説明

燃料電池及び燃料電池装置

【課題】ガス拡散層内部に酸化剤や還元剤などの燃料流体を行き渡らせることで発電面の出力のばらつきを抑え、効率的に発電することができる燃料電池及び燃料電池装置を提供する。
【解決手段】膜電極接合体10と、燃料を拡散させてアノード触媒層12に供給する多孔質のガス拡散層40と、アノード触媒層12に供給される燃料の供給流路51を有する流体供給部50とを備え、ガス拡散層40には、供給流路51を介して供給された燃料をガス拡散層40の面方向に拡散させる拡散流路41が設けられ、拡散流路41は、ガス拡散層40の一部の領域の空孔率を他の領域42の空孔率よりも相対的に高くすることにより形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池及び水素発生装置を備えた燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池として、電解質膜の両面側にアノード触媒層及びカソード触媒層が設けられた固体高分子電解質膜を有し、固体高分子電解質膜の両面側に導電性繊維状部材から形成されたガス拡散層が設けられたものが知られている。ガス拡散層は、酸化剤や還元剤などの燃料の流通を阻害させずに拡散させるためのものであり、例えば、カーボン製の繊維などで構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に係る燃料電池のガス拡散層は、電解質膜とは反対側の表面に溝が設けられており、当該表面のみならず、溝部分にも燃料が供給される構造とすることで、燃料の流通性が高まり、出力電流密度を向上させている。
【0004】
しかしながら、ガス拡散層に酸化剤や還元剤などの燃料を供給する態様によっては、燃料がガス拡散層内部に均等に拡散せず、発電面において出力のばらつきが生じ、効率的な発電を行うことが困難であるという問題が生じる。例えば、ガス拡散層の中心部分に燃料を供給する態様では、当該中心部分から離れた部位にまで燃料が拡散しない虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−242894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、ガス拡散層内部に酸化剤や還元剤の燃料ガスや液体燃料などの流体を行き渡らせることで発電面の出力のばらつきを抑え、効率的に発電することができる燃料電池及び燃料電池装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、電解質と、該電解質の両面にそれぞれ接する触媒層と、流体を拡散させて前記触媒層に供給する拡散層とを備え、前記拡散層には、供給された前記流体を当該拡散層の面方向に拡散させる拡散流路が設けられ、前記拡散流路は、前記拡散層の一部の領域の空孔率を他の領域の空孔率よりも相対的に高くすることにより形成されていることを特徴とする燃料電池にある。
【0008】
かかる第1の態様では、拡散層に設けられた拡散流路に供給された流体は、拡散流路の末端まで優先的に拡散していき、そして拡散層の空孔率の低い領域に拡散していく。これにより、触媒層の表面の全面を利用して発電させることができ、発電量が向上した燃料電池が提供される。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載する燃料電池において、前記触媒層に供給される流体の供給流路を有する流体供給部を備え、前記供給流路は、前記触媒層側の開口が前記拡散層に接触しており、前記拡散流路は、前記供給流路の前記触媒層側の開口に対向する領域から前記拡散層の面方向の外側に向かい延設されていることを特徴とする燃料電池にある。
【0010】
かかる第2の態様では、供給流路から拡散層に供給された流体が、その供給流路の近傍にのみ拡散するということが防止され、流体を拡散層の内部全体に亘って均一に供給することができる。これにより、触媒層の表面の全面を利用して発電させることができ、発電量が向上した燃料電池が提供される。さらに、拡散流路は、流体を拡散させる流路として機能すると共に、流体供給部に密着し、流体供給部に導通可能な領域となる。したがって、拡散層と流体供給部との接触面積を大きく取ることができ、発生した電力を、拡散層を介して流体供給部で効率よく集電することができる。
【0011】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載する燃料電池において、前記拡散流路は、前記拡散層の一部を押圧することで形成された空孔率の低い領域以外の領域であることを特徴とする燃料電池にある。
【0012】
かかる第3の態様では、空孔率の高い拡散流路を容易に作製することができる。
【0013】
本発明の第4の態様は、第1〜第3の何れか一つの態様に記載する燃料電池において、前記拡散流路は、前記拡散層の流体が供給される領域を中心として、放射状に延設された複数本の線状流路から構成されていることを特徴とする燃料電池にある。
【0014】
かかる第4の態様では、流体を拡散層の面方向に均等に拡散することができる。
【0015】
本発明の第5の態様は、第1〜第3の何れか一つの態様に記載する燃料電池において、前記拡散流路は、前記拡散層の流体が供給される領域を中心として、放射状に延設された複数本の主流路と、当該主流路から分岐した支流路とから構成されていることを特徴とする燃料電池にある。
【0016】
かかる第5の態様では、流体を拡散層の面方向に均等に拡散することができる。
【0017】
本発明の第6の態様は、第1〜第3の何れか一つの態様に記載する燃料電池において、前記拡散流路は、前記拡散層の流体が供給される領域を中心として、放射状に延設された複数本の主流路と、当該主流路同士を接続するように設けられた支流路とから構成されていることを特徴とする燃料電池にある。
【0018】
かかる第6の態様では、流体を拡散層の面方向に均等に拡散することができる。
【0019】
本発明の第7の態様は、第5又は第6の態様に記載する燃料電池において、前記支流路は、円弧状であることを特徴とする燃料電池にある。
【0020】
かかる第7の態様では、流体を拡散層の面方向により一層均等に拡散することができる。
【0021】
本発明の第8の態様は、第5〜第7の何れか一つの態様に記載する燃料電池において、前記流体が前記主流路を流通する流路抵抗は、前記流体が前記支流路を流通する流路抵抗よりも小さいことを特徴とする燃料電池にある。
【0022】
かかる第8の態様では、流体を拡散層の面方向により一層均等に拡散することができる。
【0023】
本発明の第9の態様は、第1〜第8の何れか一つの態様に記載する燃料電池と、前記流体である燃料を前記燃料電池に供給する燃料供給手段とを具備することを特徴とする燃料電池装置にある。
【0024】
かかる第9の態様では、拡散層内部に酸化剤や還元剤などの燃料流体を行き渡らせることで発電面の出力のばらつきを抑え、効率的に発電することができる燃料電池装置が提供される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、拡散層内部に酸化剤や還元剤などの燃料流体を行き渡らせることで発電面の出力のばらつきを抑え、効率的に発電することができる燃料電池及び燃料電池装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料電池装置の概略構成図である。
【図2】燃料電池の分解斜視図である。
【図3】燃料電池の断面図である。
【図4】流体供給部の平面図である。
【図5】ガス拡散層の平面図である。
【図6】ガス拡散層に形成される拡散流路を示す断面図である。
【図7】ガス拡散層に形成される拡散流路を示す断面図である。
【図8】燃料の供給状態を示す燃料電池の要部断面図である。
【図9】燃料の供給状態を示すガス拡散層の要部平面図である。
【図10】ガス拡散層の平面図である。
【図11】ガス拡散層の平面図である。
【図12】ガス拡散層の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池装置の概略構成を示す図である。同図に示すように、燃料電池装置1は、燃料電池2と、燃料供給手段3と、制御回路4とを備えている。
【0028】
燃料供給手段3は、燃料電池2のアノード側に燃料(流体)を供給するものである。燃料としては水素が最適であり、具体的には、水素吸蔵合金や、水素を封入したボンベなどが挙げられる。また、燃料供給手段3は、水素を発生させるものであってもよく、例えば、水素発生物質と水素発生促進物質とを混合して水素を発生させる構成が挙げられる。水素発生物質としては、例えば水素化ホウ素ナトリウム、水素発生促進物質としては、例えば、リンゴ酸水溶液を用いることができる。また、燃料としてメタノールなどの溶液を供給してもよい。
【0029】
制御回路4は、燃料電池2の発電状況及び発電した電力の出力状況を制御するものであり、燃料電池装置1は、制御回路4を介して使用機器(図示せず)に接続される。
【0030】
ここで、燃料電池2について図2〜図5を参照して詳細に説明する。図2は、燃料電池の分解斜視図であり、図3は、燃料電池の断面図であり、図4は、流体供給部の平面図であり、図5はガス拡散層の平面図である。
【0031】
図2及び図3に示すように、燃料電池2は、電解質として固体高分子電解質膜11と、固体高分子電解質膜11の両面側に設けられたアノード触媒層12及びカソード触媒層13とで構成された膜電極接合体10(以下、MEAと言う)を具備する。
【0032】
MEA10の各面には、アノード部材20とカソード部材30とが設けられている。すなわち、MEA10は、アノード部材20とカソード部材30との間に挟持されている。
【0033】
カソード部材30は、MEA10のカソード触媒層13側に設けられた板状部材からなる。カソード部材30には、カソード触媒層13にカソード側の流体として酸化剤(酸素を含む空気)を供給するカソード流体流路31が設けられている。このカソード流体流路31は、本実施形態では、カソード部材30のカソード触媒層13側に開口する凹形状を有し、カソード流体流路31の底面には、カソード流体流路31内に空気を供給するためのカソード流体導入口32が設けられている。
【0034】
アノード部材20は、MEA10のアノード触媒層12側に設けられた板状部材からなり、アノード触媒層12側に開口する凹形状を有するチャンバ21と、チャンバ21の底面に厚さ方向に貫通して設けられたアノード流体導入口22とを具備する。
【0035】
チャンバ21は、アノード触媒層12の表面積と同等の開口面積を有する。そして、チャンバ21内には、アノード流体導入口22を介して燃料が供給される。
【0036】
また、アノード部材20とMEA10との間には、多孔質の拡散層の一例であるガス拡散層40と、このガス拡散層40にチャンバ21内の燃料を供給する流体供給部50とが設けられている。
【0037】
ガス拡散層(GDL)40は、流体供給部50を介して供給された燃料を拡散し、アノード触媒層12に供給するものである。具体的には、ガス拡散層40は、燃料を透過可能な透過性を有する多孔質部材からなり、アノード部材20とMEA10との間のMEA10側、すなわち、MEA10のアノード触媒層12上に設けられている。ガス拡散層40としては、例えば、金属メッシュや、カーボンクロス、カーボンペーパー、カーボンフェルトなどの電気伝導性を有する多孔質構造を有するものを用いることができる。
【0038】
また、詳細は後述するが、ガス拡散層40には、供給された燃料をガス拡散層40の面方向に拡散させる拡散流路41が設けられている。
【0039】
流体供給部50は、ガス拡散層40のMEA10とは反対側に設けられた板状部材からなる。この流体供給部50は、ガス拡散層40に一方面が接触するように設けられている。また、流体供給部50のガス拡散層40に接触する面とは反対側の他方面は、チャンバ21の一方面を封止している。
【0040】
流体供給部50には、厚さ方向に貫通してチャンバ21とガス拡散層40とを連通する供給流路51が設けられている。すなわち、供給流路51は、一端がチャンバ21に開口すると共に、他端がガス拡散層40に開口することで両者を連通している。
【0041】
そして、供給流路51のガス拡散層40側の開口は、ガス拡散層40の拡散流路41に接触しており、燃料は、供給流路51を介して拡散流路41に供給されるようになっている。
【0042】
なお、供給流路51の圧力損失は、アノード流体導入口22から各供給流路51までの圧力損失よりも大きくなるように設けられている。具体的には、本実施形態では、チャンバ21を複数の供給流路51に共通して連通する大きさ(アノード側触媒層12の表面と同等の開口面積)で設け、供給流路51の開口面積(断面積)をチャンバ21の開口面積よりも大幅に小さくすることで、供給流路51の圧力損失をチャンバ21のアノード流体導入口22から各供給流路51までの圧力損失よりも大きくしている。このように供給流路51の圧力損失を大きくすることで、チャンバ21内に供給された燃料を、ガス拡散層40の表面に向かって所望の圧力で噴射するように供給することができる。また、供給流路51の大きさ(開口面積)や、数及び位置などは特に限定されない。
【0043】
図4及び図5を用いて、供給流路51及びガス拡散層40の拡散流路41について説明する。図4に示すように、流体供給部50には、所定の間隔で複数(4個)配置した供給流路51の列が2列設けられ、さらに、その2列の間に、所定の間隔で複数(5個)配置した供給流路51の列が1列、合計13個の供給流路51が設けられている。
【0044】
図5に示すように、ガス拡散層40には、流体供給部50の各供給流路51に対向するように合計13個の拡散流路41が設けられている。ガス拡散層40の供給流路51に対向する領域41aは、供給流路51から燃料が供給される部位となり、拡散流路41は、当該領域41aを中心とし、放射状に延設された複数本(8本)の線状流路41bから構成されている。
【0045】
また、拡散流路41は、ガス拡散層40の一部の領域の空孔率を他の領域の空孔率よりも相対的に高くすることにより形成されている。本実施形態の場合、一部の領域とは拡散流路41となる領域であり、他の領域とは拡散流路41以外の領域42である。このように拡散流路41は、他の領域42よりも空孔率が高いので、燃料が流通する流路抵抗が小さくなり、拡散流路41は燃料が流れやすい領域となる。なお、拡散流路41の幅や厚さ、長さには特に限定はない。
【0046】
ここで、空孔率とは、ガス拡散層40の見かけの体積に対する空孔の割合をいう。空孔率の測定は、水銀圧入法などにより求めることができる。また、拡散流路41の空孔率(A%)は、領域42の空孔率(B%)よりも高ければよいが、10%程度高い(A/B>1.1)ことが好ましい。
【0047】
このような拡散流路41は、例えば、図6のように作製することができる。例えば、図6(a)に示すように、略均質な空孔率を有するガス拡散層40の表面に、平面視で拡散流路41の形状をした凹部44が現れるように凸部43を設ける。
【0048】
そして、図6(b)に示すように、流体供給部50をガス拡散層40に押圧して凸部43を潰し、密着させる。これにより、凸部43が設けられていた領域は空孔が押し潰されて空孔率が低くなって領域42が作製され、凹部44が設けられていた領域は、空孔は押し潰されていないので、領域42よりも空孔率の高い拡散流路41が作製される。もちろん、凸部43の押し潰しは流体供給部50により行わず、他の部材で行ってもよい。
【0049】
また、拡散流路41を作製する他の態様としては、図7に示すように行ってもよい。すなわち、図7(a)に示すように、略均質な空孔率を有し、平板状のガス拡散層40に対し、ガス拡散層40側に突出する凸部52を有する流体供給部50Aを押圧する。この凸部52は、拡散流路41以外の領域42に対向する位置に設けられている。すなわち、流体供給部50Aは、平面視において拡散流路41の形状をした平坦部53が現れるように凸部52が設けられている。
【0050】
そして、図7(b)に示すように、流体供給部50Aをガス拡散層40に押圧して密着させる。これにより、凸部52がガス拡散層40の一部を押し潰し、空孔率の低い領域42が作製され、平坦部53に対向する領域は押し潰されずに、領域42よりも空孔率の高い拡散流路41が作製される。
【0051】
なお、拡散流路41は、上述したような作製方法に限らず、空孔率の異なる多孔体を用意し、一つの多孔体の一部を切り抜き、その切り抜いた部位に空孔率の異なる多孔体をはめ込むようにして作製してもよい。
【0052】
図8及び図9を用いて、ガス拡散層40に流通する燃料について説明する。これらの図に示すように、アノード流体導入口22を介してチャンバ21に供給された燃料は、流体供給部50の供給流路51に導入される。
【0053】
供給流路51に導入された燃料は、拡散流路41の中心の領域41aに噴射される。このとき、上述したように、拡散流路41は、領域42よりも空孔率が高く、かつ、ガス拡散層40の面方向に放射状に広がる形状であるので、燃料は、拡散流路41の線状流路41bに沿ってガス拡散層40の面方向Aに拡散し、そして、次第に空孔率の低い領域42にも拡散していく。
【0054】
このように、本発明に係る燃料電池2では、拡散流路41の中心の領域41aに噴射された燃料は、その領域41aから離れた線状流路41bの末端まで優先的に拡散していき、そしてガス拡散層40の空孔率の低い領域42に拡散していく。すなわち、供給流路51からガス拡散層40に供給された燃料が、その供給流路51の近傍にのみ拡散するということが防止され、燃料をガス拡散層40の内部全体に亘って均一に供給することができる。これにより、アノード触媒層12の表面の全面を利用して発電させることができ、発電量が向上した燃料電池2が提供される。
【0055】
また、拡散流路41は、ガス拡散層40の空孔率の高い領域であり、ガス拡散層40に溝などの空間として形成したものではないため、ガス拡散層40と流体供給部50とを密着させることができる。すなわち、拡散流路41は、燃料を拡散させる流路として機能すると共に、流体供給部50に密着し、流体供給部50に導通可能な領域となる。したがって、ガス拡散層40と流体供給部50との接触面積を大きく取ることができ、MEA10で得られた電力を、ガス拡散層40を介して流体供給部50で効率よく集電することができる。
【0056】
上述した実施形態では、放射状の拡散流路41について説明したが、拡散流路41の形状はこれに限定されない。図10〜図12を用いて、他の拡散流路の態様について説明する。
【0057】
図10に示すように、ガス拡散層40の供給流路51に対向する領域41aを中心とし、放射状に延設された複数本(8本)の線状流路41bと、さらに線状流路41bから分岐した線状流路41cとから拡散流路41が構成されていてもよい。線状流路41b、41cは、流路抵抗を増大させない観点から、同じ幅とすることが好ましい。この場合においても、供給流路51から領域41aに噴射された燃料は、領域41aから離れた線状流路41b、41cの末端まで優先的に拡散していき、そしてガス拡散層40の空孔率の低い領域42に拡散していく。すなわち、供給流路51からガス拡散層40に供給された燃料が、その供給流路51の近傍にのみ拡散するということが防止され、燃料をガス拡散層の内部全体に亘って均一に供給することができる。これにより、アノード触媒層12の表面の全面を利用して発電させることができ、発電量が向上した燃料電池2が提供される。
【0058】
また、線状流路41cが、線状流路41bよりも流路抵抗が大きくなるように形成されても良い。この流路抵抗の違いは、線状流路41bと41cとの空孔率、又は流路幅を異ならせることで実現できる。この場合、燃料は、線状流路41cよりも、線状流路41bの方が流通しやすい。このため、供給流路51から領域41aに噴射された燃料は、まず、領域41aから離れた線状流路41bの末端まで優先的に拡散していき、次に、線状流路41cに拡散していく。すなわち、ガス拡散層40の全体に大まかに燃料を行きわたらせ、次にガス拡散層40の内部全体に亘って均一に供給することができる。これにより、アノード触媒層12の表面の全面を利用して発電させることができ、発電量が向上した燃料電池2が提供される。
【0059】
また、図11に示すように、ガス拡散層40の供給流路51に対向する領域41aを中心とし、放射状に延設された複数本(4本)の主流路41dと、さらにこれらの主流路41dを接続する円弧状(円状も含む)の支流路41eとから拡散流路41が構成されていてもよい。ここで、燃料が主流路41dを流通する流路抵抗は、燃料が支流路41eを流通する流路抵抗よりも小さくなっている。すなわち、燃料は、支流路41eよりも主流路41dの方が流通しやすい。
【0060】
このため、供給流路51から領域41aに噴射された燃料は、まず、領域41aから離れた主流路41dの末端まで優先的に拡散していき、次に、支流路41eに拡散し、そしてガス拡散層40の最も空孔率の低い領域42に拡散していく。すなわち、供給流路51からガス拡散層40に供給された燃料が、その供給流路51の近傍にのみ拡散するということが防止され、燃料をガス拡散層40の内部全体に亘って均一に供給することができる。これにより、アノード触媒層12の表面の全面を利用して発電させることができ、発電量が向上した燃料電池2が提供される。
【0061】
なお、主流路41dの流路抵抗は、主流路41dの幅を支流路41eの幅よりも広げることで、支流路41eの流路抵抗よりも小さくすることができる。同様に、主流路41dの流路抵抗は、主流路41dの厚さを支流路41eの厚さよりも厚くすることで、支流路41eの流路抵抗よりも小さくすることができる。さらに、主流路41dの流路抵抗は、主流路41dの空孔率を支流路41eの空孔率よりも大きくすることで、支流路41eの流路抵抗よりも小さくすることができる。この場合、いずれの空孔率も、拡散流路41以外の領域42の空孔率よりも低くしておく。
【0062】
また、図12に示すように、ガス拡散層40の供給流路51に対向する領域41aを中心とし、渦巻き状に延設された線状流路41fから拡散流路41が構成されていてもよい。この場合においても、供給流路51から領域41aに噴射された燃料は、領域41aから離れた線状流路41fの末端まで優先的に拡散していき、そしてガス拡散層40の空孔率の低い領域42に拡散していく。すなわち、供給流路51からガス拡散層40に供給された燃料が、その供給流路51の近傍にのみ拡散するということが防止され、燃料をガス拡散層40の内部全体に亘って均一に供給することができる。これにより、アノード触媒層12の表面の全面を利用して発電させることができ、発電量が向上した燃料電池2が提供される。
【0063】
さらに、上述した拡散流路41は、略均等な空孔率を有するものとして説明してきたが、これに限定されない。例えば、拡散流路41は、いくつかの空孔率が異なる領域から構成されていてもよく、各空孔率の異なる領域が、拡散流路41以外の領域42よりも空孔率が低ければよい。この場合においても、燃料は、拡散流路41内を優先的に拡散し、そして、次第に領域42に拡散する。
【0064】
なお、上述した何れの拡散流路41も燃料が供給される中心の領域41aを中心に対称の形状をしていたが、このような形状に限定されず、非対称であってもよい。
【0065】
また、拡散流路41に燃料を供給する手段として、供給流路51を有する流体供給部50を用いたが、拡散流路41に燃料を供給できる構成であれば、そのような手段に限定されない。さらに、上述の実施形態では、ガス拡散層40及び流体供給部50は、アノード側にのみ設けられていたが、カソード側に設けられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、燃料電池及び燃料電池装置の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 燃料電池装置
2 燃料電池
3 燃料供給手段
4 制御回路
10 膜電極接合体
11 固体高分子電解質膜
12 アノード触媒層
13 カソード触媒層
20 アノード部材
21 チャンバ
22 アノード流体導入口
30 カソード部材
31 カソード流体流路
32 カソード流体導入口
40 ガス拡散層
41 拡散流路
50 流体供給部
51 供給流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質と、該電解質の両面にそれぞれ接する触媒層と、
流体を拡散させて前記触媒層に供給する拡散層とを備え、
前記拡散層には、供給された前記流体を当該拡散層の面方向に拡散させる拡散流路が設けられ、
前記拡散流路は、前記拡散層の一部の領域の空孔率を他の領域の空孔率よりも相対的に高くすることにより形成されている
ことを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
請求項1に記載する燃料電池において、
前記触媒層に供給される流体の供給流路を有する流体供給部を備え、
前記供給流路は、前記触媒層側の開口が前記拡散層に接触しており、
前記拡散流路は、前記供給流路の前記触媒層側の開口に対向する領域から前記拡散層の面方向の外側に向かい延設されている
ことを特徴とする燃料電池。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する燃料電池において、
前記拡散流路は、前記拡散層の一部を押圧することで形成された空孔率の低い領域以外の領域である
ことを特徴とする燃料電池。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載する燃料電池において、
前記拡散流路は、前記拡散層の流体が供給される領域を中心として、放射状に延設された複数本の線状流路から構成されている
ことを特徴とする燃料電池。
【請求項5】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載する燃料電池において、
前記拡散流路は、前記拡散層の流体が供給される領域を中心として、放射状に延設された複数本の主流路と、当該主流路から分岐した支流路とから構成されている
ことを特徴とする燃料電池。
【請求項6】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載する燃料電池において、
前記拡散流路は、前記拡散層の流体が供給される領域を中心として、放射状に延設された複数本の主流路と、当該主流路同士を接続するように設けられた支流路とから構成されている
ことを特徴とする燃料電池。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載する燃料電池において、
前記支流路は、円弧状であることを特徴とする燃料電池。
【請求項8】
請求項5〜請求項7の何れか一項に記載する燃料電池において、
前記流体が前記主流路を流通する流路抵抗は、前記流体が前記支流路を流通する流路抵抗よりも小さい
ことを特徴とする燃料電池。
【請求項9】
請求項1〜請求項8の何れか一項に記載する燃料電池と、
前記流体である燃料を前記燃料電池に供給する燃料供給手段とを具備することを特徴とする燃料電池装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−64383(P2012−64383A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206576(P2010−206576)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】