説明

燃料電池スタック

【課題】組付け精度の良い金属セパレータを備える燃料電池スタックを提供する
【解決手段】発電に寄与する領域に凹凸形状からなるガス流路をプレス成形した金属板からなるセパレータを、電極部材3の両面にそれぞれ配置してなる単セル2を、複数積層して構成した燃料電池スタック1であって、積層方向で相隣接するアノード側のセパレータのガス流路51とカソード側のセパレータのガス流路62を、二つ折りに折り曲げられる一枚の金属板であるセパレータ部材4の一方側と、他方側とに振り分けて形成し、セパレータ部材4を二つ折りにして相隣接するカソード側のセパレータ部5とアノード側のセパレータ部6とを一体に形成したことを特徴とする燃料電池スタックとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、従来の金属製のセパレータを採用した固体高分子型の燃料電池スタックの断面を模式的に示した図である。
【0003】
固体高分子型の燃料電池スタック100は、2枚の金属セパレータ(アノード側セパレータ103、カソード側セパレータ104)の間に膜電極接合体(MEA)102を挟んで構成した単セル101を、多数積層させて構成される(図9の(a)参照)。
【0004】
このような従来の燃料電池スタック100では、金属セパレータの一方の面の発電に寄与する領域に、凹凸形状からなるガス流路106、107が形成されており、各単セル101において、膜電極接合体102を挟んで一方側の金属セパレータ(アノード側セパレータ103)のガス流路106に水素を、他方側のセパレータ(カソード側セパレータ104)のガス流路107に酸素を、それぞれ供給することで、起電力が発生するようになっている。
【0005】
ガス流路106、107を備える金属セパレータ(アノード側セパレータ103、カソード側セパレータ104)は、一般に金属板のプレス加工により製造される。
しかし、プレス加工を行う際に、金属セパレータに反りやシワが生じることや、ガス流路106、107を区画する溝の深さh(図9の(a)参照)に寸法上のバラツキなどが発生することがある。
【0006】
例えば、図9の(b)に示すように、ガス流路107を区画する溝に深さhの部分と、深さh’の部分が発生すると、隣接する単セル101において、アノード側セパレータ103の突部103aとカソード側セパレータ104の突部104aとが接触しない部分が生じ、アノード側セパレータ103とカソード側セパレータ104の間に隙間Sが生じることがある。
【0007】
かかる場合、アノード側セパレータ103とカソード側セパレータ104との接触面積が小さくなって、単セル101間の接触抵抗が増大することがある。
また、隙間Sに起因して、単セル101同士の組付け性が悪くなり、膜電極接合体102と、アノード側セパレータ103やカソード側セパレータ104との接合部や、アノード側セパレータ103とカソード側セパレータ104との接合部などから、水素ガスまたは酸素ガスの漏れが発生する場合がある。
【0008】
特許文献1に開示された固体高分子型の燃料電池スタック100’では、隣接する金属セパレータ(アノード側セパレータ103、カソード側セパレータ104)において、ガス流路を形成する凹凸形状の溝の突部103a、104a同士を、低融点合金シート(例えば、半田シート)や、溶接(例えばシーム溶接)で接合することにより、上記の問題に対する対策を施している(図9の(c)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−114444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1に開示された対策では、突部103a、104a同士を接合する際に、溶接などに起因する熱が金属セパレータに作用するので、金属セパレータに新たな熱歪みが発生して、上記した隙間などの問題が新たに起こる場合がある。
さらに、突部103a、104a同士を溶接で接合した場合には、接合後に金属セパレータ(アノード側セパレータ103、カソード側セパレータ104)の位置関係を修正できないので、金属セパレータを順次積層して燃料電池スタックを組み立てる際に、燃料電池スタックにおける金属セパレータの組付け精度が悪くなることがある。
【0011】
そのため、上記の問題点に鑑み、組付け精度の良い金属セパレータを備える燃料電池スタックを提供できるようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、発電に寄与する領域に凹凸形状からなる流路をプレス成形した金属板からなるセパレータを高分子電解質膜の両面にそれぞれ配置してなる単セルを、複数積層して構成した燃料電池スタックあって、
前記積層方向で相隣接するアノード側のセパレータの流路とカソード側のセパレータの流路を、二つ折りに折り曲げられる一枚の金属板の一方側と、他方側とに振り分けて形成し、前記金属板を二つ折りにして前記相隣接するカソード側のセパレータとアノード側のセパレータとを一体に形成した構成とした。
【発明の効果】
【0013】
このように構成すると、燃料電池スタックにおいて隣接するカソード側のセパレータとアノード側のセパレータとが一体に形成されているので、単セルを積層して燃料電池スタックを構成する際に、積層方向で隣接する単セル2を位置精度良く重ねることができる。
これにより、組付け精度の良い金属セパレータを備える燃料電池スタックを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態にかかる燃料電池スタックの斜視図である。
【図2】実施の形態にかかる燃料電池スタックの一部を分解した分解斜視図である。
【図3】実施の形態にかかる燃料電池スタックの断面の一部を模式的に示した図である。
【図4】一枚板からなる金属セパレータを説明する図である。
【図5】セパレータ部材を説明する図である。
【図6】セパレータ部材の組付けを説明する図である。
【図7】セパレータ部材の断面を模式的に示した図である。
【図8】セパレータ部材の断面を模式的に示した図である。
【図9】従来例にかかる燃料電池スタックを説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、実施の形態にかかる燃料電池スタック1を模式的に示した斜視図である。図2は、燃料電池スタック1の分解斜視図である。図3は、図1における面Aで燃料電池スタック1を切断した断面の一部を拡大して模式的に示した図である。
なお、図2では、一枚の金属板を折り曲げて形成したセパレータ部材4のうちのひとつを上下に分断して、セパレータ部材4のアノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6との間に配置された絶縁部材70とシール部材71、71とを示している。また、図3では、断面形状を判りやすく表現するために、各部材の厚みを誇張して表記してある。
【0016】
図1および図2に示すように、燃料電池スタック1は、上端の一枚板からなるアノード側セパレータ8と、下端の一枚板からなるカソード側セパレータ9との間に、アノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6とが一体に形成されたセパレータ部材4と、シール部材31、31の間に膜電極接合体30を挟み込んで構成した電極部材3と、を交互に重ねて配置した積層構造を有している。
【0017】
図2および図3に示すように、この燃料電池スタック1における単セル2は、セパレータ部材4のアノード側セパレータ部5と、隣接するセパレータ部材4のカソード側セパレータ部6との間に、電極部材3を挟み込んだ基本構成を有している。
【0018】
電極部材3は、シール部材31、31の間に膜電極接合体30を挟み込んで構成されており、膜電極接合体30では、フイルム状の固体高分子電解質膜300の一方の面にアノード電極301が、他方の面にカソード電極302が、それぞれ設けられている。
【0019】
平面視において矩形形状を有する固体高分子電解質膜300は、シール部材31よりも僅かに小さい外形で形成されており、実施の形態では、例えば水素イオンを透過可能な高分子電解質膜で構成される。
【0020】
アノード電極301とカソード電極302は、それぞれ平面視において矩形形状を有しており、同一面積で形成される。
アノード電極301は、炭素粉などで担持されたアノード触媒とガス拡散層を備えて構成され、カソード電極302は、炭素粉などで担持されたカソード触媒とガス拡散層を備えて構成される。
【0021】
シール部材31は、平面視において矩形形状を有しており、その中央部には、電極(アノード電極301、カソード電極302)と整合する形状の開口部311が形成されている。
【0022】
電極部材3において、膜電極接合体30の電極(アノード電極301、カソード電極302)は、シール部材31、31開口部311から露出しており、単セル2が組付けられた状態において、開口部311から露出するアノード電極301およびカソード電極302は、アノード側セパレータ部5およびカソード側セパレータ部6にそれぞれ接触させた状態で保持される(図3参照)。
【0023】
この状態において、シール部材31の開口部311を囲む周縁部312(図2参照)は、アノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6との間で圧接保持されるようになっている。
そのため、燃料電池スタック1が組み立てられた状態において、各単セル2におけるアノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6との間がシール部材31、31により封止されて、燃料ガスや酸化剤ガスが、アノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6との間から単セル2の外部に漏出しないようにされている。
【0024】
図4は、アノード側セパレータ8を説明する図であり、(a)は、アノード側セパレータ8を、電極部材3側から見た平面図であり、(b)は、(a)におけるA−A断面を模式的に示した図であり、(c)は、(a)におけるB−B断面を模式的に示した図であり、(d)は、(a)におけるC−C断面を模式的に示した図である。
【0025】
燃料電池スタック1において上端と下端に位置するアノード側セパレータ8とカソード側セパレータ9(図2参照)は、それぞれ一枚の金属板のプレス成形で形成された同一形状の部材である。そこで、以下においては、アノード側セパレータ8について説明をし、カソード側セパレータ9の説明は省略する。
【0026】
アノード側セパレータ8は、平面視において矩形形状を有しており、電極部材3との対向面である表面8aには、金メッキ処理が施されていると共に、電極部材3から離れる方向に窪んだガス流路81がプレス成形により形成されている。
なお、プレス成形によりガス流路81を形成すると、アノード側セパレータ8の裏面8bでは、ガス流路81の部分が突出することになる。よって、図面においてアノード側セパレータ8の表面8aの窪んだガス流路は、符号81を用いて表記し、裏面8bの突出したガス流路の部分は、符号81’で表記する。
【0027】
ガス流路81は、アノード電極301が接触する矩形形状の発電寄与領域82と、発電寄与領域82における対角となる位置から、互いに離れる方向に延びるガス給排路83、84と、を備える。
【0028】
発電寄与領域82には、アノード側セパレータ8の幅方向(ガス給排路83、84に直交する方向)に沿って延びる凸部85が、所定間隔で複数設けられており、この発電寄与領域82には、凸部85と、凸部85、85の間の凹溝部86とにより、いわゆるコルゲート形状の凹凸が形成されている。
【0029】
この発電寄与領域82の凸部85には、燃料電池スタック1が組付けられた状態で、膜電極接合体30のアノード電極301が全面に渡って接触し、アノード電極301と、凹溝部86との間に、燃料ガス(水素H)を通流させるガス流路R1が形成されるようになっている。
【0030】
ガス給排路83、84は、発電寄与領域82から離れる方向に延出して、互いに平行に延びており、これらガス給排路83、84の先端側には、アノード側セパレータ8を厚み方向に貫通して給排口83a、84aが形成されている。
燃料電池スタック1では、アノード側セパレータ8の一方の給排口83a、84aから、ガス流路81内に燃料ガスが供給されると、燃料ガスは、発電寄与領域82を通って、他方の給排口84a、83aから排出されるようになっている。
【0031】
実施の形態では、発電寄与領域82における凸部85の長さLが、ガス給排路83、84の延長上に及ばない長さに設定されている。ガス給排路83、84から発電寄与領域82に向かう燃料ガスの流れが、凸部85により阻害されないようにすることで、発電寄与領域82に供給された燃料ガスが、各凹溝部86にほぼ均等に分散されるようにしている。
【0032】
ガス給排路83、84における発電寄与領域82に接する位置には、それぞれガス給排路83、84に突出する突起83b、84bが設けられている。
実施の形態では、図中鎖線で示す範囲に膜電極接合体30のアノード電極301が接触しており、この突起83b、84bは、アノード側セパレータ8をセパレータ部材4に積層して燃料電池スタック1を組み立てた際に、膜電極接合体30が変形してガス給排路83、84が変形することを防止するために設けられている。
【0033】
さらに、アノード側セパレータ8では、発電寄与領域82を挟んで対角となる位置に貫通孔87、87が設けられている。平面視において貫通孔87、87と前記した給排口83a、84aは、四角形の4つの頂点となる位置に位置している。
【0034】
図4の(c)、(d)に示すように、燃料電池スタック1が組付けられると、貫通孔87、87や給排口83a、84aと整合する位置に、膜電極接合体30の貫通孔303と、シール部材31の貫通孔312aとが配置されて、燃料ガスや酸化剤ガスの導入口(導出口)が確保されるようになっている。
なお、符号88は、燃料電池スタック1と外部端子とを接続するための端子片を示している。
【0035】
図5は、セパレータ部材4を説明する図であり、(a)は、金属製の一枚板の一方側と他方側に、それぞれアノード側セパレータ部5のガス流路51と、カソード側セパレータ部6のガス流路61とが、プレス成形により形成された状態を示す平面図である。(b)は、(a)に示す金属製の一枚板を断面コ字形状に折り曲げて、燃料電池スタック1の組付けに用いられるセパレータ部材4としたものを、アノード側セパレータ部5側から見た平面図である。(c)は、(b)におけるA−A断面図であって、アノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6の断面と共に、これらの間に設けられたクッション部材7の断面を示した図である。なお、(c)においては、セパレータ部材4に隣接する金属セパレータ部材のアノード側セパレータ部5と、カソード側セパレータ部6が仮想線で示されている。
【0036】
図6は、セパレータ部材4の組付けを説明する図であり、シール部材71、71の間に弾性材料からなる絶縁部材70を挟み込んで構成したクッション部材7を、アノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6の裏面5b、6bの間に配置して、セパレータ部材4を形成する様子が示されている。
図7は、図6における面Aでセパレータ部材4を切断した断面図である。
【0037】
図5および図6に示すように、セパレータ部材4は、アノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6が、一方側と他方側に振り分けて画成された金属製の一枚板を、断面略コ字形状に折り曲げて、アノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6との間に、後記するクッション部材7を介在させて形成される。
【0038】
図5の(a)に示すように、アノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6の電極部材3との対向面である表面5a、6aには、金メッキが施されていると共に、電極部材3から離れる方向に窪んだガス流路51、61がプレス成形により形成されている。
なお、アノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6の金メッキが施されていない裏面5b、6bには、ガス流路81の部分が突出しているので、図面においてアノード側セパレータ部5の表面5aとカソード側セパレータ部6の表面6aの窪んだガス流路は、符号51、61を用いて表記し、裏面5b、6bの突出したガス流路は、符号51’、61’で表記する。
【0039】
ガス流路51、61は、矩形形状の発電寄与領域52、62と、発電寄与領域52、62における対角となる位置から、互いに離れる方向に延びるガス給排路53、54、63、64と、を備える。
ここで、発電寄与領域52、62には、それぞれアノード電極301とカソード電極302が接触するようになっており、発電寄与領域52、62は、平面視においてアノード電極301、カソード電極302と略整合する矩形形状を成している。
【0040】
発電寄与領域52、62には、アノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6の幅方向(ガス給排路53、54、63、64に直交する方向)に沿って延びる凸部55、65が、所定間隔で複数設けられており、この発電寄与領域52、62には、凸部55、65と、凸部55、65の間の凹溝部56、66により、いわゆるコルゲート形状の凹凸が形成されている。
【0041】
この発電寄与領域52、62の凸部55、65には、燃料電池スタック1が組付けられた状態において、膜電極接合体30のアノード電極301とカソード電極302とが、それぞれ全面に渡って接触する(図5の(c)参照)。
これにより、アノード側セパレータ部5の凹溝部56と、アノード電極301との間に、燃料ガス(水素H)を通流させるガス流路R1が形成され、カソード側セパレータ部6の凹溝部66と、カソード電極302との間に、酸化剤ガス(酸素O)を通流させるガス流路R2が形成される。
【0042】
ガス給排路53、54、63、64は、発電寄与領域52、62から離れる方向に延出して、互いに平行に延びており、ガス給排路53、54、63、64の先端側には、セパレータ部材4を厚み方向に貫通して給排口53a、54a、63a、64aが形成されている。
燃料電池スタック1では、一方の給排口53a、63aから、ガス給排路53、63内に燃料ガス(または酸化剤ガス)が供給されると、燃料ガス(または酸化剤ガス)は、発電寄与領域52、62を通って、他方のガス給排路54、64の給排口54a、64aから排出されるようになっている。
【0043】
実施の形態では、発電寄与領域52、62における凸部55、65の長さLが、ガス給排路53、54、63、64の延長上に及ばない長さに設定されている。ガス給排路53、54、63、64から発電寄与領域52、62に向かう燃料ガスまたは酸化剤ガスの流れが、凸部55、65により阻害されないようにすることで、発電寄与領域52、62に供給された燃料ガス(または酸化剤ガス)が、各凹溝部56、66にほぼ均等に分散されるようにしている。
【0044】
ガス給排路53、54における発電寄与領域52に接する位置と、ガス給排路63、64における発電寄与領域62に接する位置には、それぞれガス給排路53、54、63、64に突出する突起53b、54b、63b、64bが設けられている。
実施の形態では、図中鎖線で示す範囲に膜電極接合体30のアノード電極301とカソード電極302が接触しており、これら突起53b、54bと突起63b、64bは、燃料電池スタック1の組み立てにあたり、セパレータ部材4同士を積層した際に、膜電極接合体30が変形してガス給排路53、54が変形することを防止するために設けられている。
【0045】
さらに、アノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6では、発電寄与領域52、62を挟んで対角となる位置に貫通孔57、67が設けられている。アノード側セパレータ部5において、貫通孔57、57と前記した給排口53a、54aは、四角形の4つの頂点となる位置に位置している。カソード側セパレータ部6において貫通孔67、67と前記した給排口63a、64aは、四角形の4つの頂点となる位置に位置している。
【0046】
実施の形態では、貫通孔57は、金属板を折り曲げてセパレータ部材4を形成した際に、コ字形状の接続部4aを挟んで隣接するカソード側セパレータ部6の給排口63a、64aに整合する位置に形成されている。
貫通孔67は、金属板を折り曲げてセパレータ部材4を形成した際に、コ字形状の接続部4aを挟んで隣接するアノード側セパレータ部5の給排口53a、54aに整合する位置に形成されている。
【0047】
よって、金属板を折り曲げてセパレータ部材4を形成すると、例えば図7に示すように、貫通孔57と、この貫通孔57に整合する位置に配置された給排口64aとにより、燃料ガスや酸化剤ガスの導入口(導出口)が、上下で隣接する単セル2の間で確保されるようになっている。
【0048】
図6に示すように、セパレータ部材4において、アノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6の間に位置するクッション部材7は、シール部材71、71の間に、絶縁部材70を挟み込んで形成される。
【0049】
シール部材71の中央部には、アノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6の裏面5b、6b側で突出するガス流路51’、61’との干渉を避けるための開口部710が形成されている。
さらに、シール部材71では、セパレータ部材4の貫通孔57、67と整合する位置に、貫通孔711が形成されている。
【0050】
絶縁部材70は、平面視において矩形形状を有しており、シール部材71の貫通孔711に整合する位置に、貫通孔701が形成されている。
絶縁部材70は、シール部材71、71の間に挟み込まれた状態で、その中央部が、シール部材71の開口部710内に露出しており、この露出する中央部には、アノード側セパレータ部5およびカソード側セパレータ部6のガス流路の裏側51’、61’が当接するようになっている。
実施の形態では、ガス流路51、61の凹凸がプレス成形により形成されており、かかる凹凸にバラツキが生ずる場合がある。そこで、絶縁部材70は、クッション性のある絶縁材料から構成されており、ガス流路の裏側51’、61’の一部に、他の部分よりも絶縁部材側に突出する部分が生じても、かかる突出が絶縁部材70にクッション性をもたらす厚み内で吸収されるようになっている。
【0051】
図8の(a)に示すように、シール部材71の開口部710内に位置する絶縁部材70の中央部は、アノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6との間に配置された状態において、アノード側セパレータ部5およびカソード側セパレータ部6の凹溝部56、66の底部56a、66aにより圧縮された状態で保持されるようになっており、アノード側セパレータ部5の裏面5bとカソード側セパレータ部6の裏面6bとが、直接接触しないようにするために設けられている。
【0052】
実施の形態にかかる燃料電池スタック1では、隣接する単セル2における一方の単セル2のアノード側セパレータ(アノード側セパレータ部5)と他方の単セルのカソード側セパレータ(カソード側セパレータ部6)とが一体に形成されたセパレータ部材4を採用している。
そのため、アノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6とはコ字形状の接続部4aを介して電気的に接続されており、従来の燃料電池スタックのように、アノード側セパレータの凹溝部の底部(図8の(a)における符号56aに相当)とカソード側セパレータの凹溝部の底部(図8の(a)における符号66aに相当)とを直接接触させて、単セル2間の接触抵抗を小さくする必要がない。
【0053】
そのため、アノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6の裏面5b、6bには、接触抵抗を小さくするための金メッキが施されていない。
【0054】
さらに、セパレータ部材4において、アノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6における凹溝部56、66の深さh2が、コ字形状の接続部4aの高さh1との関係で、h1>h2+h2の関係を満たすように設定されている。
【0055】
そのため、例えばプレス成形により形成された凹溝部66の深さに、一部深さh2’(ここで、h2’>h2)となる部分が生じても、かかる深さにおける誤差が、絶縁部材70の厚みにより吸収できる場合には、アノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6の凹溝部56、66とが接触して、アノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6の間に隙間が生じることを防止できるようになっている。
【0056】
さらに、アノード側セパレータ部5の凹溝部56の底部56aと、カソード側セパレータ部6の凹溝部66の底部66aとを直接接触させる必要がないので、底部56a、66a同士が所定面積で接触するようにするために、底部56a、66aが互いに平行な面となるように、プレス成形でガス流路51、52を形成するする必要がない。
よって、アノード電極301とカソード電極302との間にガス流路R1、R2が確保できる程度の凹凸が形成できれば、単セル2としての機能が発揮されるので、例えば、図8の(c)に示すように、断面弧状の凹凸で、絶縁部材70を把持するようにすることもでき、プレス精度の要求が簡単になる。
【0057】
以上の通り、実施の形態では、発電に寄与する領域(発電寄与領域)に凹凸形状からなるガス流路をプレス成形した金属板からなるセパレータを、電極部材3の両面にそれぞれ配置してなる単セル2を、複数積層して構成した燃料電池スタック1であって、
積層方向で相隣接するアノード側のセパレータのガス流路51とカソード側のセパレータのガス流路62を、二つ折りに折り曲げられる一枚の金属板であるセパレータ部材4の一方側と、他方側とに振り分けて形成し、セパレータ部材4を二つ折りにして相隣接するカソード側のセパレータ部5とアノード側のセパレータ部6とを一体に形成したことを特徴とする燃料電池スタックとした。
【0058】
このように構成すると、アノード側セパレータ部5と、隣接する単セル2のカソード側セパレータ部6とがセパレータ部材4として一体に形成されているので、単セルを積層して燃料電池スタックを構成する際に、積層方向で隣接する単セル2を位置精度良く重ねることができる。これにより、燃料電池スタック1の組み立て際し、単セル2の積層高さが高くなるにつれて、単セルが徐々に傾いて積層された状態になることを好適に防止できるので、燃料電池スタック1の組み立て精度が向上する。
【0059】
さらに、燃料電池スタック1において隣接するアノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6とがセパレータ部材4として一体に形成されており、アノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6とが、従来の燃料電池スタックのように接触によらず、セパレータ部材4の接続部4aを介して直接接続されている。すなわち、アノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6とが一体化することにより、従来の燃料電池スタックよりも、単セル間の接触抵抗を低減させて、発電性能を向上させることができる。
また、セパレータ部材4同士が、直接接触した状態で積層されるのではなく、セパレータ部材4の間の電極部材3のシール部材31、31を介した状態で積層されるので、燃料電池スタック1を組み付けた際に、シール部材31、31に作用する面圧が高くなるので、セパレータ部材4の間から燃料ガス等が漏出することを好適に防止できる。
【0060】
特に、プレス成形により、アノード側セパレータ部5のガス流路51とカソード側セパレータ部6のガス流路61が画成された金属製の一枚板を、断面略コ字形状に折り曲げて、アノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6とが一体に形成されたセパレータ部材4としたので、アノード側セパレータとカソード側セパレータとが別々に形成される従来の燃料電池スタックに比べて、プレス工数が少なくなって、燃料電池スタックの作製コストの低減が可能になる。
【0061】
アノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6とが一体に形成されたセパレータ部材4では、アノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6との間に、弾性部材からなる絶縁部材70を備えるクッション部材7が設けられている構成とした。
【0062】
このように構成すると、隣り合う単セル2におけるアノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6との接触が絶縁部材70により阻止されているので、従来、単セル2間の接触抵抗を低減させるために設けていた金メッキを、アノード側セパレータ部5の裏面5bとカソード側セパレータ部6の裏面6bに設ける必要がないので、より安価に、燃料電池スタック1を提供できる。
【0063】
さらに、アノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6との間の離間距離h1は、アノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6の凹溝部56、66の底部56a、66a同士が互いに接触しない距離に設定されており、セパレータ部材4では、弾性材料からなる絶縁部材70がアノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6との間に挟み込まれた状態で配置されている構成とした。
【0064】
このように構成すると、アノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6の凹溝部56、66の深さh2にバラツキが生じても、弾性材料からなる絶縁部材70によりバラツキの影響が吸収されるので、凹溝部56、66の底部同士が接触して、燃料電池スタック1の組付け精度が悪化することがない。
【0065】
また、アノード側セパレータ部5とカソード側セパレータ部6とが、凹溝部56、66の底部56a、66a同士を互いに接触させず、断面コ字形状の接続部4aを介して電気的に接続されている構成とした。
【0066】
このように構成すると、凹溝部56、66の底部56a、66a同士を接触させて、アノード側セパレータとカソード側セパレータとを電気的に接続していた従来の燃料電池スタックのように、底部56a、66a同士の接触面を精度良く確保する必要がない。
よって、図8の(c)に示すように、アノード電極301とカソード電極302との間にガス流路R1、R2が確保できる程度の凹凸が形成できれば、単セル2としての機能が発揮されるので、プレス成形により凹凸形状のガス流路51、52を形成する際のプレス精度が緩和され、より安価に、燃料電池スタック1を提供できる。
【符号の説明】
【0067】
1 燃料電池スタック
2 単セル
3 電極部材
4 セパレータ部材
4a 接続部
5 アノード側セパレータ部
5a 表面
5b 裏面
6 カソード側セパレータ部
6a 表面
6b 裏面
7 クッション部材
8 アノード側セパレータ
8a 表面
8b 裏面
9 カソード側セパレータ
30 膜電極接合体
31 シール部材
51 ガス流路
51’ ガス流路(裏側)
52 発電寄与領域
53 ガス給排路
54 ガス給排路
55 凸部
56 凹溝部
57 貫通孔
56a 底部
61 ガス流路
61’ ガス流路(裏側)
62 発電寄与領域
63 ガス給排路
64 ガス給排路
65 凸部
66 凹溝部
66a 底部
67 貫通孔
70 絶縁部材
71 シール部材
81 ガス流路
81’ ガス流路(裏側)
82 発電寄与領域
83 ガス給排路
84 ガス給排路
91 ガス流路
100 燃料電池スタック
100’燃料電池スタック
101 単セル
102 膜電極接合体
103 アノード側セパレータ
104 カソード側セパレータ
106 ガス流路
107 ガス流路
300 固体高分子電解質膜
301 アノード電極
302 カソード電極
R1 ガス流路
R2 ガス流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電に寄与する領域に凹凸形状からなる流路をプレス成形した金属板からなるセパレータを高分子電解質膜の両面にそれぞれ配置してなる単セルを、複数積層して構成した燃料電池スタックであって、
前記積層方向で相隣接するアノード側のセパレータの流路とカソード側のセパレータの流路を、二つ折りに折り曲げられる一枚の金属板の一方側と、他方側とに振り分けて形成し、前記金属板を二つ折りにして前記相隣接するカソード側のセパレータとアノード側のセパレータとを一体に形成したことを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項2】
前記一体に形成されたカソード側のセパレータとアノード側セパレータとの間には、電気絶縁部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池スタック。
【請求項3】
カソード側のセパレータとアノード側セパレータと離間距離は、前記カソード側のセパレータと前記アノード側セパレータとが、前記凹凸形状からなる流路同士を互いに接触させない距離に設定されており、
前記電気絶縁部材は、クッション性のある電気絶縁材料より構成されて、前記カソード側のセパレータと前記アノード側セパレータとの間で挟み込まれた状態で配置されていることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池スタック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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