説明

燃料電池バイポーラ板及び該燃料電池バイポーラ板を用いた改良された流体分布を備えた燃料電池

燃料電池用のバイポーラ板(100)であって、反応性流体を循環させるための、その周辺端部(107)の1つ内に位置される第1スルーホール(108、128)、2つの主要面の内の一方に広がるアノード区画、及び反対の主要面(104)に広がるカソード区画(102)を含む。区画(102)の少なくとも1つが、対応する主要面(104)に対するくぼみ領域によって全体的に又は部分的に形成され、反応性流体の流れが、前記区画(102)に入るように、前記くぼみ領域が、吸入路(106、126)を経由してスルーホール(108、128)に接続され、前記吸入路(106、126)が、前記対応する主要面(104)の前記周辺端部(107)内においてくぼんで形成される。第1スルーホール(108、128)の近くに位置される第2スルーホール(101、121)が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の分野に係り、特に、同様な基本セルの重ね合わせ構造を含む燃料電池の分野に関する。さらに詳細には、本発明は、そのような基本セルを形成するためのバイポーラ板に関する。また、そのような板を用いた燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、整合寸法を有するいくつかの基本セルの重ね合わせ構造又はスタックから構成されうる。これらのそれぞれの基本セルは、通常、膜型の電解質、並びにアノード及びカソードを有するパイポーラ板を含む。
【0003】
電荷キャリアの放出を発生する酸化及び還元を引き起こすために、燃料及び酸化剤が、これらの電極と接触するようにそれぞれ位置されなければならない。その結果、電気化学酸化及び還元反応が、イオンを放出し、このイオンの移動が、燃料電池によって供給される電流を生成する。通常、燃料及び酸化剤は、液体状またはガス状の流体状である。
【0004】
本質的に周知の方法では、バイポーラ板が、2つの主要面を有する。これらの2つの主要面の一方において、バイポーラ板が、この領域の大部分にわたって広がるアノード区画を含む。相対的に対称性を有する方法では、他の主要面において、バイポーラ板が、この主要面の領域の大部分にわたって広がるカソード区画を含む。バイポーラ板の2つの面が膜型の電解質と接触する場合、酸化及び還元のそれぞれの半反応が起こるのはこれらの区画である。
【0005】
従って、基本セルは、膜電解質上に重ね合わせられたバイポーラ板から構成される。燃料電池を形成する基本セルのスタックにおいて、この結果、バイポーラ板及び電解質を含む膜は、交互に配置される。
【0006】
このような電池の実施例として、固体高分子膜型燃料電池(PEMFC)及び直接メタノール型燃料電池(DFMC)を挙げることが出来る。電池の操作の間、所望の電流を生成する電気化学反応を維持するために、酸化剤及び燃料が、流体状で連続的に導入される。
【0007】
燃料の存在下において、アノード区画と膜電界質の間の界面において、酸化半反応が発生する。通常、導入された還元剤として働く燃料は、ガス状態の水素分子(H)から構成される。同様に、酸化剤の存在下において、カソード区画と膜電解質との間の界面において、還元半反応が発生する。通常、導入された酸化剤として働く酸化剤は、ガス状態の酸素分子(O)であり、大抵、空気の形態で導入される。
【0008】
基本セルの重ね合わせ構造から構成される燃料電池の適切な操作及び十分な収率を確保するために、電池構造が、以下を含む多くの機能を行う働きをしなければならない。
−反応性流体の吸入及び分配、
−流体回路の気密化、
−電気化学反応による生成物の冷却又は除去、発熱の電気化学反応によって放出される熱の除去、
−これらの反応間に放出される電荷キャリアの伝導、
−及び、基本セルによって形成されるスタックの機械的な結合。
【0009】
これらの様々な機能は、基本セルの構造、及び特にそれらを形成するバイポーラ板の構造に影響を及ぼす。
【0010】
それぞれの基本セルのアノード及びカソード区画と接触する酸化剤及び/又は燃料の反応性流体を配置するために、それぞれの基本セル、すなわちバイポーラ板及び膜電解質のスルーホールの重ね合わせによって燃料電池に沿って形成されるコレクター内に、これらの流体のそれぞれを循環させることが知られている。
【0011】
従って、それぞれのバイポーラ板が、大抵は平面であるこの板の2つの主要面に垂直な方向に通常広がるホールによって横切られる。バイポーラ板を貫通するホールが、バイポーラ板の周辺端部に通常形成され、一方、アノード及びカソード区画が、バイポーラ板のそれぞれの面の中央部を占める。反応性流体を供給することを目的とし、共通のコレクターを形成するスルーホールが、アノード及びカソード区画からある距離を隔てて位置されるため、コレクターから電極への反応性流体の流れのために、また、吸入路が、バイポーラ板内に機械加工されなければならない。
【0012】
この目的のために、第1の解決策は、電極に接続するホールを掘削することであり、コレクターを形成するスルーホールの近くに位置されるバイポーラ板の端部に供給される。このような貫通が、端部に垂直な方向に通常形成され、これに由来し、この結果、コレクターを形成するスルーホールに垂直である。次に、反応性流体の漏れを防ぐために、密閉プラグが、コレクターとバイポーラ板の端部との間に挿入される。このようなプラグが、焼嵌め又は接着によって固定されてもよい。
【0013】
しかしながら、これらの掘削及び結合操作は、比較的注意深く行われ、プラグの存在が、いずれの漏れのリスクを完全に排除するものではない。燃料セルを形成する基本セルが、さらに多くなった場合、これらの操作によって被るこれらのリスク及び追加コストが、比例して高くなる。
【0014】
あるいは、従来技術の1つの解決策は、コレクターと供給された区画との間に斜めのホールを掘削することであり、掘削部分の接近を可能にするために、このような掘削の開始点が、共通のコレクターを形成するホールの端部の1つに向かって位置される。このような構造を備えることにより、斜めの吸入路が、バイポーラ板の外部ではなく、コレクター内で終結し、これによっていずれの漏れのリスクが排除されるため、もはやプラグをバイポーラ板に挿入する必要がない。
【0015】
それでもなお、斜めの吸入路の掘削が、高い正確性及び特殊ツールの使用を要求するため、この解決策は、完全に満足できるものではない。実際には、これらの2つの欠点が、また、バイポーラ板の製造における追加コストを招く傾向がある。
【0016】
さらに、これらの2つの従来技術の解決策はいずれも、薄いバイポーラ板上で実行されることが出来ないため、燃料電池によって占められる体積の削減と相いれない。その結果、これらの解決策は、燃料電池のコンパクト性に対する制限を示す。しかしながら、このコンパクト性は、燃料電池に対する重要なパフォーマンス基準である。
【0017】
特許文献1は、燃料電池用のバイポーラ板であって、その端部の1つが、一方が溝内で終結する2つの隣接したスルーホールによって横断されるバイポーラ板を開示している。しかしながら、この文献は、1つの面のみが機能化されたバイポーラ板に関するものである。
【0018】
従って、本発明の目的は、燃料電池の気密性に対するリスクを全く発生せず、その構造が電池のコンパクト性を制限せず、及びその製造が、電池のコストを大幅に増加させないバイポーラ板を提案することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2002−298872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
従って、本発明は、単純な構造を有し、製造が経済的であり、電池の気密性及びその体積の削減に対し有利であるバイポーラ板に関する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、燃料電池用のバイポーラ板に関するものであり、
−反応性流体を循環させるためのその周辺端部の1つ内に位置する第1スルーホール、
−その2つの主要面の一方においてにおいて広がるアノード区画、
−及び反対の主要面において広がるカソード区画
を含む。
【0022】
本発明によると、前記区画の少なくとも1つが、対応する主要面に対してくぼんだ領域によって、全面的又は部分的に形成され、前記区画に入る反応性流体の流れのために吸入路を経由して前記くぼみ領域がスルーホールに接続され、前記吸入路が前記対応する主要面の前記周辺端部内にくぼんで形成する。
【0023】
本発明によると、バイポーラ板が、第1スルーホールの近くに位置される第2のスルーホールをさらに含み、また、この第2スルーホールは、反応性流体を循環させるためものであり、この面の反対側の主要面が、くぼみ領域をハウジングし、通常現われない(non−emergent)くぼみ溝を含み、この溝は、第1及び第2スルーホールと接続するのに適している。
【0024】
換言すると、この板の端部の1つが、2つの隣接するスルーホールによって横切られ、そのスルーホールの1つが、反応性流体コレクターを形成し、他方が、反応性流体が供給されるようにこの区画に導く開かれた溝内において終端する。この方法では、反応性流体が、コレクターから供給されるこの区画に流れることが可能であり、この区画と反対の面上に提供される溝を通り抜ける。この結果、電極を形成する区画に流れる前に、この板の端部と交わる面内において、この流体が通常“U”字型形状の経路に沿って流れる。
【0025】
本発明のこの第1実施形態の実際的な実施形態によると、バイポーラ板が、中央軸を有してよく、この中央軸に沿って第1スルーホールが掘削される。
【0026】
従って、燃料電池を形成するスタックにおいて、バイポーラ板を交互に1つの方向及び次に他の方向に重ね合わせることが可能であるが、これは、それらの通常現われない溝の方向を、それぞれ反対の方向に合わせるためである。これは、反応性流体を、コレクターの左そしてその次は右に、交互に分配するために機能する。その結果、スタックにおける先のセルに対して180°にそれぞれの基本セルを位置決めすることは、単純な中間シール(intercellular seal)を用いた吸入路及び活性化(irrigated)区画の完全な漏れ止めを確保するために機能する。
【0027】
実際には、この区画が、それぞれ、主要面のそれぞれの大部分の領域を覆ってよい。この結果、このような区画が、膜電解質を備えた高交換領域を有し、これは、高電流を生成するために機能する。
【0028】
また、実際には、第1及び/又は第2スルーホール(複数)が、円形基部を備えたシリンダー形状を有してよく、この軸が、一つの主要面によって決定される面に対して垂直である。
【0029】
実際には、このようなスルーホールは、バイポーラ板の掘削の単一操作を用いて極めて単純に形成される。
【0030】
本発明の代替案の実施形態によると、バイポーラ板が、さらに、第2の反応性流体の循環のためのスルーホールの第2セット、及び冷却流体の循環のためのスルーホールの第3セットを含む。
【0031】
第1スルーホールのように、このようなスルーホールはそれぞれ、第2の反応性流体及び冷却流体用のコレクターを形成するために機能する。
【0032】
さらに、また本発明は、上記のようなバイポーラ板をそれぞれ含む基本セルの重ね合わせ構造を含む燃料電池に関する。本発明によると、バイポーラ板が、通常的な平面シールによってそれぞれ二つ一組で分離され、このシールのそれぞれが、シールの周辺端部において膜電解質及びスルーホールを含む。さらに、全ての基本セルに対して共通な反応性流体コレクターを形成するために、重ね合わせバイポーラ板のスルーホール及び全てのシールのスルーホールが、同一空間を占める。
【0033】
換言すると、本発明によるバイポーラ板のそれぞれに提供されるスルーホールの重ね合わせが、全てのこれらの板に共通なコレクターを形成するために機能し、これにより、燃料電池に沿って伸びる。
【0034】
本発明の実際的な実施形態によると、燃料電池が、基本セルの重ね合わせ構造を含み、上記の本発明の代替案の実施形態による板が形成され、全ての基本セルに共通な第2及び第3流体コレクターを形成するために、重ね合わせたバイポーラ板のスルーホール及び全てのシールのスルーホールが同一の空間を占める。
【0035】
また、本発明は、上記タイプの基本セルの重ね合わせ構造を含む燃料電池に関し、前記重ね合わせ構造が、バイポーラ板の頭−尾スタック(head−to−tail stack)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1A】本発明の第1実施形態による、バイポーラ板の概略斜視図であり、このバイポーラ板の1つの主要面の1つを示す。
【図1B】本発明の第1実施形態による、バイポーラ板の概略斜視図であり、このバイポーラ板の他の主要面を示す。
【図2】本発明による、2つのバイポーラ板の間に挿入される中間シールの概略斜視図である。
【図3】本発明の燃料電池の実施形態による、燃料電池の概略断面図及び斜視図である。
【図4】さらに前方に位置した面に沿った図3における燃料電池の概略断面図及び斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態による、バイポーラ板の概略平面図である。
【図6】本発明の第3実施形態による、バイポーラ板の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
添付した図面と併せて、下記の制限するものではない説明のための実施形態から、本発明の方法は実施されることが可能であり、その利点が、明確に現われるであろう。
【0038】
図1Aは、本発明の第1実施形態によるバイポーラ板100を示す。バイポーラ板100は、2つの主要面104及び105を有し、それ上にカソード区画102及びアノード区画103がそれぞれ広がっている。バイポーラ板100の面104及び105は、主要面と称されるが、これは、これらが、バイポーラ板100の端部を形成する面と比較して大きな領域を有するためであり、及びこれらが、バイポーラ板100の機能的な部材の大部分を収容するためである。
【0039】
図1A及び1Bに示すように、カソード区画102及びアノード区画103が、それぞれ、2つの主要面104及び105の大部分の領域を覆う。さらに、これらと接触する膜型の電界質との大きな交換領域を有するために、これらの電極が、複数個の平行な溝型ラインから形成される。その結果、断面上では、これらの溝型ラインが、刻み目のある外形を有する。
【0040】
さらに、少なくともカソード区画102の場合では、所定の深さのこれらの溝型ラインが、電荷キャリアを放出することを目的とした電気化学半反応のために必要な反応性流体を循環するための多くの経路としての形をなす。
【0041】
従って、カソード区画102が、主要面104に対するくぼみ領域によって形成される。さらに、カソード区画102の溝型ラインの頂点は、カソード区画102を囲む周辺端部107の高さである。この形態は、カソード区画102の溝を形成する方法から得られるものであり、その方法は、材料から平面板をはぎ取り、又はその平面板を掘削する機械加工にある。これは、また、2つの連続するバイポーラ板100間における気密性を提供する周辺シールの厚さが、オーバーサイズ化することを防ぐ。実際には、突起部を形成する溝型ラインの先端が、周辺端部107の頂点を形成する場合、流体に関して気密性を確保するために、極めて厚いシールが、提供されなければならない。
【0042】
本発明によると、バイポーラ板100が、反応性流体を循環するための第1スルーホール108を含む。実際には、燃料電池を形成するために、同様なバイポーラ板を含む複数の基本セルが、互いに重ね合わせられ、それぞれのバイポーラ板上に形成されるホール108に対応するスルーホールが、同一の空間を占め、これによって、以下に詳細に記述される図3及び4に示されるような、共通のコレクターが形成される。
【0043】
本発明のバイポーラ板の他の形態によると、カソード区画102を形成するくぼみ領域が、反応性流体の供給のために吸入路106を経由してスルーホール101と接続される。吸入路106が、主要面104の周辺端部107内にくぼんで形成される。この結果、共通のコレクターを形成するスルーホール101を経由して達する反応性流体の全て又は一部が、吸入路106を通り又はバイパスし、カソード区画102を形成する溝型ラインまで達する。さらに、パイポーラ板100が、様々な機能を実行するための他のスルーホールを備える。その結果、ホール181−184が、それぞれ、燃料電池を形成するバイポーラ板のスタックの結合を確保するクランプ手段(図示しない)を収容するために役立つ。
【0044】
図1A及び1Bに示される代替の実施形態では、反応性流体のための“U”字型形状の経路を有する。この結果、この代替の実施形態によると、共通のコレクターが、それぞれのバイポーラ板のスルーホール108の重ね合わせによって形成され、吸入路106を経由し領域102に反応性流体を供給するために、溝109を経由しスルーホール101に接続される。
【0045】
この目的のため、従って、それぞれのバイポーラ板100が、第2のスルーホール101を備え、この第2のスルーホール101は、また、反応性流体を循環するためのものであり、第1スルーホール108の近くであり、その結果、周辺端部107上に提供される。
【0046】
その結果、基本セル(バイポーラ板及び挿入シール)が、スタックされた場合、以下に記載する図3及び4に示されるように、反応性流体を循環させるための共通コレクターを形成するために、タイプ108の全てのホールが、同一の空間をしめる。
【0047】
吸入路106を経由した、スルーホール108からくぼみカソード区画102への反応性流体の流れを可能にするために、通常現われない溝109が、カソード区画102を収容する面と反対の主要面105の周辺端部113上に提供される。バイポーラ板100内に、溝109が、くぼんで形成され、スルーホール101及び108の位置と対応する位置及び寸法とされる。
【0048】
従って、2つの連続するバイポーラ板が、互いに反対のそれらの主要面104及び105においてスタックされた場合、溝109が、スルーホール101及び108に位置される。図1A及び1Bの実施例では、この溝は、直線状であり、その長さは、ホール101及び108が、それらの2つの端部のそれぞれにおいて、それを貫通するものである。しかしながら、必ずしも本発明の範囲から外れるものではなく、溝に対してホールを他の位置に備える、溝109の他の形状が、実現可能である。従って、溝109が、“L”字型形状又は“C”字型形状を有することが可能である。
【0049】
このような構造では、この結果、反応性流体が、共通コレクターを形成する開口部108を通り抜け、一部は溝109に方向を変え、反応性流体のこの方向が変わった流れが、吸入路106に流れこみ、ここからカソード区画102に広がる。
【0050】
同様に及び対称的に、カソード区画102の他側部上の周辺端部が、吸入路126と連携する第1スルーホール121を収容する。
【0051】
さらに、図1A及び1Bにおける実施例において、バイポーラ板100が、溝109と同様な通常現われない溝129と連携するのに適した、スルーホール108と対称的な第2スルーホール128を含む。スルーホール128のスタックによって形成される第2の共通コレクターが、カソード区画102に向かう又はこれから離れる反応性流体又は酸化剤を運ぶ又は除去する働きをすることが出来る。
【0052】
例えば第2の反応性流体又は冷却流体といった他の流体を循環させるために、バイポーラ板の他の位置において、吸入路と連携する2つのスルーホールを含むシステムを再現することが可能である。
【0053】
従って、図5及び6に説明された本発明の実施形態によると、第2及び第3の機械加工された楕円形セット559、579;659、679、669及び689が、第2の反応性流体のような他の流体を循環させるために提供される。図1Aに示される機械加工されたセット109及び129のように、第2及び第3の機械加工された楕円形セット559、579;659、679、669及び689が、“U”字型形状の経路に流体を循環させるための2つの円形スルーホールを含む。これらの円形スルーホールが、電極502、602を供給するために提供されるスルーホールの第1セットを形成するホール501、508、521、528;601、608、621、628のように形成されることが出来る。
【0054】
図5の場合においては、スルーホール559、579の第2セットを、第1セット109、129の軸に垂直な軸上に位置させることが出来る。この結果、対称性によって、全体の燃料電池に対する共通コレクターを決定するために、バイポーラ板のスタックが、スルーホールが同一の空間をしめるように機能する。
【0055】
冷却流体のような第3の流体(図6)が循環させられる場合では、スルーホールの第2の659、679及び第3の669、689セットが、図6に示されるように、対称軸に関して対称に位置され、バイポーラ板の他の対称の軸から等距離であることが出来る。これは、燃料電池内においてスタックされる2つのバイポーラ板のスルーホールの連携を確保するために機能する。
【0056】
図2は、基本セルを形成するためのプレート100に補完的な部分を示し、これは、2つの連続するバイポーラ板100間に配置されるための挿入シール250である。挿入シール250は、膜電界質領域260とバイポーラ板100のカソード区画102との間の接触、及び隣のバイポーラ板のアノード区画103との接触を形成するように配置される。電解質と電極との間の界面における交換を最大化するために、膜電界質260が、カソード102及びアノード103区画によって占められる領域と同様な、及びこれに対応する領域を有する。
【0057】
さらに、挿入シール250が、スルーホール251及び271を有し、このスルーホールの位置及び寸法が、タイプ100のバイポーラ板を貫通するホール108及び128のそれらとそれぞれ対応する。この結果、酸化剤が、タイプ108及び128のホールのスタックにより形成される共通コレクターに沿って妨げられることなく流れることが出来る。
【0058】
さらに、挿入シール250が、他のスルーホール211、252、253、281−284を有し、これらのスルーホールの位置、寸法及び機能が、図1に示されたバイポーラ板を貫通する、ホール181−184のそれらと対応し、これは、板のスタックを集めるための開口部である。
【0059】
図3は、バイポーラ板300、330、340のスタックを示し、これは図1A及び1Bのバイポーラ板100によって説明されるものの代替案の図に対応し、挿入シール250の実施形態に対応する挿入シール350、351及び352を備える。
【0060】
図1A及び1Bに関して記述される代替案の実施形態によると、バイポーラ板300、330及び340のそれぞれが、第1スルーホール101と同様な第1スルーホール301、及び第2スルーホール108と同様な第2スルーホール308を有する。
【0061】
さらに、バイポーラ板300、330及び340のそれぞれが、吸入路106と同様な吸入路306を有する。この結果、反応性流体が、スルーホール308によって形成される共通コレクター内に流れ、その後タイプ306の吸入路に入り、ここから、ホール301に広がり、とりわけ、アノード区画(図3には示さない)に入ることが出来る。それによって、反応性流体が、供給される電極に入る前の“U”字型形状経路を表現する。
【0062】
図3に示されるバイポーラ板300、330及び340のスタックが、この板が共通コレクターの左右に交互に配置されるこれらの吸入路を備えるという点において、他のものと区別される。この目的のため、本発明の1つの実施形態によると、共通コレクターを形成するスルーホール308、338及び348が、それらのバイポーラ板の中央軸の1つ上にそれぞれ位置されなければならない。従って、図3に示されるように、これが、バイポーラ板の頭−尾スタックを可能にする対称性を有する。
【0063】
このような組立体を備え、スルーホール301、331及び341が、ホール308によって形成されるコレクターに平行な第2の共通コレクターを形成しないため、これらが互いに同一の空間を占めることはない。このような構造が、スタックのそれぞれのバイポーラ板のカソード区画への反応性流体の効果的及び漏れのない分配を確保するために機能する。さらに、バイポーラ板の組み立ては、より単純である。加えて、バイポーラ板を、従来技術のそれよりも薄くしてもよく、その結果、密度の高いセルを得るために役立つ。
【0064】
図3に示すように、挿入シール350−352が、連続するバイポーラ板300、330、340の間に配置されるが、これは、それを貫通するホールが、バイポーラ板を貫通するそれらと同一の空間を占めるようにするためである。この結果、反応性流体、燃料及び酸化剤、1つ以上の冷却流体、及び燃料電池の結合のためのクランプ手段が、全体の燃料電池を通り抜けることが可能である。
【0065】
さらに、図3に示す燃料電池が、バイポーラ板300、330及び340のスタックのそれぞれの端部に位置される2つの終板390及び391を有する。この終板390及び391が、これらに与えられる機能を行うために、それ自体が周知である方法によって製造される。図3に示される基本セル、すなわちバイポーラ板及び挿入シールのスタックが、この結果、3つのバイポーラ板300、330及び340を含むが、これは、燃料電池の所望の容量に従って、異なる数のそれらを含むことが出来る。
【0066】
図4は、図3におけるそれと同様な断面図を示し、その切断面が、図3における切断面からわずかに進んで位置される。図4において、バイポーラ板のスルーホール及び吸入路に加え、電解領域460−462が区別されることが出来、挿入シール450−452を形成する膜と結合されている。
【0067】
図4に観察されうるように、この結果、膜電解質460−462が、カソード区画によって占められる表面を適応可能に覆い、溝型ライン402(刻み目のある)が、断面において観察される。このように、反応性流体が、領域460−462内においてのみ反応することが出来、バイポーラ板の吸入路内では反応することが出来ない。この配置が、カソード反応の収率及びこれらが開放する電荷キャリアの収集を最適化するために役立つ。
【0068】
この図に関して記述された本発明の特定の実施形態は、バイポーラ板のカソード区画と関連している。しかしながら、同様な構造及び操作がアノード区画に対して提供されることが可能である。これらの実施形態は、ほんの少しの機械加工及び/又はスタンピング操作を含み、これによって、密閉流体吸入システムを形成するために役立ち、比較的薄型のバイポーラ板を含む。
【0069】
図の実施例においては、スルーホールが、円形基部を備えたシリンダー形状を有する。しかしながら。必ずしも本発明の範囲から外れるものではなく、これらが、異なる断面、例えば、楕円形又は正方形を有することが出来る。同様に、燃料電池に要求される電気容量及び電気化学的な収率により、バイポーラ板の厚さ、アノード及びカソード区画の溝型ラインの長さ及び深さ、並びにホール、溝及び吸入路の直径、要求される寸法とされる。さらに、所望の適用に応じ、バイポーラ板が、非−正方形の断面、例えば、円形等を有することが出来る。
【符号の説明】
【0070】
100 バイポーラ板
101、108、121、128 スルーホール
102 カソード区画
103 アノード区画
104、105 主要面
106、126 吸入路
107 周辺端部
109、129 溝
181、182、183、184 ホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池用のバイポーラ板(100)であって、
反応性流体(320)を循環させるための、その周辺端部(107)の1つ内に位置される第1スルーホール(108、128)、
2つの主要面の内の一方(105)に広がるアノード区画(103)、及び
反対の主要面(104)に広がるカソード区画(102)を含み、
前記区画(102)の少なくとも1つが、前記対応する主要面(104)に対するくぼみ領域によって全体的に又は部分的に形成され、
前記反応性流体の流れが、前記区画(102)に入るように、前記くぼみ領域が、吸入路(106、126)を経由して前記スルーホール(108、128)に接続され、
前記吸入路(106、126)が、前記対応する主要面(104)の前記周辺端部(107)内においてくぼんで形成され、
前記第1スルーホール(108、128)の近くに位置される第2スルーホール(101、121)をさらに含み、
前記第2スルーホール(101、121)もまた、前記反応性流体(320)を循環させるためのものであり、
前記主要面(104)と反対側の前記主要面(105)が、前記くぼみ領域をハウジングし、通常現われないくぼみ溝(109、129)を含み、
前記溝(109、129)が、前記第1スルーホール(108、128)と前記第2スルーホール(101、121)とを接続するのに適していることを特徴とする燃料電池用のバイポーラ板(100)。
【請求項2】
中央軸を有し、前記第1スルーホール(108、128)が、前記中央軸に沿って掘削されることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用のバイポーラ板(100)。
【請求項3】
前記各区画(102、103)が、前記各主要面(104、105)を覆うことを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池用のバイポーラ板(100)。
【請求項4】
前記第1スルーホール(108、128)及び/又は前記第2スルーホール(101、121)が、円形基部を有するシリンダー状を有し、軸が、前記主要面(104、105)の一方により決定される平面と垂直であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の燃料電池用のバイポーラ板(100)。
【請求項5】
第2の反応性流体を循環させるためのスルーホールの第2セット(559、579;659、679)、及び冷却流体を循環させるためのスルーホールの第3セット(669、689)をさらに含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の燃料電池用のバイポーラ板(100)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のバイポーラ板(300、330、340)をそれぞれ含む基本セルの重ね合わせ構造を含む燃料電池であって、
前記バイポーラ板(300、330、340)が、それぞれ、通常平面シール(250;350、351、352;450、451、452)によって二つ一組で分離され、前記シール(250;350、351、352;450、451、452)のそれぞれが、前記シールの周辺端部において膜電解質(260;460−462)及びスルーホール(251−253)を含み、
前記基本セルの全てに共通する反応性流体コレクター(320)を形成するために、前記重ね合わせバイポーラ板(300、330、340)のスルーホール(301、331、341)及び前記シールの全て(250;350、351、352;450、451、452)の前記スルーホール(251−253)が同一の空間を占めることを特徴とする燃料電池。
【請求項7】
基本セルの重ね合わせ構造を含む燃料電池であって、
それぞれの基本セルが請求項5に記載のバイポーラ板を含み、
前記基本セルの全てに共通する第2及び第3流体コレクターを形成するために、前記重ね合わせバイポーラ板のスルーホール及び全てのシールのスルーホールが同一の空間を占めることを特徴とする燃料電池。
【請求項8】
基本セルの重ね合わせ構造を含む燃料電池であって、
それぞれの基本セルが、請求項1から5のいずれか一項に記載のバイポーラ板を含み、
前記重ね合わせ構造が、前記バイポーラ板の頭−尾スタックを含むことを特徴とする燃料電池。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−541923(P2009−541923A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515925(P2009−515925)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【国際出願番号】PCT/FR2007/051335
【国際公開番号】WO2007/147991
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【Fターム(参考)】