
【0010】
[適用例3]適用例1記載の燃料電池システムであって、前記取得部は、前記電解質膜の変形に応じて変化する前記電解質膜の面圧を測定する面圧測定部を備え、前記電解質膜の含水の程度が所定以下である乾燥状態で前記面圧測定部が測定した面圧に基づいて、前記指標値を取得する燃料電池システム。
【0011】
かかる構成の燃料電池システムは、乾燥状態の電解質膜の面圧を測定するので、その測定面圧は、電解質膜の一時歪みがほぼ解消され、永久歪みが残った状態で測定された面圧である。かかる条件で測定された電解質膜の面圧は、電解質膜と他の部材との接触状況、すなわち、電解質膜の変形の状況に応じて変化するので、電解質膜の塑性変形の程度に対応した好適な指標値となり、電解質膜の永久歪みの進行を好適に検知することができる。
【0012】
[適用例4]適用例1記載の燃料電池システムであって、前記取得部は、前記電解質膜に固定され、該電解質膜の変形の程度を測定する歪みゲージを有する歪み測定部を備え、前記電解質膜の含水の程度が所定以下である乾燥状態で前記歪み測定部が測定した変形の程度を前記指標値として取得する燃料電池システム。
【0013】
かかる構成の燃料電池システムは、乾燥状態の電解質膜の変形の程度を測定するので、電解質膜の一時歪みがほぼ解消され、永久歪みが残った状態の電解質膜の変形の程度を測定することができる。したがって、塑性変形の程度を直接的に計測した指標値を用いて、電解質膜の永久歪みの進行を好適に検知することができる。
【0014】
[適用例5]適用例1ないし適用例4のいずれか記載の燃料電池システムであって、前記電解質膜の外縁部は、所定以上の温度に加熱することによって収縮する熱収縮部材によって固定され、前記対処部は、前記熱収縮部材を加熱する加熱部を備え、前記加熱部は、前記対処動作として、前記熱収縮部材を加熱して収縮させ、前記電解質膜に前記外縁部に向けた張力を生じさせる燃料電池システム。
【0015】
かかる構成の燃料電池システムは、電解質膜の外縁部が熱収縮部材によって固定され、対処動作として熱収縮部材を加熱する。これによって、熱収縮部材は収縮し、電解質膜に外縁部に向けた張力を生じさせるので、塑性変形によって生じた電解質膜の緩みを緩和することができる。その結果、永久歪みの進行による発電性能の悪化を自動的に抑制することができる。
【0016】
[適用例6]適用例1ないし適用例4のいずれか記載の燃料電池システムであって、前記電解質膜の少なくとも外縁部は、所定以上の温度に加熱することによって収縮する熱収縮部材によって形成され、前記対処部は、前記熱収縮部材を加熱する加熱部を備え、前記加熱部は、前記対処動作として、前記熱収縮部材を加熱して収縮させ、前記電解質膜に前記外縁部に向けた張力を生じさせる燃料電池システム。
【0017】
かかる構成の燃料電池システムは、電解質膜の少なくとも外縁部が熱収縮部材によって形成され、対処動作として熱収縮部材を加熱する。これによって、熱収縮部材で形成された電解質膜は収縮し、電解質膜に外縁部に向けた張力を生じさせるので、塑性変形によって生じた電解質膜の緩みを緩和することができる。その結果、永久歪みの進行による発電性能の悪化を自動的に抑制することができる。
【0018】
[適用例7]前記対処部は、前記対処動作として、前記取得した指標値が所定値以上であることをユーザに報知する報知手段を備えた適用例1ないし適用例6のいずれか記載の燃料電池システム。
【0019】
かかる構成の燃料電池システムは、指標値が所定値以上であることをユーザに報知することができるので、ユーザは、電解質膜の塑性変形が所定程度に達したこと、すなわち、電解質膜に所定程度の緩みが生じていることを容易に知ることができる。したがって、ユーザが燃料電池システムを修理に出すなどして、電解質膜の緩みを解消させるための対処を行えば、永久歪みの進行による発電性能の悪化を抑制することができる。
【0020】
[適用例8]前記歪みゲージは、前記電解質膜のうちの、前記燃料電池の電気化学反応に供する反応ガスの流れの下流側に対応する領域に設けられた適用例4記載の燃料電池システム。
【0021】
かかる構成の燃料電池システムは、歪みゲージが反応ガスの流れの下流側に対応する領域の電解質膜に設けられる。反応ガスの下流側では、上流側に比べて反応ガスが多くの水分を含み、電解質膜の含水量も多くなるので、電解質膜の吸湿による変形量が大きくなり、電解質膜の塑性変形が生じやすい。かかる下流側に歪みゲージを設けることによって、電解質膜が塑性変形して生じる永久歪みの進行を早期に検知することができる。
【0022】
[適用例9]前記歪みゲージは、前記電解質膜のうちの、重力方向の下方側の領域に設けられた適用例4または適用例8記載の燃料電池システム。
【0023】
かかる構成の燃料電池システムは、歪みゲージが重力方向の下方側に設けられる。重力方向の下方側は、上方側に比べて重力によって水分が移行しやすく、電解質膜の含水量が多くなるので、電解質膜の吸湿による変形量が大きくなり、電解質膜の塑性変形が生じやすい。かかる下方側に歪みゲージを設けることによって、電解質膜が塑性変形して生じる永久歪みの進行を早期に検知することができる。
【0024】
[適用例10]適用例4、適用例8、適用例9のいずれか記載の燃料電池システムであって、前記燃料電池は、発電の最小単位である単セルが複数積層された燃料電池スタックとして構成され、前記歪みゲージは、前記複数の単セルのうちの、前記積層の方向の端部に配置された前記単セルに設けられた燃料電池システム。
【0025】
かかる構成の燃料電池システムは、燃料電池スタックを構成する複数の単セルのうちの端部に配置された単セルに歪みゲージが設けられる。燃料電池スタックの端部は、中央部に比べて発電温度が低下しやすいので、電解質膜の含水量が多くなりがちである。そのため、電解質膜の吸湿による変形量が大きくなり、電解質膜の塑性変形が生じやすい。かかる端部の単セルに歪みゲージを設けることによって、複数の単セルのいずれかの電解質膜に生じる永久歪みの進行を早期に検知することができる。
【0026】
[適用例11]適用例4、適用例8ないし適用例10のいずれか記載の燃料電池システムであって、前記燃料電池は、前記電解質膜を間に挟んで配置された一対のセパレータを備え、前記一対のセパレータのうちの少なくとも一方のセパレータは、該セパレータの前記電解質膜側の表面に、前記燃料電池の電気化学反応に供する反応ガスの流路となる凹部が形成され、前記歪みゲージは、前記凹部に対応する位置の前記電解質膜に設けられた燃料電池システム。
【0027】
かかる構成の燃料電池システムは、セパレータの凹部に対応する電解質膜の位置に歪みゲージが設けられる。凹部に対応する位置では、その他の位置に比べて電解質膜に作用する面圧が小さくなるので、電解質膜が変形しやすい。すなわち、塑性変形が生じやすい。かかる凹部に対応する位置に歪みゲージを設けることによって、電解質膜が塑性変形して生じる永久歪みの進行を早期に検知することができる。
【0028】
[適用例12]吸湿によって膨張する特性を有する電解質膜を備えた燃料電池において、該電解質膜の塑性変形の程度を推定する推定方法であって、前記電解質膜の含水の程度との相関を有する前記燃料電池の発電の状況を表すパラメータの経時的な値に基づいて算出される指標値を用いて、前記塑性変形の程度を推定する推定方法。
【0029】
かかる推定方法は、電解質膜の含水の程度との相関を有する燃料電池の発電の状況を表すパラメータの経時的な値に基づいて算出される指標値を用いて、電解質膜の塑性変形の程度を推定する。電解質膜の含水の程度と、燃料電池の発電運転時間とは、電解質膜の塑性変形の程度との相関を有するので、かかるパラメータの経時的な値は、電解質膜の塑性変形の程度に対応した好適な指標値となり、塑性変形の程度を精度良く推定することができる。
【0030】
[適用例13]燃料電池システムの設計方法であって、
前記燃料電池システムは、
吸湿によって膨張する特性を有する電解質膜を備えた燃料電池と、
前記電解質膜に固定され、該電解質膜の変形の程度を測定する歪みゲージを有する歪み測定部と、
前記測定した変形の程度が所定の閾値以上の変形である場合に、予め定められた対処動作を行う対処部と
を備え、
前記電解質膜が所定の方向に変形した場合の、該電解質膜の両面のうちの前記所定の方向側の面の変形量が、該電解質膜の降伏点に対応する歪み量以下となる範囲で、前記閾値を設定する
燃料電池システムの設計方法。
【0031】
かかる構成の設計方法は、電解質膜が変形する方向側の電解質膜の変形量が、電解質膜の降伏点に対応する歪み量以下となる範囲で、対処動作を行うための閾値を設定する。電解質膜が変形する方向側の電解質膜の変形量は、その反対側の電解質膜の変形量よりも大きくなるので、燃料電池システムが、電解質膜の塑性変形を生じる前に対処動作を行う精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】燃料電池システム20の概略構成を示す説明図である。
【図2】燃料電池システム20を構成する単セル40の概略構成を示す説明図である。
【図3】燃料電池システム20における緩み対処処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】緩み対処処理によって、電解質膜41の緩みが緩和される様子を示す説明図である。
【図5】緩み対処処理に用いる閾値TH1を設定するための実験結果の具体例である。
【図6】図5に示した実験結果に対応する電解質膜41の外観等を示す説明図である。
【図7】図5に示した実験結果における含水率積算値IVと電解質膜41の塑性変形の程度との関係を示す相関図である。
【図8】第2実施例としての緩み対処処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】第3実施例としての燃料電池システム20の第1実施例と異なる構成を示す説明図である。
【図10】歪みゲージ353の取付箇所を示す説明図である。
【図11】歪みゲージ353の取付箇所の他の例を示す説明図である。
【図12】歪みゲージ353の取付箇所の他の例を示す説明図である。
【図13】第3実施例としての緩み対処処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】第4実施例としての燃料電池システム20の第1実施例と異なる構成を示す説明図である。
【図15】第4実施例としての緩み対処処理の流れを示すフローチャートである。
【図16】他の実施形態としての緩み対処処理の流れを示すフローチャートである。
【図17】吸湿によって一時歪みが生じた状態の電解質膜41を示す説明図である。
【図18】電解質膜41(膜厚25μm)の歪み率εと、うねり幅Wおよびうねり角度θとの関係を示す説明図である。
【図19】電解質膜41の膜厚ごとの歪み率εとうねり幅Wとの関係を示す説明図である。
【図20】電解質膜41の内側歪み率εinと外側歪み率εoutとの関係を示す説明図である。
【図21】電解質膜41の降伏点を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
A.第1実施例:
A−1.燃料電池システム20の構成:
本発明の第1実施例としての燃料電池システム20の概略構成を図1に示す。燃料電池システム20は、図示するように、燃料電池スタック30と燃料ガス供給・排出機構81と酸化ガス供給・排出機構82と冷却水供給・排出機構83と制御ユニット90とを備えている。
【0034】
燃料電池スタック30は、本実施例においては、固体高分子形の燃料電池であり、発電の最小単位である単セル40を複数積層し、その積層方向の両脇を、出力端子を備えるターミナル61、インシュレータ62、エンドプレート63で順次挟持することによって構成される。ターミナル61には、燃料電池スタック30の抵抗を測定する抵抗測定部65が接続されている。この抵抗測定部65は、ターミナル61に交流の電圧をその周波数を掃引しつつ入力する際に、両ターミナル61間を流れる交流電流を検出することにより、燃料電池スタック30の交流インピーダンスを測定する。なお、抵抗測定部65は、燃料電池スタック30を構成する各々の単セル40のうちのいずれかに接続してもよい。エンドプレート63には、温度センサ66が設けられている。この温度センサ66は、燃料電池スタック30の運転温度を検出するために設けられる。なお、温度センサ66は、燃料電池スタック30を構成する各々の単セル40のいずれかに設けてもよいし、単セル40の各々に設けてもよい。
【0035】
燃料電池スタック30の単セル40に対応する領域の外周部には、加熱器70が設けられている。この加熱器70は、後述する熱収縮部材51を所定温度まで加熱するために設けられる。本実施例では、加熱器70として電熱ヒータを用いている。本実施例では、加熱器70は、単セル40に対応する領域の燃料電池スタック30の外周部を被覆するように設けられているが、図1では、図示を簡略化している。
【0036】
燃料ガス供給・排出機構81は、水素タンク、水素遮断弁、インジェクタ、水素流路等を備えている(図示省略)。この燃料ガス供給・排出機構81は、水素タンクに貯留された燃料ガスとしての水素ガスを単セル40の各々に供給する。これによって、水素ガスが、各々の単セル40における電気化学反応に供される。また、燃料ガス供給・排出機構81は、単セル40の電気化学反応に供された水素ガスの排ガスを系外に排出する。なお、排ガスは、循環利用してもよいし、間欠的に系外に排出してもよい。
【0037】
酸化ガス供給・排出機構82は、コンプレッサ、空気流路等を備えている(図示省略)。この酸化ガス供給・排出機構82は、コンプレッサによって外部から取り込んだ空気を酸化ガスとして単セル40の各々に供給する。これによって、空気が、各々の単セル40における電気化学反応に供される。また、酸化ガス供給・排出機構82は、単セル40の電気化学反応に供された空気の排ガスを系外に排出する。なお、空気の排ガスは、水素の排ガスと混合して排出する構成としてもよい。
【0038】
冷却水供給・排出機構83は、ラジエータ、冷却水循環ポンプ、冷却水流路等(図示省略)を備えている。この冷却水供給・排出機構83は、各々の単セル40との間で冷却水を循環させ、単セル40での吸熱とラジエータでの放熱を繰り返すことによって、単セル40の運転温度を調節する。
【0039】
上述の各構成機器は、制御ユニット90により制御される。制御ユニット90は、内部にCPU、RAM、ROM等を備えるマイクロコンピュータとして構成されており、ROMに記憶されたプログラムをRAMに展開して実行することで、出力要求ORと燃料電池システム20の各種センサSn、例えば、温度センサ66や電圧センサ(図示省略)などからの信号を受けて、水素遮断弁、インジェクタ、コンプレッサ、冷媒循環ポンプ等(図示省略)の各種アクチュエータAmに駆動信号を出力し、燃料電池システム20の運転全般を制御する。また、制御ユニット90は、所定のプログラムを実行することによって、取得部91、対処部92としても機能する。これらの機能については後述する。
【0040】
A−2.単セル40の構成:
単セル40の概略構成を図2に示す。図2は、燃料電池スタック30を構成する単セル40の積層面に直交する方向の単セル40の断面模式図である。図示するように、単セル40は、電解質膜41、アノード42、カソード43、ガス拡散層44,45、セパレータ46,47、熱収縮部材51,ガスケット52を備えている。電解質膜41は、固体高分子材料、例えばフッ素系樹脂により形成されたプロトン伝導性のイオン交換膜であり、湿潤状態で良好な電気伝導性を示す。この電解質膜41は、吸湿によって膨張する特性(以下、膨潤特性ともいう)を有している。本実施例では、電解質膜41として、膜圧が25μmのNafion膜(Nafionは登録商標)を用いた。
【0041】
電解質膜41の一方の面には、アノード42が形成され、他方の面には、カソード43が形成されている。アノード42およびカソード43は、導電性を有する担体上に触媒を担持させた電極であり、本実施例においては、白金触媒を担持したカーボン粒子と、電解質膜41を構成する高分子電解質と同質の電解質とを備えている。かかる電解質膜41と、アノード42およびカソード43とは、MEA(Membrane Electrode Assembly)を構成する。
【0042】
MEAの両面には、ガス拡散層44,45が形成されている。ガス拡散層44,45は、ガス拡散層44,45に供給された反応ガス(燃料ガスまたは酸化ガス)を拡散して、アノード42またはカソード43の全面に供給する。ガス拡散層44,45は、ガス透過性を有する導電性部材、例えば、カーボンペーパやカーボンクロス、あるいは金属メッシュや発泡金属によって形成することができる。本実施例においては、カーボンペーパを用いた。
【0043】
ガス拡散層44,45が形成されたMEAの両面は、セパレータ46,47で挟持されている。セパレータ46,47は、反応ガスの隔壁として機能する部材であり、ガス不透過な導電性部材、例えば、圧縮カーボンやステンレス鋼などの金属材料によって形成される。本実施例では、ステンレス鋼を用いた。このセパレータ46,47には、MEA側の表面に凹部48,49が形成されている。凹部48,49は、燃料ガス供給・排出機構81、酸化ガス供給・排出機構82によって供給される反応ガスの流路として機能する。また、図示は省略しているが、セパレータ46,47には、冷却水供給・排出機構83によって循環される冷却水の流路を形成する凹部も形成されている。なお、セパレータ46,47は、表面が平坦に形成され、内部に反応ガス等の流路が形成されたフラットセパレータであってもよい。この場合、ガス拡散層44,45とセパレータ46,47との間に、ラスメタルなどの多孔質部材からなる流路層を配置してもよい。
【0044】
熱収縮部材51は、MEAの周縁部を覆うフレーム形状を有しており、MEAの周縁部に接合されている。この熱収縮部材51は、所定の熱処理温度T1で加熱すると収縮する特性を有するように加工処理が施されている。この加工処理は、周知の熱収縮フィルムの技術を用いて行われたものである。具体的には、熱収縮部材51は、熱収縮部材51の材料のガラス転移温度Tg以上、融点Tm未満の温度T1で延伸して分子配向を与えられている。かかる加工処理を施すことで、熱収縮部材51に、熱処理温度T1以上に加熱することで収縮し、その収縮した状態を保持する特性が付与される。本実施例では、熱収縮部材51の材料として、膜圧50μmのNafion膜を用い、熱処理温度T1を150℃として、縦方向2倍、横方向2倍の延伸処理を行った熱収縮部材51を用いた。かかる熱収縮部材51は、後述する緩み対処処理において、加熱器70によって熱処理温度T1まで加熱することにより、収縮させるために設けている。逆に言えば、加熱器70は、熱収縮部材51を熱処理温度T1まで加熱できるように調節されている。なお、熱処理温度T1は、加熱器70による加熱時の電解質膜41への熱によるダメージを抑制するために、ガラス転移温度Tg付近で設定することが望ましい。なお、熱収縮部材51の材料は、Nafionに限るものではなく、ポリエチレン系、ポリプロピレン系などの種々の樹脂材料とすることができる。
【0045】
ガスケット52は、熱収縮部材51の周縁部を覆うフレーム形状を有しており、熱収縮部材51の周縁部に接合されている。このガスケット52は、セパレータ46,47の間に配置されており、セパレータ46,47と当接し、単セル40の積層方向への締結力を受けることによって、単セル40の内部を流れる流体(燃料ガス、酸化ガス、冷却水)をシールする。ガスケット52には、弾性を有する絶縁性樹脂材料を用いることができる。本実施例では、ブチルゴムを用いているが、シリコンゴム、フッ素ゴムなどを用いてもよい。また、熱収縮部材51と同一材料で、熱収縮部材51と一体的に形成されていてもよい。
【0046】
A−3.緩み対処処理:
燃料電池システム20における緩み対処処理について説明する。緩み対処処理とは、単セル40を構成する電解質膜41に緩みが生じ、それに伴い生じる電解質膜41の塑性変形が所定の程度以上となった場合に、予め定めた対処処理を行う処理であり、本実施例では、制御ユニット90によって実行される。なお、電解質膜41の緩みは、電解質膜41が有する膨潤特性に起因して生じる。緩み対処処理の流れを図3に示す。本実施例においては、緩み対処処理は、燃料電池システム20の発電運転の起動を契機として開始され、その後、発電運転が停止するまで一定の頻度で繰り返し実行される。緩み対処処理が開始されると、図3に示すように、燃料電池システム20の制御ユニット90は、まず、取得部91の処理として、燃料電池スタック30の発電の状況を表す所定の運転パラメータに基づいて、電解質膜41の含水率WCnを算出する(ステップS110)。なお、nは、現在実行中の緩み対処処理が、繰り返し実行される緩み対処処理のうちのN回目(Nは1以上の整数)に実行されているものであることを示している。
【0047】
所定の運転パラメータとは、電解質膜41の含水の程度との相関を有するものとして予め定められたものである。本実施例においては、所定の運転パラメータとして、抵抗測定部65で測定した燃料電池スタック30の抵抗値と、温度センサ66で検出した燃料電池スタック30の運転温度とが定められている。単セル40の抵抗値と電解質膜41の含水率とは、電解質膜41の含水率が低くなると、電解質膜41のイオン伝導率が低下することによって、単セル40の抵抗値が大きくなる相関を有している。燃料電池スタック30の運転温度と電解質膜41の含水率との相関は、例えば、燃料電池スタック30の発電運転を起動させ、運転温度が常温から定格温度(例えば、80度程度)まで上昇すれば、生成水の発生量が増加するので、電解質膜41の含水率が上昇する。また、運転温度が高くなりすぎると、電解質膜41に含まれる水分が蒸発しやすくなり、電解質膜41の含水率が低下する。
【0048】
燃料電池スタック30の抵抗値は、スタック全体の抵抗値でもよいが、電解質膜41の含水率との相関の精度を向上させるために、電解質膜41の抵抗値を用いることが望ましい。電解質膜41の抵抗値は、測定した交流インピーダンスに基づいてナイキストプロット曲線を算出し、等価回路に基づく論理関数でフィッティングさせ、その論理関数の各係数を検出して、等価回路の各パラメータの値を推定することにより求めることができる。また、複数の単セル40のうちの1つの単セル40の抵抗値を測定するものであってもよい。かかる場合、燃料電池スタック30の端部の単セル40の抵抗値を計測する構成としてもよい。端部の単セル40は、運転温度が相対的に低温になりがちであり、電解質膜41が多く水を含んで変形しやすいからである。もとより、運転パラメータは、各々の単セル40ごとに取得して、単セル40ごとに含水率WCnを算出してもよい。こうすれば、単セル40ごとの状況を的確に把握することができ、精度が向上する。
【0049】
本実施例においては、含水率WCnの算出は、所定のパラメータである燃料電池スタック30の抵抗値と、燃料電池スタック30の運転温度の値と、電解質膜41の含水率の値との相関関係を表す関数を制御ユニット90のメモリに記憶しておき、取得した抵抗値と運転温度とから、当該関数を用いて、含水率WCnを算出するものとした。この説明からも明らかなように、算出する含水率WCnは、所定のパラメータに基づく推定値である。上記の関数は、予め燃料電池システム20に用いる電解質膜41を用いて実験的に得られる実験式である。なお、含水率WCnは、関数を用いて算出することに限らず、所定のパラメータと含水率WCnとを対応付けたマップを記憶しておき、当該マップを用いて含水率WCを取得してもよい。
【0050】
含水率WCnを算出すると、制御ユニット90は、取得部91の処理として、次式(1)を用いて、指標値IVnを算出する(ステップS120)。この指標値IVnは、電解質膜41の塑性変形の程度に対応した指標値である。指標値IVnが、電解質膜41の塑性変形の程度に対応している理由については後述する。式(1)において、含水率WCnは、繰り返し実行される緩み対処処理のうちのN回目(Nは1以上の整数)に実行される、現在実行中の緩み対処処理のステップS110で算出された含水率WCnである。時間ΔTnは、N回目の対処処理のステップS120を実行する時間Tnと、N−1回目の対処処理のステップS120を実行した時間Tn−1との差分である。要するに、指標値IVnは、経時的に変化する含水率WCを発電運転時間で積算したものである。なお、この積算は、燃料電池システム20の発電運転の起動と停止が複数回に及ぶ場合には、複数回の発電運転に亘って累積的に積算される。
IVn=Σ(WCn×ΔTn)・・・(1)
【0051】
指標値IVnを算出すると、制御ユニット90は、算出した指標値IVnが予め定められた閾値TH1以上であるか否かを判断する(ステップS130)。この閾値TH1は、電解質膜41の膨潤特性に起因して生じる塑性変形の許容可能な程度を考慮して予め定められたものであり、その設定の考え方については後述する。
【0052】
その判断の結果、指標値IVnが閾値TH1未満であれば(ステップS130:NO)、電解質膜41の塑性変形の程度は許容範囲であるということであり、制御ユニット90は、処理を元に戻す。一方、指標値IVnが閾値TH1以上であれば(ステップS130:YES)、電解質膜41の塑性変形(緩み)の程度は許容範囲を超えつつあるということである。そこで、制御ユニット90は、対処部92の処理として、加熱器70を起動して燃料電池スタック30を加熱し、電解質膜41の緩みを緩和させる(ステップS140)。本実施例では、この処理は、燃料電池スタック30の発電運転を一旦停止させてから行うこととした。
【0053】
ステップS140の処理については、図4を用いて具体的に説明する。図4(A)は、電解質膜41の膨潤特性に起因して電解質膜41に緩みが生じた状態を示している。なお、図4では、電解質膜41は、その両面にアノード42,カソード43が形成されたMEAとして示している。この緩みが生じた電解質膜41の変形は、電解質膜41が乾燥状態となることによって収縮し、ものとの形状に戻る一時歪みと、乾燥状態になっても、もとに戻らない永久歪みとを含んでいる。
【0054】
かかる状態で、ガスケット52の外方に設けられた加熱器70によって、熱収縮部材51を熱処理温度T1まで間接的に加熱すると、熱収縮部材51が積層面方向に収縮する。ここで、ガスケット52は、セパレータ46,47に挟持されて固定され、熱収縮部材51の外方側は、ガスケット52に固定されていることから、熱収縮部材51が収縮すると、そのフレーム形状の内側に固定された電解質膜41は、外縁部側、すなわち、熱収縮部材51側に向けて熱収縮部材51に引っ張られる。かかる張力によって、図4(B)に示すように、電解質膜41は、緩みを緩和させることができる。特に、加熱器70によって熱収縮部材51を熱処理温度T1まで加熱する過程で、電解質膜41は、生成水を多量に含んだ状態から乾燥した状態に移行し、収縮するので、一時歪みは概ね解消される。つまり、熱収縮部材51によって電解質膜41に生じた張力の大半は、永久歪みによる緩みの緩和に用いられるので、効率的に電解質膜41の永久歪みによる緩みを緩和することができる。
【0055】
本実施例の熱収縮部材51は、2倍の延伸処理が施されているから、例えば、図2に示した断面上のMEAの長さを300mm、熱収縮部材51の長さを20mmとすれば、熱収縮部材51は、上記ステップS140によって、当該断面上の両端で10mmずつ縮むこととなる。つまり、電解質膜41は20mm分だけ両端から引っ張られて、20mm分の緩みを解消できることとなる。なお、この緩み解消長さ20mmは、電解質膜41の長さ(300mm)の6.7%(=20/300)に相当するので、電解質膜41の緩みが6.7%以下であれば、上記ステップS140において、電解質膜41の緩みをほぼ解消できることとなる。
【0056】
以上、緩み対処処理の一例について説明したが、本実施例の緩み対処処理は、種々の態様で実現することができる。例えば、含水率WCnを算出せずに、所定の運転パラメータと、時間ΔTnとから、直接的に指標値IVnを算出する構成としてもよい。また、上述した例では、指標値IVnを算出するたびに指標値IVnと閾値TH1とを比較する構成としたが、含水率WCnと時間ΔTnとを継続的にモニタリングしておき、所定の期間毎に指標値IVnを算出して閾値TH1と比較する構成としてもよい。あるいは、指標値IVnを継続的にモニタリングしておき、所定の期間毎に指標値IVnと閾値TH1とを比較する構成としてもよい。また、必ずしも指標値IVnと閾値TH1とを比較する必要はなく、例えば、指標値IVn、あるいは、上述の運転パラメータなどと対処動作とを対応付けたマップを用いてマップ制御を行ってもよい。かかるマップ制御によっても、指標値IVnが閾値TH1以上である場合に、熱収縮部材51を加熱する処理を行うことを実質的に意味する処理を行うことができる。つまり、電解質膜41の含水の程度との相関を有する燃料電池スタック30の発電の状況を表すパラメータの経時的な値に基づいて、指標値IVnを取得し、取得した指標値IVnが閾値TH1以上である場合に、熱収縮部材51の加熱処理を行う構成を実質的に備えていればよい。
【0057】
A−4.緩み対処処理で用いる閾値TH1の設定方法:
上述した緩み対処処理で用いる閾値TH1の設定方法について説明する。以下に説明する方法は、燃料電池システム20の製造段階において、所定の実験データから閾値TH1を設定する方法である。閾値TH1を設定するためには、まず、燃料電池システム20に用いる単セル40と同一構造の単セル40を実験用に用意する。
【0058】
単セル40を用意すると、所定の条件で電解質膜41に少なくともウエットガスを送気し、上述した指標値IVnに相当する含水率積算値IVと電解質膜41の変形状態との関係を調査する。本実施例では、以下の手法を用いた。
手順(1):単セル40の温度を単セル40の定格運転温度である80℃に保ちつつ、所定の状態に加湿したウエットガス(窒素ガス)を0.5L/minで所定時間送気(加湿送気)する。
手順(2):(1)の後、ドライガス(窒素ガス)を0.5L/minで10分間送気する。
手順(3):(1),(2)の乾湿サイクルを所定回数行い、その後、単セル40を解体して、電解質膜41の変形状態を観察すると共に、寸法変化を測定する。
【0059】
かかる手法による実験結果の一例を図5に示す。図5では、同一の構成の単セル40に対して、実験条件(加湿送気時間t、乾湿サイクル数N、電解質膜41の含水率WC)を変化させた場合の含水率積算値IVと、電解質膜41の歪みの測定結果とを示している。図5において、加湿送気時間tは、上記手順(1)の送気時間である。乾湿サイクル数Nは、上記手順(3)のサイクル数である。加湿送気時間積算値Tは、加湿送気時間tと乾湿サイクル数Nとの積、すなわち、上記手順(1)の延べ送気時間である。含水率WCは、上記手順(1)における電解質膜41の含水率である。含水率積算値IVは、加湿送気時間積算値Tと含水率WCとの積である。電解質膜41の歪率DRは、手順(1)〜(3)によって永久歪みが生じた電解質膜41の、初期状態(永久歪みのない状態)に対する変形量(長さの増加量)の比率である。
【0060】
図5に示すように、No.1のサンプルでは、加湿送気時間tが2.0時間、乾湿サイクル数Nが10回、含水率WCが13%の実験条件において、含水率積算値IVが2.6時間、歪率DRが0.29%となっている。このNO.1のサンプルの電解質膜41の外観を図6(A)に示す。図6(A)では、電解質膜41に若干の塑性変形が生じている状態を確認できる。
【0061】
また、図5に示すように、No.2のサンプルでは、加湿送気時間tが2.0時間、乾湿サイクル数Nが10回、含水率WCが22%の実験条件において、含水率積算値IVが4.4時間、歪率DRが0.57%となっている。No.2のサンプルは、No.1のサンプルと比べて、加湿送気時間tと乾湿サイクル数Nとは、同じ値であるが、含水率WCが増加し、それに伴い含水率積算値IVも増加している。結果として、歪率DRは、NO.1のサンプルよりも大きな値となっている。このNO.2のサンプルの電解質膜41の外観を図6(B)に示す。図6(B)では、電解質膜41の塑性変形の程度が、図6(A)に示したNo.1のサンプルよりも大きくなっている状態が確認できる。
【0062】
また、図5に示すように、No.3のサンプルでは、加湿送気時間tが2.0時間、乾湿サイクル数Nが10回、含水率WCが35%の実験条件において、含水率積算値IVが7.0時間、歪率DRが1.43%となっている。No.3のサンプルは、No.1,No.2のサンプルと比べて、加湿送気時間tと乾湿サイクル数Nとは、同じ値であるが、含水率WCが増加し、それに伴い含水率積算値IVも増加している。結果として、歪率DRは、NO.1,No.2のサンプルよりも大きな値となっている。このNO.3のサンプルの電解質膜41の外観を図6(C)に示す。図6(C)では、電解質膜41の塑性変形の程度が、図6(B)に示したNo.2のサンプルよりもさらに大きくなっている状態が確認できる。また、詳細な説明は省略するが、No.4のサンプルでは、No.3のサンプルと同一の実験条件において、歪率DRが3.43%となっている。以上の説明からも明らかなように、サンプルによって程度は異なるものの、含水率積算値IVが大きくなるにしたがって、歪率DRが大きくなることが分かる。
【0063】
このサンプルNo.1〜No.4の電解質膜41に生じた電解質膜41の塑性変形(永久歪み)は、模式的に表現すると、図6(E)に示すような形状である。すなわち、電解質膜41の周縁部が熱収縮部材51に固定された状態において、電解質膜41の永久歪みによる緩みの状態は、電解質膜41の他の部材との積層面に交わる方向に向かって単純な形状で隆起または陥没した状態(以下、うねりともいう)である。かかる塑性変形の程度においては、電解質膜41の塑性変形に起因して、電解質膜41のクロスリークの量が著しく増加することはない。
【0064】
一方、図5に示すように、No.5〜No.7のサンプルでは、No.3,No.4のサンプルよりも、乾湿サイクル数Nを段階的に増加させた結果、含水率積算値IVがそれぞれ14.0時間、17.5時間、21.0時間まで増加している。このときの歪率DRは測定していないが、電解質膜41の観察によって、膜シワが確認できる状態となっている。膜シワとは、図6(F)に模式的に示すように、緩んだ電解質膜41が不規則な方向に折れた形状となった状態である。膜シワは、図6(E)に示した状態から更に電解質膜41の塑性変形が進行することによって発生する。図5に示したNo.7のサンプルの電解質膜41の外観を図6(D)に示す。図6(D)では、電解質膜41の塑性変形の程度が、図6(F)に示した膜シワの状態に達していることを確認できる。このように膜シワが発生すると、電解質膜41の塑性変形に起因して、電解質膜41のクロスリークの量が許容できないレベルまで増加し、発電性能が著しく低下するおそれがあることが確認された。
【0065】
また、図5に示すように、No.8,No.9のサンプルでは、No.1〜7のサンプルと比べて、加湿送気時間tを短くし、乾湿サイクル数Nを増加させた実験条件において、含水率積算値IVがそれぞれ4.7時間、5.8時間、歪率DRがそれぞれ0.57%、3.43%となっている。No.8,No.9の含水率WCは、No.3〜7と同じ35%である。このNo.9のサンプルの実験結果とNo.3,No.4のサンプルの実験結果とを比較すると、加湿送気時間積算値Tが相対的に小さくても(含水率WCは同じ値であるから、含水率積算値IVが小さくても)、乾湿サイクル数Nが増加すると、歪率DRは相対的に大きくなることがみてとれる。つまり、乾湿サイクル数Nが多くなると、歪率DRは大きくなる傾向にある。
【0066】
ここで説明を閾値TH1の設定方法に戻す。上述したような実験結果が得られると、次に、含水率積算値IVと電解質膜41の塑性変形の程度との関係を把握し、膜シワが生じない範囲で閾値TH1を設定する。この閾値TH1の設定の考え方は、上述の実験結果を用いて例示する。図7は、上述した実験結果に基づいて、含水率積算値IVと電解質膜41の歪率DRとの関係をプロットした関係図である。なお、上述の実験では、膜シワが発生した際の歪率DRは測定していないので、図7では、膜シワ発生時の歪率DRは値0として表示している。図示するように、この例では、含水率積算値IVが増加するにしたがって、膜シワは発生していないものの、歪率DRが増加する傾向にある。そして、含水率積算値IVが14.0時間以上になると、いずれのサンプルにも膜シワが発生している。つまり、含水率積算値IVが7.0時間と14.0時間との間に膜シワが発生するか否かのボーダーラインが存在することがみてとれる。本実施例では、かかるボーダーラインを考慮して、閾値TH1=8時間として設定した。このように閾値TH1を設定すれば、上述した緩み対処処理において、膜シワが発生する前に、熱収縮部材51を加熱して、電解質膜41の緩みを緩和させ、膜シワの発生を抑制することができる。なお、上述したように、膜シワの発生は、乾湿サイクル数Nとの相関も認められるので、乾湿サイクル数Nを反映させて、指標値IVnを算出するようにすれば、さらに検知精度を向上させることができる。
【0067】
以上、閾値TH1の設定方法について説明したが、図7に例示した含水率積算値IVと電解質膜41の塑性変形の程度との相関関係は、使用する電解質膜41、アノード42,カソード43、ガス拡散層44,45、セパレータ46,47の材質、形状などの諸元によって異なるので、燃料電池システム20に使用される単セル40と同一構造の単セル40を用いて、上述の実験を行って、その結果に基づいて閾値TH1を設定することが望ましい。
【0068】
A−5.効果:
かかる構成の燃料電池システム20は、吸湿によって膨張する電解質膜41の塑性変形の程度に対応した指標値IVnを取得するので、膨潤特性に起因して電解質膜41が塑性変形して生じる永久歪みの進行を好適に検知することができる。しかも、指標値IVnが閾値TH1以上である場合に対処動作を行うので、永久歪みが進行して発電性能を悪化させることを抑制することができる。
【0069】
また、燃料電池システム20は、電解質膜41の含水の程度との相関を有する、燃料電池スタック30の発電の状況を表す所定の運転パラメータの経時的な値に基づいて、指標値IVnを算出する。電解質膜41の含水の程度と、燃料電池システム20の発電運転時間とは、電解質膜41の塑性変形の程度との相関を有するので、かかるパラメータの経時的な値に基づいて算出された指標値IVnは、電解質膜41の塑性変形の程度に対応した好適な指標値となり、電解質膜41の永久歪みの進行を好適に検知することができる。
【0070】
また、燃料電池システム20は、電解質膜41の周縁部が熱収縮部材51によって固定され、指標値IVnが閾値TH1以上である場合に、熱収縮部材51を加熱する。これによって、熱収縮部材51は収縮し、電解質膜41に周縁部に向けた張力を生じさせるので、塑性変形によって生じた電解質膜41の緩みを緩和することができる。その結果、永久歪みの進行による発電性能の悪化を自動的に抑制することができる。
【0071】
B.第2実施例:
本発明の第2実施例について説明する。第2実施例としての燃料電池システム20の構成は、概ね第1実施例と同一の構成である。第2実施例としての燃料電池システム20が第1実施例と異なる点は、所定の報知手段(図示省略)を備える点である。この報知手段の詳細は後述する。なお、第1実施例の燃料電池システム20が備える抵抗測定部65、温度センサ66、加熱器70は、いずれも省略可能である。また、第2実施例としての燃料電池システム20は、緩み対処処理の流れが第1実施例と異なる。以下、第2実施例としての緩み対処処理について、第1実施例と異なる点についてのみ説明し、第1実施例と共通する点については、説明を簡略化する。
【0072】
第2実施例としての緩み対処処理の流れを図8に示す。なお、図8において、第1実施例と同一内容の処理については、図3と同一の符号を付して、説明を簡略化する。第2実施例としての緩み対処処理が開始されると、制御ユニット90は、燃料電池スタック30の発電の状況を表す所定の運転パラメータに基づいて、電解質膜41の含水率WCnを算出し(ステップS110)、上記式(1)を用いて指標値IVnを算出する(ステップS120)。そして、算出した指標値IVnが予め定められた閾値TH1以上であると(ステップS130:YES)、制御ユニット90は、対処部92の処理として、報知手段を用いて、指標値IVnが閾値TH1以上であることをユーザに報知する(ステップS240)。本実施例においては、燃料電池システム20は、報知手段としてアラームを備える構成とし、当該アラームを鳴動させることで、ユーザに報知を行うこととした。ただし、報知手段は、音声による報知に限らず、種々の表示手段、例えば、LEDなどの発光装置やディスプレイであってもよいし、種々の通信装置、例えば、電話装置やEメール送信装置などであってもよい。こうして、第2実施例としての緩み対処処理は終了となる。
【0073】
かかる構成の燃料電池システム20は、指標値IVnが閾値TH1以上である場合に、その旨をユーザに報知するので、ユーザは、電解質膜41の塑性変形が所定程度に達したこと、すなわち、電解質膜41に所定程度の緩みが生じていることを容易に知ることができる。したがって、ユーザが燃料電池システム20を修理に出すなどして、電解質膜41の緩みを解消させるための対処を行えば、永久歪みの進行による発電性能の悪化を抑制することができる。
【0074】
上述した第2実施例としての緩み対処処理では、塑性変形の程度を判断する基準値として、第1実施例と同じ値の閾値TH1を用いたが、この基準値は、第1実施例と異なっていてもよい。例えば、基準値を閾値TH1よりも小さい値として、より早期にユーザに報知する構成としてもよい。また、第2実施例としての緩み対処処理は、第1実施例としての緩み対処処理と組み合わせてもよい。例えば、算出した指標値IVnが閾値TH1よりも小さい予め定められた値以上となった場合に、まず、報知手段を用いて報知を行い、さらに、算出した指標値IVnが閾値TH1以上となった場合に、熱収縮部材51を加熱して、電解質膜41の緩みを緩和させてもよい。
【0075】
C.第3実施例:
本発明の第3実施例について説明する。第3実施例としての燃料電池システム20の構成は、概ね第1実施例と同一の構成である。第3実施例としての燃料電池システム20が第1実施例と異なる点は、歪みゲージ353を備える点である。なお、第1実施例の燃料電池システム20が備える抵抗測定部65、温度センサ66、加熱器70は、いずれも省略可能である。また、第3実施例としての燃料電池システム20は、緩み対処処理の流れが第1実施例と異なる。以下、第3実施例について、第1実施例と異なる点についてのみ説明し、第1実施例と共通する点については、説明を省略または簡略化する。
【0076】
第3実施例としての燃料電池システム20は、燃料電池スタック30を構成する複数の単セル40の1つに歪みゲージ353を備えている。なお、歪みゲージ353の数は、複数であっても構わない。歪みゲージ353は、図9(A)に示すように、センサ部354と導電線355とを備えている。センサ部354は、電解質膜41の積層面に貼り付けられている。導電線355は、一端側がセンサ部354に接続され、他端側が制御ユニット90に接続されている。この歪みゲージ353は、測定対象である電解質膜41が変形すると、これに追随して電解質膜41に貼り付けられたセンサ部354が歪む。例えば、図9(B)に示すように、電解質膜41が十分に吸湿し、膨張することで、電解質膜41に緩みが生じた際には、センサ部354は、電解質膜41の緩んだ形状に追随して変形する。このようにセンサ部354の形状に歪みが生じると、歪みの程度に応じてセンサ部354の抵抗値が変化する。制御ユニット90は、取得部91の処理として、センサ部354の抵抗値の変化を導電線355に流れる電流値の大きさの変化から検出し、その検出値に基づいて、電解質膜41の変形量を測定する。
【0077】
かかる歪みゲージ353の取付位置について説明する。本実施例では、歪みゲージ353は、電解質膜41のセパレータ47側の積層面、すなわち、カソード43側に取り付けられている。セパレータ47の概略構造を図10に示す。図示するように、セパレータ47のMEA側の表面には、酸化ガスの流路となる凹部49が形成されている。図示するセパレータ47では、凹部49は、略矩形のセパレータ47の短辺の一端側から他端側へ直線的に複数形成されている。歪みゲージ353は、この凹部49を流れる酸化ガスの下流側の位置P1に対応する領域に取り付けられている。この位置P1は、凹部49に対応する位置でもあり、また、重力方向の下方側の位置でもある。なお、上述した形態では、歪みゲージ353は、電解質膜41のセパレータ47側の面に取り付けられているが、セパレータ46側の面、すなわち、アノード42側に取り付けられていてもよい。なお、ガス拡散層45とセパレータ47との間にラスメタルなどの多孔質部材からなる流路層を配置する場合には、流路層とセパレータ47との非接触領域に対応する位置に歪みゲージ353を設けてもよい。
【0078】
かかる位置に歪みゲージ353が取り付けられた単セル40は、本実施例では、燃料電池スタック30を構成する複数の単セル40のうちの、単セル40の積層方向の端部に配置される。このように、歪みゲージ353を位置P1に対応する位置に取り付け、歪みゲージ353を取り付けた単セル40を燃料電池スタック30の端部に配置する理由については、本実施例の効果として後述する。
【0079】
以上、第3実施例としての燃料電池システム20が備える単セル40の構成について説明したが、セパレータ47は、種々の形状を採用することができる。例えば、図11に示すセパレータ47aの形状を採用してもよい。具体的には、略矩形のセパレータ47aにおいて、短辺の一端側と他端側とを蛇行する1つの流路を形成するように凹部49aが形成されていてもよい。かかるセパレータ47aを用いる場合には、歪みゲージ353は、例えば、図示する位置P2に対応する位置に取り付けることが望ましい。位置P2は、凹部49aを流れる酸化ガスの下流側の位置であり、また、凹部49aに対応する位置、重力方向の下方側の位置である。
【0080】
あるいは、図12に示すセパレータ47bの形状を採用してもよい。具体的には、略矩形の四隅が切り欠かれた形状を有するセパレータ47bにおいて、短辺側の両端部は、その内部にエンボス加工によって凹部499bが形成され、2つの凹部499b間を直線的に結ぶ複数の凹部49bが形成されていてもよい。かかるセパレータ47bを用いる場合には、歪みゲージ353は、例えば、図示する位置P3に対応する位置に取り付けることが望ましい。位置P3は、酸化ガスの下流側の位置であり、また、凹部499bに対応する位置、重力方向の下方側の位置である。
【0081】
かかる第3実施例としての燃料電池システム20における緩み対処処理の流れを図13に示す。なお、図13において、第1実施例(図3)と同様の処理内容については、図3と同一の符号を付して、詳しい説明を省略する。第3実施例としての緩み対処処理は、燃料電池システム20の発電運転の起動を契機として開始される。図示するように、緩み対処処理が開始されると、制御ユニット90は、まず、取得部91の処理として、燃料電池システム20の暖機運転中に歪みゲージ353を用いて、電解質膜41の塑性変形量PLを測定する(ステップS410)。
【0082】
本実施例における暖機運転は、電解質膜41の含水量が所定以下である乾燥状態となるように制御して行われる。ここでの乾燥状態とは、電解質膜41が吸湿して膨張することによって生じる一時歪みの影響を無視できる程度に電解質膜41が乾いた状態をいい、例えば、電解質膜41の湿度が30%RH以下の状態である。かかる乾燥状態の電解質膜41を模式的に図9(C)に示す。図示するように、図9(C)の電解質膜41は、図9(B)に示した電解質膜41と比べて、緩みの程度が小さくなっている。これは、電解質膜41を乾燥状態にすることによって、電解質膜41の一時歪みが解消され、電解質膜41がほぼ永久歪み(塑性変形)のみに起因して緩んだ状態となっているからである。かかる乾燥状態において、歪みゲージ353を用いて電解質膜41の変形量を測定することによって、電解質膜41の塑性変形量PLを精度良く測定することができる。
【0083】
このような電解質膜41の乾燥状態の制御は、例えば、電解質膜41にドライガスを送気することによって実現することができる。ドライガスの送気は、例えば、酸化ガス供給・排出機構82の酸化ガス供給経路に、吸湿材を備えた吸湿層内を流通させてから酸化ガスを供給するバイパス流路を設け、酸化ガス供給経路を当該バイパス流路に切り替えて酸化ガスを供給することによって行えばよい。なお、電解質膜41の湿度制御は、電解質膜41の湿度を直接的に計測することが困難な場合には、予め、単セル40に供給する反応ガスの湿度、流量、圧力、温度等の動作条件と、電解質膜41の湿度との関係を実験的に求めておき、電解質膜41の湿度が所定以下となる動作条件で暖機運転を行うことによって実現することができる。
【0084】
塑性変形量PLを測定すると、制御ユニット90は、測定した塑性変形量PLが予め定めた閾値TH2以上であるか否かを判断する(ステップS420)。この閾値TH2は、電解質膜41の塑性変形が進行して、上述した膜シワが発生する変形量よりも変形量が小さい範囲で実験的に設定することができる。例えば、第1実施例で図5に示した実験結果を用いれば、閾値TH2は、歪み率4%や5%などと設定することができる。
【0085】
判断の結果、塑性変形量PLが閾値TH2未満であれば(ステップS420:NO)、電解質膜41は、膜シワが発生するおそれがある程度には塑性変形を生じていないということであるから、制御ユニット90は、緩み対処処理を終了する。一方、塑性変形量PLが閾値TH2以上であれば(ステップS420:YES)、電解質膜41は、膜シワが発生するおそれがある程度に塑性変形しつつあるということであるから、制御ユニット90は、対処部92の処理として、加熱器70を用いて熱収縮部材51を加熱し、電解質膜41の緩みを緩和させる(ステップS140)。
【0086】
こうして、第3実施例としての緩み対処処理は終了となる。なお、塑性変形量PLが閾値TH2以上である場合、第2実施例のように、ユーザに報知する構成を採用してもよいし、ユーザへの報知と上記ステップS140とを段階的に実行する構成としてもよい。さらに、第1実施例の処理と組み合わせてもよい。具体的には、制御ユニット90は、燃料電池システム20の暖機運転持には、上述した第3実施例としての緩み対処処理を実行し、燃料電池システム20の通常運転(定格運転温度付近での運転)時には、第1実施例や第2実施例としての緩み対処処理を実行してもよい。こうすれば、燃料電池システム20の起動時と通常運転時の両方において、電解質膜41の塑性変形の程度を検知し、必要に応じて対処動作を行うことができるので、好適である。
【0087】
かかる構成の燃料電池システム20は、乾燥状態の電解質膜41の変形の程度を測定するので、電解質膜41の一時歪みがほぼ解消され、永久歪みが残った状態の電解質膜41の変形の程度を測定することができる。したがって、塑性変形の程度を直接的に計測した指標値である塑性変形量PLを用いて、電解質膜41の永久歪みの進行を好適に検知することができる。
【0088】
また、燃料電池システム20は、歪みゲージ353が、反応ガスの流れの下流側の位置P1に対応する領域の電解質膜41に取り付けられる。反応ガスの下流側では、上流側に比べて反応ガスが多くの水分を含み、電解質膜41の含水量も多くなるので、電解質膜41の吸湿による変形量が大きくなり、電解質膜の塑性変形が生じやすい。しかも、位置P1は、重力方向の下方側であるから、上方側に比べて重力によって水分が移行しやすく、電解質膜41の含水量が多くなるので、電解質膜41の吸湿による変形量が大きくなり、電解質膜41の塑性変形が生じやすい。さらに、位置P1は、セパレータ47の凹部49に対応する電解質膜41の位置であるから、その他の位置に比べて電解質膜41に作用する面圧が小さくなるので、電解質膜41が変形しやすい。以上のように、単セル40のうちで電解質膜41が変形しやすい領域に歪みゲージ353を設けることによって、電解質膜41が塑性変形して生じる永久歪みの進行を早期に検知することができる。また、歪みゲージ353を多数設ける必要がないので、発電への影響を最小限に抑制することができる。
【0089】
また、燃料電池システム20は、燃料電池スタック30を構成する複数の単セル40のうちの端部に配置された単セル40に歪みゲージ353が設けられる。燃料電池スタック30の端部は、中央部に比べて発電温度が低下しやすいので、電解質膜41の含水量が多くなりがちであり、その結果、電解質膜41の吸湿による変形量が大きくなり、電解質膜41の塑性変形が生じやすい。したがって、複数の単セル40のいずれかの電解質膜41に生じる永久歪みの進行を早期に検知することができる。また、全ての単セル40に歪みゲージ353を設けなくても、塑性変形の検知を精度良く行えるので、効率的である。
【0090】
D.第4実施例:
本発明の第4実施例について説明する。第4実施例としての燃料電池システム20の構成は、概ね第1実施例と同一の構成である。第4実施例としての燃料電池システム20が第1実施例と異なる点は、面圧センサ511を備える点である。なお、第1実施例の燃料電池システム20が備える抵抗測定部65、温度センサ66、加熱器70は、いずれも省略可能である。また、第4実施例としての燃料電池システム20は、緩み対処処理の流れが第1実施例と異なる。以下、第4実施例について、第1実施例と異なる点についてのみ説明し、第1実施例と共通する点については、説明を省略または簡略化する。
【0091】
第4実施例としての燃料電池システム20は、燃料電池スタック30を構成する複数の単セル40の1つに複数の面圧センサ511を備えている。本実施例における面圧センサ511の取り付け位置を図14に示す。図14(A)に示すように、複数の面圧センサ511は、カソード43側のガス拡散層45とセパレータ47との間で、積層面の上下方向に沿って配列されている。本実施例では、面圧センサ511の数は10個としている。なお、面圧センサ511の個数や配列方向は特に限定するものではない。例えば、面圧センサ511を横方向に配列したり、斜め方向に配列したりしてもよく、また、複数の方向を組み合わせて配列してもよい。また、面圧センサ511は、アノード42側に設けてもよい。
【0092】
この面圧センサ511を積層面側から見れば、図14(B)に示すように、単セル40の発電領域の中央部に重力方向に沿って配列されている。これらの面圧センサ511の検出値は、制御ユニット90に出力される。なお、面圧センサ511は、電解質膜41の変形を十分に検知でき、かつ、変形を阻害しにくい位置に設けることが望ましい。このようなことから、本実施例では、図14(A)に示したように、面圧センサ511をガス拡散層45の内部に埋め込んでいる。また、面圧センサ511は、第3実施例と同様に、電解質膜41が変形しやすい単セル40の領域に設けることが望ましく、複数の単セル40のうちの電解質膜41が変形しやすい単セル40に設けることが望ましい。
【0093】
面圧センサ511としては、例えば、静電容量の電気特性を利用して圧力を測定する静電容量方式を採用することができる。燃料電池スタック30を一定の加圧力、例えば、1MPaで締結固定した場合には、電解質膜41に変形がなく平らであれば、各々の面圧センサ511には、1MPaの面圧が加わる。かかる締結状態で電解質膜41が変形して緩みが生じると、アノード42およびカソード43の電極間のギャップが変化し、その結果、電極間の静電容量が変化するため、面圧センサ511は、その静電容量の変化を圧力の変化に変換して出力する。したがって、図14に示したように、面圧センサ511を複数個配列することにより、配列方向における電解質膜41の変形を面圧の変化(上昇)として検知することができる。
【0094】
かかる第4実施例としての燃料電池システム20における緩み対処処理の流れを図15に示す。なお、図15において、第1実施例(図3)と同様の処理内容については、図3と同一の符号を付して、詳しい説明を省略する。第4実施例としての緩み対処処理は、燃料電池システム20の発電運転の起動を契機として開始される。図示するように、緩み対処処理が開始されると、制御ユニット90は、まず、取得部91の処理として、燃料電池システム20の暖機運転中に面圧センサ511の各々を用いて、電解質膜41の面圧Pn(nは、N個のセンサのうちの1〜Nの値、ここでは、n=1〜10)を測定する(ステップS510)。ステップS510での暖機運転は、上述した第3実施例と同様に、電解質膜41の含水量が所定以下である乾燥状態となるように制御して行われる。こうすることで、電解質膜41の一時歪みが解消され、電解質膜41がほぼ永久歪み(塑性変形)のみに起因して緩んだ状態となる。
【0095】
面圧Pnを測定すると、制御ユニット90は、取得部91の処理として、測定した面圧Pnが閾値TH3を超えた面圧センサ511の数をカウント値Kとしてカウントする(ステップS520)。カウント値Kをカウントすると、カウント値Kが閾値TH4以上であるか否かを判断する(ステップS530)。上述した閾値TH3と閾値TH4とは、実験的に求める値である。具体的には、電解質膜41の塑性変形が大きくなると、面圧Pnが大きくなり、また、カウント値Kも大きくなるので、実験データに基づいて、膜シワが発生しない範囲で閾値TH3とTH4とを適宜設定すればよい。本実施例では、閾値TH3は2MPa、閾値TH4は8個とした。なお、電解質膜41の塑性変形の程度と、面圧Pnやカウント値Kとの相関関係は、電解質膜41の材質、締結条件、面圧センサ511の数や配置条件、動作環境等に応じて変化するので、実際の単セル40と同一の構成の単セル40を用いて実験を行うことが望ましい。
【0096】
判断の結果、カウント値Kが閾値TH4未満であれば(ステップS530:NO)、電解質膜41は、膜シワが発生するおそれがある程度には塑性変形を生じていないということであるから、制御ユニット90は、緩み対処処理を終了する。一方、カウント値Kが閾値TH4以上であれば(ステップS530:YES)、電解質膜41は、膜シワが発生するおそれがある程度に塑性変形しつつあるということであるから、制御ユニット90は、対処部92の処理として、加熱器70を用いて熱収縮部材51を加熱し、電解質膜41の緩みを緩和させる(ステップS140)。
【0097】
こうして、第4実施例としての緩み対処処理は終了となる。なお、カウント値Kが閾値TH4以上である場合、第3実施例と同様に、ユーザに報知する構成を採用してもよいし、ユーザへの報知と上記ステップS140とを段階的に実行する構成としてもよい。さらに、第1実施例の処理と組み合わせてもよい。
【0098】
かかる構成の燃料電池システム20は、乾燥状態の電解質膜41の面圧Pnを測定するので、その測定面圧Pnは、電解質膜41の一時歪みがほぼ解消され、永久歪みが残った状態で測定された面圧である。かかる条件で測定された電解質膜41の面圧Pnは、電解質膜41と他の部材との接触状況、すなわち、電解質41膜の変形の状況に応じて変化するので、電解質膜41の塑性変形の程度に対応した好適な指標値となり、電解質膜41の永久歪みの進行を好適に検知することができる。また、複数の面圧Pnで永久歪みの進行を検知するので、精度が良い。
【0099】
E.他の実施形態:
本発明の他の実施形態について説明する。上述した実施例においては、電解質膜41の塑性変形を許容し、塑性変形の程度に対応した指標値を用いて、膜シワが発生する前に制御ユニット90が対処動作を行う構成について示したが、以下に説明する実施形態においては、電解質膜41の塑性変形を許容せずに、塑性変形の発生前に対処動作を行う構成について説明する。他の実施形態としての燃料電池システム20の構成は、第3実施例と概ね同一の構成を有しており、第2実施例で説明した報知手段を備えている点が第3実施例と異なる。また、緩み対処処理の流れが第3実施例と異なる。以下、他の実施形態について、上述の実施例と異なる点についてのみ説明し、上述の実施例と共通する点については、説明を省略または簡略化する。
【0100】
他の実施形態としての燃料電池システム20における緩み対処処理の流れを図16に示す。なお、図16において、上述の実施例と同様の処理内容については、上述の実施例の説明図と同一の符号を付して、詳しい説明を省略する。他の実施形態としての緩み対処処理は、燃料電池システム20の発電運転を起動し、通常運転に達したことを契機として開始される。図示するように、緩み対処処理が開始されると、制御ユニット90は、まず、取得部91の処理として、燃料電池システム20の通常運転中に歪みゲージ353を用いて、電解質膜41の変形量DLを測定する(ステップS610)。この処理は、通常運転中に行われるので、すなわち、電解質膜41が吸湿した状態で行われるので、変形量DLは、電解質膜41の一時歪みと永久歪みとを含んでいる。
【0101】
変形量DLを測定すると、制御ユニット90は、変形量DLが閾値TH5以上であるか否かを判断する(ステップS620)。この閾値TH5は、電解質膜41に塑性変形が発生しない範囲の変形量で設定される。閾値TH5の設定方法については、後述する。
【0102】
判断の結果、変形量DLが閾値TH5未満であれば(ステップS620:NO)、電解質膜41は、塑性変形が発生するおそれがある程度には変形を生じていないということであるから、制御ユニット90は、緩み対処処理を終了する。一方、変形量DLが閾値TH5以上であれば(ステップS620:YES)、電解質膜41は、塑性変形が発生するおそれがある程度に変形しつつあるということであるから、制御ユニット90は、対処部92の処理として、燃料電池システム20が備える報知手段を用いて、変形量DLが閾値TH5以上であることをユーザに報知する(ステップS240)。こうして、緩み対処処理は終了となる。
【0103】
かかる構成の燃料電池システム20は、電解質膜41の変形量が所定値以上となると、塑性変形が生じる前にユーザに報知するので、ユーザは、早期に電解質膜41の緩みについて対処を行うことができ、永久歪みによる発電性能の悪化を抑制することができる。なお、かかる構成は、上述した実施例の構成と組み合わせることも可能である。
【0104】
上述した閾値TH5の設定方法について説明する。電解質膜41が吸湿による膨張に伴って変形し、緩みを生じた状態を図17に示す。図示する電解質膜41は、うねりが生じた状態を示している。図示するうねりは、ガス拡散層44側に隆起した形状とガス拡散層45側に隆起した形状とを備えている。以下では、一方の方向に隆起した部分をうねりの最小単位MUという。うねりの最小単位MUにおけるうねり幅Wは、次式(1)によって表すことができる。式(1)において、hは電解質膜41の厚み、νはポアソン比、εは、電解質膜41の歪み率である。また、うねり角度θは、次式(2)によって表すことができる。ここでLは、最小単位MUにおける電解質膜41のうねりの内側の実際の長さである。Lは、次式(3)によって表すことができる。
【0105】
【数1】

【数2】

【数3】

【0106】
このようなうねりは、うねり角度θが概ね30度以下では、一時歪みとして生じるが、これよりもうねり角度θが大きくなると、塑性変形して、永久歪みを生じる傾向にある。かかる塑性変形は、電解質膜41の変形量が降伏点を超えると生じる。したがって、電解質膜41に塑性変形が発生しない範囲の変形量で設定する閾値TH5は、電解質膜41の降伏点を考慮して設定する必要がある。
【0107】
本実施例の電解質膜41(膜厚25μm)の歪み率εと、うねり幅Wおよびうねり角度θとの関係を図18に示す。図18に示すプロットは、式(1),(2)から算出したものである。図示するように、歪み率εが大きくなるにしたがって、うねり幅Wが小さくなり、一方、うねり角度θは大きくなる。また、電解質膜41の膜厚ごとの歪み率εとうねり幅Wとの関係を図19に示す。図示するように、膜厚が小さくなるにしたがって、同一値の歪み率εに対応するうねり幅Wは小さくなる。
【0108】
また、図17に示した最小単位MUからも明らかなように、電解質膜41の内側(変形と反対の方向)の長さと外側(変形の方向)の長さは異なり、外側の方が長くなる。換言すれば、歪み率εは、電解質膜41の内側と外側とで異なる。電解質膜41の内側と外側との長さの差の半分をΔxとすれば、Δxは、次式(4)で求めることができる。また、内側の歪み率εinと外側の歪み率εoutとは、式(3)を変換して、次式(5),(6)によってそれぞれ求めることができる。
【0109】
【数4】

【数5】

【数6】

【0110】
こうして求められる内側歪み率εinと外側歪み率εoutとの関係を電解質膜41の膜厚別に整理すれば、図20のとおりとなる。図示するように、膜厚が小さいほど、内側の歪みに対して外側の歪みが大きくなることが分かる。なお、この例では、うねり角度θを25度として外側歪み率εoutを算出している。ここで、本実施形態で用いた電解質膜41の降伏点を図21に示す。図示するように、この例では、引張歪みが0.18のポイントにおいて降伏点が確認される。すなわち、歪み率が値0.18を超えると、塑性変形が発生する。
【0111】
したがって、電解質膜41に塑性変形が生じない範囲で閾値TH5を設定するためには、図20に示した膜厚25μmの電解質膜41であれば、内側歪み率εinと外側歪み率εoutとのうちの、相対的に値が大きい外側歪み率εoutが値0.18未満となる範囲で閾値TH5を設定すればよい。図20によれば、外側歪み率εoutが値0.18のとき、内側歪み率εinは、値0.1よりも僅かに大きい値であるから、閾値TH5は、例えば、値0.1で設定すればよい。このように、閾値TH5を最終的に内側歪み率εinの値から設定するのは、歪みゲージ353は、いずれの方向に歪むかが不確定であるので、いずれの方向に歪んでも塑性変形が生じないようにするためである。
【0112】
上述したように、電解質膜41の最小単位MUのうちの外側の変形量が、電解質膜41の降伏点に対応する歪み量以下となるように閾値TH5を設定すれば、電解質膜41の塑性変形が生じる手前の状態を検知する精度を向上させることができる。その結果、ユーザは、上述した緩み対処処理の報知に応じて必要な対処を講じることにより、高い精度で塑性変形の発生を抑制することが可能となる。このようにして、塑性変形の発生を抑制すれば、発電性能の確保という燃料電池全般に共通する課題を解決することができる。
【0113】
F.変形例:
上述の実施例の変形例について説明する。
F−1.変形例1:
上述の実施形態においては、加熱器70は、熱収縮部材51を間接的に加熱する構成としたが、熱収縮部材51を直接的に加熱する構成としてもよい。例えば、熱収縮部材51に電熱線を埋め込んでもよい。勿論、直接的かつ間接的に加熱する構成であってもよい。
【0114】
F−2.変形例2:
上述の実施形態においては、熱収縮部材51は、電解質膜41とは別体で構成したが、熱収縮部材51は、電解質膜41と一体に構成してもよい。例えば、電解質膜41の周縁部に対して、熱収縮特性を有するように加工処理を行い、電解質膜41の周縁部自体が熱収縮部材で形成されていてもよい。あるいは、電解質膜41全体が熱収縮部材で形成されていてもよい。
【0115】
F−3.変形例3:
上述の実施形態においては、熱収縮部材51は、所定の加工処理がなされた単一の部材で構成されたが、相互に異なる複数の熱処理温度で収縮するように加工された複数の部材で構成されてもよい。かかる場合、例えば、熱収縮部材51をガスケット52の方向(積層面の外縁側)に向かって複数層に構成してもよい。あるいは、アノード42側に固定された第1の層と、カソード43側に固定された第2の層とで構成してもよい。これらの構成とすれば、緩み対処処理において熱収縮部材51を加熱するたびに、加熱器70による加熱温度を徐々に上げていけば、複数回にわたって、電解質膜41の緩みを緩和することが可能となり、利便性が向上する。
【0116】
F−4.変形例4:
上述の実施形態において、歪みゲージ353や面圧センサ511は、1つの単セル40のみに設置する構成としたが、複数の単セル40、例えば、1つおきの単セル40や全ての単セル40に設置してもよい。こうすれば、電解質膜41の変形についての検知精度を向上させることができる。
【0117】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した実施形態における本発明の構成要素のうち、独立クレームに記載された要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略、または、組み合わせが可能である。また、本発明はこうした実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を脱しない範囲において、種々なる態様で実施できることは勿論である。例えば、本発明は、実施例に示した固体高分子形燃料電池に限らず、吸湿によって膨張する特性を有する電解質膜を用いた燃料電池、例えば、ダイレクトメタノール形燃料電池に共通して適用することができる。
【符号の説明】
【0118】
20…燃料電池システム
30…燃料電池スタック
40…単セル
41…電解質膜
42…アノード
43…カソード
44,45…ガス拡散層
46,47,47a,47b…セパレータ
48,49,49a,49b…凹部
51…熱収縮部材
52…ガスケット
61…ターミナル
62…インシュレータ
63…エンドプレート
65…抵抗測定部
66…温度センサ
70…加熱器
81…燃料ガス供給・排出機構
82…酸化ガス供給・排出機構
83…冷却水供給・排出機構
90…制御ユニット
91…取得部
92…対処部
353…歪みゲージ
354…センサ部
355…導電線
499b…凹部
511…面圧センサ
OR…出力要求

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システムであって、
吸湿によって膨張する特性を有する電解質膜を備えた燃料電池と、
前記特性に起因して生じる前記電解質膜の塑性変形の程度に対応した指標値を取得する取得部と、
前記取得した指標値が所定値以上である場合に、予め定められた対処動作を行う対処部と
を備えた燃料電池システム。
【請求項2】
前記取得部は、前記電解質膜の含水の程度との相関を有する前記燃料電池の発電の状況を表すパラメータの経時的な値に基づいて、前記指標値を算出する請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1記載の燃料電池システムであって、
前記取得部は、
前記電解質膜の変形に応じて変化する前記電解質膜の面圧を測定する面圧測定部を備え、
前記電解質膜の含水の程度が所定以下である乾燥状態で前記面圧測定部が測定した面圧に基づいて、前記指標値を取得する
燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1記載の燃料電池システムであって、
前記取得部は、
前記電解質膜に固定され、該電解質膜の変形の程度を測定する歪みゲージを有する歪み測定部を備え、
前記電解質膜の含水の程度が所定以下である乾燥状態で前記歪み測定部が測定した変形の程度を前記指標値として取得する
燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか記載の燃料電池システムであって、
前記電解質膜の外縁部は、所定以上の温度に加熱することによって収縮する熱収縮部材によって固定され、
前記対処部は、
前記熱収縮部材を加熱する加熱部を備え、
前記加熱部は、前記対処動作として、前記熱収縮部材を加熱して収縮させ、前記電解質膜に前記外縁部に向けた張力を生じさせる
燃料電池システム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれか記載の燃料電池システムであって、
前記電解質膜の少なくとも外縁部は、所定以上の温度に加熱することによって収縮する熱収縮部材によって形成され、
前記対処部は、
前記熱収縮部材を加熱する加熱部を備え、
前記加熱部は、前記対処動作として、前記熱収縮部材を加熱して収縮させ、前記電解質膜に前記外縁部に向けた張力を生じさせる
燃料電池システム。
【請求項7】
前記対処部は、前記対処動作として、前記取得した指標値が所定値以上であることをユーザに報知する報知手段を備えた請求項1ないし請求項6のいずれか記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記歪みゲージは、前記電解質膜のうちの、前記燃料電池の電気化学反応に供する反応ガスの流れの下流側に対応する領域に設けられた請求項4記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記歪みゲージは、前記電解質膜のうちの、重力方向の下方側の領域に設けられた請求項4または請求項8記載の燃料電池システム。
【請求項10】
請求項4、請求項8、請求項9のいずれか記載の燃料電池システムであって、
前記燃料電池は、発電の最小単位である単セルが複数積層された燃料電池スタックとして構成され、
前記歪みゲージは、前記複数の単セルのうちの、前記積層の方向の端部に配置された前記単セルに設けられた
燃料電池システム。
【請求項11】
請求項4、請求項8ないし請求項10のいずれか記載の燃料電池システムであって、
前記燃料電池は、前記電解質膜を間に挟んで配置された一対のセパレータを備え、
前記一対のセパレータのうちの少なくとも一方のセパレータは、該セパレータの前記電解質膜側の表面に、前記燃料電池の電気化学反応に供する反応ガスの流路となる凹部が形成され、
前記歪みゲージは、前記凹部に対応する位置の前記電解質膜に設けられた
燃料電池システム。
【請求項12】
吸湿によって膨張する特性を有する電解質膜を備えた燃料電池において、該電解質膜の塑性変形の程度を推定する推定方法であって、
前記電解質膜の含水の程度との相関を有する前記燃料電池の発電の状況を表すパラメータの経時的な値に基づいて算出される指標値を用いて、前記塑性変形の程度を推定する推定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図6】
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