説明

燃料電池用高分子電解質膜、その製造方法及びこれを含む燃料電池用電極接合体

【課題】メタノール等を用いた直接酸化型燃料電池において安定性に優れた高分子電解質膜の製造方法及びこれを含む、燃料電池システムを提供する。
【解決手段】ポリ(2,6−ジメチル−1,4−ジフェニレンオキシド)のようなポリアリレンエーテルの出発物質を化学的グラフティング方法を利用して製造し、側鎖に導入したアルキル基R〜Rの全ての水素がフッ素置換された、R−(CO)−R基によって電極のバインダーとの接着力を向上させ、電極接合体の長期安定性の向上を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用高分子電解質膜、その製造方法及びこれを含む燃料電池システムに係り、より詳しくは、安定性に優れた燃料電池用高分子電解質膜、これを含む燃料電池用電極接合体及びこれを含む燃料電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、メタノール、エタノール、天然気体のような炭化水素系の物質内に含まれている水素と酸素の化学反応エネルギーを直接電気エネルギーに変換させる発電システムである。このような燃料電池は化石エネルギーを代替できる清浄エネルギー源として、単位電池の積層によるスタック構成によって多様な範囲の出力を出せる長所を有しており、小型リチウム電池に比べて、4〜10倍のエネルギー密度を示すので、小型及び移動用携帯電源として注目されている。
【0003】
燃料電池の代表的な例としては、高分子電解質形燃料電池(PEMFC: Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell)、直接酸化型燃料電池(Direct Oxidation Fuel Cell)が挙げられる。前記直接酸化型燃料電池で、燃料としてメタノールを使用する場合は、直接メタノール燃料電池(DMFC: Direct Methanol Fuel Cell)という。
【0004】
前記高分子電解質形燃料電池はエネルギー密度が大きく、出力が高いという長所を有しているが、水素ガスの取り扱いに注意を要し、燃料ガスの水素を生産するために、メタンやメタノール及び天然ガスなどを改質するための燃料改質装置などの付帯設備を必要とするという問題点がある。
【0005】
これに反し、直接酸化型燃料電池は、高分子電解質形燃料電池に比べてエネルギー密度は低いが、燃料の取り扱いが容易であり、運転温度が低いので常温で運転が可能であり、特に、燃料改質装置を必要としないという長所がある。
【0006】
このような燃料電池システムにおいて、電気を実質的に発生させるスタックは、電極接合体(MEA)とセパレータ(又は二極式プレートとも言う)からなる単位セルが数個乃至数十個積層された構造を有する。前記電極接合体は、水素イオン伝導性高分子を含む高分子電解質膜を隔ててアノード電極(一名、“燃料極”又は“酸化電極”という)とカソード電極(一名“カソード”又は“還元電極”という)が位置する構造を有する。
【0007】
燃料電池で電気を発生させる原理は、燃料が燃料極のアノード電極に供給されて、アノード電極の触媒に吸着し、酸化反応によって燃料がイオン化され、また、電子が発生するが、この時に発生した電子は外部回路に沿って酸化極のカソード電極に到達し、水素イオンは、高分子電解質膜を通過してカソード電極に伝達される。カソード電極に酸化剤が供給され、この酸化剤、水素イオン、及び電子がカソード電極の触媒上で反応して水を生成しながら、電気を発生させるようになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、安定性に優れた燃料電池用高分子電解質膜を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、前記高分子電解質膜の製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、前記高分子膜を含む電極接合体及び燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、下記の化学式1のフルオロアルキル基と水素イオン伝導性基を有する高分子を含む燃料電池用高分子電解質膜を提供する。
【0012】
【化1】

(前記化学式1で、
乃至Rは、同一であるか又は互いに独立的にフッ素又は水素であり、R乃至Rのうちの少なくとも一つはフッ素であり、
乃至Rは、各々独立的に、−O−、−S−、−CO−、−SO−又は−P(Ph)O−であり、
乃至R10は、各々独立的に、水素、アルキル又は置換されたアルキル、アリール又は置換されたアリールであり、
11は、−O−、−S−、−CO−、又は−SO−であり、
lとmは0乃至24の整数であり、
wは1乃至20の整数であり、
kは1乃至1,000の整数であり、
xは100乃至100,000の整数であり、
yは1乃至10,000の整数であり、
zは1乃至10,000の整数であり、
Yは水素イオン伝導性基である。)
【0013】
本発明はまた、下記の化学式2の化合物をハロゲン化させて下記の化学式3の化合物を製造する段階、前記化学式3の化合物をラジカル重合させて、前記化学式1の化合物を製造する段階、及び前記化学式1の化合物を利用して除膜する段階を含む前記化学式1の化合物を含む高分子電解質膜の製造方法を提供する。
【0014】
【化2】

【0015】
【化3】

(前記化学式2乃至3で、
乃至Rは、各々独立的に、−O−、−S−、−CO−、−SO−又は−P(Ph)O−であり、
乃至Rは、各々独立的に、水素、アルキル又は置換されたアルキル、アリール又は置換されたアリールであり、
aは500乃至100,000の整数であり、
bは1乃至50,000の整数であり、
XはBr、Cl又はIである。)
【0016】
本発明はまた、互いに対向して位置するアノード電極及びカソード電極と、前記アノード及びカソード電極の間に位置する高分子電解質膜とを含み、前記高分子電解質膜は、前記化学式1のフルオロアルキル基と水素イオン伝導性基を有する高分子を含む燃料電池用電極接合体を提供する。
【0017】
本発明はまた、少なくとも一つの電気発生部、燃料供給部、及び酸化剤供給部を含む燃料電池システムを提供する。前記電気発生部は、互いに対向して位置するアノード電極及びカソード電極を含み、及び前記アノード電極と前記カソード電極との間に位置し、本発明の高分子電解質膜を含む。また、前記電気発生部は、燃料の酸化反応と酸化剤の還元反応を通じて、電気を生成させる役割を果たす。前記燃料供給部は、燃料を前記電気発生部に供給する役割を果たし、前記酸化剤供給部は、酸化剤を前記電気発生部に供給する役割を果たす。
【発明の効果】
【0018】
本発明の製造方法は、化学的グラフティング方法で水素イオン伝導性基を導入するので、高分子の分解反応が全くなく、また、水素イオン伝導性基の含有量を調節することができるので、物性チューニングの長所を有している。また、有機溶媒に完全溶解可能な高分子が得られるので、膜の厚さの調節が容易であるという長所を有している。また、フッ素含むアルキル基を導入することにより、電極のバインダーとの接着力を向上させることができ、結果的に、高分子電解質膜と電極の接着力を向上させて、電極接合体の長期安定性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0020】
本発明は、燃料電池用高分子電解質膜に関するものであって、本発明の高分子電解質膜は、下記の化学式1に示されるフルオロアルキル基と水素イオン伝導性基を有する高分子を含む。
【0021】
【化4】

(前記化学式1で、
乃至Rは、同一であるか又は互いに独立的にフッ素又は水素であり、R乃至Rのうちの少なくとも一つはフッ素であり、
乃至Rは、各々独立的に、−O−、−S−、−CO−、−SO−又は−P(Ph)O−であり、
乃至R10は、各々独立的に、水素、アルキル又は置換されたアルキル、アリール又は置換されたアリールであり、
11は、−O−、−S−、−CO−、又は−SO−であり、
lとmは0乃至24の整数であり、
wは1乃至20の整数であり、
kは1乃至1,000の整数であり、
xは100乃至100,000の整数であり、
yは1乃至10,000の整数であり、
zは1乃至10,000の整数であり、
Yは水素イオン伝導性基であり、好ましくは、スルホン酸基、カルボン酸基、燐酸基又はこれらの塩である。塩の形態の場合、Na塩、K塩、及びCa塩からなる群より選択されるのが好ましい。
前記R乃至R10で、アルキル基はC乃至C20の線状又は分枝型アルキル基であり、アリール基はC乃至C24のアリール基、好ましくはフェニル基であることができる。置換されたアルキル基は、フッ素、酸素、硫黄又は質素に置換されたこと意味する。置換されたアリール基は、芳香族環に酸素、硫黄、又は質素のヘテロ元素を含んだり、アリール基の少なくとも一つの水素がフッ素、OR、SR、NR2(ここで、Rは、C乃至C20の線状又は分枝型アルキル基である。)に置換されたことを意味する。
【0022】
前記化学式1の高分子の重量平均分子量は10,000乃至1,000,000を有する。
【0023】
ポリ(2,6−ジメチル−1,4−ジフェニレンオキシド)(PPO)のようなポリアリレンエーテルは、優れた物性と低い吸湿性により、エンジニアリングプラスチックとして大きな関心を受けており、スチレンスルホン酸の場合、優れた水素イオン伝導性により、現在多くの研究が進められている高分子である。したがって、これらの共重合体を燃料電池用高分子電解質膜として利用するための研究が活発に行われている。しかし、従来、これらの共重合体を製造するためには、ポリアリレンエーテル膜にν−線のような電子線を照射して、ラジカル重合を開始できる官能基を導入し、これを利用してスチレンスルホン酸単量体と重合して、ポリフッ化ビニリデン−g−ポリスチレンスルホン酸膜を製造する方法として、この方法で製造された高分子膜は、電子線照射時、膜の架橋及び分解が起こるため、優れた物性の膜を得られないという短所があって商用化の障害物になってきた。また、このような高分子は、燃料電池用電極との低い接着性により、膜−電極接合体の寿命に多くの問題点を招いてきた。
【0024】
本発明では、このような問題を解決するために化学的グラフティング方法を利用し、また、電極との接着性に優れた高分子を製造した。
【0025】
本発明の前記化学式1の高分子を製造する方法は次の通りである。
【0026】
下記の化学式2の化合物をハロゲン化反応させて、下記の化学式3の化合物を製造する。前記ハロゲン化反応で使用される有機溶媒としては、一般的に用いることができるいかなる有機溶媒でも使用可能であり、その代表的な例として、CCl、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、化学式2の化合物、ハロゲン、及び溶媒の使用量は適切に調節することができる。
【0027】
【化5】

【0028】
【化6】

(前記化学式2乃至3で、
乃至Rは、各々独立的に、−O−、−S−、−CO−、−SO−又は−P(Ph)O−であり、
乃至Rは、各々独立的に、水素、アルキル又は置換されたアルキル、アリール又は置換されたアリールであり、
aは500乃至100,000の整数であり、
bは1乃至50,000の整数であり、
XはBr、Cl又はIである。)
【0029】
この時、前記化学式3でaとbの比率は10:1乃至5:1のモル比が好ましい。
【0030】
次に、前記化学式3の化合物をラジカル重合して、下記の化学式1の化合物を製造する。前記ラジカル重合反応における反応物には、ハロゲン置換アルコキシドとエチレン基と水素イオン伝導性基が置換されたアリールを使用する。前記ハロゲン置換アルコキシドにはナトリウムペルフルオロホキシドなどを使用することができ、前記エチレン基と水素イオン伝導性基が置換されたアリールには、ナトリウムスチレンスルホン酸を使用することができるが、これらがこれに限定されるものではない。
【0031】
前記ラジカル重合反応は、50乃至150℃の温度で4乃至48時間実施することができる。
【0032】
この時、反応触媒は塩化銅とジピリジルの着物が用いられ、また、前記重合反応は有機溶媒中で実施し、その代表的な例として、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0033】
【化7】

【0034】
前記化学式1で、R乃至Rは、同一であるか又は互いに独立的にフッ素又は水素であり、R乃至Rのうちの少なくとも一つはフッ素であり、好ましくは、R乃至Rが、アルキル基の全ての水素が全てフッ素に置換されたアルキル基である。このR−(CO)−R基は電極のバインダーとの接着力を向上させるので、結果的に、高分子電解質膜と電極の接着力を向上させ、電極接合体の長期安定性を向上させることができる。
乃至Rは、各々独立的に、−O−、−S−、−CO−、−SO−又は−P(Ph)O−であり、
乃至R10は、各々独立的に、水素、アルキル又は置換されたアルキル、アリール又は置換されたアリールであり、
11は、−O−、−S−、−CO−、又は−SO−であり、
lとmは0乃至24の整数であり、
wは1乃至20の整数であり、
kは1乃至1,000の整数であり、
xは100乃至100,000の整数であり、
yは1乃至10,000の整数であり、
zは1乃至10,000の整数であり、
Yは水素イオン伝導性基であり、好ましくは、スルホン酸基、カルボン酸基、燐酸基又はこれらの塩である。塩の形態の場合、Na塩、K塩、及びCa塩からなる群より選択されるものが好ましい。
【0035】
製造された化学式1の高分子を有機溶媒に溶解させ、この溶液をフィルム化して、燃料電池用高分子電解質膜を製造する。前記有機溶媒としては、N−メチルピロリドン、ジメチルアセテート又はフッ化ジメチルを使用することができる。また、フィルム化工程は、一般的に知られた工程ならばいずれのものでも用いることができ、これについては当該分野で広く知られているので、本明細書で詳しい説明は省略する。
【0036】
本発明の化学式1の高分子を高分子電解質膜に使用する本発明の電極接合体は、前記高分子電解質膜を隔てて互いに対向して位置するアノード電極及びカソード電極を含む。
【0037】
前記アノード電極及びカソード電極は、電極基材と、この電極基材に形成された触媒層とを含む。
【0038】
前記触媒層において触媒としては、白金、ルテニウム、オスミウム、白金−ルテニウム合金、白金−オスミウム合金、白金−パラジウム合金、及び白金−M合金(Mは、Ga、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sn、Mo、W、及びRhからなる群より選択される1種以上の遷移金属)からなる群より選択される1種以上を使用するのが好ましい。
【0039】
より具体的な例としては、Pt、Pt/Ru、Pt/W、Pt/Ni、Pt/Sn、Pt/Mo、Pt/Pd、Pt/Fe、Pt/Cr、Pt/Co、Pt/Ru/W、Pt/Ru/Mo、Pt/Ru/V、Pt/Fe/Co、Pt/Ru/Rh/Ni又はPt/Ru/Sn/Wを1種又は1種以上使用することができる。
【0040】
また、このような金属触媒は金属触媒自体(black)として用いることもでき、担体に担浸させて使用することもできる。この担体としては、アセチレンブラック、デンカブラック、活性炭素、ケッチェンブラック、黒鉛のような炭素を使用することもでき、又はアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニアなどの無機物微粒子を使用することもできるが、一般的に炭素が幅広く使用されている。
【0041】
前記電極基材は、電極を支持する役割を果たすと共に、触媒層に燃料及び酸化剤を拡散させて、触媒層に燃料及び酸化剤が容易に接近できる役割を果たす。前記電極基材としては導電性基材を使用し、その代表的な例として、炭素紙、炭素布、炭素フェルト又は金属布(繊維状態の金属布で構成された多孔性のフィルム、又は高分子繊維で形成された布の表面に金属フィルムが形成されたもの(metalized polymer fiber)を言う)を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0042】
また、前記電極基材は、フッ素系樹脂で撥水処理したものを使用した方が、燃料電池の駆動時に発生する水によって反応物拡散効率が低下することを防止できるので好ましい。前記フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリペルフルオロアルキルビニルエーテル、ポリペルフルオロスルホニルフルオライドアルコクシビニルエーテル、フッ素化エチレンプロピレン、ポリ三フッ化塩化エチレン又はこれらのコポリマーなどが用いられることができる。
【0043】
また、前記電極基材からの反応物拡散効果を増進させるための微細気孔層(microporous layer)をさらに含むこともできる。この微細気孔層は、一般的に、粒径が小さい導電性粉末、例えば、炭素粉末、カーボンブラック、アセチレンブラック、活性炭素、カーボンファイバー、フラーレン(fullerene)、カーボンナノチューブ、カーボンナノワイヤー、カーボンナノホーン又はカーボンナノ環を含むことができる。
【0044】
前記微細気孔層は、導電性粉末、バインダー樹脂、及び溶媒を含む組成物を前記電極基材にコーティングして、製造される。前記バインダー樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ポリビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリペルフルオロアルキルビニルエーテル、ポリペルフルオロスルホニルフルオライドアルコキシビニルエーテル、ポリビニルアルコール、セルロースアセテート又はこれらのコポリマーなどが好ましく用いられることができ、前記溶媒としては、エタノール、イソプロフィルアルコール、n−プロピルアルコール、ブチルアルコールなどのようなアルコール、水、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフランなどが好ましく用いられる。コーティング工程は、組成物の粘性により、スクリーンプリンティング法、スプレーコーティング法又はドクターブレードを利用したコーティング法などが用いられることができるが、これに限定されるものではない。
【0045】
本発明はまた、前述のような本発明の電極接合体を含む燃料電池システムを提供する。
本発明の燃料電池システムは、少なくとも一つの電気発生部、燃料供給部、及び酸化剤供給部を含む。
【0046】
前記電気発生部は、電極接合体とセパレータ(二極式プレートとも言う)を含む。前記電極接合体は、高分子電解質膜と、この高分子電解質膜の両面に存在するカソード及びアノード電極とを含む。前記電気発生部は、燃料の酸化反応と酸化剤の還元反応反応を通じて、電気を発生させる役割を果たす。
【0047】
前記燃料供給部は、燃料を前記電気発生部に供給する役割を果たし、前記酸化剤供給部は、酸素又は空気のような酸化剤を前記電気発生部に供給する役割を果たす。
【0048】
本発明で、燃料としては、気体又は液体状態の水素又は炭化水素燃料を含むことができる。前記炭化水素燃料の代表的な例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール又は天然ガスが挙げられる。
【0049】
本発明の一実施例による燃料電池システム100の概略的な構造を図1に示したが、これを参照してより詳細に説明する。図1に示した構造は、燃料及び酸化剤を、ポンプ151、171を使用して電気発生部130に供給するシステムを示したが、本発明の燃料電池用電極接合体131がこのような構造に限定されて使用されるわけではなく、ポンプを使用しない拡散方式を利用する構造の燃料電池システムにも用いることができるのは当然のことである。
【0050】
燃料電池システム100は、燃料の酸化反応と酸化剤の還元反応を通じて電気エネルギーを発生させる少なくとも一つの電気発生部130を有するスタック110と、前記燃料を供給する燃料供給部150と、酸化剤を電気発生部130に供給する酸化剤供給部170とを含んで構成される。
【0051】
前記燃料を供給する燃料供給部150は、燃料を貯蔵する燃料タンク153と、燃料タンク153に連結設置される燃料ポンプ151とを備える。前記燃料ポンプ151は、所定のポンピング力によって、燃料タンク153に貯蔵された燃料を排出させる機能を果たす。
【0052】
前記スタック110の電気発生部130に酸化剤を供給する酸化剤供給部170は、所定のポンピング力で酸化剤を吸入する少なくとも一つの酸化剤ポンプ171を備える。
【0053】
前記電気発生部130は、燃料と酸化剤を酸化及び還元反応させる電極接合体131と、この電極接合体131の両側に燃料と酸化剤を供給するためのセパレータ(二極式プレート)133、135とで構成され、このような電気発生部130が少なくとも一つ集まって、スタック110を構成する。
【0054】
以下、本発明の好ましい実施例及び比較例を記載する。しかし、下記の実施例は本発明の好ましい一実施例のみのものであり、本発明が下記の実施例によって限定されるわけではない。
【0055】
(実施例1)
〔臭素化ポリ(1,4−ジメチルフェニレンオキシド)(化学式3a)の製造〕
冷却器を装着した500mlの2口の丸いフラスコに、ポリ(1,4−ジメチルフェニレンオキシド)(下記の化学式2a、nは3,000)20gと、CCl250mlを入れて90℃で溶解した。赤外線電球を利用して前記フラスコに光を照らしながら、2.14gの臭素を順に滴下した後、5時間の間還流(reflux)させた。
【0056】
次で、反応が終結すれば、還流生成物を室温まで冷却し、過剰のメタノールに沈殿させた。沈殿した生成物を濾過し、過剰の水で洗浄した後、80℃真空オーブンで乾燥して、下記の化学式3aの化合物を製造した。この時、化学式3aにおけるaとbの比率は5:1であった。
【0057】
【化8】

【0058】
【化9】

【0059】
〔化学式1aの製造〕
製造された化学式3aの化合物試料10gをN,N−ジメチルアセトアミド500mLに溶解した後、ここに、過フッ化プロポキシドナトリウム0.1gを入れ、70℃で12時間反応した後、過剰のメタノールに沈澱して真空乾燥した。
【0060】
完全に乾燥された試料5gをN−メチルピロリドン500mlに溶解した後、塩化銅0.1g、2,2’−ジピリジル0.5g、スルホン酸スチレンナトリウム10gを入れて、質素ガスで30分間攪拌下でバブリングした後、125℃のオイル湯煎で24時間ラジカル重合を行った。重合後、反応温度を室温まで下げた後で得られた生成物を過剰のメタノールに沈殿して、化合物1aを得た。この時、化学式1aで、xは1500、yは750、そしてzは750であった。
【0061】
【化10】

【0062】
次に、製造された化学式1aの高分子をN−メチルピロリドンに溶解した後、これをガラス板の上にキャスティングして、燃料電池用高分子電解質膜を製造した。
【0063】
製造された高分子電解質膜を利用して、通常の製造方法で燃料電池を製造した後、この電池の作動温度(50℃、60℃、及び70℃)による出力特性を測定して、その結果を図2A乃至図2Bに示した。図2A乃至図2Bに示したように、温度が上がるほど、出力特性が向上することが分かる。
【0064】
本発明の高分子電解質膜は高温安定性に優れていて、高温特性に優れた燃料電池を提供することができる。
【0065】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明及び添付した図面の範囲内で多様に変形して実施するのが可能であり、これもまた本発明の範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施例による燃料電池システムの構造を概略的に示した図である。
【図2A】本発明の実施例1によって製造された燃料電池の温度による電流密度−電圧特性を示すグラフである。
【図2B】本発明の実施例1によって製造された燃料電池の温度による出力特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0067】
100 燃料電池システム
110 スタック
130 電気発生部
131 電極接合体
133、135 セパレータ
150 燃料供給部
151 燃料ポンプ
153 燃料タンク
170 酸化剤供給部
171 酸化剤ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1に示される高分子を含む燃料電池用高分子電解質膜。
【化1】

(前記化学式1で、
乃至Rは、同一であるか又は互いに独立的にフッ素又は水素であり、R乃至Rのうちの少なくとも一つはフッ素であり、
乃至Rは、各々独立的に、−O−、−S−、−CO−、−SO−又は−P(Ph)O−であり、
乃至R10は、各々独立的に、水素、アルキル又は置換されたアルキル、アリール又は置換されたアリールであり、
11は、−O−、−S−、−CO−、又は−SO−であり、
lとmは0乃至24の整数であり、
wは1乃至20の整数であり、
kは1乃至1,000の整数であり、
xは100乃至100,000の整数であり、
yは1乃至10,000の整数であり、
zは1乃至10,000の整数であり、
Yは水素イオン伝導性基である。)
【請求項2】
前記Yは、スルホン酸基、カルボン酸基、燐酸基、及びこれらの塩からなる群より選択されるものである、請求項1に記載の燃料電池用高分子電解質膜。
【請求項3】
前記塩は、Na塩、K塩、Li塩、及びCa塩からなる群より選択されるものである、請求項2に記載の燃料電池用高分子電解質膜。
【請求項4】
前記R乃至Rはフッ素である、請求項1に記載の燃料電池用高分子電解質膜。
【請求項5】
前記高分子は10,000乃至1,000,000の重量平均分子量を有するものである、請求項1に記載の燃料電池用高分子電解質膜。
【請求項6】
下記の化学式2の化合物をハロゲン化反応させて、下記の化学式3の化合物を製造する段階;
前記化学式3の化合物をラジカル重合させて、下記の化学式1の化合物を製造する段階;及び
下記の化学式1の化合物を利用して除膜する段階;
を含む高分子電解質膜の製造方法。
【化2】

【化3】

【化4】

(前記化学式1乃至3で、
乃至Rは同一であるか又は互いに独立的にフッ素又は水素であり、R乃至Rのうちの少なくとも一つはフッ素であり、
乃至Rは、各々独立的に、−O−、−S−、−CO−、−SO−又は−P(Ph)O−であり、
乃至R10は、各々独立的に、水素、アルキル又は置換されたアルキル、アリール又は置換されたアリールであり、
11は、−O−、−S−、−CO−、又は−SO−であり、
lとmは0乃至24の整数であり、
wは1乃至20の整数であり、
kは1乃至1,000の整数であり、
xは100乃至100,000の整数であり、
yは1乃至10,000の整数であり、
zは1乃至10,000の整数であり、
Yは水素イオン伝導性基であり、
aは500乃至100,000の整数であり、
bは1乃至50,000の整数であり、
XはBr、Cl又はIである。)
【請求項7】
前記Yは、スルホン酸基、カルボン酸基、燐酸基、及びこれらの塩からなる群より選択されるものである、請求項6に記載の燃料電池用高分子電解質膜の製造方法。
【請求項8】
前記塩は、Na塩、K塩、Li塩、及びCa塩からなる群より選択されるものである、請求項7に記載の燃料電池用高分子電解質膜の製造方法。
【請求項9】
前記化学式3で、aとbの比率は10:1乃至5:1のモル比である、請求項6に記載の燃料電池用高分子電解質膜の製造方法。
【請求項10】
前記ラジカル重合反応は50乃至150℃の温度で実施する、請求項6に記載の燃料電池用高分子電解質膜の製造方法。
【請求項11】
前記ラジカル重合反応は4乃至48時間実施する、請求項6に記載の燃料電池用高分子電解質膜の製造方法。
【請求項12】
互いに対向して位置するアノード電極及びカソード電極;
前記アノード及びカソード電極の間に位置する請求項1乃至5のうちのいずれか一つの項による高分子電解質膜;を含む、燃料電池用電極接合体。
【請求項13】
互いに対向して位置するアノード電極及びカソード電極、前記アノード電極とカソード電極との間に位置する請求項1乃至5のうちのいずれか一つの項による高分子電解質膜を含む電極接合体、並びにセパレータを少なくとも一つ含み、燃料の酸化反応と酸化剤の還元反応を通じて電気を生成させる少なくとも一つの電気発生部;
前記電気発生部に燃料を供給する燃料供給部;及び
酸化剤を前記電気発生部に供給する酸化剤供給部;
を含む燃料電池システム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【公開番号】特開2007−141849(P2007−141849A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−313383(P2006−313383)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】