燃料電池装置
【課題】燃焼火炎の高温の燃焼排気ガスと改質部との間における熱交換効率を高め、改質部に対する加熱効率を改善した燃料電池装置を提供する。
【解決手段】アノードオフガスを燃焼用空間5で燃焼させた燃焼火炎50で改質部42を加熱させる燃料電池20が設けられている。排気ガス通路7は、燃焼火炎50の燃焼排気ガスを改質部42に接触させる接触通路70f,70sと、カソードガス通路8のカソードガスを排気ガス出口74に向かわせる下流通路73とを有する。カバー部材200は、燃焼火炎50が燃焼する燃焼用空間5を覆うと共に、燃焼排気ガスが接触通路70f,70sに流れることなく下流通路73に短絡的に向かうことを抑制し、且つ、燃焼排気ガスを接触通路70f,70sを経由させて下流通路73に向かわせる。
【解決手段】アノードオフガスを燃焼用空間5で燃焼させた燃焼火炎50で改質部42を加熱させる燃料電池20が設けられている。排気ガス通路7は、燃焼火炎50の燃焼排気ガスを改質部42に接触させる接触通路70f,70sと、カソードガス通路8のカソードガスを排気ガス出口74に向かわせる下流通路73とを有する。カバー部材200は、燃焼火炎50が燃焼する燃焼用空間5を覆うと共に、燃焼排気ガスが接触通路70f,70sに流れることなく下流通路73に短絡的に向かうことを抑制し、且つ、燃焼排気ガスを接触通路70f,70sを経由させて下流通路73に向かわせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃焼火炎で改質部を加熱させる燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の燃料電池装置として、燃料原料を改質させてアノードガスを生成させる改質部と、改質部で生成されたアノードガスとカソードガスとで発電する燃料電池とを備えると共に、燃料電池から吐出されたアノードオフガスを燃焼用空間で燃焼させた燃焼火炎で改質部を加熱させるものが知られている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−158527号公報
【特許文献2】特開2008−66127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した燃料電池装置によれば、燃料電池から吐出されたアノードオフガスを燃焼用空間で燃焼させた燃焼火炎で改質部を効率よく加熱させることができる。更に産業界では、改質部の加熱効率を向上させることが要請されている。
【0005】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、燃焼火炎の高温の燃焼排気ガスが改質部に接触する確率を高め、燃焼火炎の高温の燃焼排気ガスと改質部との間における熱交換効率を高め、改質部に対する加熱効率を改善した燃料電池装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る燃料電池装置は、(i)燃料原料を改質させてアノードガスを生成させる改質部と、(ii)改質部で生成されたアノードガスとカソードガスとで発電し且つ燃料電池から吐出されたアノードオフガスを燃焼用空間で燃焼させた燃焼火炎で改質部を加熱させる燃料電池と、(iii)改質部で生成されたアノードガスを燃料電池の内部に供給するアノードガス通路と、(iv)カソードガスを燃料電池の内部に供給するカソードガス通路と、(v)燃焼用空間の燃焼排気ガスを改質部に接触させる接触通路と接触通路の下流に位置すると共に排気ガス出口に向かう下流通路とを有する排気ガス通路と、(vi)燃焼火炎が燃焼する燃焼用空間を覆うと共に、燃焼用空間の燃焼排気ガスが接触通路に流れることを促進し、且つ、燃焼用空間の燃焼排気ガスを接触通路を経由させて下流通路に向かわせるカバー部材とを具備する。
【0007】
改質部で生成されたアノードガスは、燃料電池の内部に供給される。カソードガスは燃料電池の内部に供給される。これにより燃料電池は発電する。燃料電池から吐出された発電反応後のアノードオフガスは、燃焼用空間で燃焼されて燃焼火炎となる。燃焼火炎は改質部を加熱させる。これにより改質部は改質反応に適する温度に加熱される。
【0008】
カバー部材は、燃焼火炎が燃焼する燃焼用空間を覆う。これによりカバー部材は、燃焼用空間の燃焼排気ガス(以下、排気ガスともいう)が接触通路に流れることを促進する。よってカバー部材は、燃焼用空間の排気ガスを積極的に接触通路を経由させて下流通路に向かわせる。このため燃焼用空間の排気ガスが接触通路以外の部位に流れることが抑制され、接触通路を経由することになる。このため接触通路を流れる単位時間あたりの排気ガスの流量が増加する。従って、接触通路を流れる高温の排気ガスが改質部に接触する確率が高まる。高温の排気ガスと改質部との間における熱交換効率が向上し、改質部の加熱効率が高められる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る燃料電池装置によれば、カバー部材は、燃焼用空間の排気ガスが接触通路に流れることを促進し、且つ、燃焼用空間の排気ガスを接触通路を経由させて下流通路に向かわせる。このため燃焼用空間の排気ガスが接触通路以外の部位に流れることが抑制され、接触通路に向かうことが促進される。このため接触通路を流れる排気ガスの流量が増加する。従って、接触通路を流れる排気ガスと改質部との間における熱交換効率が向上し、改質部の加熱効率が高められる。このため、改質部における改質反応が良好なり、燃料電池の発電効率が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態1に係り、燃料電池装置の断面図である。
【図2】実施形態1に係り、燃料電池装置のカソードガス通路の対向通路を部分的に示す斜視図である。
【図3】実施形態1に係り、燃料電池装置の要部の断面図である。
【図4】実施形態1に係り、燃料電池および改質部付近を示す概念図である。
【図5】実施形態1に係り、燃料電池および改質部付近の概念を示す斜視図である。
【図6】実施形態2に係り、燃料電池装置の要部の断面図である。
【図7】実施形態3に係り、燃料電池装置の要部の断面図である。
【図8】実施形態3に係り、カバー部材が改質部の側面に当接している状態を模式的に示す断面図である。
【図9】実施形態4に係り、燃料電池装置の断面図である。
【図10】実施形態5に係り、燃料電池装置の断面図である。
【図11】実施形態6に係り、燃料電池装置の断面図である。
【図12】実施形態6に係り、燃料電池装置の要部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
カバー部材は、燃焼火炎が燃焼する燃焼用空間を覆うと共に燃焼用空間の排気ガスを接触通路に向かわせる。カバー部材は、燃焼用空間を覆うように改質部に接触していることができる。この場合、カバー部材は改質部はに固定されていても良いし、圧接されていても良い。カバー部材が改質部に固定されている場合には、改質部の支持性を高めることができる。
【0012】
好ましい形態によれば、断面において、燃焼用空間はカソードガス通路を形成する通路形成部材を挟むように第1燃焼用空間および第2燃焼用空間を有する。この場合、カソードガス通路を形成する通路形成部材は、第1燃焼用空間と第2燃焼用空間とを連通させる連通路を有することが好ましい。この場合、第1燃焼用空間および第2燃焼用空間との連通性が連通路により確保される。故に、第1燃焼用空間と第2燃焼用空間との間におけるガス流通性が良好に確保される。このため第1燃焼用空間における燃焼火炎の燃焼性および第2燃焼用空間における燃焼火炎の燃焼性とのばらつき低減に貢献できる。
【0013】
好ましい形態によれば、カソードガス通路は燃料電池に対向すると共に燃料電池から受熱する対向通路を有する。この場合、燃料電池と対向通路との間には、カソードガス通路の対向通路から供給され且つ燃料電池の内部に流入されなかったカソードガスを燃焼用空間に向けて流す第1通路が設けられていることが好ましい。この場合、第1通路においてカソードガスが流れる方向と、カソードガス通路の対向通路においてカソードガスが流れる方向とは、互いに逆向きであることが好ましい。このようにすれば、第1通路におけるカソードガスと、カソードガス通路の対向通路におけるカソードガスとの熱交換効率を高めるのに有利となる。
【0014】
好ましい形態によれば、燃料電池とカバー部材との間には、カソードガス通路から供給され且つ燃料電池の内部に流入されなかったカソードガスを燃焼用空間に向けて流す第2通路が設けられている。この場合、燃料電池からの伝熱によりカバー部材が加熱され易くなる。このように加熱されたカバー部材は、第2通路を燃焼用空間に向けて流れるカソードガスを加熱させるのに有利である。よって燃焼用空間における燃焼効率を高めるのに有利である。
【0015】
好ましい形態によれば、カバー部材のうち少なくとも第2通路を形成する表面には、第2通路を通過するカソードガスの昇温性を高めるように、スタックおよび/または燃焼火炎からの輻射熱を吸収させる吸収率を高める輻射熱吸収化処理が施されている。この場合、カバー部材の表面は、第2通路を燃焼用空間に向けて流れるカソードガスを加熱させ、燃焼用空間における燃焼効率を高めるのに有利である。
【0016】
好ましい形態によれば、カバー部材のうち少なくとも第2通路を形成する表面には、スタックおよび/または燃焼火炎からの輻射熱を反射させる反射率を高める輻射熱反射化処理が施されている。この場合、スタックおよび/または燃焼火炎の温度を高めに維持させるのに貢献できる。上記した輻射熱吸収化処理としては、燃料電池装置を構成する通路を形成する通路形成部材などの部材の表面に施すことができる。
【0017】
(実施形態1)
図1〜図5は実施形態1を示す。本実施形態は、固体酸化物型の燃料電池装置に適用した例を示す。図1は実施形態1に係る燃料電池装置の概念を示す。燃料電池装置1は、複数の燃料電池が厚み方向に積層されて長手方向(図1の紙面垂直方向)に沿って延設されたスタック2を有する。燃料電池装置1は、基体3と、基体3の配置室30にスペーサを兼ねるシール部20wを介して収容された燃料電池20で形成されたスタック2と、基体3の配置室30においてスタック2の上側に配置された改質器4と、スタック2の上面と改質器4の下面との間に形成された燃焼用空間5と、スタック2の外側に配置された断熱材料で形成された断熱層6と、断熱層6の外側に配置された排気ガス通路7と、排気ガス通路7の外側に配置されたカソードガス通路8とを有する。ここで、排気ガス通路7およびカソードガス通路8は、スタック2の長手方向(図1の紙面垂直方向,燃料電池の積層方向)に沿って延設されている。排気ガス通路7は、互いに対面する板状をなす通路形成部材701,702で形成されている。カソードガス通路8は、互いに対面する板状をなす通路形成部材801,701で形成されている。
【0018】
図4および図5は燃料電池20および改質器4付近の概念図を示す。図5に示すように、スタック2を構成する燃料電池20は、アノードガスが供給される通路21rをもつ多孔質導電部21wと、多孔質導電部21wに隣接するアノード21と、カソードガスが供給される酸化剤極(空気極)として機能するカソード22と、アノード21およびカソード22で挟まれた固体酸化物を母材とする膜状の電解質23と、コネクタ20xとを有する。電解質23を形成する固体酸化物は、スタック2の作動温度において酸素イオン(O2−)を伝導させる性質をもつものであり、YSZ等のジルコニア系、ランタンガレート系が例示される。アノード21は、ニッケル−セリア系サーメットが例示される。カソード22は、サマリウムコバルタイト、ランタンマンガナイトが例示される。但し材質は上記に限定されるものではない。図5に示すように、複数個の燃料電池20は、長手方向(矢印L方向)に隙間20rを介して並設されてスタック2を形成している。隙間20rはカソード22に対面する。なお、燃料電池20同士は図略の集電部材により電気的に接続されている。
【0019】
改質器4は、改質水を水蒸気化させる蒸発部40と、水蒸気を利用して燃料原料を改質される改質部42とを備えている。蒸発部40は箱状をなしており、下面40d,上面40u,側面40s,側面40mを有する。改質部42は箱状をなしており、下面42d,上面42u,側面42s,側面42mを有する。蒸発部40は、改質水系から蒸発部40に供給される液相状の改質水を水蒸気化させる。改質部42は、改質反応を促進させる改質触媒を担持するセラミックス材を有する。改質部42は蒸発部40の下流に設けられており、蒸発部40で生成された水蒸気で炭化水素系の燃料原料を高温領域において水蒸気改質させてアノードガスを生成させる。アノードガスは水素ガスまたは水素含有ガスである。なお、固体酸化物形の燃料電池によれば、スタック2の定常運転における燃料電池の作動温度は、例えば450〜1100℃の範囲内、殊に550〜800℃の範囲内であることが好ましい。
【0020】
図1に示すように、カソードガス通路8は、入口80と、入口80から縦方向に上向きに延びる第1通路81と、第1通路81の上端から横方向にのびる第2通路82と、第2通路82の先端から下向きに延びる第3通路となる対向通路83と、対向通路83の下端側に形成された出口84とをもつ。図2に示すように、対向通路83はスタック2から受熱する通路であり、通路形成部材701の一部をなす薄箱形状の通路形成部分701kで形成されている。通路形成部分701kは薄箱形状をなしており、スタック2のカソードに連通する出口84を下端部に有する。
【0021】
図1に示すように、排気ガス通路7は、金属を母材とする通路形成部材701,702で形成されている。排気ガス通路7は、改質器4に直接的に接触する接触通路70と、接触通路70の下流に連通するように延設された下流通路73とを有する。下流通路73は入口72および出口74(排気ガス出口)を有する。相対的に高温側の排気ガスが流れる下流通路73は、カソードガス通路8の第1通路81を流れる相対的に低温側のカソードガスと互いに熱交換する熱交換器7Xを構成する。
【0022】
図1に示すように、接触通路70は、燃焼用空間5と排気ガス通路7との間においてこれらに連通するように位置している。接触通路70は、改質部42の側面42sに接触する第1接触通路70fと、改質部42の上面42uに接触する第2接触通路70sとを有する。第1接触通路70fは、通路形成部分701kを介して対向通路83に対向している。第1接触通路70fは、蒸発部40の側面40sおよび通路形成部分701kに接触する。第2接触通路70sはカソードガス通路8の第2通路82と対向している。第2接触通路70sは蒸発部40の上面40uに接触する。
【0023】
なお、スタック2は、カソードガス通路8の対向通路83を挟むように2組設けられている。すなわち、スタックは、対向通路83を挟む第1スタック2fおよび第2スタック2sを備えている。図1に示すように、スタック2の下部には、アノードガスを燃料電池20の入口に案内するアノードガスマニホルド24が配置されている。ここで、スタック2、カソードガス通路8、排気ガス通路7、改質器4およびアノードガスマニホルド24、さらには、燃焼用空間5は、燃料電池装置1の長手方向(図1の紙面の垂直方向,燃料電池20の積層方向)に沿って延設されている。
【0024】
燃料電池20が発電運転するときについて説明を加える。この場合、図4に示す燃料原料ポンプ90(燃料原料搬送源)が駆動するため、炭化水素系の燃料原料が燃料原料供給通路92を介して改質器4の蒸発部40に供給される。また改質水ポンプ93(水搬送源)が駆動し、図略の貯水タンクの改質水が改質水通路94を介して蒸発部40に供給される。ここで、燃焼火炎50で蒸発部40および改質部42は加熱されているため、蒸発部40は液相状の改質水を水蒸気化させる。生成された水蒸気は改質部42に供給される。改質部42は燃料原料を水蒸気改質させ、水素を含むアノードガスを生成させる。燃料原料がメタン系である場合には、水蒸気改質ではアノードガスの生成は、次の(1)式に基づくと考えられている。固体酸化物形の燃料電池20では、H2の他にCOも燃料となりうる。
【0025】
(1)…CH4+2H2O→4H2+CO2
CH4+H2O→3H2+CO
CnHmが炭化水素の一般的な化学式であるとすると、水蒸気改質の一般式は次の(1−1)式のようになる。n=1、m=4であると、メタンの水蒸気改質の式が得られる。
【0026】
(1−1)…CnHm+2nH2O→nCO2+[(m/2)+2n)]H2
生成された水素を含有するアノードガスは、アノードガス通路25およびアノードガスマニホルド24を介して、燃料電池20のアノードの入口に供給されて発電に使用される。またカソードガスポンプ95(カソードガス搬送源)が駆動しているため、空気であるカソードガスが、図1に示すように矢印C1方向,矢印C2方向,矢印C3方向,矢印C4方向,矢印C5方向,矢印C6方向に沿って、カソードガス通路8の第1通路81、第2通路82および対向通路83を流れ、カソードガス通路8の先端の出口84からスタック2のカソードの下部の入口に供給され、さらに、スタック2のカソードの内部を上向き(図1に示す矢印U1方向)に通過しつつ、カソードの発電反応に使用される。発電反応後のカソードオフガスは、スタック2のカソードの上面から燃焼用空間5に排出される。これに対して、改質部22で生成されたアノードガスは、アノードガスマニホルド24からスタック2のアノードを上向きに通過しつつ、アノードの発電反応に使用される。これにより燃料電池20は発電する。発電反応においては、水素含有ガスで供給されるアノードでは、基本的には(2)の反応が発生ると考えられている。酸素を含む空気が供給されるカソードでは、基本的には(3)の反応が発生すると考えられている。カソードにおいて発生した酸素イオン(O2−)がカソード22からアノードに向けて電解質(酸素イオン伝導体,イオン伝導体)を伝導する。
【0027】
(2)…H2+O2−→H2O+2e−
COが含まれている場合には、CO+O2−→CO2+2e−
(3)…1/2O2+2e−→O2−
上記した発電反応後のカソードオフガスは未反応の酸素を含有しており、スタック2のカソードの上部から燃焼用空間5に吐出される。同様に、発電反応後のアノードオフガスは未反応の燃焼成分(水素)を含有しており、スタック2のアノードの上面から燃焼用空間5に排出される。この結果、燃焼用空間5においてアノードオフガスはカソードオフガスにより燃焼し、燃焼火炎50を形成する。燃焼火炎50により、改質部42および蒸発部40が加熱される。これにより改質部42における改質反応が維持され、蒸発部40において水蒸気生成反応が維持される。なお、(2)の反応式によれば、アノードオフガスは水分(H2O)を含むことがある。本実施形態によれば、スタック2のアノードに供給されるアノードガス、すなわち、改質部42に供給される燃料原料の流量としては、燃料電池20のアノードにおける発電反応で使用される流量と、燃焼用空間5においてアノードオフガスが燃焼火炎50を形成する流量とを含む流量が設定されている。カソードガスの流量の流量としては、燃料電池20のカソードにおける発電反応で使用される流量と、燃焼用空間5においてカソードオフガスが燃焼用空気として燃焼火炎50を形成する流量と、余裕流量とを加算した流量が設定されている。
【0028】
上記したように燃焼用空間5において燃焼した後のアノードオフガスおよびカソードオフガスは、高温の排気ガスとなる。この排気ガスは、入口72から下流通路73に進入し下向きに流れ、出口74から外部に吐出される。ここで、排気ガス通路7の下流通路73を下向きに流れる相対的に高温の排気ガスと、カソードガス通路8の第1通路81を上向き(下流通路73における排気ガスの流れ方向と反対方向)に流れる相対的に低温のカソードガスとが、対向流として、互いに熱交換する。よって排気ガスが冷却されると共に、スタック2に供給される直前のカソードガスが予熱される。上記した『下向き』は蛇行しつつ下向きも含み、ガスが全体として下向きに流れる意味である。『上向き』は蛇行しつつ上向きも含み、ガスが全体として上向きに流れる意味である。上記したように予熱されたカソードガスは、カソードガス通路8の第2通路82,対向通路83,出口84を経て、燃料電池20のカソードに供給されるため、カソードにおける発電反応の効率を向上させ得る。
【0029】
換言すると、熱交換器7Xでは、排気ガス通路7の下流通路73を流れる高温の排気ガスは、下向きに流れる。且つ、カソードガス通路8の第1通路81を流れる低温のカソードガスは、上向きに流れる。結果として、高温の排気ガスと低温のカソードガスとは、互いに逆向きに流れる対向流となり、互いに熱交換する。従って、燃焼用空間5から排出された高温の排気ガスは下流通路73においてカソードガスにより効率よく冷却されると共に、スタック2に供給される直前のカソードガスは排気ガスにより効率よく予熱される。このように下流通路73は熱交換通路として機能できる。
【0030】
さて本実施形態によれば、図1に示すように、燃焼火炎50が燃焼する燃焼用空間5を覆う板状をなすカバー部材210が設けられている。カバー部材210の材質は特に限定されるものではなく、金属,耐火物が例示される。金属としては高温における耐食性および強度を有することが好ましく、例えばステンレス鋼(フェライト系、オーステナイト系、マルテンサイト系)等の合金鋼、炭素鋼が例示される。図1および図2に示すように、カバー部材210の上端部206は、改質部42の側面42m,蒸発部40の側面40mに気密的に接触してシールしている。この場合、カバー部材210の上端部206は、改質部の側面42m,蒸発部40の側面40mに接触状態に溶接または取付具等により固定されていても良いし、単に気密的に接触しているだけでも良い。図1に示すように、カバー部材210の上端部206の上面207は、スタック2の上面、改質部42の下面42d,蒸発部40の下面40dよりも上方に突出している。ここで、当該上面207は、改質部42の上面42uおよび蒸発部40の上面40uよりも下方に位置しており、第2接触通路70sにおけるガス流通性が確保されている。このようなカバー部材210を有する本実施形態によれば、燃焼用空間5で燃焼された高温の排気ガスを、接触通路70の第1接触通路70fひいては第2接触通路70sに積極的に向かわせることができる。このため燃焼用空間5から吐出された高温の排気ガスが接触通路70以外の部位に短絡的に流れることが抑制される。すなわち、燃焼用空間5の高温の排気ガスが第1接触通路70fに流れること無く、燃焼用空間5から排気ガス通路7の入口72に直接的に短絡的に流れることが抑えられる。
【0031】
結果として、接触通路70の第1接触通路70fひいては第2接触通路70sに流れる排気ガスの流量が増加する。従って、第1接触通路70fを流れる排気ガスと改質部42の側面42sとの接触確率、ひいては熱交換効率が向上する。且つ、第2接触通路70sを流れる高温の排気ガスと改質部42の上面42uとの接触確率、ひいては熱交換効率が向上する。よって排気ガスが改質部42を加熱させる加熱効率を高めることができる。
【0032】
蒸発部40についても同様である。すなわち、第1接触通路70fを流れる高温の排気ガスが蒸発部40の側面40sと熱交換する熱交換効率が向上する。更に、第2接触通路70sを流れる高温の排気ガスと蒸発部40の上面40uとの熱交換効率が向上する。このように蒸発部40の加熱効率が高められる。殊に、スタック2の発電電力が少ないときには、スタック2に供給されるアノードガスおよびカソードガスの単位時間あたりの流量が少ない。このため、改質部42および蒸発部40が流路抵抗となる割合が高くなる。この場合、カバー部材が設けられていない場合には、燃焼用空間5の排気ガスが燃焼用空間5から排気ガス通路7の入口72に短絡的に流れ込み易くなる。この場合、高温の排ガスが改質部42および蒸発部40に接触する頻度が低下し、改質部42および蒸発部40の加熱効率が低下することが考えられる。しかしながら本実施形態によれば、上記した排気ガスの短絡的な流れを防止するカバー部材210が設けられているため、上述するように改質部42および蒸発部40と排気ガスとの接触性を高め、排気ガスで改質部42および蒸発部40を加熱させる加熱効率を高めることができる。
【0033】
更に本実施形態によれば、図1から理解できるように、燃焼用空間5の高温の排気ガスが第1接触通路70fに流れる。このため、対向通路83を流れるカソードガスを第1接触通路70fの高温の排気ガスで加熱させる加熱効率を高めることができる。このためスタック2に供給される直前の対向通路83のカソードガスを効率よく加熱させるのに貢献できる。なお、カバー部材210の下端部205が溶接または取付具で固定部350に固定され、且つ、カバー部材200の上端部206が改質器4の改質部42の側面42mに溶接または取付具で固定されていることが好ましい。この場合、改質器4の改質部40の支持性をカバー部材210がアシストでき、改質器4の支持性を高めることができる。但しこれに限定されるものではない。
【0034】
ところで、スタック2の発電反応は発熱反応である。スタック2の内部では、前述したようにアノードガスおよびカソードガスは上向きに流れる。このためスタック2の内部における発電反応を考慮すると、更に、スタック2の上側に燃焼火炎50が存在することを考慮すると、高さ方向においてスタック2の上部は下部よりも高温となり易い。スタック2の温度はスタック2の発電反応に大きく影響を与える。これを考慮すると、スタック2の高さ方向における発電反応の均一化を図るためには、スタック2の上部と下部との温度差が増大することは、回避されることが好ましい。
【0035】
この点について本実施形態によれば、図1に示すように、カソードガス通路8を形成する通路形成部材701のうち、対向通路83を形成する通路形成部分701kは、第1接触通路70fおよびスタック2の側面2kに対面する。通路形成部分701kとスタック2の側面2kとで、カソードガスが上向き(矢印U2方向)流れる第1通路310を形成している。すなわち、第1通路310は、カソードガス通路8の対向通路83から供給され且つスタック2のカソードに流入されなかったカソードガスを、燃焼用空間53に向けて上向き(矢印U2方向)に流す通路である。ここで、第1通路310においてカソードガスが流れる方向(矢印U2方向,上向き)と、対向通路83においてカソードガスが流れる方向(矢印C5方向,下向き)とは、互いに逆向きである。対向通路83のカソードガスは、対向通路83の下部に向かうにつれてスタック2の側面2kから受熱して加熱される。
【0036】
このため対向通路83においては、その下部が相対的高温領域となり、その上部が相対的低温領域となると考えられる。これに対して、第1通路310をカソードガスが上向き(矢印U2方向)に流れるとき、第1通路310においては、その上部が相対的高温領域となり、下部が相対的低温領域となると考えられる。よって第1通路310の相対的高温領域が対向通路83の相対的低温領域に通路形成部分701kを介して対面する。また、第1通路310の相対的低温領域が対向通路83の相対的高温領域に通路形成部分701kを介して対面する。このためスタック2の高さ方向における上部と下部との温度のばらつきを小さくさせるのに貢献できる。ここで、第1通路310の相対的高温領域が対向通路83の相対的高温領域に通路形成部分701kを介して対面したり、あるいは、第1通路310の相対的低温領域が対向通路83の相対的低温領域に通路形成部分701kを介して対面したりしている構造も考えられる。この場合には、スタック2の高さ方向の温度のばらつきが増加するおそれがある。スタック2の高さ方向における発電ばらつきの低減には好ましくない。
【0037】
図1および図3に示すように、上記したカバー部材210は、スタック2の側面2mに対面する表面201を有する。ここで、スタック2の側面2mとカバー部材210の表面201との間には、カソードガスが流れる第2通路320が形成されている。ここで、カソードガス通路8の対向通路83から供給され且つスタック2に流入されなかったカソードガスは、第2通路320に流れ、第2通路320を上向き(矢印U3方向)に燃焼用空間5に向けて流れる。このようにスタック2の側面2mとカバー部材210とは直接的に接触していない。すなわち、断熱空間として機能できる第2通路320がスタック2の側面2mとカバー部材210との間に形成されているため、スタック2の高温維持に貢献できる。
【0038】
(実施形態2)
図6は実施形態2を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。以下、異なる部位を中心として説明する。図6は燃料電池装置1の要部の断面を示す。図6に示すように、カソードガス通路8を形成する通路形成部材701は、対向通路83を形成する通路形成部分701kを有する。燃焼用空間5は、対向通路83および通路形成部分701kを挟むように、第1燃焼用空間5fおよび第2燃焼用空間5sを有する。図6に示すように、カソードガス通路8の対向通路83を形成する通路形成部分701kには、連通路87を有する筒体88が溶接または取付具等で複数個固定されている。連通路87は第1燃焼用空間5fと第2燃焼用空間5sとを連通させており、図6の紙面の垂直方向において、間隔を隔てて間欠的に複数個形成されている。連通路87により、第1燃焼用空間5fおよび第2燃焼用空間5sとの連通性が良好に確保される。
【0039】
故に、第1燃焼用空間5fと第2燃焼用空間5sとの間におけるアノードオフガス流通性、カソードガス流通性が確保される。このため第1燃焼用空間5fにおける燃焼性と第2燃焼用空間5sにおける燃焼性とのばらつき低減に貢献できる。また筒体88は図6の紙面垂直方向に間隔を隔てて複数個配置されているため、対向通路83を流れるカソードガスの流れを損なうことが抑えられる。更に対向通路83を流れるカソードガスが筒体88の外壁面88mに衝突するため、カソードガスの拡散作用を期待でき、カソードガスの温度の均一化に貢献できる。
【0040】
(実施形態3)
図7および図8は実施形態3を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。以下、異なる部位を中心として説明する。図7は燃料電池装置1の断面を示す。カバー部材210の一端部である下端部205は、断熱性を有する固定部350に溶接または取付具により固定されている。カバー部材210の他端部である上端部206は自由端状をなしており、改質部42の側面42mに気密的に当接している。具体的には、カバー部材210の上端部206は、改質部42に向けて付勢力F1(図8)を発揮させる板バネとしても機能できる。カバー部材210の上端部206のバネ性により、上端部206に形成された突起208の頂面209は、改質部42の側面42mに気密的に当接し、シールポイントを形成している。なお、突起208は、図7および図8の紙面垂直方向に沿って、すなわち、改質部42の長さ方向に沿って、連続的に延設されていることが好ましい。
【0041】
本実施形態においては、燃焼用空間5の高温の排気ガスが接触通路70以外の部位に短絡的に流れることが抑制される。よって、高温の排気ガスは、接触通路70の第1接触通路70fおよび第2接触通路70sに向かうことになる。この結果、接触通路70の第1接触通路70fおよび第2接触通路70sを流れる排気ガスの単位時間当たりの流量が良好に確保される。従って、接触通路70を流れる排気ガスと改質部42の側面42mおよび蒸発部40の側面40mとの熱交換効率が向上し、改質部42の加熱効率が高められる。
【0042】
本実施形態によれば、カバー部材210の下端部205は固定部350に固定されて拘束されているが、カバー部材210の上端部206の突起208が改質部42の側面42mに接触するものの、改質部42および蒸発部40には固定されていない。このため燃料電池装置1の使用時および非使用時においてカバー部材210が長さ方向に熱膨張または熱収縮するときであっても、突起208は改質部42の側面42mおよび蒸発部40の側面40mに接触しつつ滑るため、カバー部材210の上端部206に無理な応力が集中することが抑制される。すなわち、カバー部材210は、熱膨張および熱収縮を吸収する構造を有する。
【0043】
(実施形態4)
図9は実施形態4を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。以下、異なる部位を中心として説明する。図9は燃料電池装置1の断面を示す。断熱層6がカバー部材として機能する。すなわち、断熱層6の上端部6uが改質部42の側面42m(改質器の側面)にあてがわれており、燃焼火炎50を燃焼させる燃焼用空間5を覆う。このためカバー部材として機能する断熱層6は、燃焼用空間5の排気ガスが第1接触通路70fに向かうこと無く、直接的に下流通路73の入口72に向かう短絡を抑える。これにより燃焼用空間5の排気ガスを接触通路70の第1接触通路70fに効率よく向かわせることができる。すなわち、燃焼用空間5の高温の排気ガスが接触通路70の第1接触通路70f以外の部位に流れることが抑制される。すなわち、排気ガスの全部またはほとんど全部は、接触通路70の第1接触通路70fに向かうことになる。このため接触通路70の第1接触通路70fを流れる排気ガスの流量が増加する。従って、接触通路70の第1接触通路70fを流れる排気ガスと改質部42の側面42sとの熱交換効率が向上し、改質部42の加熱効率が高められる。蒸発部40についても同様である。
【0044】
(実施形態5)
図10は実施形態5を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。以下、異なる部位を中心として説明する。図10に示すように、カバー部材210は、高さ方向に延びると共に下端部205が固定部350に溶接または取付具で固定された金属製のカバー本体209と、カバー本体209の上方の先端から改質部42に向けてL字形状にプレス成形で曲成された曲成部211とを有する。曲成部211は改質器4(改質部42の上面42u)に溶接または取付具で固定されており、厚み方向に貫通する貫通孔を有しない。カバー部材210はプレス成形で成形された突起状の成形部216を有する。万一、カバー部材210がその長さ方向に熱膨張および熱収縮したとしても、成形部216の変形により熱膨張および熱収縮を吸収して緩和できる。図10に示すように、カバー部材210の上端の曲成部211は改質部の上面42u,蒸発部40の上面40uに気密的に接触してシールしている。このため燃焼用空間5から吐出された排気ガスが燃焼用空間5から排気ガス通路7の入口72に直接的に且つ短絡的に流れることが抑えられる。この結果、燃焼用空間5の排気ガスを接触通路70の第1接触通路70fに向かわせる。
【0045】
(実施形態6)
図11および図12は実施形態6を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。以下、異なる部位を中心として説明する。図11に示すように、カバー部材210は、高さ方向に延びるカバー本体209と、カバー本体209の先端から改質部42に向けて曲成された曲成部211とを有する。曲成部211は複数個の貫通孔213を有する。貫通孔213は曲成部211に沿って矢印L方向に延びるスリット状としても良い。この場合、排気ガスと改質器4とを積極的に接触させる接触通路70は、(i)カソードガス通路8の対向通路83と改質部42の側面42sとの間に形成された第1接触通路70fと、(ii)改質部42の上面42uに接触する第2接触通路70sと、(iii)カバー部材210の表面201と改質部42の側面42m(蒸発部40の側面40m)と曲成部211との間に形成され排気ガスと側面42mとを接触させる第3接触通路70tとを有する。図11に示すように、カバー部材210の曲成部211は、改質器4の上面、すなわち、改質部42の上面42u,蒸発部40の上面40uに接触している。この場合、カバー部材210の曲成部211は、改質部42の上面42uおよび蒸発部40の上面40uに固定されていても良いし、固定されず気密的に接触しているだけでも良い。
【0046】
本実施形態によれば、図11から理解できるように、燃焼用空間5の高温の排気ガスは、改質部42の側面42s,上面42uに接触しつつ接触通路70の第1接触通路70fおよび第2接触通路70sに向かわせる流れFAと、改質部42の側面42mに接触しつつ第3接触通路70tおよび貫通孔213を貫通するように上向きに流れる流れFBとに分岐される。このため本実施形態においても、燃焼用空間5から吐出された高温の排気ガスが接触通路70以外の部位に短絡的に流れることが抑制される。結果として、高温の排気ガスと改質部42との熱交換効率が向上し、改質部42の加熱効率が高められる。なお、蒸発部40についても同様である。貫通孔213の開口面積は、単位時間あたりにおける流れFAの流量と流れFBの流量との比率に影響を与える。貫通孔213の開口面積を相対的に小さくすれば、流れFAの流量が増加し、第1接触通路70fを流れる排気ガスの流量が増加し、流れFBの流量が減少する。また、貫通孔213の開口面積を相対的に大きくすれば、流れFAの流量が減少し、第1接触通路70fを流れる排気ガスの流量が減少し、流れFBの流量が増加する。このように貫通孔213の開口面積により、対向通路83を流れるカソードガスの加熱効率、改質器4の加熱効率をチューニングできる利点が得られる。
【0047】
(実施形態7)
本実施形態は上記した各実施形態と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有するため、図1〜図12を準用することができる。以下、異なる部位を中心として説明する。カバー部材210のうち少なくとも第2通路320を形成する表面201については、スタック2および/または燃焼火炎50からの輻射熱を吸収させる吸収率を高める輻射熱吸収化処理が施されていることが好ましい。輻射熱吸収化処理としては、例えば、カバー部材210のうち少なくとも第2通路320を形成する表面201を黒色または疑似黒色とすることが例示される。また表面201を粗面化(Raで50マイクロメートル以上、100マイクロメートル以上)して受熱面積を増加させること、プレス成形などによるディンプル化が例示される。これによりカバー部材210の表面201における輻射熱吸収性が高まる。この結果、第2通路320を通過するカソードガスの昇温性を高めるのに有利となる。ひいては、燃焼用空間5における燃焼性を高めることができる。
【0048】
(実施形態8)
本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有するため、図1〜図12を準用することができる。以下、異なる部位を中心として説明する。カバー部材210のうち少なくとも第2通路320を形成する表面201については、スタック2および/または燃焼火炎50からの輻射熱を反射させる反射率を高めるように輻射熱反射化処理されていることが好ましい。具体的には、表面201の表面粗さはRaで20マイクロメール以下、殊に10マイクロメール以下にされており、鏡面化されていることが好ましい。更に、表面201は、白色、灰色、白っぽい色とされていることが好ましい。このためカバ部材210の表面201は、スタック2および/または燃焼火炎50の輻射熱を効率よく反射させることができる。よってスタック2および/または燃焼火炎50の放熱が抑えられ、スタック2および/または燃焼火炎50の温度ができるだけ高温に維持されることが期待される。
【0049】
(実施形態9)
本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有するため、図1〜図12を準用することができる。以下、異なる部位を中心として説明する。対向通路83を形成する通路形成部分701kは、スタック2の側面2kおよび燃焼火炎50に対向しているため、スタック2および燃焼火炎50より加熱される。この場合、通路形成部分701kについては、スタック2および/または燃焼火炎50からの輻射熱を吸収させる吸収率を高める輻射熱吸収化処理が施されていることが好ましい。例えば、通路形成部分701kのうちスタック2および/または燃焼火炎50に対面する表面を、黒色化または疑似黒色化できる。またも当該表面を粗面化(Raで50マイクロメートル以上、100マイクロメートル以上)できる。この場合、通路形成部分701kの昇温性が高まり、対向通路83を流れるカソードガスを加熱させる加熱効率を高めるのに有利である。
【0050】
(その他)本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。スタック2は、カソードガス通路8の対向通路83を挟むように2組設けられているが、これに限らず、スタック2はカソードガス通路8の対向通路83に隣設するように1組設けられている構造でも良い。スタック2は、複数の平板型の燃料電池を厚み方向に積層して形成されているが、これに限らず、複数のチューブ型の燃料電池を組み付けてスタックを形成しても良い。この場合であっても、スタックは長手方向に延設されている。上記した実施形態1によれば、改質部42および蒸発部40は断面四角形状をなしているが、これに限らず、断面円形状でも良い。燃料原料を改質させる改質部42と蒸発部40とは一体化されているが、これに限らず、蒸発部40を改質部42から分離させても良い。この場合蒸発部は別の加熱源で加熱させても良い。燃料電池は固体酸化物形に限定されず、りん酸塩形、溶融炭酸塩形でも良い、要するに改質部を燃焼炎で加熱させるものであれば良い。上記した記載から次の技術的思想が把握される。
【0051】
[付記項1]燃料原料を改質させてアノードガスを生成させる改質部と、改質部で生成されたアノードガスとカソードガスとで発電し且つ燃料電池から吐出されたアノードオフガスを燃焼用空間で燃焼させた燃焼火炎で改質部を加熱させる燃料電池と、改質部で生成されたアノードガスを燃料電池の内部に供給するアノードガス通路と、カソードガスを燃料電池の内部に供給するカソードガス通路と、燃焼用空間の排気ガスを外部に排出させる排気ガス通路とを具備する燃料電池装置。
【0052】
[付記項2]付記項1において、前記カソードガス通路は前記燃料電池に対向する対向通路を有しており、前記燃料電池と前記対向通路との間には、前記カソードガス通路の前記対向通路から供給され且つ前記燃料電池に流入されなかったカソードガスを前記燃焼用空間に向けて流す第1通路が設けられている燃料電池装置。第1通路においてカソードガスが流れる方向とカソードガス通路の対向通路においてカソードガスが流れる方向とは、互いに逆向きが好ましい。
【0053】
[付記項3]付記項1において、前記燃料電池と前記カバー部材との間には、前記カソードガス通路の前記対向通路から供給され且つ前記燃料電池の内部に流入されなかった前記カソードガスを前記燃焼用空間に向けて流す第2通路が設けられている燃料電池装置。燃料電池とカバー部材とが直接接触する接触面積が低減され、燃料電池の温度維持に貢献できる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は例えば定置用、車両用、電気機器用、電子機器用などの燃料電池システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
2はスタック、20は燃料電池、21はアノード、22はカソード、23は電解質、25はアノードガス通路、3は基体、4は改質器、40は蒸発部、42は改質部、42s,42mは改質部の側面、42uは改質部の上面、42dは改質部の下面、5は燃焼用空間、50は燃焼火炎、6は断熱層、7は排気ガス通路、7Xは熱交換器、701,702は通路形成部材、701kは通路形成部分、70は接触通路、70fは第1接触通路、70sは第2接触通路、72は入口、73は下流通路、74は出口(排気ガス出口)、8はカソードガス通路、81は第1通路、82は第2通路、83は対向通路、84は出口、87は連通路、88は筒体、210はカバー部材、205は下端部、206は上端部、201は表面、208は突起、210はカバー本体、211は曲成部、310は第1通路、320は第2通路を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は燃焼火炎で改質部を加熱させる燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の燃料電池装置として、燃料原料を改質させてアノードガスを生成させる改質部と、改質部で生成されたアノードガスとカソードガスとで発電する燃料電池とを備えると共に、燃料電池から吐出されたアノードオフガスを燃焼用空間で燃焼させた燃焼火炎で改質部を加熱させるものが知られている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−158527号公報
【特許文献2】特開2008−66127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した燃料電池装置によれば、燃料電池から吐出されたアノードオフガスを燃焼用空間で燃焼させた燃焼火炎で改質部を効率よく加熱させることができる。更に産業界では、改質部の加熱効率を向上させることが要請されている。
【0005】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、燃焼火炎の高温の燃焼排気ガスが改質部に接触する確率を高め、燃焼火炎の高温の燃焼排気ガスと改質部との間における熱交換効率を高め、改質部に対する加熱効率を改善した燃料電池装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る燃料電池装置は、(i)燃料原料を改質させてアノードガスを生成させる改質部と、(ii)改質部で生成されたアノードガスとカソードガスとで発電し且つ燃料電池から吐出されたアノードオフガスを燃焼用空間で燃焼させた燃焼火炎で改質部を加熱させる燃料電池と、(iii)改質部で生成されたアノードガスを燃料電池の内部に供給するアノードガス通路と、(iv)カソードガスを燃料電池の内部に供給するカソードガス通路と、(v)燃焼用空間の燃焼排気ガスを改質部に接触させる接触通路と接触通路の下流に位置すると共に排気ガス出口に向かう下流通路とを有する排気ガス通路と、(vi)燃焼火炎が燃焼する燃焼用空間を覆うと共に、燃焼用空間の燃焼排気ガスが接触通路に流れることを促進し、且つ、燃焼用空間の燃焼排気ガスを接触通路を経由させて下流通路に向かわせるカバー部材とを具備する。
【0007】
改質部で生成されたアノードガスは、燃料電池の内部に供給される。カソードガスは燃料電池の内部に供給される。これにより燃料電池は発電する。燃料電池から吐出された発電反応後のアノードオフガスは、燃焼用空間で燃焼されて燃焼火炎となる。燃焼火炎は改質部を加熱させる。これにより改質部は改質反応に適する温度に加熱される。
【0008】
カバー部材は、燃焼火炎が燃焼する燃焼用空間を覆う。これによりカバー部材は、燃焼用空間の燃焼排気ガス(以下、排気ガスともいう)が接触通路に流れることを促進する。よってカバー部材は、燃焼用空間の排気ガスを積極的に接触通路を経由させて下流通路に向かわせる。このため燃焼用空間の排気ガスが接触通路以外の部位に流れることが抑制され、接触通路を経由することになる。このため接触通路を流れる単位時間あたりの排気ガスの流量が増加する。従って、接触通路を流れる高温の排気ガスが改質部に接触する確率が高まる。高温の排気ガスと改質部との間における熱交換効率が向上し、改質部の加熱効率が高められる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る燃料電池装置によれば、カバー部材は、燃焼用空間の排気ガスが接触通路に流れることを促進し、且つ、燃焼用空間の排気ガスを接触通路を経由させて下流通路に向かわせる。このため燃焼用空間の排気ガスが接触通路以外の部位に流れることが抑制され、接触通路に向かうことが促進される。このため接触通路を流れる排気ガスの流量が増加する。従って、接触通路を流れる排気ガスと改質部との間における熱交換効率が向上し、改質部の加熱効率が高められる。このため、改質部における改質反応が良好なり、燃料電池の発電効率が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態1に係り、燃料電池装置の断面図である。
【図2】実施形態1に係り、燃料電池装置のカソードガス通路の対向通路を部分的に示す斜視図である。
【図3】実施形態1に係り、燃料電池装置の要部の断面図である。
【図4】実施形態1に係り、燃料電池および改質部付近を示す概念図である。
【図5】実施形態1に係り、燃料電池および改質部付近の概念を示す斜視図である。
【図6】実施形態2に係り、燃料電池装置の要部の断面図である。
【図7】実施形態3に係り、燃料電池装置の要部の断面図である。
【図8】実施形態3に係り、カバー部材が改質部の側面に当接している状態を模式的に示す断面図である。
【図9】実施形態4に係り、燃料電池装置の断面図である。
【図10】実施形態5に係り、燃料電池装置の断面図である。
【図11】実施形態6に係り、燃料電池装置の断面図である。
【図12】実施形態6に係り、燃料電池装置の要部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
カバー部材は、燃焼火炎が燃焼する燃焼用空間を覆うと共に燃焼用空間の排気ガスを接触通路に向かわせる。カバー部材は、燃焼用空間を覆うように改質部に接触していることができる。この場合、カバー部材は改質部はに固定されていても良いし、圧接されていても良い。カバー部材が改質部に固定されている場合には、改質部の支持性を高めることができる。
【0012】
好ましい形態によれば、断面において、燃焼用空間はカソードガス通路を形成する通路形成部材を挟むように第1燃焼用空間および第2燃焼用空間を有する。この場合、カソードガス通路を形成する通路形成部材は、第1燃焼用空間と第2燃焼用空間とを連通させる連通路を有することが好ましい。この場合、第1燃焼用空間および第2燃焼用空間との連通性が連通路により確保される。故に、第1燃焼用空間と第2燃焼用空間との間におけるガス流通性が良好に確保される。このため第1燃焼用空間における燃焼火炎の燃焼性および第2燃焼用空間における燃焼火炎の燃焼性とのばらつき低減に貢献できる。
【0013】
好ましい形態によれば、カソードガス通路は燃料電池に対向すると共に燃料電池から受熱する対向通路を有する。この場合、燃料電池と対向通路との間には、カソードガス通路の対向通路から供給され且つ燃料電池の内部に流入されなかったカソードガスを燃焼用空間に向けて流す第1通路が設けられていることが好ましい。この場合、第1通路においてカソードガスが流れる方向と、カソードガス通路の対向通路においてカソードガスが流れる方向とは、互いに逆向きであることが好ましい。このようにすれば、第1通路におけるカソードガスと、カソードガス通路の対向通路におけるカソードガスとの熱交換効率を高めるのに有利となる。
【0014】
好ましい形態によれば、燃料電池とカバー部材との間には、カソードガス通路から供給され且つ燃料電池の内部に流入されなかったカソードガスを燃焼用空間に向けて流す第2通路が設けられている。この場合、燃料電池からの伝熱によりカバー部材が加熱され易くなる。このように加熱されたカバー部材は、第2通路を燃焼用空間に向けて流れるカソードガスを加熱させるのに有利である。よって燃焼用空間における燃焼効率を高めるのに有利である。
【0015】
好ましい形態によれば、カバー部材のうち少なくとも第2通路を形成する表面には、第2通路を通過するカソードガスの昇温性を高めるように、スタックおよび/または燃焼火炎からの輻射熱を吸収させる吸収率を高める輻射熱吸収化処理が施されている。この場合、カバー部材の表面は、第2通路を燃焼用空間に向けて流れるカソードガスを加熱させ、燃焼用空間における燃焼効率を高めるのに有利である。
【0016】
好ましい形態によれば、カバー部材のうち少なくとも第2通路を形成する表面には、スタックおよび/または燃焼火炎からの輻射熱を反射させる反射率を高める輻射熱反射化処理が施されている。この場合、スタックおよび/または燃焼火炎の温度を高めに維持させるのに貢献できる。上記した輻射熱吸収化処理としては、燃料電池装置を構成する通路を形成する通路形成部材などの部材の表面に施すことができる。
【0017】
(実施形態1)
図1〜図5は実施形態1を示す。本実施形態は、固体酸化物型の燃料電池装置に適用した例を示す。図1は実施形態1に係る燃料電池装置の概念を示す。燃料電池装置1は、複数の燃料電池が厚み方向に積層されて長手方向(図1の紙面垂直方向)に沿って延設されたスタック2を有する。燃料電池装置1は、基体3と、基体3の配置室30にスペーサを兼ねるシール部20wを介して収容された燃料電池20で形成されたスタック2と、基体3の配置室30においてスタック2の上側に配置された改質器4と、スタック2の上面と改質器4の下面との間に形成された燃焼用空間5と、スタック2の外側に配置された断熱材料で形成された断熱層6と、断熱層6の外側に配置された排気ガス通路7と、排気ガス通路7の外側に配置されたカソードガス通路8とを有する。ここで、排気ガス通路7およびカソードガス通路8は、スタック2の長手方向(図1の紙面垂直方向,燃料電池の積層方向)に沿って延設されている。排気ガス通路7は、互いに対面する板状をなす通路形成部材701,702で形成されている。カソードガス通路8は、互いに対面する板状をなす通路形成部材801,701で形成されている。
【0018】
図4および図5は燃料電池20および改質器4付近の概念図を示す。図5に示すように、スタック2を構成する燃料電池20は、アノードガスが供給される通路21rをもつ多孔質導電部21wと、多孔質導電部21wに隣接するアノード21と、カソードガスが供給される酸化剤極(空気極)として機能するカソード22と、アノード21およびカソード22で挟まれた固体酸化物を母材とする膜状の電解質23と、コネクタ20xとを有する。電解質23を形成する固体酸化物は、スタック2の作動温度において酸素イオン(O2−)を伝導させる性質をもつものであり、YSZ等のジルコニア系、ランタンガレート系が例示される。アノード21は、ニッケル−セリア系サーメットが例示される。カソード22は、サマリウムコバルタイト、ランタンマンガナイトが例示される。但し材質は上記に限定されるものではない。図5に示すように、複数個の燃料電池20は、長手方向(矢印L方向)に隙間20rを介して並設されてスタック2を形成している。隙間20rはカソード22に対面する。なお、燃料電池20同士は図略の集電部材により電気的に接続されている。
【0019】
改質器4は、改質水を水蒸気化させる蒸発部40と、水蒸気を利用して燃料原料を改質される改質部42とを備えている。蒸発部40は箱状をなしており、下面40d,上面40u,側面40s,側面40mを有する。改質部42は箱状をなしており、下面42d,上面42u,側面42s,側面42mを有する。蒸発部40は、改質水系から蒸発部40に供給される液相状の改質水を水蒸気化させる。改質部42は、改質反応を促進させる改質触媒を担持するセラミックス材を有する。改質部42は蒸発部40の下流に設けられており、蒸発部40で生成された水蒸気で炭化水素系の燃料原料を高温領域において水蒸気改質させてアノードガスを生成させる。アノードガスは水素ガスまたは水素含有ガスである。なお、固体酸化物形の燃料電池によれば、スタック2の定常運転における燃料電池の作動温度は、例えば450〜1100℃の範囲内、殊に550〜800℃の範囲内であることが好ましい。
【0020】
図1に示すように、カソードガス通路8は、入口80と、入口80から縦方向に上向きに延びる第1通路81と、第1通路81の上端から横方向にのびる第2通路82と、第2通路82の先端から下向きに延びる第3通路となる対向通路83と、対向通路83の下端側に形成された出口84とをもつ。図2に示すように、対向通路83はスタック2から受熱する通路であり、通路形成部材701の一部をなす薄箱形状の通路形成部分701kで形成されている。通路形成部分701kは薄箱形状をなしており、スタック2のカソードに連通する出口84を下端部に有する。
【0021】
図1に示すように、排気ガス通路7は、金属を母材とする通路形成部材701,702で形成されている。排気ガス通路7は、改質器4に直接的に接触する接触通路70と、接触通路70の下流に連通するように延設された下流通路73とを有する。下流通路73は入口72および出口74(排気ガス出口)を有する。相対的に高温側の排気ガスが流れる下流通路73は、カソードガス通路8の第1通路81を流れる相対的に低温側のカソードガスと互いに熱交換する熱交換器7Xを構成する。
【0022】
図1に示すように、接触通路70は、燃焼用空間5と排気ガス通路7との間においてこれらに連通するように位置している。接触通路70は、改質部42の側面42sに接触する第1接触通路70fと、改質部42の上面42uに接触する第2接触通路70sとを有する。第1接触通路70fは、通路形成部分701kを介して対向通路83に対向している。第1接触通路70fは、蒸発部40の側面40sおよび通路形成部分701kに接触する。第2接触通路70sはカソードガス通路8の第2通路82と対向している。第2接触通路70sは蒸発部40の上面40uに接触する。
【0023】
なお、スタック2は、カソードガス通路8の対向通路83を挟むように2組設けられている。すなわち、スタックは、対向通路83を挟む第1スタック2fおよび第2スタック2sを備えている。図1に示すように、スタック2の下部には、アノードガスを燃料電池20の入口に案内するアノードガスマニホルド24が配置されている。ここで、スタック2、カソードガス通路8、排気ガス通路7、改質器4およびアノードガスマニホルド24、さらには、燃焼用空間5は、燃料電池装置1の長手方向(図1の紙面の垂直方向,燃料電池20の積層方向)に沿って延設されている。
【0024】
燃料電池20が発電運転するときについて説明を加える。この場合、図4に示す燃料原料ポンプ90(燃料原料搬送源)が駆動するため、炭化水素系の燃料原料が燃料原料供給通路92を介して改質器4の蒸発部40に供給される。また改質水ポンプ93(水搬送源)が駆動し、図略の貯水タンクの改質水が改質水通路94を介して蒸発部40に供給される。ここで、燃焼火炎50で蒸発部40および改質部42は加熱されているため、蒸発部40は液相状の改質水を水蒸気化させる。生成された水蒸気は改質部42に供給される。改質部42は燃料原料を水蒸気改質させ、水素を含むアノードガスを生成させる。燃料原料がメタン系である場合には、水蒸気改質ではアノードガスの生成は、次の(1)式に基づくと考えられている。固体酸化物形の燃料電池20では、H2の他にCOも燃料となりうる。
【0025】
(1)…CH4+2H2O→4H2+CO2
CH4+H2O→3H2+CO
CnHmが炭化水素の一般的な化学式であるとすると、水蒸気改質の一般式は次の(1−1)式のようになる。n=1、m=4であると、メタンの水蒸気改質の式が得られる。
【0026】
(1−1)…CnHm+2nH2O→nCO2+[(m/2)+2n)]H2
生成された水素を含有するアノードガスは、アノードガス通路25およびアノードガスマニホルド24を介して、燃料電池20のアノードの入口に供給されて発電に使用される。またカソードガスポンプ95(カソードガス搬送源)が駆動しているため、空気であるカソードガスが、図1に示すように矢印C1方向,矢印C2方向,矢印C3方向,矢印C4方向,矢印C5方向,矢印C6方向に沿って、カソードガス通路8の第1通路81、第2通路82および対向通路83を流れ、カソードガス通路8の先端の出口84からスタック2のカソードの下部の入口に供給され、さらに、スタック2のカソードの内部を上向き(図1に示す矢印U1方向)に通過しつつ、カソードの発電反応に使用される。発電反応後のカソードオフガスは、スタック2のカソードの上面から燃焼用空間5に排出される。これに対して、改質部22で生成されたアノードガスは、アノードガスマニホルド24からスタック2のアノードを上向きに通過しつつ、アノードの発電反応に使用される。これにより燃料電池20は発電する。発電反応においては、水素含有ガスで供給されるアノードでは、基本的には(2)の反応が発生ると考えられている。酸素を含む空気が供給されるカソードでは、基本的には(3)の反応が発生すると考えられている。カソードにおいて発生した酸素イオン(O2−)がカソード22からアノードに向けて電解質(酸素イオン伝導体,イオン伝導体)を伝導する。
【0027】
(2)…H2+O2−→H2O+2e−
COが含まれている場合には、CO+O2−→CO2+2e−
(3)…1/2O2+2e−→O2−
上記した発電反応後のカソードオフガスは未反応の酸素を含有しており、スタック2のカソードの上部から燃焼用空間5に吐出される。同様に、発電反応後のアノードオフガスは未反応の燃焼成分(水素)を含有しており、スタック2のアノードの上面から燃焼用空間5に排出される。この結果、燃焼用空間5においてアノードオフガスはカソードオフガスにより燃焼し、燃焼火炎50を形成する。燃焼火炎50により、改質部42および蒸発部40が加熱される。これにより改質部42における改質反応が維持され、蒸発部40において水蒸気生成反応が維持される。なお、(2)の反応式によれば、アノードオフガスは水分(H2O)を含むことがある。本実施形態によれば、スタック2のアノードに供給されるアノードガス、すなわち、改質部42に供給される燃料原料の流量としては、燃料電池20のアノードにおける発電反応で使用される流量と、燃焼用空間5においてアノードオフガスが燃焼火炎50を形成する流量とを含む流量が設定されている。カソードガスの流量の流量としては、燃料電池20のカソードにおける発電反応で使用される流量と、燃焼用空間5においてカソードオフガスが燃焼用空気として燃焼火炎50を形成する流量と、余裕流量とを加算した流量が設定されている。
【0028】
上記したように燃焼用空間5において燃焼した後のアノードオフガスおよびカソードオフガスは、高温の排気ガスとなる。この排気ガスは、入口72から下流通路73に進入し下向きに流れ、出口74から外部に吐出される。ここで、排気ガス通路7の下流通路73を下向きに流れる相対的に高温の排気ガスと、カソードガス通路8の第1通路81を上向き(下流通路73における排気ガスの流れ方向と反対方向)に流れる相対的に低温のカソードガスとが、対向流として、互いに熱交換する。よって排気ガスが冷却されると共に、スタック2に供給される直前のカソードガスが予熱される。上記した『下向き』は蛇行しつつ下向きも含み、ガスが全体として下向きに流れる意味である。『上向き』は蛇行しつつ上向きも含み、ガスが全体として上向きに流れる意味である。上記したように予熱されたカソードガスは、カソードガス通路8の第2通路82,対向通路83,出口84を経て、燃料電池20のカソードに供給されるため、カソードにおける発電反応の効率を向上させ得る。
【0029】
換言すると、熱交換器7Xでは、排気ガス通路7の下流通路73を流れる高温の排気ガスは、下向きに流れる。且つ、カソードガス通路8の第1通路81を流れる低温のカソードガスは、上向きに流れる。結果として、高温の排気ガスと低温のカソードガスとは、互いに逆向きに流れる対向流となり、互いに熱交換する。従って、燃焼用空間5から排出された高温の排気ガスは下流通路73においてカソードガスにより効率よく冷却されると共に、スタック2に供給される直前のカソードガスは排気ガスにより効率よく予熱される。このように下流通路73は熱交換通路として機能できる。
【0030】
さて本実施形態によれば、図1に示すように、燃焼火炎50が燃焼する燃焼用空間5を覆う板状をなすカバー部材210が設けられている。カバー部材210の材質は特に限定されるものではなく、金属,耐火物が例示される。金属としては高温における耐食性および強度を有することが好ましく、例えばステンレス鋼(フェライト系、オーステナイト系、マルテンサイト系)等の合金鋼、炭素鋼が例示される。図1および図2に示すように、カバー部材210の上端部206は、改質部42の側面42m,蒸発部40の側面40mに気密的に接触してシールしている。この場合、カバー部材210の上端部206は、改質部の側面42m,蒸発部40の側面40mに接触状態に溶接または取付具等により固定されていても良いし、単に気密的に接触しているだけでも良い。図1に示すように、カバー部材210の上端部206の上面207は、スタック2の上面、改質部42の下面42d,蒸発部40の下面40dよりも上方に突出している。ここで、当該上面207は、改質部42の上面42uおよび蒸発部40の上面40uよりも下方に位置しており、第2接触通路70sにおけるガス流通性が確保されている。このようなカバー部材210を有する本実施形態によれば、燃焼用空間5で燃焼された高温の排気ガスを、接触通路70の第1接触通路70fひいては第2接触通路70sに積極的に向かわせることができる。このため燃焼用空間5から吐出された高温の排気ガスが接触通路70以外の部位に短絡的に流れることが抑制される。すなわち、燃焼用空間5の高温の排気ガスが第1接触通路70fに流れること無く、燃焼用空間5から排気ガス通路7の入口72に直接的に短絡的に流れることが抑えられる。
【0031】
結果として、接触通路70の第1接触通路70fひいては第2接触通路70sに流れる排気ガスの流量が増加する。従って、第1接触通路70fを流れる排気ガスと改質部42の側面42sとの接触確率、ひいては熱交換効率が向上する。且つ、第2接触通路70sを流れる高温の排気ガスと改質部42の上面42uとの接触確率、ひいては熱交換効率が向上する。よって排気ガスが改質部42を加熱させる加熱効率を高めることができる。
【0032】
蒸発部40についても同様である。すなわち、第1接触通路70fを流れる高温の排気ガスが蒸発部40の側面40sと熱交換する熱交換効率が向上する。更に、第2接触通路70sを流れる高温の排気ガスと蒸発部40の上面40uとの熱交換効率が向上する。このように蒸発部40の加熱効率が高められる。殊に、スタック2の発電電力が少ないときには、スタック2に供給されるアノードガスおよびカソードガスの単位時間あたりの流量が少ない。このため、改質部42および蒸発部40が流路抵抗となる割合が高くなる。この場合、カバー部材が設けられていない場合には、燃焼用空間5の排気ガスが燃焼用空間5から排気ガス通路7の入口72に短絡的に流れ込み易くなる。この場合、高温の排ガスが改質部42および蒸発部40に接触する頻度が低下し、改質部42および蒸発部40の加熱効率が低下することが考えられる。しかしながら本実施形態によれば、上記した排気ガスの短絡的な流れを防止するカバー部材210が設けられているため、上述するように改質部42および蒸発部40と排気ガスとの接触性を高め、排気ガスで改質部42および蒸発部40を加熱させる加熱効率を高めることができる。
【0033】
更に本実施形態によれば、図1から理解できるように、燃焼用空間5の高温の排気ガスが第1接触通路70fに流れる。このため、対向通路83を流れるカソードガスを第1接触通路70fの高温の排気ガスで加熱させる加熱効率を高めることができる。このためスタック2に供給される直前の対向通路83のカソードガスを効率よく加熱させるのに貢献できる。なお、カバー部材210の下端部205が溶接または取付具で固定部350に固定され、且つ、カバー部材200の上端部206が改質器4の改質部42の側面42mに溶接または取付具で固定されていることが好ましい。この場合、改質器4の改質部40の支持性をカバー部材210がアシストでき、改質器4の支持性を高めることができる。但しこれに限定されるものではない。
【0034】
ところで、スタック2の発電反応は発熱反応である。スタック2の内部では、前述したようにアノードガスおよびカソードガスは上向きに流れる。このためスタック2の内部における発電反応を考慮すると、更に、スタック2の上側に燃焼火炎50が存在することを考慮すると、高さ方向においてスタック2の上部は下部よりも高温となり易い。スタック2の温度はスタック2の発電反応に大きく影響を与える。これを考慮すると、スタック2の高さ方向における発電反応の均一化を図るためには、スタック2の上部と下部との温度差が増大することは、回避されることが好ましい。
【0035】
この点について本実施形態によれば、図1に示すように、カソードガス通路8を形成する通路形成部材701のうち、対向通路83を形成する通路形成部分701kは、第1接触通路70fおよびスタック2の側面2kに対面する。通路形成部分701kとスタック2の側面2kとで、カソードガスが上向き(矢印U2方向)流れる第1通路310を形成している。すなわち、第1通路310は、カソードガス通路8の対向通路83から供給され且つスタック2のカソードに流入されなかったカソードガスを、燃焼用空間53に向けて上向き(矢印U2方向)に流す通路である。ここで、第1通路310においてカソードガスが流れる方向(矢印U2方向,上向き)と、対向通路83においてカソードガスが流れる方向(矢印C5方向,下向き)とは、互いに逆向きである。対向通路83のカソードガスは、対向通路83の下部に向かうにつれてスタック2の側面2kから受熱して加熱される。
【0036】
このため対向通路83においては、その下部が相対的高温領域となり、その上部が相対的低温領域となると考えられる。これに対して、第1通路310をカソードガスが上向き(矢印U2方向)に流れるとき、第1通路310においては、その上部が相対的高温領域となり、下部が相対的低温領域となると考えられる。よって第1通路310の相対的高温領域が対向通路83の相対的低温領域に通路形成部分701kを介して対面する。また、第1通路310の相対的低温領域が対向通路83の相対的高温領域に通路形成部分701kを介して対面する。このためスタック2の高さ方向における上部と下部との温度のばらつきを小さくさせるのに貢献できる。ここで、第1通路310の相対的高温領域が対向通路83の相対的高温領域に通路形成部分701kを介して対面したり、あるいは、第1通路310の相対的低温領域が対向通路83の相対的低温領域に通路形成部分701kを介して対面したりしている構造も考えられる。この場合には、スタック2の高さ方向の温度のばらつきが増加するおそれがある。スタック2の高さ方向における発電ばらつきの低減には好ましくない。
【0037】
図1および図3に示すように、上記したカバー部材210は、スタック2の側面2mに対面する表面201を有する。ここで、スタック2の側面2mとカバー部材210の表面201との間には、カソードガスが流れる第2通路320が形成されている。ここで、カソードガス通路8の対向通路83から供給され且つスタック2に流入されなかったカソードガスは、第2通路320に流れ、第2通路320を上向き(矢印U3方向)に燃焼用空間5に向けて流れる。このようにスタック2の側面2mとカバー部材210とは直接的に接触していない。すなわち、断熱空間として機能できる第2通路320がスタック2の側面2mとカバー部材210との間に形成されているため、スタック2の高温維持に貢献できる。
【0038】
(実施形態2)
図6は実施形態2を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。以下、異なる部位を中心として説明する。図6は燃料電池装置1の要部の断面を示す。図6に示すように、カソードガス通路8を形成する通路形成部材701は、対向通路83を形成する通路形成部分701kを有する。燃焼用空間5は、対向通路83および通路形成部分701kを挟むように、第1燃焼用空間5fおよび第2燃焼用空間5sを有する。図6に示すように、カソードガス通路8の対向通路83を形成する通路形成部分701kには、連通路87を有する筒体88が溶接または取付具等で複数個固定されている。連通路87は第1燃焼用空間5fと第2燃焼用空間5sとを連通させており、図6の紙面の垂直方向において、間隔を隔てて間欠的に複数個形成されている。連通路87により、第1燃焼用空間5fおよび第2燃焼用空間5sとの連通性が良好に確保される。
【0039】
故に、第1燃焼用空間5fと第2燃焼用空間5sとの間におけるアノードオフガス流通性、カソードガス流通性が確保される。このため第1燃焼用空間5fにおける燃焼性と第2燃焼用空間5sにおける燃焼性とのばらつき低減に貢献できる。また筒体88は図6の紙面垂直方向に間隔を隔てて複数個配置されているため、対向通路83を流れるカソードガスの流れを損なうことが抑えられる。更に対向通路83を流れるカソードガスが筒体88の外壁面88mに衝突するため、カソードガスの拡散作用を期待でき、カソードガスの温度の均一化に貢献できる。
【0040】
(実施形態3)
図7および図8は実施形態3を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。以下、異なる部位を中心として説明する。図7は燃料電池装置1の断面を示す。カバー部材210の一端部である下端部205は、断熱性を有する固定部350に溶接または取付具により固定されている。カバー部材210の他端部である上端部206は自由端状をなしており、改質部42の側面42mに気密的に当接している。具体的には、カバー部材210の上端部206は、改質部42に向けて付勢力F1(図8)を発揮させる板バネとしても機能できる。カバー部材210の上端部206のバネ性により、上端部206に形成された突起208の頂面209は、改質部42の側面42mに気密的に当接し、シールポイントを形成している。なお、突起208は、図7および図8の紙面垂直方向に沿って、すなわち、改質部42の長さ方向に沿って、連続的に延設されていることが好ましい。
【0041】
本実施形態においては、燃焼用空間5の高温の排気ガスが接触通路70以外の部位に短絡的に流れることが抑制される。よって、高温の排気ガスは、接触通路70の第1接触通路70fおよび第2接触通路70sに向かうことになる。この結果、接触通路70の第1接触通路70fおよび第2接触通路70sを流れる排気ガスの単位時間当たりの流量が良好に確保される。従って、接触通路70を流れる排気ガスと改質部42の側面42mおよび蒸発部40の側面40mとの熱交換効率が向上し、改質部42の加熱効率が高められる。
【0042】
本実施形態によれば、カバー部材210の下端部205は固定部350に固定されて拘束されているが、カバー部材210の上端部206の突起208が改質部42の側面42mに接触するものの、改質部42および蒸発部40には固定されていない。このため燃料電池装置1の使用時および非使用時においてカバー部材210が長さ方向に熱膨張または熱収縮するときであっても、突起208は改質部42の側面42mおよび蒸発部40の側面40mに接触しつつ滑るため、カバー部材210の上端部206に無理な応力が集中することが抑制される。すなわち、カバー部材210は、熱膨張および熱収縮を吸収する構造を有する。
【0043】
(実施形態4)
図9は実施形態4を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。以下、異なる部位を中心として説明する。図9は燃料電池装置1の断面を示す。断熱層6がカバー部材として機能する。すなわち、断熱層6の上端部6uが改質部42の側面42m(改質器の側面)にあてがわれており、燃焼火炎50を燃焼させる燃焼用空間5を覆う。このためカバー部材として機能する断熱層6は、燃焼用空間5の排気ガスが第1接触通路70fに向かうこと無く、直接的に下流通路73の入口72に向かう短絡を抑える。これにより燃焼用空間5の排気ガスを接触通路70の第1接触通路70fに効率よく向かわせることができる。すなわち、燃焼用空間5の高温の排気ガスが接触通路70の第1接触通路70f以外の部位に流れることが抑制される。すなわち、排気ガスの全部またはほとんど全部は、接触通路70の第1接触通路70fに向かうことになる。このため接触通路70の第1接触通路70fを流れる排気ガスの流量が増加する。従って、接触通路70の第1接触通路70fを流れる排気ガスと改質部42の側面42sとの熱交換効率が向上し、改質部42の加熱効率が高められる。蒸発部40についても同様である。
【0044】
(実施形態5)
図10は実施形態5を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。以下、異なる部位を中心として説明する。図10に示すように、カバー部材210は、高さ方向に延びると共に下端部205が固定部350に溶接または取付具で固定された金属製のカバー本体209と、カバー本体209の上方の先端から改質部42に向けてL字形状にプレス成形で曲成された曲成部211とを有する。曲成部211は改質器4(改質部42の上面42u)に溶接または取付具で固定されており、厚み方向に貫通する貫通孔を有しない。カバー部材210はプレス成形で成形された突起状の成形部216を有する。万一、カバー部材210がその長さ方向に熱膨張および熱収縮したとしても、成形部216の変形により熱膨張および熱収縮を吸収して緩和できる。図10に示すように、カバー部材210の上端の曲成部211は改質部の上面42u,蒸発部40の上面40uに気密的に接触してシールしている。このため燃焼用空間5から吐出された排気ガスが燃焼用空間5から排気ガス通路7の入口72に直接的に且つ短絡的に流れることが抑えられる。この結果、燃焼用空間5の排気ガスを接触通路70の第1接触通路70fに向かわせる。
【0045】
(実施形態6)
図11および図12は実施形態6を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。以下、異なる部位を中心として説明する。図11に示すように、カバー部材210は、高さ方向に延びるカバー本体209と、カバー本体209の先端から改質部42に向けて曲成された曲成部211とを有する。曲成部211は複数個の貫通孔213を有する。貫通孔213は曲成部211に沿って矢印L方向に延びるスリット状としても良い。この場合、排気ガスと改質器4とを積極的に接触させる接触通路70は、(i)カソードガス通路8の対向通路83と改質部42の側面42sとの間に形成された第1接触通路70fと、(ii)改質部42の上面42uに接触する第2接触通路70sと、(iii)カバー部材210の表面201と改質部42の側面42m(蒸発部40の側面40m)と曲成部211との間に形成され排気ガスと側面42mとを接触させる第3接触通路70tとを有する。図11に示すように、カバー部材210の曲成部211は、改質器4の上面、すなわち、改質部42の上面42u,蒸発部40の上面40uに接触している。この場合、カバー部材210の曲成部211は、改質部42の上面42uおよび蒸発部40の上面40uに固定されていても良いし、固定されず気密的に接触しているだけでも良い。
【0046】
本実施形態によれば、図11から理解できるように、燃焼用空間5の高温の排気ガスは、改質部42の側面42s,上面42uに接触しつつ接触通路70の第1接触通路70fおよび第2接触通路70sに向かわせる流れFAと、改質部42の側面42mに接触しつつ第3接触通路70tおよび貫通孔213を貫通するように上向きに流れる流れFBとに分岐される。このため本実施形態においても、燃焼用空間5から吐出された高温の排気ガスが接触通路70以外の部位に短絡的に流れることが抑制される。結果として、高温の排気ガスと改質部42との熱交換効率が向上し、改質部42の加熱効率が高められる。なお、蒸発部40についても同様である。貫通孔213の開口面積は、単位時間あたりにおける流れFAの流量と流れFBの流量との比率に影響を与える。貫通孔213の開口面積を相対的に小さくすれば、流れFAの流量が増加し、第1接触通路70fを流れる排気ガスの流量が増加し、流れFBの流量が減少する。また、貫通孔213の開口面積を相対的に大きくすれば、流れFAの流量が減少し、第1接触通路70fを流れる排気ガスの流量が減少し、流れFBの流量が増加する。このように貫通孔213の開口面積により、対向通路83を流れるカソードガスの加熱効率、改質器4の加熱効率をチューニングできる利点が得られる。
【0047】
(実施形態7)
本実施形態は上記した各実施形態と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有するため、図1〜図12を準用することができる。以下、異なる部位を中心として説明する。カバー部材210のうち少なくとも第2通路320を形成する表面201については、スタック2および/または燃焼火炎50からの輻射熱を吸収させる吸収率を高める輻射熱吸収化処理が施されていることが好ましい。輻射熱吸収化処理としては、例えば、カバー部材210のうち少なくとも第2通路320を形成する表面201を黒色または疑似黒色とすることが例示される。また表面201を粗面化(Raで50マイクロメートル以上、100マイクロメートル以上)して受熱面積を増加させること、プレス成形などによるディンプル化が例示される。これによりカバー部材210の表面201における輻射熱吸収性が高まる。この結果、第2通路320を通過するカソードガスの昇温性を高めるのに有利となる。ひいては、燃焼用空間5における燃焼性を高めることができる。
【0048】
(実施形態8)
本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有するため、図1〜図12を準用することができる。以下、異なる部位を中心として説明する。カバー部材210のうち少なくとも第2通路320を形成する表面201については、スタック2および/または燃焼火炎50からの輻射熱を反射させる反射率を高めるように輻射熱反射化処理されていることが好ましい。具体的には、表面201の表面粗さはRaで20マイクロメール以下、殊に10マイクロメール以下にされており、鏡面化されていることが好ましい。更に、表面201は、白色、灰色、白っぽい色とされていることが好ましい。このためカバ部材210の表面201は、スタック2および/または燃焼火炎50の輻射熱を効率よく反射させることができる。よってスタック2および/または燃焼火炎50の放熱が抑えられ、スタック2および/または燃焼火炎50の温度ができるだけ高温に維持されることが期待される。
【0049】
(実施形態9)
本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有するため、図1〜図12を準用することができる。以下、異なる部位を中心として説明する。対向通路83を形成する通路形成部分701kは、スタック2の側面2kおよび燃焼火炎50に対向しているため、スタック2および燃焼火炎50より加熱される。この場合、通路形成部分701kについては、スタック2および/または燃焼火炎50からの輻射熱を吸収させる吸収率を高める輻射熱吸収化処理が施されていることが好ましい。例えば、通路形成部分701kのうちスタック2および/または燃焼火炎50に対面する表面を、黒色化または疑似黒色化できる。またも当該表面を粗面化(Raで50マイクロメートル以上、100マイクロメートル以上)できる。この場合、通路形成部分701kの昇温性が高まり、対向通路83を流れるカソードガスを加熱させる加熱効率を高めるのに有利である。
【0050】
(その他)本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。スタック2は、カソードガス通路8の対向通路83を挟むように2組設けられているが、これに限らず、スタック2はカソードガス通路8の対向通路83に隣設するように1組設けられている構造でも良い。スタック2は、複数の平板型の燃料電池を厚み方向に積層して形成されているが、これに限らず、複数のチューブ型の燃料電池を組み付けてスタックを形成しても良い。この場合であっても、スタックは長手方向に延設されている。上記した実施形態1によれば、改質部42および蒸発部40は断面四角形状をなしているが、これに限らず、断面円形状でも良い。燃料原料を改質させる改質部42と蒸発部40とは一体化されているが、これに限らず、蒸発部40を改質部42から分離させても良い。この場合蒸発部は別の加熱源で加熱させても良い。燃料電池は固体酸化物形に限定されず、りん酸塩形、溶融炭酸塩形でも良い、要するに改質部を燃焼炎で加熱させるものであれば良い。上記した記載から次の技術的思想が把握される。
【0051】
[付記項1]燃料原料を改質させてアノードガスを生成させる改質部と、改質部で生成されたアノードガスとカソードガスとで発電し且つ燃料電池から吐出されたアノードオフガスを燃焼用空間で燃焼させた燃焼火炎で改質部を加熱させる燃料電池と、改質部で生成されたアノードガスを燃料電池の内部に供給するアノードガス通路と、カソードガスを燃料電池の内部に供給するカソードガス通路と、燃焼用空間の排気ガスを外部に排出させる排気ガス通路とを具備する燃料電池装置。
【0052】
[付記項2]付記項1において、前記カソードガス通路は前記燃料電池に対向する対向通路を有しており、前記燃料電池と前記対向通路との間には、前記カソードガス通路の前記対向通路から供給され且つ前記燃料電池に流入されなかったカソードガスを前記燃焼用空間に向けて流す第1通路が設けられている燃料電池装置。第1通路においてカソードガスが流れる方向とカソードガス通路の対向通路においてカソードガスが流れる方向とは、互いに逆向きが好ましい。
【0053】
[付記項3]付記項1において、前記燃料電池と前記カバー部材との間には、前記カソードガス通路の前記対向通路から供給され且つ前記燃料電池の内部に流入されなかった前記カソードガスを前記燃焼用空間に向けて流す第2通路が設けられている燃料電池装置。燃料電池とカバー部材とが直接接触する接触面積が低減され、燃料電池の温度維持に貢献できる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は例えば定置用、車両用、電気機器用、電子機器用などの燃料電池システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
2はスタック、20は燃料電池、21はアノード、22はカソード、23は電解質、25はアノードガス通路、3は基体、4は改質器、40は蒸発部、42は改質部、42s,42mは改質部の側面、42uは改質部の上面、42dは改質部の下面、5は燃焼用空間、50は燃焼火炎、6は断熱層、7は排気ガス通路、7Xは熱交換器、701,702は通路形成部材、701kは通路形成部分、70は接触通路、70fは第1接触通路、70sは第2接触通路、72は入口、73は下流通路、74は出口(排気ガス出口)、8はカソードガス通路、81は第1通路、82は第2通路、83は対向通路、84は出口、87は連通路、88は筒体、210はカバー部材、205は下端部、206は上端部、201は表面、208は突起、210はカバー本体、211は曲成部、310は第1通路、320は第2通路を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料原料を改質させてアノードガスを生成させる改質部と、
前記改質部で生成されたアノードガスとカソードガスとで発電し且つアノードオフガスを燃焼用空間で燃焼させた燃焼火炎で前記改質部を加熱させる燃料電池と、
前記改質部で生成された前記アノードガスを前記燃料電池の内部に供給するアノードガス通路と、
カソードガスを前記燃料電池の内部に供給するカソードガス通路と、
前記燃焼用空間の燃焼排気ガスを前記改質部に接触させる接触通路と前記接触通路の下流に位置すると共に排気ガス出口に向かう下流通路とを有する排気ガス通路と、
前記燃焼火炎が燃焼する前記燃焼用空間を覆うと共に、前記燃焼用空間の燃焼排気ガスが前記接触通路に流れることを促進し、且つ、前記燃焼用空間の燃焼排気ガスを前記接触通路を経由させて前記下流通路に向かわせるカバー部材とを具備することを特徴とする燃料電池装置。
【請求項2】
請求項1において、断面において、前記燃焼用空間は前記カソードガス通路を形成する通路形成部材を挟むように第1燃焼用空間および第2燃焼用空間を有しており、前記カソードガス通路を形成する通路形成部材は、前記第1燃焼用空間と前記第2燃焼用空間とを連通させる連通路を有する燃料電池装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記カソードガス通路は前記燃料電池に対向すると共に前記燃料電池から受熱する対向通路を有しており、前記燃料電池と前記対向通路との間には、前記カソードガス通路の前記対向通路から供給され且つ前記燃料電池の内部に流入されなかったカソードガスを前記燃焼用空間に向けて流す第1通路が設けられており、前記第1通路において前記カソードガスが流れる方向と前記カソードガス通路の前記対向通路において前記カソードガスが流れる方向とは、互いに逆向きである燃料電池装置。
【請求項4】
請求項1または2において、前記カソードガス通路は前記燃料電池に対向すると共に前記燃料電池から受熱する対向通路を有しており、前記燃料電池と前記カバー部材との間には、前記カソードガス通路の前記対向通路から供給され且つ前記燃料電池の内部に流入されなかった前記カソードガスを前記燃焼用空間に向けて流す第2通路が設けられている燃料電池装置。
【請求項1】
燃料原料を改質させてアノードガスを生成させる改質部と、
前記改質部で生成されたアノードガスとカソードガスとで発電し且つアノードオフガスを燃焼用空間で燃焼させた燃焼火炎で前記改質部を加熱させる燃料電池と、
前記改質部で生成された前記アノードガスを前記燃料電池の内部に供給するアノードガス通路と、
カソードガスを前記燃料電池の内部に供給するカソードガス通路と、
前記燃焼用空間の燃焼排気ガスを前記改質部に接触させる接触通路と前記接触通路の下流に位置すると共に排気ガス出口に向かう下流通路とを有する排気ガス通路と、
前記燃焼火炎が燃焼する前記燃焼用空間を覆うと共に、前記燃焼用空間の燃焼排気ガスが前記接触通路に流れることを促進し、且つ、前記燃焼用空間の燃焼排気ガスを前記接触通路を経由させて前記下流通路に向かわせるカバー部材とを具備することを特徴とする燃料電池装置。
【請求項2】
請求項1において、断面において、前記燃焼用空間は前記カソードガス通路を形成する通路形成部材を挟むように第1燃焼用空間および第2燃焼用空間を有しており、前記カソードガス通路を形成する通路形成部材は、前記第1燃焼用空間と前記第2燃焼用空間とを連通させる連通路を有する燃料電池装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記カソードガス通路は前記燃料電池に対向すると共に前記燃料電池から受熱する対向通路を有しており、前記燃料電池と前記対向通路との間には、前記カソードガス通路の前記対向通路から供給され且つ前記燃料電池の内部に流入されなかったカソードガスを前記燃焼用空間に向けて流す第1通路が設けられており、前記第1通路において前記カソードガスが流れる方向と前記カソードガス通路の前記対向通路において前記カソードガスが流れる方向とは、互いに逆向きである燃料電池装置。
【請求項4】
請求項1または2において、前記カソードガス通路は前記燃料電池に対向すると共に前記燃料電池から受熱する対向通路を有しており、前記燃料電池と前記カバー部材との間には、前記カソードガス通路の前記対向通路から供給され且つ前記燃料電池の内部に流入されなかった前記カソードガスを前記燃焼用空間に向けて流す第2通路が設けられている燃料電池装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−238430(P2010−238430A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83256(P2009−83256)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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