説明

燃料電池システム

【課題】大型な弁機構を不要にすることができ、簡易な構成で、燃料電池の劣化を可及的に抑制することを可能にする。
【解決手段】燃料電池システム10は、燃料電池スタック12と、前記燃料電池スタック12に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給装置14と、前記燃料電池スタック12に燃料ガスを供給する燃料ガス供給装置16と、前記燃料電池スタック12に冷却媒体を供給する冷却媒体供給装置18と、酸化剤ガス出口連通孔44bを閉塞する連通孔閉塞装置20とを備える。連通孔閉塞装置20は、圧縮空気が導入されることにより酸化剤ガス出口連通孔44b内で膨張し、前記酸化剤ガス出口連通孔44bを閉塞する風船部材60と、前記風船部材60に前記圧縮空気を導入する圧縮空気供給部62とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質膜の両側に一対の電極が設けられた電解質膜・電極構造体が、一対のセパレータ間に積層され、前記電解質膜・電極構造体と各セパレータとの間には、酸化剤ガス流路及び燃料ガス流路が形成されるとともに、積層方向に貫通して前記酸化剤ガス流路に連通する酸化剤ガス連通孔と、前記燃料ガス流路に連通する燃料ガス連通孔とが形成される燃料電池を備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、燃料電池は、燃料ガス(主に水素を含有するガス、例えば、水素ガス)及び酸化剤ガス(主に酸素を含有するガス、例えば、空気)をアノード電極及びカソード電極に供給して電気化学的に反応させることにより、直流の電気エネルギを得るシステムである。このシステムは、定置用の他、車載用として燃料電池車両に組み込まれている。
【0003】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる電解質膜の両側に、それぞれアノード電極及びカソード電極を設けた電解質膜・電極構造体(MEA)を、一対のセパレータによって挟持している。一方のセパレータと電解質膜・電極構造体との間には、アノード電極に燃料ガスを供給するための燃料ガス流路が形成されるとともに、他方のセパレータと前記電解質膜・電極構造体との間には、カソード電極に酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス流路が形成されている。
【0004】
ところで、燃料電池の停止時には、燃料ガス及び酸化剤ガスの供給が停止されるものの、燃料ガス流路内に前記燃料ガスが残留する一方、酸化剤ガス流路内に前記酸化剤ガスが残留するとともに、大気が進入し易い。従って、特に燃料電池の停止期間が長くなると、反応ガス流路内の酸素濃度が高くなり、電解質膜が劣化するおそれがある。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1に開示されている燃料電池システムが知られている。この燃料電池システムは、図8に示すように、燃料電池スタック1と、前記燃料電池スタック1に水素を供給するための水素系2と、前記燃料電池スタック1に空気を供給するための空気系3と、制御装置4とを備えている。
【0006】
燃料電池スタック1は、アノード1aに燃料ガスが供給されるとともに、カソード1bに酸化剤ガスが供給され、これらガスを電気化学的に反応させることにより発電が行われている。制御装置4は、電流取出部5と、メイン制御部6とから構成されている。
【0007】
燃料電池システムでは、空気系3の燃料電池スタック1を構成するカソード1bの入口側に空気系入口弁(外気進入抑制弁)7、前記カソード1b出口側に空気系出口弁(外気進入抑制弁)8が、それぞれ設けられている。
【0008】
そこで、電流取出部5による燃料電池スタック1からの電流取り出しにより、カソード1b側に残存していた酸素を十分に消費させながら、空気系入口弁7及び空気系出口弁8を閉じて規制区間内への外気の進入を抑制している。その際、空気系入口弁7及び空気系出口弁8の閉止は、アノード圧力を大気圧以上で且つカソード圧力よりも高い圧力に昇圧してから行っている。
【0009】
これにより、燃料電池スタック1の電解質膜に悪影響を与えることがなく、カソード1b側での酸素消費速度を高めることができ、システムの運転停止に要する時間を短縮することができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−37770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の特許文献1では、規制区間内への外気の進入を抑制するために、空気系入口弁7及び空気系出口弁8が用いられている。しかしながら、空気系入口弁7及び空気系出口弁8は、相当に大型で且つ複雑な弁機構を有しており、燃料電池システム全体が大型化且つ複雑化するという問題がある。
【0012】
しかも、空気系入口弁7及び空気系出口弁8は、燃料電池スタック1の近傍に設ける必要がある。これにより、燃料電池システム全体のレイアウトの自由度が低下するという問題がある。
【0013】
本発明は、この種の問題を解決するものであり、大型な弁機構を不要にすることができ、簡易な構成で、燃料電池の劣化を可及的に抑制することが可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、電解質膜の両側に一対の電極が設けられた電解質膜・電極構造体が、一対のセパレータ間に積層され、前記電解質膜・電極構造体と各セパレータとの間には、それぞれ電極反応面の面方向に沿って酸化剤ガス及び燃料ガスを供給する酸化剤ガス流路及び燃料ガス流路が形成されるとともに、積層方向に貫通して前記酸化剤ガス流路に連通する酸化剤ガス連通孔と、前記燃料ガス流路に連通する燃料ガス連通孔とが形成される燃料電池を備える燃料電池システムに関するものである。
【0015】
この燃料電池システムは、酸化剤ガス連通孔を閉塞する連通孔閉塞装置を備えている。連通孔閉塞装置は、圧力流体が導入されることにより酸化剤ガス連通孔内で膨張し、前記酸化剤ガス連通孔を閉塞する膨張部材と、前記膨張部材に前記圧力流体を導入する圧力流体供給部とを備えている。
【0016】
また、この燃料電池システムでは、酸化剤ガス連通孔は、少なくとも酸化剤ガスを酸化剤ガス流路から排出する酸化剤ガス排出連通孔であることが好ましい。
【0017】
さらに、この燃料電池システムでは、膨張部材は、圧力流体である圧縮空気により膨張可能な風船部材であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、膨張部材に圧力流体が導入されることにより、前記膨張部材が酸化剤ガス連通孔内で膨張して前記酸化剤ガス連通孔を閉塞している。このため、大型な弁機構を不要にすることができ、簡易な構成で、電解質膜の劣化による燃料電池の性能低下を可及的に抑制することが可能になる。
【0019】
しかも、電解質膜・電極構造体とセパレータとが積層されたスタック近傍には、弁機構を設ける必要がない。従って、燃料電池を組み込むシステム全体のレイアウトの自由度が有効に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池システムの概略構成説明図である。
【図2】前記燃料電池システムを構成する連通孔閉塞装置の概略構成説明図である。
【図3】前記燃料電池システムの動作を説明するフローチャートである。
【図4】前記連通孔閉塞装置により酸化剤ガス出口連通孔が閉塞された状態の説明図である。
【図5】前記連通孔閉塞装置により前記酸化剤ガス出口連通孔が開放された状態の説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池システムを構成する連通孔閉塞装置の概略構成説明図である。
【図7】他の風船部材の説明図である。
【図8】特許文献1に開示されている燃料電池システムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池システム10は、燃料電池スタック12と、前記燃料電池スタック12に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給装置14と、前記燃料電池スタック12に燃料ガスを供給する燃料ガス供給装置16と、前記燃料電池スタック12に冷却媒体を供給する冷却媒体供給装置18と、後述する酸化剤ガス連通孔(特に、酸化剤ガス出口連通孔44b)を閉塞する連通孔閉塞装置20と、前記燃料電池システム10全体の制御を行うコントローラ22とを備える。燃料電池システム10は、燃料電池自動車等の燃料電池車両(図示せず)に搭載される。
【0022】
燃料電池スタック12は、複数の燃料電池24を水平方向又は鉛直方向に積層して構成される。各燃料電池24は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜26をカソード電極28とアノード電極30とで挟持した電解質膜・電極構造体(MEA)32を備える。
【0023】
カソード電極28及びアノード電極30は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層と、白金合金(又はRu等)が表面に担持された多孔質カーボン粒子が前記ガス拡散層の表面に一様に塗布されて形成された電極触媒層とを有する。電極触媒層は、固体高分子電解質膜26の両面に形成される。
【0024】
電解質膜・電極構造体32は、カソード側セパレータ34及びアノード側セパレータ36で挟持される。カソード側セパレータ34及びアノード側セパレータ36は、例えば、カーボンセパレータ又は金属セパレータで構成される。
【0025】
カソード側セパレータ34と電解質膜・電極構造体32との間には、酸化剤ガス流路38が設けられるとともに、アノード側セパレータ36と前記電解質膜・電極構造体32との間には、燃料ガス流路40が設けられる。互いに隣接するカソード側セパレータ34とアノード側セパレータ36との間には、冷却媒体流路42が設けられる。
【0026】
燃料電池スタック12の積層方向(燃料電池24の積層方向)両端には、エンドプレート43a、43bが配設される。エンドプレート43a、43b間は、図示しない締め付けロッド等により締め付け荷重が付与される。
【0027】
燃料電池スタック12には、各燃料電池24の積層方向に互いに連通して、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガス(以下、空気ともいう)を供給する酸化剤ガス入口連通孔(酸化剤ガス連通孔)44a、燃料ガス、例えば、水素含有ガス(以下、水素ガスともいう)を供給する燃料ガス入口連通孔46a、冷却媒体を供給する冷却媒体入口連通孔48a、前記酸化剤ガスを排出する酸化剤ガス出口連通孔(酸化剤ガス連通孔)44b、前記燃料ガスを排出する燃料ガス出口連通孔46b、及び前記冷却媒体を排出する冷却媒体出口連通孔48bが設けられる。
【0028】
酸化剤ガス供給装置14は、大気からの空気を圧縮して供給するエアポンプ(図示せず)を備え、前記エアポンプが空気供給流路50aに配設される。空気供給流路50aは、燃料電池スタック12の酸化剤ガス入口連通孔44aに連通するとともに、前記燃料電池スタック12の酸化剤ガス出口連通孔44bには、空気排出流路50bが接続される。
【0029】
燃料ガス供給装置16は、高圧水素を貯留する水素タンク(図示せず)を備える。水素タンクは、水素供給流路52aを介して燃料電池スタック12の燃料ガス入口連通孔46aに連通する。燃料電池スタック12の燃料ガス出口連通孔46bには、水素排出流路52bが接続される。
【0030】
冷却媒体供給装置18は、冷却媒体を循環させる循環用ポンプ(図示せず)を備える。循環用ポンプは、冷却媒体供給流路54a又は冷却媒体排出流路54bに接続される。冷却媒体供給流路54aは、燃料電池スタック12の冷却媒体入口連通孔48aに接続される一方、冷却媒体排出流路54bは、前記燃料電池スタック12の冷却媒体出口連通孔48bに接続される。
【0031】
図2に示すように、連通孔閉塞装置20は、圧力流体、例えば、圧縮空気が導入されることにより酸化剤ガス出口連通孔44b内で膨張し、前記酸化剤ガス出口連通孔44bを閉塞する膨張部材、例えば、風船部材60と、前記風船部材60に前記圧縮空気を導入する圧縮空気供給部(圧力流体供給部)62とを備える。
【0032】
圧縮空気供給部62は、エアポンプ64を備える。このエアポンプ64は、酸化剤ガス供給装置14を構成するエアポンプを兼用することが好ましい。エアポンプ64のエア吐出口側には、圧縮空気供給路66の一端が接続されるとともに、前記圧縮空気供給路66の他端は、第1分岐供給路66aと第2分岐供給路66bとに分岐する。
【0033】
第1分岐供給路66aと第2分岐供給路66bとには、それぞれ第1開閉弁68aと第2開閉弁68bとが配設される。第1分岐供給路66a及び第2分岐供給路66bは、第1ピストン70a及び第2ピストン70bを連結する作動板72の互いに対向する面側に圧縮空気を供給する。
【0034】
第1ピストン70a及び第2ピストン70bは、一体に矢印A方向に進退自在であり、前記第1ピストン70a側には、シリンダ74が設けられるとともに、前記シリンダ74内は、規定量の空気が充填可能である。規定量の空気とは、風船部材60を所望の膨張状態に維持し得る空気量である。
【0035】
シリンダ74の吐出口側には、圧縮空気配管76の一端が接続される。圧縮空気配管76の他端には、風船部材60が装着されるとともに、前記風船部材60は、燃料電池スタック12の外部近傍に、酸化剤ガス出口連通孔44bの開放端部に向かって配置される。
【0036】
このように構成される燃料電池システム10の動作について、図3に示すフローチャートに沿って、以下に説明する。
【0037】
先ず、燃料電池システム10の運転時(通常発電時)には(ステップS1)、酸化剤ガス供給装置14を介して空気供給流路50aに空気が送られる。この空気は、燃料電池スタック12の酸化剤ガス入口連通孔44aに供給され、前記燃料電池スタック12内の各燃料電池24に設けられている酸化剤ガス流路38に沿って移動する。このため、電解質膜・電極構造体32のカソード電極28には、酸化剤ガスである空気が供給される。
【0038】
一方、燃料ガス供給装置16では、水素供給流路52aに水素ガスが供給される。この水素ガスは、燃料電池スタック12の燃料ガス入口連通孔46aに供給された後、前記燃料電池スタック12内の各燃料電池24に設けられている燃料ガス流路40に沿って移動する。従って、電解質膜・電極構造体32のアノード電極30には、燃料ガスである水素ガスが供給される。
【0039】
これにより、カソード電極28に供給される空気と、アノード電極30に供給される水素ガスとは、電気化学的に反応して発電が行われる。使用済みの空気(未反応の酸素を含む)は、酸化剤ガス出口連通孔44bから空気排出流路50bに排出される。一方、使用済みの水素ガスは(未反応の水素ガスを含む)、燃料ガス出口連通孔46bから水素排出流路52bに排出される。
【0040】
また、冷却媒体供給装置18では、冷却媒体供給流路54aに冷却媒体が供給され、前記冷却媒体は、燃料電池スタック12の冷却媒体入口連通孔48aから各燃料電池24間に形成された冷却媒体流路42に供給される。冷却媒体は、各燃料電池24を冷却した後、冷却媒体出口連通孔48bから冷却媒体排出流路54bに排出され、燃料電池スタック12に循環される。
【0041】
次いで、図示しない燃料電池車両のイグニッション(IG)スイッチがオフされたと判断されると(ステップS2中、YES)、ステップS3に進んで、燃料電池システム10の停止処理が開始される。
【0042】
例えば、酸化剤ガス供給装置14では、エアポンプの回転数が、通常運転時に比べて相当に減速され、酸化剤ガス中の酸素ストイキを通常発電時の酸素ストイキよりも低い低酸素ストイキで供給する。一方、燃料ガス供給装置16では、水素ガスの供給が停止される。この状態で、燃料電池スタック12による発電が行われている。その際、燃料電池スタック12による発電電力は、必要に応じてバッテリ等に供給されることにより、ディスチャージされている。
【0043】
これにより、燃料電池スタック12内では、アノード側の水素濃度が低下する一方、カソード側の酸素濃度が低下していく。そこで、例えば、アノード側の水素圧力が所定の圧力以下となった際に、燃料電池スタック12による発電が停止される。
【0044】
さらに、ステップS4に進んで、風船部材60が膨張される。具体的には、図4に示すように、第1開閉弁68aが閉弁されるとともに、第2開閉弁68bが開弁される。このため、エアポンプ64から圧縮空気供給路66に導入された圧縮空気は、第2分岐供給路66bに供給され、作動板72を矢印A1方向に押圧する。
【0045】
従って、第1ピストン70a及び第2ピストン70bは、矢印A1方向に移動してシリンダ74内の定量の空気(風船部材60が酸化剤ガス出口連通孔44bを閉塞する程度まで膨張し得る空気量)が圧縮空気配管76に押し出される。圧縮空気配管76に押し出された空気は、風船部材60内に導入されるため、前記風船部材60が膨張する。これにより、膨張した風船部材60は、酸化剤ガス出口連通孔44bの開放端部側を閉塞し、前記酸化剤ガス出口連通孔44bに大気が進入することを確実に抑止することができる。
【0046】
ステップS5に進んで、燃料電池システム10は、停止状態(ソーク)に以降する。そして、燃料電池システム10の運転を再開するために、イグニッションスイッチがオンされると(ステップS6中、YES)、ステップS7に進む。
【0047】
このステップS7では、図5に示すように、第1開閉弁68aが開弁されるとともに、第2開閉弁68bが閉弁される。このため、エアポンプ64から圧縮空気供給路66に導入された圧縮空気は、第1分岐供給路66aに供給され、作動板72を矢印A2方向に押圧する。
【0048】
従って、第1ピストン70a及び第2ピストン70bは、矢印A2方向に移動してシリンダ74内の容積が増大し、前記シリンダ74内に圧縮空気配管76を介して空気が吸引される。これにより、風船部材60内の空気は、圧縮空気配管76を通ってシリンダ74内に戻されるため、前記風船部材60が収縮する。
【0049】
このため、風船部材60による酸化剤ガス出口連通孔44bの開放端部側の閉塞状態が解除され、前記酸化剤ガス出口連通孔44bが開放される。次いで、燃料電池システム10が起動される(ステップS8)。
【0050】
この場合、第1の実施形態では、燃料電池スタック12による発電が停止されると、連通孔閉塞装置20を構成する風船部材60に圧縮空気が導入され、前記風船部材60が膨張する(図4参照)。このため、膨張した風船部材60は、酸化剤ガス出口連通孔44bの開放端部側を閉塞し、前記酸化剤ガス出口連通孔44bに大気が進入することを確実に抑止することができる。
【0051】
従って、燃料電池システム10は、例えば、空気排出流路50bを閉塞するための大型且つ複雑な弁機構を不要にすることができる。これにより、簡易な構成で、固体高分子電解質膜26の劣化による燃料電池24の性能低下を可及的に抑制することが可能になる。
【0052】
しかも、燃料電池スタック12の近傍には、弁機構を設ける必要がない。このため、燃料電池24を組み込む燃料電池システム10全体のレイアウトの自由度が有効に向上するという効果が得られる。
【0053】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池システム90を構成する連通孔閉塞装置92の概略構成説明図である。
【0054】
なお、第1の実施形態に係る燃料電池システム10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0055】
連通孔閉塞装置92は、風船部材60と、前記風船部材60に圧縮空気を導入する圧縮空気供給部(圧力流体供給部)94とを備える。
【0056】
圧縮空気供給部94は、ソレノイドやモータ等の駆動源96を備えるとともに、前記駆動源96には、シリンダ98が連結される。シリンダ98内は、規定量の空気が充填可能であり、前記シリンダ98の吐出口側には、圧縮空気配管76が接続される。
【0057】
このように構成される第2の実施形態では、駆動源96から一方向(矢印A1方向)の駆動力が発生されると、シリンダ98内の空気が圧縮空気配管76に押し出される。このため、圧縮空気配管76に押し出された空気は、風船部材60内に導入されて前記風船部材60が膨張する。これにより、膨張した風船部材60は、酸化剤ガス出口連通孔44bの開放端部側を閉塞する。
【0058】
また、駆動源96から他方向(矢印A2方向)の駆動力が発生すると、シリンダ98内の容積が増大し、前記シリンダ98内に空気が吸引される。従って、風船部材60内の空気は、圧縮空気配管76を通ってシリンダ74内に戻されるため、前記風船部材60が収縮して酸化剤ガス出口連通孔44bが開放される。
【0059】
これにより、第2の実施形態では、簡易な構成で、固体高分子電解質膜26の劣化による燃料電池24の性能低下を可及的に抑制することが可能になる等、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0060】
なお、第1及び第2の実施形態では、風船部材60により酸化剤ガス出口連通孔44bの開放端部側を閉塞し、前記酸化剤ガス出口連通孔44bに大気が進入することを抑止するように構成されているが、これに限定されるものではない。例えば、図7に示すように、酸化剤ガス出口連通孔44bの積層方向全長にわたって膨張することにより、前記酸化剤ガス出口連通孔44bを積層方向全長にわたって全ての燃料電池24を閉塞する風船部材60aを用いることができる。
【0061】
この風船部材60aでは、酸化剤ガス出口連通孔44bに残存する酸素(空気)が可及的に削減されるため、固体高分子電解質膜26の劣化が一層確実に阻止可能になるという利点が得られる。また、膨張前の風船部材60a(図7中、二点差線参照)は、相当に小さな容積であり、酸化剤ガス出口連通孔44bから排出される空気の流れに干渉することがない。
【0062】
また、膨張前の風船部材60aを収容する凹部をエンドプレートに設けてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10、90…燃料電池システム 12…燃料電池スタック
14…酸化剤ガス供給装置 16…燃料ガス供給装置
18…冷却媒体供給装置 20、92…連通孔閉塞装置
22…コントローラ 24…燃料電池
26…固体高分子電解質膜 28…カソード電極
30…アノード電極 32…電解質膜・電極構造体
34…カソード側セパレータ 36…アノード側セパレータ
38…酸化剤ガス流路 40…燃料ガス流路
42…冷却媒体流路 44a…酸化剤ガス入口連通孔
44b…酸化剤ガス出口連通孔 46a…燃料ガス入口連通孔
46b…燃料ガス出口連通孔 48a…冷却媒体入口連通孔
48b…冷却媒体出口連通孔 50a…空気供給流路
50b…空気排出流路 52a…水素供給流路
52b…水素排出流路 54a…冷却媒体供給流路
54b…冷却媒体排出流路 60、60a…風船部材
62、94…圧縮空気供給部 64…エアポンプ
66…圧縮空気供給路 66a、66b…分岐供給路
68a、68b…開閉弁 70a、70b…ピストン
74、98…シリンダ 76…圧縮空気配管
96…駆動源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の両側に一対の電極が設けられた電解質膜・電極構造体が、一対のセパレータ間に積層され、前記電解質膜・電極構造体と各セパレータとの間には、それぞれ電極反応面の面方向に沿って酸化剤ガス及び燃料ガスを供給する酸化剤ガス流路及び燃料ガス流路が形成されるとともに、積層方向に貫通して前記酸化剤ガス流路に連通する酸化剤ガス連通孔と、前記燃料ガス流路に連通する燃料ガス連通孔とが形成される燃料電池を備える燃料電池システムであって、
前記酸化剤ガス連通孔を閉塞する連通孔閉塞装置を備え、
前記連通孔閉塞装置は、圧力流体が導入されることにより前記酸化剤ガス連通孔内で膨張し、該酸化剤ガス連通孔を閉塞する膨張部材と、
前記膨張部材に前記圧力流体を導入する圧力流体供給部と、
を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池システムにおいて、前記酸化剤ガス連通孔は、少なくとも前記酸化剤ガスを前記酸化剤ガス流路から排出する酸化剤ガス排出連通孔であることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃料電池システムにおいて、前記膨張部材は、前記圧力流体である圧縮空気により膨張可能な風船部材であることを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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