説明

燃料電池発電装置

【課題】簡単な構成で空気供給および冷却風供給を効率よく行えるようにした燃料電池発電装置を提供することを目的とする。
【解決手段】中央に空気供給口8が形成され、さらに空気供給口8の両側に多数の冷却送風口9が形成された燃料電池のスタック7と、空気供給ファン14と連通形成された空気供給ダクト12と、空気供給ダクト12の両側であって空気供給ファン14とは反対側の位置に設けられた冷却ファン16と連通形成された冷却送風ダクト13を備えた送風構成体11とを具備し、スタック7に形成された空気供給口8の列に対応する位置に送風構成体11の空気供給ダクト12が、また冷却送風口9に対応する位置に冷却送風ダクト13がそれぞれ合致するようスタック7と送風構成体11とを一体化して構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料としての水素と空気中の酸素とを供給反応させて発電を行う燃料電池発電装置に関し、具体的には、簡単な構成で空気供給および冷却風供給を効率よく行えるようにした燃料電池発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、水素と酸素を反応させて発電する燃料電池は、高分子薄膜層によって発電反応を行うため、発熱温度と反応によって生成した水分量とで発電効率が常に変化する。そのため燃料電池の効率的な発電を行わせるには、これら発熱温度と生成した水分量とを適切に管理し、冷却と空気供給を制御することが重要となる。
特に空気供給は、過剰になると、燃料電池のスタック内の水分が排出されて乾燥するため、発電効率が低下する。逆に過少になると、酸素供給が減少して発電効率が低下し、また、送風が減少して水分の排出が不十分となり、水分が溜まり過ぎて反応面積が減少して発電効率が低下する。
そこで、このような燃料電池発電装置に冷却ファンと空気供給ファンとを設け、両者を各々別個に制御するようにした燃料電池発電システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
図3は、従来の冷却ファンと空気供給ファンとが設けられた燃料電池発電装置の模式斜視図を示す。図において、燃料電池のスタック1は、一側面に多数の冷却用フィン2が設けられている。空気供給ファン3および4は、スタック1に空気を供給する。冷却ファン5は、冷却用フィン2を冷却することで燃料電池のスタック1を冷却するようになっている。基台6は、これらを載置している。
そして燃料電池の吸気側に吸気温度センサー、吸気湿度センサーおよび発電部温度センサーを、排気側に排気温度センサーと排気湿度センサーを設け、測定された吸気温度、吸気湿度、排気温度、排気湿度および発電温度に基づいて冷却ファンと空気供給ファンとを別個に制御するように構成されている。
【特許文献1】特開2004−192974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記従来の構成では、燃料電池のスタック一面の吸気側に空気供給ファンが設けられており、空気はスタック一面全体に送風されるようになっている。従って空気はスタック一面に不均一に送られるため、発電効率に影響を及ぼすこととなる。これは、空気供給ファンの前面と周辺面とでは送風量が変化しているため、スタック内の水分量としての保湿状態が前面部と周辺部とで差異が生じることが要因である。
また、燃料電池のスタックに冷却用フィンが設けられ、この冷却用フィンに冷却ファンで送風して燃料電池の冷却をしているため、燃料電池全体の構成が大型になるという課題を有していた。
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、簡単な構成で空気供給および冷却風供給を効率よく行えるようにした燃料電池発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の燃料電池発電装置は、中央に空気供給口が形成され、さらに空気供給口の両側に多数の冷却送風口が形成された燃料電池のスタックと、空気供給ファンと連通形成された空気供給ダクトと、空気供給ダクトの両側であって前記空気供給ファンとは反対側の位置に設けられた冷却ファンと連通形成された冷却送風ダクトを備えた送風構成体とを具備し、前記スタックに形成された空気供給口の列に対応する位置に前記送風構成体の空気供給ダクトが、また冷却送風口に対応する位置に冷却送風ダクトがそれぞれ合致するようスタックと送風構成体とを一体化して構成したものである。従って、空気は燃料電池のスタックに形成された空気供給口に空気供給ファンから送風構成体の空気供給ダクトを通じて送り込まれ、酸化剤としての酸素が取り込まれる。また、スタックへの冷却風は冷却ファンと連通形成された冷却送風ダクトを通じて送り込まれることになり、空気供給と冷却風の送風が確実、かつ無駄なく効率的に行うことができる。
本発明の第2の燃料電池発電装置は、空気供給ファンと冷却ファンとを別個に制御するようにしたものである。従って、空気供給と冷却風の必要量の送り込みが必要に応じて別々に行うことができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の燃料電池発電装置は、酸化剤としての酸素を取り込むための空気の供給は、空気供給ファンから送風構成体の空気供給ダクトを通じてスタックに形成された空気供給口にのみ送り込まれることになり、無駄のない効率的な供給が行える。また、冷却風は冷却送風口よりスタック全体に亘って送り込まれるため、スタックの冷却が効率よく行える。また、空気と冷却風の供給を一体形成した送風構成体で行うことにより燃料電池を小型化できる。
さらには、空気供給ファンと冷却ファンとを別個に制御することで、発電時の発熱を制御したり、保湿としての水分量を制御でき、発電効率を上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係る燃料電池の一部を省略した分解斜視図、図2は燃料電池の構成斜視図である。
両図において、燃料電池のスタック7は、セルを多数積層して構成してある。そしてこのセルを積層することによって中央部分に空気供給口8と、空気供給口8の両側に多数の冷却送風口9が形成されている。セルには、水素と酸素が供給されて反応して発電する高分子薄膜と、高分子薄膜を挟んで両側にセパレータとを設けている。
また、空気供給口8は内部の加工された溝によって、空気供給方向とは直角方向の側面に、多数の空気排出口10として連通形成される。同様に、冷却送風口9は直線状の溝が形成され、反対側(矢印で示す方向)に排出されるようになっている。
【0008】
送風構成体11は、中央部分に空気供給ダクト12がスタック7に形成された空気供給口8の列と合致するように形成されている。冷却送風ダクト13は空気供給ダクト12の両側に形成され、同様にスタック7に形成された冷却送風口9の列と合致するように形成されている。空気供給ファン14は、空気供給ダクト12の一方側に、空気供給ダクトに形成された通気孔15に連通して取り付けられている。冷却ファン16は、空気供給ファン14とは反対側の端に位置して冷却送風ダクト13に形成された通気孔17に連通して取り付けられている。
なお、空気供給ファン14と冷却ファン16は送風構成体11に一体に設けても、別途取り付けてもよい。
【0009】
図2は、上記した燃料電池のスタック7に送風構成体11を取り付けて一体化したものである。
燃料電池のスタック7に形成された空気供給口8の列に対応する位置に送風構成体11の空気供給ダクト12が、また空気供給口8の両側に形成された冷却送風口9の列に対応する位置に冷却送風ダクト13がそれぞれ合致して一体化構成される。
空気供給ファン14からの空気は、通気孔15から空気供給ダクト12を通って燃料電池のスタック7に形成された空気供給口8の列に送られ、酸化剤としての酸素が取り込まれる。したがって空気は空気供給ダクト12を通じて送風されるため、他に分散することなく無駄のない効率的な供給が行える。
また、冷却ファン16からの冷却風も、通気孔17から冷却送風ダクト13を通って燃料電池のスタック7に形成された冷却送風口9の列に送られ、反対側の冷却排出口より矢印のように排出されるため、スタック全体を内部から効率よく冷却することができる。
空気供給ファン14と冷却ファン16とは、燃料電池の発電時の発熱や発電に必要な保湿としての水分量を適当に保持する必要があることから、それぞれ別個に回転制御するようにすることが望ましい。そうすることで発熱や発電に必要な保湿を最適状態に維持し、発電効率の向上を図ることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明の燃料電池発電装置は、商用電源が使用不可の状態の時あるいは商用電源が無い場所での発電装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る燃料電池の構成斜視図
【図2】本発明の燃料電池の斜視図
【図3】従来の燃料電池発電装置の模式斜視図
【符号の説明】
【0012】
7 スタック
8 空気供給口
9 冷却送風口
10 空気排出口
11 送風構成体
12 空気供給ダクト
13 冷却送風ダクト
14 空気供給ファン
15 通気孔
16 冷却ファン
17 通気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に空気供給口が形成され、さらに前記空気供給口の両側に多数の冷却送風口が形成された燃料電池のスタックと、空気供給ファンと連通形成された空気供給ダクトと、前記空気供給ダクトの両側であって前記空気供給ファンとは反対側の位置に設けられた冷却ファンと連通形成された冷却送風ダクトを備えた送風構成体とを具備し、前記スタックに形成された前記空気供給口の列に対応する位置に前記送風構成体の前記空気供給ダクトが、また前記冷却送風口に対応する位置に前記冷却送風ダクトがそれぞれ合致するよう前記スタックと前記送風構成体とを一体化して構成することを特徴とする燃料電池発電装置。
【請求項2】
前記空気供給ファンと前記冷却ファンとを別個に制御するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−95366(P2007−95366A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−280296(P2005−280296)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(594080873)株式会社キュー・エム・ソフト (3)
【出願人】(595117356)株式会社バンテック (7)
【Fターム(参考)】