説明

燃料電池用触媒材料、触媒膜、電極膜接合体および燃料電池

【課題】高い耐久性と触媒活性を有する燃料電池用触媒材料等を提供する。
【解決手段】カーボン材料を含み、該カーボン材料の表面に、耐加溶媒分解性および耐熱性を有する連結基を介して、少なくとも1つのイオン性官能基が連結している、燃料電池用触媒材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用触媒材料、例えば、燃料として純水素、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル、メタノール、化石燃料からの改質水素を用い、空気や酸素を酸化剤とする燃料電池に用いる燃料電池用触媒材料に関するものであり、特に、固体高分子型燃料電池において用いられる燃料電池用触媒材料等に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池は、イオン伝導体すなわち電解質が固体で、かつ高分子である点に特徴を有する燃料電池であるが、その固体電解質としては、具体的にイオン交換樹脂が使用され、この固体電解質を挟んで負極および正極の両電極を配置し、例えば、負極側に燃料として水素を、また正極側に酸素または空気を供給することによって電気化学反応を起こさせ、電気を発生させるものである。
すなわち、水素を燃料とした場合、負極では
【0003】
2→2H++2e-
の反応が起こり、また、酸素を酸化剤とした場合、正極では
1/2O2+2H++2e-→H2
反応が起こり、水が生成される。
【0004】
上記の反応を円滑に進行させ、燃料電池の性能を最大限に発揮させるためには、触媒層中の、プロトン伝導体(固体電解質)であるイオン交換樹脂、電子伝導体であるカーボン担体および反応ガスが同時に接触する三相界面に、触媒である白金が存在する必要がある。そのため、これまでにも触媒層構造を高機能化して、三相界面に存在する触媒量を増やそうとする試みが行われてきた。例えば、固体電解質としてスルホン化フッ素樹脂の一種であるナフィオン117(ナフィオン:登録商標)(Du Pont社製)を用い、その内表面に白金等を担持した貴金属触媒を用い、さらに、触媒層の反応サイトを三次元化して作用面積を向上させる手法が開示されている(非特許文献1)。この手法によると、固体電解質と触媒層の接触面のみならず、触媒層内部の触媒も利用できるようになり、この触媒層により白金の利用率を向上させることができる。
【0005】
また、より高機能な電極設計の基礎として、電極構造の細孔分布について検討がなされ、触媒層は、直径0.04〜1.0μmの細孔部を有し、この細孔部に固体電解質を分布させることが有効であることが記載されている(特許文献1)。
さらに、これらの触媒層は、直径0.04μmを境に細孔が変化しており、直径0.02μm〜0.04μmの細孔を1次細孔、直径0.04μm〜1μmの細孔を2次細孔とされている(非特許文献2)。すると、ナフィオンのようなフッ素系高分子は、その分子量の大きさから直径0.04μm以下のような細孔に進入できず、そのような細孔中の触媒粒子は三相界面が形成されないため、反応場にならないことを示している。
【0006】
そこで、上記で述べた様な、固体電解質が進入するのが困難な、孔の小さい細孔(例えば、直径0.04μm以下)中に存在する金属触媒を有効に利用する方法が種々検討されている。例えば、触媒担体であるカーボンブラックの表面にスルホン酸部位またはスルホン酸基含有ポリマーをグラフトすることで、一次細孔中にもプロトン伝導部位を導入し、一次細孔中の触媒粒子に三相界面を形成させる方法が開示されている(特許文献2および特許文献3)。しかし、特許文献2においては、シロキサン結合を介してプロトン伝導部位が導入されており、燃料電池として実働させる際の強酸性条件下においてシロキサン結合部位が加水分解を受けるため、プロトン伝導部位が容易に脱離するといった問題が存在する。また、特許文献3においては、実施例中、カーボン材料の調整1、2および5の方法で導入したスルホン酸基は、芳香族炭化水素基上に直接導入されているため、熱に対して不安定であり、経時で脱離するといった問題が存在し、調整3および5の方法で導入したスルホン酸基は、カーボンブラックとの連結部位にエステル結合を含むため、エステル基の加水分解により経時でスルホン酸部位が脱離するといった問題が存在する。
【0007】
【非特許文献1】「電気化学」第53巻第10号(1985)、812〜817頁
【非特許文献2】J. Electrochemical Society 第142巻 第2号 463頁
【特許文献1】特許第3275652号公報
【特許文献2】特開2000−228204号公報
【特許文献3】特開2004−22346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、触媒粒子の利用効率を向上させることを目的としたものであって、高い耐久性と触媒活性を有する燃料電池用触媒材料、該燃料電池用触媒材料を利用した触媒膜、該触媒膜を使用した電極膜接合体、該電極膜接合体を利用した燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、下記手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
(1)カーボン材料を含み、該カーボン材料の表面に、耐加溶媒分解性および耐熱性を有する連結基を介して、少なくとも1つのイオン性官能基が連結している、燃料電池用触媒材料。
(2)前記連結基と前記カーボン材料が、酸素原子を介して連結している、(1)に記載の燃料電池用触媒材料。
(3)前記連結基と前記カーボン材料が、炭素原子を介して連結している、(1)に記載の燃料電池用触媒材料。
(4)触媒金属を含有する、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の燃料電池用触媒材料。
(5)前記カーボン材料が、カーボンブラックまたはカーボンナノチューブである、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の燃料電池用触媒材料。
(6)前記耐加溶媒分解性および耐熱性を有する連結基および前記イオン性官能基からなる構造が、下記一般式(1)で表される構造である、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の燃料電池用触媒材料。
一般式(1)
【化1】

(一般式(1)中、R11およびR12は、それぞれ、2〜4価の連結基を表し、Ar11は芳香族炭化水素基または複素環基を含む2〜6価の連結基を表し、A1はイオン性官能基を表す。n11、n12およびn13は、それぞれ、0以上の整数であり、n11とn12とn13の和は1以上の整数である。n14は1〜10の整数、n15は1〜3の整数である。)
(7)(1)〜(6)のいずれか1項に記載の燃料電池用触媒材料と、固体電解質を含む触媒膜。
(8)第一の燃料電池用触媒材料と、第二の燃料電池用触媒材料と、固体電解質を含む触媒膜であって、前記第一の燃料電池用触媒材料は、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の燃料電池用触媒材料であり、前記第二の燃料電池用触媒材料は、カーボン表面に、イオン性官能基を有する耐加溶媒分解性および耐熱性ポリマーを有さない燃料電池用触媒材料である、触媒膜。
(9)前記固体電解質が、下記式(2)で表される繰り返し単位を主鎖構造として含み、かつ、前記主鎖が有する芳香環には、下記式(3)〜(5)より選ばれる少なくとも1つの部分構造が結合しているポリマーを含む、(7)または(8)に記載の触媒膜。
【化2】

【化3】

(上記式(2)中、R13は芳香環を含む2価の基であり、X1は2価の連結基である。式(3)中、B1は単結合または2〜6価の連結基、A2はイオン性官能基を表し、n16は1〜5の整数を表す。式(4)中、B2は単結合または2〜6価の連結基を、Dは少なくとも1つのイオン性官能基を有するラジカル重合性モノマーの重合物を表す。式(5)においてE1は酸素透過性の高い置換基を表す。)
(10)多孔質導電シートと、該多孔質導電シートに接して設けられた触媒膜と、該触媒膜に接して設けられた固体電解質膜とを有し、かつ、前記触媒膜が、(7)〜(9)のいずれか1項に記載の触媒膜である、電極膜接合体。
(11)前記固体電解質膜が、下記式(2)で表される繰り返し単位を主鎖構造として含み、かつ、前記主鎖が有する芳香環には、下記式(3)〜(5)より選ばれる少なくとも1つの部分構造が結合しているポリマーを含む、(10)に記載の電極膜接合体。
【化4】

【化5】

(上記式(2)中、R13は芳香環を含む2価の基であり、X1は2価の連結基である。式(3)中、B1は単結合または2〜6価の連結基、A2はイオン性官能基を表し、n16は1〜5の整数を表す。式(4)中、B2は単結合または2〜6価の連結基を、Dは少なくとも1つのイオン性官能基を有するラジカル重合性モノマーの重合物を表す。式(5)においてE1は酸素透過性の高い置換基を表す。)
(12)(10)または(11)に記載の電極膜接合体を有する、燃料電池。
【発明の効果】
【0010】
本発明の燃料電池用触媒材料を採用することにより、高い触媒活性と高い耐久性を両立した電極膜接合体を製造でき、高性能の燃料電池を提供することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
また、本明細書における各種物性値は、特に述べない限り室温における状態のものを表している。また、本明細書における重合には、いわゆる共重合も含む趣旨である。従って、本発明でいう重合体には、共重合体も含む趣旨である。
さらに、本明細書において、アセチル基をAc、エチル基をEt、メチル基をMe、フェニル基またはフェニレン基をPhと示すことがある。
加えて、本発明における「膜」には、板状や平板状のもの等を含む趣旨である。
また、本発明における触媒膜は、本発明における触媒層を有する素子の触媒層部分のみからなるもの、触媒材料を膜状に成形したものの両方を含む趣旨である。
【0012】
(1)本発明の燃料電池用触媒材料は、カーボン材料の表面に、耐加溶媒分解性および耐熱性を有する連結基を介して、少なくとも1つのイオン性官能基が連結している。
ここで、該連結基は、耐加溶媒分解性を有する部分と、耐熱性を有する部分が同一の部分であってもよいし、異なる部分であってもよい。また、本発明の連結基は、その一部が、カーボン材料またはイオン性官能基をかねる構成であってもよい。
ここで、耐加溶媒分解性を有する連結基とは、燃料電池の実働環境下における高温かつ強酸性の条件下において加水分解され易い結合(例えば、100℃、pH2以下の条件で、10%以上が加水分解される結合)を含まない基、より具体的には、エステル結合、アミド結合、シロキサン結合などを含まない基をいう。このような耐加溶媒分解性を有する連結基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基および複素環基、ならびに、
【0013】
【化6】

からなる官能基から選ばれる1つ以上の組み合わせからなる基が挙げられる。耐加溶媒分解性を有する連結基は、好ましくは、脂肪族炭化水素基または、脂肪族炭化水素基と、上記官能基から選ばれる1つ以上の組み合わせからなる基が挙げられる。
【0014】
ここで、脂肪族炭化水素基は、飽和炭化水素でも不飽和炭化水素でもよく、また、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。さらに、水素原子が、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、置換基(例えば、ハロゲン原子、好ましくはフッ素原子など)で置換されていてもよい。脂肪族炭化水素基の炭素数は1〜12が好ましく、1〜6がより好ましい。脂肪族炭化水素基としては、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、イソブチレン基、−CH2−O−(CH2n−(nは、整数であり、好ましくは、1〜6の整数である)、−CH2CH2OCH2CH2−、−(CH2CH2O)2CH2CH2−、−CH2CH=CH−、−CH2CH2CH=CH−、C((CH2) n−)4(nは、整数であり、好ましくは0〜6の整数である)、CH((CH2) n−)3(nは、整数であり、好ましくは0〜6の整数である)、CH3C((CH2) n−)3(nは、整数であり、好ましくは0〜6の整数である)、EtC((CH2) n−)3(nは、整数であり、好ましくは0〜6の整数である)、−C((CH2n−)3(nは、整数であり、好ましくは0〜6の整数である)、−CH((CH2n−)2(nは、整数であり、好ましくは0〜6の整数である)、が好ましい。
芳香族炭化水素基は、炭素数6〜25が好ましく、6〜16がより好ましく、6〜12がさらに好ましい。芳香族炭化水素基の環上の水素原子は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、置換基(例えば、ハロゲン原子、好ましくはフッ素原子など)で置換されていてもよい。芳香族炭化水素基としては、トリフェニレン環、ピレン環、アントラセン環、ナフタレン環、ビフェニレン環、ベンゼン環を有する基が好ましく、ナフタレン環、ビフェニレン環、ベンゼン環を有する基がより好ましく、ベンゼン環を有する基が最も好ましい。
複素環基は、硫黄原子、窒素原子、酸素原子のいずれかを含むものが好ましく、硫黄原子または窒素原子を含むものがより好ましい。また、複素環基が有する炭素数は、2〜12が好ましく、3〜8がより好ましい。複素環基の環上の水素原子は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、置換基(例えば、ハロゲン原子、好ましくはフッ素原子など)で置換されていてもよい。複素環基としては、具体的には、ピリジン環、フラン環、チオフェン環、トリアジン環を有する基が好ましく、トリアジン環を有する基がさらに好ましい。
【0015】
耐加溶媒分解性を有する連結基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、フェニレン(−Ph−)基、−CH2−O−(CH2n−(nは、1以上の整数であり、好ましくは、1〜6の整数である)、−CH2−Ph−、−CH2CH2OCH2CH2−、−(CH2CH2O)2CH2CH2−、−CH2CH=CH−、−CH2CH2CH=CH−、C((CH2) n−)4(nは、整数であり、好ましくは0〜6の整数である)、CH((CH2) n−)3(nは、整数であり、好ましくは0〜6の整数である)、CH3C((CH2) n−)3(nは、整数であり、好ましくは0〜6の整数である)、EtC((CH2) n−)3(nは、整数であり、好ましくは0〜6の整数である)、−C((CH2n−)3(nは、整数であり、好ましくは0〜6の整数である)、−CH((CH2n−)2(nは、整数であり、好ましくは0〜6の整数である)、またはこれらの2以上の組み合わせ、ならびに、これら(2以上を組み合わせたものを含む)と、
【0016】
【化7】

の1つ以上との組み合わせが挙げられる。
【0017】
耐熱性を有する連結基とは、燃料電池の実働環境下における高温条件下(例えば、100℃以上)でも安定に存在する基を意味する。例えば、イオン性官能基がスルホン酸基の場合において、スルホン酸基が芳香族環に直接結合していると、このスルホン酸基は解離平衡状態にあるため、高温下において経時で脱離することが知られており(Coll.Czech.Chem.Commun.、第9巻、465頁(1937))、芳香族環への単結合は耐熱性を有しているとは言えない。よって、ここで耐熱性を有する基としては、芳香族環への単結合を除く全ての有機基のことを表す。ただし、芳香族環へ単結合を介しスルホン酸基が連結している場合でも、該芳香族環に電子吸引性基が存在する場合には、スルホン酸基の耐熱性が向上することが知られている(NEDO成果報告書100004243 「平成15年度成果報告書 固体高分子形燃料電池システム技術開発事業 固体高分子形燃料電池要素技術開発等事業 固体高分子形燃料電池用高耐久性炭化水素系電解質膜の研究開発」)。よって、芳香環へ単結合を介しスルホン酸基が連結している場合でも、該芳香環上の該スルホン酸基を除く置換基の置換基定数σの和が特定値以上であれば、そのスルホン酸基は耐熱性を有するとみなすことができる。耐熱性を有するための置換基定数σの和は0.3以上であることが好ましく、0.35以上であることがさらに好ましく、0.4以上であることが最も好ましい。
以下、上記の耐熱性を有する連結基の条件を満たすものを、条件Bということがある。
耐熱性を有する連結基の好ましい例としては、前記耐加溶媒分解性を有する連結基の好ましい例中から、芳香族基に単結合を介してイオン性官能基が連結する場合(上記置換基定数σに関する条件を満たすものは含まない)を除いたものが挙げられる。
【0018】
(2)本発明の燃料電池用触媒材料に用いられるカーボン材料(触媒担持カーボン材料)は、特に定めるものではなく、公知のカーボン材料を用いることができる。例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノホーン(CNH)、フラーレンが好ましく用いられる。カーボンブラックおよびカーボンナノチューブは、表面上に存在する官能基を起点としてイオン性官能基を導入できるため、特に好ましく用いることができる。
【0019】
カーボンブラック
本発明で用いられるカーボンブラックは、天然ガス、炭化水素ガスの気相熱分解や不完全燃焼によって生成する微粉であって、球状または鎖状の炭素であり、製法によりチャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどがある。これらは、それぞれ粒子サイズ、酸素含有量、揮発成分、比表面積、微細構造などが異なり、”最新カーボンブラック技術大全集、第四章(2005年 技術情報協会刊)”などに記載がある。本発明においては上記のカーボンブラックの1種または2種以上を使用可能であり、また、ケッチェンブラック、Vulcan XC−72などの市販品も使用することができる。
【0020】
カーボンブラック表面には、フェノール性水酸基、カルボキシル基、キノン型カルボニル基、ラクトン基などの含酸素官能基が存在し、これらの官能基を利用してカーボンブラック表面上にイオン性官能基を導入することができる。これらの官能基は、元々カーボンブラック表面に存在するものに加え、賦活処理を施すことによって、その数を増やすことができる。賦活処理の方法としては、コロナ放電、プラズマ処理、気相酸化、液相酸化などが挙げられ、これらの方法から1つ以上の方法を用いて賦活処理を行い、カーボンブラック表面の官能基数を増やすことが好ましい。気相酸化における酸化剤としては、分子状酸素、原子状酸素、オゾン、乾燥空気、湿潤空気が挙げられ、可能な限りこれらを2種類以上組み合わせて使用してもよい。液相酸化における酸化剤としては、硝酸、過マンガン酸カリウム、亜塩素酸、塩素酸および過塩素酸の各ナトリウム塩、酸素飽和水、オゾン水溶液、臭素水溶液、次亜塩素酸ナトリウム、クロム酸カリウムとリン酸の混合水溶液、重クロム酸銀と硫酸の混合物などが挙げられる。
【0021】
カーボンブラック表面のカルボキシル基、ラクトン基に関しては、そのままの形では、耐熱性・耐加溶媒分解性の小さいエステル結合やアミド結合を介したイオン性官能基の導入しか行えないため、還元してヒドロキシメチル基とし、該ヒドロキシメチル基を利用してイオン性官能基を導入することが好ましい。
【0022】
カーボンナノチューブ
本発明で用いられるカーボンナノチューブは、その表面にカルボキシル基を有し、このカルボキシル基を起点としてカーボンナノチューブ表面にイオン性官能基を導入することができる。また、賦活処理により表面上のカルボキシル基の数を増やすことができるため、本発明に用いる場合には賦活処理を行うことが好ましい。賦活処理の方法としては、硝酸による酸化反応が好ましい。
【0023】
カーボンナノチューブ表面のカルボキシル基は、そのままの形では、耐熱性・耐加溶媒分解性の小さいエステル結合やアミド結合を介したイオン性官能基の導入しか行えないため、還元してヒドロキシメチル基とし、該ヒドロキシメチル基を利用してイオン性官能基を導入することが好ましい。
【0024】
(3)カーボン材料と連結基との連結部
該カーボン材料と該耐加溶媒分解性および耐熱性を有する連結基との連結部は、耐加溶媒分解性および/または耐熱性を有する化学結合により構成されていることが好ましい。耐加溶媒分解性および耐熱性を有する化学結合としては、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合が好ましく、炭素−炭素単結合、エーテル結合がさらに好ましい。より具体的には、該カーボン材料がカーボンブラックの場合には、カーボンブラック表面上に存在するフェノール性水酸基由来酸素原子と連結基由来炭素原子で形成されるエーテル結合、フェノール性水酸基のオルト位の炭素原子と連結基の炭素原子とで形成される単結合、カーボンブラック上カルボキシル基を還元することで得られるヒドロキシメチル基由来酸素原子と連結基の炭素原子とで形成されるエーテル結合が特に好ましい。カーボン材料がカーボンナノチューブの場合には、カーボンナノチューブ上カルボキシル基を還元することで得られるヒドロキシメチル基由来酸素原子と連結基の炭素原子とで形成されるエーテル結合が特に好ましい。また、カーボンブラック、カーボンナノチューブは共に、強力なラジカル捕捉剤として作用することが知られており(例えば、N.Tsubokawaらの研究報告、J. Polym. Sci., Part A:Polym. Chem., 36巻、3165頁(1998年)、またはA.Adronovらの研究報告、Macromolecules、 38巻、1172頁(2005年)など)、例えばアゾ基の熱分解などで生じた炭素ラジカルを捕捉し、耐加溶媒分解性および耐熱性に優れる炭素−炭素結合あるいは炭素−酸素結合を形成する。よってこのようなラジカル捕捉性を利用して連結基を導入することもできる。
カーボン材料には主成分である炭素原子の他に、表面に存在する官能基に由来する酸素原子が存在する。よって、カーボン材料と連結基を連結する際には、カーボン材料に存在する炭素原子を介して連結基を連結する方法と、カーボン材料に存在する酸素原子を介して連結基を連結する方法の2通りの方法が存在するが、本発明においては、いずれの方法も好ましく用いることができる。
【0025】
(4)耐加溶媒分解性および耐熱性を有する連結基の詳細な説明
本発明の燃料電池用触媒材料は、前記耐加溶媒分解性および耐熱性を有する連結基およびイオン性官能基からなる構造が、下記一般式(1)で表される構造であることが好ましい。以下、一般式(1)で表される構造について詳細に説明する。
【0026】
一般式(1)
【化8】

(一般式(1)中、R11およびR12は、それぞれ、2〜4価の連結基を表し、Ar11は芳香族炭化水素基または複素環基を含む2〜6価の連結基を表し、A1はイオン性官能基を表す。n11、n12およびn13は、それぞれ、0以上の整数であり、n11とn12とn13の和は1以上の整数である。n14は1〜10の整数、n15は1〜3の整数である。)
【0027】
一般式(1)中、R11およびR12は2〜4価の連結基を表し、その構造は脂肪族炭化水素基、または、脂肪族炭化水素基と、
【化9】

で表される基から官能基なる群から選ばれる1または2以上の組み合わせからなる基であることが好ましい。また、これらの基が有する水素原子は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、置換基(例えば、ハロゲン原子、好ましくはフッ素原子など)で置換されていてもよい。
11およびR12の好ましい例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、イソブチレン基、−CH2−O−(CH2n−(nは、整数であり、好ましくは、1〜6の整数である)、−CH2CH2OCH2CH2−、−(CH2CH2O)2CH2CH2−、−CH2CH=CH−、−CH2CH2CH=CH−、C((CH2) n−)4(nは、整数であり、好ましくは0〜6の整数である)、CH((CH2) n−)3(nは、整数であり、好ましくは0〜6の整数である)、CH3C((CH2) n−)3(nは、整数であり、好ましくは0〜6の整数である)、EtC((CH2) n−)3(nは、整数であり、好ましくは0〜6の整数である)、−C((CH2n−)3(nは、整数であり、好ましくは0〜6の整数である)、−CH((CH2n−)2(nは、整数であり、好ましくは0〜6の整数である)、ならびに、これら(前記基を2以上組み合わせた基を含む)と−CO−、−SO−、−CS−、−SO2−、
【化10】

の1つ以上との組み合わせが挙げられる。
【0028】
一般式(1)中、Ar11は芳香族炭化水素基または複素環基を含む2〜6価の連結基であり、好ましくは、前記芳香族炭化水素基または複素環基と、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−CS−、−SO2−の1つ以上の組み合わせから構成される基である。
ここで、芳香族炭化水素基は、炭素数6〜25が好ましく、6〜16がより好ましく、6〜12がさらに好ましい。芳香族炭化水素基の環上の水素原子は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、置換基(例えば、ハロゲン原子、好ましくはフッ素原子など)で置換されていてもよい。
複素環基は、硫黄原子、窒素原子、酸素原子のいずれかを含むものが好ましく、硫黄原子または窒素原子を含むものが好ましい。また、複素環基が有する炭素数は、2〜12が好ましく、3〜8がより好ましい。複素環基の環上の水素原子は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、置換基(例えば、ハロゲン原子、好ましくはフッ素原子など)で置換されていてもよい。
Ar11としては、具体的には、トリフェニレン環、ピレン環、アントラセン環、ナフタレン環、ビフェニレン環またはベンゼン環を有する基、ならびにこれらと、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−CS−、−SO2−の1つ以上からなる組み合わせが好ましく、ピリジン環、フラン環、チオフェン環、トリアジン環を有する基を有する基、ならびにこれらと、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−CS−、−SO2−の1つ以上からなる組み合わせがより好ましく、ベンゼン環または、ベンゼン環と−O−、−CO−、−S−、−CS−、−SO2−の1つ以上からなる組み合わせからなる基または、トリアジン環を有する基が最も好ましい。
【0029】
1はイオン性官能基を表し、カチオン性またはアニオン性のいずれでもよいが、アニオン性のイオン官能基であることが好ましい。カチオン性のイオン官能基としては、スルホニウム基、ヨードニウム基、チオロニウム基、ホスホニウム基、ピリジル基、アンモニウム基が好ましく、スルホニウム基、ピリジル基、アンモニウム基がより好ましく、スルホニウム基がさらに好ましい。
ピリジル基の具体的な例としては、−(2−メチル)ピリジル基、−(3−メチル)ピリジル基、−(4−メチル)ピリジル基があげられる。
アンモニウム基の具体的な例としては、−(ジメチルセチル)アンモニウム基、−(ベンジルジブチル)アンモニウム基、−(ベンジルジエチル)アンモニウム基、−(ジメチルドデシル)アンモニウム基、−(ジデシルメチル)アンモニウム基、−(ステアリルジメチル)アンモニウム基、−(ラウリルジメチル)アンモニウム基、−(トリヘプチル)アンモニウム基、−(ブチルジエチル)アンモニウム基、−(フェニルジエチル)アンモニウム基が好ましく、−(トリメチル)アンモニウム基、−(トリエチル)アンモニウム基、−(トリn−ブチル)アンモニウム基がより好ましい。
また、対アニオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンが好ましく、水酸化物イオンが特に好ましい。
アニオン性のイオン官能基としては、パーフルオロスルホン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基が好ましく、ホスホン酸基、スルホン酸基がより好ましい。
また、対カチオンとしては、カルシウムイオン、バリウムイオン、四級アンモニウムイオン、プロトンが好ましく、カルシウムイオン、バリウムイオン、四級アンモニウムイオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、プロトンがより好ましく、プロトンがさらに好ましい。
【0030】
n11、n12およびn13は、それぞれ、0以上の整数であり、n11とn12とn13の和は1以上の整数である。n11、n12およびn13は、それぞれ、0〜5の整数であることが好ましく、それぞれ、0〜2であることがより好ましく、0または1であることがさらに好ましい。n11とn12とn13の和は1〜10の整数であることが好ましく、1〜5の整数であることがより好ましく、1〜3の整数であることがさらに好ましい。n14は1〜10の整数であり、1〜5の整数であることが好ましく、1〜3の整数であることがより好ましい。n15は1〜3の整数であり、1または3が好ましい。
n11が2以上のとき、それぞれのR11は同一であってもよいし、異なっていてもよい。n12が2以上のとき、それぞれのAr11は同一であってもよいし、異なっていてもよい。n13が2以上のとき、それぞれのR12は同一であってもよいし、異なっていてもよい。n14が2以上のとき、それぞれのR12、n13およびA1は、それぞれ、同一であってもよいし、異なっていてもよい。n15が2以上のとき、それぞれのAr11、n12、R12、n13、A1、n14は、それぞれ、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0031】
一般式(1)で表される構造中の総炭素数は、2〜50が好ましく、2〜40がより好ましく、2〜30がさらに好ましい。
以下に、一般式(1)で表される構造を例示するが、本発明はこれらに限定されない。
【0032】
【化11】

【0033】
【化12】

【0034】
【化13】

【0035】
【化14】

【0036】
耐加溶媒分解性および耐熱性を有する連結基(一般式(1)で表される構造)のカーボン材料への導入法
本発明では、連結基と、カーボン材料は、酸素原子または炭素原子を介して連結していることが好ましい。この場合の酸素原子および炭素原子は、連結基に含まれるものであってもよいし、カーボン材料に含まれるものであってもよい。
【0037】
カーボンブラックへの導入法
カーボン材料がカーボンブラックの場合、炭素原子を介してカーボン材料と連結する場合と、酸素原子を介してカーボン材料に連結する場合で方法が異なるが、本発明においてはいずれの場合も好ましく用いることができる。
【0038】
カーボンブラックへの導入法において、カーボンブラック上の炭素原子を介して連結する場合、イオン官能基が、例えば、スルホ基であれば、後記するクロロメチルメチルエーテル等のハロゲノメチル化剤を用いてカーボン材料をハロゲノメチル化し、次いでハロゲン部位をアセチルチオ化した後、酸化してスルホ基にする方法、またはハロゲノメチル化されたカーボン材料と亜硫酸ナトリウムを反応してスルホ基にする方法などが挙げられる。また、より炭素数の多いスルホアルキル基の場合には、例えば、Cl−(CH2n−COCl(nは例えば2〜6)で表されるクロロ置換酸クロライドで常法、例えば、塩化アルミニウムや塩化鉄などのルイス酸を用いたフリーデルクラフツ反応によりクロロ置換アシル基を導入し、次いでジメチルチオエーテルとチオ硫酸ナトリウムで、クロロ原子をスルホ基とした後、カルボニル基をヒドラジンで還元する方法またはJ.Org.Chem.45.2717(1980)に記載されている方法に準じて、カーボン材料中の芳香環の水素をリチウム化し、次いでジハロゲノアルカンでハロゲノアルキル化し、その後は上記の方法でクロロ原子をスルホ基に変換する方法などが挙げられる。
【0039】
本発明において好ましいハロゲノメチル基を、例えば、カーボン材料中の芳香環に導入(芳香環のハロゲノメチル化反応)するには、公知反応が広範囲に使用できる。具体的には、クロロメチル化剤として、クロロメチルメチルエーテル、1,4−ビス(クロロメトキシ)ブタン、1−クロロメトキシ−4−クロロブタンなどを用い、触媒として塩化スズ、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化チタンなどのルイス酸やフッ化水素酸などを用いてクロロメチル化反応を行うことにより、芳香環にクロロメチル基を導入することができる。溶媒には、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼンなどを用い、均一系で反応を行うことが好ましい。また、パラホルムアルデヒドと塩化水素若しくは臭化水素等を用いてハロゲノメチル化反応を行うこともできる。
【0040】
さらにスルホ基の導入方法としては、一般的な方法としては、例えば、下記に示されるようなスルトン類とルイス酸(例えば、AlCl3)を用いたフリーデルクラフツ反応(Journal of Applied Polymer Science, Vol. 36, 1753−1767, 1988)もまた用いることができる。
【0041】
【化15】

【0042】
フリーデルクラフツ反応を行う場合は、溶媒としては炭化水素(ベンゼン、トルエン、ニトロベンゼン、アセトフェノン等)、ハロゲン化アルキル(塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、トリクロロベンゼン等)等を用いることができる。反応温度は、室温(例えば、18℃)〜250℃の範囲で選べばよい。これらの反応において溶媒は2種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
なお、本発明の燃料電池用触媒材料の構造は、赤外線吸収スペクトルによって、1,030〜1,045cm-1、1,160〜1,190cm-1のS=O吸収により確認でき、これらの組成比は、スルホン酸の中和滴定や、元素分析により知ることができる。
【0044】
イオン官能基がスルホ基以外の場合には、クロロメチルメチルエーテル等のハロゲノメチル化剤を用いてカーボン材料をハロゲノメチル化し、ウィリアムソンエーテル合成を用いて、各イオン性官能基含有成分をエーテル結合を介して導入する公知の方法が好ましく用いられる。
【0045】
カーボンブラックへの導入法において、カーボンブラック上の酸素原子を介して連結する場合、イオン官能基がスルホ基であれば、例えばCl−(CH2n−Cl(nは例えば2〜6)で示されるジクロロアルカンを、ウィリアムソンエーテル合成によりエーテル結合を介してクロロアルキル基の形で導入し、次いでクロロ原子をアセチルチオ化した後、酸化してスルホ基にする方法、またはクロロ原子を亜硫酸ナトリウムと反応させてスルホ基にする方法などが挙げられる。また、例えばCl−(CH2n−SO3Naで表されるクロロアルキルスルホン酸塩を用い、ウィリアムソンエーテル合成によりエーテル結合を介して導入する方法もある。
【0046】
イオン官能基がスルホ基以外の場合には、各イオン官能基含有アルキルハライドを用い、ウィリアムソンエーテル合成によりエーテル結合を介して導入する方法が挙げられる。
【0047】
また、カーボンブラックは前述のようにラジカル捕捉能を有しており、連結基にラジカルを発生させることによって、カーボンブラック上の酸素原子または炭素原子を介して連結基を結合することができる。連結基上にてラジカルを発生させることのできる部位としては大別して以下の通りである。
(1)ハロゲノベンジル部位
ハロゲノベンジル部位は、ハロゲン化銅(I)の2,2'−ビピリジン錯体など、原子移動ラジカル重合に用いる触媒(例えば、Chem. Rev. 2001,101,2921−2990に記載の触媒)存在下で炭素ラジカルを発生する。
(2)スルホニルハライド部位
スルホニルハライド部位は、ハロゲン化銅(I)の2,2'−ビピリジン錯体など、原子移動ラジカル重合に用いる触媒(例えば、Chem. Rev. 2001,101,2921−2990に記載の触媒)存在下でラジカルを発生する。
(3)2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシアルキル誘導体部位
2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシアルキル誘導体のような、安定フリーラジカル重合に用いる開始剤を導入すれば、加熱により炭素ラジカルが発生する。
(4)ジアゾニウム塩部位
カーボン材料存在下、アニリン誘導体よりジアゾニウム塩を形成すると、ジアゾニウム塩の分解により炭素ラジカルが発生する。
(5)過酸エステル部位
過酸エステルを加熱すると、脱炭酸反応と共に炭素ラジカルが生成する。
(6)アゾ化合物誘導体部位
アゾ化合物も加熱により分解して炭素ラジカルを生成する。
(7)ヒドロキシル基含有部位
ヒドロキシル基含有部位は、酸性条件下、四価のセリウムイオンと反応して炭素ラジカル、または酸素ラジカルを生成する。
【0048】
カーボンナノチューブへの導入
カーボン材料がカーボンナノチューブの場合は、カーボンナノチューブ表面に存在するカルボキシル基を水素化リチウムアルミニウム等の還元剤でメチロール基に変換し、このヒドロキシル基を反応点として上記カーボンブラックと同様にして導入する方法が挙げられる。
【0049】
触媒粒子の担持方法
本発明の燃料電池用触媒材料は、白金粒子等の触媒金属(電極触媒)の担体として好ましく用いられる。触媒金属を担持する方法としては、熱還元法、スパッタ法、パルスレーザーデポジション法、真空蒸着法などが挙げられる(例えば、国際公開WO2002/054514号パンフレットなど)。
【0050】
本発明において、燃料電池用触媒材料の作製方法としては、カーボン材料にイオン官能基を導入後、触媒金属を担持する方法と、カーボン材料に触媒金属を担持した後にイオン官能基を導入する方法があるが、いずれの方法も好ましく用いられる。また、市販の触媒担持カーボン材料(例えば、白金担持ケッチェンブラック、田中貴金属工業(株)製、または、白金担持XC−72、E−TEK社製など)にイオン官能基を導入することによっても得られる。
【0051】
燃料電池用触媒材料に触媒金属を担持後にイオン官能基を導入する場合、または市販の触媒担持カーボン材料にイオン官能基を導入する場合には、反応を無酸素条件下で行う方法、反応を難燃性溶媒中で行う方法、または反応系中に難燃剤を添加する方法が安全上好ましい。反応を無酸素条件下で行う方法としては、反応を不活性ガス雰囲気下で行う方法が挙げられ、不活性ガスとしてはヘリウム、アルゴン、ネオン、窒素などが挙げられ、アルゴン、窒素が特に好ましい。
【0052】
不燃性溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、水などが挙げられる。これらは、反応試薬の溶解性・反応の温度・溶媒の沸点などを考慮して適宜選択して用いられる。また、これらの溶媒は単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
【0053】
難燃剤としては、ヘキサメチルホスホルアミド、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニル)ホスフェート、ヒドロキノールビス(ジフェニル)ホスフェート、フェニルジキシレニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェートなどのリン酸エステル系の難燃剤が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。これらの難燃剤を添加する割合は反応溶媒に対して5%以上であることが好ましく10%以上であることがさらに好ましく、15%以上であることが特に好ましい。また、上記難燃剤の中で液体のものについては反応溶媒として使用してもよい。
【0054】
また、本発明の燃料電池用触媒材料は、イオン官能基を導入した触媒材料(以後このような触媒材料を触媒材料Aと記載する)のみで構成されていても良いし、上記触媒材料Aと、表面にイオン官能基を有していない触媒材料(以後このような触媒材料を触媒材料Bと記載する)の混合物を用いてもよい。触媒材料Aと触媒材料Bを含む混合物を利用すると、触媒材料Bの犠牲的腐食によって触媒材料Aの腐食を抑制し、耐久性により優れたものが得られる。触媒材料Aと触媒材料Bを含む混合物を利用する場合、触媒材料Aの含有量は、全体の50〜95重量%が好ましく、70〜95重量%がさらに好ましく、80〜95重量%が特に好ましい。
【0055】
本発明の燃料電池用触媒材料は、燃料電池用電極、電極膜接合体(Membrane and Electrode Assembly)(以下「MEA」という)および、該電極膜接合体を用いた燃料電池に用いることができる。
図1は本発明の電極膜接合体の断面概略図の一例を示したものである。MEA10は、固体電解質膜11と、それを挟んで対向するアノード電極12及カソード電極13を備える。ここでいう固体電解質膜はナフィオン(登録商標)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー、側鎖にリン酸基を有するポリ(メタ)アクリレート、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリベンズイミダゾール等の耐熱芳香族高分子、スルホン化ポリスチレン、スルホン化ポリオキセタン、スルホン化ポリイミド、スルホン化ポリフェニレンスルフィド、スルホン化ポリフェニレンオキシド、スルホン化ポリフェニレンの膜が挙げられ、具体的には、特開2002−110174号公報、特開2002−105200号公報、特開2004−10677号公報、特開2003−132908号公報、特開2004−179154号公報、特開2004−175997号公報、特開2004−247182号公報、特開2003−147074号公報、特開2004−234931号公報、特開2002−289222号公報、特開2003−208816号公報に記載の膜が挙げられる。また、これらの膜に加え、下記式(2)で表される繰り返し単位を主鎖構造として含み、かつ、前記主鎖が有する芳香環には、下記式(3)〜(5)より選ばれる少なくとも1つの部分構造が結合しているポリマー(ポリマーA)よりなる膜も好ましく用いられる。以下、ポリマーAについて説明する。
ポリマーAの構造
【化16】

【0056】
【化17】

(上記式(2)中、R13は芳香環を含む2価の基であり、X1は2価の連結基である。式(3)中、B1は単結合または2〜6価の連結基、A2はイオン性官能基を表し、n16は1〜5の整数を表す。式(4)中、B2は単結合または2〜6価の連結基を、Dは少なくとも1つのイオン性官能基を有するラジカル重合性モノマーの重合物を表す。式(5)においてE1は酸素透過性の高い置換基を表す。)
【0057】
式(2)中、R13は芳香環を構成する炭素原子の総数は1〜50が好ましく、1〜30がより好ましく、1〜15がさらに好ましい。また、芳香環上の水素原子は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、置換基(例えば、ハロゲン原子、好ましくはフッ素原子など)で置換されていてもよい。また、R13の芳香環は、ベンゼン環およびベンゼン環が縮環したものからなることが好ましい。
以下にR13の好ましい構造を例示する。これらの中で、(C−1)、(C−2)、(C−4)、(C−5)、(C−8)、(C−12)が好ましく、(C−1)、(C−4)がさらに好ましい。
【0058】
【化18】

【0059】
式(2)中、X1は、−C(R91101)−、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−SO2−からなる群より選ばれる基の1つ以上からなる2価の基を表す。ここで、R91およびR101はそれぞれ、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、イソプロピル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、メトキシエチル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、例えば、ビニル基、アリル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜26、例えばフェニル基、2−ナフチル基)を表し、これらに含まれる水素原子は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、置換基(例えば、ハロゲン原子、好ましくはフッ素原子など)で置換されていてもよい。
91およびR101は、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ネオペンチル基、トリフルオロメチル基、tert−ブチル基、プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、フェニル基が好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ネオペンチル基、トリフルオロメチル基、tert−ブチル基、フェニル基がさらに好ましく、メチル基、トリフルオロメチル基、tert−ブチル基がさらに好ましい。
1の好ましい例としては、−C(tert−ブチル基)2−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−O−、−S−、−CO−、−SO2−が挙げられる。
【0060】
式(2)で表される繰り返し単位としては、ポリエーテルスルホン系化合物、ポリエーテルエーテルスルホン系化合物、ポリエーテルエーテルケトン系化合物、ポリフェニレンスルフィド系化合物、ポリフェニレンエーテル系化合物、ポリスルホン系化合物またはポリエーテルケトン系化合物より構成されていることが好ましい。これらの中でも、酸化耐性に優れるポリエーテルスルホン系化合物、ポリエーテルエーテルスルホン系化合物、ポリスルホン系化合物由来であることが特に好ましい。
【0061】
式(2)で表される繰り返し単位を含む主鎖において、式(2)で表される繰り返し単位で表される繰り返し単位の総数は、2〜1000が好ましく、10〜500がより好ましく、10〜200が特に好ましい(以下、条件「A」ということがある)。
【0062】
以下に、式(2)で表される繰り返し単位の好ましい例を例示するが、本発明はこれらに限定されない。なお、化合物群中、nは各化合物の繰り返し単位数を表し、nの好ましい範囲は、条件「A」に記載の好ましい範囲に該当するよう適宜定められる。
【0063】
【化19】

【0064】
式(3)中、B1は、単結合または、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヘテロ環基、−O−、
【化20】

からなる群から選ばれる1つ以上の組み合わせからなる基が好ましい。
【0065】
ここで、脂肪族炭化水素基は、飽和炭化水素でも不飽和炭化水素でもよく、水素原子は本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、置換基(例えば、ハロゲン原子、好ましくはフッ素原子など)で置換されていてもよい。脂肪族炭化水素基の炭素数は、1〜12が好ましく、1〜6がより好ましい。
芳香族炭化水素基は、環上の水素原子が本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、置換基(例えば、ハロゲン原子、好ましくはフッ素原子など)で置換されていてもよく、ピレニル基、アントラニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェニル基が好ましく、ナフチル基、ビフェニル基、フェニル基がさらに好ましく、フェニル基が特に好ましい。
ヘテロ環基は、環上の水素原子が本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、置換基(例えば、ハロゲン原子、好ましくはフッ素原子など)で置換されていてもよく、ピリジル基、フリル基、チエニル基、トリアジニル基が好ましく、トリアジニル基がさらに好ましい。
1が単結合の場合は、耐熱性の観点から、上述した条件「B」に記載の好ましい条件を満たしている必要がある。
1の好ましい例としては、単結合、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、フェニレン(−Ph−)基、−CH2−O−(CH2n−(nは、整数であり、好ましくは、1〜6の整数である)、−CH2−Ph−、−CH2CH2OCH2CH2−、−(CH2CH2O)2CH2CH2−、−CH2CH=CH−、−CH2CH2CH=CH−、C((CH2) n−)4(nは、それぞれ0以上の整数であり、好ましくは0〜6の整数である)、CH((CH2) n−)3(nは、それぞれ0以上の整数であり、好ましくは0〜6の整数である)、CH3C((CH2) n−)3(nは、それぞれ0以上の整数であり、好ましくは0〜6の整数である)、EtC((CH2) n−)3(nは、それぞれ0以上の整数であり、好ましくは0〜6の整数である)、−C((CH2n−)3(nは、それぞれ0以上の整数であり、好ましくは0〜6の整数である)、−CH((CH2n−)2(nは、それぞれ0以上の整数であり、好ましくは0〜6の整数である)、ならびに、これら(前記基を2以上組み合わせた基を含む)と−CO−、−SO−、−CS−、−SO2−、−O−、
【0066】
【化21】

の1つ以上との組み合わせが挙げられる。
【0067】
式(3)中、A2は、上述のイオン性官能基の記載と同義であり、好ましい範囲も同義である。
式(3)中、n16は、1〜3が好ましい。n16が2以上のとき、それぞれのA2は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
式(3)のポリマー主鎖への導入量は、導入されたイオン性官能基の含量が、0.1meq/g〜7meq/gとなる量であることが好ましく、0.5meq/g〜4meq/gとなる量であることがより好ましく、1meq/g〜3meq/gとなる量であることがさらに好ましい。
以下に、式(3)の好ましい例を例示するが、本発明はこれらに限定されない。
【0068】
【化22】

【0069】
式(4)中、B2は、式(3)のB1と同義であり、好ましい範囲も同義である。
式(4)中、Dが有する、イオン性官能基は、上述のイオン性官能基と同義であり、好ましい範囲も同義である。また、ラジカル重合性モノマーの重合物とは、2以上のラジカル重合性モノマーが重合して得られる重合体をいう。Dの好ましい例としては、下記式(6)で表される繰り返し単位を持つ主鎖を有し、下記式(7)または下記式(8)が側鎖として、主鎖の芳香環に結合した重合物(Y)が挙げられる。B2が3価以上の連結基の場合、Dは複数の箇所において、B2と結合していてもよいし、Dが複数存在していてもよい。以下、重合物(Y)について説明する。
【0070】
重合物(Y)の構造
【化23】

(式(6)中、W11、W12およびW13はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。式(7)中、B3は単結合または2〜6価の連結基を表し、A3はイオン性官能基を表し、n17は1〜5の整数である。式(8)中、E2は酸素透過性の高い置換基を表す。)
【0071】
式(6)中、W11、W12およびW13はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基が好ましい。
11、W12およびW13がハロゲン原子の場合、それぞれ、塩素原子またはフッ素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
11、W12およびW13がアルキル基の場合、それぞれ、直鎖、分岐鎖または環状アルキル基のいずれでもよく、その炭素数は、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜6である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等が挙げられる。
11、W12およびW13がアリール基の場合、それぞれ、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のフェニル基およびナフチル基等が挙げられる。
11、W12およびW13がヘテロ環基の場合、それぞれ、置換もしくは無置換のへテロ6員環(例えばピリジル基、モルホリノ基等)、置換もしくは無置換のヘテロ5員環(フリル基、チオフェン基等)等が好ましい例として挙げられる。
【0072】
式(6)の繰り返し単位数は、2〜2000であることが好ましく、5〜1000であることがさらに好ましく、10〜400であることが特に好ましい。
【0073】
式(7)中、B3は式(3)のB1と同義であり、好ましい範囲も同義である。
3はイオン性官能基を表し、式(3)のA1と同義であり、好ましい範囲も同義である。n17はn16と同義であり、好ましい範囲も同義である。n17が2以上の場合、2以上のA3は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0074】
式(7)のポリマー主鎖への導入量は、導入されたイオン性官能基の含量が、0.1meq/g〜7meq/gとなる量であることが好ましく、0.5meq/g〜4meq/gとなる量であることがより好ましく、1meq/g〜3meq/gとなる量であることがさらに好ましい。
【0075】
式(8)中、E2は酸素透過性の高い置換基であり、式(5)のE1と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0076】
重合物(Y)の重量平均分子量は、200〜10万であることが好ましく、500〜5万であることがさらに好ましく、1500〜2万であることが特に好ましい。
【0077】
Dの主鎖への導入量としては、導入されたイオン性官能基の含量が、0.1meq/g〜7meq/gとなる量であることが好ましく、0.5meq/g〜4meq/gとなる量であることがさらに好ましく、1meq/g〜3meq/gとなる量であることが特に好ましい。
【0078】
式(5)中、E1は酸素透過性の高い置換基を表す。ここで、酸素透過性の高い置換基とは、置換基のパーマコール値が負である置換基のことをいう。置換基のパーマコール値については、M.Salame著 ACS Polymer Preprints 8,137(1967)などに記載されている。E1のパーマコール値は−10/N以下であることが好ましく、−20/N以下であることがさらに好ましく、−50/N以下であることが特に好ましい。ここで、Nはポリマー主鎖を構成する構成単位の総数を表し、上記文献に記載のNと同義である。より具体的には、E1は3つ以上の炭素原子により構成されているものが好ましい。また、E1は、低極性の置換基であることが好ましく、ケイ素原子、フッ素原子を含むものが特に好ましい。2つの繰り返し単位上に存在するE1の総炭素数は、3〜60が好ましく、5〜40がさらに好ましく、6〜30が特に好ましい。
1は、例えば、アルキル基(n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、ベンジル基、3−スルホプロピル基、4−スルホブチル基、カルボキシメチル基、カルボキシペンチル基)、アルコキシ基(エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基)、アルケニル基(アリル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基)、アリール基(フェニル基、2−クロロフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−メチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ニトロフェニル基)、ヘテロ環基(ピリジル基、チエニル基、フリル基、チアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基)、アルキニル基(2−プロピニル基、1,3−ブタジイニル基、2−フェニルエチニル基)、ならびにこれらとメチロール基の1つ以上の組み合わせであり、好ましくはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、メチルオキシアルキル基、メチルオキシアルケニル基、メチルオキシシクロアルキル基であり、より好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、メチルオキシアルキル基、メチルオキシシクロアルキル基であり、これらの置換基のメチレン鎖中にエーテル構造またはケイ素原子が含まれる物(エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、ヘキシルオキシメチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリブチルシリル基、3−トリメチルシリルプロピル基、2−トリメチルシリルエチル基、6−トリエチルシリルヘキシル基、トリエチルシリルプロピル基)はさらに好ましい。
これらの置換基は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20、例えば、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、アニリノ基)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、例えば、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、例えば、メトキシ基、ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜26、例えば、フェノキシ基、1−ナフトキシ基)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、例えば、フェニルチオ基、4−クロロフェニルチオ基)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、例えば、メタンスルホニル基、ブタンスルホニル基)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜20、例えば、ベンゼンスルホニル基、パラトルエンンスルホニル基)が挙げられる。
【0079】
ポリマーAの重量平均分子量は、500〜20万であることが好ましく、1000〜10万であることがさらに好ましく、1500〜5万であることが特に好ましい。
【0080】
アノード電極12とカソード電極13は、多孔質導電シート(例えば、カーボンペーパー)12a、13aと触媒層12b、13bからなる。触媒層12b、13bは、本発明の触媒膜を用いることができる。ここで、本発明の触媒膜は、例えば、白金粒子等の触媒金属を担持した本発明の燃料電池用触媒材料を、固体電解質に分散させた分散物からなる。
【0081】
電極の作製方法について説明する。ナフィオンに代表される固体電解質を溶媒に溶解し、触媒金属を担持した本発明の燃料電池用触媒材料と混合した分散液を分散する。分散液の溶媒は複素環化合物(3−メチル−2−オキサゾリジノン、N−メチルピロリドン等)、環状エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、鎖状エーテル類(ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等)、アルコール類(メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等)、多価アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等)、ニトリル化合物(アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等)、非極性溶媒(トルエン、キシレン等)、塩素系溶媒(メチレンクロリド、エチレンクロリド等)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセタミド等)、水等が好ましく用いられ、この中でも複素環化合物、アルコール類、多価アルコール類、アミド類、水が好ましく用いられる。
【0082】
分散方法は、攪拌による方法でも良いが、超音波分散、ボールミル等を用いることもできる。得られた分散液はカーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法等の塗布法を用いて塗布することができる。
【0083】
分散液の塗布について説明する。塗布工程においては、上記分散液を用いて、押出成型によって製膜してもよいし、これらの分散液をキャストまたは塗布して製膜してもよい。この場合の支持体は特に限定されないが、好ましい例としては、ガラス基板、金属基板、高分子フィルム、反射板等を挙げることができる。高分子フィルムとしては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系高分子フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のエステル系高分子フィルム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系高分子フィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられる。塗布方式は公知の方法でよく、例えば、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法等を用いることができる。特に、支持体として導電性多孔質体(カーボンペーパー、カーボンクロス)を用いると直接触媒電極が作製できる。
【0084】
これらの操作はカレンダーロール、キャストロール等のロールまたはTダイを用いたフィルム成形機で行なうこともでき、プレス機器を用いたプレス成形とすることもできる。さらに延伸工程を追加し、膜厚制御、膜特性改良を行ってもよい。
【0085】
塗布工程の乾燥温度は乾燥速度に関連し、材料の性質に応じて選択することができる。好ましくは−20℃〜150℃であり、より好ましくは20℃〜120℃であり、さらに好ましくは50℃〜100℃である。乾燥時間は短時間であるほうが生産性の観点から好ましいが、あまり短時間であると気泡、表面の凹凸等の欠陥の原因となる。このため、乾燥時間は1分〜48時間が好ましく、5分〜10時間がより好ましく、10分〜5時間がさらに好ましい。また湿度の制御も重要であり、25〜100%RHが好ましく、50〜95%RHがさらに好ましい。
【0086】
塗布工程における塗布液(分散液)中には金属イオンの含量が少ない物が好ましく、特に遷移金属イオン、中でも鉄イオン、ニッケルイオン、コバルトイオンは少ない物が好ましい。遷移金属イオンの含量は500ppm以下が好ましく、100ppm以下がより好ましい。従って、前述の工程で使用する溶媒も、これらのイオンの含量の低い物が好ましい。
【0087】
さらに塗布工程を経た後に表面処理を行なってもよい。表面処理としては、粗面処理、表面切削処理、除去処理、コーティング処理を行なってもよく、これらは固体電解質膜あるいは多孔質導電体との密着を改良できることがある。
【0088】
本発明の電極膜接合体が有する触媒層の厚さは5〜200μmが好ましく、10〜100μmが特に好ましい。
【0089】
触媒層12b、13bを固体電解質膜11に密着させるために、多孔質導電シート12a、13aに触媒層12b、13bを塗布(塗設)したものを、固体電解質膜11にホットプレス法(好ましくは120〜130℃、2〜100 kg/cm2)で圧着するか、適当な支持体に触媒層12b、13bを塗設したものを、固体電解質11に転写しながら圧着した後、多孔質導電シート12a、13aで挟み込む方法を一般が好ましく用いられる。
【0090】
図2は燃料電池構造の一例を示す。燃料電池はMEA10と、MEA10を挟持する一対のセパレータ21、22と、セパレータ21、22に取り付けられたステンレスネットからなる集電体17およびパッキン14とを有する。アノード極側のセパレータ21にはアノード極側開口部15が設けられ、カソード極側のセパレータ22にはカソード極側開口16設けられている。アノード極側開口部15からは、水素、アルコール類(メタノール等)等のガス燃料またはアルコール水溶液等の液体燃料が供給され、カソード極側開口部16からは、酸素ガス、空気等の酸化剤ガスが供給される。
【0091】
アノード電極およびカソード電極には、本発明の燃料電池用触媒材料が用いられる。通常用いられる活性金属の粒子サイズは、好ましくは、2〜10nmの範囲であり、粒子サイズを小さくすることにより、単位質量当りの表面積を大きくでき、活性がより高まり有利であり、また、ある程度大きくすることにより、凝集して分散しにくくなるのをより効果的に抑止できる。
【0092】
水素−酸素系燃料電池における活性分極はアノード極(水素極)に比べ、カソード極(空気極)が大きい。これは、アノード極に比べ、カソード極の反応(酸素の還元)が遅いためである。酸素極の活性向上を目的として、Pt−Cr、Pt−Ni、Pt−Co、Pt−Cu、Pt−Feなどのさまざまな白金基二元金属を好ましく用いることができる。アノード燃料にメタノール水溶液を用いる直接メタノール燃料電池においては、メタノールの酸化過程で生じるCOによる触媒被毒を抑制することが重要である。この目的のために、Pt−Ru、Pt−Fe、Pt−Ni、Pt−Co、Pt−Moなどの白金基二元金属、Pt−Ru−Mo、Pt−Ru−W、Pt−Ru−Co、Pt−Ru−Fe、Pt−Ru−Ni、Pt−Ru−Cu、Pt−Ru−Sn、Pt−Ru−Auなどの白金基三元金属を好ましく用いることができる。
【0093】
活性金属を担持させるカーボン材料としては、本発明の燃料電池用触媒材料が好ましく用いられる。
【0094】
触媒層の機能は、(1)燃料を活性金属に輸送すること、(2)燃料の酸化(アノード極)、還元(カソード極)反応の場を提供すること、(3)酸化還元により生じた電子を集電体に伝達すること、(4)反応により生じたプロトンを固体電解質に輸送すること、である。(1)のために触媒層は、液体および気体燃料が奥まで透過できる多孔質性であることが必要である。(2)は上記で述べた活性金属触媒が、(3)は同じく本発明の燃料電池用触媒材料が担う。(4)の機能は本発明の燃料電池用触媒材料が担うが、充分な機能を果たすためには、触媒層に固体電解質(バインダー)を混在させることが好ましい。
【0095】
バインダーとしては、プロトン供与基を持った固体であれば制限はないが、ナフィオン(登録商標)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー、側鎖にリン酸基を有するポリ(メタ)アクリレート、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリベンズイミダゾール等の耐熱芳香族高分子、スルホン化ポリスチレン、スルホン化ポリオキセタン、スルホン化ポリイミド、スルホン化ポリフェニレンスルフィド、スルホン化ポリフェニレンオキシド、スルホン化ポリフェニレンなどが挙げられ、具体的には、特開2002−110174号公報、特開2002−105200号公報、特開2004−10677号公報、特開2003−132908号公報、特開2004−179154号公報、特開2004−175997号公報、特開2004−247182号公報、特開2003−147074号公報、特開2004−234931号公報、特開2002−289222号公報、特開2003−208816号公報に記載のポリマーが挙げられる。これらの中でも、ナフィオン、特開2002−110174号公報に記載のポリマーおよび、前記式(2)で表される繰り返し単位を主鎖構造として含み、かつ、前記主鎖が有する芳香環には、前記式(3)〜(5)より選ばれる少なくとも1つの部分構造が結合しているポリマーが特に好ましい。固体電解質膜11と同種の材料を用いると、固体電解質膜11と触媒層との電気化学的密着性が高まりより有利である。
【0096】
活性金属の使用量は、0.03〜10mg/cm2の範囲が電池出力と経済性の観点から適している。活性金属を担持する燃料電池用触媒材料の量は、活性金属の質量に対して、1〜10倍が適している。固体電解質の量は、本発明の燃料電池用触媒材料の質量に対して、0.1〜0.7倍が好ましく、0.3〜3倍がより好ましい。
【0097】
電極基材、透過層、あるいは裏打ち材とも呼ばれ、集電機能および水がたまりガスの透過が悪化するのを防ぐ役割を担う。通常は、カーボンペーパーやカーボン布を使用し、撥水化のためにPTFE処理を施したものを使用することもできる。
【0098】
MEAの作製には、次の4つの方法が好ましい。
(1)触媒層塗布法:本発明の燃料電池用触媒材料、固体電解質および溶媒を含む触媒層塗布液(インク)を固体電解質膜の両側に直接塗布し、多孔質導電シートを(熱)圧着して5層構成のMEAを作製する。
(2)多孔質導電シート塗布法:触媒層塗布液を多孔質導電シート表面に塗布し、触媒層を形成させた後、固体電解質膜と圧着し、5層構成のMEAを作製する。
(3)Decal法:触媒層塗布液をPTFE上に塗布し、触媒層を形成させた後、固体電解質膜に触媒層のみを転写させ3層のMEAを形成させ、多孔質導電シートを圧着し、5層構成のMEAを作製する。
(4)触媒後担持法:白金未担持の本発明の燃料電池用触媒材料を固体電解質とともに混合した触媒層塗布液を固体電解質膜、多孔質導電シートまたはPTFE上に塗布・製膜した後、白金イオンを当該固体電解質膜に含浸させ、白金粒子を膜中で還元析出させて触媒層を形成させる。触媒層を形成させた後は、上記(1)〜(3)の方法にてMEAを作製する。
【0099】
本発明の燃料電池用触媒材料を用いる燃料電池の燃料として用いることのできるのは、アノード燃料としては、水素、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなど)、エーテル類(ジメチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン、テトラヒドロフランなど)、ギ酸、水素化ホウ素錯体、アスコルビン酸などが挙げられ、水素、メタノールが特に好ましい。カソード燃料としては、酸素(大気中の酸素も含む)、過酸化水素などが挙げられる。
【0100】
上記アノード燃料およびカソード燃料を、それぞれの触媒層に供給する方法には、(1)ポンプ等の補機を用いて強制循環させる方法(アクティブ型)と、(2)補機を用いない方法(例えば、液体の場合には毛管現象や自然落下により、気体の場合には大気に触媒層を晒し供給するパッシブ型)の2通りがあり、これらを組み合わせることも可能である。高出力が得られるアクティブ型が好ましい。
【0101】
燃料電池の単セル電圧は一般的に1V以下であるので、負荷の必要電圧に合わせて、単セルを直列スタッキングして用いる。スタッキングの方法としては、単セルを平面上に並べる「平面スタッキング」および、単セルを、両側に燃料流路の形成されたセパレータを介して積み重ねる「バイポーラースタッキング」が用いられる。後者は、熱効率が高く、電池がコンパクトになるため燃料電池に適している。この他にも、MEMS技術を応用し、シリコンウェハー上に微細加工を施し、スタッキングする方法も提案されている。
【0102】
燃料電池は、運輸用、家庭用、携帯機器用など様々な利用が考えられているが、例えば、好ましく適用できる運輸用途としては、自動車(乗用車、貨物車、二輪車、個人用ビーグル)、船舶、家庭用としてはコジェネシステム、掃除機、ロボット、携帯機器としては携帯電話、ノートパソコン、電子スチルカメラ、PDA、ビデオカメラ、携帯ゲーム機、などが挙げられる。さらに、ポータブル発電機、野外照明機器などにも用いることができる。また、産業用や家庭用などのロボットあるいはその他の玩具の電源としても好ましく用いることができる。さらには、これらの機器に搭載された2次電池、キャパシタの充電用電源としても有用である。
【実施例】
【0103】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0104】
実施例1 イオン性官能基を導入した燃料電池用触媒材料(触媒担持カーボン材料)の作製
[カーボン材料D−1の作製]
カーボン材料として、カーボンブラック(商品名:カーボンECP、ケッチェン・ブラックインターナショナル社製)を用いた。以下のスキームに従って反応を行った。下記スキーム中のCBは、カーボンブラックの主要部分を示し、該主要部分に結合した芳香環を含めたものが、本実施例で採用するカーボンブラックである(以下、CBについて同じ)。
【0105】
【化24】

【0106】
上記カーボンブラック2.0gに、30mLの1,1,2,2−テトラクロロエタン、2.1gのプロパンスルトンおよび4.55gの塩化アルミニウムを加え、窒素気流下で攪拌しながら24時間還流した。反応後、生成物を含水メタノール、次いで1規定の塩酸水溶液で洗浄し、減圧乾燥して、(A−6)で表される連結基およびイオン官能基を導入したカーボン材料c−1を2.0g得た。元素分析より1gのカーボン材料c−1あたり、0.12mmolのスルホ基が導入されたことがわかった。
次にカーボン材料c−1に対し、Journal of Physical Chemistry B 2003, 107, 6292−6299に記載の方法に従い、白金触媒の担持を行った。すなわち、1.0gのカーボン材料c−1に純水100mLを加え、30分超音波分散を行った。塩化白金酸六水和物を、溶液1mL中に含まれる白金重量が7.4mgになるよう純水に溶解し、この溶液15mLをカーボン分散液に加え、2.5Mの水酸化ナトリウム水溶液で溶液のpHを11に調整した。その後、溶液を窒素気流下85℃で4時間攪拌した。次に37%ホルムアルデヒド溶液を1.5mL加え、窒素気流下85℃で3時間攪拌した。反応後、反応液を濾別し、得られた固体を純水で洗浄後、0.5Mの硫酸水溶液中、室温で30分攪拌した。硫酸水溶液を濾別し、得られた固体を純水で洗浄後、40℃で減圧乾燥することでイオン官能基の導入された白金担持カーボン材料D−1を1.1g得た。元素分析の結果よりカーボン材料D−1中の白金量は9.8重量%、X線回折の結果より得られた白金粒子サイズは3.9nmであった。
【0107】
[カーボン材料D−2の作製]
カーボン材料として、カーボンブラック(商品名:カーボンECP、ケッチェン・ブラックインターナショナル社製)を用いた。以下のスキームに従って反応を行った。
【0108】
【化25】

【0109】
10.0gの上記カーボンブラックに、180mLのN,N−ジメチルホルムアミド、60gジブロモペンタンおよび24gの炭酸カリウムを加え、窒素気流下で攪拌しながら130℃で24時間反応した。反応後、生成物を水、次いでジクロロメタンで洗浄し、減圧乾燥して、ブロモペンチル基を導入したカーボン材料を19.5g得た。元素分析より1gのカーボン材料あたり、0.4mmolのブロモペンチル基が導入されたことがわかった。次に、ブロモペンチル基を導入したカーボン材料1.5gに、15gの亜硫酸ナトリウムと20mLの水を加え、攪拌しながら24時間還流した。反応後、生成物を水で洗浄し、減圧乾燥して、スルホペンチル基の導入されたカーボン材料を1.5g得た。元素分析より1gのカーボン材料あたり、0.12mmolのスルホペンチル基が導入されたことがわかった。次に、[カーボン材料D−1の作製]と同様の手法により白金を担持し、(A−48)で表される連結基およびイオン官能基を導入した白金担持カーボン材料D−2を得た。元素分析の結果よりカーボン材料D−1中の白金量は9.9重量%、X線回折の結果より得られた白金粒子サイズは3.7nmであった。
【0110】
[カーボン材料D−3の作製]
カーボン材料として、カーボンブラック(商品名:カーボンECP、ケッチェン・ブラックインターナショナル社製)を用いた。以下のスキームに従って反応を行った。
【0111】
【化26】

【0112】
6.0gの上記カーボンブラック、90mLのN−メチル−2−ピロリドン、19.2gの四臭化ペンタエリスリチルおよび6.5gのN,N−ジイソプロピルエチルアミンを加え、窒素気流下で攪拌しながら120℃で24時間反応した。反応後、生成物を水、次いでジクロロメタンで洗浄し、減圧乾燥して、トリブロモアルキル基を導入したカーボン材料を6.0g得た。元素分析よりカーボン材料1gあたり、0.81mmolのブロモ基が導入されたことがわかった。次に、トリブロモアルキル基を導入したカーボン材料2.0gに、6.0gの亜硫酸ナトリウムと40mLの水を加え、攪拌しながら29時間還流した。反応後、生成物を水で洗浄し、減圧乾燥して、スルホ基の導入されたカーボン材料を1.9g得た。元素分析より1gのカーボン材料あたり、0.18mmolのスルホ基が導入されたことがわかった。次に、[カーボン材料D−1の作製]と同様の手法により白金を担持し、(A−76)で表される連結基およびイオン官能基を導入した白金担持カーボン材料D−3を得た。元素分析の結果よりカーボン材料D−3中の白金量は10.0重量%、X線回折の結果より得られた白金粒子サイズは4.1nmであった。
【0113】
[カーボン材料D−4の作製]
カーボン材料として、カーボンブラック(商品名:カーボンECP、ケッチェン・ブラックインターナショナル社製)を用いた。以下のスキームに従って反応を行った。
【0114】
【化27】

【0115】
上記カーボン材料D−2と同様にしてブロモペンチル基を導入したカーボン材料を作製した。このカーボン材料2.0gに、40mLのN,N−ジメチルホルムアミド、1.5gのフロログルシノールおよび1.1gの炭酸カリウムを加え、窒素気流下で攪拌しながら120℃で30時間反応した。反応後、生成物を水、N,N−ジメチルホルムアミド、次いでメタノールで洗浄し、減圧乾燥してレゾルシノール誘導体を導入したカーボン材料を2.0g得た。元素分析より、カーボン材料1gあたり、0.3mmolのレゾルシノール誘導体が導入されたことがわかった。次に、レゾルシノール誘導体を導入したカーボン材料1.5gに、30mLのエタノール、0.1gの水酸化リチウムおよび1.2gのプロパンスルトンを加え、攪拌しながら室温で24時間反応した。反応後、生成物を水、次いでメタノールで洗浄し、減圧乾燥して、スルホ基の導入されたカーボン材料を1.4g得た。元素分析より1gのカーボン材料あたり、0.45mmolのスルホ基が導入されたことがわかった。次に、[カーボン材料D−1の作製]と同様の手法により白金を担持し、(A−73)で表される連結基およびイオン官能基を導入した白金担持カーボン材料D−4を得た。元素分析の結果よりカーボン材料D−4中の白金量は9.9重量%、X線回折の結果より得られた白金粒子サイズは4.0nmであった。
【0116】
[カーボン材料D−5の作製]
・4−(3−スルホプロピルオキシ)アニリンの合成
10.5gのp−アセトアミドフェノールに、70mLのエタノール、1.7gの水酸化リチウム、10.2gのプロパンスルトンを加え、室温で7時間攪拌した。反応後、反応液を濾別し、得られた固体をエタノールで洗浄後、減圧乾燥した。この固体に、2規定の塩酸水溶液を60mL加え、8時間還流した。反応後、反応液を濾別し、得られた個体を水で洗浄後、減圧乾燥することで、4−(3−スルホプロピルオキシ)アニリンが13.7g得られた。
・カーボン材料D−5の合成
カーボン材料として、多層のカーボンナノチューブを用い、以下のスキームに従って反応を行った。下記スキーム中のCNTは、カーボンナノチューブの主要部分を示し、該主要部分に結合した環を含めたものが、本実施例で採用するカーボンナノチューブである(以下、CNTについて同じ)。
【0117】
【化28】

【0118】
1.5gの多層カーボンナノチューブを4規定の硝酸および硫酸の混合液30mL中に入れ、超音波処理を1時間行い、攪拌しながら1時間還流した。反応後、生成物を水で洗浄し、減圧乾燥して酸化処理されたカーボンナノチューブを得た。
次に、4.0gの4−(3−スルホプロピルオキシ)アニリンに、1規定の塩酸水溶液60mL、0.9gの亜硝酸ナトリウムを加え、窒素気流下0℃で2時間攪拌した。その後、酸化処理を行ったカーボンナノチューブ1.2gを反応液中に加え、窒素気流下65℃で4.5時間攪拌した。その後、反応液を濾別し、水で洗浄後、減圧乾燥して、スルホ基の導入されたカーボンナノチューブを1.1g得た。元素分析より1gのカーボン材料あたり、0.38mmolのスルホ基が導入されたことがわかった。次に、[カーボン材料D−1の作製]と同様の手法により白金を担持し、(A−94)で表される連結基およびイオン官能基を導入した白金担持カーボン材料D−5を得た。元素分析の結果よりカーボン材料D−5中の白金量は9.9重量%、X線回折の結果より得られた白金粒子サイズは4.5nmであった。
【0119】
[カーボン材料D−6の作製]
カーボン材料として、カーボンブラック(商品名:デンカブラックHS−100、電気化学工業社製)を用いた。以下のスキームに従って反応を行った。下記スキーム中の(a)および(b)はそれぞれ、反応に関与するカーボンブラックの主要部分を示し、該主要部分に結合した芳香環を含めたものが、本実施例で採用するカーボンブラックである。
【0120】
【化29】

【0121】
3.0gの4−(3−スルホプロピルオキシ)アニリンに、1規定の塩酸水溶液30mL、0.9gの亜硝酸ナトリウムを加え、窒素気流下0℃で1時間攪拌した。その後、上記カーボンブラック2.0gを反応液中に加え、窒素気流下70℃で4時間攪拌した。その後、反応液を濾別し、水で洗浄後、減圧乾燥して、スルホ基の導入されたカーボン材料を1.9g得た。元素分析より1gのカーボン材料あたり、0.51mmolのスルホ基が導入されたことがわかった。次に、[カーボン材料D−1の作製]と同様の手法により白金を担持し、(A−94)で表される連結基およびイオン官能基を導入した白金担持カーボン材料D−6を得た。元素分析の結果よりカーボン材料D−6中の白金量は10.0重量%、X線回折の結果より得られた白金粒子サイズは3.4nmであった。
【0122】
[カーボン材料D−7の作製]
カーボン材料として、カーボンブラック(商品名:カーボンECP、ケッチェン・ブラックインターナショナル社製)を用い、以下のスキームに従って反応を行った。
【0123】
【化30】

【0124】
1.2gの上記カーボンブラックに、1Mの硫酸水溶液を加えて30分超音波分散を行った。次に、1.6gの3−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム塩の1M硫酸水溶液(10mL)、および6.32gの硫酸四アンモニウムセリウム二水和物の1M硫酸水溶液(40mL)を加え、窒素気流下40℃で6時間攪拌した。反応液を濾別し、水で洗浄後、減圧乾燥して、スルホ基の導入されたカーボン材料を1.2g得た。元素分析より1gのカーボン材料あたり、0.19mmolのスルホ基が導入されたことがわかった。次に、[カーボン材料D−1の作製]と同様の手法により白金を担持し、(A−90)で表される連結基およびイオン官能基を導入した白金担持カーボン材料D−7を得た。元素分析の結果よりカーボン材料D−7中の白金量は9.8重量%、X線回折の結果より得られた白金粒子サイズは3.5nmであった。
【0125】
[カーボン材料D−8の作製]
カーボン材料D−2と後述するカーボン材料R−1とを、重量比でD−2:R−1=4:1の比で混合することにより、カーボン材料D−8が得られた。
【0126】
[カーボン材料D−9の作製]
カーボン材料D−6と後述するカーボン材料R−1とを、重量比でD−6:R−1=3:1の比で混合することにより、カーボン材料D−9が得られた。
【0127】
比較例1
[カーボン材料 R−1の作製]
カーボン材料として、カーボンブラック(商品名:カーボンECP、ケッチェン・ブラックインターナショナル社製)を用い、[カーボン材料D−1の作製]と同様の手法により白金を担持した。元素分析の結果よりカーボン材料中の白金量は10.0重量%、X線回折の結果より得られた白金粒子サイズは3.9nmであった。
【0128】
実施例2 固体電解質の作製
[固体電解質P−1の作製]
以下のスキームに従って行った。
【化31】

【0129】
ポリスルホン(アルドリッチ社製、数平均分子量〜26000)11gを1,1,2,2−テトラクロロエタン200mLに溶解し、塩化スズ(IV)を0.15mL加えたクロロメチルメチルエーテル18.75mLを加え、窒素置換下、110℃にて3時間攪拌した。
その後、メタノール3mLを加えて反応を停止し、室温まで放冷後、反応液を大量のメタノール中に注ぎ、ポリマーを沈殿させた。沈殿をメタノールで洗浄後、減圧乾燥し、クロロメチル化ポリスルホンを9.3g得た。1H−NMR測定のHの積分値より、繰返し単位当りのクロロメチル基数は約1.0個であった。
次に、4.6gのカリウム−tert−ブトキシド、6.6gの3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウムに、100mLのN,N−ジメチルホルムアミドを加え、窒素気流下80℃にて10分間攪拌した。上記クロロメチル化ポリスルホン5gをN,N−ジメチルホルムアミドに溶解し、反応液に滴下した。窒素気流下80℃にて5時間反応後、室温まで放冷した。その後、吸引濾過を行い沈殿部と濾液に分け、沈殿部に200mLの水を加えて室温にて2時間攪拌した。その後、吸引濾過を行い、沈殿部を減圧乾燥し、スルホ基の導入された固体電解質P−1を4.8g得た。1H−NMR測定(DMSO−d6溶媒)のHの積分値より、繰返し単位当りのメルカプトプロパンスルホン酸基数は約1.0個であった。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)測定(測定溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド)から求めた重量平均分子量(Mw)は185,000(ポリスチレン換算)、分子量分布(Mw/Mn)は5.7であった。
【0130】
[固体電解質P−2の作製]
・4−(3−スルホプロピルオキシ)スチレンリチウム塩の合成
19.0gの酢酸4−ビニルフェニルに、120mLのエタノール、5.6gの水酸化リチウムを加え、0℃にて2時間攪拌した。次いで20gのプロパンスルトンを加え、室温で6時間攪拌した。反応後、反応液を濾別し、得られた固体をエタノールで洗浄した。その後、メタノールで再結晶を行うことで、23gの4−(3−スルホプロピルオキシ)スチレンリチウム塩が得られた。
・固体電解質P−2の合成
以下のスキームに従って行った。
【化32】

【0131】
5.0gの前記ポリスルホン、75μLの塩化スズ、7.3mLのクロロメチルメチルエーテル、50mLの1,1,2,2−テトラクロロエタンを加え、窒素気流下110℃で6時間攪拌した。反応液を大量のエタノール中に注ぐと沈殿が得られた。上澄み液を除いて沈殿をエタノールで洗浄し、減圧乾燥することでクロロメチル化ポリスルホンが4.8g得られた。1H−NMR測定のHの積分値より、繰返し単位当りのクロロメチル基数は約1.2個であった。
次に、2.0gのクロロメチル化ポリスルホンに、946mgの塩化銅(I)、2.99gの2,2'−ビピリジン、30mLのN−メチル−2−ピロリドン、11.9gの4−(3−スルホプロピルオキシ)スチレンリチウム塩を加え、窒素気流下、140℃の油浴中で28時間攪拌した。反応液を室温まで冷却後、大量のアセトニトリル中に注ぐと沈殿を生じた。上澄みを除去して沈殿をアセトニトリルで洗浄後、N−メチル−2−ピロリドンに溶解した。この溶液を大量の水中に注ぐと固体が析出し、遠心沈降により上澄みを除去し、沈殿を1規定の塩酸水溶液に浸漬した。その後、沈殿を水で洗浄し、減圧乾燥することで固体電解質P−2を2.2g得た。1H−NMR(DMSO−d6溶媒)測定の結果、δ6.1ppmに側鎖のビニレン基に基づくシグナル、δ4.0ppm、δ2.4−2.6ppm、δ2.0ppmに側鎖のプロピレン基に基づくシグナルが観測された。また、δ6.1ppmのシグナルの積分値と、δ4.0ppmのシグナルの積分値との比から、側鎖ポリスチレンの繰り返し単位数は、平均1.3であることがわかった。GPC測定(測定溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド)から求めたMwは337,000、Mw/Mnは4.7であった。
【0132】
[固体電解質P−3の作製]
・3,3’−ジスルホー4,4’−ジクロロジフェニルスルホンの合成
Journal of Membrane Science 239(2004)119に従い、窒素雰囲気下、4、4'−ジクロロジフェニルスルホン56.86gに発煙硫酸120ml加え溶解し、110℃で6時間攪拌した。室温まで冷却し、氷水800mlに加え360gのNaClを加え塩析した。濾過した後、水800mlで溶解し、2規定の水酸化ナトリウム水溶液でpH6〜7まで中和した。さらにNaCl200g加え、濾過した後、メタノール/水=7/3の水溶液で再結晶することで、52.6gの3,3'−ジスルホー4,4'−ジクロロジフェニルスルホンを合成した。
【0133】
・3,3'−ビス(トリエチルシリルプロピル)ビスフェノールAの合成
公知の方法に従い、窒素雰囲気下、アルドリッチ社製の2、2’−ジアリルビスフェノールA 24.67g(80mmol)をトルエン150mlに溶解し、0℃でトリエチルシラン28ml(175mmol)と塩化白金酸250mgのベンゾニトリル溶液4mlを加え、室温1時間ハイドロシリレーションを行った。反応液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製することで、24.7gの3,3'−ビス(トリエチルシリルプロピル)ビスフェノールAを合成した。
・固体電解質P−3の合成
以下のスキームに従って行った。
N−メチル−2−ピロリドン:トルエン=4:1の混合液(40mL)に、3,3’−ジスルホー4,4’−ジクロロジフェニルスルホン0.7897g(2.75mmol):4,4'−ジクロロジフェニルスルホン1.3509g(2.75mmol):3,3'−ビス(トリエチルシリルプロピル)ビスフェノールA 2.9754g(5.5mmol)=0.5:0.5:1の比率で加え、溶解した。0.97gの炭酸カリウムを加え、窒素気流下180℃で4時間攪拌した。反応後、室温に放冷し、反応液を大量のアセトニトリル中に注ぐと沈殿が得られた。得られた沈殿を水で洗浄し、N−メチル−2−ピロリドンに溶解した。この溶液を大量の水中に注ぎ、濾過により得られた沈殿を1規定の塩酸水溶液中に一晩浸漬した。その後、沈殿を水で洗浄し、減圧乾燥することにより固体電解質P−3が3.1g得られた。GPC測定から求めたMwは59,000(ポリスチレン換算)Mw/Mnは3.4であった。
【0134】
実施例3 固体電解質膜の作製
実施例2にて得られた固体電解質P−1約5gをジメチルホルムアミド(DMF)40mlに溶解させドープ液を調整した。このドープ液をガラス板上に流し、バーコーターを用いて引き延ばした。その後、65℃にて15時間乾燥させたのち、ガラス版から膜を剥がし、1mol/l HClに一晩浸漬させ塩交換を行い、イオン交換水にて洗浄後、一晩風乾し、固体電解質膜を得た。
【0135】
実施例4 MEAの作製
[作製方法1]
前記実施例1に記載の触媒担持カーボンを用い、燃料電池を作製した。それぞれ、カーボン材料2gと、バインダーとしてのナフィオン溶液(5%アルコール水溶液)15gを混合し、超音波分散器で30分間分散させた。得られた分散物をカーボンペーパー(厚さ350μm)上に塗設し、乾燥した後、直径9mmの円形に打ち抜き、触媒膜を作製した。
固体電解質膜としてはナフィオン1135膜を用い、ナフィオン1135膜の両面に上記で得られた触媒膜を塗布面がナフィオン1135膜に接するように張り合わせ、ホットプレスにより熱圧着し、MEAを作製した。
【0136】
[作製方法2]
作製方法1において、固体電解質膜およびバインダーを、実施例2で作製した固体電解質および実施例3で作製した固体電解質膜に置き換えた他は同様にしてMEAを作製した。
【0137】
実施例5 燃料電池評価
実施例4で得られたMEAを図2に示す燃料電池にセットし、アノード側開口部15に水素ガスをフローした。この時カソード側開口部16は大気をフローした。アノード電極12とカソード電極13間に、ポテンシオスタットを接続し700mVにおける電流値を記録した。結果を表1に示した。
【表1】

【0138】
本発明のカーボン材料は、高い出力を有していることが認められた。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】電極膜接合体の構成を示す概略断面図である。
【図2】本発明の燃料電池の構造の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0140】
10・・・燃料電池電極膜接合体(MEA)
11・・・固体電解質膜
12・・・アノード電極
12a・・・アノード極多孔質導電シート
12b・・・アノード極触媒層
13・・・カソード電極
13a・・・カソード極多孔質導電シート
13b・・・カソード極触媒層
14・・・パッキン
15・・・アノード極側開口部
16・・・カソード極側開口部
17・・・集電体
21,22・・・セパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボン材料を含み、該カーボン材料の表面に、耐加溶媒分解性および耐熱性を有する連結基を介して、少なくとも1つのイオン性官能基が連結している、燃料電池用触媒材料。
【請求項2】
前記連結基と前記カーボン材料が、酸素原子を介して連結している、請求項1に記載の燃料電池用触媒材料。
【請求項3】
前記連結基と前記カーボン材料が、炭素原子を介して連結している、請求項1に記載の燃料電池用触媒材料。
【請求項4】
触媒金属を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池用触媒材料。
【請求項5】
前記カーボン材料が、カーボンブラックまたはカーボンナノチューブである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池用触媒材料。
【請求項6】
前記耐加溶媒分解性および耐熱性を有する連結基および前記イオン性官能基からなる構造が、下記一般式(1)で表される構造である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池用触媒材料。
一般式(1)
【化1】

(一般式(1)中、R11およびR12は、それぞれ、2〜4価の連結基を表し、Ar11は芳香族炭化水素基または複素環基を含む2〜6価の連結基を表し、A1はイオン性官能基を表す。n11、n12およびn13は、それぞれ、0以上の整数であり、n11とn12とn13の和は1以上の整数である。n14は1〜10の整数、n15は1〜3の整数である。)
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の燃料電池用触媒材料と、固体電解質を含む触媒膜。
【請求項8】
第一の燃料電池用触媒材料と、第二の燃料電池用触媒材料と、固体電解質を含む触媒膜であって、前記第一の燃料電池用触媒材料は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の燃料電池用触媒材料であり、前記第二の燃料電池用触媒材料は、カーボン表面に、イオン性官能基を有する耐加溶媒分解性および耐熱性ポリマーを有さない燃料電池用触媒材料である、触媒膜。
【請求項9】
前記固体電解質が、下記式(2)で表される繰り返し単位を主鎖構造として含み、かつ、前記主鎖が有する芳香環には、下記式(3)〜(5)より選ばれる少なくとも1つの部分構造が結合しているポリマーを含む、請求項7または8に記載の触媒膜。
【化2】

【化3】

(上記式(2)中、R13は芳香環を含む2価の基であり、X1は2価の連結基である。式(3)中、B1は単結合または2〜6価の連結基、A2はイオン性官能基を表し、n16は1〜5の整数を表す。式(4)中、B2は単結合または2〜6価の連結基を、Dは少なくとも1つのイオン性官能基を有するラジカル重合性モノマーの重合物を表す。式(5)においてE1は酸素透過性の高い置換基を表す。)
【請求項10】
多孔質導電シートと、該多孔質導電シートに接して設けられた触媒膜と、該触媒膜に接して設けられた固体電解質膜とを有し、かつ、前記触媒膜が、請求項7〜9のいずれか1項に記載の触媒膜である、電極膜接合体。
【請求項11】
前記固体電解質膜が、下記式(2)で表される繰り返し単位を主鎖構造として含み、かつ、前記主鎖が有する芳香環には、下記式(3)〜(5)より選ばれる少なくとも1つの部分構造が結合しているポリマーを含む、請求項10に記載の電極膜接合体。
【化4】

【化5】

(上記式(2)中、R13は芳香環を含む2価の基であり、X1は2価の連結基である。式(3)中、B1は単結合または2〜6価の連結基、A2はイオン性官能基を表し、n16は1〜5の整数を表す。式(4)中、B2は単結合または2〜6価の連結基を、Dは少なくとも1つのイオン性官能基を有するラジカル重合性モノマーの重合物を表す。式(5)においてE1は酸素透過性の高い置換基を表す。)
【請求項12】
請求項10または11に記載の電極膜接合体を有する、燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−53082(P2007−53082A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194374(P2006−194374)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】