説明

燃料電池用セルおよび燃料電池および燃料電池用セルの製造方法

【課題】電解質膜の外縁部のシール性、接着性が良好な燃料電池用セルを提供することを課題とする。
【解決手段】燃料電池用セル1は、電解質膜20と、電解質膜20の厚さ方向両側に配置される一対の電極と、を有するMEA2と、枠状であって、電解質膜20の外縁部200を保持する一対のフレーム3U、3Dと、一対のフレーム3U、3Dの枠内側かつMEA2の厚さ方向両側に配置される一対のガス拡散層4U、4Dと、一対のフレーム3U、3Dの少なくとも一部を被覆するガスケット5と、を備える。燃料電池用セル1は、さらに、電解質膜20の外縁部200を収容する凹状の膜収容部60と、一対のフレーム3U、3D間に介在する第一介在部61と、を備え、電解質膜20の外縁部200および一対のフレーム3U、3Dに架橋接着されるゴム製の第一架橋接着部材6を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用セルおよび燃料電池および燃料電池用セルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、多数の燃料電池用セルが積層されたスタック構造を呈している。多数の燃料電池用セルの積層体は、積層方向両側に配置されたエンドプレートにより締結されている。
【0003】
燃料電池用セルは、電解質膜−電極接合体(Membrane Electrode Assembly。以下、「MEA」と略称する。)を備えている。MEAは、電解質膜と、一対の電極と、を備えている。一対の電極は、電解質膜の厚さ方向両側に配置されている。一対の電極のうち、一方は燃料極、他方は酸素極である。燃料極には水素や炭化水素等の燃料ガスが、酸素極には酸素や空気等の酸化剤ガスが、各々供給される。供給されたガスと電解質膜と電極との三相界面における電気化学反応により、発電が行われる。
【0004】
例えば、特許文献1には、燃料ガスと酸化剤ガスとの混合(クロスリーク)を抑制するためのシール構造を備える燃料電池用セルが紹介されている。図12に、同文献記載の燃料電池用セルの部分断面図を示す。図12に示すのは、燃料電池用セルの外縁部である。図12に示すように、燃料電池用セル100は、MEA101とガスケット102とを備えている。MEA101は、電解質膜101aと、一対の電極101b、101cと、を備えている。一対の電極101b、101cは、電解質膜101aの厚さ方向両面に配置されている。ガスケット102は、弾性層102aと、形状保持層102bと、熱架橋層102cと、が積層されてなる三層構造を呈している。
【0005】
熱架橋層102cは、電解質膜101aと形状保持層102bとの間の厚さ方向隙間C100から、弾性層102aおよび形状保持層102bと、電極101bと、の間の面展開方向隙間C101まで、L字状に屈曲して延在している。熱架橋層102cの厚さ方向端部には、リブ102dが形成されている。
【0006】
燃料電池用セル100の製造方法は、ガスケット原反作製工程と、ガスケット原反打ち抜き工程と、キャビティ内配置工程と、架橋工程と、を有している。図13に、ガスケット原反作製工程の模式図を示す。図14に、ガスケット原反打ち抜き工程の模式図を示す。図15に、キャビティ内配置工程の模式図を示す。
【0007】
ガスケット原反作製工程においては、図13に示すように、弾性層102aと、形状保持層102bと、未架橋の熱架橋層102cと、が積層されてなる三層構造のガスケット102の原反を作製する。ガスケット原反打ち抜き工程においては、図14に示すように、ガスケット102の原反の所定の部位に、マニホールド孔103などの孔を打ち抜く。
【0008】
キャビティ内配置工程においては、図15に示すように、まず、金型104のキャビティ内に、MEA101と、ガスケット102の原反と、を積層配置する。熱架橋層102cは、厚さ方向隙間C100にのみ配置されることになる。次いで、金型104の型締めを行う。型締めにより熱架橋層102cは、厚さ方向に圧縮される。このため、熱架橋層102cは、面展開方向にはみ出すように流動し、図15中、白抜き矢印で示すように、面展開方向隙間C101を充填する。架橋工程においては、熱架橋層102cを架橋させる。このようにして、燃料電池用セル100は製造される。
【0009】
同文献記載の燃料電池用セル100によると、熱架橋層102cと電解質膜101aとが架橋接着されている。このため、熱架橋層102cと電解質膜101aとの接合性が高い。したがって、電解質膜101aとガスケット102との剥離によるクロスリークを抑制することができる。
【特許文献1】特開2002−260693号公報
【特許文献2】特開平9−199145号公報
【特許文献3】特開2007−157420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、同文献記載の燃料電池用セル100によると、前出図12に示すように、電解質膜101aの端面F100が、マニホールド孔103に表出していた。このため、端面F100から、電解質膜101aから分解したフッ化物やスルホン酸などの生成物が、リークする可能性があった。
【0011】
この点、特許文献2には、電解質膜の外縁部をエポキシ系の接着剤で封止した燃料電池用セルが紹介されている。同文献記載の燃料電池用セルによると、電解質膜の端面が接着剤により覆われている。このため、端面から、生成物がリークする可能性が小さい。
【0012】
しかしながら、特許文献2の燃料電池用セルによると、接着剤との接着性を良くするために、電解質膜の外縁部にイオン交換部を形成する必要がある。イオン交換部を形成するためには、まず電解質膜に所定のマスキング具を装着し、次いで電解質膜を水酸化カリウム溶液に浸漬させる必要がある。当該作業は繁雑である。また、当該作業が必要な分だけ、燃料電池用セル延いては燃料電池の製造コストが高くなる。
【0013】
また、特許文献3には、電解質膜の外縁部を、熱可塑性樹脂層を有する環状薄帯で封止した燃料電池用セルが紹介されている。同文献記載の燃料電池用セルによると、電解質膜の端面が環状薄帯により覆われている。このため、端面から、生成物がリークする可能性が小さい。
【0014】
しかしながら、特許文献3の燃料電池用セルによると、環状薄帯は、厚さ方向両側から、一対のガスケットにより挟持されているだけである。このため、一対のガスケット間から、環状薄帯が脱落しやすい。また、環状薄帯の熱可塑性樹脂層は、熱により変形する可能性がある。このため、熱により、熱可塑性樹脂層が電解質膜の端面から剥離し、シール性が悪くなるおそれがある。
【0015】
本発明の燃料電池用セルおよび燃料電池および燃料電池用セルの製造方法は、上記課題に鑑みて完成されたものである。したがって、本発明は、電解質膜の外縁部のシール性、接着性が良好な燃料電池用セルおよび燃料電池を提供することを目的とする。また、本発明は、電解質膜の外縁部のシール性、接着性が良好な燃料電池用セルを容易に製造することができる燃料電池用セルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(1)上記課題を解決するため、本発明の燃料電池用セルは、電解質膜と、該電解質膜の厚さ方向両側に配置される一対の電極と、を有するMEAと、枠状であって、該電解質膜の外縁部を保持する一対のフレームと、一対の該フレームの枠内側かつ該MEAの厚さ方向両側に配置される一対のガス拡散層と、一対の該フレームの少なくとも一部を被覆するガスケットと、を備えてなる燃料電池用セルであって、さらに、前記電解質膜の外縁部を収容する凹状の膜収容部と、一対の前記フレーム間に介在する第一介在部と、を備え、該電解質膜の外縁部および一対の該フレームに架橋接着されるゴム製の第一架橋接着部材を備えることを特徴とする(請求項1に対応)。
【0017】
電解質膜の外縁部は、第一架橋接着部材の膜収容部に、収容されている。このため、電解質膜の外縁部の端面を介して、電解質膜から分解したフッ化物やスルホン酸などの生成物が外部にリークするのを、抑制することができる。また、電解質膜の外縁部は、第一架橋接着部材に架橋接着されている。このため、電解質膜の外縁部が、第一架橋接着部材の膜収容部から脱落しにくい。このように、本発明の燃料電池用セルは、電解質膜の外縁部と第一架橋接着部材との間のシール性、接着性が良好である。
【0018】
また、一対のフレーム間には、第一架橋接着部材の第一介在部が配置されている。並びに、一対のフレームは、第一架橋接着部材に架橋接着されている。このため、本発明の燃料電池用セルは、一対のフレームと第一架橋接着部材との間のシール性、接着性が良好である。
【0019】
また、第一架橋接着部材はゴム製である。このため、前出特許文献3の燃料電池用セルの環状薄帯の熱可塑性樹脂層のように、熱により、第一架橋接着部材が電解質膜の外縁部から剥離するおそれが小さい。
【0020】
また、第一架橋接着部材はゴム製であるため、撥水性が高い。したがって、電解質膜の外縁部と第一架橋接着部材との間の接着界面、および一対のフレームと第一架橋接着部材との間の接着界面に、水分が浸入しにくい。すなわち、電解質膜の外縁部と第一架橋接着部材との間、および一対のフレームと第一架橋接着部材との間のシール性、接着性が劣化しにくい。
【0021】
また、第一架橋接着部材はゴム製であるため、弾性変形領域が広い。したがって、電解質膜の膨潤、収縮変形に、第一架橋接着部材は容易に追随することができる。また、電解質膜と一対のフレームとの間の変形量の較差を、容易に吸収することができる。この点においても、電解質膜の外縁部と第一架橋接着部材との間のシール性、接着性が劣化しにくい。また、本発明の燃料電池用セルによると、第一架橋接着部材を介して、電解質膜すなわちMEAと一対のフレームとを堅固に連結することができる。
【0022】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記膜収容部は、前記電解質膜の外縁部と前記ガス拡散層の外縁部との間に介在する第二介在部を備える構成とする方がよい(請求項2に対応)。
【0023】
本構成によると、第一架橋接着部材の膜収容部と、ガス拡散層の外縁部と、が架橋接着されている。このため、本構成によると、第一架橋接着部材の膜収容部と、ガス拡散層の外縁部と、の間のシール性、接着性が良好である。
【0024】
また、第一架橋接着部材はゴム製である。このため、熱により、第一架橋接着部材の膜収容部がガス拡散層の外縁部から剥離するおそれが小さい。
【0025】
また、第一架橋接着部材はゴム製であるため、撥水性が高い。したがって、第一架橋接着部材の膜収容部とガス拡散層の外縁部との間の接着界面に、水分が浸入しにくい。すなわち、第一架橋接着部材の膜収容部とガス拡散層の外縁部との間のシール性、接着性が劣化しにくい。
【0026】
また、第一架橋接着部材はゴム製であるため、弾性変形領域が広い。したがって、第一架橋接着部材は、電解質膜とガス拡散層との間の変形量の較差を、容易に吸収することができる。この点においても、第一架橋接着部材の膜収容部とガス拡散層の外縁部との間のシール性、接着性が劣化しにくい。また、本構成によると、第一架橋接着部材を介して、電解質膜すなわちMEAとガス拡散層とを堅固に連結することができる。
【0027】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記ガスケットは、前記ガス拡散層の外縁部を厚さ方向外側から保持する保持枠部を、一体的に備える構成とする方がよい(請求項3に対応)。本構成によると、ガスケットの保持枠部と電解質膜の外縁部との間の厚さ方向隙間に、ガス拡散層の外縁部が保持される。このため、ガス拡散層とMEAとが分離しにくい。
【0028】
(4)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、さらに、前記ガスケットと前記フレームとの間に、ゴム製の第二架橋接着部材を備える構成とする方がよい(請求項4に対応)。
【0029】
本構成によると、ガスケットと第二架橋接着部材とが架橋接着されている。並びに、フレームと第二架橋接着部材とが架橋接着されている。このため、ガスケットと第二架橋接着部材との間、およびフレームと第二架橋接着部材との間のシール性、接着性が良好である。また、第二架橋接着部材はゴム製であるため、撥水性が高い。したがって、ガスケットと第二架橋接着部材との間の接着界面、およびフレームと第二架橋接着部材との間の接着界面に、水分が浸入しにくい。すなわち、ガスケットと第二架橋接着部材との間、およびフレームと第二架橋接着部材との間のシール性、接着性が劣化しにくい。
【0030】
また、第二架橋接着部材はゴム製であるため、弾性変形領域が広い。したがって、ガスケットとフレームとの間の変形量の較差を、容易に吸収することができる。この点においても、ガスケットと第二架橋接着部材との間、およびフレームと第二架橋接着部材との間のシール性、接着性が劣化しにくい。また、本構成によると、第二架橋接着部材を介して、ガスケットとフレームとを堅固に連結することができる。
【0031】
(5)好ましくは、上記(1)ないし(4)のいずれかの構成において、前記ガスケットは、前記フレームの厚さ方向外側に配置され、厚さ方向に隣り合う相手側部材に弾接可能なリブを、一体的に備える構成とする方がよい(請求項5に対応)。
【0032】
本構成によると、リブが相手側部材(例えばセパレータ)に弾接することにより、燃料電池用セルと相手側部材との間のシール性を確保することができる。また、前出図12に示すように、特許文献1の燃料電池用セル100のリブ102dの厚さ方向内側には、電解質膜101aが配置されている。このため、リブ102dが相手側部材に弾接する際の反力が、電解質膜101aに加わりやすい。また、リブ102dは、ゴム製であるため、弾性変形しやすい。このため、相手側部材への弾接力が小さくなりやすい。
【0033】
これに対して、本構成の燃料電池用セルのリブは、フレームの厚さ方向外側に配置されている。すなわち、リブは、フレームにより、厚さ方向内側から支持されている。このため、本構成によると、相手側部材への弾接力が小さくなりにくい。また、仮に、リブの厚さ方向内側に電解質膜が配置される場合であっても(勿論、リブの厚さ方向内側に電解質膜が配置されない場合もある)、リブと電解質膜との間には、フレームが介在している。このため、リブが相手側部材に弾接する際の反力が、電解質膜に加わりにくい。
【0034】
また、前出図12に示すように、特許文献1の燃料電池用セル100のリブ102dが相手側部材に弾接すると、リブ102dは、厚さ方向に圧縮変形する。並びに、リブ102dは、面展開方向隙間C101を押し広げるように、面展開方向に伸張変形する。ここで、リブ102dの面展開方向内側には、電極101bが接着されている。一方、リブ102dの面展開方向外側には、弾性層102aおよび形状保持層102bが接着されている。このため、リブ102dが変形すると、リブ102dと電極101b、またはリブ102dと弾性層102aおよび形状保持層102b、が剥離するおそれがある。
【0035】
これに対して、本構成の燃料電池用セルのリブは、ガスケットと一体的に配置されている。つまり、リブはガスケットと一体物である。このため、リブが変形しても、リブがガスケットから脱落するおそれが小さい。
【0036】
(6)好ましくは、上記(5)の構成において、前記ガスケットは、前記リブと、該リブの根本に一体的に形成され該リブを保持する根本部と、からなる構成とする方がよい(請求項6に対応)。
【0037】
前述したように、第一架橋接着部材はゴム製であるため、撥水性が高い。したがって、電解質膜の外縁部と第一架橋接着部材との間の接着界面、および一対のフレームと第一架橋接着部材との間の接着界面に、水分が浸入しにくい。このため、本構成のように、敢えてガスケットで水分の浸入を抑制しなくても、電解質膜が水分により劣化するおそれが小さい。本構成によると、ガスケット原料の使用量を削減することができる。このため、燃料電池用セルの製造コストを削減することができる。
【0038】
(7)好ましくは、上記(1)ないし(6)のいずれかの構成において、前記フレームの枠内縁部と前記ガス拡散層の外縁部との間には、隙間が区画されており、前記電解質膜は、該隙間から外部に表出する表出部を備えており、前記第一架橋接着部材は、該表出部を被覆している構成とする方がよい(請求項7に対応)。
【0039】
本構成によると、表出部が第一架橋接着部材により覆われている。このため、表出部を介して、電解質膜から分解したフッ化物やスルホン酸などの生成物が外部にリークするのを、抑制することができる。
【0040】
(8)好ましくは、上記(1)ないし(6)のいずれかの構成において、前記フレームの枠内縁部と前記ガス拡散層の外縁部との間には、隙間が区画されていない構成とする方がよい(請求項8に対応)。
【0041】
本構成によると、フレームの枠内縁部と前記ガス拡散層の外縁部との間を介して、電解質膜から分解したフッ化物やスルホン酸などの生成物が外部にリークするのを、抑制することができる。
【0042】
(9)好ましくは、上記(8)の構成において、前記電解質膜の外縁部と前記フレームの枠内縁部と前記ガス拡散層の外縁部とは、厚さ方向内側から外側に向かって積層されており、前記膜収容部は、該電解質膜の外縁部と該フレームの枠内縁部との間に介在する第三介在部を備えており、前記第二架橋接着部材は、該フレームの枠内縁部と前記ガス拡散層の外縁部との間に介在している構成とする方がよい(請求項9に対応)。
【0043】
本構成によると、厚さ方向に、電解質膜の外縁部と、フレームの枠内縁部と、ガス拡散層の外縁部と、が積層されている。電解質膜の外縁部とフレームの枠内縁部との間には、第一架橋接着部材の膜収容部の第三介在部が介在している。第三介在部は、これら電解質膜の外縁部およびフレームの枠内縁部と、架橋接着されている。このため、第三介在部と電解質膜の外縁部との間のシール性、接着性が良好である。並びに、第三介在部とフレームの枠内縁部との間のシール性、接着性が良好である。
【0044】
フレームの枠内縁部とガス拡散層の外縁部との間には、第二架橋接着部材が介在している。第二架橋接着部材は、これらフレームの枠内縁部およびガス拡散層の外縁部と、架橋接着されている。このため、第二架橋接着部材とフレームの枠内縁部との間のシール性、接着性が良好である。並びに、第二架橋接着部材とガス拡散層の外縁部との間のシール性、接着性が良好である。
【0045】
また、第三介在部はゴム製である。このため、熱により、第三介在部が電解質膜の外縁部およびフレームの枠内縁部から、剥離するおそれが小さい。
【0046】
また、第三介在部はゴム製であるため、撥水性が高い。したがって、電解質膜の外縁部と第三介在部との間の接着界面、およびフレームの枠内縁部と第三介在部との間の接着界面に、水分が浸入しにくい。すなわち、電解質膜の外縁部と第三介在部との間、およびフレームの枠内縁部と第三介在部との間のシール性、接着性が劣化しにくい。
【0047】
また、第三介在部はゴム製であるため、弾性変形領域が広い。したがって、電解質膜とフレームとの間の変形量の較差を、容易に吸収することができる。この点においても、電解質膜の外縁部と第三介在部との間、フレームの枠内縁部と第三介在部との間のシール性、接着性が劣化しにくい。また、第三介在部を介して、電解質膜とフレームとを堅固に連結することができる。
【0048】
また、第二架橋接着部材はゴム製である。このため、熱により、第二架橋接着部材がフレームの枠内縁部およびガス拡散層の外縁部から、剥離するおそれが小さい。
【0049】
また、第二架橋接着部材はゴム製であるため、撥水性が高い。したがって、フレームの枠内縁部と第二架橋接着部材との間の接着界面、およびガス拡散層の外縁部と第二架橋接着部材との間の接着界面に、水分が浸入しにくい。すなわち、フレームの内縁部と第二架橋接着部材との間、およびガス拡散層の外縁部と第二架橋接着部材との間のシール性、接着性が劣化しにくい。
【0050】
また、第二架橋接着部材はゴム製であるため、弾性変形領域が広い。したがって、フレームとガス拡散層との間の変形量の較差を、容易に吸収することができる。この点においても、フレームの枠内縁部と第二架橋接着部材との間、ガス拡散層の外縁部と第二架橋接着部材との間のシール性、接着性が劣化しにくい。また、第二架橋接着部材を介して、フレームとガス拡散層とを堅固に連結することができる。
【0051】
(10)また、上記課題を解決するため、本発明の燃料電池は、上記(1)ないし(9)のいずれかの構成の燃料電池用セルが複数積層されてなることを特徴とする(請求項10に対応)。
【0052】
本発明の燃料電池は、上記(1)ないし(9)の構成の作用効果のうち、少なくとも(1)の構成の作用効果を有している。すなわち、電解質膜の外縁部は、第一架橋接着部材の膜収容部に、収容されている。このため、電解質膜の外縁部の端面を介して、電解質膜から分解したフッ化物やスルホン酸などの生成物が外部にリークするのを、抑制することができる。また、電解質膜の外縁部は、第一架橋接着部材に架橋接着されている。このため、電解質膜の外縁部が、第一架橋接着部材の膜収容部から脱落しにくい。このように、本発明の燃料電池は、電解質膜の外縁部と第一架橋接着部材との間のシール性、接着性が良好である。
【0053】
また、一対のフレーム間には、第一架橋接着部材の第一介在部が配置されている。並びに、一対のフレームは、第一架橋接着部材に架橋接着されている。このため、本発明の燃料電池は、一対のフレームと第一架橋接着部材との間のシール性、接着性が良好である。
【0054】
また、第一架橋接着部材はゴム製である。このため、前出特許文献3の燃料電池用セルの環状薄帯の熱可塑性樹脂層のように、熱により、第一架橋接着部材が電解質膜の外縁部から剥離するおそれが小さい。
【0055】
また、第一架橋接着部材はゴム製であるため、撥水性が高い。したがって、電解質膜の外縁部と第一架橋接着部材との間の接着界面、および一対のフレームと第一架橋接着部材との間の接着界面に、水分が浸入しにくい。すなわち、電解質膜の外縁部と第一架橋接着部材との間、および一対のフレームと第一架橋接着部材との間のシール性、接着性が劣化しにくい。
【0056】
また、第一架橋接着部材はゴム製であるため、弾性変形領域が広い。したがって、電解質膜の膨潤、収縮変形に、第一架橋接着部材は容易に追随することができる。また、電解質膜と一対のフレームとの間の変形量の較差を、容易に吸収することができる。この点においても、電解質膜の外縁部と第一架橋接着部材との間のシール性、接着性が劣化しにくい。また、本発明の燃料電池によると、第一架橋接着部材を介して、電解質膜すなわちMEAと一対のフレームとを堅固に連結することができる。
【0057】
(11)また、上記課題を解決するため、本発明の燃料電池用セルの製造方法は、電解質膜と、該電解質膜の厚さ方向両側に配置される一対の電極と、を有するMEAと、枠状であって、該電解質膜の外縁部を保持する一対のフレームと、一対の該フレームの枠内側かつ該MEAの厚さ方向両側に配置される一対のガス拡散層と、該電解質膜の外縁部を収容する凹状の膜収容部と、一対の該フレーム間に介在する第一介在部と、を備える未架橋のゴム製の第一架橋接着部材と、を備えるサブアセンブリを、成形型のキャビティ内に配置するサブアセンブリ配置工程と、該キャビティ内にガスケット原料を注入し、一対の該フレームの少なくとも一部を被覆するガスケットを成形すると共に、未架橋の該第一架橋接着部材を架橋させ、該第一架橋接着部材と、該電解質膜の外縁部および一対の該フレームと、を架橋接着する一体化工程と、を有することを特徴とする(請求項11に対応)。ここで、「未架橋」とは、完全架橋前の状態をいう。すなわち、架橋が未だ開始していない状態のみならず、ある程度架橋が進行した状態も含む。
【0058】
本発明の燃料電池用セルの製造方法は、サブアセンブリ配置工程と、一体化工程と、を有している。サブアセンブリ配置工程においては、サブアセンブリを成形型のキャビティ内に配置する。サブアセンブリは、MEAと、一対のフレームと、一対のガス拡散層と、未架橋のゴム製の第一架橋接着部材と、を備えている。
【0059】
一体化工程においては、キャビティ内にガスケット原料を注入し、サブアセンブリの所定の部位にガスケットを形成する。並びに、第一架橋接着部材を架橋させる。そして、第一架橋接着部材と電解質膜の外縁部とを架橋接着する。並びに、第一架橋接着部材とフレームとを架橋接着する。
【0060】
本発明の燃料電池用セルの製造方法によると、電解質膜の外縁部と第一架橋接着部材との間のシール性、接着性が良好な燃料電池用セルを、容易に製造することができる。また、本発明の燃料電池用セルの製造方法によると、一対のフレームと第一架橋接着部材との間のシール性、接着性が良好な燃料電池用セルを、容易に製造することができる。また、本発明の燃料電池用セルの製造方法によると、第一架橋接着部材を介して、電解質膜すなわちMEAと一対のフレームとを堅固に連結することができる。
【0061】
(12)好ましくは、上記(11)の構成において、前記サブアセンブリ配置工程において、未架橋の前記第一架橋接着部材の前記膜収容部は、前記電解質膜の外縁部と前記ガス拡散層の外縁部との間に介在する第二介在部を備えており、前記一体化工程において、未架橋の該第一架橋接着部材を架橋させ、該第二介在部と、該電解質膜の外縁部および一対の該ガス拡散層の外縁部と、を架橋接着する構成とする方がよい(請求項12に対応)。
【0062】
本構成によると、第一架橋接着部材の膜収容部とガス拡散層の外縁部との間のシール性、接着性が良好な燃料電池用セルを容易に製造することができる。また、本構成によると、第一架橋接着部材を介して、電解質膜すなわちMEAとガス拡散層とを堅固に連結することができる。
【0063】
(13)好ましくは、上記(11)または(12)の構成において、前記サブアセンブリ配置工程において、前記サブアセンブリは、さらに、前記ガスケットと前記フレームとの間に、未架橋のゴム製の第二架橋接着部材を備えており、前記一体化工程において、未架橋の該第二架橋接着部材を架橋させ、該第二架橋接着部材と、該ガスケットおよび該フレームと、を架橋接着する構成とする方がよい(請求項13に対応)。ここで、「未架橋」とは、完全架橋前の状態をいう。すなわち、架橋が未だ開始していない状態のみならず、ある程度架橋が進行した状態も含む。
【0064】
本構成によると、ガスケットと第二架橋接着部材との間、およびフレームと第二架橋接着部材との間のシール性、接着性が良好な燃料電池用セルを容易に製造することができる。また、本構成によると、第二架橋接着部材を介して、ガスケットとフレームとを堅固に連結することができる。
【0065】
(14)好ましくは、上記(11)ないし(13)のいずれかの構成において、前記サブアセンブリ配置工程において、前記電解質膜は、前記成形型の前記キャビティ内に表出しないように配置されている構成とする方がよい(請求項14に対応)。
【0066】
一体化工程においては、キャビティ内にガスケット原料を注入する。この際、電解質膜がキャビティ内に表出していると、ガスケット原料の流れが電解質膜を押圧する。ここで、電解質膜自体の剛性は低い。さらに、電解質膜は線膨張係数が大きいため、熱により膨張しやすい。これらの要因が相俟って、電解質膜が、面展開方向の片方に偏ったり、変形したりするおそれがある。すなわち、電解質膜が、所定位置に対して、位置ずれを起こすおそれがある。
【0067】
これに対して、本構成によると、電解質膜がキャビティ内に表出していない。このため、ガスケット原料の流れが電解質膜を直接的に押圧するおそれがない。したがって、電解質膜が、所定位置に対して、位置ずれを起こすおそれが小さい。
【0068】
(15)好ましくは、上記(14)の構成において、前記サブアセンブリ配置工程において、前記フレームの枠内縁部と前記ガス拡散層の外縁部との間には、隙間が区画されており、前記電解質膜は、該隙間から前記キャビティ内に表出するキャビティ表出部を備えており、前記第一架橋接着部材は、該キャビティ表出部を被覆している構成とする方がよい(請求項15に対応)。
【0069】
本構成によると、第一架橋接着部材が電解質膜のキャビティ表出部を覆っている。このため、ガスケット原料の流れがキャビティ表出部を直接的に押圧するおそれがない。また、第一架橋接着部材は弾性体である。このため、第一架橋接着部材を介して、ガスケット原料の流れがキャビティ表出部を間接的に押圧し電解質膜が変形しても、第一架橋接着部材の弾性復元力により、電解質膜を所定形状に復動させることができる。
【0070】
(16)好ましくは、上記(14)の構成において、前記サブアセンブリ配置工程において、前記フレームの枠内縁部と前記ガス拡散層の外縁部との間には、隙間が区画されていない構成とする方がよい(請求項16に対応)。
【0071】
本構成によると、フレームの枠内縁部とガス拡散層の外縁部との間から、電解質膜がキャビティ内に表出するおそれがない。このため、ガスケット原料の流れが電解質膜を直接的に押圧するおそれがない。
【0072】
(17)好ましくは、上記(16)の構成において、前記サブアセンブリ配置工程において、前記電解質膜の外縁部と前記フレームの枠内縁部と前記ガス拡散層の外縁部とは、厚さ方向内側から外側に向かって積層されており、前記膜収容部は、該電解質膜の外縁部と該フレームの枠内縁部との間に介在する第三介在部を備えており、前記第二架橋接着部材は、該フレームの枠内縁部と前記ガス拡散層の外縁部との間に介在している構成とする方がよい(請求項17に対応)。
【0073】
本構成によると、第三介在部と電解質膜の外縁部との間のシール性、接着性が良好な燃料電池用セルを容易に製造することができる。また、第三介在部とフレームの枠内縁部との間のシール性、接着性が良好な燃料電池用セルを容易に製造することができる。また、第二架橋接着部材とフレームの枠内縁部との間のシール性、接着性が良好な燃料電池用セルを容易に製造することができる。また、第二架橋接着部材とガス拡散層の外縁部との間のシール性、接着性が良好な燃料電池用セルを容易に製造することができる。また、第三介在部を介して、電解質膜とフレームとを堅固に連結することができる。また、第二架橋接着部材を介して、フレームとガス拡散層とを堅固に連結することができる。
【発明の効果】
【0074】
本発明によると、電解質膜の外縁部のシール性、接着性が良好な燃料電池用セルおよび燃料電池を提供することができる。また、本発明によると、電解質膜の外縁部のシール性、接着性が良好な燃料電池用セルを容易に製造することができる燃料電池用セルの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0075】
以下、本発明の燃料電池用セルおよび燃料電池および燃料電池用セルの製造方法の実施の形態について説明する。
【0076】
<第一実施形態>
[燃料電池]
まず、本実施形態の燃料電池の構成について説明する。図1に、本実施形態の燃料電池の積層方向部分断面図を示す。図2に、同燃料電池の燃料電池用セルとセパレータとの分解図を示す。
【0077】
図1、図2に示すように、本実施形態の燃料電池10は、燃料電池用セル1とセパレータ90U、90Dと接着部材91とを備えている。燃料電池用セル1の構成については後で詳しく説明する。
【0078】
セパレータ90Uは、金属製であって凹凸を有する矩形薄板状を呈している。セパレータ90Uには、当該凹凸形状により、ガス流路900Uが区画されている。セパレータ90Uは、任意の燃料電池用セル1の上方(詳しくは後述するガス拡散層4Uの上方)に配置されている。
【0079】
同様に、セパレータ90Dは、金属製であって凹凸を有する矩形薄板状を呈している。セパレータ90Dには、当該凹凸形状により、ガス流路900Dが区画されている。セパレータ90Dは、任意の燃料電池用セル1の下方(詳しくは後述するガス拡散層4Dの下方)に配置されている。すなわち、任意の燃料電池用セル1は、一対のセパレータ90U、90Dにより、上下方向から挟持されている。「セパレータ90U−燃料電池用セル1−セパレータ90D」の単位構造は、オレフィン系熱可塑性樹脂製の接着部材91を介して、上下方向に多数積層されている。
【0080】
積層体の積層方向両端には、一対のエンドプレートが配置されている。一対のエンドプレートにより、積層体は、積層方向両側から締結されている。また、燃料電池10は、セパレータ90U、90D、燃料電池用セル1を積層方向に貫通するマニホールド孔92L、92Rを有している。
【0081】
[燃料電池用セル]
次に、本実施形態の燃料電池用セル1の構成について説明する。図3(a)に、本実施形態の燃料電池用セルの上面図を示す。図3(b)に、図3(a)のb−b断面図を示す。なお、図3に示すのは、燃料電池用セル1の左右方向中心面F1から右半分の部分である。燃料電池用セル1は、左右方向中心面F1を挟んで、左右対称である。図4に、図3(b)の枠IV内の拡大図を示す。
【0082】
図3、図4に示すように、本実施形態の燃料電池用セル1は、MEA2と、一対のフレーム3U、3Dと、一対のガス拡散層4U、4Dと、ガスケット5と、第一架橋接着部材6と、を備えている。
【0083】
MEA2は、電解質膜20と、一対の電極(図略)と、を備えている。電解質膜20は、イオン交換膜である。電解質膜20は、フッ素系樹脂により形成されており、矩形薄膜状を呈している。電解質膜20は、プロトン伝導性を有している。
【0084】
一対の電極は、白金製であって、電解質膜20の上下面に塗布されている。ただし、一対の電極は、電解質膜20の外縁部200の上下面には塗布されていない。電極の塗布方法を簡単に説明する。まず、白金を担持したカーボン粉を、適当な有機溶剤に分散させる。次いで、カーボン粉が分散された当該有機溶剤に、電解質溶液を適量添加して、ペーストを調製する。それから、当該ペーストを電解質膜20の上下面に、スクリーン印刷する。このようにして、一対の電極を、電解質膜20の上下面に塗布する。
【0085】
一対のガス拡散層4U、4Dは、各々、炭素繊維が織られて形成されたカーボンクロス製である。一対のガス拡散層4U、4Dは、各々、矩形シート状を呈している。ガス拡散層4Uは、MEA2の上方に配置されている。ガス拡散層4Dは、MEA2の下方に配置されている。
【0086】
一対のフレーム3U、3Dは、各々、オレフィン又はエステル系の樹脂製であって、矩形枠状を呈している。フレーム3Uの枠内縁部30Uと、フレーム3Dの枠内縁部30Dと、の間には、後述する第一架橋接着部材6を介して、電解質膜20の外縁部200が、間接的に挟持されている。フレーム3Uの枠内側には、ガス拡散層4Uが配置されている。フレーム3Uの枠内縁部30Uと、ガス拡散層4Uの外縁部40Uと、の間には、隙間CUが区画されている。
【0087】
同様に、フレーム3Dの枠内側には、ガス拡散層4Dが配置されている。フレーム3Dの枠内縁部30Dと、ガス拡散層4Dの外縁部40Dと、の間には、隙間CDが区画されている。フレーム3Uの外縁部31Uと、フレーム3Dの外縁部31Dとは、オレフィン系熱可塑性樹脂製の接着部材32を介して、連結されている。
【0088】
ガスケット5は、シリコーンゴム製であって、矩形枠状を呈している。ガスケット5は、一対のフレーム3U、3Dを覆うように配置されている。また、ガスケット5は、一対のフレーム3U、3D枠内側にも延在している。前記隙間CU、CDには、各々、ガスケット5が充填されている。ガスケット5には、リブ50U(図3(a)においては、説明の便宜上、ハッチングを施している。)、50Dと保持枠部51U、51Dとが一体的に形成されている。リブ50U、50Dは、マニホールド孔92Rなどの孔の周囲に配置されている。リブ50Uは、フレーム3Uの上方に配置されている。言い換えると、リブ50Uは、フレーム3Uにより、下方から支持されている。また、リブ50Dは、フレーム3Dの下方に配置されている。言い換えると、リブ50Dは、フレーム3Dにより、上方から支持されている。前出図2に示すように、リブ50Uはセパレータ90Uの下面に、リブ50Dはセパレータ90Dの上面に、それぞれ弾接している。図3、図4に戻って、保持枠部51Uは、ガス拡散層4Uの外縁部40Uの上方に配置されている。また、保持枠部51Dは、ガス拡散層4Dの外縁部40Dの下方に配置されている。すなわち、これら一対の保持枠部51U、51Dにより、ガス拡散層4U、4Dは、上下方向から保持されている。
【0089】
第一架橋接着部材6は、電解質膜20の外縁部200と、一対のガス拡散層4U、4Dとの間に介装されている。また、第一架橋接着部材6は、電解質膜20の外縁部200と、ガスケット5との間に介装されている。また、第一架橋接着部材6は、電解質膜20の外縁部200と、一対のフレーム3U、3Dと、の間に介装されている。
【0090】
具体的には、第一架橋接着部材6は、一対のシート部材6U、6Dを備えている。一対のシート部材6U、6Dは、各々、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)製であって、薄膜状を呈している。シート部材6Uは、電解質膜20の外縁部200上面を縁取るように、矩形枠状に配置されている。また、シート部材6Dは、電解質膜20の外縁部200下面を縁取るように、矩形枠状に配置されている。
【0091】
また、第一架橋接着部材6は、膜収容部60と、第一介在部61と、を備えている。これら膜収容部60および第一介在部61は、一対のシート部材6U、6Dにより、形成されている。
【0092】
膜収容部60は、面展開方向(燃料電池用セル1の積層方向に対して略垂直に展開する面方向)内側(図4では左側)に開口する袋状を呈している。シート部材6Uのうち膜収容部60の上壁を形成する部分は、面展開方向内側から外側に向かって(図4では左側から右側に向かって)、電解質膜20の外縁部200とガス拡散層4Uの外縁部40Uとの間、および外縁部200とガスケット5との間、および外縁部200とフレーム3Uの枠内縁部30Uとの間、にそれぞれ介装されている。言い換えると、シート部材6Uは、電解質膜20の外縁部200、ガス拡散層4Uの外縁部40U、ガスケット5、フレーム3Uの枠内縁部30U、に架橋接着されている。シート部材6Uのうち、電解質膜20の外縁部200とガス拡散層4Uの外縁部40Uとの間に介在する部分が、第二介在部600Uである。
【0093】
同様に、シート部材6Dのうち膜収容部60の下壁を形成する部分は、面展開方向内側から外側に向かって、電解質膜20の外縁部200とガス拡散層4Dの外縁部40Dとの間、および外縁部200とガスケット5との間、および外縁部200とフレーム3Dの枠内縁部30Dとの間、にそれぞれ介装されている。言い換えると、シート部材6Dは、電解質膜20の外縁部200、ガス拡散層4Dの外縁部40D、ガスケット5、フレーム3Dの枠内縁部30D、に架橋接着されている。シート部材6Dのうち、電解質膜20の外縁部200とガス拡散層4Dの外縁部40Dとの間に介在する部分が、第二介在部600Dである。
【0094】
第一介在部61は、膜収容部60の面展開方向外側に配置されている。第一介在部61は、一対のフレーム3U、3D間に介在している。シート部材6U、6Dのうち第一介在部61を形成する部分は、一対のフレーム3U、3Dに架橋接着されている。また、シート部材6U、6Dのうち第一介在部61を形成する部分同士は、互いに架橋接着されている。このため、膜収容部60は、面展開方向外側から封止されている。
【0095】
[燃料電池用セルの製造方法]
次に、本実施形態の燃料電池用セル1の製造方法について説明する。本実施形態の燃料電池用セル1の製造方法は、サブアセンブリ配置工程と、一体化工程と、を有している。図5に、本実施形態の燃料電池用セルの製造方法のサブアセンブリ配置工程前段の模式図を示す。図6に、同工程後段の模式図を示す。図7に、本実施形態の燃料電池用セルの製造方法の一体化工程の模式図を示す。なお、図5以降の図は、いずれも、燃料電池用セル1における、図4の枠IV内に対応する部位を示している。
【0096】
サブアセンブリ配置工程においては、図5に示すように、まず、サブアセンブリSAを金型93のキャビティC1内に配置する。サブアセンブリSAは、MEA2と、一対のフレーム3U、3Dと、ガス拡散層4U、4Dと、第一架橋接着部材6と、接着部材32と、を備えている。なお、第一架橋接着部材6を構成するシート部材6U、6Dは、未架橋状態である。
【0097】
キャビティC1は、前出図4のガスケット5に対応する形状を呈している。すなわち、金型93の上型93Uの型面930Uには、前出図4のリブ50Uに対応するリブ用凹部931Uが凹設されている。また、型面930Uには、前出図4の保持枠部51Uに対応する保持枠部用凹部932Uが凹設されている。また、型面930Uには、前出図4のマニホールド孔92Rに対応するマニホールド孔用凸部933Uが突設されている。
【0098】
同様に、金型93の下型93Dの型面930Dには、前出図4のリブ50Dに対応するリブ用凹部931Dが凹設されている。また、型面930Dには、前出図4の保持枠部51Dに対応する保持枠部用凹部932Dが凹設されている。また、型面930Dには、前出図4のマニホールド孔92Rに対応するマニホールド孔用凸部933Dが突設されている。
【0099】
同工程では、サブアセンブリSAの配置に続いて、金型93の型締めを行う。図6に示すように、型締めにより、上型93Uのマニホールド孔用凸部933Uと、下型93Dのマニホールド孔用凸部933Dと、が突き当たる。また、一対のフレーム3U、3Dにより、接着部材32が上下方向から挟持される。同様に、一対のフレーム3U、3Dにより、シート部材6U、6Dが上下方向から挟持される。一対のシート部材6U、6Dの間の、面展開方向内側部分には、電解質膜20の外縁部200が介装されている。このため、シート部材6U、6Dを介して、電解質膜20の外縁部200も、一対のフレーム3U、3Dにより上下方向から挟持されることになる。このように、一対のフレーム3U、3Dに挟持されることにより、第一架橋接着部材6に、膜収容部60と第一介在部61とが形成される。
【0100】
なお、電解質膜20の外縁部200の上面の隙間CU部分にはキャビティ表出部201Uが、外縁部200の下面の隙間CD部分にはキャビティ表出部201Dが、それぞれ発現する。しかしながら、これらキャビティ表出部201U、201Dは、膜収容部60に収容されている。このため、キャビティ表出部201U、201Dは、キャビティC1内に表出しない。
【0101】
また、ガス拡散層4U上面は、上型93Uの型面930Uにより、上方から押圧される。同様に、ガス拡散層4D下面は、下型93Dの型面930Dにより、下方から押圧される。このため、第二介在部600Uは、電解質膜20の外縁部200とガス拡散層4Uの外縁部40Uとにより、上下方向から挟持される。同様に、第二介在部600Dは、電解質膜20の外縁部200とガス拡散層4Dの外縁部40Dとにより、上下方向から挟持される。
【0102】
一体化工程においては、図7に示すように、まず、所定の温度に加熱された金型93のキャビティC1内に、液体状態のガスケット原料L1を流し込む。ガスケット原料L1は、キャビティC1内に行き渡る。また、接着部材32は軟化する。また、シート部材6U、6Dは架橋反応を起こす。
【0103】
同工程では、続いて、金型93を冷却する。金型93を冷却すると、ガスケット原料L1が硬化し、前出図4に示すガスケット5が一体的に形成される。また、接着部材32が硬化し、フレーム3Uの外縁部31Uと、接着部材32と、フレーム3Dの外縁部31Dと、が堅固に接着される。また、シート部材6Uと電解質膜20の外縁部200、シート部材6Uとガス拡散層4Uの外縁部40U、シート部材6Uと隙間CUに充填されるガスケット原料L1、シート部材6Uとフレーム3U、シート部材6Dと電解質膜20の外縁部200、シート部材6Dとガス拡散層4Dの外縁部40D、シート部材6Dと隙間CDに充填されるガスケット原料L1、シート部材6Dとフレーム3D、シート部材6Dとシート部材6Uが、各々、堅固に架橋接着される。このようにして、前出図4に示す本実施形態の燃料電池用セル1を製造する。
【0104】
[作用効果]
次に、本実施形態の燃料電池用セル1および燃料電池10および燃料電池用セル1の製造方法の作用効果について説明する。本実施形態の燃料電池用セル1によると、電解質膜20の外縁部200は、第一架橋接着部材6の膜収容部60に、収容されている。このため、電解質膜20の外縁部200の端面を介して、電解質膜20から分解したフッ化物やスルホン酸などの生成物が外部にリークするのを、抑制することができる。また、電解質膜20の外縁部200は、第一架橋接着部材6に架橋接着されている。このため、電解質膜20の外縁部200が、第一架橋接着部材6の膜収容部60から脱落しにくい。このように、本実施形態の燃料電池用セル1は、電解質膜20の外縁部200と第一架橋接着部材6との間のシール性、接着性が良好である。
【0105】
また、一対のフレーム3U、3D間には、第一架橋接着部材6の第一介在部61が配置されている。並びに、一対のフレーム3U、3Dは、第一架橋接着部材6に架橋接着されている。このため、本実施形態の燃料電池用セル1は、一対のフレーム3U、3Dと第一架橋接着部材6との間のシール性、接着性が良好である。また、第一介在部61においては、一対のシート部材6U、6Dが互いに架橋接着されている。このため、第一介在部61自体のシール性、接着性が良好である。
【0106】
また、第一架橋接着部材6はEPDM製である。このため、加熱により軟化するおそれがない。したがって、前出特許文献3の燃料電池用セルの環状薄帯の熱可塑性樹脂層のように、熱により、第一架橋接着部材6が軟化して、電解質膜20の外縁部200から剥離するおそれが小さい。
【0107】
また、第一架橋接着部材6はEPDM製であるため、撥水性が高い。したがって、電解質膜20の外縁部200と第一架橋接着部材6との間の接着界面、および一対のフレーム3U、3Dと第一架橋接着部材6との間の接着界面、および一対のシート部材6U、6Dのうち第一介在部61を構成する部分に、水分が浸入しにくい。
【0108】
また、第一架橋接着部材6はEPDM製であるため、弾性変形領域が広い。したがって、電解質膜20の膨潤、収縮変形に、第一架橋接着部材6は容易に追随することができる。また、電解質膜20と一対のフレーム3U、3Dとの間の変形量の較差を、容易に吸収することができる。この点においても、電解質膜20の外縁部200と第一架橋接着部材6との間のシール性、接着性が劣化しにくい。また、本実施形態の燃料電池用セル1によると、第一架橋接着部材6を介して、電解質膜20すなわちMEA2と一対のフレーム3U、3Dとを堅固に連結することができる。
【0109】
また、本実施形態の燃料電池用セル1によると、電解質膜20の外縁部200とガス拡散層4U、4Dの外縁部40U、40Dとの間に、第二介在部600U、600Dが配置されている。このため、第一架橋接着部材6の膜収容部60と、ガス拡散層4U、4Dの外縁部40U、40Dと、の間のシール性、接着性が良好である。
【0110】
また、第一架橋接着部材6はEPDM製であり、加熱により軟化するおそれがない。したがって、熱により、第一架橋接着部材6の膜収容部60が、ガス拡散層4U、4Dの外縁部40U、40Dから、剥離するおそれが小さい。
【0111】
また、第一架橋接着部材6はEPDM製であるため、撥水性が高い。したがって、第一架橋接着部材6の膜収容部60とガス拡散層4U、4Dの外縁部40U、40Dとの間の接着界面に、水分が浸入しにくい。
【0112】
また、第一架橋接着部材6はEPDM製であるため、弾性変形領域が広い。したがって、第一架橋接着部材6は、電解質膜20とガス拡散層4U、4Dとの間の変形量の較差を、容易に吸収することができる。また、本実施形態の燃料電池用セル1によると、第一架橋接着部材6を介して、電解質膜20すなわちMEA2とガス拡散層4U、4Dとを堅固に連結することができる。
【0113】
また、本実施形態の燃料電池用セル1によると、ガスケット5は、ガス拡散層4U、4Dの外縁部40U、40Dを厚さ方向(燃料電池用セル1の積層方向)外側から保持する保持枠部51U、51Dを、一体的に備えている。このため、ガス拡散層4U、4DとMEA2とが分離しにくい。
【0114】
また、本実施形態の燃料電池用セル1によると、ガスケット5のリブ50U、50Dが、フレーム3U、3Dの厚さ方向外側に配置されている。リブ50U、50Dがセパレータ90U、90Dに弾接することにより、燃料電池用セル1とセパレータ90U、90Dとの間のシール性を確保することができる。
【0115】
また、前出図12に示すように、特許文献1の燃料電池用セル100のリブ102dの厚さ方向内側には、電解質膜101aが配置されている。このため、リブ102dが相手側部材に弾接する際の反力が、電解質膜101aに加わりやすい。また、リブ102dは、ゴム製であるため、弾性変形しやすい。このため、相手側部材への弾接力が小さくなりやすい。
【0116】
これに対して、本実施形態の燃料電池用セル1のリブ50U、50Dは、フレーム3U、3Dの厚さ方向外側に配置されている。すなわち、リブ50U、50Dは、フレーム3U、3Dにより、厚さ方向内側から支持されている。ここで、フレーム3U、3Dは、ガスケット5よりも剛性が高い。このため、本実施形態の燃料電池用セル1によると、セパレータ90U、90Dへの弾接力が小さくなりにくい。また、リブ50U、50Dと電解質膜20の外縁部200との間には、フレーム3U、3Dが介在している。このため、リブ50U、50Dがセパレータ90U、90Dに弾接する際の反力が、電解質膜20の外縁部200に加わりにくい。
【0117】
また、前出図12に示すように、特許文献1の燃料電池用セル100のリブ102dが相手側部材に弾接すると、リブ102dは、厚さ方向に圧縮変形する。並びに、リブ102dは、面展開方向隙間C101を押し広げるように、面展開方向に伸張変形する。ここで、リブ102dの面展開方向内側には、電極101bが接着されている。一方、リブ102dの面展開方向外側には、弾性層102aおよび形状保持層102bが接着されている。このため、リブ102dが変形すると、リブ102dと電極101b、またはリブ102dと弾性層102aおよび形状保持層102b、が剥離するおそれがある。
【0118】
これに対して、本実施形態の燃料電池用セル1のリブ50U、50Dは、ガスケット5成形時にガスケット5と一体的に形成される(前出図7参照)。このため、リブ50U、50Dが変形しても、リブ50U、50Dがガスケット5から脱落するおそれが小さい。
【0119】
また、本実施形態の燃料電池用セル1によると、MEA2と、一対のフレーム3U、3Dと、一対のガス拡散層4U、4Dと、ガスケット5と、第一架橋接着部材6と、が一体化されている。このため、本実施形態の燃料電池10は、組付が容易である。また、組付誤差が小さい。
【0120】
また、本実施形態の燃料電池用セル1の製造方法によると、電解質膜20の外縁部200と第一架橋接着部材6との間のシール性、接着性が良好な燃料電池用セル1を、サブアセンブリSAをキャビティC1内に配置し(サブアセンブリ配置工程)、ガスケット原料L1をキャビティC1内に流し込みながら加熱する(一体化工程)という単純な手順により、容易に製造することができる。
【0121】
また、本実施形態の燃料電池用セル1の製造方法によると、一対のフレーム3U、3Dと第一架橋接着部材6との間のシール性、接着性が良好な燃料電池用セル1を、容易に製造することができる。また、本実施形態の燃料電池用セル1の製造方法によると、第一架橋接着部材6を介して、電解質膜20すなわちMEA2と一対のフレーム3U、3Dとを堅固に連結することができる。
【0122】
また、本実施形態の燃料電池用セル1の製造方法によると、第二介在部600U、600Dを配置し、架橋させることにより、第一架橋接着部材6の膜収容部60とガス拡散層4U、4Dの外縁部40U、40Dとの間のシール性、接着性が良好な燃料電池用セル1を容易に製造することができる。また、本実施形態の燃料電池用セル1の製造方法によると、第一架橋接着部材6を介して、電解質膜20すなわちMEA2とガス拡散層4U、4Dとを堅固に連結することができる。
【0123】
また、本実施形態の燃料電池用セル1の製造方法によると、サブアセンブリ配置工程において、第一架橋接着部材6が電解質膜20のキャビティ表出部201U、201Dを覆っている(前出図6参照)。このため、一体化工程において、ガスケット原料L1の流れがキャビティ表出部201U、201Dを直接的に押圧するおそれがない。また、第一架橋接着部材6は弾性体である。このため、第一架橋接着部材6を介して、ガスケット原料L1の流れがキャビティ表出部201U、201Dを間接的に押圧し電解質膜20が変形しても、第一架橋接着部材6の弾性復元力により、電解質膜20を所定形状に復動させることができる。また、ガスケット原料L1の流れにより、電解質膜20が、一対のフレーム3U、3D間から脱落するおそれが小さい。
【0124】
<第二実施形態>
本実施形態の燃料電池用セルと第一実施形態の燃料電池用セルとの相違点は、ガスケットの体積が小さい点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0125】
図8に、本実施形態の燃料電池用セルの厚さ方向部分断面図を示す。なお、図4と対応する部位については、同じ符号で示す。図8に示すように、ガスケット5U、5Dは、一体物ではなく、互いに独立している。ガスケット5Uは、フレーム3Uの上面に配置されている。ガスケット5Uは、リブ50Uと根本部52Uとからなる。根本部52Uは、フレーム3U上面に固定されている。リブ50Uは、根本部52Uから上方に突設されている。同様に、ガスケット5Dは、フレーム3Dの下面に配置されている。ガスケット5Dは、リブ50Dと根本部52Dとからなる。根本部52Dは、フレーム3D下面に固定されている。リブ50Dは、根本部52Dから下方に突設されている。
【0126】
隙間CU、CDには、ガスケット5U、5Dが充填されていない。しかしながら、電解質膜20の外縁部200上面の表出部202Uは、シート部材6Uにより覆われている。このため、表出部202Uは、隙間CUから、シート部材6Uの外部に表出していない。同様に、電解質膜20の外縁部200下面の表出部202Dは、シート部材6Dにより覆われている。このため、表出部202Dは、隙間CDから、シート部材6Dの外部に表出していない。
【0127】
図9に、本実施形態の燃料電池用セルの製造方法の一体化工程の模式図を示す。なお、図7と対応する部位については、同じ符号で示す。図9に示すように、金型93には、上方のキャビティC2Uと下方のキャビティC2Dとが、別個独立して配置されている。キャビティC2Uは、前出図8のガスケット5Uに対応する形状を呈している。並びに、キャビティC2Dは、前出図8のガスケット5Dに対応する形状を呈している。一体化工程において、キャビティC2U、C2Dにガスケット原料L1を流し込むことにより、前出図8のガスケット5U、5Dが形成される。
【0128】
本実施形態の燃料電池用セルおよび燃料電池および燃料電池用セルの製造方法は、構成が共通する部分については、第一実施形態の燃料電池用セルおよび燃料電池および燃料電池用セルの製造方法と同様の作用効果を有する。
【0129】
また、第一架橋接着部材6はEPDM製であるため、撥水性が高い。したがって、電解質膜20の外縁部200と第一架橋接着部材6との間の接着界面、および一対のフレーム3U、3Dと第一架橋接着部材6との間の接着界面、一対のガス拡散層4U、4Dと第一架橋接着部材6との接着界面に、水分が浸入しにくい。このため、本実施形態の燃料電池用セルのように、敢えてガスケット5U、5Dで隙間CU、CDを封止しなくても、電解質膜20が水分により劣化するおそれが小さい。隙間CU、CDを封止しなくてよいため、本実施形態の燃料電池用セルの製造方法によると、ガスケット原料L1の使用量を削減することができる。したがって、燃料電池用セルの製造コストを削減することができる。
【0130】
また、本実施形態の燃料電池用セルによると、電解質膜20の表出部202U、202Dが第一架橋接着部材6により覆われている。このため、表出部202U、202Dを介して、電解質膜20から分解したフッ化物やスルホン酸などの生成物が外部にリークするのを、抑制することができる。
【0131】
<第三実施形態>
本実施形態の燃料電池用セルと第一実施形態の燃料電池用セルとの相違点は、ガスケットの体積が小さい点である。また、フレームとガスケットとの間に、第二架橋接着部材が配置されている点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0132】
図10に、本実施形態の燃料電池用セルの厚さ方向部分断面図を示す。なお、図4と対応する部位については、同じ符号で示す。図10に示すように、フレーム3Uの下面にはシート部材6Uが、フレーム3Uの上面には第二架橋接着部材7Uが、それぞれ架橋接着されている。第二架橋接着部材7Uは、EPDM製であって、フレーム3U上面全体に配置されている。並びに、フレーム3Dの上面にはシート部材6Dが、フレーム3Dの下面には第二架橋接着部材7Dが、それぞれ配置されている。第二架橋接着部材7Dは、EPDM製であって、フレーム3D下面全体に配置されている。
【0133】
膜収容部60は、第三介在部601U、601Dを備えている。第三介在部601Uは、電解質膜20の外縁部200とフレーム3Uの枠内縁部30Uとの間に、介在している。また、第三介在部601Dは、電解質膜20の外縁部200とフレーム3Dの枠内縁部30Dとの間に、介在している。
【0134】
電解質膜20の外縁部200と、フレーム3U、3Dの枠内縁部30U、30Dと、ガス拡散層4U、4Dの外縁部40U、40Dと、は、厚さ方向に積層されている。このうち、電解質膜20の外縁部200と、フレーム3U、3Dの枠内縁部30U、30Dと、の間には、上記第三介在部601U、601Dが介在している。また、フレーム3U、3Dの枠内縁部30U、30Dと、ガス拡散層4U、4Dの外縁部40U、40Dと、の間には、第二架橋接着部材7U、7Dの枠内縁部が介在している。
【0135】
ガスケット5U、5Dは、第二実施形態同様に、一体物ではなく、互いに独立している。ガスケット5Uは、第二架橋接着部材7U上面に配置されている。ガスケット5Uは、リブ50Uと根本部52Uとからなる。根本部52Uは、第二架橋接着部材7U上面に架橋接着されている。リブ50Uは、根本部52Uから上方に突設されている。
【0136】
同様に、ガスケット5Dは、第二架橋接着部材7D下面に配置されている。ガスケット5Dは、リブ50Dと根本部52Dとからなる。根本部52Dは、第二架橋接着部材7D下面に架橋接着されている。リブ50Dは、根本部52Dから下方に突設されている。
【0137】
図11に、本実施形態の燃料電池用セルの製造方法の一体化工程の模式図を示す。なお、図7と対応する部位については、同じ符号で示す。図11に示すように、金型93には、上方のキャビティC2Uと下方のキャビティC2Dとが、別個独立して配置されている。キャビティC2Uは、前出図10のガスケット5Uに対応する形状を呈している。並びに、キャビティC2Dは、前出図10のガスケット5Dに対応する形状を呈している。一体化工程において、キャビティC2U、C2Dにガスケット原料L1を流し込むことにより、前出図10のガスケット5U、5Dが形成される。また、第一架橋接着部材6、第二架橋接着部材7U、7Dが、架橋反応を起こす。
【0138】
本実施形態の燃料電池用セルおよび燃料電池および燃料電池用セルの製造方法は、構成が共通する部分については、第一実施形態の燃料電池用セルおよび燃料電池および燃料電池用セルの製造方法と同様の作用効果を有する。
【0139】
本実施形態の燃料電池用セルによると、ガスケット5U、5Dと第二架橋接着部材7U、7Dとが架橋接着されている。並びに、フレーム3U、3Dと第二架橋接着部材7U、7Dとが架橋接着されている。このため、ガスケット5U、5Dと第二架橋接着部材7U、7Dとの間、およびフレーム3U、3Dと第二架橋接着部材7U、7Dとの間のシール性、接着性が良好である。また、第二架橋接着部材7U、7DはEPDM製であるため、撥水性が高い。したがって、ガスケット5U、5Dと第二架橋接着部材7U、7Dとの間の接着界面、およびフレーム3U、3Dと第二架橋接着部材7U、7Dとの間の接着界面に、水分が浸入しにくい。すなわち、ガスケット5U、5Dと第二架橋接着部材7U、7Dとの間、およびフレーム3U、3Dと第二架橋接着部材7U、7Dとの間のシール性、接着性が劣化しにくい。
【0140】
また、第二架橋接着部材7U、7DはEPDM製であるため、弾性変形領域が広い。したがって、ガスケット5U、5Dとフレーム3U、3Dとの間の変形量の較差を、容易に吸収することができる。この点においても、ガスケット5U、5Dと第二架橋接着部材7U、7Dとの間、およびフレーム3U、3Dと第二架橋接着部材7U、7Dとの間のシール性、接着性が劣化しにくい。また、本実施形態の燃料電池用セルによると、第二架橋接着部材7U、7Dを介して、ガスケット5U、5Dとフレーム3U、3Dとを堅固に連結することができる。
【0141】
また、本実施形態の燃料電池用セルによると、厚さ方向に、電解質膜20の外縁部200と、フレーム3U、3Dの枠内縁部30U、30Dと、ガス拡散層4U、4Dの外縁部40U、40Dと、が積層されている。
【0142】
電解質膜20の外縁部200とフレーム3U、3Dの枠内縁部30U、30Dとの間には、第一架橋接着部材6の膜収容部60の第三介在部601U、601Dが介在している。第三介在部601U、601Dは、これら電解質膜20の外縁部200およびフレーム3U、3Dの枠内縁部30U、30Dと、架橋接着されている。このため、第三介在部601U、601Dと電解質膜20の外縁部200との間のシール性、接着性が良好である。並びに、第三介在部601U、601Dとフレーム3U、3Dの枠内縁部30U、30Dとの間のシール性、接着性が良好である。
【0143】
フレーム3U、3Dの枠内縁部30U、30Dとガス拡散層4U、4Dの外縁部40U、40Dとの間には、第二架橋接着部材7U、7Dが介在している。第二架橋接着部材7U、7Dは、これらフレーム3U、3Dの枠内縁部30U、30Dおよびガス拡散層4U、4Dの外縁部40U、40Dと、架橋接着されている。このため、第二架橋接着部材7U、7Dとフレーム3U、3Dの枠内縁部30U、30Dとの間のシール性、接着性が良好である。並びに、第二架橋接着部材7U、7Dとガス拡散層4U、4Dの外縁部40U、40Dとの間のシール性、接着性が良好である。
【0144】
また、第三介在部601U、601DはEPDM製である。このため、熱により、第三介在部601U、601Dが電解質膜20の外縁部200およびフレーム3U、3Dの枠内縁部30U、30Dから、剥離するおそれが小さい。
【0145】
また、第三介在部601U、601DはEPDM製であるため、撥水性が高い。したがって、電解質膜20の外縁部200と第三介在部601U、601Dとの間の接着界面、およびフレーム3U、3Dの枠内縁部30U、30Dと第三介在部601U、601Dとの間の接着界面に、水分が浸入しにくい。
【0146】
また、第三介在部601U、601DはEPDM製であるため、弾性変形領域が広い。したがって、電解質膜20とフレーム3U、3Dとの間の変形量の較差を、容易に吸収することができる。また、第三介在部601U、601Dを介して、電解質膜20とフレーム3U、3Dとを堅固に連結することができる。
【0147】
また、第二架橋接着部材7U、7DはEPDM製である。このため、熱により、第二架橋接着部材7U、7Dがフレーム3U、3Dの枠内縁部30U、30Dおよびガス拡散層4U、4Dの外縁部40U、40Dから、剥離するおそれが小さい。
【0148】
また、第二架橋接着部材7U、7DはEPDM製であるため、撥水性が高い。したがって、フレーム3U、3Dの枠内縁部30U、30Dと第二架橋接着部材7U、7Dとの間の接着界面、およびガス拡散層4U、4Dの外縁部40U、40Dと第二架橋接着部材7U、7Dとの間の接着界面に、水分が浸入しにくい。
【0149】
また、第二架橋接着部材7U、7DはEPDM製であるため、弾性変形領域が広い。したがって、フレーム3U、3Dとガス拡散層4U、4Dとの間の変形量の較差を、容易に吸収することができる。また、第二架橋接着部材7U、7Dを介して、フレーム3U、3Dとガス拡散層4U、4Dとを堅固に連結することができる。
【0150】
<その他>
以上、本発明の燃料電池用セルおよび燃料電池および燃料電池用セルの製造方法の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0151】
例えば、電解質膜20の外縁部200は、一対のフレーム3U、3D間に挟持されていなくてもよい。すなわち、一対のフレーム3U、3D間には、第一介在部61だけが挟持されていてもよい。こうすると、電解質膜20の外縁部200に燃料電池10の締結力が伝わりにくい。このため、電解質膜20の外縁部200が劣化しにくい。
【0152】
また、第一架橋接着部材6、第二架橋接着部材7U、7Dの配置方法も特に限定しない。例えば、液状のゴムを塗布、あるいはスプレーすることにより、第一架橋接着部材6、第二架橋接着部材7U、7Dを配置してもよい。
【0153】
一対のフレーム3U、3Dの材質は特に限定しない。ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ガラス基材含有エポキシ樹脂など、各種樹脂(熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂)を用いることができる。好ましくは、耐熱性、耐薬品性に優れた材質である方がよい。
【0154】
ガスケット5U、5Dの材質も特に限定しない。シリコーンゴムの他、フッ素系ゴム、エチレンプロピレンゴム、熱可塑性エラストマ、熱硬化型シリコーン系樹脂、熱可塑性樹脂などを用いることができる。
【0155】
セパレータ90U、90Dの材質も特に限定しない。金属の他、カーボン(好ましくはガス不透過性の緻密質カーボン)などを用いることができる。電解質膜20の材質も特に限定しない。フッ素系樹脂の他、炭化水素(HC)系材料などを用いることができる。ガス拡散層4U、4Dの材質、形状も特に限定しない。織布状の他、ペーパー状であってもよい。電極の材質も特に限定しない。白金の他、白金と、ルテニウム、ニッケル、コバルト、インジウム、鉄、クロム、マンガン等と、の合金を用いることができる。
【0156】
<架橋接着部材の材質〜その1>
以下、本発明の燃料電池用セルおよび燃料電池および燃料電池用セルの製造方法に用いられる第一架橋接着部材および第二架橋接着部材の材質について詳しく説明する。第一架橋接着部材および第二架橋接着部材のうち、少なくとも一方の架橋接着部材を、以下の(A)〜(D)を含むゴム組成物の架橋物製つまりゴム製としてもよい。
(A)エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴムから選ばれる一種以上のゴム成分。
(B)1時間半減期温度が130℃以下の有機過酸化物から選ばれる架橋剤。
(C)架橋助剤。
(D)レゾルシノール系化合物およびメラミン系化合物と、シランカップリング剤と、の少なくとも一方からなる接着成分。
【0157】
以下、「第一架橋接着部材および第二架橋接着部材のうち少なくとも一方の架橋接着部材」を、単に「架橋接着部材」と略称する。
【0158】
[ゴム成分(A)]
まず、ゴム成分(A)について説明する。架橋接着部材のゴム成分として、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)から選ばれる一種以上を用いてもよい。また、これらのゴム成分は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。これらのゴム成分は、気体透過性が低い。このため、これらのゴム成分を用いると、シール性が向上する。
【0159】
[架橋剤(B)]
次に、架橋剤(B)について説明する。架橋剤として、1時間半減期温度が130℃以下の有機過酸化物を用いてもよい。ここで「半減期」とは、有機過酸化物の濃度が初期値の半分になるまでの時間である。よって、「半減期温度」は、有機過酸化物の分解温度を示す指標となる。上記「1時間半減期温度」は、半減期が1時間となる温度である。つまり、1時間半減期温度が低いほど、低温で分解しやすい。1時間半減期温度が130℃以下の有機過酸化物を用いることにより、架橋をより低温(具体的には130℃以下)で、かつ短時間で行うことができる。したがって、電解質膜の近傍においても、架橋接着部材を使用することができる。また、上記(B)の架橋剤によると、架橋の際、白金触媒は不要である。加えて、不純物、汚れ等により硬化不良をおこしにくい。このため、架橋接着部材は、作業環境の影響を受けにくく、取扱いが容易である。
【0160】
上記(B)の有機過酸化物としては、パーオキシケタール、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。なかでも、130℃程度の温度で架橋しやすく、架橋剤を加えて混練したゴム組成物の取扱性にも優れるという理由から、1時間半減期温度が100℃以上のパーオキシケタールおよびパーオキシエステルの少なくとも一種を採用することが望ましい。特に、1時間半減期温度が110℃以上のものが好適である。
【0161】
パーオキシケタールとしては、例えば、n−ブチル4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ジ(4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン等が挙げられる。また、パーオキシエステルとしては、例えば、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等が挙げられる。これらのうち、架橋剤の保管が容易であるという理由から、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテートが好適である。
【0162】
架橋反応を充分に進行させるため、架橋剤の配合量は、上記ゴム成分(A)の100重量部に対して1重量部以上とすることが望ましい。また、調製したゴム組成物の保管安定性を考慮して、5重量部以下とすることが望ましい。
【0163】
[架橋助剤(C)]
次に、架橋助剤(C)について説明する。架橋助剤(C)は、上記架橋剤(B)の種類に応じて適宜選択すればよい。架橋助剤としては、例えば、マレイミド化合物、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)等が挙げられる。なかでも、架橋速度がより速くなるという理由から、マレイミド化合物を用いることが望ましい。この場合、架橋反応を充分に進行させるため、架橋助剤の配合量は、上記ゴム成分(A)の100重量部に対して0.1重量部以上とすることが望ましい。一方、架橋助剤の配合量が多く架橋速度が速くなり過ぎると、接着力の低下を招くため、架橋助剤の配合量は、3重量部以下とすることが望ましい。
【0164】
[接着成分(D)]
次に、接着成分(D)について説明する。例えば、接着成分としてレゾルシノール系化合物およびメラミン系化合物を含む場合には、メラミン系化合物がメチレン供与体となり、レゾルシノール系化合物がメチレン授与体となる。架橋時に、メチレン基の供与により、レゾルシノール系化合物と、ゴム成分および相手側部材と、の間に化学結合が形成されて、ゴム成分と相手側部材とが接着される。また、接着成分としてシランカップリング剤を含む場合には、シランカップリング剤を介して、ゴム成分と相手側部材との間に化学結合が形成されて、両者が接着される。
【0165】
これら接着成分による接着力は高く、燃料電池の作動環境においても、接着力は低下しにくい。したがって、燃料電池を長期間作動させた場合でも、良好なシール性が確保される。これにより、燃料電池の作動信頼性を向上させることができる。
【0166】
接着成分(D)は、レゾルシノール系化合物およびメラミン系化合物と、シランカップリング剤と、の少なくとも一方からなる。すなわち、接着成分としては、レゾルシノール系化合物およびメラミン系化合物だけでもよく、シランカップリング剤だけでもよい。レゾルシノール系化合物およびメラミン系化合物と、シランカップリング剤と、の両方を含む場合には、接着力がより向上する。
【0167】
レゾルシノール系化合物としては、例えば、レゾルシン、変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン・ホルムアルデヒド(RF)樹脂等が挙げられる。これらの一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。なかでも、低揮発性、低吸湿性、ゴムとの相溶性が優れるという点で、変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂が好適である。変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂としては、例えば、次の一般式(1)〜(3)で表されるものが挙げられる。特に一般式(1)で表されるものが好適である。
【化1】

【化2】

【化3】

【0168】
所望の接着力を得るため、レゾルシノール系化合物の配合量は、上記ゴム成分(A)の100重量部に対して、0.1重量部以上とすることが望ましい。0.5重量部以上とするとより好適である。また、過剰な配合はゴムの物性低下を招くため、レゾルシノール系化合物の配合量は10重量部以下とすることが望ましい。5重量部以下とするとより好適である。
【0169】
メラミン系化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物、ヘキサメチレンテトラミン等が挙げられる。これらの一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。これらは、架橋の際の加熱下で分解し、ホルムアルデヒドを系に供給する。なかでも、低揮発性、低吸湿性、ゴムとの相溶性が優れるという点で、ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物が好適である。ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物としては、例えば、以下の一般式(4)で表されるものが好適である。特に、一般式(4)中、n=1の化合物が43〜44重量%、n=2の化合物が27〜30重量%、n=3の化合物が26〜30重量%の混合物が好適である。
【化4】

【0170】
上記レゾルシノール系化合物とメラミン系化合物との配合比は、重量比で、1:0.5〜1:2の範囲が望ましい。1:0.77〜1:1.5の範囲がより好適である。レゾルシノール系化合物に対するメラミン系化合物の配合比が0.5未満の場合、ゴムの引張り強さ、伸び等が若干低下する傾向がみられる。反対に、メラミン系化合物の配合比が2を超えると、接着力が飽和する。このため、それ以上の配合は、コストアップにつながる。
【0171】
シランカップリング剤は、官能基としてエポキシ基、アミノ基、ビニル基等を有する化合物群の中から、接着性等を考慮して適宜選択すればよい。例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランおよびN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。なかでも、エポキシ基を有する化合物群から選ばれる一種以上を用いると、接着力が向上すると共に、燃料電池の作動環境においても、接着力が低下しにくい。具体的には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が好適である。
【0172】
所望の接着力を得るため、シランカップリング剤の配合量は、上記ゴム成分(A)の100重量部に対して、0.5重量部以上とすることが望ましい。2重量部以上とするとより好適である。また、過剰な配合はゴムの物性低下を招き、加工性も低下するおそれがある。このため、シランカップリング剤の配合量は10重量部以下とすることが望ましい。6重量部以下とするとより好適である。
【0173】
[添加剤]
次に、添加剤について説明する。架橋接着部材のゴム組成物は、上記(A)〜(D)の他、通常ゴム用の添加剤として用いられる各種添加剤を含んでいてもよい。例えば、補強剤としてカーボンブラックを含むことが望ましい。カーボンブラックのグレードは、特に限定されるものではなく、SAF級、ISAF級、HAF級、MAF級、FEF級、GPF級、SRF級、FT級、MT級等から適宜選択すればよい。所望の耐久性を得るため、カーボンブラックの配合量は、上記ゴム成分(A)の100重量部に対して30重量部以上とすることが望ましい。なお、混練のしやすさ、成形加工性等を考慮して、カーボンブラックの配合量は150重量部以下とすることが望ましい。
【0174】
また、他の添加剤としては、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、粘着付与剤、加工助剤等が挙げられる。軟化剤としては、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤、ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤、トール油、サブ、蜜ロウ、カルナバロウ、ラノリン等のワックス類、リノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸等が挙げらる。軟化剤の配合量は、上記ゴム成分(A)の100重量部に対して40重量部程度までとするとよい。また、可塑剤としては、ジオクチルフタレート(DOP)等の有機酸誘導体、リン酸トリクレジル等のリン酸誘導体が挙げられる。可塑剤の配合量は、軟化剤と同様、上記ゴム成分(A)の100重量部に対して40重量部程度までとするとよい。また、老化防止剤としては、フェノール系、イミダゾール系、ワックス等が挙げられ、上記ゴム成分(A)の100重量部に対して0.5〜10重量部程度配合するとよい。
【0175】
ゴム組成物は、上記(A)〜(D)および必要に応じて各種添加剤を混合して調製することができる。例えば、架橋剤(B)、架橋助剤(C)、接着成分(D)以外の各材料を予備混合した後、80〜140℃で数分間混練する。混練物を冷却した後、架橋剤(B)、架橋助剤(C)、接着成分(D)を追加して、オープンロール等のロール類を用い、ロール温度40〜70℃で5〜30分間混練して調製することができる。なお、接着成分(D)は、予備混合の段階で配合しても構わない。
【0176】
<架橋接着部材の材質〜その2>
架橋接着部材を、以下の(a)〜(c)を含むゴム組成物の架橋物製つまりゴム製としてもよい。
(a)エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴムから選ばれる一種以上のゴム成分。
(b)1時間半減期温度が120℃以下の有機過酸化物から選ばれる架橋剤。
(c)シランカップリング剤。
【0177】
[ゴム成分(a)]
まず、ゴム成分(a)について説明する。架橋接着部材のゴム成分として、EPM、EPDM、NBR、H−NBRから選ばれる一種以上を用いてもよい。また、これらの一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。これらのゴム成分は、気体透過性が低い。このため、シール性が向上する。
【0178】
[架橋剤(b)]
次に、架橋剤(b)について説明する。架橋剤としては、1時間半減期温度が120℃以下の有機過酸化物を用いてもよい。1時間半減期温度が120℃以下の有機過酸化物を用いることにより、架橋をより低温(具体的には120℃以下)で、かつ短時間で行うことができる。したがって、電解質膜の近傍においても、架橋接着部材を使用することができる。また、上記(b)の架橋剤によると、架橋の際、白金触媒は不要である。加えて、不純物、汚れ等により硬化不良をおこしにくい。このため、架橋接着部材は、作業環境の影響を受けにくく、取扱いが容易である。
【0179】
上記(b)の有機過酸化物としては、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。なかでも、120℃程度で架橋しやすいという理由から、1時間半減期温度が90℃以上のジアシルパーオキサイドを採用することが望ましい。特に、1時間半減期温度が110℃未満、さらには100℃未満のものが好適である。
【0180】
ジアシルパーオキサイドとしては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイドとベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキサイドとジベンゾイルパーオキサイドとの混合物等が挙げられる。また、パーオキシエステルとしては、例えば、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等が挙げられる。これらのうち、架橋剤の保管が容易であるという理由から、ジベンゾイルパーオキサイドが好適である。
【0181】
架橋反応を充分に進行させるため、架橋剤の配合量は、上記ゴム成分(a)の100重量部に対して0.5重量部以上とすることが望ましい。また、架橋剤を加えて調製したゴム組成物の保管安定性を考慮して、5重量部以下とすることが望ましい。
【0182】
[シランカップリング剤]
次に、シランカップリング剤(c)について説明する。シランカップリング剤(c)を含有する架橋接着部材によると、シランカップリング剤を介して、ゴム成分と相手側部材との間に強固な化学結合が形成されて、両者が接着される。両者の接着力は高く、燃料電池の作動環境においても、接着力は低下しにくい。したがって、燃料電池を長期間作動させた場合でも、良好なシール性が確保される。これにより、燃料電池の作動信頼性を向上させることができる。
【0183】
シランカップリング剤(c)は、官能基としてエポキシ基、アミノ基、ビニル基等を有する化合物群の中から、接着性等を考慮して適宜選択すればよい。例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランおよびN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。なかでも、エポキシ基を有する化合物群から選ばれる一種以上を用いると、接着力が向上すると共に、燃料電池の作動環境においても、接着力が低下しにくい。具体的には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が好適である。
【0184】
所望の接着力を得るため、シランカップリング剤の配合量は、上記ゴム成分(a)の100重量部に対して、0.5重量部以上とすることが望ましい。2重量部以上とするとより好適である。また、過剰な配合はゴムの物性低下を招き、加工性も低下するおそれがある。このため、シランカップリング剤の配合量は10重量部以下とすることが望ましい。5重量部以下、さらには1重量部以下とするとより好適である。
【0185】
[添加剤]
次に、添加剤について説明する。架橋接着部材のゴム組成物は、上記(a)〜(c)の他、通常ゴム用の添加剤として用いられる各種添加剤を含んでいてもよい。例えば、補強剤として、カーボンブラックが広く用いられている。しかし、カーボンブラックを多量に配合すると、架橋の際、上記(b)の架橋剤から生じるラジカルと反応し、架橋反応が阻害されるおそれがある。よって、カーボンブラックを配合する場合には、その配合量を、上記ゴム成分(a)の100重量部に対して10重量部以下とすることが望ましい。5重量部以下、さらには1重量部以下とするとより好適である。
【0186】
カーボンブラックに代えて、あるいはカーボンブラックと共に使用する補強剤としては、例えば、ホワイトカーボンが好適である。ホワイトカーボンは、非晶質シリカとして知られており、具体的には乾式法シリカ、湿式法シリカ、合成ケイ酸塩系シリカ等がある。ホワイトカーボンの配合量は、上記ゴム成分(a)の100重量部に対して30重量部以上とすることが望ましい。なお、混練のしやすさ、成形加工性等を考慮して、ホワイトカーボンの配合量は80重量部以下とすることが望ましい。
【0187】
また、他の添加剤としては、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、粘着付与剤、加工助剤等が挙げられる。軟化剤としては、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤、ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤、トール油、サブ、蜜ロウ、カルナバロウ、ラノリン等のワックス類、リノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸等が挙げらる。軟化剤の配合量は、製造される架橋接着部材の強度を考慮して、上記ゴム成分(a)の100重量部に対して10重量部程度までとするとよい。また、可塑剤としては、ジオクチルフタレート(DOP)等の有機酸誘導体、リン酸トリクレジル等のリン酸誘導体が挙げられる。可塑剤の配合量は、軟化剤と同様、製造される架橋接着部材の強度を考慮すると、上記ゴム成分(a)の100重量部に対して10重量部程度までとするとよい。また、老化防止剤としては、フェノール系、イミダゾール系、ワックス等が挙げられ、上記ゴム成分(a)の100重量部に対して0.5〜10重量部程度配合するとよい。
【0188】
ゴム組成物は、上記(a)〜(c)および必要に応じて各種添加剤を混合して調製することができる。例えば、架橋剤(b)およびシランカップリング剤(c)以外の各材料を予備混合した後、80〜140℃で数分間混練する。混練物を冷却した後、架橋剤(b)およびシランカップリング剤(c)を追加して、オープンロール等のロール類を用い、ロール温度40〜60℃で5〜30分間混練して調製することができる。なお、シランカップリング剤(c)は、予備混合の段階で配合しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0189】
【図1】第一実施形態の燃料電池の積層方向部分断面図である。
【図2】同燃料電池の燃料電池用セルとセパレータとの分解図である。
【図3】(a)は同燃料電池用セルの上面図である。(b)は(a)のb−b断面図である。
【図4】図3(b)の枠IV内の拡大図である。
【図5】同燃料電池用セルの製造方法のサブアセンブリ配置工程前段の模式図である。
【図6】同工程後段の模式図である。
【図7】同燃料電池用セルの製造方法の一体化工程の模式図である。
【図8】第二実施形態の燃料電池用セルの厚さ方向部分断面図である。
【図9】同燃料電池用セルの製造方法の一体化工程の模式図である。
【図10】第三実施形態の燃料電池用セルの厚さ方向部分断面図である。
【図11】同燃料電池用セルの製造方法の一体化工程の模式図である。
【図12】従来の燃料電池用セルの部分断面図である。
【図13】従来の燃料電池用セルの製造方法のガスケット原反作製工程の模式図である。
【図14】同燃料電池用セルの製造方法のガスケット原反打ち抜き工程の模式図である。
【図15】同燃料電池用セルの製造方法のキャビティ内配置工程の模式図である。
【符号の説明】
【0190】
1:燃料電池用セル。
2:MEA、20:電解質膜、200:外縁部、201D:キャビティ表出部、201U:キャビティ表出部、202D:表出部、202U:表出部。
3D:フレーム、3U:フレーム、30D:枠内縁部、30U:枠内縁部、31D:外縁部、31U:外縁部、32:接着部材。
4D:ガス拡散層、4U:ガス拡散層、40D:外縁部、40U:外縁部。
5:ガスケット、5D:ガスケット、5U:ガスケット、50D:リブ、50U:リブ、51D:保持枠部、51U:保持枠部、52D:根本部、52U:根本部。
6:第一架橋接着部材、6D:シート部材、6U:シート部材、60:膜収容部、61:第一介在部、600D:第二介在部、600U:第二介在部、601D:第三介在部、601U:第三介在部。
7D:第二架橋接着部材、7U:第二架橋接着部材。
10:燃料電池。
90D:セパレータ、90U:セパレータ、91:接着部材、92L:マニホールド孔、92R:マニホールド孔、93:金型、93D:下型、93U:上型、900D:ガス流路、900U:ガス流路、930D:型面、930U:型面、931D:リブ用凹部、931U:リブ用凹部、932D:保持枠部用凹部、932U:保持枠部用凹部、933D:マニホールド孔用凸部、933U:マニホールド孔用凸部。
C1:キャビティ、C2D:キャビティ、C2U:キャビティ。
CD:隙間、CU:隙間。
F1:左右方向中心面、L1:ガスケット原料、SA:サブアセンブリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜と、該電解質膜の厚さ方向両側に配置される一対の電極と、を有するMEAと、
枠状であって、該電解質膜の外縁部を保持する一対のフレームと、
一対の該フレームの枠内側かつ該MEAの厚さ方向両側に配置される一対のガス拡散層と、
一対の該フレームの少なくとも一部を被覆するガスケットと、
を備えてなる燃料電池用セルであって、
さらに、前記電解質膜の外縁部を収容する凹状の膜収容部と、一対の前記フレーム間に介在する第一介在部と、を備え、該電解質膜の外縁部および一対の該フレームに架橋接着されるゴム製の第一架橋接着部材を備えることを特徴とする燃料電池用セル。
【請求項2】
前記膜収容部は、前記電解質膜の外縁部と前記ガス拡散層の外縁部との間に介在する第二介在部を備える請求項1に記載の燃料電池用セル。
【請求項3】
前記ガスケットは、前記ガス拡散層の外縁部を厚さ方向外側から保持する保持枠部を、一体的に備える請求項1または請求項2に記載の燃料電池用セル。
【請求項4】
さらに、前記ガスケットと前記フレームとの間に、ゴム製の第二架橋接着部材を備える請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の燃料電池用セル。
【請求項5】
前記ガスケットは、前記フレームの厚さ方向外側に配置され、厚さ方向に隣り合う相手側部材に弾接可能なリブを、一体的に備える請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の燃料電池用セル。
【請求項6】
前記ガスケットは、前記リブと、該リブの根本に一体的に形成され該リブを保持する根本部と、からなる請求項5に記載の燃料電池用セル。
【請求項7】
前記フレームの枠内縁部と前記ガス拡散層の外縁部との間には、隙間が区画されており、
前記電解質膜は、該隙間から外部に表出する表出部を備えており、
前記第一架橋接着部材は、該表出部を被覆している請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の燃料電池用セル。
【請求項8】
前記フレームの枠内縁部と前記ガス拡散層の外縁部との間には、隙間が区画されていない請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の燃料電池用セル。
【請求項9】
前記電解質膜の外縁部と前記フレームの枠内縁部と前記ガス拡散層の外縁部とは、厚さ方向内側から外側に向かって積層されており、
前記膜収容部は、該電解質膜の外縁部と該フレームの枠内縁部との間に介在する第三介在部を備えており、
前記第二架橋接着部材は、該フレームの枠内縁部と前記ガス拡散層の外縁部との間に介在している請求項8に記載の燃料電池用セル。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の燃料電池用セルが複数積層されてなる燃料電池。
【請求項11】
電解質膜と、該電解質膜の厚さ方向両側に配置される一対の電極と、を有するMEAと、
枠状であって、該電解質膜の外縁部を保持する一対のフレームと、
一対の該フレームの枠内側かつ該MEAの厚さ方向両側に配置される一対のガス拡散層と、
該電解質膜の外縁部を収容する凹状の膜収容部と、一対の該フレーム間に介在する第一介在部と、を備える未架橋のゴム製の第一架橋接着部材と、
を備えるサブアセンブリを、成形型のキャビティ内に配置するサブアセンブリ配置工程と、
該キャビティ内にガスケット原料を注入し、一対の該フレームの少なくとも一部を被覆するガスケットを成形すると共に、未架橋の該第一架橋接着部材を架橋させ、該第一架橋接着部材と、該電解質膜の外縁部および一対の該フレームと、を架橋接着する一体化工程と、
を有する燃料電池用セルの製造方法。
【請求項12】
前記サブアセンブリ配置工程において、未架橋の前記第一架橋接着部材の前記膜収容部は、前記電解質膜の外縁部と前記ガス拡散層の外縁部との間に介在する第二介在部を備えており、
前記一体化工程において、未架橋の該第一架橋接着部材を架橋させ、該第二介在部と、該電解質膜の外縁部および一対の該ガス拡散層の外縁部と、を架橋接着する請求項11に記載の燃料電池用セルの製造方法。
【請求項13】
前記サブアセンブリ配置工程において、前記サブアセンブリは、さらに、前記ガスケットと前記フレームとの間に、未架橋のゴム製の第二架橋接着部材を備えており、
前記一体化工程において、未架橋の該第二架橋接着部材を架橋させ、該第二架橋接着部材と、該ガスケットおよび該フレームと、を架橋接着する請求項11または請求項12に記載の燃料電池用セルの製造方法。
【請求項14】
前記サブアセンブリ配置工程において、前記電解質膜は、前記成形型の前記キャビティ内に表出しないように配置されている請求項11ないし請求項13のいずれかに記載の燃料電池用セルの製造方法。
【請求項15】
前記サブアセンブリ配置工程において、前記フレームの枠内縁部と前記ガス拡散層の外縁部との間には、隙間が区画されており、前記電解質膜は、該隙間から前記キャビティ内に表出するキャビティ表出部を備えており、前記第一架橋接着部材は、該キャビティ表出部を被覆している請求項14に記載の燃料電池用セルの製造方法。
【請求項16】
前記サブアセンブリ配置工程において、前記フレームの枠内縁部と前記ガス拡散層の外縁部との間には、隙間が区画されていない請求項14に記載の燃料電池用セルの製造方法。
【請求項17】
前記サブアセンブリ配置工程において、前記電解質膜の外縁部と前記フレームの枠内縁部と前記ガス拡散層の外縁部とは、厚さ方向内側から外側に向かって積層されており、
前記膜収容部は、該電解質膜の外縁部と該フレームの枠内縁部との間に介在する第三介在部を備えており、
前記第二架橋接着部材は、該フレームの枠内縁部と前記ガス拡散層の外縁部との間に介在している請求項16に記載の燃料電池用セルの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate