説明

燃料電池スタックの支持構造

【課題】燃料電池スタックを高剛性を有する部材に固定することで燃料電池スタックの高密度実装化を向上しうる支持構造を提供する。
【解決手段】燃料電池スタック4と、前記燃料電池スタック4の積層方向から挟持し均一に押圧するエンドプレートを備える燃料電池スタックの支持構造において、前記燃料電池スタック4両端のエンドプレートを相互に連結する板状の固定部材5,6を、前記燃料電池スタック4の両側面に沿って対向的に配設したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両搭載型の燃料電池に好適な燃料電池スタックの支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のスタックの支持構造では、スタックは発電反応にともないセルの積層方向に伸縮する。そのため、燃料ガスや冷却水を給排するためのマニホールドとスタックとの間にフレキシブル配管を介装していた(例えば、特許文献1、参照)。
【特許文献1】特開2001−143742号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の燃料電池スタックの支持構造では、複数の燃料電池スタックから構成される場合、スタックの伸縮に対応してしっかりとした位置決めができないため、特に燃料電池スタックを複数配列したときにフレキシブル配管が多数必要となり、そのことが部品点数を増やし、スペース効率を悪化させていた。
【0004】
そこで本発明では、燃料電池スタックを高剛性の固定部材であるサイドプレートに設置し、前記燃料電池スタックの支持剛性を向上することで、フレキシブル配管を必要とせず、実装密度を向上しうる支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
積層方向から挟持し押圧するエンドプレートを備える燃料電池を複数備える燃料電池スタックの支持構造において、前記各々の燃料電池スタック両端のエンドプレートの少なくとも一方を連結する板状の固定部材を、前記各々の燃料電池スタックの両側面に沿って対向的に配設した。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、燃料電池スタックを複数備え、各々の燃料電池スタック両端のエンドプレートをスタック両側面に配した板状の固定部材により連結してあるので、燃料電池スタックに流体を供給するマニホールドと燃料電池スタックの間に、前記燃料電池スタックの伸縮により燃料ガス等の流体の漏れを防ぐフレキシブル配管を備える必要がなく、したがって部品点数を減らせる。また、配管のためのスペースが不要となるので燃料電池セルの積層数および実装密度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
第1実施形態に用いる燃料電池システムの概略構成を図1から図3に示す。本実施形態において、燃料電池スタック4の構成について図1に基づき説明する。前記燃料電池スタック4は、燃料電池セルを複数積層し、その積層方向両側から均一に前記燃料電池セルを押圧する弾性体(図示せず)を挟持し、さらに積層方向に両側からエンドプレート1およびエンドプレート2により挟持して構成されている。なお、詳細は図示しないが燃料電池スタック4を構成する複数の燃料電池セルの電解質膜には燃料ガスや酸化剤ガスを供給するためのマニホールドを設けている。
【0008】
図に示した5および6は本発明の固定部材に相当するサイドプレートであり、燃料電池スタックを車両フレームへ支持するためのマウント部材を兼ねて、鋼板等の高剛性部材から形成されている。これら一対のサイドプレート5,6により複数個(この場合3個)の燃料電池スタック4を固定する。前記燃料電池スタック4のサイドプレート5,6への配設方法について図2および図3の記載に基づいて説明する。予め燃料電池スタック4を固定する位置をサイドプレート5,6に定めておき、複数の燃料電池スタック4を並列に前記位置に配置し、エンドプレート1とエンドプレート2をそれぞれサイドプレート5,6に固定する。また、図3に示したように複数の燃料電池スタック4を鉛直方向に並べてサイドプレート5,6に固定してもよい。
【0009】
ここで、エンドプレート1とエンドプレート2とのサイドプレート5,6への固定方法として、エンドプレート1,2にボルト穴30を設け、サイドプレート5,6に燃料電池スタック4のエンドプレート1,2を配設する部分に予めネジ穴31を設けておく。そして、エンドプレート1,2とサイドプレート5,6の前記ボルト穴30に図示しないボルトを通しサイドプレート5,6のネジ穴31に締め付けることでエンドプレート1,2をサイドプレート5,6に締結する。
【0010】
燃料電池スタック4を冷却する冷却水や発電反応を生じさせる燃料ガスおよび酸化剤ガスを複数の燃料電池スタック4にほぼ均等に供給するマニホールド7とエンドプレート1またはエンドプレート2が接するように備える。なお、マニホールド7より燃料電池スタック4に流体を供給する際、マニホールド7とエンドプレート1またはエンドプレート2の接する面で、流体の漏れを確実に阻止するようにシールする。
【0011】
第1実施形態に用いた燃料電池システムの効果について説明する。燃料電池スタック4の運転温度と雰囲気温度の差による熱膨張や電解質膜の含水による膨張等によって作動中の燃料電池スタック4はセル積層方向に伸縮する。そのため、従来はマニホールド7と燃料電池スタック4との間に、燃料電池スタック4の積層方向への伸縮に応じて変形するフレキシブル配管を設置していた。このフレキシブル配管によりマニホールド7を通り燃料電池スタック4へ供給される燃料ガス等の漏れを阻止できていたが、フレキシブル配管を利用することで部品点数が増加し、スペース効率を悪化させていた。
【0012】
そこで、本発明では、燃料電池スタック4を複数備え、サイドプレート5,6にエンドプレート1,2を固定しており、燃料電池スタック4の伸縮を阻止しているため燃料電池スタック4に流体を供給するマニホールド7と燃料電池スタック4の間シールを備えることで燃料ガス等の漏れを防ぐことができフレキシブル配管を備える必要がない。したがって、部品点数を減らすことが可能となり、燃料電池スタック4のスペース効率を向上することが可能となる。また、前記フレキシブル配管を備えるスペースが不要となるので燃料電池スタック4のセルの積層数および実装密度を高めることができる。
【0013】
燃料電池スタック4を設置するサイドプレート5,6は高剛性部材より構成されているため、複数の燃料電池スタック4の強度を増す部品を備える必要がない。したがって、その部品のための空間を節約できると共に、十分な強度を確保することが可能となる。
【0014】
サイドプレート5,6は高剛性の部材からなり、車両フレームへの支持締結構造を有するので、高剛性部材としての性質を兼ねるため支持締結構造を簡略化することが可能となりスペース効率を向上することが可能となる。
【0015】
第2〜第3実施形態について第1実施形態と異なる部分を中心に図4から図6に基づき説明する。本実施形態では、サイドプレート10,11には、燃料電池スタック4の側面との対向面に燃料電池セルの積層方向に沿って溝16を形成すると共に、エンドプレート8,9には、前記溝16と嵌合するように突起部15を形成した。
【0016】
ただし、図6に示したものでは、サイドプレート一体型部材12は、並列的に配設した複数の燃料電池スタック4に共通の部材として形成すると共に、相対するサイドプレート10,11の前記燃料電池スタック4の配設方向の端部を相互に連結して筒状に形成した。サイドプレート一体型部材12にも図6に示したように、燃料電池スタック4の側面との対向面にエンドプレート8,9に形成した突起部15と嵌合するように、燃料電池セルの積層方向に沿って溝16を形成した。
【0017】
サイドプレート一体型部材12に燃料電池スタック4を設置した状態で、マニホールド13を通過した燃料ガス等が燃料電池スタック4と接する面において確実に漏れを阻止するように設置し、マニホールド13と燃料電池スタック4を挟んで対向する面に後方部蓋14を備える。
【0018】
サイドプレート5,6、サイドプレート10,11、およびサイドプレート一体型部材12は、高剛性部材を兼ねているため、燃料電池スタック4の周辺部品(たとえば、燃料電池セル電圧測定ユニット、ハーネス等)を固定する機能を持たせてもよいし、サイドプレートとして絶縁性を有する部材を使用してもよい。
【0019】
サイドプレート10,11には、燃料電池スタック4の側面との対向面に燃料電池セルの積層方向に沿って溝16を形成すると共に、エンドプレート8,9には、前記溝16と嵌合するように突起部15を形成したことで組付けが容易となる。すなわち、エンドプレートの突起部15をサイドプレートの溝16に嵌合させながらスタック4を挿入することで、サイドプレート10,11に対し、大型または重量のあるスタック4の組み付けと位置決めを容易に行えるので、組立作業が容易になる。
【0020】
マニホールド13がエンドプレート8,9に接するように設置し、マニホールド13と燃料電池スタック4を挟んで対向する面に後方部蓋14を備えることで、車両用燃料電池の剛性を向上させることができる。さらに、サイドプレート一体型部材12に燃料電池スタック4を組み付ける際、燃料電池スタック4の伸縮に対応するようにフレキシブル配管等を設置する必要がなく、部品点数を削減することが可能となり、コストおよび重量の低減が可能となる。
【0021】
サイドプレート5,6、サイドプレート10,11、およびサイドプレート一体型部材12に燃料電池スタック4の周辺部品を固定する機能を持たせることにより、周辺部品を固定する固定用部材を削減することができ、コストおよび重量の低減が可能となる。
【0022】
サイドプレート5,6、サイドプレート10,11、およびサイドプレート一体型部材12の材質を電気絶縁材とすることにより、燃料電池スタック4のセパレータから燃料電池スタック4と接するサイドプレート5,6、サイドプレート10,11、およびサイドプレート一体型部材12への絶縁構造を容易に取りうる。
【0023】
さらに、絶縁材は断熱効果もあるので、燃料電池スタック4の保温が可能となり、特に低温起動時の暖機を促進することが可能となる。
【0024】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の技術的思想の範囲内で当業者がなしうるさまざまな改良、変更が含まれることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池スタックの外観斜視図である。
【図2】前記第1の実施形態に係る燃料電池スタックを横方向に複数組み付けた実施形態を示す組立図である。
【図3】前記第1の実施形態の燃料電池スタックを縦方向に複数組み付けた実施形態を示す組立図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池スタックの外観斜視図である。
【図5】前記第2の実施形態に係る燃料電池スタックを縦方向に複数組み付けた実施形態を示す組立図である。
【図6】前記第2の実施形態に係る燃料電池スタックを縦方向に複数組み付けた他の実施形態を示す組立図である。
【符号の説明】
【0026】
1 エンドプレート
2 エンドプレート
4 燃料電池スタック
5 サイドプレート
6 サイドプレート
7 マニホールド
8 エンドプレート
9 エンドプレート
10 サイドプレート
11 サイドプレート
12 サイドプレート一体型部材
13 マニホールド
14 後方部蓋
15 突起部
16 溝
17 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層方向から挟持し押圧するエンドプレートを備える燃料電池を複数備える燃料電池スタックの支持構造において、
前記各々の燃料電池スタック両端のエンドプレートの少なくとも一方を連結する板状の固定部材を、
前記各々の燃料電池スタックの両側面に沿って対向的に配設したことを特徴とする燃料電池スタックの支持構造。
【請求項2】
前記固定部材は前記燃料電池スタックを車両フレームに支持するマウント部材を兼ねることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池スタックの支持構造。
【請求項3】
前記固定部材には、前記燃料電池スタックの側面との対向面にセル積層方向に沿って溝を形成すると共に、前記エンドプレートには前記溝と嵌合する突起部を形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池スタックの支持構造。
【請求項4】
前記固定部材は、並列的に配設した複数の燃料電池スタックに共通の部材として形成すると共に、相対する前記固定部材の前記燃料電池スタック配設方向の端部を相互に連結して筒状に形成したことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の燃料電池スタックの支持構造。
【請求項5】
前記固定部材は、燃料電池の周辺部品を固定するブラケットを兼ねることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の燃料電池スタックの支持構造。
【請求項6】
前記固定部材は、電気絶縁性を有する部材からなることを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の燃料電池スタックの支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−302640(P2006−302640A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−122064(P2005−122064)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】