説明

燃料電池セル

【課題】シール部と支持基板との接合強度を向上可能な燃料電池セルを提供する。
【解決手段】燃料電池セルは、内部に流路を有する平板状の支持基板と、支持基板上に配置され、燃料極活性層と、空気極と、燃料極活性層と空気極との間に配置される固体電解質層と、を有する発電部と、支持基板の外周を覆うシール部と、支持基板とシール部との間に配置されるアルミナ粒子と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池セルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題及びエネルギー資源の有効利用の観点から、燃料電池に注目が集まっている。一般的に、内部に流路を有する平板状の燃料電池セルは、流路が形成される支持基板としても機能する燃料側電極と、空気極と、燃料側電極と空気極の間に配置される固体電解質層と、を有する(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の燃料電池セルでは、固体電解質層の一部が、燃料側電極を覆うことによって燃料側電極を外部から遮断するシール部として機能している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−200761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような平板状のセルにおいては、セル側端部に応力が集中する傾向がある。そのため、燃料側電極とシール部である固体電解質層との接合強度が低ければ、共焼成時の残留歪や還元/酸化サイクル時の膨張収縮によって、両者の接合界面に剥離が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、上述の状況に鑑みてなされたものであり、シール部と支持基板との接合強度を向上可能な燃料電池セルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る燃料電池セルは、内部に流路を有する平板状の支持基板と、支持基板上に配置され、燃料極活性層と、空気極と、燃料極活性層と空気極との間に配置される固体電解質層と、を有する発電部と、支持基板の外周を覆うシール部と、支持基板とシール部との間に配置されるアルミナ粒子と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シール部と支持基板との接合強度を向上可能な燃料電池セルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施形態に係る縦縞型の固体酸化物型燃料電池セルの構成を示す断面図
【図2】支持基板と固体電解質層との界面付近の断面を示すSEM画像
【図3】支持基板と固体電解質層との界面付近におけるAl濃度分布を示す解析画像
【図4】支持基板と固体電解質層との界面付近における酸素濃度分布を示す解析画像
【図5】第2実施形態に係る横縞型の固体酸化物型燃料電池セルの構成を示す斜視図
【図6】図5のA−A断面図
【図7】燃料電池セルの構成を示す断面図
【図8】燃料電池セルの構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なっている場合がある。従って、具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0010】
以下の実施形態では、燃料電池セルの一例として固体酸化物型燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)を挙げて説明する。
【0011】
1.第1実施形態
第1実施形態では、いわゆる縦縞型の固体酸化物型燃料電池セルについて説明する。
【0012】
《縦縞型の固体酸化物型燃料電池セル100の構成》
縦縞型の固体酸化物型燃料電池セル(以下、「セル」と略称する。)100の構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、セル100の構成を示す断面図である。
【0013】
セル100は、セラミックス材料によって構成される平板である。セル100は、例えば、1mm〜10mm程度の厚みと、10mm〜100mm程度の幅と、50mm〜500mm程度の長さとを有する。複数のセル100を直列に接続することによって、燃料電池を構成するセルスタックを形成することができる。
【0014】
図1に示すように、セル100は、支持基板10と、インターコネクタ20と、発電部30と、を備える。発電部30は、燃料極活性層31と、固体電解質層32と、空気極33と、を有する。また、後述するように、支持基板10と固体電解質層32との間には、アルミナ粒子が配置されている。
【0015】
(支持基板10)
支持基板10は、扁平断面を有する平板である。支持基板10は、例えば、1mm〜10mm程度の厚みを有する。
【0016】
支持基板10は、発電部30で発生する電流をインターコネクタに伝達させるための導電性と、燃料ガスを発電部まで透過させるためのガス透過性とを有する。支持基板10の内部には、図1に示すように、複数のガス流路11が形成されている。
【0017】
支持基板10は、第1平坦面10Aと、第2平坦面10Bと、第1湾曲側面10Cと、第2湾曲側面10Dと、を有する。第1平坦面10Aと第2平坦面10Bとが互いに対向し、第1湾曲側面10Cと第2湾曲側面10Dとは互いに対向する。第1平坦面10A、第2平坦面10B、第1湾曲側面10Cおよび第2湾曲側面10Dは、互いに繋がっており、支持基板10の外周面を構成している。
【0018】
支持基板10は、触媒活性金属及びその酸化物のいずれかと、触媒金属及びその酸化物との反応物を生成しない無機骨材とを含有する。触媒金属としてはFe、Co、Niなどが挙げられる。支持基板10は、酸化ニッケル(NiO)及び/又はニッケル(Ni)とイットリア(Y)とを含んでいることが特に好ましい。
【0019】
(インターコネクタ20)
インターコネクタ20は、支持基板10の第1平坦面10A上に配置される。インターコネクタ20は、支持基板10を介して、発電部で発生する電流を集電する。インターコネクタ20は、例えば、10μm〜100μm程度の厚みを有する。
【0020】
インターコネクタ20は、緻密質な導電性セラミックス、例えば、ランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物によって構成される。ランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物としては、Mg、Ca、Sr等を置換固溶したLa(CrMg)O系、(LaCa)CrO系、(LaSr)CrO等の材料が挙げられる。
【0021】
(発電部30)
発電部30は、支持基板10の第2平坦面10B上に配置される。従って、発電部30は、支持基板10を介して、インターコネクタ20の反対側に配置されている。発電部30は、上述のとおり、燃料極活性層31と、固体電解質層32と、空気極33とによって構成されている。
【0022】
燃料極活性層31は、支持基板10の第2平坦面10B上に形成されている。燃料極活性層31は、希土類元素が固溶するZrO(安定化ジルコニア)と、Ni及び/又はNiOとによって構成される。希土類元素が固溶するZrOとしては、イットリア安定化ジルコニア(3YSZ、8YSZ、10YSZなど)が好適に用いられる。
【0023】
なお、本実施形態において、燃料極活性層31は、支持基板10の第2平坦面10B上に形成されているが、これに限られるものではない。燃料極活性層31は、支持基板10の第1湾曲側面10C及び第2湾曲側面10Dの少なくとも一方を覆うように延在されていてもよい。
【0024】
固体電解質層32は、燃料極活性層31と空気極33との間に配置される。また、固体電解質層32は、燃料極活性層31上から支持基板10上に延在された第1シール部32a及び第2シール部32bを有する。第1シール部32a及び第2シール部32bは、支持基板10の第1湾曲側面10C及び第2湾曲側面10Dを覆っており、支持基板10と直接接している。固体電解質層32は、例えば、3μm〜30μm程度の厚みを有する。
【0025】
固体電解質層32は、ジルコニウム(Zr)を含む。固体電解質層32は、Zrをジルコニア(ZrO2)として含んでもよいし、ジルコニアを主成分として含んでいてもよい。また、固体電解質層32は、ジルコニアの他に、イットリア(Y23)やスカンジア(Sc23)などの添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、安定化剤として機能する。固体電解質層12において、安定化剤のジルコニアに対するmol組成比(安定化剤:ジルコニア)は、3:97〜20:80程度であればよい。すなわち、固体電解質層12の材料としては、例えば、3YSZ、8YSZ及び10YSZなどのイットリア安定化ジルコニアやScSZなどのジルコニア系材料が挙げられる。また、本実施形態において、固体電解質層32は、アルミナ(Al23)を含有していてもよい。固体電解質層32におけるアルミナの添加率は、例えば、0.05重量%〜0.5重量%に設定することができる。
【0026】
空気極33は、固体電解質層32上に配置される。空気極33は、例えば、30μm〜100μm程度の厚みを有する。ABO3型のペロブスカイト型酸化物の導電性セラミックスによって構成される。このようなペロブスカイト型酸化物としては、遷移金属ペロブスカイト型酸化物が挙げられ、特に、AサイトにLaを有するLaMnO3系酸化物、LaFeO3系酸化物、LaCoO3系酸化物などが好適に用いられる。また、AサイトにはLaと共にSrなどが含有されていてもよく、Bサイトには、FeとともにCoやMnが含有されていてもよい。
【0027】
(アルミナ粒子)
次に、支持基板10と固体電解質層32との間に介挿されるアルミナ粒子について、図2乃至図4を参照しながら説明する。図2は、支持基板10と固体電解質層32との界面付近の断面を示すSEM画像である。図3は、支持基板10と固体電解質層32との界面付近におけるAl濃度分布を示す解析画像である。図4は、支持基板10と固体電解質層32との界面付近における酸素濃度分布を示す解析画像である。
【0028】
なお、図2のSEM画像は、セル100の断面をSEM及びSEM−EDS(Scanning Electron Microscopy-Energy Dispersive x-ray Spectroscopy)で取得される。また、図3及び図4の解析画像は、原子濃度プロファイルによるライン分析、つまりEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)による特性X線強度の比較結果を元素マッピングすることによって取得される。
【0029】
図2では、多孔質層である支持基板10と緻密層である固体電解質層32との界面Pが示されている。また、図2及び図3から、界面P付近におけるアルミウムの存在を確認することができる。また、図2及び図4から、界面P付近における酸素の存在が確認することができる。さらに、図3及び図4から、アルミウムの位置と酸素の位置とが重なっていること、すなわち、界面P付近におけるアルミナ粒子の存在が確認できる。
【0030】
このように、セル100は、支持基板10と固体電解質層32(具体的には、第1シール部32a及び/又は第2シール部32b)との間に配置されるアルミナ粒子を備えている。このアルミナ粒子は、固体電解質であるZrO2と適度な反応性を有するとともに、支持基板10に含まれるNiO/Niとも適度な反応性を有している。従って、このようなアルミナ粒子の存在によって、支持基板10と固体電解質層32との密着力が向上されている。
【0031】
アルミナ粒子の平均粒径は、0.3μm以上であることが好ましい。なぜならば、接合強度の向上に寄与するためには一定値以上の接合幅が必要とされるからである。また、界面Pにおいて、単位長さ当たりにアルミナ粒子が占める割合は、15%以上であることが好ましい。なぜならば、更なる接合強度の向上を達成するためには、接合性の良好なアルミナ粒子接合部の割合が一定値以上必要となるからである。
【0032】
《燃料電池セル100の製造方法》
次に、燃料電池セル100の製造方法について説明する。
【0033】
まず、NiO粉末とY粉末を、所定の混合比(例えば、Ni換算で48体積%、Yが52体積%など)で混合し、この混合粉末に、ポアー剤(例えば、平均粒径5−20μmのPMMA粒子)、有機バインダーと、水とを混合して支持基板用坏土を形成する。
【0034】
次に、支持基板用坏土を押出成形し、乾燥及び仮焼することによって、支持基板仮焼体を作製する。
【0035】
次に、支持基板仮焼体の両側湾曲面にアルミナ粒子を塗布する。この際、面積率で両側湾曲面の15%以上にアルミナ粒子を塗布することが好ましいが、全面をアルミナ粒子で覆う必要はない。アルミナ粒子としては、例えば平均粒径0.3μm以上のものを用いることが好ましい。
【0036】
次に、ZrO粉末(8YSZ)と有機バインダーを混合して得られるスラリーを、ドクターブレード法によって固体電解質層用シートを作製する。
【0037】
次に、NiO粉末と、イットリウムが固溶したZrO粉末(8YSZ)と、有機バインダーと溶媒とを混合したスラリーを作製し、固体電解質層用シートの一部分上にスクリーン印刷法で塗布及び乾燥することによって、燃料極層用コーティング層を形成する。
【0038】
次に、燃料極層用コーティング層が形成された固体電解質層用シートを支持基板成形体上に貼り付けることによって、積層体を作製する。
【0039】
次に、積層体を所定の温度(例えば、1000℃程度)で仮焼処理する。
【0040】
次に、LaCrO系酸化物と、有機バインダーと溶媒を混合したスラリーを支持基板成形体の露出部分に印刷塗布し、所定の温度(1400℃)で焼成する。
【0041】
次に、LSCF粉末とバインダーを添加して得られるスラリーを、固体電解質層用シート上に印刷及び乾燥し、その後所定の温度(例えば、1150℃)で焼き付けて空気極層を形成する。
【0042】
2.第2実施形態
第2実施形態では、いわゆる横縞型の固体酸化物型燃料電池セルについて説明する。
【0043】
《横縞型の固体酸化物型燃料電池セル200の構成》
横縞型の固体酸化物型燃料電池セル(以下、「セル」と略称する。)200の構成について、図面を参照しながら説明する。図5は、セル100の構成を示す斜視図である。図6は、図5のA−A断面図である。
【0044】
セル200は、図5に示すように、支持基板210と、複数のインターコネクタ220と、複数の発電部230と、を備える。複数の発電部230のそれぞれは、図6に示すように、燃料極231と、固体電解質層232と、空気極233と、集電層234と、を備える。なお、図5では、説明の便宜上、集電層234は図示されていない。なお、図6に示すように、複数のインターコネクタ220及び複数の発電部230は、支持基板210の両面に形成されている。
【0045】
(支持基板10)
支持基板210は、扁平かつ一方向(z軸方向)に長い形状である。支持基板210は、多孔質材料によって構成されている。支持基板210は、Ni(ニッケル)を含んでいてもよく、Ni‐Y(ニッケル‐イットリア)を主成分として含有していてもよい。ニッケルは酸化物(NiO)であってもよいが、発電時には、NiOは水素ガスによってNiに還元されてもよい。
【0046】
なお、本明細書において、「主成分として含有する」とは、その成分を50重量%以上含有することであってもよく、60重量%以上、80重量%以上、又は90重量%以上含有することであってもよい。また、「主成分として含有する」とは、その成分のみからなる場合も包含する。
【0047】
図5及び図6に示すように、支持基板210の内部には、流路211が設けられる。流路211は、支持基板210の長手方向(z軸方向)に沿って延びる。発電時には、流路211内に流される燃料ガスが、多孔質の支持基板210を介して複数の発電部230に供給される。
【0048】
支持基板210は、第1平坦面210Aと、第2平坦面210Bと、第1湾曲側面210Cと、第2湾曲側面210Dと、を有する。第1平坦面210Aと第2平坦面210Bとが互いに対向し、第1湾曲側面210Cと第2湾曲側面210Dとは互いに対向する。第1平坦面210A、第2平坦面210B、第1湾曲側面210Cおよび第2湾曲側面210Dは、互いに繋がっており、支持基板210の外周面を形成している。本実施形態では、第1平坦面210A上及び第2平坦面210B上に複数の発電部230が配置されている。
【0049】
(インターコネクタ220)
インターコネクタ220は、図5に示すように、2つの発電部230に接続されている。インターコネクタ220は、クロマイト系材料を主成分として含有する。クロマイト系材料の組成は、次の一般式(1)で表すことができる。
【0050】
Ln1−xCr1−y-z (1)
(式(1)において、LnはY及びランタノイド(La,Ce,Eu,Sm,Yb,Gdなど)からなる群より選択される少なくとも1種類の元素であり、AはCa,Sr及びBaからなる群より選択される少なくとも1種類の元素を含有し、Bは、Ti,V,Mn,Fe,Co,Cu,Ni,Zn,Mg及びAlからなる群より選択される少なくとも1種類の元素を含有し、0.025≦x≦0.3、0≦y≦0.22、0≦z≦0.15である。)
(発電部230)
燃料極231は、支持基板210上に配置され、アノードとして機能する。燃料極231は、燃料極集電層231aと燃料極活性層231bとを有する。
【0051】
燃料極集電層231aは支持基板210上に配置される。燃料極集電層231aは、次の一般式(2)で表される酸化物を含有する。
【0052】
(AE1−x)(B1−y+zCy)O (2)
(式(2)において、AEは少なくとも1種のアルカリ土類金属であり、Aサイトは、希土類,Al及びCrからなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有し、BサイトはTi及びZrから選択される少なくとも1種類の元素を含有し、Cサイトは、Nb,V,Mn,Cr,Fe,Co,Cu,Ni,Zn,Mg及びAlからなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有し、0≦x≦0.3,0≦y≦0.22,−0.1≦z≦0.1である。)
また、燃料極集電層231aは、式(2)で表される酸化物以外の成分を含有してもよく、例えばニッケルを含有していてもよい。ニッケルは、酸化物(NiO)であってもよいが、発電時には、NiOはNiに還元されてもよい。燃料極集電層231aの厚みは、50〜500μm程度とすることができる。
【0053】
燃料極活性層231bは、燃料極集電層231aの上に配置される。燃料極活性層231bは、Zr(ジルコニウム)を含有してもよい。燃料極活性層231bを構成する材料として、例えば、Ni−YSZ(イットリア安定化ジルコニア)及びScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)等が挙げられる。燃料極活性層231bの厚みは、5〜100μm程度とすることができる。
【0054】
固体電解質層232は、燃料極活性層231b上に配置され、燃料極活性層231bの全面を覆うように設けられる。固体電解質層232は、ジルコニア(ZrO)を主成分として含むことができる。固体電解質層232は、例えば、3YSZ、8YSZ等のイットリア安定化ジルコニアやScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)等のジルコニア系材料によって構成することができる。また、本実施形態において、固体電解質層232は、アルミナ(Al23)を含有していてもよい。固体電解質層232におけるアルミナの添加率は、例えば、0.05重量%〜0.5重量%に設定することができる。固体電解質層232は、燃料極活性層231bと共焼成されていることが好ましい。
【0055】
ここで、固体電解質層232は、燃料極活性層231b上から支持基板210上に延在された第1シール部232a及び第2シール部232bを有する。第1シール部232a及び第2シール部232bは、互いに繋がっている。第1シール部232aは支持基板210の第1湾曲側面210Cを覆う。第2シール部232bは支持基板210の第2湾曲側面210Dを覆う。
【0056】
なお、本実施形態では、支持基板210上に延在された固体電解質層232によって第1シール部232a及び第2シール部232bが構成されることとしたが、これに限られるものではない。第1シール部232a及び第2シール部232bの少なくとも一方は、固体電解質層232とは別の部材によって形成されていてもよい。
【0057】
空気極233は、固体電解質層232上に配置される。空気極233は、例えば、ランタン含有ペロブスカイト型複合酸化物を主成分として含有してもよい。ランタン含有ペロブスカイト型複合酸化物としては、具体的には、LSCF(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)、ランタンマンガナイト、ランタンコバルタイト、ランタンフェライトが挙げられる。また、ランタン含有ペロブスカイト型複合酸化物には、ストロンチウム、カルシウム、クロム、コバルト、鉄、ニッケル、アルミニウム等がドープされていてもよい。
【0058】
集電層234は、空気極233上に配置され、2つの発電部を電気的に接続するように設けられている。
【0059】
なお、セル200の各部の寸法は、具体的には、以下のように設定可能である。
【0060】
支持基板210の幅D1 :1〜10cm
支持基板210の厚みD2 :1〜10mm
支持基板210の長さD3 :5〜50cm
支持基板210の外面から流路21までの距離D4:0.1〜4mm
インターコネクタ220の厚み :10〜100μm
固体電解質層232の厚み :3〜50μm
空気極233の厚み :10〜100μm
集電層234の厚み :50〜500μm
ただし、本発明はこれらの数値に限定されない。
【0061】
(アルミナ粒子)
次に、支持基板210と第1及び第2シール部232a,232bとの間に介挿されるアルミナ粒子について説明する。
【0062】
支持基板210と第1及び第2シール部232a,232bとの間には、上記第1実施形態と同様に、アルミナ粒子が介挿されている。このアルミナ粒子は、固体電解質であるZrOと適度な反応性を有するとともに、支持基板210に含まれるNiO/Niとも適度な反応性を有している。従って、このようなアルミナ粒子の存在によって、支持基板210と第1及び第2シール部232a,232bとの密着力が向上されている。
【0063】
アルミナ粒子の平均粒径は、0.3μm以上であることが好ましい。なぜならば、接合強度の向上に寄与するためには一定値以上の接合幅が必要とされるからである。
【0064】
また、界面Pにおいて、単位長さ当たりにアルミナ粒子が占める割合は、15%以上であることが好ましい。なぜならば、更なる接合強度の向上を達成するためには、接合性の良好なアルミナ粒子接合部の割合が一定値以上必要となるからである。
【0065】
≪他の実施形態≫
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変形又は変更が可能である。
【0066】
(A)上記第1実施形態において、発電部30は、燃料極活性層31、固体電解質層32および空気極33を備えることとしたが、これに限られるものではない。発電部30は、燃料極活性層31と固体電解質層32との間や固体電解質層32と空気極33との間には、他の層が介挿されていてもよい。例えば、発電部30は、固体電解質層32と空気極33との間における高抵抗層の形成を抑制するために、固体電解質層32と空気極33との間にバリア層を備えていてもよい。
【0067】
(B)上記第1実施形態において、第1シール部32a及び第2シール部32bは、支持基板10の第1湾曲側面10C及び第2湾曲側面10Dを覆うこととしたが、これに限られるものではない。例えば、図7に示すように、燃料極活性層31が支持基板10の第1湾曲側面10C及び第2湾曲側面10Dを覆うように延在されている場合には、第1シール部32a及び第2シール部32bは、燃料極活性層31を覆っていればよい。この場合、燃料極活性層31の延在部分は、支持基板10の一部を構成している。
【0068】
このことは、第2実施形態に係るセル200についても同様である。すなわち、燃料極集電層231a又は/及び燃料極活性層231bが支持基板210の第1湾曲側面210C及び第2湾曲側面210Dを覆うように延在されている場合、第1シール部232a及び第2シール部232bは、燃料極活性層31又は/及び燃料極活性層231bの延在部分を覆っていればよい。この場合、燃料極活性層31又は/及び燃料極活性層231bの延在部分は、支持基板210の一部を構成している。
【0069】
(C)上記第1実施形態において、第1シール部32a及び第2シール部32bは、支持基板10上に延在された固体電解質層32によって構成されることとしたが、固体電解質層32とは別の部材として形成されていてもよい。具体的には、図8に示すように、ガラス素材によって構成される第1シール部32a及び第2シール部32bを備えていてもよい。このことは、第2実施形態に係る第1シール部232a及び第2シール部232bについても同様である。
【0070】
(D)上記第1及び第2実施形態において、燃料電池セルは、2つのシール部を有することとしたが、いずれか一方のシール部を有していればよい。
【実施例】
【0071】
以下において本発明に係るセルの実施例について説明するが、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0072】
[サンプルNo.1〜No.12の作製]
以下のようにして、燃料極集電層を支持基板とする燃料極支持型セルのサンプルNo.1〜No.12を作製した。
【0073】
まず、NiO粉末とY粉末(Ni換算で48体積%、それ以外をY)を混合した粉末に、平均粒径5−20μmのPMMA粒子と有機バインダーと水とを混合して支持基板用坏土を形成した。
【0074】
次に、支持基板用坏土を押出成形し、乾燥及び仮焼することによって、支持基板仮焼体を作製した。
【0075】
次に、サンプルNo.1以外のサンプルNo.2〜No.12について、支持基板仮焼体の両側湾曲面にアルミナ粒子を塗布した。サンプルNo.2〜No.7では、平均粒径0.16〜3.2μmのアルミナ粒子を用い、No.8〜No.12では、平均粒径0.5〜1.5μmのアルミナ粒子を用いた。また、この際、サンプルNo.8〜No.12では、アルミナ粒子を塗布する面積率を異ならせた。
【0076】
次に、NiO粉末とイットリウムが固溶したZrO粉末(8YSZ)と有機バインダーと溶媒とを混合したスラリーを作製し、8YSZで構成される固体電解質層用シートの一部分上にスクリーン印刷法で塗布及び乾燥することによって、燃料極層用コーティング層を形成した。
【0077】
次に、燃料極層用コーティング層が形成された固体電解質層用シートを支持基板成形体上に貼り付けて、1000℃で仮焼処理した。
【0078】
次に、LaCrO系酸化物と有機バインダーと溶媒を混合したスラリーを支持基板成形体の露出部分に印刷塗布し、1400℃で焼成した。
【0079】
次に、LSCF粉末とバインダーを添加して得られるスラリーを、固体電解質層用シート上に印刷及び乾燥し、1150℃で焼き付けて空気極層を形成した。
【0080】
[還元後の剥離の有無]
サンプルNo.1〜No.7を800℃で水素雰囲気に10時間暴露し、常温まで降温させた後、セルの表面及びセルの断面を顕微鏡で観察することによってシール部の剥離の有無を確認した。また、断面のSEM画像から燃料側電極とシール部との間に存在するアルミナ粒子の平均粒径を算出した。観察結果を表1に示す。
【0081】
表1に示されるように、アルミナ粒子が導入されていないサンプルNo.1においてシール部の剥離が確認された。一方で、アルミナ粒子が導入されたサンプルNo.2〜No.7ではシール部の剥離が確認されなかった。
【0082】
このように、アルミナ粒子の平均粒径を0.30μm以上とすることによって、還元による剥離の発生を抑制できることが確認された。
【0083】
【表1】

[熱サイクル試験後の剥離の有無]
サンプルNo.8〜No.12について、還元雰囲気を維持した状態で、常温から800℃まで30分で昇温し、その後1時間で常温まで降させるサイクルを10回繰り返した。その後、セルの表面及びセルの断面を顕微鏡で観察することによってシール部の剥離の有無を確認した。観察結果を表2に示す。
【0084】
表2に示されるように、アルミナ粒子の占有率が5%であるサンプルNo.1ではシール部の剥離が確認されたが、アルミナ粒子の占有率が15%以上であるサンプルNo.9〜No.12ではシール部の剥離が確認されなかった。
【0085】
このように、アルミナ粒子の単位長さ当たりの占有率を15%以上とすることによって、熱サイクルによる剥離の発生を抑制できることが確認された。
【0086】
【表2】

【符号の説明】
【0087】
100 燃料電池セル
10 支持基板
20 インターコネクタ
30 発電部
31 燃料極
32 固体電解質層
33 空気極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流路を有する平板状の支持基板と、
前記支持基板上に配置され、燃料極活性層と、空気極と、前記燃料極活性層と前記空気極との間に配置される固体電解質層と、を有する発電部と、
前記支持基板の外周を覆うシール部と、
前記支持基板と前記シール部との間に配置されるアルミナ粒子と、
を備える燃料電池セル。
【請求項2】
前記アルミナ粒子の平均粒径は、0.3μm以上である、
請求項1に記載の燃料電池セル。
【請求項3】
前記支持基板と前記シール部との界面に沿って、単位長さ当たりで前記アルミナ粒子が占める割合は、15%以上である、
請求項1又は2に記載の燃料電池セル。
【請求項4】
前記支持基板は、酸化ニッケル及び/又はニッケルとイットリアとを含む、
請求項1乃至3のいずれかに記載の燃料電池セル。
【請求項5】
前記シール部は、前記固体電解質層と一体的に形成されており、イットリア安定化ジルコニアを含む、
請求項1乃至4のいずれかに記載の燃料電池セル。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−101906(P2013−101906A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−133779(P2012−133779)
【出願日】平成24年6月13日(2012.6.13)
【特許番号】特許第5159972号(P5159972)
【特許公報発行日】平成25年3月13日(2013.3.13)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】