説明

燃料電池モジュールおよび燃料電池装置

【課題】発電効率や耐久性を向上した燃料電池モジュールおよび燃料電池装置を提供する。
【解決手段】発電室8内に、柱状の燃料電池セル9を複数個立設させた状態で配列して電気的に接続してなるセルスタックと、燃料電池セル9の下端部を固定するとともに燃料電池セル9に燃料ガスを供給するためのマニホールド10と、セルスタックの上方に配置されたマニホールド10に供給する燃料ガスを生成するための改質器11とを収納してなり、燃料電池セル9が、発電室8の壁面に沿って周回状に配列されていることから、セルスタックにおける不均一な温度分布や、収納容器2やマニホールド10における局所的な熱応力や温度差を抑制でき、発電効率や耐久性の向上した燃料電池モジュール1とすることができる。また、燃料電池モジュール1を外装ケース内に収納することで、発電効率や耐久性の向上した燃料電池装置とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納容器内に複数個の燃料電池セルを収納してなる燃料電池モジュールおよびそれを具備する燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代エネルギーとして、燃料ガス(水素含有ガス)と空気(酸素含有ガス)とを用いて電力を得ることができる燃料電池セルを複数個配列してなるセルスタックを収納容器内に収納してなる燃料電池モジュールや、燃料電池モジュールを外装ケース内に収納してなる燃料電池装置が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような燃料電池モジュールにおいては、例えば直方体状の収納容器内に、複数の燃料電池セルを一列に配列してなるセルスタックと、セルスタックを固定するとともに燃料電池セルに燃料ガスを供給するためのマニホールドと、セルスタックの上方に燃料電池セルに供給する燃料ガスを生成する水蒸気改質を行なうための気化部と改質部とを備える改質器と、を収納して構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−59377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の燃料電池モジュールにおいては、気化部における吸熱反応に伴い、気化部の近傍に配置された燃料電池セルの温度が低下し、セルスタックにおいて不均一な温度分布が生じ、発電効率が低下するおそれがある。
【0006】
また、燃料電池モジュールの運転に伴い、燃料電池モジュールを構成する収納容器や、マニホールド等に局所的な熱応力や温度差が生じ、それに伴い収納容器の劣化が早まるほか、セルスタックとマニホールドとの接合部が破損するなど、耐久性が低下するおそれがあった。
【0007】
それゆえ、本発明は、発電効率や耐久性の向上した燃料電池モジュールおよびそれを具備する燃料電池装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の燃料電池モジュールは、収納容器内に設けられた発電室内に、燃料ガスと酸素含有ガスとで発電する柱状の燃料電池セルを複数個立設させた状態で配列して電気的に接続してなるセルスタックと、前記燃料電池セルの下端部を固定するとともに前記燃料電池セルに前記燃料ガスを供給するためのマニホールドと、前記セルスタックの上方に配置された、前記マニホールドに供給する前記燃料ガスを生成するための改質器とを収納してなる燃料電池モジュールであって、前記燃料電池セルが、前記発電室の壁面に沿って周回状に配列されていることを特徴とする。
【0009】
このような燃料電池モジュールにおいては、燃料電池セルが発電室の壁面に沿って周回状に配置されていることから、セルスタックにおける不均一な温度分布を抑制することができるほか、収納容器やマニホールド等において局所的な熱応力や温度差が生じることを抑制できる。それにより、発電効率や耐久性の向上した燃料電池モジュールとすることができる。
【0010】
また、本発明の燃料電池モジュールは、前記発電室の平面形状が円形状であるとともに、前記燃料電池セルが前記発電室の壁面に沿って環状に配列されていることが好ましい。
【0011】
このような燃料電池モジュールにおいては、燃料電池セルが環状に配置されていることから、平面形状が円形状の発電室内の温度分布を均一に近づけることができ、発電効率を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の燃料電池モジュールは、前記改質器および前記マニホールドが円筒状であって、前記収納容器の外部より挿入されて前記改質器の上面中央部に接続された、前記改質器に原燃料を供給するための原燃料供給管と、前記改質器の下面中央部と前記マニホールドの上面中央部とを接続し、前記改質器にて生成された燃料ガスを前記マニホールドに供給するための燃料ガス供給管とを備えていることが好ましい。
【0013】
このような燃料電池モジュールにおいては、改質器およびマニホールドが円筒状であることから、改質器およびマニホールドにおいて局所的な熱応力や温度差が生じることができ、耐久性を向上することができる。また、原燃料供給管が改質器の上面中央部に接続されていることから、改質器に効率よく原燃料を供給することができ、また改質器にて生成された燃料ガスをマニホールドに供給するための燃料ガス供給管が、改質器の下面中央部とマニホールドの上面中央部とを接続していることから、マニホールドに供給された燃料ガスを効率よくそれぞれの燃料電池セルに供給することができ、発電効率を向上することができる。
【0014】
また、本発明の燃料電池モジュールは、前記改質器が、前記原燃料と水とで水蒸気改質を行なう改質器であって、前記改質器は、上方に配置された前記水を気化させるための気化部と、該気化部の下方に配置された、前記原燃料と前記気化部で気化された水蒸気とで水蒸気改質を行なう改質部とを備えるとともに、前記気化部が、前記原燃料供給管から中央部に供給された前記原燃料を周縁側に向けて流すための渦巻状の気化部流路を備え、前記改質部が、前記気化部流路から周縁側に供給された前記原燃料を中央部側に向けて流すための渦巻き状の改質部流路を備えることが好ましい。
【0015】
このような燃料電池モジュールにおいては、水蒸気改質を行う改質器が、上方に配置された気化部と気化部の下方に配置された改質部とを備えることから、気化部における吸熱反応によるセルスタックの温度低下を抑制することができ、発電効率が低下することを抑制できる。
【0016】
また、気化部が、原燃料供給管から中央部に供給された原燃料を周縁側に向けて流すための渦巻状の気化部流路を備えるとともに、改質部が、周縁側に供給された原燃料を中央部側に向けて流すための渦巻状の改質部流路を備えることから、気化部流路および改質部流路の長さを長くすることができ、効率よく原燃料を燃料ガスに改質することができる。
【0017】
また、本発明の燃料電池モジュールは、前記収納容器は、該収納容器の下方側より供給される酸素含有ガスを上方へ流すための第1の流路と、該第1の流路を通って上方に流れた酸素含有ガスを前記発電室側に向けて流すための第2の流路と、該第2の流路を流れた酸素含有ガスを下方へ流して前記発電室内へ供給するための第3の流路と、前記第1の流路と前記第3の流路との間に設けられた、前記発電室内の排ガスを上方から下方へ流すための第4の流路とを備えることが好ましい。
【0018】
このような燃料電池モジュールにおいては、収納容器の下方側より供給される酸素含有ガスは、第1の流路を上方に向けて流れる間に、隣接する隣接する第4の流路を流れる排ガスの熱と熱交換され、第2の流路および第3の流路を流れる間に発電室内の熱とで熱交換されることとなる。それゆえ、排ガスの熱や発電室の熱により熱交換されて温められた酸素含有ガスを発電室内に供給することができ、発電効率を向上することができる。
【0019】
また、本発明の燃料電池モジュールは、前記収納容器において、前記第1の流路および前記第2の流路が、前記収納容器の外壁と該外壁の内側に所定間隔をあけて配置された内壁とで形成され、前記第4の流路が、前記内壁と該内壁の内側に所定間隔をあけて配置された排ガス用内壁とで形成され、前記第3の流路が、前記排ガス用内壁の内側で、かつ前記第2の流路と通じて前記発電室内に垂下するように配置されているとともに、下端部側に前記発電室内に酸素含有ガスを供給するための吹出し口を備える酸素含有ガス供給部材により形成されていることが好ましい。
【0020】
このような燃料電池モジュールにおいては、収納容器の下方より供給される酸素含有ガスは、収納容器の外壁と内壁で形成される第1の流路を上方に向けて流れた後、外壁と内壁で形成される第2の流路を流れて、内壁の内側に配置された排ガス用内壁の内側で、かつ第2の流路と通じて発電室内に垂下するように配置された酸素含有ガス供給部材により形成される第3の流路を流れて発電室内に供給される。また、発電室内の排ガスは、内壁と内壁の内側に配置された排ガス用内壁とで形成された第4の流路を流れて収納容器の外部に排気される。それにより、効率よく温められた酸素含有ガスを発電室内に供給することができ、発電効率を向上することができる。
【0021】
また、本発明の燃料電池モジュールは、前記第2流路における前記酸素含有ガス供給部材の接続部よりも内側に、前記第2の流路を流れる酸素含有ガスを折り返して前記酸素含有ガス供給部材に流すための折り返し部材を備えることが好ましい。
【0022】
このような燃料電池モジュールにおいては、第2の流路を流れる酸素含有ガスを効率よく酸素含有ガス供給部材に流すことができ、発電効率を向上することができる。
【0023】
本発明の燃料電池装置は、上記のうちいずれかの燃料電池モジュールと、燃料電池モジュールを作動させるための補機とを、外装ケース内に収納してなることから、発電効率および耐久性の向上した燃料電池装置とすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の燃料電池モジュールは、燃料電池セルが、発電室の壁面に沿って周回状に配列されていることから、発電効率や耐久性を向上した燃料電池モジュールとすることができる。また、本発明の燃料電池装置は、発電効率や耐久性の向上した燃料電池モジュールを収納してなることから、発電効率や耐久性の向上した燃料電池装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の燃料電池モジュールの一例を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示す燃料電池モジュールを概略的に示す断面図である。
【図3】(a)は図2に示す燃料電池モジュールを構成する改質器、セルスタック、マニホールドを抜粋して示す外観斜視図であり、(b)は図2に示す燃料電池モジュールを構成する改質器、燃料ガス供給管、マニホールドを抜粋して示す外観斜視図である。
【図4】図2に示すA−A線断面におけるセルスタックと燃料ガス供給管を抜粋して示す断面図である。
【図5】図2に示す改質器および原燃料供給管の一部を抜粋して示し、(a)は気化部および原燃料供給管の一部、(b)は改質部を示す分解斜視図である。
【図6】本発明の燃料電池モジュールの他の一例を概略的に示す断面図である。
【図7】本発明の燃料電池装置の一例を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明の燃料電池モジュール1(以下、モジュールという場合がある。)の一例を示す外観斜視図である。なお、以降の図において同一の部材については同一の番号を付するものとする。
【0027】
図1に示すモジュール1は、円筒状の収納容器2により構成されている。なお、収納容器2には、後述する外部より原燃料を供給するための原燃料ガス供給管3が上面側より挿入されており、下面側には収納容器2内に酸素含有ガス(空気)を供給するための酸素含有ガス導入管4が設けられている。以下、図2を用いてモジュール1について説明する。
【0028】
図2は図1に示すモジュール1を概略的に示す断面図である。収納容器2は、外壁5にて収納容器2の外枠が形成され、内部に燃料電池セル9(セルスタック装置)を収納する発電室8が形成されている。
【0029】
このような収納容器2においては、外壁5の内側に所定間隔をあけて内壁6が配置され、内壁6の内側(内壁6の側壁の内側)に排ガス用内壁7が配置され、内壁6の上壁と排ガス用内壁7とで囲まれる空間が発電室8となっている。
【0030】
ここで、収納容器2は外壁5の側壁と内壁6の側壁とで形成された空間が第1の流路16となり、外壁5の上壁と内壁6の上壁とで形成された空間が第2の流路17となり、内壁6と排ガス用内壁7とで形成された空間が第4の流路(排ガス流路)19となる。ここで、内壁6の上壁には、排ガス用内壁7よりも内側で、かつ第2の流路と通じて発電室8内に垂下するように配置された酸素含有ガス供給部材13が設けられており、酸素含有ガス供給部材13の内部が、第3の流路18となる。なお、酸素含有ガス供給部材13の下端部側には、発電室8内に酸素含有ガスを供給するための吹出し口23が設けられている。なお、吹出し口23は、複数の穴を設けた形状としてもよく、スリット状としてもよい。
【0031】
また、外壁5、内壁6、排ガス用内壁7はそれぞれ円筒状に設けられており、それにより発電室8の平面形状が円形状に形成されている。
【0032】
また、収納容器2の底部には、酸素含有ガス(空気)を収納容器2内に供給するための酸素含有ガス導入管4が接続されており、酸素含有ガス導入管4から供給される酸素含有ガスは酸素含有ガス導入部14に流れる。なお、内壁6の底壁と外壁5の底壁とで形成された空間が酸素含有ガス導入部14となる。酸素含有ガス導入部14は、酸素含有ガス導入口15により第1の流路16とつながっているため、酸素含有ガス導入部14を流れた酸素含有ガスは、酸素含有ガス導入口15を通して、第1の流路16に流れる。第1の流路16を上方に向けて流れた酸素含有ガスは、第2の流路17を発電室8側(図2に示す収納容器2おいては外壁5の上壁に沿った中央部側)に向けて流れたのち、酸素含有ガス供給部材13の内部に設けられた第3の流路18を下方に向けて流れて吹出し口23を通して、発電室8内に供給される。吹出し口23より発電室8内に供給された酸素含有ガスは、燃料電池セル9の下端部側から上端部側に向けて流れることとなり、効率よく燃料電池セル9の発電を行なうことができる。
【0033】
一方、燃料電池セル9より排出される排ガスや、燃料電池セル9の上端部側で余剰の燃料ガスを燃焼させることにより生じる排ガスは、発電室8の上方より第4の流路(以下、排ガス流路という場合がある。)19に流入する。排ガス流路19を下方に向けて流れた排ガスは、排ガス収集口20を通して排ガス収集室21に流れた後、排ガス収集室21に接続された排ガス排気管22を通して収納容器2の外部に排気される。なお、排ガス用内壁7の底壁と内壁6の底壁とで形成された空間が排ガス収集室21となる。また、図2に示す収納容器2においては、排ガス排気管22が、酸素含有ガス導入管4の内部に設けられた形状(2重管)としているが、それぞれをずらして配置することもできる。
【0034】
それゆえ、酸素含有ガス導入管4より導入された酸素含有ガスは、酸素含有ガス導入部14を流れる間に、排ガス収集部21を流れる排ガスと熱交換され、第1の流路16を流れる間に、排ガス流路19を流れる排ガスと熱交換され、第2の流路17および第3の流路18を流れる間に、発電室8内の熱とで熱交換されることとなる。
【0035】
それにより、効率よく酸素含有ガスの温度を高めることができることから、燃料電池セル9の発電効率を向上することができる。
【0036】
なお、収納容器2の内部には、発電室8内を高温に維持し、燃料電池セル9の温度が低下して発電量が低減することを抑制するための断熱材24が適宜配置されており、図2に示す収納容器2においては、排ガス用内壁7と酸素含有ガス供給部材13との間、排ガス用内壁7の底壁とマニホールド10との間、改質器11と内壁6との間にそれぞれ配置されている。
【0037】
ところで、発電室8内に配置された改質器11やマニホールド10の構造や、セルスタック(燃料電池セル9)の配列構造によっては、セルスタックにおいて不均一な温度分布が生じ発電効率が低下するおそれや、収納容器2やマニホールド10等に局所的な熱応力や温度が生じ、それに伴い収納容器の劣化が早まるほか、セルスタックとマニホールド10の接合部が破損する等、耐久性が低下するおそれがあった。
【0038】
それゆえ、本発明のモジュール1においては、燃料電池セル9が、発電室8の壁面に沿って周回状に配列されている。
【0039】
図3(a)は、図2に示すモジュール1のうち、改質器11、セルスタック(燃料電池セル9)、マニホールド10を抜粋して示す外観斜視図であり、図3(b)は、図2に示すモジュール1のうち、改質器11、燃料ガス供給管12、マニホールド10を抜粋して示す外観斜視図であり、図4は図2に示すA−A線断面におけるセルスタック(燃料電池セル9)と燃料ガス供給管12を抜粋して示す断面図である。なお、図3に示す、改質器11、セルスタック(燃料電池セル9)、マニホールド10および燃料ガス供給管12により、セルスタック装置25が構成されている。
【0040】
図3に示すセルスタック装置25においては、図2に示すモジュール1における平面形状が円形状に形成された発電室8にあわせて、改質器11およびマニホールド10が円筒状に形成されている。そして、柱状の燃料電池セル9の複数個が、集電部材(図3においては図示せず、図4参照。)を介して平面形状が円形状の発電室8の壁面に沿って周回状(環状)に配列され、その下端部がガラスシール材等によりマニホールド10に固定されている。
【0041】
すなわち、収納容器2、改質器11およびマニホールド10がそれぞれ円筒状に形成され、発電室8が平面形状が円形状に形成され、また燃料電池セル9が環状に配置されている(図4参照)ことから、セルスタックにおける温度分布を均一に近づけることができる。それにより、セルスタック(セルスタック装置25)の発電効率を向上することができる。
【0042】
また、モジュール1を上述のような構成とすることにより、セルスタックにおける温度分布のみならず、発電室8内の温度分布も均一に近づけることができる。それにより、収納容器2やマニホールド10において局所的な熱応力や温度差が生じることを抑制することができる。それにより、セルスタックとマニホールド10の接合部が破損することを抑制することができ、セルスタック装置25の耐久性を向上することができるとともに、収納容器2の耐久性を向上することができる。
【0043】
ここで、改質器11にて生成された燃料ガスをマニホールド10に供給するための燃料ガス供給管12が、改質器11の下面中央部とマニホールド10の上面中央部とを接続するように設けられている。それにより、マニホールド10に供給された燃料ガスが、効率よくセルスタックを構成する各燃料電池セル9に供給されることから、各燃料電池セル9に供給される燃料ガスの流配を均一に近づけることができ、セルスタック(セルスタック装置25)の発電効率を向上することができる。
【0044】
なお、燃料電池セル9としては、各種燃料電池セルが知られているが、モジュール1を収納してなる燃料電池装置を小型化する上で、固体酸化物形燃料電池セルとすることができる。それにより、燃料電池装置を小型化することができるとともに、家庭用燃料電池で求められる変動する負荷に追従する負荷追従運転を行なうことができる。
【0045】
以下に、図2および図3に示す柱状の燃料電池セル9について、図4を用いて説明する。図4においては、一対の対向する平坦面を有し、内部に燃料ガスを流すための内部を貫通する燃料ガス流路27(図4に示す燃料電池セル9においては6個)を備える柱状の導電性支持体26(以下、支持体26と略す場合がある)の一方の平坦面上に燃料側電極層28、固体電解質層29及び酸素側電極層30を順次積層してなり、他方の平坦面上にはインターコネクタ31が設けられて構成されている中空平板型の燃料電池セル9を示している。
【0046】
このような燃料電池セル9の複数個を、隣接する燃料電池セル9間に集電部材33を介装して電気的に直列に接続してセルスタックが形成される。なお、複数個の燃料電池セル9を周回状(環状)に配置してなるセルスタックにおいては、セルスタックを構成する集電部材33の1つを、それぞれが接合されていない端部集電部材34とすることにより、セルスタックの発電により生じた電流を効率よく引出すことができる。なお、円筒状の収納容器2においては、端部集電部材34に接合され、外部に電流を引出すための電流引出し部(図示せず)を、収納容器2の上面側より挿出する構成とすることにより、モジュール1の製造(組立作業)を容易にすることができる。
【0047】
また、インターコネクタ31の外面(上面)にはP型半導体32を設けることもできる。集電部材33または端部集電部材34を、P型半導体32を介してインターコネクタ31に接続させることにより、両者の接触がオーム接触となり、電位降下を少なくし、集電性能の低下を有効に回避することが可能となる。
【0048】
このような燃料電池セル9においては、燃料電池セル9の上端部側にて、燃料ガス流路27より排出され、燃料電池セル9の発電で使用されなかった燃料ガスを燃焼させる構成とすることができる。それにより、燃料電池セル9の温度を上昇させるまたは高温に維持することができるとともに、改質器11の温度を上昇させることができ、改質器11での改質反応を効率よく行なうことができる。
【0049】
以下に、図4において示す燃料電池セル9を構成する各部材について説明する。
【0050】
支持体26は、燃料ガスを燃料側電極層28まで透過するためにガス透過性であること、さらには、インターコネクタ31を介して集電するために導電性であることが要求される。したがって、支持体26としては、かかる要求を満足するものを材質として採用する必要があり、例えば導電性セラミックスやサーメット等を用いることができる。
【0051】
燃料側電極層28は、一般的に公知のものを使用することができ、多孔質の導電性セラミックス、例えば希土類元素が固溶しているZrO(安定化ジルコニアと称する)とNiおよび/またはNiOとから形成することができる。
【0052】
固体電解質層29は、電極間の電子の橋渡しをする電解質としての機能を有していると同時に、燃料ガスと酸素含有ガスとのリークを防止するためにガス遮断性を有することが必要とされ、3〜15モル%の希土類元素が固溶したZrOから形成される。なお、上記特性を有する限りにおいては、他の材料等を用いて形成してもよい。
【0053】
酸素側電極層30は、一般的に用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、いわゆるABO型のペロブスカイト型酸化物からなる導電性セラミックスから形成することができる。空気極層13はガス透過性を有していることが必要であり、開気孔率が20%以上、特に30〜50%の範囲にあることが好ましい。
【0054】
インターコネクタ31は、導電性セラミックスから形成することができるが、燃料ガス(水素含有ガス)および酸素含有ガス(空気等)と接触するため、耐還元性及び耐酸化性を有することが必要であり、それゆえランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO系酸化物)が好適に使用される。インターコネクタ31は支持体26に形成された燃料ガス流路27を流通する燃料ガス、および支持体26の外側を流通する酸素含有ガスのリークを防止するために緻密質でなければならず、93%以上、特に95%以上の相対密度を有していることが好ましい。
【0055】
なお、燃料電池セル9を作製するにあたり、燃料側電極層28または固体電解質層29との同時焼成により支持体26を作製する場合においては、鉄族金属成分(またはその酸化物)と特定希土類酸化物とから支持体26を形成することが好ましい。また、支持体26は、所要ガス透過性を備えるために開気孔率が30%以上、特に35〜50%の範囲にあるのが好適であり、そしてまたその導電率は50S/cm以上、より好ましくは300S/cm以上、特に好ましくは440S/cm以上とすることがよい。
【0056】
さらに、P型半導体層32としては、遷移金属ペロブスカイト型酸化物からなる層を例示することができる。具体的には、インターコネクタ31を構成するランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO系酸化物)よりも電子伝導性が大きいもの、例えば、BサイトにMn、Fe、Coなどが存在するLaMnO系酸化物、LaFeO系酸化物、LaCoO系酸化物などの少なくとも一種からなるP型半導体セラミックスを使用することができる。このようなP型半導体層32の厚みは、一般に、30〜100μmの範囲にあることが好ましい。
【0057】
なお、図示はしていないが、固体電解質層29と酸素側電極層30との間に、固体電解質層29と空気極層30との接合を強固とするとともに、固体電解質層29の成分と酸素側電極層30の成分とが反応して電気抵抗の高い反応層が形成されることを抑制する目的で、Ce(セリウム)と他の希土類元素(SmやGd等)とを含有する組成にて形成される中間層を備えることもできる。
【0058】
さらに、図示はしていないが、インターコネクタ31と支持体26との間に、インターコネクタ31と支持体26との間の熱膨張差を軽減する等のために、燃料側電極層28と類似した組成の密着層を設けることもできる。
【0059】
上述したセルスタック装置25においては、改質器11にて改質効率のよい水蒸気改質を行なうことにより、燃料電池セル9に効率よく燃料ガスを供給することができる。ここで、改質器11を円筒状の形状とすることにより、水蒸気改質に伴う吸熱や発熱による温度変化の影響が、セルスタックを構成する特定の燃料電池セル9にのみ影響することを抑制することができ、各燃料電池セル9に略均等に影響することとなる。それにより、セルスタックの温度分布を均一に近づけることができ、セルスタック(セルスタック装置25)の発電効率を向上することができる。
【0060】
ここで、改質器11は、水蒸気改質に伴う吸熱反応の温度変化の影響が、セルスタック(燃料電池セル9)に及ぶことを抑制できる構成とすることが好ましい。
【0061】
図5は、改質器11を示す分解斜視図であり、(a)は改質器11を構成する気化部および原燃料供給管3の一部を示し、(b)は改質器11を構成する改質部を示している。なお、(a)においては、気化部を構成する上蓋をはずした状態を示している。
【0062】
図5に示す改質器11においては、水を気化させるための気化部35を、改質反応を行なう改質部39の上方に配置していることから、気化部35における水の気化に伴う吸熱による温度低下の影響がセルスタックに及ぼす影響を抑制することができる。
【0063】
なお、改質器11にて水蒸気改質を行なうにあたって、原燃料供給管3から天然ガス等の原燃料および水を供給する。この場合において、原燃料供給管3を2重管として、原燃料と水とを別々の管から供給することもできる。なお、図5(a)においては、原燃料供給管3から天然ガス等の原燃料および水を供給する場合を示している。
【0064】
原燃料供給管3から供給される原燃料および水は、気化部35の中央部に設けられた原燃料受け部36に供給される。それにより、原燃料供給管3から供給された原燃料および水は、一旦、原燃料受け部36に貯えられる。原燃料受け部36に貯えられた原燃料および水は、原燃料受け部36に設けられた原燃料送出口40から、その一端が原燃料受け部36に接続され原燃料供給管3から供給された原燃料を周縁に流すための渦巻状の気化部流路37に流れる。この場合において、原燃料受け部36に貯えられた水の一部は、水蒸気として気化部流路37に流すこともできる。
【0065】
なお、原燃料受け部36は、例えばその高さを気化部流路37を構成する壁の高さよりも低くし、原燃料受け部36に貯えられた水を水蒸気に気化させた後、原燃料受け部36の上方から、気化部流路37に流すように構成することもできる。また、原燃料供給管3は、原燃料供給管3の開放された一端が原燃料受け部36の底面と間隔をあけて位置するように配置するほか、原燃料供給管3の一端部に原燃料送出口(孔等)を設け、一端を原燃料受け部36の底面と接合した構成とすることもできる。なお、図5(a)においては、原燃料供給管3の開放された一端が原燃料受け部36の底面と間隔をあけて位置するように配置した状態を示している。
【0066】
同様に天然ガス等の原燃料も気化部流路37に流れる。気化部流路37を渦巻状とすることにより、気化部流路37の長さを長くすることができ、効率よく水を水蒸気に気化させることができるとともに、水蒸気と原燃料とを効率よく混合することができる。なお、以下、水蒸気が混合された原燃料を原燃料ガスという場合がある。気化部流路37を周縁側に流れた原燃料(原燃料ガス)は、気化部流路37の周縁側(他端部側)に設けられた原燃料ガス流出口38を介して改質部39に流れる。なお、気化部流路37に、水を効率よく気化させるためのセラミックボール等を配置することもできる。なお、気化部流路37は、原燃料と水蒸気とを効率よく周縁側に流すために、周縁部に向けて下がるように傾斜する構成とすることもできる。
【0067】
原燃料ガス流出口38を流れた原燃料ガスは改質部39の周縁側に流れる。改質部39は、原燃料ガス流出口38を介して改質部39の周縁側に流入した原燃料ガスを中央部側に向けて流すための渦巻状の改質部流路41を備えている。なお、改質部39の上面は、気化部35の底面により塞がれている。
【0068】
改質部流路41内には、原燃料ガスを燃料ガスに改質するための改質触媒を備えている(図示せず)。改質触媒としては、改質効率や耐久性に優れた改質触媒を用いることが好ましく、例えば、γ−アルミナやα−アルミナやコージェライト等の多孔質担体にRu、Pt等の貴金属やNi、Fe等の卑金属を担持させた改質触媒等を用いることができる。
【0069】
改質部流路41は、その一端が、改質部39の中央部に設けられ、改質部流路41にて生成された燃料ガスを燃料ガス供給管12に流すための燃料ガス送出口42の近傍に位置するように設けられている。それにより、改質部流路41にて生成された燃料ガスは、燃料ガス送出口42を介して燃料ガス供給管12に流れた後、燃料電池セル9に供給される。なお、改質部流路41は、原燃料ガスを効率よく燃料ガス送出口42に流すために、中央部に向けて下がるように傾斜する構成とすることもできる。
【0070】
このように、改質器11を、上方に配置され、渦巻状の気化部流路37を備える気化部35と、気化部35の下方に配置され、渦巻状の改質部流路41を備える改質部39とから構成することにより、効率よく改質反応を行なうことができるとともに、気化部35における水の気化に伴う吸熱による温度低下の影響が、セルスタック(燃料電池セル9)に及ぶことを抑制できる。このような改質器11を備えることにより、発電効率や耐久性の向上したモジュール1とすることができる。
【0071】
図6は、本発明の燃料電池モジュールの他の一例を概略的に示す断面図である。図6に示すモジュール43は、図2に示すモジュール1と対比して、第2の流路17における酸素含有ガス供給部材13の接続部よりも内側に、第2の流路17を流れる酸素含有ガスを折り返して酸素含有ガス供給部材13に流すための折り返し部材44を備えている点で異なる。
【0072】
第1の流路16を上方に向けて流れた酸素含有ガスは、続いて第2の流路17を流れて酸素含有ガス供給部材13に流れるが、第2の流路17を流れた酸素含有ガスの一部が、酸素含有ガス供給部材13に流れずに、第2の流路17内に滞留するおそれがある。
【0073】
それゆえ、図6に示すモジュール43においては、第2の流路17における酸素含有ガス供給部材13の接続部よりも内側に折り返し部材44を備えることにより、第2の流路17を、酸素含有ガス供給部材13を越えて流れた酸素含有ガスは、折り返し部材44により第1の流路16側に折り返される。それにより、発電室8内の熱と熱交換された酸素含有ガスを、酸素含有ガス供給部材13に流すことができ、セルスタック(セルスタック装置25)の発電効率を向上することができる。
【0074】
図7は、外装ケース内に図2で示したモジュール1と、モジュール1を動作させるための補機(図示せず)とを収納してなる本発明の燃料電池装置の一例を概略的に示す斜視図である。なお、図7においては一部構成を省略して示している。
【0075】
図7に示す燃料電池装置45は、外装板46と蓋部材47とからから構成される円筒状の外装ケース内を仕切板48により上下に区画し、その上方側を上述したモジュール1を収納するモジュール収納室49とし、下方側をモジュール1を動作させるための補機を収納する補機収納室50として構成されている。なお、補機収納室50に収納する補機を省略して示している。
【0076】
また、仕切板48には、補機収納室50の空気をモジュール収納室49側に流すための空気流通口51が設けられており、モジュール収納室49を構成する蓋部材47(上蓋)33の一部に、モジュール収納室49内の空気を排気するための排気口52が設けられている。
【0077】
このような燃料電池装置45においては、発電効率や耐久性の向上したモジュール1を収納してなることから、発電効率や耐久性の向上した燃料電池装置45とすることができる。
【0078】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
【0079】
例えば、上述の説明においてモジュール1を円筒状の形状のモジュール1を用いて説明したが、燃料電池セル9が発電室8の壁面に沿って周回状に配置される形状であれば、円筒状に限られるものではなく、上下方向に長い四角柱状とすることもできる。この場合、外装ケースもモジュール1の形状と併せて上下方向に長い四角柱状とすることができる。
【符号の説明】
【0080】
1、43:燃料電池モジュール
2:収納容器
3:原燃料供給管
5:外壁
6:内壁
7:排ガス用内壁
8:発電室
9:燃料電池セル
10:マニホールド
11:改質器
12:燃料ガス供給管
13:酸素含有ガス導入部材
16:第1の流路
17:第2の流路
18:第3の流路
19:第4の流路
25:セルスタック装置
35:気化部
39:改質部
45:燃料電池装置




【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納容器内に設けられた発電室内に、燃料ガスと酸素含有ガスとで発電する柱状の燃料電池セルを複数個立設させた状態で配列して電気的に接続してなるセルスタックと、前記燃料電池セルの下端部を固定するとともに前記燃料電池セルに前記燃料ガスを供給するためのマニホールドと、前記セルスタックの上方に配置された、前記マニホールドに供給する前記燃料ガスを生成するための改質器とを収納してなる燃料電池モジュールであって、
前記燃料電池セルが、前記発電室の壁面に沿って周回状に配列されていることを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項2】
前記発電室の平面形状が円形状であるとともに、前記燃料電池セルが前記発電室の壁面に沿って環状に配列されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池モジュール。
【請求項3】
前記改質器および前記マニホールドが円筒状であって、前記収納容器の外部より挿入されて前記改質器の上面中央部に接続された、前記改質器に原燃料を供給するための原燃料供給管と、前記改質器の下面中央部と前記マニホールドの上面中央部とを接続し、前記改質器にて生成された燃料ガスを前記マニホールドに供給するための燃料ガス供給管とを備えていることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池モジュール。
【請求項4】
前記改質器が、前記原燃料と水とで水蒸気改質を行なう改質器であって、前記改質器は、上方に配置された前記水を気化させるための気化部と、該気化部の下方に配置された、前記原燃料と前記気化部で気化された水蒸気とで水蒸気改質を行なう改質部とを備えるとともに、前記気化部が、前記原燃料供給管から中央部に供給された前記原燃料を周縁側に向けて流すための渦巻状の気化部流路を備え、前記改質部が、前記気化部流路から周縁側に供給された前記原燃料を中央部側に向けて流すための渦巻き状の改質部流路を備えることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池モジュール。
【請求項5】
前記収納容器は、該収納容器の下方側より供給される酸素含有ガスを上方へ流すための第1の流路と、該第1の流路を通って上方に流れた酸素含有ガスを前記発電室側に向けて流すための第2の流路と、該第2の流路を流れた酸素含有ガスを下方へ流して前記発電室内へ供給するための第3の流路と、前記第1の流路と前記第3の流路との間に設けられた、前記発電室内の排ガスを上方から下方へ流すための第4の流路とを備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれかに記載の燃料電池モジュール。
【請求項6】
前記収納容器において、前記第1の流路および前記第2の流路が、前記収納容器の外壁と該外壁の内側に所定間隔をあけて配置された内壁とで形成され、前記第4の流路が、前記内壁と該内壁の内側に所定間隔をあけて配置された排ガス用内壁とで形成され、前記第3の流路が、前記排ガス用内壁の内側で、かつ前記第2の流路と通じて前記発電室内に垂下するように配置されているとともに、下端部側に前記発電室内に酸素含有ガスを供給するための吹出し口を備える酸素含有ガス供給部材により形成されていることを特徴とする請求項5に記載の燃料電池モジュール。
【請求項7】
前記第2流路における前記酸素含有ガス供給部材の接続部よりも内側に、前記第2の流路を流れる酸素含有ガスを折り返して前記酸素含有ガス供給部材に流すための折り返し部材を備えることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の燃料電池モジュール。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のうちいずれかに記載の燃料電池モジュールと、該燃料電池モジュールを作動させるための補機とを、外装ケース内に収納してなることを特徴とする燃料電池装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−113829(P2011−113829A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269452(P2009−269452)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】