説明

燃料電池用燃料カートリッジ及び燃料電池システム

【課題】装着方向に関わらず内部の液体燃料をほぼ全て取り出すことができ、かつ人手で押して注入するタイプとポンプで吸い出すタイプの両方に使用することができる燃料電池用燃料カートリッジを提供する。
【解決手段】フレキシブルな材料で構成され、内部に液体燃料Fを充填された内袋11と、内袋11に設けられた燃料流出用のバルブ10と、バルブ10のみを外部に露出させて内袋11を収納するとともに、手によって変形可能でかつ元の形状に自己復元可能な外装ケース12とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池用燃料カートリッジ及びそれを用いた燃料電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液体燃料から電気エネルギーを出力する燃料電池を備えた燃料電池ユニットに液体燃料を供給するため、燃料電池ユニットに設けられているリザーブタンクに対して燃料カートリッジにて燃料を補給するようにしたものが知られている。その燃料カートリッジは、人の手で押すことで変形可能なケース内に直接液体燃料を収容し、ケースの一端に燃料流出用のバルブ部を設けて構成されている。燃料電池ユニットのリザーブタンクに燃料を注入する際には、燃料カートリッジのバルブ部を燃料液面よりも低い位置になるように倒立させた状態で、ケースを人手で押して液体燃料を流出させ、注入後ケースの押圧を解除することによりケースが元の状態に戻る際に燃料電池ユニット側から外気を逆流させるように構成されている。
【0003】
また、燃料カートリッジを燃料電池ユニットに取り付けた状態で使用するタイプのものについては、燃料カートリッジの取り付け方向に関わらず、内部の液体燃料を取り出せるように、燃料カートリッジの剛性の高い外装ケースの内部に内袋又はそれに対応するものを設け、内袋又はその対応物内に液体燃料を収容したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−308871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、液体燃料をケース内に直接収容した燃料カートリッジを用いると、燃料液面がバルブ部より低い位置になる容積部分の燃料を取り出すことができない。そのため、直接液体燃料を収容した燃料カートリッジを用いた燃料電池ユニットでは、燃料を補給するのに、ケースを人手で押圧して液体燃料をリザーブタンクに注入する際に、ほぼ全ての燃料を吐出するためには、燃料カートリッジの装着に方向性が生じてしまい、作業性及び使い勝手が悪く、ケース内の燃料を使い切ることができない場合が多々発生するという問題がある。
【0005】
また、この燃料カートリッジを燃料電池ユニットに取り付け、燃料電池ユニット側のポンプを用いて燃料を吸い出す場合には、燃料液面がバルブ部よりも低い位置になる容積部分の燃料は取り出すことができないという問題がある。
【0006】
また、剛性のある外装ケース内部に内袋を設けて液体燃料を収容した燃料カートリッジでは、人手によって燃料電池ユニットのリザーブタンクに液体燃料を注入することができないという問題があり、この燃料カートリッジを、燃料電池ユニットに取り付けるものと、燃料電池ユニットのリザーブタンクに対して人手で注入するものの両方で共用することができず、燃料カートリッジの使い勝手が悪いという問題がある。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、装着方向に関わらず内部の液体燃料をほぼ全て取り出すことができ、かつ人手で押して注入するタイプとポンプで吸い出すタイプの両方に使用することができる燃料電池用燃料カートリッジとそれを用いた燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の燃料電池用燃料カートリッジは、フレキシブルな材料で構成され、内部に液体燃料を充填された内袋と、内袋に設けられた燃料流出用のバルブと、バルブのみを外部に露出させて内袋を収納するとともに、手によって変形可能でかつ元の形状に自己復元可能な外装ケースとを備えたものである。
【0009】
この構成によると、手によって変形可能でかつ元の形状に自己復元可能な外装ケース内に、液体燃料を収容したフレキシブルな内袋を収納しているので、外装ケースを押して変形させ、外装ケースにて直接又は外装ケースを変形させて外装ケース内に発生させた空気圧を介して内袋を押すことでバルブから液体燃料を吐出させることができるとともに、液体燃料の減少に合わせて内袋の内容積も同時に減少して内袋内に空気溜まりが生じないため、燃料カートリッジの向きやバルブ位置に関係無く、内袋内の液体燃料をほぼ全て取り出すことができ、かつ人手で外装ケースを押して液体燃料を注入するタイプとポンプでバルブから液体燃料を吸い出すタイプの両方にそのまま使用することができる。
【0010】
また、外装ケースに、元の形状に復元する際に外気を吸入するパッシブ弁を設けると、外装ケースを押して液体燃料を吐出させた後、外装ケースが元の形状に復元する際に液体燃料の吐出容積分の外気が自動的に吸引された後外装ケース内が閉鎖されるため、液体燃料を吐出させる際に外装ケースを単純に繰り返し押すだけで良く、使い勝手が良い。
【0011】
また、外装ケースに、元の形状に復元する際に外気を吸入する開口を設けた構成とすると、外装ケースを押して液体燃料を吐出させる際にその開口を指等で押さえて閉じることによって、支障なく液体燃料を吐出させることができ、かつ上記のようにパッシブ弁を設けていないので、安価に構成することができる。
【0012】
また、本発明の燃料電池システムは、上記燃料電池用燃料カートリッジと、この燃料カートリッジから供給される液体燃料から電気エネルギーを出力する燃料電池とからなるものであり、上記燃料電池用燃料カートリッジを用いることによる効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の燃料電池用燃料カートリッジによれば、外装ケースを押して変形させることで内袋内の液体燃料をバルブから吐出させることができるとともに、内袋内に空気溜まりが生じないため、燃料カートリッジの向きやバルブ位置に関係無く内袋内の液体燃料をほぼ全て取り出すことができ、かつ人手で外装ケースを押して液体燃料を注入するタイプとポンプでバルブから液体燃料を吸い出すタイプの両方にそのまま使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の燃料電池用燃料カートリッジとそれを用いた燃料電池システムの一実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。
【0015】
本実施形態の燃料電池用燃料カートリッジ(以下、単に燃料カートリッジと称す)1は、図4に示すように、各種電子機器3に電力を供給する燃料電池ユニット2に燃料を補給するものである。図示例の燃料電池ユニット2は、メタノールなどの燃料を供給する負極(アノード)と酸素を供給する正極(カソード)との間に高分子固体電解質を介在させ、両極の間から電気エネルギーを取り出せるように構成された燃料電池モジュール4と、この燃料電池モジュール4に内部燃料タンク5から燃料を供給する燃料供給部6と、燃料電池モジュール4から取り出す電気エネルギーを制御する出力制御部7と、燃料電池ユニット2と電子機器3を接続するコネクタ8とを備えている。
【0016】
内部燃料タンク5の注入口には雌側のバルブ9が設けられ、このバルブ9に燃料カートリッジ1に設けられた雄側のバルブ10を挿入接続して相互に連通させた状態で、燃料カートリッジ1から内部燃料タンク5内にメタノール燃料を注入して燃料補給を行うように構成されている。
【0017】
燃料カートリッジ1は、図1に示すように、フレキシブルな材料で構成され、内部にメタノール燃料Fを充填されるとともにその一端に形成された吐出口11aにバルブ10が設けられた内袋11と、内袋11を収納するとともに、手によって変形可能でかつ元の形状に自己復元可能な外装ケース12とを備えている。内袋11の構成材料としては、ナイロンを用いることができるが、柔軟性と燃料遮断性の点からポリエチレンやポリプロピレンが好ましい。また、外装ケース12の構成材料としては、柔軟性と復元性、及び耐燃料性の点から、ポリプロピレンやポリエチレンが好ましい。
【0018】
バルブ10は、バルブ本体10aの軸芯部に形成された弁通路10bに弁体10cを配置して閉弁されており、弁体10cを閉弁方向に付勢しているばね10dの付勢力に抗して弁体10cから弁通路10bの開口端近傍に向けて延出されている軸部10eを押し込むことで開弁されるように構成されており、そのバルブ本体10aの基端部が内袋11の吐出口11aの外周部に固着されている。
【0019】
外装ケース12は、内袋11をほぼ丁度収納する形状と大きさに形成され、その一端中央部に、バルブ本体10aの基端側半部を挿通させて保持するとともに先端部を外部に突出させる保持筒部13が設けられている。また、幼児等が誤ってバルブ10部分を口に入れた場合の安全性が確保されるように、保持筒部13の外周にねじ14が形成され、これにキャップ15を螺合させることでバルブ10が外部に直接露出しないように構成されている。
【0020】
また、外装ケース12の他端には、常時は閉弁状態で、外装ケース12内に外気を吸入する方向にのみ開弁するパッシブ弁16が設けられ、外装ケース12を押して変形させるときには閉じたままで外装ケース12内の空気圧力を上昇させ、その後押圧を解除して元の形状に復元する際には外気が外装ケース12内に円滑に吸入されるように構成されている。
【0021】
なお、場合によってはパッシブ弁16に代えて単純な開口(図示せず)を設け、外装ケース12を押して変形させるときに、この開口を指で閉じ、元の形状に復元する際に開放することで外気を吸入するようにしても良い。
【0022】
以上の構成において、燃料電池ユニット2の内部燃料タンク5に燃料カートリッジ1からメタノール燃料Fを補給する際には、図4に示すように、燃料電池ユニット2のバルブ9に燃料カートリッジ1のバルブ10を挿入して接続する。それによってバルブ9、10が開弁して燃料カートリッジ1と内部燃料タンク5が連通し、その状態で燃料カートリッジ1の外装ケース12を手で圧縮するように押圧する。
【0023】
燃料カートリッジ1は、手によって変形可能でかつ元の形状に自己復元可能な外装ケース12内に、メタノール燃料Fを収容したフレキシブルな内袋11が収納されているので、図1(b)に示すように、外装ケース12を押して変形させ、外装ケース12にて直接内袋11を押すことで、バルブ10からメタノール燃料Fを吐出させることができる。メタノール燃料Fを所定量吐出させた後、外装ケース12の押圧を解除すると、図1(c)に示すように、外装ケース12が元の形状に自己復元するとともに、その際にパッシブ弁16が開いて外気が外装ケース12内に円滑に流入し、無理なく完全に元の形状に復元する。また、その状態で内袋11内のメタノール燃料Fの減少に合わせて内袋11の内容積も同時に減少し、内袋11内に空気溜まりは生じていず、外装ケース12と内容積の減った内袋11との間に生じた空間に外気が満たされてパッシブ弁16が閉じる。
【0024】
燃料カートリッジ1からさらにメタノール燃料Fを吐出させる場合には、再び外装ケース12を押して変形させる動作を繰り返すと、外装ケース12内の空気が加圧され、その空気圧にて内袋11が押され、バルブ10からメタノール燃料Fを吐出させることができる。内部燃料タンク5に対するメタノール燃料Fの補給が完了すると、バルブ10をバルブ9から少し抜き出すことで両バルブ9、10が閉じ、そのまま燃料電池ユニット2から燃料カートリッジ1を取り外す。
【0025】
その後再び、燃料電池ユニット2の内部燃料タンク5にメタノール燃料Fを補給する際には、上述と同様に燃料電池ユニット2のバルブ9に燃料カートリッジ1のバルブ10を挿入して接続し、外装ケース12を押して変形させることで、図2(a)に示すように、外装ケース12内の空気が加圧され、その空気圧にて内袋11が押され、バルブ10からメタノール燃料Fを吐出させることができ、その後外装ケース12の押圧を解除することで、図2(b)に示すように、外装ケース12が元の形状に自己復元するとともに、その際にパッシブ弁16が開いて外気が外装ケース12内に円滑に流入し、無理なく元の形状に復元する。
【0026】
こうして、燃料カートリッジ1の外装ケース12を繰り返し押圧することで、内袋11内のメタノール燃料Fを逐次吐出させることができ、かつその際に上記のようにメタノール燃料Fの減少に合わせて内袋11の内容積も同時に減少して内袋11内に空気溜まりが生じないため、燃料カートリッジ1の向きやバルブ10の位置に関係無く、内袋11内のメタノール燃料Fを吐出させることができるとともに、図3(a)、(b)に示すように、内袋11内のメタノール燃料Fがほぼ完全に無くなるまで吐出させることができる。
【0027】
なお、以上の実施形態の説明では、燃料電池ユニット2に燃料補給する際に、燃料電池ユニット2に対して燃料カートリッジ1を接続し、その燃料カートリッジ1の外装ケース12を人手で押してメタノール燃料Fを内部燃料タンク5に注入するタイプの例を示したが、燃料電池ユニット2内に燃料カートリッジ1を格納するように構成され、格納状態でバルブ10が開弁され、燃料電池ユニット2内のポンプでバルブ10を介して内袋11内のメタノール燃料Fを吸い出すタイプにおいても、この燃料カートリッジ1をそのまま使用することができる。
【0028】
また、上記実施形態では外装ケース12にパッシブ弁16を設けているので、上述のように外装ケース12が元の形状に復元する際にメタノール燃料Fの吐出容積分の外気が自動的に吸引された後外装ケース12内が閉鎖されるため、外装ケース12の押圧を単純に繰り返し押すだけでメタノール燃料Fを逐次吐出させることができて使い勝手が良いが、外装ケース12に単純に外気を吸入する開口(図示せず)を設けた構成としても良く、その場合には外装ケース12を押してメタノール燃料Fを吐出させる際にその開口(図示せず)を指等で押さえて閉じることによって、支障なくメタノール燃料Fを吐出させることができ、かつその場合はパッシブ弁16を設けない分安価に構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の燃料電池用燃料カートリッジは、外装ケースを押して変形させることで内袋内の液体燃料をバルブから吐出させることができるとともに、内袋内に空気溜まりが生じないため、燃料カートリッジの向きやバルブ位置に関係無く、内袋内の液体燃料をほぼ全て取り出すことができ、かつ人手で外装ケースを押して液体燃料を注入するタイプとポンプでバルブから液体燃料を吸い出すタイプの両方にそのまま使用することができるので、携帯電話やノート型パソコンなどの携帯電子機器の燃料電池システムに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態の燃料カートリッジを示し、(a)は縦断正面図、(b)は外装ケースの押圧時の状態の模式図、(c)は同押圧解除時の状態の模式図。
【図2】同実施形態の途中使用量の燃料カートリッジを示し、(a)は外装ケースの押圧時の状態の模式図、(b)は同押圧解除時の状態の模式図。
【図3】同実施形態の最終使用量の燃料カートリッジを示し、(a)は外装ケースの押圧時の状態の模式図、(b)は同押圧解除時の状態の模式図。
【図4】同実施形態の燃料カートリッジを適用する燃料電池システムの全体概略構成図。
【符号の説明】
【0031】
1 燃料カートリッジ
2 燃料電池ユニット
10 バルブ
11 内袋
12 外装ケース
16 パッシブ弁
F メタノール燃料(液体燃料)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルな材料で構成され、内部に液体燃料を充填された内袋と、内袋に設けられた燃料流出用のバルブと、バルブのみを外部に露出させて内袋を収納するとともに、手によって変形可能でかつ元の形状に自己復元可能な外装ケースとを備えたことを特徴とする燃料電池用燃料カートリッジ。
【請求項2】
外装ケースに、元の形状に復元する際に外気を吸入するパッシブ弁を設けたことを特徴とする請求項1記載の燃料電池用燃料カートリッジ。
【請求項3】
外装ケースに、元の形状に復元する際に外気を吸入する開口を設けたことを特徴とする請求項1記載の燃料電池用燃料カートリッジ。
【請求項4】
請求項1記載の燃料電池用燃料カートリッジと、この燃料カートリッジから供給される液体燃料から電気エネルギーを出力する燃料電池とからなる燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−227092(P2007−227092A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45506(P2006−45506)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】