説明

燃料電池用脱硫システム、燃料電池用水素製造システム、燃料電池システム及び炭化水素系燃料の脱硫方法

【課題】 所望の脱硫性能をより長期間維持することができる高耐久な燃料電池用脱硫システム、燃料電池用水素製造システム及び燃料電池システム、並びに、炭化水素系燃料の脱硫方法を提供すること。
【解決手段】 本発明の燃料電池用脱硫システムは、燃料電池用の脱硫システムであって、硫黄化合物が含まれる流通する炭化水素系燃料から硫黄化合物を除去するための脱硫部を備え、脱硫部が、多孔質体を含有する細孔径が異なる複数の多孔質脱硫剤によって構成され、細孔径が異なる複数の多孔質脱硫剤が炭化水素系燃料の流通方向の上流側から下流側に向かって細孔径が小さなものから大きなものとなる順序で配置されている脱硫剤を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用脱硫システム、水素製造システム、燃料電池システム及び炭化水素系燃料の脱硫方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に燃料電池用の燃料ガスとしては水素を主成分とするガスが用いられるが、その原料には天然ガス、LPG、都市ガス、ナフサ、灯油等の炭化水素系燃料が用いられる。これら炭素と水素を含む炭化水素系燃料を水蒸気とともに触媒上で高温処理する、酸素含有気体で部分酸化する、或いは水蒸気と酸素含有気体が共存する系において自己熱回収型の改質反応を行うことにより得られる水素が、燃料電池用の燃料水素として利用される(例えば、下記特許文献1を参照)。
【0003】
上記の炭化水素系燃料には硫黄分が不純物或いは添加物として含まれる。燃料電池用の燃料水素を製造するまでの燃料改質、その後に行われる一酸化炭素除去の各工程、さらには陰極の電極に用いられる触媒は、貴金属またはニッケル、銅などが還元状態で使われることが多い。このような状態では硫黄は触媒毒として作用し、水素製造工程または電池そのものの触媒活性を低下させ、効率が低下してしまうという問題がある。そのため、通常、金属担持ゼオライトなどによる燃料の脱硫が行われている(例えば、下記特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−176528号公報
【特許文献2】特開平10−237473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料電池を効率よく安定的に駆動させるために脱硫の耐久性をさらに向上させることが望まれている。
【0006】
本発明は、所望の脱硫性能をより長期間維持することができる高耐久な燃料電池用脱硫システム、燃料電池用水素製造システム及び燃料電池システム、並びに、炭化水素系燃料の脱硫方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、燃料電池用の脱硫システムであって、硫黄化合物が含まれる流通する炭化水素系燃料から硫黄化合物を除去するための脱硫部を備え、脱硫部が、多孔質体を含有する細孔径が異なる複数の多孔質脱硫剤によって構成され、細孔径が異なる複数の多孔質脱硫剤が炭化水素系燃料の流通方向の上流側から下流側に向かって細孔径が小さなものから大きなものとなる順序で配置されている脱硫剤を有する燃料電池用脱硫システムを提供する。
【0008】
本発明の燃料電池用脱硫システムによれば、上記構成を有する脱硫部を備えることにより、炭化水素系燃料に含まれる硫黄化合物を長期にわたって十分に除去することができる。
【0009】
この理由を本発明者らは、細孔径が揃っている多孔質脱硫剤を用いることで細孔径が小さなものから大きなものへと配置することを精密に行うことができ、係る順の多孔質脱硫剤に炭化水素系燃料を接触させることにより、大きな細孔径を有する多孔質脱硫剤に分子サイズの小さな硫黄化合物が吸着して性能が飽和してしまうこと有効に防止でき、その結果、脱硫剤全体での硫黄化合物の除去能を高めることができたためと考えている。
【0010】
上記細孔径が異なる複数の多孔質脱硫剤は、細孔径が0.4nm〜5.0nmの範囲にあるものが好ましい。この場合、都市ガス及び家庭等に供給される軽質炭化水素を主としたガスなどに含まれる硫黄成分を効率よく除去することができる。
【0011】
上記細孔径が異なる複数の多孔質脱硫剤が、A型ゼオライトと、X型ゼオライト及び/又はY型ゼオライトと、VPI−5型ゼオライトと、を含むことが好ましい。これらのゼオライトを含有することにより、都市ガス及び家庭等に供給されるメタンを主としたガスなどに含まれる硫黄成分を効率よく除去することができる。
【0012】
上記細孔径が異なる複数の多孔質脱硫剤が、金属が担持された多孔質体を含有するものであることが好ましい。多孔質脱硫剤が金属を担持することにより、都市ガス及び家庭等に供給される軽質炭化水素を主としたガスなどに含まれる硫黄成分をより効率よく除去することができる。
【0013】
本発明の燃料電池用脱硫システムは、分子サイズが0.2nm〜2.0nmである硫黄化合物が含まれる炭化水素系燃料を脱硫部に供給する燃料供給部を更に備えることができる。
【0014】
なお、本明細書でいう分子サイズとは、分子を構成する各原子の共有結合半径の和および結合角から算出した値を意味する。
【0015】
本発明の燃料電池用脱硫システムは、硫黄化合物と炭素数4以下の炭化水素化合物とが含まれる炭化水素系燃料を脱硫部に供給する燃料供給部を更に備えることができる。
【0016】
本発明はまた、本発明の燃料電池用脱硫システムと、該燃料電池用脱硫システムの脱硫部を経た炭化水素系燃料から水素を発生させる水素発生部とを備える水素製造システムを提供する。
【0017】
本発明の水素製造システムによれば、本発明の燃料電池用脱硫システムを備えることにより、水素発生部に硫黄化合物が流れてしまうことを長期にわたって抑制することができ、これにより水素の製造効率を長期にわたって十分に維持することが可能となる。
【0018】
本発明はまた、本発明の水素製造システムを備える燃料電池システムを提供する。
【0019】
本発明の燃料電池システムによれば、本発明の水素製造システムを備えることにより、燃料水素を安定的に燃料電池の陰極に供給することができ、発電効率を長期にわたって十分に維持することが可能となる。
【0020】
本発明はまた、硫黄化合物が含まれる炭化水素系燃料を、多孔質体を含有する細孔径が異なる複数の多孔質脱硫剤の細孔径が小さなものから順に流通させる炭化水素系燃料の脱硫方法を提供する。
【0021】
本発明の燃料の脱硫方法によれば、炭化水素系燃料に含まれる硫黄化合物を長期にわたって十分に除去することができる。
【0022】
上記細孔径が異なる複数の多孔質脱硫剤は、細孔径が0.4nm〜5.0nmの範囲にあることが好ましい。この場合、都市ガス及び家庭等に供給される軽質炭化水素を主としたガスなどに含まれる硫黄成分を効率よく除去することができる。
【0023】
上記細孔径が異なる複数の多孔質脱硫剤は、A型ゼオライトと、X型ゼオライト及び/又はY型ゼオライトと、VPI−5型ゼオライトとを含むことが好ましい。これらのゼオライトを含有することにより、都市ガス及び家庭等に供給されるメタンを主としたガスなどに含まれる硫黄成分を効率よく除去することができる。
【0024】
上記細孔径が異なる複数の多孔質脱硫剤は、金属が担持された多孔質体を含有するものであることが好ましい。多孔質脱硫剤が金属を担持することにより、都市ガス及び家庭等に供給される軽質炭化水素を主としたガスなどに含まれる硫黄成分をより効率よく除去することができる。
【0025】
上記硫黄化合物は、分子サイズが0.2nm〜2.0nmである硫黄化合物を含むことができる。本発明の炭化水素系燃料の脱硫方法によれば、上記の分子サイズの硫黄化合物が広範囲に含まれる炭化水素系燃料を脱硫する場合であっても長期にわたって安定的に脱硫が可能となる。
【0026】
上記炭化水素系燃料は、炭素数4以下の炭化水素化合物を含むことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、所望の脱硫性能をより長期間維持することができる高耐久な燃料電池用脱硫システム、水素製造システム及び燃料電池システム、並びに、炭化水素系燃料の脱硫方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料電池システムの一例を示す概念図である。
【図2】本発明の実施形態に係る脱硫システムの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池システムの一例を示す概念図である。燃料電池システム1は、燃料供給部2と、脱硫部3と、水素発生部4と、セルスタック5と、オフガス燃焼部6と、水供給部7と、水気化部8と、酸化剤供給部9と、パワーコンディショナー10と、制御部11と、を備えている。図1に示す流れで各部が配管(図示せず)で接続されている。本実施形態においては、燃料供給部2及び脱硫部3が燃料電池用の脱硫システム20を構成している。
【0030】
燃料供給部2は、脱硫部3へ炭化水素系燃料を供給する。ここで、炭化水素系燃料は、分子中に炭素と水素とを含む化合物(酸素等、他の元素を含んでいてもよい)若しくはそれらの混合物が用いられる。炭化水素系燃料としては、例えば、炭化水素類、アルコール類、エーテル類、バイオ燃料が挙げられ、これらの炭化水素系燃料は従来の石油・石炭等の化石燃料由来のもの、合成ガス等の合成系燃料由来のもの、バイオマス由来のものを適宜用いることができる。具体的には、炭化水素類として、メタン、エタン、プロパン、ブタン、天然ガス、LPG(液化石油ガス)、都市ガス、タウンガス、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油が挙げられる。アルコール類としては、メタノール、エタノールが挙げられる。エーテル類としては、ジメチルエーテルが挙げられる。バイオ燃料としては、バイオガス、バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオジェットが挙げられる。本実施形態においては、パイプラインで供給されメタンを主成分として含むガス(例えば、都市ガス(City gas)、タウンガス(Town gas)、天然ガス(Natural gas)、バイオガス等)又はLPGを好適に使用することができる。
【0031】
本実施形態においては、炭化水素系燃料が、炭素数4以下の炭化水素化合物を含むことが好ましい。炭素数4以下の炭化水素化合物としては、具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタンなどの飽和脂肪族炭化水素、エチレン、プロピレン、ブテンなどの不飽和脂肪族炭化水素が挙げられる。炭化水素系燃料は、炭素数4以下の炭化水素化合物を含むガス、すなわち、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ブタン及びブテンのうちの1種以上を含むガスであることが好ましい。また、炭素数4以下の炭化水素化合物を含むガスとしては、メタンを80体積%以上含むガスが好ましく、メタンを85体積%以上含むガスがより好ましい。
【0032】
炭化水素系燃料には一般的に硫黄化合物が含まれている。硫黄化合物としては、炭化水素類などにもともと含有されている硫黄化合物やガスの漏洩を感知するために添加する付臭剤が挙げられる。炭化水素系燃料が都市ガスである場合には、例えば、硫化水素(HS)(0.2nm)、硫化カルボニル(COS)(0.3nm)、二硫化炭素(CS)(0.3nm)、テトラヒドロチオフェン(THT)(0.4nm)、ジメチルスルフィド(DMS)(0.6nm)、tert−ブチルメルカプタン(TBM)(0.6nm)、エチルメチルスルフィド(EMS)(0.7nm)、ジエチルスルフィド(DES)(0.9nm)、ジメチルジスルフィド(DMDS)(1.0nm)、ジエチルジスルフィド(DEDS)(1.1nm)などが含まれる。なお、括弧内は分子サイズを示す。硫黄化合物は、炭化水素系燃料の全量を基準とした硫黄原子換算濃度で0.1〜10質量ppm程度含まれる。
【0033】
本実施形態においては脱硫部3を備え本発明に係る脱硫システムが構築されていることにより、上記のような硫黄化合物を含む炭化水素系燃料を用いる場合であっても脱硫性能を長期にわたって維持することができる。
【0034】
脱硫部3は、多孔質体を含有する細孔径が異なる複数の多孔質脱硫剤によって構成され、細孔径が異なる複数の多孔質脱硫剤が炭化水素系燃料の流通方向の上流側から下流側に向かって細孔径が小さなものから大きなものとなる順序で配置されている脱硫剤を有している。図2は、本実施形態に係る脱硫システムの一例を示す模式図である。脱硫部3aは、多孔質脱硫剤を含む触媒層101,102,103,104,105が5層積層されて構成されている脱硫剤を有する。図2中、矢印Aが炭化水素系燃料の流通方向の上流側であり、矢印Bが下流側を示す。触媒層101が細孔径の最も小さい多孔質脱硫剤を含み、触媒層102,103,104,105の順に多孔質脱硫剤の細孔径が大きくなっている。
【0035】
脱硫部3は、炭化水素系燃料に含まれる硫黄化合物の分子サイズに合わせて、細孔径が異なる多孔質脱硫剤を複数用意し、これらを細孔径が小さいものから若しくは大きいものから順に所定の容器に充填することにより作成できる。なお、細孔径が最も小さい多孔質脱硫剤が含まれる層が炭化水素系燃料の流通方向の上流側に配置される。
【0036】
多孔質脱硫剤に含まれる多孔質体としては、SiO/Alモル比2〜2.2のA型ゼオライト(0.41nm)、SiO/Alモル比30〜33のZSM−5型ゼオライト(0.54nm)、SiO/Alモル比20〜22のモルデナイト型ゼオライト(0.67nm)、SiO/Alモル比2.7〜3のX型ゼオライト(0.74nm)、SiO/Alモル比4.5〜5のY型ゼオライト(0.74nm)、P/Alモル比1〜1.1のVPI−5(1.21nm)等のゼオライト、MCM−41(数nm)などのメソポーラスシリカ、活性炭などの種々の多孔質無機酸化物等が挙げられる。なお、括弧内の数値は、結晶格子中の空洞の直径(細孔径)を示す。
【0037】
各ゼオライトの使用量は炭化水素系燃料に含まれる硫黄化合物の種類及び濃度に応じて適宜設定することができる。
【0038】
炭化水素系燃料が、パイプラインで供給されメタンを主成分として含むガス(例えば、都市ガス(City gas)、タウンガス(Town gas)、天然ガス(Natural gas)、バイオガス等)である場合には、通常、COS(0.3nm)、CS(0.3nm)、ジメチルスルフィド(DMS)(0.6nm)、tert−ブチルメルカプタン(TBM)(0.6nm)、ジエチルスルフィド(DES)(0.9nm)が含まれることから、細孔径が0.4〜0.5nm、0.7〜0.8nm、1.0〜1.3nmの範囲にある多孔質脱硫剤をそれぞれ1種以上用いることが好ましい。例えば、A型ゼオライトと、X型ゼオライト及び/又はY型ゼオライトと、VPI−5型ゼオライトの組合せが挙げられる。
【0039】
都市ガス、家庭等に供給されるメタンを主としたガスなどのTHT、DMS及びTBMの一種以上が含まれる炭化水素系燃料を用いる場合には、これらの化合物の分子サイズに対して細孔径が適切なサイズとなるX型ゼオライト及び/又はY型ゼオライトを用いることが好ましい。
【0040】
各多孔質脱硫剤は、必要に応じてAg、Cu、Zn等の金属を担持していてもよい。
【0041】
銅の担持量の範囲は、脱硫性能向上の観点から、多孔質体基準で3〜20質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。なお、多孔質体がゼオライトである場合、上記の担持量はゼオライト基準である。
【0042】
銅の担持方法としては、イオン交換法が好ましく使用される。イオン交換に用いるゼオライトは、ナトリウム型、アンモニウム型、プロトン型など様々な形態のものを用いることができるが、ナトリウム型が最も好ましく使用される。一方、銅は通常カチオンとして水に溶解した形態で準備される。その具体例としては、硫酸銅、硝酸銅、塩化銅、酢酸銅などの水溶液、銅アンミン錯体イオンのような銅錯体イオンの水溶液、などを挙げることができる。銅イオンを含む水溶液の濃度は銅の濃度として、通常0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%の範囲である。
【0043】
イオン交換の方法には特に制限はないが、通常は上記のカチオン性の銅を含む溶液に、前述のゼオライトを加え、通常0〜90℃、好ましくは20〜70℃の温度範囲において1時間ないし数時間程度、好ましくは撹拌しながらイオン交換処理する。ついで、固形物をろ過などの手段で分離し、水などで洗浄した後、50〜200℃、好ましくは80〜150℃の温度で乾燥処理する。このイオン交換処理は繰り返し行うことができる。次に必要であれば、200〜600℃、好ましくは300〜500℃で数時間程度焼成処理しても良い。このような方法により、目的の銅イオン交換ゼオライトを得ることができる。
【0044】
上記の方法で製造された銅を担持したゼオライトは、アルミナ、シリカ、粘土鉱物など、もしくはベーマイトなどこれらの前駆体を、適当なバインダーとして用いて押出成型、打錠成型、転動造粒、スプレードライおよび必要に応じて焼成するなど、通常の方法で成型して使用できる。また、ゼオライトをあらかじめ成型し、その後に前記のイオン交換法を適用することも好ましく採用される。
【0045】
銀の担持量の範囲は、脱硫性能向上の観点から、多孔質体基準で10〜30質量%であることが好ましく、15〜25質量%であることがより好ましい。なお、多孔質体がゼオライトである場合、上記の担持量はゼオライト基準である。
【0046】
銀の担持方法としても、イオン交換法が好ましく使用される。イオン交換に用いるゼオライトは、ナトリウム型、アンモニウム型、プロトン型など様々な形態のものを用いることができるが、ナトリウム型が最も好ましく使用される。一方、銀は通常カチオンとして水に溶解した形態で準備される。その具体例としては、硝酸銀や過塩素酸銀などの水溶液、銀のアンミン錯イオン水溶液、などを挙げることができるが、硝酸銀水溶液が最も好ましく使用される。銀イオンを含む水溶液の濃度は銀の濃度として、通常0.5〜10質量%、好ましくは1〜5質量%の範囲である。
【0047】
イオン交換の方法には特に制限はないが、通常は上記のカチオン性の銀を含む溶液に、前述のゼオライトを加え、通常0〜90℃、好ましくは20〜70℃の温度範囲において1時間ないし数時間程度、好ましくは撹拌しながらイオン交換処理する。ついで、固形物をろ過などの手段で分離し、水などで洗浄した後、50〜200℃、好ましくは80〜150℃の温度で乾燥処理する。このイオン交換処理は繰り返し行うことができる。次に必要であれば、200〜600℃、好ましくは250〜400℃で数時間程度焼成処理しても良い。このような方法により、目的の銀イオン交換ゼオライトを得ることができる。
【0048】
上記の方法で製造された銀を担持したゼオライトは、アルミナ、シリカ、粘土鉱物など、もしくはベーマイトなどこれらの前駆体を、適当なバインダーとして用いて、押出成型、打錠成型、転動造粒、スプレードライおよび必要に応じて焼成するなど、通常の方法で成型して使用できる。また、ゼオライトをあらかじめ成型し、その後に前記のイオン交換方法を適用することも好ましく採用される。
【0049】
脱硫条件は、通常、燃料は気化した状態であることが好ましい。脱硫温度は100℃以下が好ましく、例えば−50℃〜100℃の範囲、より好ましくは−20℃〜80℃の範囲、さらに好ましくは0〜60℃の範囲、さらにより好ましくは10〜50℃の範囲で選ばれる。
【0050】
都市ガスなど常温・常圧で気体である炭化水素系燃料を用いる場合、GHSVは10〜20000h−1、好ましくは10〜7000h−1の間で選択される。GHSVが10h−1より低いと脱硫性能的には十分になるが必要以上に脱硫剤を使用するため脱硫器が過大となり好ましくない。一方、GHSVが20000h−1より大きいと十分な脱硫性能が得られない。なお、液体燃料を炭化水素系燃料として使用することもでき、その場合には、LHSVとして0.01〜100h−1の範囲を選択できる。
【0051】
圧力条件は、通常、常圧〜1MPa(ゲージ圧、以下同じ。)、好ましくは常圧〜0.5MPa、さらに好ましくは常圧〜0.2MPaの範囲で選択されるが、大気圧条件下が最も好ましい。
【0052】
脱硫部3により硫黄分が除去された炭化水素系燃料は、水素発生部4へ供給される。水素発生部4は、脱硫システム20とともに水素製造システム30を構成する。水素発生部4は、脱硫後の炭化水素系燃料を改質触媒によって改質する改質器を有し、水素リッチガスを発生させる。水素発生部4での改質方式は、特に限定されず、例えば、水蒸気改質、部分酸化改質、自己熱改質、その他の改質方式を採用できる。また、改質温度は通常200〜800℃、好ましくは300〜700℃である。なお、水素発生部4は、セルスタック5が要求する水素リッチガスの性状によって、改質触媒により改質する改質器の他に性状を調整するための構成を有する場合もある。例えば、セルスタック5のタイプが固体高分子形燃料電池(PEFC)やリン酸形燃料電池(PAFC)であった場合、水素発生部4は、水素リッチガス中の一酸化炭素を除去するための構成(例えば、シフト反応部、選択酸化反応部)を有する。水素発生部4は、水素リッチガスをセルスタック5のアノード12へ供給する。
【0053】
改質触媒は、セリウム酸化物またはセリウム酸化物を主成分とする希土類元素酸化物を含む触媒担体と、該担体に担持された活性金属とを有するものが挙げられる。
【0054】
活性金属としては、Ru又はRhを用いることが好ましい。Ru又はRhの担持量としては、セリウムとRu又はRhの原子比(Ce/Ru又はCe/Rh)が1〜250、好ましくは2〜100、さらに好ましくは3〜50が望ましい。当該原子比が前記範囲から外れる場合、十分な触媒活性が得られない場合があり、好ましくない。また、Ru又はRhの担持量は、触媒重量(触媒担体と活性金属の合計重量)に対し、Ru又はRhを金属当量として0.1〜3.0質量%であり、好ましくは0.5〜2.5質量%である。
【0055】
Ru又はRhの触媒担体への担持方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を適用することにより容易に行うことができる。例えば、含浸法、沈着法、共沈法、混練法、イオン交換法、ポアフィリング法等が挙げられ、特に含浸法が望ましい。触媒を製造する際のRu又はRhの出発物質は、前記の担持法により異なり、適宜選択することができるが、通常、Ru又はRhの塩化物やRu又はRhの硝酸塩が用いられる。例えば、含浸法を適用する場合、Ru又はRhの塩の溶液(通常は水溶液)を調製し、前記の担体に含浸させたのち、乾燥、必要に応じ焼成する方法を例示することができる。焼成は、通常、空気や窒素雰囲気下などで行われ、温度は、当該塩の分解温度以上であれば特に限定されないが、通常、200〜800℃、好ましくは300〜800℃、より好ましくは500〜800℃程度が望ましい。本発明においては、通常、Ru又はRhを触媒担体に担持したのち、還元雰囲気(通常は水素雰囲気)で400〜1000℃、好ましくは500〜700℃で還元処理することにより触媒を調製することが好ましく採用される。なお、上記の改質触媒には、他の貴金属(白金、イリジウム、パラジウムなど)をさらに担持させた形態とすることもできる。
【0056】
また、改質触媒の触媒担体としては、セリウム酸化物またはセリウム酸化物を主成分とする希土類元素酸化物5〜40質量%、アルミニウム酸化物60〜95質量%を含む担体であることが好ましい。
【0057】
セリウム酸化物としては、特に限定されないが、酸化第2セリウム(通称、セリアと呼ばれている。)が好ましい。セリウム酸化物の調製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、硝酸セリウム(Ce(NO・6HO、Ce(NO等)、塩化セリウム(CeCl・nHO)、水酸化セリウム(Ce(OH)、Ce(OH)・HO等)、炭酸セリウム(Ce(CO・8HO、Ce(CO・5HO等)、シュウ酸セリウム、シュウ酸セリウム(IV)アンモニウム、塩化セリウム等を出発原料とし、公知の方法、例えば、空気中において焼成すること等により調製することができる。
【0058】
セリウム酸化物を主成分とする希土類元素酸化物は、セリウムを主成分とした混合希土類元素の塩から調製することができる。セリウム酸化物を主成分とする希土類元素酸化物において、セリウム酸化物の含有量は通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。セリウム酸化物以外の希土類元素酸化物としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、プロセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム等の各元素の酸化物が挙げられる。なかでも、イットリウム、ランタン、ネオジムの各元素の酸化物が好ましく、特にランタンの酸化物が好ましい。もちろん結晶形態は特に限定されるものではなく、いずれの結晶形態であっても良い。
【0059】
アルミニウム酸化物としては、アルミナの他、アルミニウムとケイ素、銅、鉄、チタンなどの他の元素との複酸化物をも包含し、複酸化物としてはシリカアルミナ等が代表的なものとして挙げられる。これらのうち、特にアルミナが望ましく、アルミナとしては特に限定されなく、α、β、γ、η、θ、κ、χ等のいずれの結晶形態のものが使用でき、特にγ型が好ましい。また、ベーマイト、バイアライト、ギブサイト等のアルミナ水和物を使用することもできる。シリカアルミナの場合も特に限定されなく、いずれの結晶形態のものが使用できる。アルミニウム酸化物は少量の不純物を含有していても支障無く使用できる。
【0060】
改質触媒の触媒担体におけるセリウム酸化物およびセリウム酸化物を主成分とする希土類元素酸化物の組成割合は、5〜40質量%が好ましく、10〜35質量%がより好ましい。セリウム酸化物およびセリウム酸化物を主成分とする希土類元素酸化物が5質量%より少ない場合、炭素析出抑制効果、活性促進効果、酸素共存下での耐熱性向上効果が不十分であり好ましくなく、また40質量%より多い場合は担体の表面積が減少し、十分な触媒活性が得られないことがあり好ましくない。
【0061】
改質触媒の触媒担体におけるアルミニウム酸化物の組成割合は、60〜95質量%が好ましく、65〜90質量%がより好ましい。アルミニウム酸化物の組成割合が60質量%より少ない場合は担体の表面積が減少し、十分な触媒活性が得られないことがあり好ましくなく、また95質量%より多い場合は炭素析出抑制効果、活性促進効果、酸素共存下での耐熱性向上効果が不十分であり好ましくない。
【0062】
改質触媒の触媒担体の製造方法は特に限定されるものではなく、公知の方法により容易に製造することができる。例えば、アルミニウム酸化物に、セリウムもしくはセリウムを主成分とする希土類元素の塩の水溶液を含浸させて、乾燥、焼成することにより製造することができる。このとき用いる塩としては水溶性の塩が好ましく、具体的な塩としては、硝酸塩、塩化物、硫酸塩、酢酸塩等の塩を挙げることができるが、特に焼成により容易に熱分解して酸化物となる硝酸塩または有機酸塩が好ましい。焼成は、通常、空気や酸素雰囲気下などで行われ、温度は、当該塩の分解温度以上であれば特に限定されないが、通常500〜1400℃、好ましくは700〜1200℃程度が望ましい。また、担体の調製の別法としては、共沈法、ゲル混練法、ゾルゲル法によっても調製することができる。
【0063】
このようにして触媒担体を得ることができるが、Ru又はRhを担持する前に触媒担体を空気や酸素雰囲気下で焼成処理するのが好ましい。このときの焼成温度としては、通常500〜1400℃、好ましくは700〜1200℃である。また、触媒担体の機械的強度を高めることを目的として、触媒担体に少量のバインダー、例えばシリカ、セメント等を添加することもできる。改質触媒の触媒担体の形状は特に限定されるものではなく、触媒を使用する形態により適宜選択することができる。例えば、ペレット状、顆粒状、ハニカム状、スポンジ状等などの任意の形状が採用される。
【0064】
改質触媒の形状は特に限定されるものではなく、触媒を使用する形態により適宜選択することができる。例えば、ペレット状、顆粒状、ハニカム状、スポンジ状等などの任意の形状が採用される。
【0065】
また、水素発生部4においては、炭化水素系燃料を改質するために水蒸気が必要であることから、水気化部8から水素発生部4に水蒸気が供給されることが好ましい。水蒸気は、水供給部7から供給される水を水気化部8において加熱し、気化させることによって生成されることが好ましい。水気化部8における水の加熱は、例えば、水素発生部4の熱、オフガス燃焼部6の熱、あるいは排ガスの熱を回収する等、燃料電池システム1内で発生した熱を用いてもよい。また、別途ヒータ、バーナ等の他熱源を用いて水を加熱してもよい。なお、図1では、一例としてオフガス燃焼部6から水素発生部4へ供給される熱のみ記載されているが、これに限定されない。
【0066】
燃料電池システム1には、水素製造システム30とセルスタック5をつなぐ配管を通じて、水素製造システム30から水素リッチガスが供給される。この水素リッチガスと酸化剤を用いて、セルスタック5にて発電を行う。燃料電池システム1におけるセルスタック5の種類は特に限定されず、例えば、固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)、固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)、リン酸形燃料電池(PAFC:Phosphoric Acid Fuel Cell)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC:Molten Carbonate Fuel Cell)、及び、その他の種類を採用することができる。なお、セルスタック5の種類や改質方式等に応じて、図1に示す構成要素を適宜省略してもよい。
【0067】
酸化剤は、酸化剤供給部9と燃料電池システム1をつなぐ配管を通じて、酸化剤供給部9から供給される。酸化剤としては、例えば、空気、純酸素ガス(通常の除去手法で除去が困難な不純物を含んでもよい)、酸素富化空気が用いられる。
【0068】
セルスタック5は、水素発生部4からの水素リッチガス及び酸化剤供給部9からの酸化剤を用いて発電を行う。セルスタック5は、水素リッチガスが供給されるアノード12と、酸化剤が供給されるカソード13と、アノード12とカソード13との間に配置される電解質14と、を備えている。セルスタック5は、パワーコンディショナー10を介して、電力を外部へ供給する。セルスタック5は、発電に用いられなかった水素リッチガス及び酸化剤をオフガスとして、オフガス燃焼部6へ供給する。なお、水素発生部4が備えている燃焼部(例えば、改質器を加熱する燃焼器など)をオフガス燃焼部6と共用してもよい。
【0069】
オフガス燃焼部6は、セルスタック5から供給されるオフガスを燃焼させる。オフガス燃焼部6によって発生する熱は、水素発生部4へ供給され、水素発生部4での水素リッチガスの発生に用いられる。また、燃料供給部2、水供給部7、及び酸化剤供給部9は、例えばポンプによって構成されており、制御部11からの制御信号に基づいて駆動する。
【0070】
パワーコンディショナー10は、セルスタック5からの電力を、外部での電力使用状態に合わせて調整する。パワーコンディショナー10は、例えば、電圧を変換する処理や、直流電力を交流電力へ変換する処理を行う。
【0071】
制御部11は、燃料電池システム1全体の制御処理を行う。制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び入出力インターフェイスを含んで構成されたデバイスによって構成される。制御部11は、燃料供給部2、水供給部7、酸化剤供給部9、パワーコンディショナー10、その他、図示されないセンサや補機と電気的に接続されている。制御部11は、燃料電池システム1内で発生する各種信号を取得すると共に、燃料電池システム1内の各機器へ制御信号を出力する。
【0072】
次に、本発明の炭化水素系燃料の脱硫方法及び水素の製造方法について説明する。
【0073】
本発明の炭化水素系燃料の脱硫方法は、硫黄化合物が含まれる炭化水素系燃料を、多孔質体を含有する細孔径が異なる複数の多孔質脱硫剤の細孔径が小さなものから順に流通させる。
【0074】
硫黄化合物が含まれる炭化水素系燃料としては、上述した炭化水素系燃料が挙げられる。
【0075】
炭化水素系燃料を、多孔質体を含有する細孔径が異なる複数の多孔質脱硫剤の細孔径が小さなものから順に流通させる具体的な手段としては、上述した燃料供給部2及び上述した脱硫部3が挙げられる。すなわち、燃料供給部2によって炭化水素系燃料を脱硫部3に供給し、燃料供給工程から供給された炭化水素系燃料を脱硫部3における脱硫剤と接触させる。
【0076】
脱硫条件は、通常、炭化水素系燃料は気化した状態であることが好ましい。また、脱硫温度は100℃以下が好ましく、例えば−50℃〜100℃の範囲、より好ましくは−20℃〜80℃の範囲、さらに好ましくは0〜60℃の範囲、さらにより好ましくは10〜50℃の範囲で選ばれる。
【0077】
都市ガスなど常温・常圧で気体である炭化水素系燃料を用いる場合、GHSVは10〜20000h−1、好ましくは10〜7000h−1の間で選択される。GHSVが10h−1より低いと脱硫性能的には十分になるが必要以上に脱硫剤を使用するため脱硫器が過大となり好ましくない。一方、GHSVが20000h−1より大きいと十分な脱硫性能が得られない。なお、液体燃料を炭化水素系燃料として使用することもでき、その場合には、LHSVとして0.01〜100h−1の範囲を選択できる。
【0078】
圧力条件は、通常、常圧〜1MPa(ゲージ圧、以下同じ。)、好ましくは常圧〜0.5MPa、さらに好ましくは常圧〜0.2MPaの範囲で選択されるが、大気圧条件下が最も好ましい。
【実施例】
【0079】
<ゼオライトの準備>
市販品である、A型ゼオライト(細孔径0.41nm、SiO/Alモル比:2)、ZSM−5型ゼオライト(細孔径0.54nm、SiO/Alモル比:30)、モルデナイト型ゼオライト(細孔径0.67nm、SiO/Alモル比:20)、Y型ゼオライト(細孔径0.74nm、SiO/Alモル比:4.5)、及びX型ゼオライト(細孔径0.74nm、SiO/Alモル比:2.7)を用意した。
【0080】
VPI−5型ゼオライト(細孔径1.21nm、P/Alモル比:1)を下記の方法にしたがって調製した。
【0081】
まず、アルミニウム源として30gの擬ベーマイトアルミナを2/3の蒸留水(47g)に溶解した。一方で85%リン酸(57.6g)を残りの1/3の蒸留水(28g)で希釈した。次に、これら2種の溶液を徐々に混合した。こうして得られた混合物を、pH1.5になるまで常温で2時間にわたって攪拌した。次に、鋳型剤として50.5gのn−ジプロピルアミン(n−DPA)を得られた溶液中に徐々に添加した。2時間の後、ゲルのpHは3.4に至った。この時、活性成分のモル比はHO/n−DPA:P/Al:P/n−DPA=40:1:1であった。その後、上記の混合物を反応器に入れ、マイクロ波照射装置(1.5kW,2450MHz)により200ワットの出力でマイクロ波を照射し、130℃で圧力を54psiに維持しながら、30分以内でVPI−5型ゼオライトを合成した。
【0082】
<ゼオライト以外の多孔体の準備>
市販品である、MCM−41(細孔径3.5nm、メソポーラスシリカ)を用意した。
【0083】
<脱硫システムの作製及び炭化水素系燃料の脱硫>
(実施例1)
固定床流通式反応管に、A型ゼオライト(細孔径0.41nm、SiO/Alモル比:2)、ZSM−5型ゼオライト(細孔径0.54nm、SiO/Alモル比:30)、モルデナイト型ゼオライト(細孔径0.67nm、SiO/Alモル比:20)、Y型ゼオライト(細孔径0.74nm、SiO/Alモル比:4.5)、VPI−5型ゼオライト(細孔径1.21nm、P/Alモル比:1)、及びMCM−41(細孔径3.5nm、メソポーラスシリカ)をこの順に各充填量2ml、5ml、5ml、8ml、5ml及び5mlで充填し、上記6種の多孔質脱硫剤が積層された触媒層を作成した。
【0084】
上記の触媒層が充填された反応管のA型ゼオライト層側から、表1及び2に示される組成を有する都市ガスをGHSV:6000h−1、温度30℃、大気圧の条件下で流通させた。
【0085】
このときの反応管入口及び出口のガス中の硫黄濃度をSCD(Sulfur Chemiluminescence Detector)ガスクロマトグラフィーにより測定し、出口ガス中の硫黄化合物の炭化水素系燃料全量を基準とした硫黄原子換算濃度が0.05容量ppm以上となった時間を硫黄破過時間として記録した。結果を表3に示す。
【0086】
【表1】



【0087】
【表2】



【0088】
(実施例2)
固定床流通式反応管に、A型ゼオライト(細孔径0.41nm、SiO/Alモル比:2)、Y型ゼオライト(細孔径0.74nm、SiO/Alモル比:4.5)、及びVPI−5型ゼオライト(細孔径1.21nm、P/Alモル比:1)をこの順に各充填量4ml、13ml及び8mlで充填し、上記3種の多孔質脱硫剤が積層された触媒層を作成した。
【0089】
上記の触媒層が充填された反応管のA型ゼオライト層側から、実施例1と同様に都市ガスをGHSV:6000h−1、温度30℃、大気圧の条件下で流通させた。そして、実施例1と同様にして硫黄破過時間を測定した。
【0090】
(実施例3)
固定床流通式反応管に、A型ゼオライト(細孔径0.41nm、SiO/Alモル比:2)、X型ゼオライト(細孔径0.74nm、SiO/Alモル比:2.7)、VPI−5型ゼオライト(細孔径1.21nm、P/Alモル比:1)をこの順に各充填量4ml、13ml及び8mlで充填し、上記3種の多孔質脱硫剤が積層された触媒層を作成した。
【0091】
上記の触媒層が充填された反応管のA型ゼオライト層側から、実施例1と同様に都市ガスをGHSV:6000h−1、温度30℃、大気圧の条件下で流通させた。そして、実施例1と同様にして硫黄破過時間を測定した。
【0092】
(実施例4)
A型ゼオライト、ZSM−5型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、Y型ゼオライト、VPI−5型ゼオライト及びMCM−41の各多孔質脱硫剤に担体基準でAgを15質量%担持させたものを用いた以外は実施例1と同様にして、Agが担持された上記6種の多孔質脱硫剤が積層された触媒層を作成した。
【0093】
なお、Agの担持は以下の方法で行った。まず、硝酸銀19gに対し、蒸留水600mlを添加し硝酸銀水溶液を調製した。次に、攪拌しながらゼオライト粉末50gと混合し、イオン交換を行った。その後、硝酸根が残らないように蒸留水にて洗浄した。洗浄後、空気中、180℃で一晩乾燥した。
【0094】
上記の触媒層が充填された反応管のAgが担持されたA型ゼオライト層側から、実施例1と同様に都市ガスをGHSV:6000h−1、温度30℃、大気圧の条件下で流通させた。そして、実施例1と同様にして硫黄破過時間を測定した。
【0095】
(実施例5)
A型ゼオライト、Y型ゼオライト及びVPI−5型ゼオライトの各多孔質脱硫剤に担体基準でAgを15質量%担持させたものを用いた以外は実施例2と同様にして、Agが担持された上記3種の多孔質脱硫剤が積層された触媒層を作成した。なお、Agの担持は実施例4と同様の方法で行った。
【0096】
上記の触媒層が充填された反応管のAgが担持されたA型ゼオライト層側から、実施例1と同様に都市ガスをGHSV:6000h−1、温度30℃、大気圧の条件下で流通させた。そして、実施例1と同様にして硫黄破過時間を測定した。
【0097】
(実施例6)
A型ゼオライト、Y型ゼオライト及びVPI−5型ゼオライトの各多孔質脱硫剤に担体基準でCuを15質量%担持させたものを用いた以外は実施例2と同様にして、Cuが担持された上記3種の多孔質脱硫剤が積層された触媒層を作成した。
【0098】
なお、Cuの担持は以下の方法で行った。まず、硫酸銅5水和物40gに対し、蒸留水600mlを添加し硫酸銅水溶液を調製した。次に、攪拌しながらゼオライト粉末50gと混合し、イオン交換を行った。その後、硫酸根が残らないように蒸留水にて洗浄した。洗浄後、空気気流中、180℃で一晩乾燥した。
【0099】
上記の触媒層が充填された反応管のCuが担持されたA型ゼオライト層側から、実施例1と同様に都市ガスをGHSV:6000h−1、温度30℃、大気圧の条件下で流通させた。そして、実施例1と同様にして硫黄破過時間を測定した。
【0100】
(比較例1)
多孔質脱硫剤の積層順序を実施例1とは逆にして触媒層を形成した。この触媒層が充填された反応管のMCM−41層側から、実施例1と同様に都市ガスをGHSV:6000h−1、温度30℃、大気圧の条件下で流通させた。そして、実施例1と同様にして硫黄破過時間を測定した。
【0101】
(比較例2)
多孔質脱硫剤の積層順序を実施例2とは逆にして触媒層を形成した。この触媒層が充填された反応管のVPI−5型ゼオライト層側から、実施例1と同様に都市ガスをGHSV:6000h−1、温度30℃、大気圧の条件下で流通させた。そして、実施例1と同様にして硫黄破過時間を測定した。
【0102】
(比較例3)
多孔質脱硫剤の積層順序を実施例3とは逆にして触媒層を形成した。この触媒層が充填された反応管のVPI−5型ゼオライト層側から、実施例1と同様に都市ガスをGHSV:6000h−1、温度30℃、大気圧の条件下で流通させた。そして、実施例1と同様にして硫黄破過時間を測定した。
【0103】
(比較例4)
多孔質脱硫剤の積層順序を実施例4とは逆にして触媒層を形成した。この触媒層が充填された反応管のMCM−41層側から、実施例1と同様に都市ガスをGHSV:6000h−1、温度30℃、大気圧の条件下で流通させた。そして、実施例1と同様にして硫黄破過時間を測定した。
【0104】
(比較例5)
多孔質脱硫剤の積層順序を実施例5とは逆にして触媒層を形成した。この触媒層が充填された反応管のVPI−5型ゼオライト層側から、実施例1と同様に都市ガスをGHSV:6000h−1、温度30℃、大気圧の条件下で流通させた。そして、実施例1と同様にして硫黄破過時間を測定した。
【0105】
(比較例6)
多孔質脱硫剤の積層順序を実施例6とは逆にして触媒層を形成した。この触媒層が充填された反応管のVPI−5型ゼオライト層側から、実施例1と同様に都市ガスをGHSV:6000h−1、温度30℃、大気圧の条件下で流通させた。そして、実施例1と同様にして硫黄破過時間を測定した。
【0106】
【表3】



【0107】
表3に示すように、細孔径が異なる複数の多孔質脱硫剤を炭化水素系燃料である都市ガスの流通方向の上流側から下流側に向かって細孔径が小さなものから大きなものとなる順序で配置することにより、逆の順序とした場合に比べて硫黄破過時間を長くすることができることが確認された。
【符号の説明】
【0108】
1…燃料電池システム、2…燃料供給部、3…脱硫部、4…水素発生部、5…セルスタック、20…脱硫システム、30…水素製造システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池用の脱硫システムであって、
硫黄化合物が含まれる流通する炭化水素系燃料から前記硫黄化合物を除去するための脱硫部を備え、
前記脱硫部が、多孔質体を含有する細孔径が異なる複数の多孔質脱硫剤によって構成され、前記細孔径が異なる複数の多孔質脱硫剤が炭化水素系燃料の流通方向の上流側から下流側に向かって細孔径が小さなものから大きなものとなる順序で配置されている脱硫剤を有する、燃料電池用脱硫システム。
【請求項2】
前記細孔径が異なる複数の多孔質脱硫剤は、細孔径が0.4nm〜5.0nmの範囲にある、請求項1に記載の燃料電池用脱硫システム。
【請求項3】
前記細孔径が異なる複数の多孔質脱硫剤が、A型ゼオライトと、X型ゼオライト及び/又はY型ゼオライトと、VPI−5型ゼオライトと、を含む、請求項1に記載の燃料電池用脱硫システム。
【請求項4】
前記細孔径が異なる複数の多孔質脱硫剤が、金属が担持された多孔質体を含有するものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料電池用脱硫システム。
【請求項5】
分子サイズが0.2nm〜2.0nmである硫黄化合物が含まれる炭化水素系燃料を前記脱硫部に供給する燃料供給部を更に備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の燃料電池用脱硫システム。
【請求項6】
硫黄化合物と炭素数4以下の炭化水素化合物とが含まれる炭化水素系燃料を前記脱硫部に供給する燃料供給部を更に備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の燃料電池用脱硫システム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の燃料電池用脱硫システムと、該燃料電池用脱硫システムの前記脱硫部を経た炭化水素系燃料から水素を発生させる水素発生部と、を備える、燃料電池用水素製造システム。
【請求項8】
請求項7に記載の燃料電池用水素製造システムを備える、燃料電池システム。
【請求項9】
硫黄化合物が含まれる炭化水素系燃料を、多孔質体を含有する細孔径が異なる複数の多孔質脱硫剤の細孔径が小さなものから順に流通させる、炭化水素系燃料の脱硫方法。
【請求項10】
前記細孔径が異なる複数の多孔質脱硫剤は、細孔径が0.4nm〜5.0nmの範囲にある、請求項9に記載の炭化水素系燃料の脱硫方法。
【請求項11】
前記細孔径が異なる複数の多孔質脱硫剤が、A型ゼオライトと、X型ゼオライト及び/又はY型ゼオライトと、VPI−5型ゼオライトと、を含む、請求項9に記載の炭化水素系燃料の脱硫方法。
【請求項12】
前記細孔径が異なる複数の多孔質脱硫剤が、金属が担持された多孔質体を含有するものである、請求項9〜11のいずれか一項に記載の炭化水素系燃料の脱硫方法。
【請求項13】
前記硫黄化合物が、分子サイズが0.2nm〜2.0nmである硫黄化合物を含む、請求項9〜12のいずれか一項に記載の炭化水素系燃料の脱硫方法。
【請求項14】
前記炭化水素系燃料が炭素数4以下の炭化水素化合物を含む、請求項9〜13のいずれか一項に記載の炭化水素系燃料の脱硫方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−142175(P2012−142175A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293672(P2010−293672)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】