説明

燃料電池発電システム

【課題】燃料電池発電システムにおける燃料電池の冷却と水素吸蔵合金タンクの排熱利用とを効果的に行うことを可能にする。
【解決手段】水素吸蔵合金タンク4と、水素吸蔵合金タンク4から供給される水素を消費する燃料電池3と、燃料電池3と水素吸蔵合金タンク4との間で熱伝達を行う熱伝達部材6と、水素吸蔵合金タンクおよび燃料電池の周辺温度を検知する温度センサ(温度測定端子14)と、燃料電池3側から水素吸蔵合金タンク4側に向けて送風するファン(吸気口ファン10、排気口ファン11)と、前記温度センサの検知結果を受け、検知温度の高低に基づいて前記ファンの送風動作を制御するファン制御部13を備え、温度の高低によってファンの動作を適切に制御して、燃料電池の冷却と、水素吸蔵合金タンクへの排熱伝達とを効果的かつ効率的に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水素吸蔵合金タンクと、該水素吸蔵合金タンクから供給される水素を燃料とする燃料電池を備える燃料電池発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素吸蔵合金タンクと、燃料電池を備える燃料電池発電システムでは、水素吸蔵合金タンクから供給される水素を燃料として前記燃料電池で発電をして電力を取り出すことができる。このシステムにおいて、水素吸蔵合金タンクと燃料電池との間で熱交換し、燃料電池排熱を水素吸蔵合金タンクの水素放出時の吸熱に有効利用して、水素吸蔵合金タンクからの水素供給を促進する技術が提案されており、効率向上に寄与している(例えば特許文献1〜4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−170369号公報
【特許文献2】特開平6−60895号公報
【特許文献3】特開平11−144748号公報
【特許文献4】特開2005−63715号公報
【特許文献5】国際公開第97/27637号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の提案技術では、外気温度が大きく変動すると、以下の理由で不具合を起こす可能性がある。
例えば、特許文献5では、水素吸蔵合金タンクと燃料電池との間を熱授受手段で結合するとともに、ファンで熱交換を補助する発明について記載されているが、外気温が高くても燃料電池を故障させずに動作させるためには、ファンの送風を大きくし、十分な冷却能力を確保する必要がある。しかしながら、このシステムを低温下で稼動させようとすると、低温の外気を取り込みすぎて水素吸蔵合金タンクが冷えすぎてしまい、水素放出に十分な圧力に達せず、水素切れを起こしてしまうおそれがある。逆に、低温でも稼動できるようにファンの送風を小さくすると、外気が高温になったり、負荷が大きくなったりしたときに燃料電池排熱を十分に排除できず、オーバーヒートを起こして損傷してしまう。
【0005】
また、上記各特許文献で提案されている装置では、ファンなどの熱交換手段の出力制御をしておらず、燃料電池で発生された電力のうち一定量がファンなどで常に消費されることになる。これは、結果として外部に出力できる電力の低下を招き、発電効率が低下する問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、燃料電池の排熱を有効に利用して効果的に水素吸蔵合金タンクを加熱してシステム全体としての効率を向上させることができる燃料電池発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の燃料電池発電システムのうち、第1の本発明は、水素吸蔵合金タンクと、該水素吸蔵合金タンクから供給される水素を消費する燃料電池と、該燃料電池と前記水素吸蔵合金タンクとの間で熱伝達を行う熱伝達部材と、前記水素吸蔵合金タンクおよび燃料電池の周辺温度を検知する温度センサと、前記燃料電池側から前記水素吸蔵合金タンク側に向けて送風するファンと、前記温度センサの検知結果を受け、検知温度の高低に基づいて前記ファンの送風動作を制御するファン制御部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、水素吸蔵合金タンクで発生する水素は燃料電池に供給され、燃料電池で発電されて電力の取り出しが可能になる。該発電によって燃料電池で発生する排熱は、熱伝達部材によって水素吸蔵合金タンクに伝熱されるとともに、燃料電池は、ファンによって冷却可能になる。また、ファンの動作時には、ファンによる気流に燃料電池の排熱の一部が伝わり、水素吸蔵合金タンク側に熱を伝えることができる。
【0009】
さらに本発明では、燃料電池および水素吸蔵合金周辺の温度が温度センサで検知されて検知結果がファン制御部に送信されており、ファン制御部では、予め定めた基準によってファンの送風動作を制御する。これにより、低温時にファンによって冷却しすぎて水素吸蔵合金タンクに十分に熱が伝えられなかったり、高温時に燃料電池を十分に冷却することができず、オーバーヒートになってしまうことを回避することができる。
なお、燃料電池の排熱をファンによる気流で水素吸蔵合金タンク側に効率的に伝えるために、上記熱伝達部材にフィンを設け、ファンによる気流がこのフィンを通過して効率よく熱交換できるようにしてもよい。
【0010】
上記ファン制御部は、例えば、CPUとこれを動作させるプログラムとを主構成とし、該プログラムを格納したROMやワークエリアとなるRAM、前記した温度の基準値を格納しておく不揮発のフラッシュメモリなどの記憶部を備えたものにより構成することができる。
上記した水素吸蔵合金タンクおよび燃料電池は、通常は、ケース内に収容され、該ケースは、吸気口と排気口を除いて密閉したものとする。これによりケース内の温度をファンによって効果的に調整することができる。なお、ファンの種別や個数、設置位置は本発明としては特に限定されるものではなく、燃料電池側から水素吸蔵合金側に効果的に気流が生じるように適宜の位置に設置することができる。
【0011】
また、温度センサは、ケース内に一または二以上を設けることができる。温度センサは、燃料電池および水素吸蔵合金タンク周囲の雰囲気温度を検知するものであってもよく、また、燃料電池や水素吸蔵合金タンク、熱伝達部材の温度を直接に検知するものであってもよい。
さらに、ケース外部に、外気温センサを設けて、前記温度センサとともに温度を検知して、前記ファン制御部によるファンの制御に利用することができる。
【0012】
ファン制御部によるファンの動作では、一つの温度基準値に基づいて、検知温度がそれよりも高いか低いかによって制御を行うことができるが、一つの例としては、3つの温度基準値(TL<TM<TH)を設定して制御するものが挙げられる。検知温度がTLを下回る場合、燃料電池の冷却は殆ど不要のため、前記ファンを停止し、熱伝達部材のみで燃料電池の排熱を水素吸蔵合金タンクに効率よく伝達する。この際にはファンを回転させる消費電力は不要になる。また、検知温度がTL以上でTMを下回る場合、前記ファンを相対的に低速で動作させることで、燃料電池の冷却と、気流による伝熱および熱伝達部材による伝熱をバランスさせる。ファンは微速であるため、気流による水素吸蔵合金タンクへの伝熱も効果的に行われる。また、この際のファンの消費電力は小さなものとなる。さらに、検知温度がTM以上でTHを下回る場合、燃料電池の冷却を重視してファンを相対的に中速で動作させる。ファンを中速で動作させると熱伝達部材を伝達される排熱の一部が気流側に伝わり、水素吸蔵合金タンクに十分に伝達されることなく排気されるので、排熱の伝達効率は低下した状態で運転が行われる。一方、検知温度がTH以上である場合、燃料電池の冷却が最優先となるため、ファンを相対的に高速で動作させて燃料電池を冷却する。この際に、燃料電池の排熱の伝達はさらに小さくなる。
また、この他に、所定の目標温度を設定しておき、温度センサによる検知温度が前記目標温度になるように、前記ファンの動作速度やON−OFFによりPID制御することができる。これにより、ケース内の温度が目標温度になるように、的確にケース内の温度制御を行うことができる。
上記制御により、燃料電池の冷却と、水素吸蔵合金タンクへの排熱伝達とを調整しつつ、効率的な運転を可能にする。
【発明の効果】
【0013】
すなわち、本発明の燃料電池発電システムのうち、第1の本発明は、水素吸蔵合金タンクと、該水素吸蔵合金タンクから供給される水素を消費する燃料電池と、該燃料電池と前記水素吸蔵合金タンクとの間で熱伝達を行う熱伝達部材と、前記水素吸蔵合金タンクおよび燃料電池の周辺温度を検知する温度センサと、前記燃料電池側から前記水素吸蔵合金タンク側に向けて送風するファンと、前記温度センサの検知結果を受け、検知温度の高低に基づいて前記ファンの送風動作を制御するファン制御部と、を備えるので、温度の高低によってファンの動作を適切に制御して、燃料電池の冷却と、水素吸蔵合金タンクへの排熱伝達とを効果的かつ効率的に行うことができる。
すなわち、水素吸蔵合金タンクと燃料電池との熱交換に加え、燃料電池システム内部の温度に応じてファンの動作を制御することで、幅広い温度範囲にわたって正常動作を保証するとともに、補機類による消費電力を必要最小限にして発電効率を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の燃料電池システムを示す平面図である。
【図2】同じく、ファン動作時の気流を示す平面図である。
【図3】同じく、ファン動作の制御を行う手順を示すフローチャートである。
【図4】同じく、ファン動作のPID制御を行う手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の他の実施形態の燃料電池システムを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の一実施形態の燃料電池発電システム1を説明する。
図1は、該燃料電池発電システム1の平面を示す図であり、ケース2内に、燃料電池3と、水素吸蔵合金タンク4とが収納されている。水素吸蔵合金タンク4の口部には、開閉バルブ4aが設けられており、該水素吸蔵合金タンク4の口部と前記燃料電池3とは、水素供給可能に水素チューブ5で接続されている。
【0016】
水素吸蔵合金タンク4に収容する水素吸蔵合金には、常温付近で水素を供給できるAB型(LaNiなど)、AB型(TiCrなど)、BCC型(TiCrVなど)、AB型(TiFeなど)などが想定されるが、使用条件によってはこれらに限らない。また、水素吸蔵合金タンク4本体の材質としては、熱伝導性の高い金属、特にアルミニウム合金が望ましい。
【0017】
また、該燃料電池3と水素吸蔵合金タンク4との間には、熱伝達部材6が配置され、接触によって燃料電池3および水素吸蔵合金タンク4との間で熱伝達を行うことが可能になっている。
熱伝達部材6は、アルミニウムや銅など熱伝導性のよい材料から選択されるが、このような材料は一般に電気伝導性も高いため、燃料電池3と熱伝達部材6の接触面で燃料電池セル同士の短絡のおそれがある場合、燃料電池3と熱伝達部材6との間に絶縁材7を必要に応じて挟み込む。この絶縁材7は熱伝導性に優れ、密着性のよいシリコンゴムなどが望ましい。
【0018】
また、熱伝達部材6は、水素吸蔵合金タンク4とも十分な面積で接触するように加工される。ここでも、水素吸蔵合金タンク4との密着性を改善するための熱伝導シートを挟みこんでもよい。さらに、熱伝達部材6には、フィン8が設けられている。該フィン8は、水素吸蔵合金タンク4の外周面に軸横断方向に沿って配置されている。
【0019】
ケース2には、前記燃料電池3から水素吸蔵合金タンク4を横断する方向に沿ってそれぞれ二つの吸気口と排気口とが設けられ、それぞれに吸気口ファン10、10と排気口ファン11、11とが設けられている。これにより吸気口ファン10、10によってケース2外から取り入られた空気は、燃料電池3側から水素吸蔵合金タンク4側に流れ、前記フィン8を通過して、排気口ファン11、11によってケース2外に排気される。したがって、燃料電池3の下流側に水素吸蔵合金タンク4が配置され、その周囲にフィン8が形成されているため、フィン8は、燃料電池3から熱を奪った空気が排気口に至るまでの途中に位置して前記空気に伝わった熱を受熱することができる。。
この実施形態では、吸気口ファン10、排気口ファン11の両方が設けられているが、いずれか一方を有するものであってもよい。ファンは軸流ファン、クロスフローファン、あるいはブロアの類が望ましい。
【0020】
上記吸気口ファン10、10、排気口ファン11、11は、ファン制御部13に電気的に接続されており、該ファン制御部13による送風動作の制御が可能になっている。
ファン制御部13は、CPUとこれを動作させるプログラムを主構成とし、温度基準値などを格納した記憶部(図示しない)を備えている。
【0021】
また、燃料電池3と水素吸蔵合金タンク4との間の空間には、温度センサとして温度測定端子14が配置されており、該温度測定端子14の測定結果は、前記ファン制御部13に送信される。ファン制御部13では、前記吸気口ファン10、10、排気口ファン11、11を制御するための動作パラメータや、ファン制御の基準になる温度基準値などが記憶部に格納されている。
【0022】
次に、上記システムの動作について説明する。
水素吸蔵合金タンク4で貯蔵された水素は、開閉バルブ4aを開けることで、水素チューブ5を通じて燃料電池3へ供給される。
水素吸蔵合金から水素が放出される際、水素1モルあたり一般に20〜50kJの熱を吸収する。一方、水素吸蔵合金の絶対温度T[K]と平衡水素圧力P[atm]との関係には、下記式の関係がある。
【0023】
【数1】

【0024】
このため、吸熱量に相当する以上の熱を水素吸蔵合金タンクに供給し続けなければ、MHの温度が下がっていき、それにつれて水素圧力も低下していく。やがて一定の圧力(開放式の燃料電池では大気圧)を下回ってしまうと、水素の供給ができなくなってしまう。この実施形態では、水素の供給を継続するために、燃料電池の排熱が利用される。
【0025】
燃料電池3では、供給された水素と空気中の酸素とを化学的に結合させた結果、電気および熱エネルギーを発生させ、水を生成する。一般的な固体高分子形燃料電池(PEFC)では、水素と酸素とが結合したときに生まれるエネルギーに対する電気エネルギーの割合は5割以下であり、残りのエネルギーは熱に変換される。水素1モルが酸化したときの発生エネルギーは、LHV基準で240kJであるので、120kJ以上の熱が水素1モルあたり発生することになる。ところが、PEFCは約80℃以上になると固体高分子膜が劣化してしまうため、発生した熱を除去する必要がある。
【0026】
この実施形態では、吸気口ファン10、10、排気口ファン11、11および熱伝達部材6が燃料電池3を冷却する役割を果たす。これらファンによる気流の状態を図2に示す。吸気口ファン10、10によってケース2外から取り入れられた空気は、燃料電池3の周囲を通って燃料電池3を冷却し、また、熱交換によって燃料電池3の排熱を受けて空気が昇温する。気流は、さらに熱伝達部材6の周囲を通る。熱伝達部材6では燃料電池3から水素吸蔵合金タンク4へと熱が伝達されており、上記気流との間で熱交換がなされてさらに気流が昇温する。気流は、水素吸蔵合金タンク4の周囲およびフィン8を通過することで、その熱を水素吸蔵合金タンク4およびフィン8に効果的に伝え、排気口ファン11、11によってケース2外に排気される。フィン8に伝えられた熱は、さらに水素吸蔵合金タンク4に伝達される。上記気流および熱伝達部材6によって熱が伝えられる水素吸蔵合金タンク4では、内部の水素吸蔵合金が加熱され、水素放出が促進される。
【0027】
また、上記燃料電池3と水素吸蔵タンク4との間では、温度測定端子14によって温度が測定され、その結果がファン制御部13に送信されている。温度測定端子14は、燃料電池システム1内、望ましくは燃料電池3、水素吸蔵合金タンク4、熱伝達部材6、あるいはフィン8の温度が測定できる。なお、本発明としては、温度を測定するセンサの数が一つに限定されるものではなく、複数を設けることが可能である。また、ケース外に外気温センサを設けて、その測定結果を前記ファン制御部13に送信するようにしてもよい。
【0028】
ファン制御部13では、温度測定端子14で測定された温度に応じ、吸気口ファン10、排気口ファン11の駆動を制御する。外気温センサを備える場合には、このセンサによる測定温度もファン制御の判定要素とすることができる。ファンの駆動パターンには、ON−OFFあるいは、複数段階に分けた出力切り替えまたは連続的な出力調整が考えられる。また、ファンの駆動パターン切り替えの判断には、測定温度と事前に設定した切り替え温度とを単純に比較する方法の他、測定温度をパラメータとしたPID制御も利用できる。
【0029】
ファン制御シーケンスの例を図3のフローチャートにより説明する。
ケース2内の温度Tが前記温度測定端子14で測定され、ファン制御部13に伝達される(ステップs1)。この例では、ファン制御部13には、温度基準値として0℃、20℃、40℃が設定されており、ファン制御部13は、測定された内部温度Tと温度基準値との比較を行う。また、ファンの動作パラメータとして、停止、微速、中速、最大速が設定されている。
【0030】
ファン制御部13では、先ず、内部温度Tが0℃未満であるか否かを判定する(ステップs2)。ここで内部温度Tが0℃未満であると(ステップs2、YES)、ファンを停止し(ステップs10)、さらに内部温度の測定を継続する(ステップs1へ)。
また、内部温度Tが0℃以上である場合(ステップs2、NO)、内部温度が20℃未満であるか否かの判定を行う(ステップs3)。ここで内部温度Tが20℃未満であれば(ステップs3、YES)、ファンを微速で回転させ(ステップs11)、さらに内部温度の測定を継続する(ステップs1へ)。
【0031】
また、内部温度が20℃以上である場合(ステップs3、NO)、内部温度が40℃未満であるか否かの判定を行う(ステップs4)。ここで内部温度Tが40℃未満であれば(ステップs4、YES)、ファンを中速で回転させ(ステップs12)、さらに内部温度の測定を継続する(ステップs1へ)。
内部温度が40℃以上である場合(ステップs4、NO)、ファンを高速で回転させ(ステップs13)、内部温度の測定を継続する(ステップs1へ)。
【0032】
上記ファン制御部13による制御手順では、内部温度が低いときは、燃料電池の排熱をできるだけ水素吸蔵合金タンクに渡し、温度低下にともなう水素供給圧力低下を避ける必要がある。よって、空気を介した低効率の対流熱伝達よりも、熱伝達部材を介した高効率の直接熱伝達の割合を増やす方が望ましいので、ファンの出力を下げるよう制御している。内部温度が相当に低い場合には、ファンを停止する。
内部温度が高いときは、水素吸蔵合金タンク4の温度も十分高く、水素切れの心配は少ないため、燃料電池のオーバーヒート防止が優先される。そこで、ファンの出力を上げ、燃料電池システム外へ熱を放散させている。
【0033】
次に、上記ファンの制御をPID制御により行う手順を図4のフローチャートに基づいて説明する。
制御の開始前に、PID制御における制御サイクル(例えば数m秒)を設定し、また、所定の目標温度を目標値として設定し、下記偏差量に基づくファン制御量をプロセスデータとして設定し、それぞれをファン制御部13の記憶部に記憶しておく。
【0034】
ファン制御部13による制御では、先ず、タイマによって制御サイクルに至ったか否かが判定される(ステップs20)。制御サイクルに至ると(ステップs20、YES)、PID制御が開始される。すなわち、目標値が上記記憶部から読み出され(ステップs20)、これとともに温度測定端子14によってケース2内の温度が検知され(ステップs21)、ファン制御部13で目標値データと検知温度データとを取得する。ファン制御部13では、上記目標値と、検知温度との偏差を算出し、その偏差量に基づいて、記憶されたプロセスデータを読み出し、該データによって吸気口ファン10、排気口ファン11の動作(速度およびオン−オフ)を制御する(ステップs25)。該制御を繰り返すことで、ケース内温度が安定して目標温度になるように調整される。
【0035】
次に、図5は、他の実施形態の燃料電池システム1aを示すものである。なお、この実施形態で、前記実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略または簡略にする。
このシステムでは、ケース2に吸気口15、排気口16が設けられており、これら吸気口15、排気口16には、ファンは設けられていない。このシステムでは、燃料電池3と水素吸蔵合金タンク4との間に内部ファン17、17を配置し、燃料電池3側の空気を吸引し、水素吸蔵合金タンク4側に放出している。このシステムでも、上記内部ファン17の動作によって吸気口15によってケース2外の空気が吸引され、気流が燃料電池3側から水素吸蔵合金タンク4側へ流れ、排気口16を通してケース2外に排気される。上記内部ファン17も前記実施形態と同様にファン制御部13によって制御可能になっており、ファン制御部13では、温度測定端子14の測定結果に基づいてファン制御部13の送風動作が制御される。
【0036】
以上、本発明について上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は、上記実施形態の内容に限定をされるものではなく、当然に本発明の範囲を逸脱しない限りは適宜の変更が可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 燃料電池発電システム
2 ケース
3 燃料電池
4 水素吸蔵合金タンク
6 熱伝達部材
8 フィン
10 吸気口ファン
11 排気口ファン
13 ファン制御部
14 温度測定端子
15 吸気口
16 排気口
17 内部ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素吸蔵合金タンクと、
該水素吸蔵合金タンクから供給される水素を消費する燃料電池と、
該燃料電池と前記水素吸蔵合金タンクとの間で熱伝達を行う熱伝達部材と、
前記水素吸蔵合金タンクおよび前記燃料電池の周辺温度を検知する温度センサと、
前記燃料電池側から前記水素吸蔵合金タンク側に向けて送風するファンと、
前記温度センサの検知結果を受け、検知温度の高低に基づいて前記ファンの送風動作を制御するファン制御部と、を備えることを特徴とする燃料電池発電システム。
【請求項2】
前記熱伝達部材にフィンが設けられており、前記ファンによって前記燃料電池の排熱を得た気流が前記フィンを通過するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池発電システム。
【請求項3】
前記ファン制御部は、少なくとも3つの温度基準値(TL<TM<TH)が設定されており、前記検知温度がTLを下回る場合、前記ファンを停止し、前記検知温度がTL以上でTMを下回る場合、前記ファンを相対的に低速で動作させ、前記検知温度がTM以上でTHを下回る場合、前記ファンを相対的に中速で動作させ、前記検知温度がTH以上である場合、前記ファンを相対的に高速で動作させる制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池発電システム。
【請求項4】
前記ファン制御部は、前記検知温度が所定の目標温度になるように、前記ファンの動作速度およびON−OFFによりPID制御することを特徴とする請求項1または2に記載の燃料発電システム。
【請求項5】
前記温度センサを2以上備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池発電システム。
【請求項6】
吸気口および排気口を有するケースを備え、該ケース内に前記水素吸蔵合金タンク、前記熱伝達部材および前記燃料電池が収容されており、前記温度センサが前記ケース内の温度を検知するものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池発電システム。
【請求項7】
前記ケース外の温度を測定する外気温度センサを備え、前記ファン制御部は、前記温度センサの検知温度とともに前記外気温度センサの検知温度の高低に基づいて前記ファンの送風動作を制御することを特徴とする請求項6記載の燃料電池発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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