説明

燃料電池システム

【課題】 クロムなどの有害物質が含まれる凝縮水の系外排出による環境汚染のおそれがなく、合わせて設備の小型化、簡略化も可能な安全性、経済性ともに優れた水自立運転型の燃料電池システムを提供する。
【解決手段】 炭化水素系原料ガスを水素リッチの燃料ガスに改質する改質器を含む熱交換改質部20と、改質器で得られた水素リッチの原料ガスと酸化ガスとしての空気とを固体電解質層を介して化学的に反応させて電気を発生させる燃料電池本体10と、燃料電池本体10から排出される排ガスを冷却して凝縮水を生成すると共に、生成された凝縮水を前記改質器へ導く自立給水系80とを具備している。自立給水系80は縦型の筒状容器内にイオン交換樹脂を収容し、燃料電池本体10から排出される排ガスを冷却して生成された凝縮水を、前記筒状容器上部から導入し筒状容器下部から排出する浄化器82と、浄化器82の下流側に配置された吐出ポンプ83と、浄化器82と吐出ポンプ83との間に配置された縦管からなるオーバーフロー管87とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素リッチの原料ガスと酸化ガスとしての空気を固体電解質層を介して化学的に反応させて電気を発生させる燃料電池システムに関し、更に詳しくは、天然ガスやLPGなどの炭化水素系原料ガスを水素リッチの原料ガスに改質する際に必要な水を自給する水自立運転型の燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
代表的な燃料電池の一つとして、固体酸化物形燃料電池〔SOFC(Solid Oxide Fuel Cells)〕がある。この燃料電池では、通常、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)などの焼結体からなる薄く脆い固体電解質層の一方の表面側に燃料極が配置され、他方の表面側に空気極が配置された3層構造の積層体が、単電池セルとして使用される。燃料極としてはNiとYSZのサーメットなどが使用され、空気極としてはランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)などが使用される。いずれも多孔質の焼結体である。
【0003】
燃料電池の運転では、800〜1000℃という高温の条件下で単電池セルの燃料極側に、天然ガスやLPGなどの炭化水素系原料ガスから予熱及び改質を経て得た水素リッチの燃料ガスを供給し、空気極側へは酸化ガスとして予熱された空気を供給する。かくして、単電池セルの燃料極側と空気極側と間に起電力が生じる。ここにおける電圧は1V以下と低いために、平板型の単電池セルでは複数枚を厚み方向へ積層し直列に接続してセルスタックとして使用される。より具体的には、平板型の単電池セルの両面側に反応空間が形成されるように、単電池セルなどを間に挟みながら平板状のインターコネクタを板厚方向へ積層することにより、セルスタックが構成される。セルスタックは炉内に収容され、800〜1000℃という高温で運転される。
【0004】
ところで、ここにおける炭化水素系原料ガスの改質は、原料ガスと水を高温下で反応させることにより行われる。具体的には、原料ガス中の炭化水素分子中の炭素原子−水素原子間を切り離して水素分子を生成することにより、水素リッチの燃料ガスを生成する。一般に、燃料電池は設置環境、設置条件などから原料ガス以外の原料を自給する自立運転型であることが求められ、改質に用いる水についても例外ではない。この観点から、セルスタックから発生する排ガスを冷却して得た凝集水を改質に使用する水自立運転型の燃料電池システムが、特許文献1及び2などにより提案されている。
【0005】
特許文献1及び2などに記載されている従来の水自立運転型の燃料電池システムでは、セルスタックから排出される高温の燃焼排ガスを熱交換器に通して冷却することにより凝縮水を生成し、これを一時的にタンクに溜め、必要量を吐出ポンプにて抜き出し、イオン交換樹脂が充填された浄化器に通して改質器へ供給する。タンクを使用するのは、凝縮水の生成量が、改質器での必要水量を上回るためである。このため、タンクは余剰水をオーバーフローさせるオーバーフロー槽となっている。タンクの下流側に浄化器を設置するのは、凝縮水が含むクロムなどのセルにとっての有害物質を除去するためである。
【0006】
このような従来の水自立運転型の燃料電池システムにおける問題点の一つは、タンクの下流側に浄化器が設置されているため、タンクからオーバーフローする凝縮水にクロムなどの有害物質が含まれることになり、これが環境汚染を引き起こす原因になるおそれがあることである。この問題を解決するために、タンクの上流側に浄化器を設置することが考えられるが、そのような対策が講じられた形跡はない。その理由としては、タンクの下流側に浄化器を配置すると、タンク内に溜まった凝縮水の水圧が浄化器に付加され、タンクの下流側に設けられる吐出ポンプの負荷が小さくなること、言い換えればタンクの上流側に浄化器を配置すると、タンクの内圧を期待できないので、浄化器の下流側に設置される吐出ポンプに大きな能力が必要になり、経済性が悪化すること、オーバーフローする余剰の凝縮水にまで高度の濾過処理を施すことも設備の大型化を招き、経済性を悪化させる原因になると考えられていたことなどが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−234869号公報
【特許文献2】特開2011−154975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、クロムなどの有害物質が含まれる凝縮水の系外排出による環境汚染のおそれがなく、合わせて設備の小型化、簡略化も可能な安全性、経済性ともに優れた水自立運転型の燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明者らはこれまでオーバーフロー型タンクの下流側に設けられていたイオン交換樹脂装填の浄化器の構造に着目した。この浄化器は上面及び下面が密閉され内部にイオン交換樹脂が装填された筒状の縦型容器であり、タンクと浄化器の間に配置された吐出ポンプの作動に伴って凝縮水を容器下部から導入し、容器上部から排出する。
【0010】
この浄化器に使用されている筒状の縦型容器は、内部に凝縮水を収容しており、形状の上からもタンクとしての利用が可能であることを伺わせる。但し、従来のように凝縮水を容器下部から導入し、容器上部から排出する通水形態だと、タンクとして機能しない。従来とは反対に、凝縮水を容器上部から導入し、容器下部から排出する通水形態に変更すると、名実ともにタンクとしての利用が可能となり、オーバーフロー型タンクの省略が可能になること、すなわち浄化器がオーバーフロー型タンクの代替品となることを、本発明者らは様々な調査検討から知見した。
【0011】
本発明の燃料電池システムはかかる知見を基礎として完成されたものであり、炭化水素系原料ガスを水素リッチの燃料ガスに改質する改質器と、改質器で得られた水素リッチの原料ガスと酸化ガスとしての空気とを固体電解質層を介して化学的に反応させて電気を発生させる燃料電池本体と、燃料電池本体から排出される排ガスを冷却して凝縮水を生成すると共に、生成された凝縮水を前記改質器へ導く自立給水系とを具備しており、自立給水系は縦型の筒状容器内にイオン交換樹脂を収容し、燃料電池本体から排出される排ガスを冷却して生成された凝縮水を、前記筒状容器上部から導入し筒状容器下部から排出する浄化器と、浄化器の下流側に配置された吐出ポンプと、浄化器と吐出ポンプの間に配置された縦管からなるオーバーフロー管とを有している。
【0012】
本発明の燃料電池システムにおいては、イオン交換樹脂を収容する容器が縦型の筒状容器であり、且つその容器上部から凝縮水を導入し容器下部から凝縮水を排出する構成としたことにより、容器内に凝縮水を一時的に滞留させることができ、下流側の吐出ポンプに対して水圧を付加することができる。その結果、オーバーフロー型タンクを省略したことによる吐出ポンプの負荷増大を最小限に抑えることができる。
【0013】
但し、浄化器における縦型の筒状容器は本来、イオン交換樹脂容器であるので密閉されており、余分に生じる凝縮水をオーバーフローさせることはできない。そこで浄化器と下流側の吐出ポンプの間に縦管からなるオーバーフロー管を配置し、余剰の凝縮水のオーバーフローを行う。オーバーフロー管は構造が簡単であり、コストの増加要因とならないだけでなく、そこから溢れ出る凝縮水は上流側でイオン交換樹脂による浄化処理を受けているので、クロムなどの有害物質を含んでいない。このためオーバーフロー水が環境汚染の原因になることはない。
【0014】
加えて、縦管からなるオーバーフロー管においては、その水位は上流側に配置された浄化器における水位と一致し、水面レベルセンサを取付けることにより、浄化器の水位を監視でき、その水位計として利用可能となる。浄化器における筒状容器は密閉容器であり、水位計を取り付けることが難しいが、単なる縦管からなるオーバーフロー管を水位計に転用することは容易である。
【0015】
かくして、本発明の燃料電池システムにおいては、凝縮用熱交換器で得られた凝縮水を改質器へ導く自立給水系から、大掛かりなオーバーフロー槽を兼ねるタンクを省略することができ、吐出ポンプの容量増加も最小限に抑制することができるので、自立給水系の構造を大幅に簡略化でき、経済性が高い。しかも、凝縮水のオーバーフローは浄化器の下流側で行われるので、クロムなどの有害物質を含む凝縮水が系外へ排出されることはなく、これによる環境汚染の危険性もないので、安全性も高い。
【0016】
本発明の燃料電池においては、浄化器における縦型の筒状容器の形状が重要である。下流側の吐出ポンプへ水圧を効果的に付加するために横方向の寸法に対して縦方向の寸法が大きい縦長の形状であることが望ましく、少なくとも200mm以上の高さがあることが望ましい。極端な縦長形状は当該浄化器が凝縮用熱交換器の下側に設置される構造上、装置高さを増加させる要因となる。吐出ポンプの設置レベルより浄化器の設置レベルを高くするのも水圧確保の点から有利である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の燃料電池システムは、熱交換器本体から排出される排ガスを冷却して生成した凝縮水を原料ガスの改質に使用するので、外部からの水供給を実質的に必要とない。イオン交換樹脂を収容する浄化器を凝縮水の貯留タンクとして活用し、オーバーフロー槽を兼ねるタンクを排除できるので、構造が簡単である。オーバーフローは浄化器の下流側で行うので、オーバーフロー水にクロムなどの有害物質は含まれない。このため、有害物質を含む凝縮水が系外へ排出されることによる環境汚染の危険もない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態を示す燃料電池システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施形態を図1に基づいて説明する。本実施形態の燃料電池システムは、その主体部である燃料電池部Aと、燃料電池部Aに対して各種の流体の授受を行う流体流通系Bとの組合せからなる。
【0020】
燃料電池部Aは、セルスタックからなる燃料電池本体10と、燃料電池本体10へ供給する各種の流体を、燃料電池本体10から排出される高温の排ガスと熱交換させて予熱すると共に、その過程で炭化水素系の原料ガスを水素リッチの原料ガスに改質する熱交換改質部20と、燃料電池本体10及び熱交換改質部20を運転開始時に予熱するバーナー30とを備えている。
【0021】
燃料電池本体10を構成するセルスタックは、固体酸化物形燃料電池の最小構成単位である平板型の単電池セルを、集電体と共に挟みながら板状のインターコネクタ(セパレータ)を板厚方向に積層し、その積層体を積層方向に加圧保持することにより構成されている。個々の単電池セルは、ここではイットリア安定化ジルコニアからなる円板状の固体電解質層と、固体電解質層の一方の表面側に積層配置された固体電解質層と同一外径のNiとYSZのサーメットからなる円板状の燃料極と、固体電解質層の他方の表面側の外周縁部を除く部分に積層配置されたランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)からなる非常に薄い円板状の空気極とからなる3層構造の薄い円板である。集電体は、単電池セルの燃料極側に配置された燃料極と同一外径の発泡ニッケルからなる円板である。
【0022】
熱交換改質部20は、燃料電池本体10へ酸化ガスとして供給する空気を、燃料電池本体10で発生する高温のオフガスと熱交換させて加熱する空気加熱用熱交換器と、前記オフガスを燃焼させる燃焼器と、天然ガスやLPGなどの炭化水素系原料ガスを前記オフガスと熱交換させて加熱すると共に、加熱された原料ガスに水を加えて水素リッチの燃料ガスに改質する、原料ガス加熱用熱交換器内蔵の改質器とを有している。またバーナー30は、燃料電池部Aの運転開始時に熱交換器が正常動作状態に移行するまでの間、外部から供給されるバーナーガスを、同じく外部から供給されるバーナー空気により燃焼させて、燃料電池本体10及び熱交換改質部20を作動温度まで強制的に加熱する。
【0023】
流体流通系Bとしては、燃料電池部A内の熱交換改質部20へ酸化ガスとしての空気を供給する酸化ガス供給系40、同じく燃料電池部A内の熱交換改質部20へ炭化水素系原料ガスを供給する原料ガス供給系50、同じく燃料電池部A内のバーナー30へ燃焼用のバーナーガス及びバーナー空気をそれぞれ供給するバーナーガス供給系70及びバーナー空気供給系60の他に、熱交換改質部20内の改質器へ改質用の水を供給する自立給水系80が設けられている。
【0024】
自立給水系80は、燃料電池本体10で発生し熱交換改質部20を経由して燃料電池部Aから排出される高温の排ガスを冷却水により冷却して、前記排ガスから凝縮水を生成する凝縮用熱交換器81と、縦型の筒状容器内にイオン交換樹脂を装填された二つの浄化器82,82と、凝縮用熱交換器81で生成された凝縮水を浄化器82,82に流通させて燃料電池部A内の熱交換改質器20へ供給するために、その供給管路内の浄化器82,82より下流側に配置された吐出ポンプ83とを備えている。
【0025】
縦型筒状の浄化器82,82は、凝縮用熱交換器81で生成された凝縮水を導入するために、凝縮用熱交換器81の下側に設けられている。これらの浄化器82,82は、前記供給管路内に並列に配置されており、凝縮用熱交換器81で生成した凝縮水を浄化器82,82の何れか一方に供給するため、すなわち浄化器82,82の選択的使用のために、上側で上流側の凝縮用熱交換器81とは流路切換え弁84を介して接続されている。浄化器82,82は又、凝縮水の貯留タンクを兼ねるために内径より縦方向の内寸が大きい縦長形状であり、下流側の吐出ポンプ83より高いレベルに縦向きに設置されると共に、その凝縮水を容器上部から導入し容器下部から排出する構成となっている。
【0026】
流路切換え弁84と浄化器82,82との間の供給管路(浄化器82,82に各対応する分岐管路)には、必要時に系外から水を供給する開閉弁85付きの補給管路が接続されている。浄化器82,82より下流側の分岐管路には、前述した浄化器82,82の選択的使用に関連して、開閉弁86,86がそれぞれ設けられている。分岐管路は開閉弁86,86より下流側で合体して1本の供給管路に戻り、当該供給管路には、垂直な縦管からなるオーバーフロー管87が、吐出ポンプ83より上流側に位置して設けられている。
【0027】
オーバーフロー管87は、並列配置された浄化器82,82の水面レベル計を兼ねるために、浄化器82,82に併設されると共に、浄化器82,82内の水面の下限に対応するレベルに、水面レベルセンサとしての水面検知器88を装備している。オーバーフロー管87の上端部は、図1中に破線で示されたドレン配管と接続されており、開閉弁86,86の下流側も別の開閉弁89を介してドレン配管と接続されている。
【0028】
次に、本実施形態の燃料電池システムの動作を、主に流体流通系B、特に熱交換改質部20内の改質器へ改質用の水を供給する自立給水系80について説明する。
【0029】
燃料電池部A内の燃料電池本体10において発電が行われている間、熱交換改質部20からはオフガスを燃焼させた高温の排ガスが排出される。この排ガスは水素と酸素との反応により発生する燃焼排ガスであり、多量の水蒸気を含んでいる。
【0030】
燃料電池部Aから排出された高温の排ガスは、流体流通系B内の自立給水系80に設けられた凝縮用熱交換器81において冷却水により冷却され、凝縮水を生成する。燃料電池部A内の燃料電池本体10において発電が行われている間、自立給水系80内の吐出ポンプ83は運転を続ける。また、開閉弁85が閉状態、開閉弁86,86の一方が閉状態、開閉弁89が閉状態とされる。これらにより、凝縮用熱交換器81において生成した凝縮水は、流路切換え弁84を介して、並列配置された浄化器82,82の何れか一方を経由して必要量が熱交換改質部20へ供給される。他方の浄化器82は、予備のために水を満たした状態に保持される。かくして、クロムなどの有害物質が除去された凝縮水が熱交換改質部20へ送られる。
【0031】
ここで、浄化器82,82は縦長の筒状容器内にイオン交換樹脂を装填した構造であり、使用中の浄化器82には前記凝縮水が容器上部から容器内に導入され、容器下部から容器外へ排出される。また、凝縮用熱交換器81における凝縮水の生成量は、通常は熱交換改質部20における凝縮水の消費量より多い。このため、前記凝縮水は、使用中の浄化器82の容器内に一時的に滞留して充満し、その浄化器82を凝縮水の貯留タンクの如く機能させる。これにより、吐出ポンプ83に水圧を付加し、吐出ポンプ83の負荷を軽減する。凝縮水の生成量が消費量より多い分は、浄化器82,82に併設されたオーバーフロー管87から排出され、ドレン配管を経て系外へ排出される。オーバーフロー管87は浄化器82,82より下流側にあるので、系外へ排出される凝縮水はクロムなどの有害物質を含まない。
【0032】
運転開始時等、高温の排ガスが得られず凝縮水の生成量が不足するような場合は、必要に応じて開閉弁85を開状態として、系外から浄化器82,82の一方、或いは両方へ水が供給される。
【実施例】
【0033】
本発明の有効性を確認するために、燃料電池システムを従来のものから本発明のものに変更した。
【0034】
具体的には、凝縮水を生成して熱交換改質部へ供給する自立給水系において、生成された凝縮水を一時的に溜めるオーバーフロー槽を兼ねるタンクを排除し、縦型筒状容器にイオン交換樹脂が装填された浄化器にタンクを兼用させた。これに伴って、凝縮水は浄化器の容器上部から容器内へ導入し、容器下部から容器外へ排出した。また、タンクと浄化器との間に配置されていた吐出ポンプを浄化器の下流側へ移設した。その吐出ポンプと浄化器との間にオーバーフロー管を設置した。更に、浄化器の設置レベルを吐出ポンプの設置レベルより高くした。
【0035】
都市ガスを燃料とする燃料電池本体の能力がDC5kWの場合、燃料利用率75%、S/C=3(S:水蒸気、C:炭素)という条件では熱交換改質部に必要な凝縮水量は38mL/分である。これを上回る凝縮水はオーバーフロー管から系外へ排出した。省略したタンクの容量は1Lである。浄化器における筒状容器の容量は2.5L、有効高さは350mm、有効内径は100mmである。イオン交換樹脂の初期装填率は容積%で60%である。浄化器と吐出ポンプの設置レベル差は300mmである。
【0036】
吐出ポンプの能力はタンクを省略する前後で不変であるにもかかわらず、タンクを省略した後も必要量の凝縮水を熱交換改質部へ安定的に供給することができた。
【0037】
オーバーフロー管から排出される凝縮水中のクロム濃度を測定したところ、「水質汚濁防止法」に規定された六値クロム及びその化合物の基準値である0.5mg/Lを下回っていた。
【符号の説明】
【0038】
10 燃料電池本体
20 熱交換改質部
30 バーナー
40 酸化ガス供給系
50 原料ガス供給系
60 バーナーガス供給系
70 バーナー空気供給系
80 自立給水系
81 凝縮用熱交換器
82 浄化器
83 吐出ポンプ
84 流路切換え弁
85,86,89 開閉弁
87 オーバーフロー管
88 水面検知器(水面レベルセンサ)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素系原料ガスを水素リッチの燃料ガスに改質する改質器と、改質器で得られた水素リッチの原料ガスと酸化ガスとしての空気とを固体電解質層を介して化学的に反応させて電気を発生させる燃料電池本体と、燃料電池本体から排出される排ガスを冷却して凝縮水を生成すると共に、生成された凝縮水を前記改質器へ導く自立給水系とを具備しており、自立給水系は縦型の筒状容器内にイオン交換樹脂を収容し、燃料電池本体から排出される排ガスを冷却して生成された凝縮水を、前記筒状容器上部から導入し筒状容器下部から排出する浄化器と、浄化器の下流側に配置された吐出ポンプと、浄化器と吐出ポンプの間に配置された縦管からなるオーバーフロー管とを有する燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、浄化器は凝縮用熱交換器で生成された凝縮水を一時的に滞留するタンクを兼ねる燃料電池システム。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料電池システムにおいて、浄化器は横方向の内寸より縦方向の内寸が大きい縦長形状であり、且つ吐出ポンプと同じかこれより高いレベルに設置されている燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の燃料電池システムにおいて、オーバーフロー管は浄化器の水位計を兼ねる燃料電池システム。



【図1】
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【公開番号】特開2013−69528(P2013−69528A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207034(P2011−207034)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000183369)住友精密工業株式会社 (336)
【Fターム(参考)】