説明

燃料電池スタック

【課題】、燃料電池スタックにおいて、複数の単セルの積層方向に対して垂直方向から衝撃力が加わったときであっても、単セルの積層方向に対して垂直方向への位置ずれを抑制する。
【解決手段】燃料電池スタック100は、複数の単セル40を積層させた積層体と、この積層体において、複数の単セル40の積層方向に対して垂直方向への単セル40の位置ずれを抑制するための外部拘束部材であって、積層体の積層方向に対して平行な面に、積層方向全体に亘って当接させた状態で、積層体に固定された複数の外部拘束部材60,70,80,90と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料ガス(例えば、水素)と酸化剤ガス(例えば、酸素)との電気化学反応によって発電する燃料電池がエネルギ源として注目されている。この燃料電池には、複数の単セルを積層させた積層体を備える燃料電池スタックがある。
【0003】
このような燃料電池スタックでは、一般に、単セル間、および、単セル内における接触抵抗を低減したり、燃料電池スタック内を流れる流体(燃料ガス、酸化剤ガス、冷却水)の漏洩を防止したりするために、単セルの積層方向に締結荷重が加えられ、締結部材によって締結される。
【0004】
そして、このような燃料電池スタックにおいて、単セルの積層方向に対して垂直方向から衝撃力が加わり、この衝撃力によって、単セルが積層方向に対して垂直方向に位置ずれした場合には、燃料電池スタックが破損するおそれがあり得る。そこで、従来、燃料電池スタックに関して、単セルの積層方向に対して垂直方向への位置ずれを抑制する、つまり、複数の単セルを外部拘束するための種々の技術が提案されている。例えば、下記特許文献1には、単セルを構成するセパレート板の四隅に切り欠き部を設け、それぞれの切り欠き部に接するように締め付け用のスタッドを配置して、複数の単セルを外部拘束しつつ、締め付け板を締め付けて燃料電池スタックを構成することが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−197250号公報
【特許文献2】特開2005−100807号公報
【特許文献3】特開平10−106610号公報
【特許文献4】特開2003−86232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1に記載された技術において、複数のセパレート板や、締め付け板には、製造上の寸法誤差が必然的に生じる。また、複数の単セルを積層する際には、各単セル間の位置ずれも必然的に生じる。また、締め付け板における締め付け用のスタッドの位置は、予め規定されている。したがって、上記特許文献1に記載された燃料電池スタックを製造するためには、上述した寸法誤差や、単セルを積層する際の位置ずれや、組み付け性を考慮して、セパレート板に設けられた切り欠き部と締め付け用のスタッドとの間には、必然的に隙間を設ける必要がある。
【0007】
しかし、上記特許文献1に記載された技術では、このような隙間については、何ら考慮されておらず、セパレート板の四隅に設けられた切り欠き部に接するように締め付け用のスタッドを配置して燃料電池スタックを構成することは、現実には困難だった。また、上記特許文献1に記載された技術において、上述した隙間を設けた場合には、各単セルは、その隙間の分だけ位置ずれする可能性が生じ、十分な外部拘束効果が得られない場合が生じ得た。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、燃料電池スタックにおいて、複数の単セルの積層方向に対して垂直な方向から衝撃力が加わったときであっても、単セルの積層方向に対して垂直方向への位置ずれを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するために以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0010】
[適用例1]燃料電池スタックであって、複数の単セルを積層させた積層体と、前記積層体において、前記複数の単セルの積層方向に対して垂直方向への前記単セルの位置ずれを抑制するための外部拘束部材であって、前記積層体の前記積層方向に対して平行な面に、前記積層方向全体に亘って当接させた状態で、前記積層体に固定された複数の外部拘束部材と、を備える燃料電池スタック。
【0011】
適用例1の燃料電池スタックでは、複数の外部拘束部材が、上記積層体の積層方向に平行な面に、積層方向全体に亘って当接させた状態で、すなわち、複数の外部拘束部材と上記積層体との間に隙間がない状態で、上記積層体に固定される。したがって、燃料電池スタックにおいて、複数の単セルの積層方向に対して垂直方向から衝撃力が加わったときであっても、単セルの積層方向に対して垂直方向への位置ずれを抑制することができる。
【0012】
[適用例2]適用例1記載の燃料電池スタックであって、前記積層体の前記積層方向に対して平行な面には、前記複数の外部拘束部材とそれぞれ嵌合する複数の嵌合凹部が形成されている、燃料電池スタック。
【0013】
本適用例によって、上記積層体における上記外部拘束部材の位置決めを容易に行うことができる。
【0014】
[適用例3]適用例2記載の燃料電池スタックであって、前記嵌合凹部は、前記外部拘束部材が嵌合され、該外部拘束部材に、前記積層体の前記積層方向に対して垂直方向に外力が加えられたときに、該外力が、該外力の方向とは異なる少なくとも2方向に分散して作用する内壁面を有する、燃料電池スタック。
【0015】
本適用例によって、上記積層体に複数の外部拘束部材を固定する際に、1つの外部拘束部材について、一方向に外力を加えることによって、上記嵌合凹部内に外部拘束部材を収めつつ、上記各単セルに複数の外部拘束部材を比較的容易に当接させることができる。
【0016】
[適用例4]適用例1記載の燃料電池スタックであって、前記積層体は、前記積層方向に対して平行な稜部を有しており、前記外部拘束部材は、前記稜部と嵌合する嵌合凹部を備える、燃料電池スタック。
【0017】
本適用例によっても、上記積層体における上記外部拘束部材の位置決めを容易に行うことができる。
【0018】
[適用例5]適用例1ないし4のいずれかに記載の燃料電池スタックであって、前記複数の外部拘束部材は、環状の弾性部材を用いて前記積層体に締め付けられることによって、前記積層体に固定されている、燃料電池スタック。
【0019】
本適用例によって、複数の外部拘束部材をほぼ均一な力で積層体に固定することができる。なお、上記環状の弾性部材の数は、任意に設定可能である。
【0020】
[適用例6]適用例5記載の燃料電池スタックであって、さらに、前記環状の弾性部材による前記複数の外部拘束部材の締付力を調整するための調整部を備える、燃料電池スタック。
【0021】
本適用例によって、上記弾性部材によって上記積層体に複数の外部拘束部材を締め付けるときの利便性を向上させることができる。
【0022】
[適用例7]適用例1ないし6のいずれかに記載の燃料電池スタックであって、前記外部拘束部材は、金属からなり、前記外部拘束部材と前記積層体との間には、絶縁性部材が介装されている、燃料電池スタック。
【0023】
本適用例によって、上記外部拘束部材の剛性を確保するとともに、上記外部拘束部材と、複数の単セルとの絶縁を確保することができる。なお、本適用例において、外部拘束部材と積層体との間に絶縁性部材が介装される態様としては、外部拘束部材と積層体との絶縁を確保可能な態様であればよく、外部拘束部材と積層体とによって絶縁性部材を挟持する態様に限られない。例えば、外部拘束部材の表面に絶縁性部材が一体的に形成される態様としてもよいし、積層体の表面に絶縁性部材が一体的に形成される態様としてもよい。
【0024】
本発明は、上述した種々の特徴を、適宜、組み合わせて構成することもできる。また、本発明は、上述の燃料電池スタックとしての構成の他、燃料電池スタックの製造方法の発明として構成することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき説明する。
A.第1実施例:
A1.燃料電池スタックの構成:
図1は、本発明の第1実施例としての燃料電池スタック100の概略構成を示す斜視図である。この燃料電池スタック100は、概ね、単セルを複数積層させたスタック構造を有している。各単セルは、プロトン伝導性を有する電解質膜の両面に、それぞれアノード、および、カソードを接合してなる膜電極接合体を、セパレータによって挟持することにより構成されている。本実施例では、電解質膜として、固体高分子膜を用いるものとした。電解質として、固体酸化物等、他の電解質を用いるものとしてもよい。なお、燃料電池スタック100における膜電極接合体の積層数は、燃料電池スタック100に要求される出力に応じて任意に設定可能である。
【0026】
燃料電池スタック100は、図示するように、一端から、エンドプレート10a、絶縁板20a、集電板30a、複数の単セル40、集電板30b、絶縁板20b、エンドプレート10bの順に積層することによって構成されている。本実施例では、これらは、それぞれ横長の略矩形形状を有しているものとした。積層された複数の単セル40は、本発明における積層体に相当する。
【0027】
なお、図示は省略しているが、燃料電池スタック100内部には、水素や、空気や、冷却水を、それぞれ各単セル40に分配して供給するための供給マニホールド(水素供給マニホールド、空気供給マニホールド、冷却水供給マニホールド)や、各単セル40のアノードおよびカソードからそれぞれ排出されるアノードオフガスおよびカソードオフガスや、冷却水を集合させて燃料電池スタック100の外部に排出するための排出マニホールド(アノードオフガス排出マニホールド、カソードオフガス排出マニホールド、冷却水排出マニホールド)が形成されている。
【0028】
エンドプレート10a,10bは、剛性を確保するために、鋼等の金属によって形成されている。また、絶縁板20a,20bは、ゴムや、樹脂等の絶縁性部材によって形成されている。また、集電板30a,30bは、緻密質カーボンや、銅板などのガス不透過な導電性部材によって形成されている。集電板30a,30bには、それぞれ出力端子32a,32bが設けられており、燃料電池スタック100で発電した電力を出力可能となっている。
【0029】
A2.燃料電池スタックの締結構造、および、複数の単セルの外部拘束構造:
燃料電池スタック100において、複数の単セル40等は、スタック構造のいずれかの箇所における接触抵抗の増加による電池性能の低下を抑制したり、ガスの漏洩を防止したりするために、スタック構造の積層方向に所定の締結荷重が加えられた状態で締結されている。また、本実施例の燃料電池スタック100では、複数の単セル40の積層方向に対して垂直方向への位置ずれを防止するために、外部拘束がなされている。以下、本実施例における燃料電池スタック100の締結構造、および、複数の単セル40(積層体)の外部拘束構造について説明する。
【0030】
まず、燃料電池スタック100の締結構造について説明する。図2は、図1におけるA−A断面を示す説明図である。図1,2から分かるように、本実施例では、絶縁板20a,20b、集電板30a,30b、複数の単セル40の四隅に、それぞれ矩形形状を有する切り欠き部(例えば、図2(a)に示した切り欠き部45)が形成されている。そして、これらは、エンドプレート10a,10bの四隅に、それぞれ、四角柱状の締結部材50を配置して、スタック構造の積層方向に締結荷重を加えつつ、各締結部材50の両端部を、ボルト52によってエンドプレート10a,10bの四隅にそれぞれ固定することによって締結されている。
【0031】
なお、各切り欠き部45と締結部材50との間には、単セル40の製造上の寸法誤差や、複数の単セル40を積層する際の位置ずれや、組み付け性を考慮して、寸法dの隙間が設けられている。また、燃料電池スタック100における上述した締結荷重は、例えば、エンドプレート10aと、絶縁板20aとの間や、エンドプレート10bと、絶縁板20bとの間にスペーサを挿入し、このスペーサの厚さを調節したり、絶縁板20a,20bの厚さを調節したりすることによって調整可能である。また、締結部材50の長さは、予め規定されているので、燃料電池スタック100の積層方向の長さは、上述した締結荷重の大きさに関わらず、一定となる。
【0032】
次に、複数の単セル40の外部拘束構造について説明する。図2(a),(b)に示したように、本実施例では、積層された複数の単セル40(積層体)の、図示した上側側面、下側側面、左側側面、右側側面、すなわち、各単セル40の上側長辺、下側長辺、左側短辺、右側短辺の中央部には、外部拘束部材60,70,80,90とそれぞれ嵌合する、三角形の形状を有する嵌合凹部46,47,48,49が形成されている。
【0033】
また、図1に示したように、エンドプレート10aの上側長辺、下側長辺、左側短辺、右側短辺の中央部には、外部拘束部材60,70,80,90の一方の端部を、ボルトによって、それぞれ固定するための矩形形状を有する凹部12a,13a,14a,15aが形成されている。また、図2(a)に示したように、エンドプレート10bの上側長辺、下側長辺、左側短辺、右側短辺の中央部には、外部拘束部材60,70,80,90の他方の端部を、ボルトによって、それぞれ固定するための矩形形状を有する凹部12b,13b,14b,15bが形成されている。
【0034】
また、各外部拘束部材60,70,80,90の両端部を除く部位は、先に説明した三角形の形状を有する各嵌合凹部46,47,48,49の内側壁と当接して嵌合可能なように、台形の断面形状を有している。また、各外部拘束部材60,70,80,90の両端部は、エンドプレート10aに形成された凹部12a,13a,14a,15a、および、エンドプレート10bに形成された凹部12b,13b、14b、15bに嵌め込み可能なように、矩形の断面形状を有している。
【0035】
図2(c)に、図2(b)における領域Rを拡大して示した。図2(c)に示したように、本実施例では、嵌合凹部46、および、外部拘束部材60の嵌合凹部46は、それぞれ、先に説明した形状を有している。したがって、複数の単セル40に形成された嵌合凹部46に外部拘束部材60を嵌合し、積層体の側面に対して垂直方向に外力Fを加えたときには、嵌合凹部46の内壁面に、力fa,fbが、外力Fの方向とは異なる2方向に分散して作用する。説明は省略するが、これは、外部拘束部材70,80,90を、それぞれ、嵌合凹部47,48,49に嵌合する場合についても同様である。こうすることによって、積層された複数の単セル40に外部拘束部材60を固定する際に、外部拘束部材60について、一方向に外力Fを加えることによって、上記嵌合凹部内に外部拘束部材60を収めつつ、複数の単セル40に外部拘束部材60,70,80,90を容易に当接させることができる。
【0036】
なお、締結部材50、および、外部拘束部材60,70,80,90は、剛性を確保するため、鋼等の金属によって形成されている。そして、これらの表面には、絶縁性を有する皮膜がコーティングされている。こうすることによって、締結部材50、および、外部拘束部材60,70,80,90と、複数の単セル40との間の絶縁を確保することができる。
【0037】
以上説明した第1実施例の燃料電池スタック100によれば、4つの外部拘束部材60,70,80,90が、積層された複数の単セル40の積層方向に平行な面に、積層方向全体に亘って当接させた状態で、すなわち、4つの外部拘束部材60,70,80,90と複数の単セル40との間に隙間がない状態で固定することができる。したがって、燃料電池スタック100において、複数の単セル40の積層方向に対して垂直方向から衝撃力が加わったときであっても、単セル40の積層方向に対して垂直方向への位置ずれを抑制することができる。
【0038】
B.第2実施例:
図3は、本発明の第2実施例としての燃料電池スタック100Aの概略構成を示す斜視図である。この燃料電池スタック100Aは、先に説明した第1実施例の燃料電池スタック100とほぼ同じ構造を有している。ただし、図3に示したように、第2実施例の燃料電池スタック100Aでは、複数の外部拘束部材60A,70A,80A,90Aは、それぞれの両端部がワイヤWを用いて締め付けられることによって、複数の単セル40に固定されている。また、ワイヤWには、ワイヤWの締付力を調整するための調整器具Taが接続されている。こうすることによって、ワイヤWの締付力を容易に調整することができる。ワイヤW、および、調整器具Taは、それぞれ、本発明における環状の弾性部材、および、調整部に相当する。なお、本実施例では、複数の外部拘束部材60A,70A,80A,90Aは、これらの両端部を、ワイヤWを用いて締め付けることによって、複数の単セル40に固定されるものとしたが、他の部位にワイヤWを締め付けるようにしてもよい。
【0039】
以上説明した第2実施例の燃料電池スタック100Aによっても、先に説明した第1実施例の燃料電池スタック100と同様に、4つの外部拘束部材60A,70A,80A,90Aを、積層された単セル40の積層方向に平行な面に、積層方向全体に亘って当接させた状態で、すなわち、4つの外部拘束部材60A,70A,80A,90Aと複数の単セル40との間に隙間がない状態で固定することができる。したがって、燃料電池スタック100Aにおいて、複数の単セル40の積層方向に対して垂直方向から衝撃力が加わったときであっても、単セル40の積層方向に対して垂直方向への位置ずれを抑制することができる。
【0040】
また、第2実施例の燃料電池スタック100Aでは、ワイヤWによって、4つの外部拘束部材60A,70A,80A,90Aを締め付けているので、これらをほぼ均一の力で複数の単セル40に固定することができる。
【0041】
C.変形例:
以上、本発明のいくつかの実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様での実施が可能である。例えば、以下のような変形が可能である。
【0042】
C1.変形例1:
上記第1実施例、および、第2実施例では、複数の単セル40を積層させた積層体の積層方向に対して平行な面に、嵌合凹部46,47,48,49を設け、これらの内壁面にそれぞれ外部拘束部材60,70,80,90、または、外部拘束部材60A,70A,80A,90Aを当接させて嵌合させるものとしたが、本発明は、これに限られない。
【0043】
図4は、変形例1としての燃料電池スタックにおける複数の単セル40Bの外部拘束構造を模式的に示す説明図である。なお、ここでは、複数の単セル40Bの外部拘束構造についてのみ説明し、燃料電池スタック全体についての詳細な説明は省略する。
【0044】
図示するように、本変形例では、複数の単セル40Bは、それぞれ、六角形の平面形状を有している。そして、図4(a)に示したように、各単セル40Bにおいて、互いに対向する稜部40Be1,40Be2には、それぞれ、稜部40Be1と嵌合する嵌合凹部80Bdを有する外部拘束部材80B、および、稜部40Be2と嵌合する嵌合凹部90Bdを有する外部拘束部材90Bが当接して配置される(図4(b))。なお、外部拘束部材80B,90Bは、第1実施例の燃料電池スタック100と同様に、燃料電池スタックの両端部に配置されたエンドプレートに、図示しないボルトによって固定されるようにしてもよいし、第2実施例の燃料電池スタック100Aと同様に、図示しないワイヤによって固定されるようにしてもよい。
【0045】
以上説明した変形例1の外部拘束構造によっても、2つの外部拘束部材80B,90Bを、外部拘束部材80B,90Bと複数の単セル40Bとの間に隙間がない状態で固定することができる。したがって、燃料電池スタックにおいて、複数の単セル40Aの積層方向に対して垂直方向から衝撃力が加わったときであっても、単セル40Aの積層方向に対して垂直方向への位置ずれを抑制することができる。
【0046】
なお、上述した変形例1の燃料電池スタックでは、2つの外部拘束部材80B,90Bによって、複数の単セル40Bを外部拘束するものとしたが、これに限られず、例えば、複数の単セル40Bの全ての稜部に、それぞれ、外部拘束部材を当接させるようにしてもよい。また、単セル40Bの平面形状は、六角形に限られず、他の形状としてもよい。
【0047】
C2.変形例2:
図5は、変形例2としての燃料電池スタックにおける複数の単セル40Cの外部拘束構造を模式的に示す説明図である。なお、ここでは、複数の単セル40Cの外部拘束構造についてのみ説明し、燃料電池スタック全体についての詳細な説明は省略する。
【0048】
図示するように、本変形例では、複数の単セル40Cは、それぞれ、八角形の平面形状を有している。そして、図5(a)に示したように、各単セル40Cにおいて、互いに対向する側面46C,47C、および、側面48C,49Cには、それぞれ、外部拘束部材60C,70C、および、外部拘束部材80C,90Cが当接して配置される(図5(b))。なお、外部拘束部材60C,70C,80C,90Cは、第1実施例の燃料電池スタック100と同様に、燃料電池スタックの両端部に配置されたエンドプレートに、図示しないボルトによって固定されるようにしてもよいし、第2実施例の燃料電池スタック100Aと同様に、図示しないワイヤによって固定されるようにしてもよい。
【0049】
以上説明した変形例2の外部拘束構造によっても、4つの外部拘束部材60C,70C,80C,90Cを、外部拘束部材60C,70C,80C,90Cと複数の単セル40Cとの間に隙間がない状態で固定することができる。したがって、燃料電池スタックにおいて、複数の単セル40Cの積層方向に対して垂直方向から衝撃力が加わったときであっても、単セル40Cの積層方向に対して垂直方向への位置ずれを抑制することができる。
【0050】
なお、上述した変形例2の燃料電池スタックでは、4つの外部拘束部材60C,70C,80C,90Cによって、複数の単セル40Cを外部拘束するものとしたが、これに限られず、例えば、複数の単セル40Cの全ての側面に、それぞれ、外部拘束部材を当接させるようにしてもよい。また、単セル40Cの平面形状は、八角形に限られず、他の形状としてもよい。
【0051】
C3.変形例3:
上記第1実施例、および、第2実施例では、嵌合凹部46,47,48,49の形状は、三角形であるものとしたが、本発明は、これに限られず、他の形状としてもよい。ただし、嵌合凹部46,47,48,49は、外部拘束部材60,70,80,90がそれぞれ嵌合され、外部拘束部材60,70,80,90に、積層体の積層方向に平行な面に対して垂直方向に外力が加えられたときに、この外力が、外力の方向とは異なる少なくとも2方向に分散して作用する内壁面を有するようにすることが好ましい。また、上述した嵌合凹部の数は、4つに限られず、任意に設定可能である。
【0052】
C4.変形例4:
上記第1実施例、および、第2実施例では、複数の単セル40を、予め規定された長さを有する締結部材50を用いて締結するものとしたが、本発明は、これに限られない。例えば、燃料電池スタック100,100Aにおける単セル40の積層方向の一方の端部に皿バネを配置し、その皿バネの弾性力によって、所定の締結力で複数の単セル40を締結する締結構造を適用するようにしてもよい。
【0053】
C5.変形例5:
上記第1実施例、および、第2実施例では、燃料電池スタックの締結構造、および、複数の単セル40の外部拘束構造を別個に構成するものとしたが、両者を共通の部材を用いて構成するようにしてもよい。すなわち、例えば、燃料電池スタック100において、外部拘束部材60,70,80,90を用いて、燃料電池スタック100の締結構造を構成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1実施例としての燃料電池スタック100の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1におけるA−A断面を示す説明図である。
【図3】本発明の第2実施例としての燃料電池スタック100Aの概略構成を示す斜視図である。
【図4】変形例1としての燃料電池スタックにおける複数の単セル40Bの外部拘束構造を模式的に示す説明図である。
【図5】変形例2としての燃料電池スタックにおける複数の単セル40Cの外部拘束構造を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0055】
100,100A…燃料電池スタック
10a,10b…エンドプレート
12a,13a,14a,15a,12b,13b、14b、15b…凹部
20a,20b…絶縁板
30a,30b…集電板
32a,32b…出力端子
40,40A,40B,40C…単セル
45…切り欠き部
46,47,48,49…嵌合凹部
40Be1,40Be2…稜部
46C,47C,48C,49C…側面
50…締結部材
52…ボルト
60,70,80,90…外部拘束部材
60A,70A,80A,90A…外部拘束部材
80B,90B…外部拘束部材
80Bd,90Bd…嵌合凹部
60C,70C,80C,90C…外部拘束部材
W…ワイヤ
Ta…調整器具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックであって、
複数の単セルを積層させた積層体と、
前記積層体において、前記複数の単セルの積層方向に対して垂直方向への前記単セルの位置ずれを抑制するための外部拘束部材であって、前記積層体の前記積層方向に対して平行な面に、前記積層方向全体に亘って当接させた状態で、前記積層体に固定された複数の外部拘束部材と、
を備える燃料電池スタック。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池スタックであって、
前記積層体の前記積層方向に対して平行な面には、前記複数の外部拘束部材とそれぞれ嵌合する複数の嵌合凹部が形成されている、燃料電池スタック。
【請求項3】
請求項2記載の燃料電池スタックであって、
前記嵌合凹部は、前記外部拘束部材が嵌合され、該外部拘束部材に、前記積層体の前記積層方向に対して垂直方向に外力が加えられたときに、該外力が、該外力の方向とは異なる少なくとも2方向に分散して作用する内壁面を有する、燃料電池スタック。
【請求項4】
請求項1記載の燃料電池スタックであって、
前記積層体は、前記積層方向に対して平行な稜部を有しており、
前記外部拘束部材は、前記稜部と嵌合する嵌合凹部を備える、燃料電池スタック。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の燃料電池スタックであって、
前記複数の外部拘束部材は、環状の弾性部材を用いて前記積層体に締め付けられることによって、前記積層体に固定されている、燃料電池スタック。
【請求項6】
請求項5記載の燃料電池スタックであって、さらに、
前記線状の弾性部材による前記複数の外部拘束部材の締付力を調整するための調整部を備える、燃料電池スタック。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の燃料電池スタックであって、
前記外部拘束部材は、金属からなり、
前記外部拘束部材と前記積層体との間には、絶縁性部材が介装されている、燃料電池スタック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−70674(P2009−70674A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237624(P2007−237624)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】