説明

燃料電池

【課題】コンパクトな構成で、所望の水蒸気透過性を確保することができ、効率的なガス加湿処理を良好に遂行することを可能にする。
【解決手段】発電セル12は、電解質膜・電極構造体22と、前記電解質膜・電極構造体22を挟持する第1及び第2セパレータ24、26とを備える。第1セパレータ24は、酸化剤ガス流路42を有し、前記酸化剤ガス流路42と酸化剤ガス供給連通孔28a及び酸化剤ガス排出連通孔28bとの間には、入口側バッファ領域44aと出口側バッファ領域44bとが設けられる。入口側バッファ領域44aと出口側バッファ領域44bには、複数の円柱状抵抗部材46a、46bが形成される一方、電解質膜・電極構造体22には、第1及び第2加湿部40a、40bが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質膜の両側に一対の電極が配設される電解質膜・電極構造体と、セパレータとが積層されるとともに、積層方向に貫通して反応ガスを流す反応ガス連通孔が形成される燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる電解質膜の両側に、それぞれアノード側電極及びカソード側電極を配設した電解質膜・電極構造体を、セパレータによって挟持した発電セルを備えている。この種の燃料電池は、通常、所定の数の発電セルを積層するとともに、積層方向両端には、ターミナルプレート、絶縁プレート及びエンドプレートが配置されることにより、燃料電池スタックを構成している。
【0003】
上記の燃料電池では、有効な発電機能を発揮させるために、電解質膜を適度な湿潤状態に維持することが必要とされている。このため、例えば、燃料ガスや酸化剤ガスを、予め水を介して加湿する加湿装置を用意し、この加湿装置を燃料電池に連結することにより、前記加湿された燃料ガスや酸化剤ガスを燃料電池に供給する外部加湿方式が知られている。
【0004】
一方、加湿部をセルと一体化した内部加湿方式として、例えば、特許文献1に開示された固体高分子電解質型燃料電池が知られている。この燃料電池は、図11に示すように、膜電極接合体1とアノード側セパレータ2a及びカソード側セパレータ2kとを備えている。
【0005】
膜電極接合体1は、電解質膜3の両面に触媒層4a、4kと拡散層5a、5kとを接合して形成されるアノード電極6aとカソード電極6kとを備える。膜電極接合体1は、触媒層4a、4kが形成されていない電解質膜領域を加湿部7としている。アノード側セパレータ2a及びカソード側セパレータ2kには、アノードガス流通溝8aとカソードガス流通溝8kとが、例えば、サーペンタイン状に蛇行して形成されている。
【0006】
そこで、アノードガスとカソードガスとが対向流をなしている。このため、カソードガスは、触媒層4kで反応することにより生成された水により加湿された後、上側の加湿部7で水蒸気の濃度勾配によってカソード側からアノード側に水が移動する。アノードガスは、上側の加湿部7から移動してくる水で加湿される一方、下側の加湿部7では、水蒸気の濃度勾配によりアノード側からカソード側に水が移動し、反応前のカソードガスの加湿が行われている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−25584号公報(図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1では、アノードガス流通溝8a及びカソードガス流通溝8kを流れるアノードガス及びカソードガスの間で水蒸気の交換が行われている。このため、本来発電に使用されるアノードガス流通溝8a及びカソードガス流通溝8kの上下部分には、加湿部7が構成されており、電極面積が減少してしまう。従って、燃料電池の出力が低下するおそれがあり、所望の電極面積を確保するために、前記燃料電池全体が相当に大型化するという問題がある。
【0009】
しかも、それぞれ連続したアノードガス流通溝8a及びカソードガス流通溝8kでは、比較的安定したガス流れが発生しており、加湿部7の表面近傍におけるガス流速が低下し易い。これにより、単位面積当たりの水蒸気透過精度が低下し、所望の加湿状態を得るためには、前記加湿部7の面積を相当に拡大しなければならならないという問題がある。
【0010】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、コンパクトな構成で、所望の水蒸気透過性を確保することができ、効率的なガス加湿処理を良好に遂行することが可能な燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、電解質膜の両側に一対の電極が配設される電解質膜・電極構造体と、セパレータとが積層されるとともに、積層方向に貫通して反応ガスを流す反応ガス連通孔が形成される燃料電池に関するものである。
【0012】
セパレータは、電極の発電領域に対応して反応ガスを供給する反応ガス流路と、前記反応ガス流路と反応ガス連通孔との間に設けられ、前記反応ガスの撹拌を行うバッファ領域とを備えている。そして、電解質膜・電極構造体には、バッファ領域に対向し且つ前記バッファ領域から水分を透過するための加湿部が設けられている。
【0013】
また、バッファ領域には、反応ガスの流れに抵抗となる抵抗部材が設けられるとともに、前記抵抗部材には、前記反応ガスを電解質膜・電極接合体に案内する傾斜ガイド部が形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、反応ガス流路と反応ガス連通孔との間には、バッファ領域が設けられており、反応ガスがこのバッファ領域で撹拌されるため、加湿部の外表面に沿うガス流速が速くなるとともに、乱流が発生する。従って、加湿部における水蒸気透過性が向上し、同等の水蒸気透過量に対して必要な加湿部面積を良好に減少させることができる。
【0015】
しかも、バッファ領域は、ガス流の分布が不均一になるため、生成水の滞留が発生し易く、発電を行うには適さない領域であり、このバッファ領域を加湿領域として利用することによって、反応ガス流路の電極面積を減少させることがない。これにより、燃料電池全体の小型化及び軽量化を図るとともに、高性能な加湿処理が良好に遂行可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池スタック10の斜視説明図である。
【0017】
燃料電池スタック10は、複数の発電セル12が略水平方向である矢印A方向に積層された積層体14を備え、前記積層体14の積層方向両端には、ターミナルプレート16a、16b及び絶縁プレート18a、18bを介装してエンドプレート20a、20bが配置される。エンドプレート20a、20bは、例えば、図示しない締め付けボルトにより積層方向に締め付けられているが、これに代えて、図示しない箱状ケーシング内に収容してもよい。この燃料電池スタック10は、例えば、自動車等の車両に搭載されている。
【0018】
図2及び図3に示すように、各発電セル12は、電解質膜・電極構造体22と、前記電解質膜・電極構造体22を挟持する第1及び第2セパレータ24、26とを備える。第1及び第2セパレータ24、26は、例えば、カーボンプレートで構成されているが、金属プレートで構成してもよい。
【0019】
図2に示すように、発電セル12の矢印B方向の一端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガス(空気等)を供給するための酸化剤ガス供給連通孔28a、冷却媒体、例えば、純水やエチレングリコール等を供給するための冷却媒体供給連通孔30a、及び燃料ガス、例えば、水素含有ガスを排出するための燃料ガス排出連通孔32bが、矢印C方向に配列して設けられる。
【0020】
発電セル12の矢印B方向の他端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを供給するための燃料ガス供給連通孔32a、冷却媒体を排出するための冷却媒体排出連通孔30b、及び酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス排出連通孔28bが、矢印C方向に配列して設けられる。
【0021】
電解質膜・電極構造体22は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜34と、前記固体高分子電解質膜34を挟持するアノード側電極36及びカソード側電極38とを備える。
【0022】
アノード側電極36及びカソード側電極38は、図3に示すように、カーボンペーパ等からなるガス拡散層36a、38aと、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が前記ガス拡散層36a、38aの表面に一様に塗布されて形成される電極触媒層36b、38bとを有する。電極触媒層36b、38bは、固体高分子電解質膜34の両面に形成されるとともに、後述するバッファ領域に対応してガス拡散層36a、38aより小さな面積に設定されることにより、固体高分子電解質膜34及びガス拡散層36a、38aのみを有する第1及び第2加湿部40a、40bが設けられる(図2参照)。
【0023】
第1セパレータ24は、電解質膜・電極構造体22に向かう面24aに酸化剤ガス流路42を設ける。この酸化剤ガス流路42は、矢印B方向に延在する複数の酸化剤ガス流路溝42aを有し、前記酸化剤ガス流路溝42aの両端部と、酸化剤ガス供給連通孔28a及び酸化剤ガス排出連通孔28bとの間には、略三角形状の入口側バッファ領域44aと出口側バッファ領域44bとが設けられる。
【0024】
入口側バッファ領域44a及び出口側バッファ領域44bには、酸化剤ガスの流れに抵抗となる複数の円柱状抵抗部材46a、46bが形成される。酸化剤ガス供給連通孔28a及び酸化剤ガス排出連通孔28bと入口側バッファ領域44a及び出口側バッファ領域44bとは、連結路48a、48bにより連通する。
【0025】
第2セパレータ26は、電解質膜・電極構造体22に向かう面26aに燃料ガス流路50を設ける。この燃料ガス流路50は、図4に示すように、矢印B方向に延在する複数の燃料ガス流路溝50aを有し、前記燃料ガス流路溝50aの両端部と、燃料ガス供給連通孔32a及び燃料ガス排出連通孔32bとの間には、略三角形状の入口側バッファ領域52aと出口側バッファ領域52bとが設けられる。
【0026】
入口側バッファ領域52a及び出口側バッファ領域52bには、燃料ガスの流れに抵抗となる複数の円柱状抵抗部材54a、54bが形成される。燃料ガス供給連通孔32a及び燃料ガス排出連通孔32bと入口側バッファ領域52a及び出口側バッファ領域52bとは、連結路56a、56bにより連通する。
【0027】
図2に示すように、第2セパレータ26の面26bには、冷却媒体流路58が形成される。この冷却媒体流路58は、矢印B方向に延在する複数の冷却媒体流路溝58aを有し、冷却媒体供給連通孔30a及び冷却媒体排出連通孔30bに連通する。なお、冷却媒体流路溝58aと冷却媒体供給連通孔30a及び冷却媒体排出連通孔30bとの間には、必要に応じて入口側バッファ領域59a及び出口側バッファ領域59bを設けることができる。
【0028】
第1セパレータ24の面24aと電解質膜・電極構造体22との間、第2セパレータ26と前記電解質膜・電極接合体22との間、及び前記第1セパレータ24の面24bと前記第2セパレータ26の面26bとの間には、図示しないが、必要に応じてシール部材(ガスケット等)が介装される。
【0029】
このように構成される燃料電池スタック10の動作について、以下に説明する。
【0030】
先ず、図1に示すように、酸化剤ガスは、燃料電池スタック10を構成するエンドプレート20aの酸化剤ガス供給連通孔28aに供給される。一方、燃料ガスは、エンドプレート20aの燃料ガス供給連通孔32aに供給される。また、冷却媒体は、エンドプレート20aの冷却媒体供給連通孔30aに供給される。
【0031】
燃料電池スタック10内では、図2に示すように、酸化剤ガスが、酸化剤ガス供給連通孔28aから各発電セル12を構成する第1セパレータ24の連結路48aを通って入口側バッファ領域44aに導入される。入口側バッファ領域44aには、複数の円柱状抵抗部材46aが設けられており、この入口側バッファ領域44aに導入された酸化剤ガスの流れに抵抗となって、前記酸化剤ガスが撹拌される。
【0032】
そして、撹拌された酸化剤ガスは、酸化剤ガス流路42を構成する各酸化剤ガス流路溝42aに均等に分配して供給される。このため、酸化剤ガスは、酸化剤ガス流路溝42aに沿って矢印B方向に移動し、電解質膜・電極構造体22のカソード側電極38に供給される。
【0033】
一方、燃料ガスは、図2及び図4に示すように、燃料ガス供給連通孔32aから各発電セル12を構成する第2セパレータ26の連結路56aを通って入口側バッファ領域52aに導入される。この出口側バッファ領域44bには、複数の円柱状抵抗材46bが形成されており、燃料ガスは、前記円柱状抵抗部材46bにより分岐や合流が行われて、燃料ガスの撹拌が惹起される。
【0034】
従って、燃料ガスは、燃料ガス流路50を構成する各燃料ガス流路溝50aに均一に分配して供給され、前記燃料ガス流路溝50aに沿って矢印B方向に移動しながら、電解質膜・電極構造体22を構成するアノード側電極36に供給される。
【0035】
これにより、各電解質膜・電極構造体22では、カソード側電極38に供給される酸化剤ガスと、アノード側電極36に供給される燃料ガスとが、電極触媒層38b、36b内で電気化学反応により消費され、発電が行われる(図3参照)。
【0036】
次いで、カソード側電極38に供給されて消費された酸化剤ガスは、図2に示すように、出口側バッファ領域44bに導入され、複数の円柱状抵抗部材46bによって撹拌された後、連結路48bから酸化剤ガス排出連通孔28bに排出される。同様に、アノード側電極36に供給されて消費された燃料ガスは、出口側バッファ領域52bに導入され、複数の円柱状抵抗部材54bによって撹拌された後、連結路56bから燃料ガス排出連通孔32bに排出される(図4参照)。
【0037】
この場合、第1の実施形態では、図2に示すように、第1セパレータ24の面24aには、酸化剤ガス流路42と酸化剤ガス供給連通孔28a及び酸化剤ガス排出連通孔28bとの間に、酸化剤ガスの撹拌を行う入口側バッファ領域44a及び出口側バッファ領域44bが設けられている。同様に、第2セパレータ26の面26aには、図4に示すように、燃料ガス流路50と燃料ガス供給連通孔32a及び燃料ガス排出連通孔32bとの間に、燃料ガスの撹拌を行う入口側バッファ領域52a及び出口側バッファ領域52bが設けられている。
【0038】
そして、電解質膜・電極構造体22には、第1及び第2セパレータ24、26に挟持される際、入口側バッファ領域44aと出口側バッファ領域52bとに積層される第1加湿部40aと、出口側バッファ領域44bと入口側バッファ領域52aとに積層される第2加湿部40bとが設けられている。
【0039】
図5に示すように、酸化剤ガスは、入口側バッファ領域44aから酸化剤ガス流路42に沿って矢印B1方向に移動する際、上記の発電反応によって生成される水を含んで加湿された状態で、出口側バッファ領域44bに導出される。この出口側バッファ領域44bでは、加湿された酸化剤ガスが複数の円柱状抵抗部材46bによって撹拌されるため、電解質膜・電極構造体22の第2加湿部40bの外表面に沿う酸化剤ガス流速が速くなるとともに、乱流が発生している。
【0040】
一方、第2セパレータ26では、反応前の燃料ガスは、入口側バッファ領域52aに導入され、複数の円柱状抵抗部材54aを介して撹拌される。従って、反応前の比較的低加湿な燃料ガスは、第2加湿部40bの外表面に沿う反応ガス流速が速くなるとともに、乱流が発生している。
【0041】
これにより、第2加湿部40bの両外表面間では、水蒸気濃度に大きな差が生じており、酸化剤ガス側から燃料ガス側に水分が良好に移動するとともに、水蒸気透過性が大幅に向上する。従って、使用前の燃料ガスは、第2加湿部40bを介して加湿された後、アノード側電極36に供給されるため、電解質膜・電極構造体22の乾燥を確実に阻止することができる。しかも、第2加湿部40bでは、水蒸気透過性の向上により同等の水蒸気透過量に対して必要な加湿部面積を良好に減少させることができ、前記第2加湿部40bの小型化が容易に図られる。
【0042】
さらに、出口側バッファ領域44b及び入口側バッファ領域52aは、ガス流の分布が不均一になるため、生成水の滞留が発生し易く、発電を行うには適さない領域である。このため、出口側バッファ領域44b及び入口側バッファ領域52aを加湿領域として利用することにより、酸化剤ガス流路42及び燃料ガス流路50の発電面積を減少させることがない。これにより、発電セル12の小型化が図られるとともに、燃料電池スタック10全体の小型及び軽量化が良好に遂行されるという利点がある。
【0043】
また、燃料ガスは、燃料ガス流路50に沿って矢印B2方向に移動した後、水分を含んだ状態で出口側バッファ領域52bに導出される。この出口側バッファ領域52bは、第1セパレータ24の入口側バッファ領域44aに第1加湿部40aを介装して重なり合っている。
【0044】
従って、第1加湿部40aの両外表面には、水分を多量に含んだ使用済みの燃料ガスと比較的低加湿の使用前の酸化剤ガスとが接触しており、前記燃料ガス中の水分が前記第2加湿部40bを透過して使用前の酸化剤ガスに供給される。このため、使用前の酸化剤ガスは、良好に加湿されて酸化剤ガス流路42に導入され、電解質膜・電極構造体22の乾燥を防止することが可能になる。
【0045】
さらにまた、入口側バッファ領域44a、52aと出口側バッファ領域44b、52bとには、それぞれ複数の円柱状抵抗部材46a、54a及び46b、54bが設けられている。これにより、酸化剤ガス及び燃料ガスには、方向性のない均質な圧損を自在に付与することができ、各酸化剤ガス流路溝42a及び各燃料ガス流路溝50aの流量をより均一化することが可能になる。
【0046】
また、固体高分子電解質膜34の両面には、電極触媒層36b、38b及びガス拡散層36a、38aを有した発電部と、前記ガス拡散層36a、38aのみが設けられた、すなわち、前記電極触媒層36b、38bを設けない第1及び第2加湿部40a、40bとが一体に構成されている。従って、電解質膜・電極構造体22をシールするためのシール構造が簡略化されるとともに、前記電解質膜・電極構造体22の製造コストが低減される。
【0047】
ところで、純水やエチレングリコール等の冷却媒体は、図2に示すように、第1及び第2セパレータ24、26間の冷却媒体流路58に導入され、複数の冷却媒体流路溝58aに沿って矢印B方向に流動する。この冷却媒体は、電解質膜・電極構造体22を冷却した後、冷却媒体排出連通孔30bに排出されて循環使用される。
【0048】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池スタックを構成する発電セル70の一部拡大断面説明図である。なお、第1の実施形態に係る燃料電池スタック10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細の説明は省略する。また、以下に説明する第3及び第4の実施形態においても同様に、その詳細な説明は省略する。
【0049】
発電セル70は、電解質膜・電極構造体22を挟持する第1及び第2セパレータ74、76を備える。第1及び第2セパレータ74、76は、薄板状の金属プレートで構成され、前記第1及び第2セパレータ74、76には、それぞれ入口側バッファ領域44a、52a及び出口側バッファ領域44b、52bが形成される。
【0050】
具体的には、第1セパレータ74は、中立面78を有するとともに、この中立面78の第1及び第2加湿部40a、40bに対向する部分には、積層方向一方の電解質膜・電極構造体22側に膨出する第1円筒状凸部80aと、積層方向他方の電解質膜・電極構造体22側に膨出する第2円筒状凸部80bとをそれぞれ交互に且つ複数ずつ設けている。
【0051】
第1円筒状凸部80aと、一方の電解質膜・電極構造体22のカソード側電極38側の第1及び第2加湿部40a、40bとの間には、入口側バッファ領域44a及び出口側バッファ領域44bが形成される。入口側バッファ領域44a及び出口側バッファ領域44bは、第1セパレータ74に形成される複数の酸化剤ガス流路溝42aに連通する。
【0052】
第2円筒状凸部80bと、他方の電解質膜・電極構造体22のアノード側電極36側の第1及び第2加湿部40a、40bとの間には、入口側バッファ領域52a及び出口側バッファ領域52bが形成される。入口側バッファ領域52a及び出口側バッファ領域52bは、第1セパレータ74に形成される複数の燃料ガス流路溝50aに連通する。
【0053】
なお、第2セパレータ76は、上記の第1セパレータ74と同様に構成され、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、発電セル70間には、必要に応じて所定の間隔をおいて冷却媒体流路(図示せず)を形成するためのプレートを介装してもよい。
【0054】
このように構成される第2の実施形態では、第1及び第2セパレータ74、76を金属プレートで構成するとともに、プレス加工によって第1及び第2円筒状凸部80a、80bを形成することができる。これにより、第1及び第2セパレータ74、76の構成が一挙に簡素化され、燃料電池スタック全体の製造コストが低減されるという効果が得られる。
【0055】
図7は、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池スタックを構成する発電セル90の第1セパレータ92の一部拡大説明図であり、図8は、前記発電セル90の一部断面説明図である。
【0056】
第1セパレータ92は、カーボンプレートで構成されており、出口側バッファ領域44bには、酸化剤ガスの流れに抵抗となる複数の角錐状抵抗部材94が形成される。角錐状抵抗部材94は、電解質膜・電極構造体22側に向かって幅狭となる傾斜面94aを有し、その最小断面積側である頂面94bが第2加湿部40bに接触している。
【0057】
なお、第1セパレータ92では、図示していないが、入口側バッファ領域においても上記の出口側バッファ領域44bと同様に構成される。さらに、図示しない第2セパレータにおいても、同様に構成される。また、以下に説明する第4の実施形態でも、同様である。
【0058】
この第3の実施形態では、図8に示すように、複数の角錐状抵抗部材94の幅狭となる頂面94bが第2加湿部40bに接触しており、この第2加湿部40bの酸化剤ガスに接触する面積が良好に拡大される。しかも、各角錐状抵抗部材94の傾斜面94aによって酸化剤ガスに撹拌が惹起され易くなる。これにより、第2加湿部40bの表面に沿う酸化剤ガス流速が速くなるとともに、接触表面積が増加し、前記第2加湿部40bにおける水蒸気透過性能が一層向上するという効果が得られる。
【0059】
図9は、本発明の第4の実施形態に係る燃料電池スタックを構成する発電セル100の第1セパレータ102の一部拡大説明図であり、図10は、前記発電セル100の一部断面説明図である。
【0060】
第1セパレータ102を構成する出口側バッファ領域44bには、酸化剤ガスの流れに抵抗となる複数の角柱状抵抗部材104が形成される。角柱状抵抗部材104は、酸化剤ガスの流れ方向に沿う第1傾斜面104aと、この第1傾斜面104aとは反対側の第2傾斜面104bとを有する。第1傾斜面104aは、底面側から第2加湿部40b側に向かって緩やかに傾斜する一方、第2傾斜面104bは、前記第2加湿部40bに接触する頂面104cから急激に底部側に傾斜している。
【0061】
このように構成される第4の実施形態では、出口側バッファ領域44bに導入された酸化剤ガスは、複数の角柱状抵抗部材104によって撹拌されるとともに、第1傾斜面104aの案内作用下に第2加湿部40bの内部に向かって移動する。これにより、酸化剤ガス中の水蒸気は、第2加湿部40b内に一層確実且つ円滑に浸透し、水蒸気透過性能がより一層向上するという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池スタックの斜視説明図である。
【図2】前記燃料電池スタックを構成する発電セルの分解斜視説明図である。
【図3】前記発電セルの一部拡大断面図である。
【図4】前記発電セルを構成する第2セパレータの正面図である。
【図5】前記発電セル内の水蒸気透過状態の説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池スタックを構成する発電セルの一部拡大断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る燃料電池スタックを構成する発電セルの第1セパレータの一部拡大説明図である。
【図8】前記発電セルの一部断面説明図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る燃料電池スタックを構成する発電セルの第1セパレータの一部拡大説明図である。
【図10】前記発電セルの一部断面説明図である。
【図11】特許文献1の燃料電池の説明図である。
【符号の説明】
【0063】
10…燃料電池スタック 12、70、90、100…発電セル
14…積層体 22…電解質膜・電極構造体
24、26、74、76、92、102…セパレータ
28a…酸化剤ガス供給連通孔 28b…酸化剤ガス排出連通孔
30a…冷却媒体供給連通孔 30b…冷却媒体排出連通孔
32a…燃料ガス供給連通孔 32b…燃料ガス排出連通孔
34…固体高分子電解質膜 36…アノード側電極
38…カソード側電極 36a、38a…ガス拡散層
36b、38b…電極触媒層 40a、40b…加湿部
42…酸化剤ガス流路 42a…酸化剤ガス流路溝
44a、44b、52a、52b…バッファ領域
46a、46b、54a、54b、94、104…抵抗部材
50…燃料ガス流路 50a…燃料ガス流路溝
58…冷却媒体流路 80a、80b…凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の両側に一対の電極が配設される電解質膜・電極構造体と、セパレータとが積層されるとともに、積層方向に貫通して反応ガスを流す反応ガス連通孔が形成される燃料電池であって、
前記セパレータは、前記電極の発電領域に対応して前記反応ガスを供給する反応ガス流路と、
前記反応ガス流路と前記反応ガス連通孔との間に設けられ、前記反応ガスの撹拌を行うバッファ領域と、
を備え、
前記電解質膜・電極構造体には、前記バッファ領域に対向し且つ前記バッファ領域から水分を透過するための加湿部が設けられることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池において、前記バッファ領域には、前記反応ガスの流れに抵抗となる抵抗部材が設けられるとともに、
前記抵抗部材には、前記反応ガスを前記電解質膜・電極接合体に案内する傾斜ガイド部が形成されることを特徴とする燃料電池。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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