説明

燃料電池用気液分離器

【課題】 本発明は、燃料電池用気液分離器に関し、気液分離後の水分が出口管より流出しないようにした燃料電池用気液分離器を実現することを目的とする。
【解決手段】 上下を密閉した円筒状の本体部10と、該本体部10の円筒状の上部近傍で且つ接線方向に設けられた入口管11と、本体部10の天板部10bの中央部に該本体部10の内外部に突出するように設けられた出口管12と、本体部10の下部に設けられた排水管13とを具備してなる燃料電池用気液分離器において、前記本体部10の内部の上下中間部に、該本体部10の内径にほぼ等しい外径を有し且つ外周に複数の切欠き部14aが形成された仕切り板14を設けて成るように構成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は燃料電池用気液分離器に関する。詳しくは、燃料電池を動力源とする電気自動車の燃料電池からの排気ガス中に含まれる水分を除去する燃料電池用気液分離器に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、酸素と水素を反応させて発電する燃料電池車の排気ガスには、反応を促進するために加湿した水と、化学反応により生成された水とがミスト状になり多量に含まれている。この排気ガスをそのまま排気系ダクトへ流すとマフラーの機能を低下させたり、マフラーの出口から白煙を出すという問題がある。このため、排気ガス中の水を排気ガスから分離する目的で気液分離器が設けられている。
【0003】気液分離器には種々なものがあるが、その1つにサイクロン式分離器がある。図3はこのサイクロン式気液分離器を示す。同図において、(a)は上面図、(b)は(a)図のb−b線における断面図であり、符号1はサイクロン室(遠心分離室)となる本体部、2は入口管、3は出口管、4は排水管である。そして本体部1は円筒部1aの上部を天板部1bで、下部を底板部1cで密閉した円筒状をなし、入口管2は本体部1の天板部1bの近傍に設けられ且つ円筒部1aに対して接線方向に設けられている。また、出口管3は本体部1の上部の天板部1bの中央部に垂直に設けられ、本体部1の内部及び外部に突出している。また、排水管4は本体部1の底部に設けられている。
【0004】そして、燃料電池からの排気ガスは、入口管2より本体部1内に入り、旋回運動をしながら下方に行き、反転して上昇し、出口管3より排気される。このとき、旋回運動の遠心力により排気ガス中の気体と水分とが分離され、気体は出口管3より排気され、液体は本体部1の内壁面を伝って下降し排水管4より排出される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記気液分離器においては、気液分離後の水分が本体底部に溜まり、その水5が矢印Aで示す気流に乗って再飛散し出口管3から流出するという問題がある。また、本体部1の内壁に付着した水6が矢印Bで示す気流に乗って出口管3から流出するという問題もある。
【0006】本発明は上記従来の問題点に鑑み、気液分離後の水分が出口管より流出しないようにした燃料電池用気液分離器を実現することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため本発明の請求項1は、上下を密閉した円筒状の本体部10と、該本体部10の円筒状の上部近傍で且つ接線方向に設けられた入口管11と、本体部10の天板部10bの中央部に該本体部10の内外部に突出するように設けられた出口管12と、本体部10の下部に設けられた排水管13とを具備してなる燃料電池用気液分離器において、前記本体部10の内部の上下中間部に、該本体部10の内径にほぼ等しい外径を有し且つ外周に複数の切欠き部14aが形成された仕切り板14を設けて成ることを特徴とする。
【0008】この構成を採ることにより、本体部において分離された水分は仕切り板14の切欠き部14aから下方に落下し、気体は旋回しながら仕切り板14に遮られて反転し出口管12から排出されため仕切り板14の下方に溜まった水分が気体によって連れ出されることは防止される。
【0009】また、請求項2は、上下を密閉した円筒状の本体部10と、該本体部10の円筒状の上部近傍で且つ接線方向に設けられた入口管11と、本体部10の天板部10bの中央部に該本体部10の内外部に突出するように設けられた出口管12と、本体部10の下部に設けられた排水管13とを具備してなる燃料電池用気液分離器において、前記天板部10bに設けられた出口管12の、本体部10の内部に突出する部分の内径を拡大したことを特徴とする。また、請求項3は、前記出口管12の内径を拡大した部分12aは、その外径が本体部10の内壁より少なくとも入口管11の内径寸法と同程度離れ、高さは入口管11の内径寸法より高いことを特徴とする。
【0010】この構成を採ることにより、出口管の入り口部が拡大されたため、その周辺の流速が下がり、そのため気流による水分の持ち出し量は低減される。
【0011】
【発明の実施の形態】図1は本発明の燃料電池用気液分離器の第1の実施の形態を示す図で、(a)は縦断面図、(b)は仕切り板の斜視図である。本実施の形態は同図に示すように、円筒部10aと天板部10bと底部10cとによりサイクロン室(遠心分離室)を形成する本体部10と、円筒部10aの上部に設けられた入口管11と、天板部10bの中央に設けられた出口管12と、本体部10の下部に設けられた排水管13とよりなることは、図3で説明した従来例と同様であり、異なるところは、本体部10に仕切り板14を設けたことである。
【0012】上記仕切り板14は、(b)図の如く、本体部10の内径とほぼ等しい外径を有する円板状をなし、その外周の複数箇所(図においては8箇所)に切欠き部14aが形成されている。そして、本体部10が樹脂である場合は、仕切り板14はポリプロピレン等の樹脂により形成され、バイブレーション溶着または熱溶着によるカシメにより本体部10に取り付けられる。
【0013】このように構成された本実施の形態は、(a)図の如く、入口管11より入った燃料電池の排気ガスは本体部10において、サイクロン効果により気体と水分に分離され、気体は出口管12から排出され、水分は円筒部10aの内壁に沿って落下し、排水管13から排水される。その際、分離された水分は矢印Aで示すように仕切り板14の切欠き部14aから下方に落下し、気体は矢印Bで示すように、旋回しながら仕切り板14に遮られて反転し出口管12から排出される。このため仕切り板14の下方に溜まった水が気体によって連れ出されることは防止される。
【0014】図2は本発明の燃料電池用気液分離器の第2の実施の形態を示す図で、(a)は上面図、(b)は(a)図のbーb線における断面図である。本実施の形態は同図に示すように、円筒部10aと天板部10bと底部10cとよりなる本体部10と、円筒部10aの上部に設けられた入口管11と、天板部10bの中央に設けられた出口管12と、本体部10の下部に設けられた排水管13とよりなることは、図3で説明した従来例と同様であり、異なるところは、出口管12の形状を変更したことである。
【0015】本実施の形態の出口管12は、本体部10の内部に突出している部分の内径を拡大したものであり、その拡大した部分12aの外径は、入口管11から進入する排気が干渉しないように、本体部10の内壁より少なくとも入口管11の内径寸法程度離れており、高さは入口管11の内径寸法より高くなるように形成されている。
【0016】このように構成された本実施の形態は、出口管12の入り口部が拡大されたため、その周辺の流速が下がり、そのため気流による水分の持ち出し量は低減される。さらに本実施の形態は、出口管12の入口部の流速が従来に比して下がるため圧力損失が低下するという利点が生ずる。
【0017】
【発明の効果】本発明の燃料電池用気液分離器に依れば、気液分離器本体内に仕切り板を設けたことにより、分離された水を気流が出口管から持ち出すのを防止可能とした。また、出口管の入り口部を拡径したことにより、その付近の流速を下げて出口管からの水分の流出を防止可能とした。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の燃料電池用気液分離器の第1の実施の形態を示す図で、(a)は縦断面図、(b)は仕切り板の斜視図である。
【図2】本発明の燃料電池用気液分離器の第2の実施の形態を示す図で、(a)は上面図、(b)は(a)図のbーb線における断面図である。
【図3】従来の気液分離器の1例を示す図で、(a)は上面図、(b)は(a)図のbーb線における断面図である。
【符号の説明】
10…本体部
10a…円筒部
10b…天板部
10c…底部
11…入口管
12…出口管
12a…拡径部
13…排水管
14…仕切り板
14a…切欠き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 上下を密閉した円筒状の本体部(10)と、該本体部(10)の円筒状の上部近傍で且つ接線方向に設けられた入口管(11)と、本体部(10)の天板部(10b)の中央部に該本体部(10)の内外部に突出するように設けられた出口管(12)と、本体部(10)の下部に設けられた排水管(13)とを具備してなる燃料電池用気液分離器において、前記本体部(10)の内部の上下中間部に、該本体部(10)の内径にほぼ等しい外径を有し且つ外周に複数の切欠き部(14a)が形成された仕切り板(14)を設けて成ることを特徴とする燃料電池用気液分離器。
【請求項2】 上下を密閉した円筒状の本体部(10)と、該本体部(10)の円筒状の上部近傍で且つ接線方向に設けられた入口管(11)と、本体部(10)の天板部(10b)の中央部に該本体部(10)の内外部に突出するように設けられた出口管(12)と、本体部(10)の下部に設けられた排水管(13)とを具備してなる燃料電池用気液分離器において、前記天板部(10b)に設けられた出口管(12)の、本体部(10)の内部に突出する部分の内径を拡大したことを特徴とする燃料電池用気液分離器。
【請求項3】 前記出口管(12)の内径を拡大した部分(12a)は、その外径が本体部(10)の内壁より少なくとも入口管(11)の内径寸法と同程度離れ、高さは入口管(11)の内径寸法より高いことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池用気液分離器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2003−1033(P2003−1033A)
【公開日】平成15年1月7日(2003.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−182332(P2001−182332)
【出願日】平成13年6月15日(2001.6.15)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【Fターム(参考)】