説明

燃料電池診断装置

【課題】燃料電池の発電性能に悪影響を及ぼすことなく、簡素な構成で燃料電池の複数の発電セルの発電状態を診断する。
【解決手段】発電セル10の外周回りの2箇所に配置され、燃料電池1内を流れる電流によって燃料電池1の外周囲に形成される磁界の強さを検出する一対の磁気センサ53、54と、燃料電池1の外周において磁気センサ53、54に隣接して配置され、複数の発電セル10の積層方向に沿って延びるとともに、複数の発電セル10の外周囲に形成される磁界を磁気センサ53、54に集める集磁体531、541と、一対の磁気センサ53、54で検出された検出値から複数の発電セル10のセル面内における電流の偏り(磁力差)を算出し、算出した電流の偏り(磁力差)に基づいて燃料電池1の発電状態を診断する診断手段(制御装置)50と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギを放出する発電セルを複数積層した燃料電池の発電状態を診断する燃料電池診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水素を含有する燃料ガスと酸素を含有する酸化剤ガスとを電気化学反応により電気エネルギを発生させる発電セルを複数積層した燃料電池が知られている。燃料電池では、燃料ガス及び酸化剤ガスといった反応ガスの供給量が不足した場合等に電池の出力電圧(発電性能)が低下するため、反応ガス不足等の発電状態を的確に診断して、適正な発電状態を維持する必要がある。
【0003】
そのため、燃料電池内部(積層された発電セル間)に磁気センサ等を内蔵した導電板を設け、発電セル面内の局所部位の電流を測定することで、燃料電池における反応ガス不足を診断するものが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−123162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のように、燃料電池内部に設けた導電板によって発電状態を診断する構成では、導電板自体が発電時の抵抗となり、燃料電池の発電性能に悪影響を及ぼす虞がある。
【0006】
また、特許文献1では、発電状態を診断する発電セル間に導電板を配置する構成であるため、複数の発電セル間の反応ガス不足をまとめて診断する場合に、各発電セル間に導電板を設ける必要がある。この場合、発電状態を診断するために必要な導電板の数が増加することになり、燃料電池の発電状態を診断する構成が複雑化してしまう。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、燃料電池の発電性能に悪影響を及ぼすことなく、簡素な構成で燃料電池の複数の発電セルの発電状態を診断可能な燃料電池診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、酸化剤ガスと燃料ガスとを電気化学反応させて発電する発電セル(10)を複数積層した燃料電池(1)の発電状態を診断する燃料電池診断装置であって、発電セル(10)の外周回りにおける周方向にずらした位置に配置され、燃料電池(1)内を流れる電流によって燃料電池(1)の外周囲に形成される磁界の強さを検出する一対の磁界検出手段(53、54)と、燃料電池(1)の外周において磁界検出手段(53、54)に隣接して配置され、複数の発電セル(10)の積層方向に沿って延びるとともに、複数の発電セル(10)の外周囲に形成される磁界を磁界検出手段(53、54)に集める集磁体(531、541)と、一対の磁界検出手段(53、54)で検出された検出値に基づいて燃料電池(1)の発電状態を診断する診断手段(50)と、を備えることを特徴とする。
【0009】
これによれば、発電セル(10)の外周回り、すなわち燃料電池(1)の外部に配置した一対の磁界検出手段(53、54)の検出値に基づいて、燃料電池(1)の発電状態を診断する構成であるため、燃料電池(1)の発電性能に悪影響を及ぼすことがない。
【0010】
また、集磁体(531、541)を設けることで複数の発電セル(10)の外周囲に形成される磁界を磁界検出手段(53、54)でまとめて検出することができるので、複数の発電セル(10)の発電状態をまとめて診断する場合でも燃料電池(1)の発電状態を診断する構成を増加させる必要がない。
【0011】
従って、燃料電池(1)の発電性能に悪影響を及ぼすことなく、簡素な構成で燃料電池(1)の複数の発電セル(10)の発電状態を診断することができる。なお、発電セル(10)の発電状態は、正常である場合に周方向にずらして配置した一対の磁界検出手段(53、54)のそれぞれの検出値が同等となる。しかし、発電状態に異常がある場合には、一対の磁界検出手段(53、54)のそれぞれの検出値が異なる結果となる。つまり、一対の磁界検出手段(53、54)のそれぞれの検出値が異なる結果となった場合に、発電セル(10)の発電状態が異常であると診断することができる。
【0012】
具体的には、請求項2に記載の発明のように、請求項1に記載の燃料電池診断装置において、集磁体(531、541)は、複数の発電セル(10)の積層方向の長さ(L)が、発電セル(10)の積層方向の厚み(T)よりも長い構成とすることができる。
【0013】
また、請求項3に記載の発明では、発電セル(10)は、セル面内における燃料ガスの出口(121b)よりも入口(121a)に近い燃料ガス上流部位と、酸化剤ガスの入口(122a)よりも出口(122b)に近い酸化剤ガス下流部位とが積層方向に対向し、セル面内における燃料ガスの入口(121a)よりも出口(121b)に近い燃料ガス下流部位と酸化剤ガスの出口(122b)よりも入口(122a)に近い酸化剤ガス上流部位とが積層方向に対向するように構成されており、一対の磁界検出手段(53、54)は、一方の磁界検出手段(53)が発電セル(10)の外周における燃料ガス上流部位および酸化剤ガス下流部位に近い位置に配置され、他方の磁界検出手段(54)が発電セル(10)の外周における燃料ガス下流部位および酸化剤ガス上流部位に近い位置に配置されており、診断手段(50)は、一方の磁界検出手段(53)の検出値に対して他方の磁界検出手段(54)の検出値が予め設定された第1設定値以上減少している場合に燃料ガスが欠乏していると診断し、他方の磁界検出手段(54)の検出値に対して一方の磁界検出手段(53)の検出値が予め設定された第2設定値以上減少している場合に酸化剤ガスが欠乏していると診断することを特徴とする。
【0014】
これによれば、燃料ガスが欠乏しているか否か、および酸化剤ガスが欠乏しているか否かといった燃料電池(1)の発電状態を、一対の磁界検出手段(53、54)の検出値に基づいて具体的に診断をすることができる。従って、より簡素な構成で燃料電池(1)の複数の発電セル(10)の発電状態を診断することができる。なお、「セル面」とは、発電セル(10)における複数の発電セル(10)の積層方向に直交する面を意味している。
【0015】
また、請求項4に記載の発明では、請求項1または2に記載の燃料電池診断装置において、一対の磁界検出手段(53a、54a)は、一方の磁界検出手段(53a)が発電セル(10)の外周におけるセル面内の燃料ガスの出口(121b)よりも入口(121a)に近い燃料ガス上流部位に近い位置に配置され、他方の磁界検出手段(54a)が発電セル(10)の外周におけるセル面内の燃料ガスの入口(121a)よりも出口(121b)に近い燃料ガス下流部位に近い位置に配置されており、診断手段(50)は、一方の磁界検出手段(53a)の検出値に対して他方の磁界検出手段(54a)の検出値が予め設定された第1設定値以上減少している場合に燃料ガスが欠乏していると診断することを特徴とする。
【0016】
これによれば、燃料ガスが欠乏しているか否かといった燃料電池(1)の発電状態を、一対の磁界検出手段(53a、54a)の検出値に基づいて具体的に診断をすることができる。
【0017】
また、請求項5に記載の発明では、請求項1または2に記載の燃料電池診断装置において、一対の磁界検出手段(53b、54b)は、一方の磁界検出手段(53b)が発電セル(10)の外周におけるセル面内の酸化剤ガスの入口(122a)よりも出口(122b)に近い酸化剤ガス下流部位に近い位置に配置され、他方の磁界検出手段(54b)が発電セル(10)の外周におけるセル面内の酸化剤ガスの出口(122b)よりも入口(122a)に近い酸化剤ガス下流部位に近い位置に配置されており、診断手段(50)は、他方の磁界検出手段(54b)の検出値に対して一方の磁界検出手段(53b)の検出値が予め設定された第2設定値以上減少している場合に酸化剤ガスが欠乏していると診断することを特徴とする。
【0018】
これによれば、酸化剤ガスが欠乏しているか否かといった燃料電池(1)の発電状態を、一対の磁界検出手段(53b、54b)の検出値に基づいて具体的に診断をすることができる。
【0019】
また、請求項6に記載の発明のように、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の燃料電池診断装置において、燃料電池(1)内部の内部抵抗を測定する抵抗測定手段(50〜52)を備え、診断手段(50)は、抵抗測定手段(50〜52)により測定された測定値が予め設定された設定抵抗値よりも大きい場合に、燃料電池(1)内部が乾燥していると状態と診断する構成とすることができる。
【0020】
ここで、燃料電池(1)の周囲には、燃料電池(1)を流れる電流による磁界の他に、地磁気による磁界が形成される。なお、地磁気による磁束の向きは、特定の一方向となる。
【0021】
このため、燃料電池(1)を流れる電流による磁界の強さが地磁気による磁界の強さに比べて充分に大きくない場合には、地磁気の影響によって、一対の磁界検出手段(53、54)に基づく燃料電池の発電状態の診断を適切に行うことができなくなる可能性がある。
【0022】
そこで、請求項7に記載の発明では、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の燃料電池診断装置において、一対の磁界検出手段(53、54)は、発電セル(10)の外周回りにおける周方向に半周ずらした位置に配置されると共に、それぞれ燃料電池(1)内を流れる電流によって燃料電池(1)の外周囲に生ずる磁束の向きと同方向となる磁界の強さを正として検出し、診断手段(50)は、一方の磁界検出手段(53)にて検出された検出値と他方の磁界検出手段(54)にて検出された検出値の合算値が、予め設定された第1基準値よりも小さい場合に、一対の磁界検出手段(53、54)で検出された検出値に基づいて燃料電池(1)の発電状態を診断することを特徴とする。
【0023】
これによると、一対の磁界検出手段(53、54)を前記発電セル(10)の外周回りにおける周方向に半周ずらした位置に配置しているので、前記燃料電池(1)内を流れる電流によって前記燃料電池(1)の外周囲に生ずる磁束の向きは、第1磁界検出手段(53)の周囲と第2磁界検出手段(54)の周囲とで反対方向となる。一方、地磁気による磁束の向きは、第1磁界検出手段(53)の周囲と第2磁界検出手段(54)の周囲とで同じ方向となる。
【0024】
そして、一対の磁界検出手段(53、54)それぞれは、燃料電池(1)内を流れる電流によって燃料電池(1)の外周囲に生ずる磁束の向きと同方向となる磁界の強さを正として検出するので、一対の磁界検出手段(53、54)の一方で地磁気による磁界の強さが正として検出され、他方で地磁気による磁界の強さが負として検出される。
【0025】
このため、一対の磁界検出手段(53、54)それぞれの検出値を合算することで、一方の磁界検出手段(53)の検出値に含まれる地磁気による磁界の強さと、他方の磁界検出手段(54)の検出値に含まれる地磁気による磁界の強さと打ち消すことができる。
【0026】
そして、地磁気の影響を排除した一対の磁界検出手段(53、54)における検出値の合算値が低い場合に、一対の磁界検出手段(53、54)で検出された検出値に基づいて燃料電池(1)の発電状態を診断するので、燃料電池(1)を流れる電流による磁界の強さが地磁気による磁界の強さに比べて充分に大きくない場合であっても、一対の磁界検出手段(53、54)に基づいて燃料電池(1)の発電状態を適切に診断することができる。
【0027】
また、請求項8では、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の燃料電池診断装置において、一対の磁界検出手段(53、54)は、発電セル(10)の外周回りにおける周方向に半周ずらした位置に配置されると共に、それぞれ燃料電池(1)内を流れる電流によって燃料電池(1)の外周囲に生ずる磁束の向きと同方向となる磁界の強さを負として検出し、診断手段(50)は、一対の磁界検出手段(53、54)のうち、一方の磁界検出手段(53)にて検出された検出値と他方の磁界検出手段(54)にて検出された検出値の合算値が、予め設定された第2基準値よりも大きい場合に、一対の磁界検出手段(53、54)で検出された検出値に基づいて燃料電池(1)の発電状態を診断することを特徴とする。
【0028】
これによっても、地磁気による磁界の強さと打ち消すことができるので、燃料電池(1)を流れる電流による磁界の強さが地磁気による磁界の強さに比べて充分に大きくない場合であっても、一対の磁界検出手段(53、54)に基づいて燃料電池(1)の発電状態を適切に診断することができる。
【0029】
また、請求項9に記載の発明では、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の燃料電池診断装置において、一対の磁界検出手段(53、54)は、発電セル(10)の外周回りにおける周方向に半周ずらした位置に配置されると共に、一対の磁界検出手段(53、54)のうち、一方の磁界検出手段(53)にて燃料電池(1)内を流れる電流によって燃料電池(1)の外周囲に生ずる磁束の向きと同方向となる磁界の強さを正として検出し、他方の磁界検出手段(54)にて磁束の向きと同方向となる磁界の強さを負として検出し、診断手段(50)は、一方の磁界検出手段(53)にて検出された検出値から他方の磁界検出手段(54)にて検出された検出値を減算した減算値が、予め設定された第3基準値よりも小さい場合に、一対の磁界検出手段(53、54)で検出された検出値に基づいて燃料電池(1)の発電状態を診断することを特徴とする。
【0030】
これによっても、地磁気による磁界の強さと打ち消すことができるので、燃料電池(1)を流れる電流による磁界の強さが地磁気による磁界の強さに比べて充分に大きくない場合であっても、一対の磁界検出手段(53、54)に基づいて燃料電池(1)の発電状態を適切に診断することができる。
【0031】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1実施形態に係る燃料電池および燃料電池診断装置を示す斜視図である。
【図2】図2の燃料電池のセルの概略構成を示す断面図である。
【図3】燃料電池の外周囲に形成される磁界を説明する説明図である。
【図4】集磁体のセルの積層方向の長さを説明するための説明図である。
【図5】第1実施形態に係る制御装置の診断処理を示すフローチャートである。
【図6】第2実施形態に係る燃料電池および燃料電池診断装置を示す斜視図である。
【図7】第3実施形態に係る燃料電池および燃料電池診断装置を示す斜視図である。
【図8】燃料電池の周囲に形成される地磁気を説明するための説明図である。
【図9】第4実施形態に係る制御装置の診断処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図5に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る燃料電池、および燃料電池診断装置を示す模式的な斜視図である。
【0034】
本発明の燃料電池診断装置5は、発電セル(以下、セル又は単セルと呼ぶ。)10が複数積層された燃料電池1の発電状態を診断する診断装置である。
【0035】
まず、本実施形態に係る燃料電池1について説明する。本実施形態の燃料電池1は、電気自動車の一種である、いわゆる燃料電池車両の車載発電システムに利用可能であり、車両走行用電動モータといった電気負荷等に電力を供給する。本実施形態では、燃料電池1として固体高分子電解質型燃料電池を用いた例を説明する。
【0036】
図1に示すように、燃料電池1は、基本単位となる単セル10が複数積層されたスタック構造となっている。積層されたセル10は、電気的に直列に接続されている。そして、各セル10で発電することによって得られた電流が、積層されたセル10の両端部に設けられた集電板10aに集電され、電気負荷等の電力機器4に供給される。
【0037】
燃料電池1の一方の側面(集電板10a)には、水素入口1a、空気入口1b、水素出口1c、および空気出口1dがそれぞれ設けられている。なお、水素入口1aは、燃料電池1の内部に水素を含有する燃料ガス(以下、単に水素と呼ぶ。)を導入する導入口を構成し、空気入口1bは、燃料電池1の内部に酸素を含有する酸化剤ガス(以下、空気と呼ぶ。)を導入するための導入口を構成している。また、水素出口1cは、燃料電池1の内部から外部に水素を排出する排出口を構成し、空気出口1dは、燃料電池1の内部から外部に空気を排出するための排出口を構成している。
【0038】
水素入口1aは、燃料電池1の水素極側に水素を供給するための水素供給経路2aに連通し、水素出口1cは、水素極側に溜まった生成水を微量な水素とともに燃料電池1から外部へ排出するための水素排出経路2bに連通している。
【0039】
水素供給経路2aの最上流部には、高圧水素が充填された高圧水素タンク(図示略)が設けられ、水素供給経路2aにおける高圧水素タンクと燃料電池1との間には、燃料電池1に供給される水素の圧力を調整する水素調圧弁(図示略)等が設けられている。また、水素排出経路2bには、空気極側から各セル10の電解質膜を透過した生成水や窒素等の不純物を未反応水素とともに外気へ排出するための電磁弁(図示略)等が設けられている。
【0040】
空気入口1bは、燃料電池1の空気極側に空気を供給するための空気供給経路3aに連通し、空気出口1dは、燃料電池1にて電気化学反応を終えた余剰空気および空気極で生成された生成水を燃料電池1から外部へ排出するための空気排出経路3bに連通している。
【0041】
空気供給経路3aの最上流部には、大気中から吸入した空気を燃料電池1に圧送するための空気ポンプ(図示略)等が設けられ、空気排出経路3bには、燃料電池1内の空気の圧力を調整するための空気調圧弁(図示略)等が設けられている。
【0042】
図2は、本実施形態に係る燃料電池1のセル10の概略構成を示す断面図である。図2に示すように、本実施形態のセル10は、主に固体高分子膜からなる電解質膜の両側に一対の電極(水素極、空気極)が配置された電解質・電極接合体(以下、膜電極接合体と呼ぶ。)11、膜電極接合体11の両外側に配置されるセパレータ12で構成されている。
【0043】
セパレータ12には、水素入口1aに連通して各セル10に水素を供給する水素入口マニホールド121a、空気入口1bに連通して各セル10に空気を供給する空気入口マニホールド122aが形成されている。また、セパレータ12には、水素出口1cに連通して各セル10から水素極側の不純物を排出する水素出口マニホールド121b、空気出口1dに連通して各セル10から空気極側の不純物を排出する空気出口マニホールド122bが形成されている。
【0044】
セパレータ12は、一対の電極における水素極と対向する面に水素極に水素を供給するための水素流路123が形成され、空気極と対向する面に空気極に空気を供給するための空気流路124が形成されている。水素流路123は、水素入口マニホールド121aおよび水素出口マニホールド121bと連通し、空気流路124は、空気入口マニホールド122aおよび空気出口マニホールド122bと連通している。
【0045】
本実施形態のセパレータ12は、水素流路123における水素流れ上流側の水素上流部位(燃料ガス上流部位)と、空気流路124における空気流れ下流側の空気下流部位(酸化剤ガス下流部位)とが、膜電極接合体121を介して対向するように構成されている。また、セパレータ12は、水素流路123の水素流れ下流側の水素下流部位(燃料ガス下流部位)と、空気流路124の空気流れ上流側の空気上流部位(酸化剤ガス上流部位)とが、膜電極接合体11を介して対向するように構成されている。
【0046】
より詳しくは、水素上流部位は、水素流路123の水素出口マニホールド121bよりも水素入口マニホールド121aに近い部位であり、水素下流部位は、水素流路123の水素入口マニホールド121aよりも水素出口マニホールド121bに近い部位である。また、空気上流部位は、空気流路124の空気出口マニホールド122bよりも空気入口マニホールド122aに近い部位であり、空気下流部位は、空気流路124の空気入口マニホールド122aよりも空気出口マニホールド122bに近い部位である。
【0047】
各セル10では、セパレータ12の水素流路123を介して水素極に水素が供給され、空気流路124を介して空気極に酸素を含む空気が供給されることにより、以下の電気化学反応が起こり、電気エネルギが発生する。
(水素極)H2→2H++2e−
(空気極)2H++1/2O2+2e−→H2O
そして、各セル10で発電することによって得られた電流は、積層されたセル10の両端部に設けられた集電板10aに集電され、電気負荷4に供給される(図1参照)。
【0048】
ここで、燃料電池1内部を流れる電流の流れは、大局的に見るとセル10の積層方向(図1に示す燃料電池1の手前側の集電板と奥側の集電板とが対向する方向)に沿って流れる。そのため、燃料電池1内部を流れる電流によって、図3に示すように、燃料電池1の外周を取り囲むように磁界(磁力線)が形成される。なお、図3に示すように、電流がセル10の積層方向の手前側から奥側に向かって流れる場合、燃料電池1の磁束の向きは、セル10の積層方向の手前側から見て時計周りの方向となる。この磁界は、燃料電池1内部を流れる電流の変化に対応しているため、磁界の強さを検出することで、燃料電池1内部を流れる電流の流れを把握することができる。なお、図3は、燃料電池の外周囲に形成される磁界を説明する説明図である。
【0049】
次に、燃料電池1の発電状態を診断する燃料電池診断装置5について説明する。図1に示すように、燃料電池診断装置5は、電圧センサ51、電流センサ52、一対の磁気センサ53、54、および各センサ51〜54の出力信号に基づいて燃料電池1の発電状態を診断する制御装置50等から構成されている。
【0050】
電圧センサ51は、各集電板10a間の電位差(燃料電池1の出力電圧)を検出する電圧検出手段を構成し、電流センサ52は、集電板10aから電気負荷4に出力される電流(燃料電池1の出力電流)を検出する電流検出手段を構成する。制御装置50は、電圧センサ51で検出した電圧信号と電流センサ52で検出した電流信号が入力され、これらの信号に基づいて、燃料電池内部の内部抵抗を算出する。
【0051】
一対の磁気センサ53、54は、複数のセル10のうち所定のセル10の外周回りにおける周方向にずらした位置に配置され、所定のセル10の外周囲に形成される磁界の強さを検出する一対の磁界検出手段を構成している。なお、磁気センサ53、54としては、ホール素子を用いることができる。
【0052】
一対の磁気センサ53、54のうち一方の磁気センサ(以下、第1磁気センサと呼ぶ。)53は、セル面内の水素上流部位および空気下流部位を流れる電流によって形成される磁界の強さを検出するものである。第1磁気センサ53は、所定のセル10の外周におけるセル面内の水素下流部位および空気上流部位よりも水素上流部位および空気下流部位に近い位置に配置されている(図2参照)。なお、セル10の外周における水素上流部位および空気下流部位に近い位置は、セル10の外周壁面(セルの積層方向に平行な側面)のうちセル10面内の水素入口マニホールド121aおよび空気出口マニホールド122bが形成された位置に近い位置でもある。
【0053】
また、他方の磁気センサ54(以下、第2磁気センサと呼ぶ。)は、セル面内の水素下流部位および空気上流部位を流れる電流によって形成される磁界の強さを検出するものである。第2磁気センサ54は、第1磁気センサ53が配置された位置に対してセル10を挟んで対向する位置に配置されている。つまり、第2磁気センサ54は、所定のセル10の外周におけるセル面内の水素上流部位および空気下流部位よりも水素下流部位および空気上流部位に近い位置に配置されている(図2参照)。なお、セル10の外周における水素下流部位および空気上流部位に近い位置は、セル10の外周壁面のうちセル10面内の水素出口マニホールド121bおよび空気入口マニホールド122aが形成された位置に近い位置でもある。
【0054】
また、各磁気センサ53、54には、それぞれ第1、第2集磁体531、541が隣接して配置されている。この集磁体531、541としては、比較的残留磁気が少ないパーマロイ(磁性材料)で構成することができる。
【0055】
各集磁体531、541は、複数のセル10の外周囲に形成される磁界を第1、第2磁気センサ53、54のそれぞれに集めるためのもので、燃料電池1の外周においてセル10の積層方向に沿って延びる形状としている。具体的には、第1、第2集磁体531、541は、図4に示すように、セル10の積層方向の長さLが、単セルの厚みT(セルの積層方向の厚み)よりも長い長板状に形成されている。
【0056】
図4では、各集磁体531、541のセル10の積層方向の長さLを単セル10の3つ分の厚さとしている。この場合、3つのセル10の外周囲に形成される磁界の強さを第1、第2磁気センサ53、54でまとめて検出することができる。なお、図4は、集磁体531、541のセル10の積層方向の長さを説明するための説明図であり、燃料電池1における積層されたセル10をセル10の積層方向に直交する方向から見た状態を示している。
【0057】
図1に戻り、第1集磁体531は、第1磁気センサ53を狭持するように配置された一対の集磁部531a、531bで構成され、また、第2集磁体541は、第2磁気センサ54を狭持するように配置された一対の集磁部541a、541bで構成されている。
【0058】
第1集磁体531の集磁部531a、531bのうち一方の集磁部531aは、セル10の空気下流部位よりも水素上流部位に近い外周に配置され、他方の集磁部531bは、セル10の水素上流部位よりも空気下流部位に近い外周に配置されている。
【0059】
そして、この一対の集磁部531a、531bは、第1磁気センサ53を基準に、対称となる形状に形成されている。なお、各集磁部531a、531bは、第1磁気センサ53に最も近い部位が第1磁気センサ53に向かって突出しており、この突出した部位で第1磁気センサ53に当接している。
【0060】
また、第2集磁体541の集磁部541a、541bのうち一方の集磁部541aは、セル10の水素下流部位よりも空気上流部位に近い外周に配置され、他方の集磁部541bは、セル10の空気上流部位よりも水素下流部位に近い外周に配置されている。
【0061】
そして、この一対の集磁部541a、541bは、第2磁気センサ54を基準に、対称となる形状に形成されている。なお、各集磁部541a、541bは、第2磁気センサ54に最も近い部位が第2磁気センサ54に向かって突出しており、この突出した部位で第2磁気センサ54に当接している。
【0062】
このような第1、第2集磁体531、541によって複数のセル10の外周周りの磁界を各磁気センサ53、54に集めることで、各磁気センサ53、54では、所定のセル10の外周回りに限らず、複数のセル10の外周周りに形成される磁界の強さを検出可能となる。
【0063】
燃料電池診断装置5の制御装置50は、燃料電池1の発電状態を診断する診断手段を構成している。制御装置50は、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムに従って各種演算などの処理を実行する。
【0064】
制御装置50の入力側には、上述の電圧センサ51、電流センサ52、一対の磁気センサ53、54等が接続されている。本実施形態の制御装置50では、電圧センサ51からの電圧信号と電流センサ52からの電流信号に基づいて、燃料電池1の内部抵抗を算出する演算処理を行っている。また、第1、第2磁気センサ53、54からの磁気信号に基づいて、燃料電池1内部の電流の偏りに相当する燃料電池1の外周囲に形成される磁界の磁力差を算出する演算処理を行っている。従って、本実施形態の制御装置50は、燃料電池1の内部抵抗を測定する抵抗測定手段の一部を構成するとともに、複数のセル10におけるセル面内の電流の偏りを算出する電流偏り算出手段を構成している。
【0065】
また、制御装置50の出力側には、水素調圧弁、電磁弁、空気ポンプ、空気調圧弁等が接続され、接続された各機器に制御信号を出力するように構成されている。
【0066】
次に、上記構成の燃料電池診断装置5を用いた燃料電池1の発電状態の診断方法を図5に基づいて説明する。図5は、制御装置50が実行する燃料電池1の発電状態の診断処理を示している。制御装置50は、燃料電池1の発電中(運転中)に診断処理を実行する。
【0067】
まず、ステップS1では、電圧センサ51、電流センサ52、および一対の磁気センサ53、54等で検出された検出信号を読み込む。
【0068】
次に、ステップS2に進み、ステップS1で読み込んだ電圧センサ51、電流センサ52の検出信号に基づいて、燃料電池1内部の内部抵抗Rを算出する。ここで、燃料電池1内部の湿潤状態が乾燥している状態(ドライアップ)となると、膜電極接合体11の電解質膜の抵抗が増大するので、燃料電池1全体の内部抵抗Rが増大する。つまり、燃料電池1の内部抵抗Rの大きさによって、燃料電池内部が乾燥している状態か否かを判定することができる。
【0069】
そこで、ステップS3では、燃料電池1の内部抵抗Rに基づいて燃料電池1内部が乾燥している状態か否かを判定する。具体的には、ステップS3で算出した内部抵抗R(測定値)が予め設定された設定抵抗値以上となる場合(ステップS3:YES)、ステップS4に進み、燃料電池1内部が乾燥している状態と診断する。
【0070】
なお、燃料電池1内部が乾燥している状態と診断された場合、燃料電池1の負荷を低下させ、燃料電池1内部の温度を下げる等して、燃料電池1内の湿度を増加させる。これにより、燃料電池1内部が乾燥している状態を解消することができる。また、空気供給配管3aに加湿器を設が設けられている場合には、加湿器によって供給する空気の加湿量を増加させてもよい。
【0071】
ステップS3で算出した内部抵抗Rが設定抵抗値以上とならない場合(ステップS3:NO)、ステップS5に進む。ステップS5では、各セル10への水素の供給量が不足しているか否か、つまり水素が欠乏しているか否かを判定する。
【0072】
ここで、水素の供給量不足は、水素入口マニホールド121a側よりも水素出口マニホールド121bの近くで発生しやすい。換言すれば、水素の供給量不足は、セル面内の水素上流部位よりも水素下流部側で発生しやすい。
【0073】
そのため、水素の供給量不足が発生すると、セル面内の水素下流部位で発生する電流が、水素上流部位を流れる電流よりも低下するといった電流の偏りが生ずる。この電流の偏りによって、セル10の水素下流部位に対応する外周に形成される磁力が、セル10の水素上流部位に対応する外周に形成される磁力よりも小さくなる。具体的には、第2磁気センサ54の検出値が、第1磁気センサ53の検出値よりも低下する。
【0074】
従って、水素の供給量の不足(水素の欠乏)は、セル10の水素下流部位に対応する外周に形成される磁力と、セル10の水素上流部位に対応する外周に形成される磁力の磁力差に基づいて判定することができる。
【0075】
このため、具体的にステップS5では、ステップS1で読み込んだ第1磁気センサ53の検出値から第2磁気センサ54の検出値を減算して電流の偏りに相当する磁力差を算出し、算出した磁力差が予め設定された第1設定値以上となるか否かを判定する。算出した磁力差が予め設定される第1設定値以上である場合、すなわち、水素の供給量が不足していると判定された場合(ステップS5:YES)、ステップS6に進み、水素の供給量が不足していると診断する。ここで、第1設定値は、予め実験や物理モデルを用いたシミュレーション結果等に基づいて設定する。
【0076】
なお、水素の供給量が不足していると診断された場合、水素調圧弁の開度を増大させる等して、燃料電池1への水素の供給量を増大することで、水素の供給量不足を解消することができる。
【0077】
ステップS5で算出した磁力差が第1設定値以上とならない場合、すなわち、水素の供給量が不足していないと判定された場合(ステップS5:NO)、ステップS7に進む。ステップS7では、各セル10への空気の供給量が不足しているか否か、つまり空気が欠乏しているか否かを判定する。なお、空気の供給量不足は、単に外部からの空気の供給量が少ない場合だけでなく、生成水等が過剰となり、空気極側に空気を供給できない状態(フラッディング)となる場合も含んでいる。
【0078】
ここで、空気の供給量不足は、空気入口マニホールド122a側よりも空気出口マニホールド122bの近くで発生しやすい。換言すれば、空気の供給量不足は、セル面内の空気上流部位よりも空気下流部側で発生しやすい。
【0079】
そのため、空気の供給量不足が発生すると、セル面内の空気下流部位で発生する電流が、空気上流部位を流れる電流よりも低下するといった電流に偏りが生ずる。この電流の偏りによって、セル10の空気下流部位に対応する外周に形成される磁力が、セル10の空気上流部位に対応する外周に形成される磁力よりも小さくなる。具体的には、第1磁気センサ53の検出値が、第2磁気センサ54の検出値よりも低下する。
【0080】
従って、空気の供給量不足は、セル10の空気下流部位に対応する外周に形成される磁力と、セル10の空気上流部位に対応する外周に形成される磁力の磁力差に基づいて判定することができる。
【0081】
このため、具体的にステップS7では、第2磁気センサ54の検出値から第1磁気センサ53の検出値を減算して電流の偏りに相当する磁力差を算出し、算出した磁力差が予め設定される第2設定値以上となるか否かを判定する。算出した磁力差が第2設定値以上である場合、すなわち、空気の供給量が不足していると判定された場合(ステップS7:YES)、ステップS8に進み、空気の供給量が不足していると診断する。ここで、第2設定値は、予め実験や物理モデルを用いたシミュレーション結果等に基づいて設定する。
【0082】
なお、空気の供給量が不足していると診断された場合、空気ポンプの回転数や空気調圧弁の開度を調整する等して、燃料電池1への空気の供給量を増大することで、空気の供給量不足を解消することができる。
【0083】
そして、ステップS7で算出した磁力差が第2設定値以上とならない場合、すなわち、空気の供給量が不足していないと判定された場合(ステップS7:NO)、燃料電池1の発電状態が正常状態であるため、診断処理を終了する。
【0084】
以上説明した本実施形態によれば、セル10の外周回りに配置した一対の磁気センサ53、54によって複数のセル10における磁力差を算出し、この算出結果に基づいて燃料電池1の発電状態を診断することができる。
【0085】
そして、本実施形態の燃料電池診断装置5の各構成は、燃料電池1の外部に設ける構成であり、燃料電池1の発電時の抵抗にならないので、燃料電池1の発電性能に悪影響を及ぼすことなく、燃料電池1の発電状態を診断することができる。
【0086】
ここで、従来のようにセル10間に磁気センサを内蔵した導電部材を配置して燃料電池1の発電状態を診断する構成であると、複数のセル10の発電状態を診断する際には、各セル10の間に導電部材を配置する必要があり、導電板の増加によって複雑化していた。
【0087】
しかし、本実施形態の構成は、一対の集磁体531、541により複数のセル10の外周囲に形成される磁界を一対の磁気センサ53、54に集める構成であり、複数のセル10の外周囲に形成される磁界の強さを一対の磁気センサ53、54でまとめて検出することができる。
【0088】
従って、複数のセル10の発電状態を診断する場合であっても、センサ等の構成を追加することなく、燃料電池1の発電状態を診断可能となるので、従来よりも簡素な構成で複数のセル10の発電状態を診断することができる。
【0089】
さらに、本実施形態の構成によれば、一対の磁気センサ53、54を用いる構成によって、燃料電池1の水素の供給量不足と空気の供給量不足を診断することができるため、より簡素な構成で燃料電池1の発電状態を診断することができる。
【0090】
さらにまた、本実施形態では、水素の供給量不足、空気の供給量不足の診断を一対の磁気センサ53、54の検出値の差分(磁気差)を用いているので、一対の磁気センサ53に同様に加わるノイズ等を除去することができる。そのため、燃料電池1の発電状態の診断精度の向上を図ることが可能となる。
【0091】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図6に基づいて説明する。上記第1実施形態と同様または均等な部分について同一の符号を付し、その説明を省略する。ここで、図6は、本実施形態に係る燃料電池、および燃料電池診断装置を示す模式的な斜視図である。
【0092】
本実施形態の燃料電池診断装置5は、第1実施形態で説明した燃料電池診断装置5に対して、一対の集磁体531、541の形状を変更している。つまり、図2に示すように、本実施形態の一対の集磁体531、541は、それぞれの集磁部531a、531b、541a、541bをL字形状にしている。
【0093】
本実施形態では、各集磁部531a、531b、541a、541bをL字形状にすることで、各集磁部531a、531b、541a、541bが対応する各マニホールド121a、121b、122a、122bを囲むように配置している。
【0094】
具体的には、第1集磁体531の集磁部531aが、セル10における水素入口マニホールド121aの近くの外周を囲むように配置し、第1集磁体531の集磁部531bが、セル10における空気出口マニホールド122bの近くの外周を囲むように配置している。
【0095】
また、第2集磁体541の集磁部541aが、セル10における空気入口マニホールド122aの近くの外周を囲むように配置し、第2集磁体541の集磁部541bが、セル10における水素出口マニホールド121bの近くの外周を囲むように配置している。
【0096】
これにより、各集磁部531a、531b、541a、541bでは、対応する各マニホールド121a、121b、122a、122bに近い位置に形成される磁界を磁気センサ53、54に集めることができる。その結果、水素の供給量不足と空気の供給量不足に起因する磁力差を、より適切に検出することができる。
【0097】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図7に基づいて説明する。上記第1実施形態と同様または均等な部分について同一の符号を付し、その説明を省略する。ここで、図7は、本実施形態に係る燃料電池、および燃料電池診断装置を示す模式的な斜視図である。
【0098】
上述の第1実施形態では、燃料電池1の所定のセル10の外周に1対の磁気センサ53、54を1組配置する構成としているが、本実施形態では、燃料電池1の所定のセル10の外周に1対の磁気センサ53、54を2組配置する構成としている。
【0099】
1対の磁気センサ53、54のうち1組目の一対の磁気センサ53a、54aは、セル10の外周における水素入口マニホールド121aと水素出口マニホールド121bに近い位置に配置されている。そのため、1組目の一対の磁気センサ53a、54aの各検出値に基づいて、セル10の水素上流部位と水素下流部位における電流の偏りを把握することができる。
【0100】
また、2組目の一対の磁気センサ53b、54bは、セル10の外周における空気入口マニホールド122aと空気出口マニホールド122bに近い位置に配置されている。そのため、2組目の一対の磁気センサ53b、54bの各検出値に基づいてセル10の空気上流部位と空気下流部位との電流の偏りについて把握することができる。
【0101】
そして、各磁気センサ53a、53b、54a、54bは、それぞれ一対の集磁体532、533、542、543に接続され、セル10の外周における各マニホールド121a、121b、122a、122bに近い位置に形成される磁界が集められる。
【0102】
このように、4つの磁気センサ53a、53b、54a、54bを設ける構成とした場合、セル10の水素上流部位と水素下流部位との電流の偏り、およびセル10の空気上流部位と空気下流部位との電流の偏りを独立して把握することができる。つまり、第1実施形態のように、セパレータ12に形成された各ガス流路123、124における水素上流部位と空気下流部位とが互いに対向し、水素下流部位と空気上流部位とが互いに対向する構成でなくとも、各部位における電流の偏りを把握することができる。
【0103】
そのため、本実施形態の燃料電池診断装置では、燃料電池1のセル10の各ガス流路123、124の構造に依存することなく複数のセル10の発電状態を診断することが可能となる。
【0104】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について主に図8、図9に基づいて説明する。上記第1〜第3実施形態と同様または均等な部分について同一の符号を付し、その説明を省略、または簡略化して説明する。ここで、図8は、燃料電池1の周囲に形成される地磁気を説明するための説明図であり、図9は本実施形態の制御装置50が実行する燃料電池1の発電状態の診断処理を示している。
【0105】
ここで、燃料電池1の周囲には、燃料電池1の発電時に流れる電流による磁界の他に、地磁気による磁界が形成される。この地磁気の磁束は、図8の実線矢印に示すように、燃料電池1に対して特定の一方向(図8では、紙面右方向)となる。なお、燃料電池1を車載発電システムに適用する場合、車両の移動に伴って、燃料電池1に対する地磁気の磁束の向きが変化する。
【0106】
燃料電池1の発電時に流れる電流による磁界の強さが地磁気による磁界の強さに比べて充分に大きくない場合には、地磁気の影響が無視できず、第1磁気センサ53および第2磁気センサ54の検出値に基づいて燃料電池1の診断を適切に行うことができない可能性がある。
【0107】
そこで、本実施形態では、地磁気の影響を排除して、燃料電池1の診断を適切に行うことが可能な燃料電池診断装置5を提供することを目的とする。
【0108】
本実施形態の燃料電池診断装置5の基本構成は第1実施形態と同様である。本実施形態の構成について簡単に説明すると、本実施形態の第1磁気センサ53および第2磁気センサ54は、セル10の外周回りにおける周方向に半周(例えば、160°〜200°程度)ずらした位置に配置されている。換言すれば、第1磁気センサ53および第2磁気センサ54は、セル10の積層方向に直交する方向に、セル10を挟んで対向する位置に配置されている(図8参照)。
【0109】
このため、燃料電池1内を流れる電流によって燃料電池1の外周囲に生ずる磁束の向きは、第1磁気センサ53の周囲と第2磁気センサ54の周囲とで反対方向となる。つまり、図8において、燃料電池1内を流れる電流によって燃料電池1の外周囲に生ずる磁束の向きが、燃料電池1の外周回りの時計回り方向(図8の破線矢印参照)となる場合、第1磁気センサ53の周囲における磁束の向きが紙面右方向(紙面上方の白抜破線矢印参照)となるのに対して、第2磁気センサ54の周囲における磁束の向きが紙面左方向(紙面下方の白抜破線矢印参照)となる。
【0110】
これに対して、地磁気の磁束の向きは、燃料電池1に対して特定の一方向となる。例えば、地磁気の磁束の向きが、図8の実線矢印で示す方向となる場合、第1磁気センサ53および第2磁気センサ54の周囲における磁束の向きが紙面右方向となる。
【0111】
また、第1磁気センサ53および第2磁気センサ54それぞれは、燃料電池1を流れる電流によって燃料電池1の外周囲に生ずる磁界の向きと同方向となる磁界の強さを正として検出するように配置されている。このため、第1磁気センサ53および第2磁気センサ54では、燃料電池1を流れる電流によって生ずる磁界の強さを正の値として制御装置50に出力することとなる。
【0112】
一方、地磁気の磁束の向きは、燃料電池1に対して特定の一方向となるので、第1磁気センサ53および第2磁気センサ54では、地磁気による磁界の強さを一方の磁気センサで正の値、他方の磁気センサで負の値として制御装置50に出力することとなる。
【0113】
例えば、地磁気の磁束の向きが、図8における紙面右方向となる条件において、燃料電池1を流れる電流によって燃料電池1の外周囲に生ずる磁界の強さをφ(≧0)とし、地磁気による磁界の強さをφe(≧0)とすると、第1磁気センサ53にて検出する検出値Vaがφ+φeとなり、第2磁気センサ54にて検出する検出値Vbがφ−φeとなる。
【0114】
このため、第1磁気センサ53および第2磁気センサ54それぞれの検出値を合算することで、第1磁気センサ53の検出値Vaに含まれる地磁気による磁界の強さと、第2磁気センサ54の検出値Vbに含まれる地磁気による磁界の強さと打ち消すことができる。
【0115】
これにより、燃料電池1の外周に形成される磁界から地磁気による磁界の影響を排除することができる。なお、第1磁気センサ53および第2磁気センサ54それぞれの検出値を合算した合算値Vは、V=(φ+φe)+(φ−φe)=2φとなる。
【0116】
次に、上記構成の燃料電池診断装置5を用いた燃料電池1の発電状態の診断方法を図9に基づいて説明する。
【0117】
本実施形態では、ステップS3の判定処理にて内部抵抗Rが設定抵抗値以上とならないと判定された場合(ステップS3:NO)に、第1磁気センサ53の検出値Vaと第2磁気センサ54の検出値Vbとの合算値に基づいて、燃料電池1の異常の有無を判定するようにしている(ステップS9)。
【0118】
具体的には、ステップS9では、第1磁気センサ53の検出値Vaと第2磁気センサ54の検出値Vbとを合算して、地磁気の影響を排除した燃料電池1を流れる電流によって燃料電池1の外周囲に形成される磁界の強さを検出する。
【0119】
第1磁気センサ53の検出値Vaと第2磁気センサ54の検出値Vbの合算値は、燃料電池1の出力が正常である場合における燃料電池1の外周囲に形成される磁界の強さの2倍程度になる。このため、電流センサ52からの電流信号等に基づいて、燃料電池1の出力が正常である場合における燃料電池1の外周囲に形成される磁界の強さを推定し、当該推定した値を、例えば1.8〜1.9倍した値を第1基準値として設定する。
【0120】
そして、第1磁気センサ53の検出値Vaと第2磁気センサ54の検出値Vbの合算値が予め設定された第1基準値よりも小さいか否かを判定する。
【0121】
この結果、第1磁気センサ53の検出値Vaと第2磁気センサ54の検出値Vbの合算値が第1基準値よりも小さいと判定された場合には、燃料電池1に何らかの異常が発生しているものと判断できるので、燃料電池1に異常有と判定する(ステップS9:YES)。
【0122】
一方、第1磁気センサ53の検出値Vaと第2磁気センサ54の検出値Vbの合算値が第1基準値よりも大きいと判定された場合には、燃料電池1に異常無と判定する(ステップS9:NO)。
【0123】
そして、ステップS9の判定処理にて、燃料電池1に異常有と判定された場合(ステップS9:YES)には、ステップS5の判定処理に移行して、燃料電池1の水素の供給量が不足しているか否かを判定する。
【0124】
また、ステップS9の判定処理にて、燃料電池1に異常無と判定された場合(ステップS9:NO)には、燃料電池1に異常が無いと判断して、診断処理を終了する。
【0125】
以上説明した、本実施形態の構成によれば、地磁気の影響を排除した一対の磁界検出手段(53、54)における検出値の合算値が低い場合に、地磁気の影響を排除した第1磁気センサ53および第2磁気センサ54それぞれの検出値の合算値が第1基準値よりも低い場合に、燃料電池1への水素や空気の供給量不足といった燃料電池1の発電状態を診断するので、燃料電池1を流れる電流による磁界の強さが地磁気による磁界の強さに比べて充分に大きくない場合であっても、第1磁気センサ53および第2磁気センサ54に基づいて燃料電池1の発電状態を適切に診断することができる。
【0126】
ここで、本実施形態では、第1磁気センサ53および第2磁気センサ54それぞれは、燃料電池1を流れる電流によって燃料電池1の外周囲に生ずる磁界の向きと同方向となる磁界の強さを正として検出するように配置しているが、これに限定されない。
【0127】
例えば、第1磁気センサ53および第2磁気センサ54それぞれは、燃料電池1を流れる電流によって燃料電池1の外周囲に生ずる磁界の向きと同方向となる磁界の強さを負として検出するように配置する形態としてもよい。
【0128】
この場合、第1磁気センサ53および第2磁気センサ54では、燃料電池1を流れる電流によって生ずる磁界の強さを負の値として制御装置50に出力することとなる。地磁気の磁束の向きは、燃料電池1に対して特定の一方向となるので、第1磁気センサ53および第2磁気センサ54では、地磁気による磁界の強さを一方の磁気センサで正の値、他方の磁気センサで負の値として制御装置50に出力することとなる。
【0129】
例えば、地磁気の磁束の向きが、図8における紙面右方向となる条件において、燃料電池1を流れる電流によって燃料電池1の外周囲に生ずる磁界の強さをφ(≧0)とし、地磁気による磁界の強さをφe(≧0)とすると、第1磁気センサ53にて検出する検出値Vaが−φ−φeとなり、第2磁気センサ54にて検出する検出値Vbが−φ+φeとなる。
【0130】
従って、第1磁気センサ53および第2磁気センサ54それぞれの検出値を合算することで、第1磁気センサ53の検出値Vaに含まれる地磁気による磁界の強さと、第2磁気センサ54の検出値Vbに含まれる地磁気による磁界の強さと打ち消すことができる。なお、第1磁気センサ53および第2磁気センサ54それぞれの検出値を合算した合算値Vは、V=(−φ−φe)+(−φ+φe)=−2φとなる。
【0131】
また、第1磁気センサ53の検出値Vaと第2磁気センサ54の検出値Vbの合算値が負の値となる。このため、ステップS9の判定処理では、第1磁気センサ53の検出値Vaと第2磁気センサ54の検出値Vbの合算値が、第1基準値の値を負の値に変更した第2基準値よりも大きいか否かを判定し、当該第2基準値よりも大きい場合に、燃料電池1に異常有と判定すればよい。
【0132】
その他の形態として、第1磁気センサ53は、燃料電池1を流れる電流によって燃料電池1の外周囲に生ずる磁界の向きと同方向となる磁界の強さを正として検出するように配置し、第2磁気センサ54は、燃料電池1を流れる電流によって燃料電池1の外周囲に生ずる磁界の向きと同方向となる磁界の強さを負として検出するように配置する形態としてもよい。
【0133】
この場合、第1磁気センサ53では、燃料電池1を流れる電流によって生ずる磁界の強さを正の値として制御装置50に出力し、第2磁気センサ54では、燃料電池1を流れる電流によって生ずる磁界の強さを負の値として制御装置50に出力することとなる。地磁気の磁束の向きは、燃料電池1に対して特定の一方向となるので、第1磁気センサ53および第2磁気センサ54では、地磁気による磁界の強さを同符号の値(正の値または負の値)として制御装置50に出力することとなる。
【0134】
例えば、地磁気の磁束の向きが、図8における紙面右方向となる条件において、燃料電池1を流れる電流によって燃料電池1の外周囲に生ずる磁界の強さをφ(≧0)とし、地磁気による磁界の強さをφe(≧0)とすると、第1磁気センサ53にて検出する検出値Vaがφ+φeとなり、第2磁気センサ54にて検出する検出値Vbが−φ+φeとなる。
【0135】
従って、第1磁気センサ53の検出値から第2磁気センサ54の検出値を減算することで、第1磁気センサ53の検出値Vaに含まれる地磁気による磁界の強さと、第2磁気センサ54の検出値Vbに含まれる地磁気による磁界の強さと打ち消すことができる。なお、第1磁気センサ53の検出値から第2磁気センサ54を減算した減算値Vは、V=(φ+φe)−(−φ+φe)=2φとなる。
【0136】
また、第1磁気センサ53の検出値Vaと第2磁気センサ54の検出値Vbの減算値が正の値となるため、ステップS9の判定処理では、第1磁気センサ53の検出値Vaと第2磁気センサ54の検出値Vbの減算値が、第1基準値と同様の値に設定された第3基準値よりも小さいか否かを判定し、当該第3基準値よりも小さい場合に、燃料電池1に異常有と判定すればよい。
【0137】
さらに、第1磁気センサ53は、燃料電池1を流れる電流によって燃料電池1の外周囲に生ずる磁界の向きと同方向となる磁界の強さを負として検出するように配置し、第2磁気センサ54は、燃料電池1を流れる電流によって燃料電池1の外周囲に生ずる磁界の向きと同方向となる磁界の強さを正として検出するように配置する形態としてもよい。
【0138】
この場合には、第2磁気センサ54の検出値から第1磁気センサ53の検出値を減算することで、第1磁気センサ53の検出値Vaに含まれる地磁気による磁界の強さと、第2磁気センサ54の検出値Vbに含まれる地磁気による磁界の強さと打ち消すことができる。
【0139】
これら変形例によっても、地磁気による磁界の強さと打ち消すことができ、第1磁気センサ53および第2磁気センサ54に基づいて燃料電池1の発電状態を適切に診断することができる。
【0140】
なお、本実施形態では、燃料電池診断装置5の基本構成を、第1実施形態と同様の構成としたが、これに限らず、燃料電池診断装置5の基本構成として、例えば、第2実施形態や第3実施形態と同様の構成としてもよい。
【0141】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。例えば、以下のように種々変形可能である。
【0142】
(1)上述の実施形態では、各集磁体531、541のセル10の積層方向の長さLを単セル3つ分の厚さとしている例を図4に基づいて説明したが、これに限定されない。各集磁体531、541のセル10の積層方向の長さLは、単セル10の厚さ以上であればよく、例えば、燃料電池1のセル10の積層方向の長さと同様の長さとしてもよい。
【0143】
(2)上述の実施形態の燃料電池1の発電状態の診断処理(図4参照)では、水素の供給量不足を判定した後に空気の供給量不足を判定しているが、判定の順番は、これに限定されない。すなわち、診断処理では、空気の供給量不足を判定した後に、水素の供給量不足を判定してもよい。
【0144】
(3)上述の実施形態では、磁気センサは、ホール素子にて構成する例を説明したが、これに限定されず、例えば、MI素子、AMR素子、MR素子、フラックスゲート等を用いてもよい。
【0145】
(4)上述の実施形態では、集磁体をパーマロイ(磁性材料)で構成する例を説明したが、これに限定されず、例えば、セメンダスト、フェライト等の残留磁気が少ない磁性材料で構成してもよい。
【0146】
(5)上述の実施形態では、燃料電池1として固体高分子型燃料電池(PEMFC)を用いた例を説明したがこれに限定されない。例えば、燃料電池1として、リン酸型燃料電池(PAFC)、固体酸化物型燃料電池(SOFC)、アルカリ型燃料電池(AFC)等を用いてもよい。
【0147】
(6)また、燃料電池1は、燃料電池車両の車載発電システムに、その他の移動体(船舶や飛行機等)に搭載される発電システムや定置型の発電システム等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0148】
1 燃料電池
10 セル(発電セル)
121a 水素入口マニホールド(燃料ガスの入口)
121b 水素出口マニホールド(燃料ガスの出口)
122a 空気入口マニホールド(酸化剤ガスの入口)
122b 空気出口マニホールド(酸化剤ガスの出口)
51 電圧センサ(抵抗測定手段の一部)
52 電流センサ(抵抗測定手段の一部)
53 第1磁気センサ(一方の磁界検出手段)
531 集磁体
54 第2磁気センサ(他方の磁界検出手段)
541 集磁体
50 制御装置(診断手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤ガスと燃料ガスとを電気化学反応させて発電する発電セル(10)を複数積層した燃料電池(1)の発電状態を診断する燃料電池診断装置であって、
前記発電セル(10)の外周回りにおける周方向にずらした位置に配置され、前記燃料電池(1)内を流れる電流によって前記燃料電池(1)の外周囲に形成される磁界の強さを検出する一対の磁界検出手段(53、54)と、
前記燃料電池(1)の外周において前記磁界検出手段(53、54)に隣接して配置され、前記複数の発電セル(10)の積層方向に沿って延びるとともに、前記複数の発電セル(10)の外周囲に形成される磁界を前記磁界検出手段(53、54)に集める集磁体(531、541)と、
前記一対の磁界検出手段(53、54)で検出された検出値に基づいて燃料電池(1)の発電状態を診断する診断手段(50)と、
を備えることを特徴とする燃料電池診断装置。
【請求項2】
前記集磁体(531、541)は、前記積層方向の長さ(L)が、前記発電セル(10)の前記積層方向の厚み(T)よりも長いことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池診断装置。
【請求項3】
前記発電セル(10)は、セル面内における燃料ガスの出口(121b)よりも入口(121a)に近い燃料ガス上流部位と、酸化剤ガスの入口(122a)よりも出口(122b)に近い酸化剤ガス下流部位とが前記積層方向に対向し、セル面内における燃料ガスの入口(121a)よりも出口(121b)に近い燃料ガス下流部位と酸化剤ガスの出口(122b)よりも入口(122a)に近い酸化剤ガス上流部位とが前記積層方向に対向するように構成され、
前記一対の磁界検出手段(53、54)は、一方の磁界検出手段(53)が前記発電セル(10)の外周における前記燃料ガス上流部位および前記酸化剤ガス下流部位に近い位置に配置され、他方の磁界検出手段(54)が前記発電セル(10)の外周における前記燃料ガス下流部位および前記酸化剤ガス上流部位に近い位置に配置されており、
前記診断手段(50)は、前記一方の磁界検出手段(53)の検出値に対して前記他方の磁界検出手段(54)の検出値が予め設定された第1設定値以上減少している場合に燃料ガスが欠乏していると診断し、前記他方の磁界検出手段(54)の検出値に対して前記一方の磁界検出手段(53)の検出値が予め設定された第2設定値以上減少している場合に酸化剤ガスが欠乏していると診断することを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池診断装置。
【請求項4】
前記一対の磁界検出手段(53a、54a)は、
一方の磁界検出手段(53a)が前記発電セル(10)の外周におけるセル面内の燃料ガスの出口(121b)よりも入口(121a)に近い燃料ガス上流部位に近い位置に配置され、
他方の磁界検出手段(54a)が前記発電セル(10)の外周におけるセル面内の燃料ガスの入口(121a)よりも出口(121b)に近い燃料ガス下流部位に近い位置に配置されており、
前記診断手段(50)は、前記一方の磁界検出手段(53a)の検出値に対して前記他方の磁界検出手段(54a)の検出値が予め設定された第1設定値以上減少している場合に燃料ガスが欠乏していると診断することを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池診断装置。
【請求項5】
前記一対の磁界検出手段(53b、54b)は、
一方の磁界検出手段(53b)が前記発電セル(10)の外周におけるセル面内の酸化剤ガスの入口(122a)よりも出口(122b)に近い酸化剤ガス下流部位に近い位置に配置され、
他方の磁界検出手段(54b)が前記発電セル(10)の外周におけるセル面内の酸化剤ガスの出口(122b)よりも入口(122a)に近い酸化剤ガス下流部位に近い位置に配置されており、
前記診断手段(50)は、前記他方の磁界検出手段(54b)の検出値に対して前記一方の磁界検出手段(53b)の検出値が予め設定された第2設定値以上減少している場合に酸化剤ガスが欠乏していると診断することを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池診断装置。
【請求項6】
前記燃料電池(1)内部の内部抵抗を測定する抵抗測定手段(50〜52)を備え、
前記診断手段(50)は、前記抵抗測定手段(50〜52)により測定された測定値が予め設定された設定抵抗値よりも大きい場合に、前記燃料電池(1)内部が乾燥していると状態と診断することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の燃料電池診断装置。
【請求項7】
前記一対の磁界検出手段(53、54)は、前記発電セル(10)の外周回りにおける周方向に半周ずらした位置に配置されると共に、それぞれ前記燃料電池(1)内を流れる電流によって前記燃料電池(1)の外周囲に生ずる磁束の向きと同方向となる磁界の強さを正として検出し、
前記診断手段(50)は、前記一対の磁界検出手段(53、54)のうち、一方の磁界検出手段(53)にて検出された検出値と他方の磁界検出手段(54)にて検出された検出値の合算値が、予め設定された第1基準値よりも小さい場合に、前記一対の磁界検出手段(53、54)で検出された検出値に基づいて前記燃料電池(1)の発電状態を診断することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の燃料電池診断装置。
【請求項8】
前記一対の磁界検出手段(53、54)は、前記発電セル(10)の外周回りにおける周方向に半周ずらした位置に配置されると共に、それぞれ前記燃料電池(1)内を流れる電流によって前記燃料電池(1)の外周囲に生ずる磁束の向きと同方向となる磁界の強さを負として検出し、
前記診断手段(50)は、前記一対の磁界検出手段(53、54)のうち、一方の磁界検出手段(53)にて検出された検出値と他方の磁界検出手段(54)にて検出された検出値の合算値が、予め設定された第2基準値よりも大きい場合に、前記一対の磁界検出手段(53、54)で検出された検出値に基づいて前記燃料電池(1)の発電状態を診断することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の燃料電池診断装置。
【請求項9】
前記一対の磁界検出手段(53、54)は、前記発電セル(10)の外周回りにおける周方向に半周ずらした位置に配置されると共に、前記一対の磁界検出手段(53、54)のうち、一方の磁界検出手段(53)にて前記燃料電池(1)内を流れる電流によって前記燃料電池(1)の外周囲に生ずる磁束の向きと同方向となる磁界の強さを正として検出し、他方の磁界検出手段(54)にて前記磁束の向きと同方向となる磁界の強さを負として検出し、
前記診断手段(50)は、前記一方の磁界検出手段(53)にて検出された検出値から前記他方の磁界検出手段(54)にて検出された検出値を減算した減算値が、予め設定された第3基準値よりも小さい場合に、前記一対の磁界検出手段(53、54)で検出された検出値に基づいて前記燃料電池(1)の発電状態を診断することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の燃料電池診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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