説明

燃料電池ユニット

【課題】低温時の熱交換効率を向上させるとともに、高温時の運転効率を向上させることができる燃料電池ユニットを提供すること。
【解決手段】燃料電池の発電反応に使用されなかった燃料ガスと酸化剤ガスとが燃焼することで発生する燃焼ガスの熱を利用して燃料電池の発電反応に使用する酸化剤ガスを加熱する熱交換器22を備える燃料電池ユニットであって、熱交換器22は、燃焼ガスを流す燃焼ガス配管70と、燃焼ガス配管70内に配置され、燃焼ガス配管70を流れる燃焼ガスに乱流を生じさせる乱流生成部材71と、を備え、乱流生成部材71は、燃焼ガス配管70よりも大きな熱膨張率を有し、温度に応じて燃焼ガス配管70の長手方向に伸縮するとともに、少なくともその一端が燃焼ガス配管70に固定されておらず、温度が上昇するほど燃焼ガス配管70から突出する部分が増加するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスと酸化剤ガスにより発電を行う燃料電池ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料ガス(水素含有ガス)と発電用空気(酸化剤ガス)とを用いて電力を得ることができる複数の単セルをケーシング内に収容し、それら複数の単セルに燃料ガスと発電用空気とを供給して発電する燃料電池ユニットが種々提案されている。このような燃料電池ユニットでは、起動初期時等の低温時において、迅速に昇温し、少しでも早く発電状態に移行することが要求される。その要求に応えるために、発電用空気を予熱する熱交換器の熱交換効率を向上させる技術が開発されている。下記特許文献1には、高温ガスの流路内に螺旋状の板体を設け、流路内を流れる高温ガスに乱流を生じさせることで熱交換効率を向上させる熱交換器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−26281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された熱交換器では、流路内を流れる高温ガスに積極的に乱流を生じさせているため、圧力損失が大きくなり、消費電力が増大する要因となる。特に、発電時等の高温時には、気体の熱膨張や粘性が増大するため燃料電池システム全体の圧力損失が大きくなり、燃料ガスや発電用空気を供給するポンプやブロアに要する負荷が増大する。このような状態で、熱交換器での圧力損失まで大きくなると、ポンプやブロアに要する負荷がさらに増大し、消費電力も増大するため、運転効率が低下してしまう。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃料ガスと酸化剤ガスにより発電を行う燃料電池ユニットであって、低温時の熱交換効率を向上させるとともに、高温時の運転効率を向上させることができる燃料電池ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明に係る燃料電池ユニットは、燃料電池の発電反応に使用されなかった燃料ガスと酸化剤ガスとが燃焼することで発生する燃焼ガスの熱を利用して前記燃料電池の発電反応に使用する酸化剤ガスを加熱する熱交換器を備える燃料電池ユニットであって、前記熱交換器は、前記燃焼ガスを流す燃焼ガス流路と、前記燃焼ガス流路内に配置され、前記燃焼ガス流路を流れる前記燃焼ガスに乱流を生じさせる乱流生成部材と、を備える。前記乱流生成部材は、前記燃焼ガス流路よりも大きな熱膨張率を有し、温度に応じて前記燃焼ガス流路の長手方向に伸縮するとともに、少なくともその一端が前記燃焼ガス流路に固定されておらず、温度が上昇するほど前記燃焼ガス流路から突出する部分が増加するように配置されている。
【0007】
本発明では、燃焼ガス流路を流れる燃焼ガスに乱流を生じさせる乱流生成部材であって、燃焼ガス流路よりも大きな熱膨張率を有し、温度に応じて燃焼ガス流路の長手方向に伸縮する乱流生成部材を、少なくともその一端が燃焼ガス流路に固定されていない状態で燃焼ガス流路内に配置し、かつ、温度が上昇するほど燃焼ガス流路から突出する部分が増加するように配置することができる。
【0008】
これにより、温度が上昇するにつれて乱流生成部材の燃焼ガス流路からの突出量を増加させることができ、乱流の発生に寄与しない乱流生成部材の割合を増加させることができるため、温度が高いほど燃焼ガス流路と乱流生成部材との間で生ずる乱流量を減少させることが可能となる。
【0009】
すなわち、本発明の構成を用いることによって、低温時には燃焼ガス流路内を流れる燃焼ガスの乱流を大きくすることができるため、熱交換効率を向上させることが可能となり、高温時には燃焼ガス流路内を流れる燃焼ガスの乱流を減少させることができるため、低温時よりも圧力損失を抑え、運転効率を向上させることが可能となる。
【0010】
また本発明に係る燃料電池ユニットにおいて、前記乱流生成部材が、少なくともいずれか一箇所で前記燃焼ガス流路に固定されていることも好ましい。
【0011】
この好ましい態様では、乱流生成部材が伸縮を繰り返しても同じ位置で伸縮させることができるため、各温度に対する燃焼ガス流路からの突出量を一定に保つことが可能となる。
【0012】
また本発明に係る燃料電池ユニットにおいて、前記乱流生成部材は、前記燃焼ガス流路の上流側に位置する一端部が前記燃焼ガス流路に固定され、前記燃焼ガス流路の下流側に位置する他端部は前記燃焼ガス流路に固定されていないことも好ましい。
【0013】
この好ましい態様では、比較的に高温側となる燃焼ガス流路の上流側に位置する乱流生成部材の一端部を固定することで、比較的に低温側に位置して膨張量が比較的に小さくなる乱流生成部材の他端部側を突出させることができるため、高温時に、乱流をより減少することができ、運転効率をより向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低温時の熱交換効率を向上させるとともに、高温時の運転効率を向上させることができる燃料電池ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態における燃料電池モジュールの外観を示す斜視図である。
【図2】図1の中央近傍における断面図であって、図1のA方向から見た断面を示す断面図である。
【図3】図1の中央近傍における断面図であって、図1のB方向から見た断面を示す断面図である。
【図4】図1のケーシングから一部の外板を取り除いた状態を示す斜視図である。
【図5】図2に相当する模式図であって、発電用空気及び燃焼ガスの流れを示す模式図である。
【図6】図3に相当する模式図であって、発電用空気及び燃焼ガスの流れを示す模式図である。
【図7】本実施形態に用いられる燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。
【図8】本実施形態における燃料電池セルスタックの構成を示す斜視図である。
【図9】図6の熱交換器を示す模式図である。
【図10】図9の乱流生成部材が熱膨張により伸長した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0017】
本発明の実施形態である燃料電池モジュール(燃料電池ユニット)について、図1を参照しながら説明する。図1に示す燃料電池モジュール2は、固体電解質形燃料電池ユニットの一部を構成するものである。固体電解質形燃料電池ユニットは、燃料電池モジュール2と、補機ユニット(図示せず)とを備える。
【0018】
図1においては、燃料電池モジュール2の高さ方向をy軸方向としている。このy軸に直交する平面に沿ってx軸及びz軸を定義し、燃料電池モジュール2の短手方向に沿った方向をx軸方向とし、燃料電池モジュール2の長手方向に沿った方向をz軸方向としている。図2以降において図中に記載しているx軸、y軸、及びz軸は、図1におけるx軸、y軸、及びz軸を基準としている。また、z軸の負方向に沿った方向をA方向とし、x軸の正方向に沿った方向をB方向としている。
【0019】
燃料電池モジュール2は、燃料電池セル(詳細は後述する)を収容するケーシング56と、ケーシング56の上部に設けられている熱交換器22とを備える。ケーシング56の内部は密封空間となっている。ケーシング56には、被改質ガス供給管60と、水供給管62とが繋げられている。一方、熱交換器22には、発電用空気導入管74と、燃焼ガス排出管82とが繋げられている。
【0020】
被改質ガス供給管60は、ケーシング56の内部に都市ガスといった改質用の被改質ガスを供給する管路である。水供給管62は、被改質ガスを水蒸気改質する際に用いられる水を供給する管路である。発電用空気導入管74は、改質後の燃料ガスと発電反応を起こさせるための発電用空気(酸化剤ガス)を供給する管路である。燃焼ガス排出管82は、発電反応後の燃料ガスを燃焼した結果生じる燃焼ガスを排出する管路である。
【0021】
続いて、図2〜図4を参照しながら、燃料電池モジュール2の内部について説明する。図2は、燃料電池モジュール2をその中央近傍において図1のA方向から見た断面図である。図3は、燃料電池モジュール2をその中央近傍において図2のB方向から見た断面図である。図4は、図1に示す燃料電池モジュール2から燃料電池セル集合体を覆うケーシング56の一部を取り外した状態を示す斜視図である。
【0022】
図2〜図4に示すように、燃料電池モジュール2の燃料電池セル集合体12は、ケーシング56により、全体が覆われている。図4に示すように、燃料電池セル集合体12は、全体としてB方向よりA方向の方が長いほぼ直方体形状であり、改質器20側の上面、燃料ガスタンク68側の下面、図4のA方向に沿って延びる長辺側面と、図4のB方向に沿って延びる短辺側面と、を備えている。
【0023】
本実施形態の場合、水供給管62から供給される水を蒸発させるための蒸発混合器(図に明示しない)は、改質器20の内部に設けられている。蒸発混合器は、燃焼ガスにより加熱され、水を水蒸気にすると共に、この水蒸気と、被改質ガスである燃料ガス(都市ガス)と空気とを混合するためのものである。
【0024】
被改質ガス供給管60及び水供給管62は、ケーシング56の内部に導かれた後、共に改質器20に繋がれている。より具体的には、図3に示すように、改質器20の上流端である図中右側の端部に繋がれている。
【0025】
改質器20は、燃料電池セル集合体12の上方に形成された燃焼室18の更に上方に配置されている。したがって、改質器20は、発電反応後の残余の燃料ガス及び空気による燃焼熱によって熱せられ、蒸発混合器としての役割と、改質反応を起こす改質器としての役割とを果たすように構成されている。
【0026】
改質器20の下流端(図3の左端)には、燃料供給管66の上端が接続されている。この燃料供給管66の下端側66aは、燃料ガスタンク68内に入り込むように配置されている。
【0027】
図2〜図4に示すように、燃料ガスタンク68は、燃料電池セル集合体12の真下に設けられている。また、燃料ガスタンク68内に挿入された燃料供給管66の下端側66aの外周には、長手方向(A方向)に沿って複数の小穴(図示せず)が形成されている。改質器20で改質された燃料ガスは、これら複数の小穴(図示せず)によって燃料ガスタンク68内に長手方向に均一に供給されるようになっている。燃料ガスタンク68に供給された燃料ガスは、燃料電池セル集合体12を構成する各燃料電池セルユニット16の内側にある燃料ガス流路(詳細は後述する)内に供給され、燃料電池セルユニット16内を上昇して、燃焼室18に至るようになっている。
【0028】
続いて、発電用空気を燃料電池モジュール2の内部へ供給するための構造を、図2〜図4及び図5、図6を参照しながら説明する。図5は、図2に対応する模式図であって、発電用空気及び燃焼ガスの流れを示す図である。図6は、図3に対応する模式図であって、同様に発電用空気及び燃焼ガスの流れを示す図である。これらの図に示すように、改質器20の上方に、熱交換器22が設けられている。熱交換器22には、複数の燃焼ガス配管70と、この燃焼ガス配管70の周囲に形成された発電用空気流路72とが設けられている。
【0029】
熱交換器22の上面における一端側(図3における右端)には、発電用空気導入管74が取り付けられている。この発電用空気導入管74により、発電用空気流量調整ユニット(図示しない)から、発電用空気が、熱交換器22内に導入されるようになっている。
【0030】
熱交換器22の上側の他端側(図3における左端)には、図2に示すように、発電用空気流路72の出口ポート76aが一対形成されている。この出口ポート76aは、一対の連絡流路76につながっている。さらに、燃料電池モジュール2のケーシング56の幅方向(B方向:短辺側面方向)の両側の外側には、発電用空気供給路77が形成されている。
【0031】
したがって、発電用空気供給路77には、発電用空気流路72の出口ポート76a及び連絡流路76から、発電用空気が供給されるようになっている。この発電用空気供給路77は、燃料電池セル集合体12の長手方向に沿って形成されている。さらに、その下方側であり且つ燃料電池セル集合体12の下方側に対応する位置に、発電室10内の燃料電池セル集合体12の各燃料電池セルユニット16に向けて発電用空気を吹き出すための複数の吹出口78a,78bが形成されている。これらの吹出口78a,78bから吹き出された発電用空気は、各燃料電池セルユニット16の外側に沿って、下方から上方へ流れるようになっている。
【0032】
続いて、燃料ガスと発電用空気とが燃焼して生成される燃焼ガスを排出するための構造を説明する。燃料電池セルユニット16の上方にある燃焼室18では、発電反応に使用されなかった燃料ガスと発電用空気とが燃焼することで、燃焼ガスが発生する。この燃焼ガスは、燃焼室18内を上昇し、整流板21に至る。整流板21には、図6に示すように、開口21aが設けられており、開口21a内に燃焼ガスが導かれる。この開口21aを通った燃焼ガスは、熱交換器22の他端側に至る。熱交換器22内には、燃焼ガスを排出するための複数の燃焼ガス配管70(燃焼ガス流路)が設けられている。これらの燃焼ガス配管70の下流端側には、燃焼ガス排出管82が接続され、燃焼ガスが外部に排出されるようになっている。
【0033】
続いて、図7を参照しながら燃料電池セルユニット16について説明する。図7は、本実施形態の燃料電池セルユニット16を示す部分断面図である。
【0034】
図7に示すように、燃料電池セルユニット16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の上下方向端部にそれぞれ接続された内側電極端子86とを備えている。
【0035】
燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部に燃料ガス流路88を形成する円筒形の内側電極層90と、円筒形の外側電極層92と、内側電極層90と外側電極層92との間にある電解質層94とを備えている。この内側電極層90は、燃料ガスが通過する燃料極であり、(−)極となり、一方、外側電極層92は、空気と接触する空気極であり、(+)極となっている。
【0036】
燃料電池セルユニット16の上端側と下端側に取り付けられた内側電極端子86は、同一構造であるため、ここでは、上端側に取り付けられた内側電極端子86について具体的に説明する。内側電極層90の上部90aは、電解質層94と外側電極層92に対して露出された外周面90bと上端面90cとを備えている。内側電極端子86は、導電性のシール材96を介して内側電極層90の外周面90bと接続され、さらに、内側電極層90の上端面90cとは直接接触することにより、内側電極層90と電気的に接続されている。内側電極端子86の中心部には、内側電極層90の燃料ガス流路88と連通する燃料ガス流路98が形成されている。
【0037】
内側電極層90は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレードとの混合体、の少なくとも一種から形成される。
【0038】
電解質層94は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。
【0039】
外側電極層92は、例えば、Sr、Caから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、などの少なくとも一種から形成される。
【0040】
続いて、図8を参照しながら燃料電池セルスタック14について説明する。図8は、本発実施形態の燃料電池セルスタック14を示す斜視図である。
【0041】
図8に示すように、燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16を備え、これらの燃料電池セルユニット16の下端側及び上端側が、それぞれ、セラミック製の燃料ガスタンク上板68a及び上支持板100により支持されている。これらの燃料ガスタンク上板68a及び上支持板100には、内側電極端子86が貫通可能な貫通穴がそれぞれ形成されている。
【0042】
さらに、燃料電池セルユニット16には、集電体102及び外部端子104が取り付けられている。この集電体102は、燃料極である内側電極層90に取り付けられた内側電極端子86と、隣接する燃料電池セルユニット16の空気極である外側電極層92の外周面とを電気的に接続するものである。
【0043】
さらに、燃料電池セルスタック14の端に位置する2個の燃料電池セルユニット16の上側端及び下側端の内側電極端子86には、それぞれ外部端子104が接続されている。これらの外部端子104は、隣接する燃料電池セルスタック14の端にある燃料電池セルユニット16の外部端子104に接続され、160本の燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されるようになっている。
【0044】
続いて、図9を参照して熱交換器22についてさらに説明する。図9は、図6に示す熱交換器22を模式的に示した図である。
【0045】
上述したように、熱交換器22は、燃料電池セル集合体12での発電反応に使用されなかった燃料ガスと発電用空気とが燃焼することで発生する燃焼ガスの熱を利用して、発電反応に使用する発電用空気を加熱するものである。本実施形態における熱交換器22は、燃焼ガス配管70内に乱流生成部材71を備える点に特徴がある。つまり、燃焼ガス配管70内に乱流生成部材71を備えることで、低温時の熱交換効率を向上させ、高温時の運転効率を向上させることを可能とした。以下に、乱流生成部材71について詳細に説明する。
【0046】
乱流生成部材71は、燃焼ガス配管70を流れる燃焼ガスに乱流を生じさせる部材である。乱流生成部材71は、棒状の部材を螺旋状にねじることで形成する。このような螺旋状の乱流生成部材71を燃焼ガス配管70内に配置することで、燃焼ガス配管70内を流れる燃焼ガスに乱流を生じさせて拡散することができる。これにより、燃焼ガス配管70内における燃焼ガスの流動距離や流動時間を延長することができるため、燃焼ガスから発電用空気への熱交換効率を向上させることができる。
【0047】
乱流生成部材71は、温度に応じて、乱流生成部材71の長手方向に伸縮する部材により形成される。つまり、温度が上昇すると、乱流生成部材71の長さが長くなり、上昇した温度が下降すると、乱流生成部材71の長さは短くなる。
【0048】
乱流生成部材71を螺旋状にねじって形成することで、乱流生成部材71と同一の材料かつ同一の長さで形成した直線状の部材と比較すると、熱膨張したときの長さを長くすることができる。つまり、乱流生成部材71は、その長手方向において、円筒状の燃焼ガス配管70よりも大きな膨張率を有することになる。なお、乱流生成部材71は、燃焼ガス配管70と同一の材料で形成することには限定されず、燃焼ガス配管70よりも熱膨張し易い材料で形成してもよい。熱膨張し易い材料で形成することで、後述する高温時の乱流低減効果をより高めることができる。
【0049】
図9に示すように、乱流生成部材71は、例えば0℃等の低温時に、燃焼ガス配管70の配管長と同じ長さになるように形成する。乱流生成部材71は、燃焼ガス配管70内に配置する際に、燃焼ガス配管70の上流側に位置する端部71aを燃焼ガス配管70に固定し、燃焼ガス配管70の下流側に位置する端部71bを燃焼ガス配管70に固定しないで配置する。
【0050】
このように乱流生成部材71を配置することで、例えば発電時等の高温時には、乱流生成部材71が熱膨張により伸長し、燃焼ガス配管70の下流側開口部から乱流生成部材71の端部71b側が突出する。
【0051】
図10に、乱流生成部材71が熱膨張により伸長した状態を模式的に示す。乱流生成部材71は、その端部71aが燃焼ガス配管70に固定されているため、熱膨張により伸長すると、燃焼ガス配管70に固定されていない端部71b側が燃焼ガス配管70の下流側開口部から突出する。
【0052】
乱流生成部材71の一部が燃焼ガス配管70から突出すると、燃焼ガス配管70内に収まるねじれ数を減らすことができる。燃焼ガスの乱流は、乱流生成部材71のねじれ数が多いほど激しくなる傾向があるため、燃焼ガス配管70内に収まるねじれ数を減らすことで、燃焼ガスの乱流を減少させることが可能となる。つまり、高温になるほど、乱流生成部材71の突出部分が増加し、燃焼ガス配管70内に収まるねじれ数が減るため、温度が上昇するにつれて燃焼ガスの乱流を減少させることが可能となる。
【0053】
つまり、温度が上昇するにつれて乱流生成部材71の燃焼ガス配管70からの突出量を増加させて、乱流の発生に寄与しない乱流生成部材71の割合を増加させることで、温度が高いほど燃焼ガス配管70と乱流生成部材71との間で生ずる乱流量を減少させることが可能となる。
【0054】
このような乱流生成部材71を備えることで、低温時には燃焼ガス配管70内を流れる燃焼ガスの乱流を大きくすることができるため、熱交換効率を向上させることが可能となる。これにより、昇温速度を速めることができ、起動に要する時間を短縮することが可能となる。
【0055】
一方、高温時には燃焼ガス配管70内を流れる燃焼ガスの乱流を減少させることができるため、低温時よりも圧力損失を抑えることが可能となる。これにより、システム全体の消費電力を抑えることができ、運転効率を向上させることが可能となる。
【0056】
つまり、本実施形態における燃料電池モジュール2によれば、低温時の熱交換効率を向上させるとともに、高温時の運転効率を向上させることが可能となる。
【0057】
なお、乱流生成部材71を燃焼ガス配管70に固定する位置は、乱流生成部材71の端部71aには限定されない。乱流生成部材71のうち、少なくともいずれか一箇所を燃焼ガス配管70に固定すればよい。
【0058】
乱流生成部材71を全く固定しないと、乱流生成部材71は、熱膨張により伸縮するたびに燃焼ガス配管70内を自由に移動してしまい、燃焼ガス配管70からの突出量が変動してしまうことになる。突出量が変動すると、乱流量が変動してしまうため、乱流量を制御することで得られる効果が低減してしまう。特に、低温時に乱流生成部材71が突出してしまうと、乱流が減少してしまうので、熱交換効率が低下してしまう。また、高温時に突出量が少なくなると、圧力損失の低減量が減ってしまい、運転効率が低下してしまう。これに対して、少なくともいずれか一箇所で固定することにより、伸縮を繰り返しても同じ位置で伸縮させることができるため、各温度に対する燃焼ガス配管70からの突出量を一定に保つことが可能となる。
【0059】
ここで、乱流生成部材71の端部71aを燃焼ガス配管70に固定した場合には、以下のメリットがある。熱交換器22内での熱交換は、上流から下流に向けて行われるため、上流から下流に移動するに従い温度が低下する。温度が比較的に低下する下流部分は、熱膨張率が比較的に小さくなるので、乱流生成部材71の膨張量も比較的に小さくなる。膨張量が小さい部分は、膨張量が大きい部分に比べて、長さ当たりのねじれ数の割合(乱流を発生させる密度)が高くなる。したがって、膨張量が小さい部分を突出させた方が、乱流をより減少させることが可能となる。つまり、比較的に高温側となる燃焼ガス配管70の上流側に位置する乱流生成部材71の端部71aを固定することで、比較的に低温側に位置して膨張量が比較的に小さくなる乱流生成部材71の端部71b側を突出させることができるため、高温時に、乱流をより減少することができ、運転効率をより向上させることが可能となる。
【0060】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0061】
2:燃料電池モジュール(燃料電池ユニット)
10:発電室
12:燃料電池セル集合体
14:燃料電池セルスタック
16:燃料電池セルユニット
18:燃焼室
20:改質器
21:整流板
21a:開口
22:熱交換器
56:ケーシング
60:被改質ガス供給管
62:水供給管
66:燃料供給管
66a:下端側
68:燃料ガスタンク
68a:燃料ガスタンク上板
70:燃焼ガス配管(燃焼ガス流路)
71:乱流生成部材
71a、71b:乱流生成部材端部
72:発電用空気流路
74:発電用空気導入管
76:連絡流路
76a:出口ポート
77:発電用空気供給路
78a,78b:吹出口
82:燃焼ガス排出管
84:燃料電池セル
86:内側電極端子
88:燃料ガス流路
90:内側電極層
90a:上部
90b:外周面
90c:上端面
92:外側電極層
94:電解質層
96:シール材
98:燃料ガス流路
100:上支持板
102:集電体
104:外部端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池の発電反応に使用されなかった燃料ガスと酸化剤ガスとが燃焼することで発生する燃焼ガスの熱を利用して前記燃料電池の発電反応に使用する酸化剤ガスを加熱する熱交換器を備える燃料電池ユニットであって、
前記熱交換器は、
前記燃焼ガスを流す燃焼ガス流路と、
前記燃焼ガス流路内に配置され、前記燃焼ガス流路を流れる前記燃焼ガスに乱流を生じさせる乱流生成部材と、を備え、
前記乱流生成部材は、前記燃焼ガス流路よりも大きな熱膨張率を有し、温度に応じて前記燃焼ガス流路の長手方向に伸縮するとともに、少なくともその一端が前記燃焼ガス流路に固定されておらず、温度が上昇するほど前記燃焼ガス流路から突出する部分が増加するように配置されている、
ことを特徴とする、燃料電池ユニット。
【請求項2】
前記乱流生成部材は、少なくともいずれか一箇所が前記燃焼ガス流路に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池ユニット。
【請求項3】
前記乱流生成部材は、前記燃焼ガス流路の上流側に位置する一端部が前記燃焼ガス流路に固定され、前記燃焼ガス流路の下流側に位置する他端部は前記燃焼ガス流路に固定されていないことを特徴とする請求項2に記載された燃料電池ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−58439(P2013−58439A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197127(P2011−197127)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】