燃料電池
【課題】構成の簡素化を図るとともに、特にシール成形作業を経済的且つ効率的に遂行可能にする。
【解決手段】燃料電池10は、単位セル12a、12bを交互に積層する。単位セル12aは、第1電解質膜・電極構造体20aを第1金属セパレータ22及び第2金属セパレータ24で挟持する。第1金属セパレータ22は、シール成形作業が不要であり、全面にわたって金属面が露呈するとともに、第2金属セパレータ24にのみ、シール部材74が一体成形される。
【解決手段】燃料電池10は、単位セル12a、12bを交互に積層する。単位セル12aは、第1電解質膜・電極構造体20aを第1金属セパレータ22及び第2金属セパレータ24で挟持する。第1金属セパレータ22は、シール成形作業が不要であり、全面にわたって金属面が露呈するとともに、第2金属セパレータ24にのみ、シール部材74が一体成形される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質の両側に一対の電極を配設した電解質・電極構造体を備え、前記電解質・電極構造体を第1金属セパレータ及び第2金属セパレータで挟持する燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる固体高分子電解質膜を採用している。この燃料電池では、固体高分子電解質膜の両側に、それぞれ電極触媒層と多孔質カーボンからなるアノード側電極及びカソード側電極を配設した電解質膜・電極構造体(電解質・電極構造体)を、セパレータ(バイポーラ板)によって挟持することにより単位セルが構成されている。通常、この単位セルを所定数だけ積層した燃料電池スタックが使用されている。
【0003】
一般的に、燃料電池は、セパレータの積層方向に貫通する入口連通孔及び出口連通孔が設けた、所謂、内部マニホールドを構成している。そして、燃料ガス、酸化剤ガス及び冷却媒体は、それぞれの入口連通孔から燃料ガス流路、酸化剤ガス流路及び冷却媒体流路に供給された後、それぞれの出口連通孔に排出されている。
【0004】
このため、燃料電池内では、燃料ガス、酸化剤ガス及び冷却媒体を個別にシールする必要があり、例えば、特許文献1の燃料電池が知られている。この燃料電池では、図23に示すように、電極構造体1を第1セパレータ2及び第2セパレータ3で挟持して構成されている。
【0005】
第1セパレータ2と第2セパレータ3との間は、外側シール部材4で密封されるとともに、前記第2セパレータ3と電極構造体1の外周との間は、内側シール部材5で密封されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−270202号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の燃料電池では、予め所望の形状を有する外側シール部材4及び内側シール部材5が形成された後、前記外側シール部材4及び前記内側シール部材5が、例えば、第2セパレータ3に支持されている。このため、燃料電池の製造工程が複雑化するとともに、組立作業が繁雑になるおそれがある。
【0008】
本発明はこの種のシール構造に関連してなされたものであり、構成の簡素化を図るとともに、特にシール成形作業が経済的且つ効率的に遂行可能な燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電解質の両側に一対の電極を配設した電解質・電極構造体を備え、前記電解質・電極構造体を第1金属セパレータ及び第2金属セパレータで挟持する燃料電池に関するものである。そして、第2金属セパレータは、第1金属セパレータより大きな外形寸法を有するとともに、前記第1金属セパレータは、全面にわたって金属面が露呈し、且つ、前記第2金属セパレータにのみシール部材が一体成形されている。
【0010】
そして、シール部材は、第2金属セパレータの電極に向かう一方の面に設けられ、電解質・電極構造体の周縁部に当接する内側シール部と、隣り合う第2金属セパレータの周縁部に当接する外側シール部とを有している。
【0011】
また、シール部材は、第2金属セパレータの電極に向かう面とは反対の他方の面に設けられ、隣接する第1金属セパレータに当接し且つ内側シール部と積層方向に重なり合うシール部を有することが好ましい。
【0012】
さらにまた、一対の電極は、第1電極と該第1電極よりも小さな表面積を有する第2電極とにより構成され、第1金属セパレータは、前記第1電極に向かって配置され、第2金属セパレータは、前記第1金属セパレータよりも大きな外形寸法を有し、前記第2電極に向かって配置されるとともに、シール部材は、前記第2金属セパレータの一方の面に設けられ、電解質・電極構造体の周縁部で電解質に当接する第1シール部と、前記第1金属セパレータの周縁部に当接する第2シール部と、隣り合う第2金属セパレータの周縁部に当接する第3シール部とを有することが好ましい。
【0013】
また、第1シール部は、燃料ガスシール用内側シール部を構成し、第2シール部は、酸化剤ガスシール用中間シール部を構成し、第3シール部は、冷却媒体シール用外側シール部を構成することが好ましい。
【0014】
さらに、一対の電極は、第1電極と該第1電極よりも小さな表面積を有する第2電極とにより構成され、第1金属セパレータは、前記第2電極に向かって配置され、第2金属セパレータは、前記第1金属セパレータよりも大きな外形寸法を有し、前記第1電極に向かって配置されるとともに、シール部材は、前記第2金属セパレータの一方の面に設けられ、隣接する前記第1金属セパレータの周縁部に当接する第1シール部と、前記第1金属セパレータを挟んで積層される電解質・電極構造体の周縁部で電解質に当接する第2シール部と、隣り合う第2金属セパレータの周縁部に当接する第3シール部とを有することが好ましい。
【0015】
さらにまた、第1シール部は、冷却媒体シール用内側シール部を構成し、第2シール部は、燃料ガスシール用中間シール部を構成し、第3シール部は、酸化剤ガスシール用外側シール部を構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、シール部材が第2金属セパレータに一体成形されるため、シール構造が一挙に簡素化し、予め所望の形状を有するシール部材を形成する構成に比べて、燃料電池の組立作業性が良好に向上する。組立時に、シール部材と第2金属セパレータとを相対的に位置決めする作業が不要になるからである。
【0017】
しかも、第1金属セパレータには、シール部材の成形作業が不要になり、第2金属セパレータにのみシール部材の成形作業を行えばよい。このため、シール成形作業が経済的且つ効率的に遂行されるとともに、燃料電池全体の製造コストの削減が容易に図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池10の概略斜視説明図であり、図2は、前記燃料電池10の断面説明図である。
【0019】
燃料電池10は、単位セル12a、12bを交互に矢印A方向(水平方向)に積層する積層体14を備えるとともに、前記積層体14の積層方向両端には、エンドプレート16a、16bが配設される。なお、エンドプレート16a、16b間は、図示しないタイロッドにより締め付けられているが、例えば、積層体14全体をケーシング(図示せず)内に収容して構成してもよい。
【0020】
単位セル12aは、第1電解質膜・電極構造体(電解質・電極構造体)20aを第1金属セパレータ22及び第2金属セパレータ24で挟持するとともに、単位セル12bは、第2電解質膜・電極構造体20bを第3金属セパレータ26及び第4金属セパレータ28で挟持する。単位セル12bは、単位セル12aを面方向に180°回転させることにより構成されている。実際上、第2電解質膜・電極構造体20bは、第1電解質膜・電極構造体20aと同一であり、第3金属セパレータ26は、第1金属セパレータ22と同一であり、第4金属セパレータ28は、第2金属セパレータ24と同一である。
【0021】
図3に示すように、第1電解質膜・電極構造体20aは、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜(電解質)30aと、該固体高分子電解質膜30aを挟持するカソード側電極(第1電極)32a及びアノード側電極(第2電極)34aとを備える。カソード側電極32aは、アノード側電極34aよりも大きな表面積に設定されるとともに、前記カソード側電極32aは、固体高分子電解質膜30aの全面を覆って設けられる(所謂、段差MEA)。
【0022】
カソード側電極32a及びアノード側電極34aは、カーボンペーパ等からなるガス拡散層(図示せず)と、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子を前記ガス拡散層の表面に一様に塗布して形成された電極触媒層(図示せず)とを有し、触媒塗布範囲36aが設けられる。第1電解質膜・電極構造体20aは、全体として略四角形状に構成されるとともに、所定の凹凸形状を有する外形形状部38aを有する。
【0023】
第1金属セパレータ22は、第2金属セパレータ24よりも小さな外形寸法に設定される。図3及び図4に示すように、第1金属セパレータ22の第1電解質膜・電極構造体20aに向かう面22aには、前記第1電解質膜・電極構造体20aの触媒塗布範囲36aに対応して第1酸化剤ガス流路40が形成される。この第1酸化剤ガス流路40は、面22a側に突出する凸部40aと凹部40bとを設けることにより、矢印B方向に直線状に延在して形成されるとともに、前記第1酸化剤ガス流路40の両側には、エンボス部40cが形成される。
【0024】
第1酸化剤ガス流路40の矢印B方向一端側には、波状に成形された入口部41aが設けられるとともに、矢印B方向他端側には、同様に波状に成形された出口部41bが設けられる。図4に示すように、入口部41a及び出口部41bは、第1電解質膜・電極構造体20aの外形形状部38aの外方に突出している。
【0025】
第1金属セパレータ22は、所望の凹凸形状を有する外形形状部42を有するとともに、この外形形状部42は、第1電解質膜・電極構造体20aの外形形状部38aよりも大きな寸法に設定される。第1金属セパレータ22の面22b側には、第1酸化剤ガス流路40を形成することにより、凹凸形状を反転させた第1冷却媒体流路44が形成される。
【0026】
図3に示すように、第2金属セパレータ24は、横長な長方形状を有している。この第2金属セパレータ24及び第4金属セパレータ28の矢印B方向の一端縁部には、積層方向である矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給するための酸化剤ガス入口連通孔46a、冷却媒体を供給するための冷却媒体入口連通孔48a、及び燃料ガス、例えば、水素含有ガスを排出するための燃料ガス出口連通孔50bが、矢印C方向(鉛直方向)に配列して設けられる。
【0027】
第2金属セパレータ24及び第4金属セパレータ28の矢印B方向の他端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを供給するための燃料ガス入口連通孔50a、冷却媒体を排出するための冷却媒体出口連通孔48b、及び酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス出口連通孔46bが、矢印C方向に配列して設けられる。
【0028】
図5に示すように、第2金属セパレータ24の第1電解質膜・電極構造体20aに向かう面24aには、触媒塗布範囲36aに対応して第1燃料ガス流路52が形成される。第1燃料ガス流路52は、面24a側に突出する凸部52a及び凹部52bが交互に設けられることによって、矢印B方向に延在して形成される。この第1燃料ガス流路52の両側には、エンボス部52cが形成される。
【0029】
図6に示すように、第2金属セパレータ24の面24bには、面24a側に第1燃料ガス流路52を形成することによって、第2冷却媒体流路54が形成される。第2冷却媒体流路54の矢印B方向一端側には、波状に成形された入口部56aが設けられるとともに、矢印B方向他端側には、同様に波状に成形された出口部56bが設けられる。
【0030】
入口部56a及び出口部56bは、第2金属セパレータ24に第3金属セパレータ26が重ね合わされた際に、この第3金属セパレータ26の切り欠き形状部に対応している。冷却媒体入口連通孔48aは、入口部56aを介して第2冷却媒体流路54に連通する一方、冷却媒体出口連通孔48bは、出口部56bを介して第2冷却媒体流路54に連通する。
【0031】
第2金属セパレータ24には、燃料ガス入口連通孔50aに近接して2つの燃料ガス用入口孔部58aが設けられるとともに、燃料ガス出口連通孔50bに近接して2つの燃料ガス用出口孔部58bが設けられる。酸化剤ガス入口連通孔46a近傍には、3つの酸化剤ガス用入口孔部60aが形成される一方、酸化剤ガス出口連通孔46bの近傍には、3つの酸化剤ガス用出口孔部60bが形成される。
【0032】
図2及び図5に示すように、第2金属セパレータ24の面24aには、シール部材62が一体成形される。このシール部材62は、第1燃料ガス流路52を周回し、順次、外方に向かって一体成形される第1シール部(内側シール部)62a、第2シール部62b及び第3シール部(外側シール部)62cを有する。シール部材62は、例えば、EPDM(エチレン−プロピレンゴム)、シリコーンゴム、ニトリルゴム又はアクリルゴムで構成され、例えば、シリコーン樹脂を所定温度(例えば、160℃〜170℃)に加熱した溶融樹脂を用いて射出成形される。
【0033】
第1シール部62aは、第1電解質膜・電極構造体20aの周縁部、すなわち、固体高分子電解質膜30aの周縁部に接触し、第2シール部62bは、第1金属セパレータ22の周縁部に接触し、第3シール部62cは、隣り合う単位セル12bを構成する第2金属セパレータに相当する第4金属セパレータ28に接触する。
【0034】
第1シール部62aは、燃料ガスの漏れを防止するための内側シール部材を構成し、第2シール部62bは、酸化剤ガスの漏れを防止するための中間シール部材を構成し、第3シール部62cは、冷却媒体の漏れを阻止するための外側シール部材を構成している。
【0035】
第2電解質膜・電極構造体20bは、上記の第1電解質膜・電極構造体20aと同様に構成されており、同一の構成要素には同一の参照数字に符号bを付して、その詳細な説明は省略する。
【0036】
第3金属セパレータ26は、第2電解質膜・電極構造体20b側の面26aに、第2酸化剤ガス流路64が形成される。第2酸化剤ガス流路64の矢印B方向一端側には、波状に成形された入口部63aが設けられるとともに、矢印B方向他端側には、同様に波状に成形された出口部63bが設けられる。入口部63a及び出口部63bは、第2電解質膜・電極構造体20bの外形形状の外方に突出している。第3金属セパレータ26の面26bは、第2金属セパレータ24の面24bに重なり合うことにより、第2冷却媒体流路54を一体的に形成する第3金属セパレータ26が所定の凹凸形状を有する外形形状部65を設ける。
【0037】
図7に示すように、第4金属セパレータ28の第2電解質膜・電極構造体20bに向かう面28aには、第2燃料ガス流路66が形成される。第2燃料ガス流路66は、凸部66aと凹部66bとによって矢印B方向に延在して形成されるとともに、両端側にはエンボス部66cが形成される。
【0038】
図8に示すように、第4金属セパレータ28の面28bには、面28aに第2燃料ガス流路66を形成することによって、第1冷却媒体流路44が形成される。この第1冷却媒体流路44は、第4金属セパレータ28と第1金属セパレータ22とが重なり合うことによって一体的に形成される。第1冷却媒体流路44の矢印B方向両端には、それぞれ外方に延在して波形状の入口部68aと出口部68bとが設けられる。
【0039】
入口部68aと出口部68bとは、第1金属セパレータ22の切り欠き形状部を介して第1冷却媒体流路44を冷却媒体入口連通孔48a及び冷却媒体出口連通孔48bに連通する。
【0040】
第4金属セパレータ28には、第2金属セパレータ24に設けられている入口孔部58a及び出口孔部58bに対して積層方向の位置をずらして2つの入口孔部70a及び2つの出口孔部70bが形成される。第4金属セパレータ28には、第2金属セパレータ24の3つの入口孔部60a及び3つの出口孔部60bに対して積層方向の位置をずらして3つの入口孔部72a及び3つの出口孔部72bが形成される。
【0041】
図7に示すように、面28aには、シール部材74が一体成形される。このシール部材74は、第2燃料ガス流路66を周回し、順次、外方に沿って設けられる第1シール部(内側シール部)74a、第2シール部74b及び第3シール部(外側シール部)74cを有する。燃料ガスシール用の内側シール部材である第1シール部74aは、第2電解質膜・電極構造体20bを構成する固体高分子電解質膜30bの周端部に接触し、酸化剤ガスシール用の中間シール部材である第2シール部74bは、第3金属セパレータ26の周端部に接触し、冷却媒体シール用の外側シール部材である第3シール部74cは、単位セル12aを構成する第2金属セパレータ24の周縁部に接触する。
【0042】
図9及び図10に示すように、第2金属セパレータ24及び第4金属セパレータ28には、第3シール部62c、74cによって酸化剤ガス入口連通孔46aを第1酸化剤ガス流路40及び第2酸化剤ガス流路64に連通する通路部76が形成される。この通路部76は、酸化剤ガス用の入口孔部(貫通孔)60a、72aを有する。同様に、図11及び図12に示すように、第2金属セパレータ24及び第4金属セパレータ28には、第3シール部62c、74cによって燃料ガス入口連通孔50aを第1燃料ガス流路52及び第2燃料ガス流路66に連通する通路部78が形成される。この通路部78は、燃料ガス用の入口孔部(貫通孔)58a、70aを有する。
【0043】
このように構成される燃料電池10の動作について、以下に説明する。
【0044】
図1に示すように、エンドプレート16aの酸化剤ガス入口連通孔46aには、酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給されるとともに、燃料ガス入口連通孔50aには、水素含有ガス等の燃料ガスが供給される。さらに、冷却媒体入口連通孔48aには、純水やエチレングリコール等の冷却媒体が供給される。
【0045】
ここで、単位セル12aを構成する第2金属セパレータ24には、図6に示すように、酸化剤ガス入口連通孔46aに面24b側から連通する3つの入口孔部60aが形成される。一方、単位セル12bを構成する第4金属セパレータ28には、図8に示すように、酸化剤ガス入口連通孔46aに面28b側から連通する3つの入口孔部72aが形成されている。
【0046】
このため、図9に示すように、酸化剤ガス入口連通孔46aに供給された酸化剤ガスの一部は、第2金属セパレータ24の入口孔部60aを通って面24a側に導入され、第1金属セパレータ22に設けられている入口部41aから第1酸化剤ガス流路40に供給される。
【0047】
一方、図10に示すように、単位セル12bでは、酸化剤ガス入口連通孔46aに供給された酸化剤ガスの一部が、第4金属セパレータ28に設けられている入口孔部72aから面28a側に導入され、第3金属セパレータ26の入口部63aから第2酸化剤ガス流路64に供給される。
【0048】
また、第2金属セパレータ24には、図6に示すように、面24b側で燃料ガス入口連通孔50aに連通する2つの入口孔部58aが形成されている。第4金属セパレータ28には、図8に示すように、面28b側で燃料ガス入口連通孔50aに連通する2つの入口孔部70aが形成されている。
【0049】
従って、図11に示すように、燃料ガス入口連通孔50aに供給された燃料ガスの一部は、第2金属セパレータ24の入口孔部58aを通って面24a側に導入され、この面24aに形成された第1燃料ガス流路52に供給される。
【0050】
さらに、図12に示すように、燃料ガス入口連通孔50aに供給された燃料ガスの一部は、第4金属セパレータ28の入口孔部70aから面28a側に導入され、この面28aに形成された第2燃料ガス流路66に供給される。
【0051】
これにより、図3に示すように、第1電解質膜・電極構造体20aでは、カソード側電極32aに供給される酸化剤ガスと、アノード側電極34aに供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費され、発電が行われる。同様に、第2電解質膜・電極構造体20bでは、カソード側電極32bに供給される酸化剤ガスと、アノード側電極34bに供給される燃料ガスとにより発電が行われる。
【0052】
単位セル12aの第1酸化剤ガス流路40を流れた酸化剤ガスは、出口部41bから第2金属セパレータ24に設けられた出口孔部60bを通って面24b側に移動し、酸化剤ガス出口連通孔46bに排出される。同様に、単位セル12bの第2酸化剤ガス流路64を流れた酸化剤ガスは、出口部63bから第4金属セパレータ28に設けられた出口孔部72bを通って酸化剤ガス出口連通孔46bに排出される。
【0053】
また、第2金属セパレータ24の第1燃料ガス流路52を流れた燃料ガスは、出口孔部58bを通って面24b側に移動した後、燃料ガス出口連通孔50bに排出される。同様に、第4金属セパレータ28の第2燃料ガス流路66を流れた燃料ガスは、出口孔部70bから面28b側に移動した後、燃料ガス出口連通孔50bに排出される。
【0054】
さらにまた、図8に示すように、第4金属セパレータ28の面28bには、第1冷却媒体流路44に連通する入口部68a及び出口部68bが設けられるとともに、前記入口部68a及び前記出口部68bは、第1金属セパレータ22の切り欠き形状部に対応している。
【0055】
このため、冷却媒体入口連通孔48aに供給された冷却媒体は、図13に示すように、第4金属セパレータ28の面28b側から入口部68aを通って前記第4金属セパレータ28と第1金属セパレータ22との間に形成された第1冷却媒体流路44に導入される。この第1冷却媒体流路44を通って冷却処理を施した冷却媒体は、出口部68bを通って面28b側から冷却媒体出口連通孔48bに排出される(図3参照)。
【0056】
一方、図6に示すように、第2金属セパレータ24の面24bには、第2冷却媒体流路54に連通するとともに、第3金属セパレータ26の切り欠き形状部に対応して入口部56a及び出口部56bが形成されている。
【0057】
従って、冷却媒体入口連通孔48aに供給された冷却媒体は、図14に示すように、面24b側から入口部56aを通って第2金属セパレータ24と第3金属セパレータ26との間に形成された第2冷却媒体流路54に供給される。この第2冷却媒体流路54を流れた冷却媒体は、出口部56bから面24b側に流動し、冷却媒体出口連通孔48bに排出される(図3参照)。
【0058】
この場合、第1の実施形態では、第2金属セパレータ24にシール部材62が一体成形されている。このため、例えば、所望の形状を有するシール部材62を予め形成した後、このシール部材62を第2金属セパレータ24に接合させる構成のように、前記シール部材62と前記第2金属セパレータ24とを相対的に位置決めする作業が不要になる。これにより、シール構造が一挙に簡素化するとともに、燃料電池10の組立作業性が良好に向上するという効果が得られる。
【0059】
しかも、図2及び図5に示すように、第2金属セパレータ24の面24aには、第1電解質膜・電極構造体20aを構成する固体高分子電解質膜30aの周縁部に当接する第1シール部62aと、第2金属セパレータ24の周縁部に当接する第2シール部62bと、隣り合う単位セル12bを構成する第4金属セパレータ28(実質的に第2金属セパレータ24と同等)に当接する第3シール部62cとが一体に成形されている。
【0060】
従って、第2金属セパレータ24では、面24a側にのみシール成形処理を施せばよく、面24b側にもシール成形処理を施す場合に比べて、シール成形工程が一挙に簡単且つ経済的に遂行可能になる。
【0061】
さらに、第1金属セパレータ22には、シール成形作業が不要になる。このため、第2金属セパレータ24にのみシール部材74の成形作業を行えばよく、シール成形作業が経済的且つ効率的に遂行されるとともに、燃料電池10全体の製造コストの削減が容易に図られる。
【0062】
さらにまた、第1燃料ガス流路52と入口孔部58a及び出口孔部58bとは、第1シール部62a、第2シール部62b及び第3シール部62cの三重シール構造によりシールされている。これにより、燃料ガスのシール性が良好に向上し、この燃料ガスの漏れを可及的に阻止することができるという利点がある。なお、単位セル12bでも上記の単位セル12aと同様の効果が得られる。
【0063】
また、第2金属セパレータ24に設けられている第1シール部62a、第2シール部62b及び第3シール部62cは、R形状の先端が平面部である固体高分子電解質膜30aの周縁部、第1金属セパレータ22の面22a及び第4金属セパレータ28の面28bに接触している。このため、シール部位における線圧の低下やリーク発生及びセパレータ変形が惹起することを確実に阻止することができる。
【0064】
図15は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池80の一部断面説明図である。なお、第1の実施形態に係る燃料電池10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3〜第5の実施形態においても同様に、その詳細な説明は省略する。
【0065】
燃料電池80は、単位セル82a、82bを交互に矢印A方向に積層する。単位セル82aは、第1電解質膜・電極構造体20aを第1金属セパレータ83及び第2金属セパレータ84で挟持する一方、単位セル82bは、第2電解質膜・電極構造体20bを第3金属セパレータ86及び第4金属セパレータ88で挟持する。
【0066】
第1金属セパレータ83は、第2金属セパレータ84よりも小さな外形寸法に設定されるとともに、前記第2金属セパレータ84には、シール部材90が一体成形される。このシール部材90は、外方に向かって、順次、形成される冷却媒体シール用の内側シール部90aと、燃料ガスシール用の中間シール部90bと、酸化剤ガスシール用の外側シール部90cとを有する。
【0067】
第3金属セパレータ86は、第4金属セパレータ88よりも小さな外形寸法に設定されるとともに、前記第4金属セパレータ88には、シール部材92が一体成形される。このシール部材92は、外方に向かって、順次、形成される冷却媒体シール用の内側シール部92aと、燃料ガスシール用の中間シール部92bと、酸化剤ガスシール用の外側シール部92cとを有する。
【0068】
この第4金属セパレータ88は、実質的に第2金属セパレータ84を180°反転させて使用する一方、第3金属セパレータ86は、実質的に第1金属セパレータ83を180°反転させて使用している。
【0069】
内側シール部90a、92aは、それぞれ第3金属セパレータ86及び第1金属セパレータ83の周縁部に当接し、中間シール部90b、92bは、それぞれ第2電解質膜・電極構造体20bの固体高分子電解質膜30bの周縁部、及び第1電解質膜・電極構造体20aの固体高分子電解質膜30aの周縁部に当接し、外側シール部90c、92cは、互いに隣接する第4金属セパレータ88及び第2金属セパレータ84の周縁部に当接する。
【0070】
このように構成される第2の実施形態では、第1金属セパレータ83及び第3金属セパレータ86にシール部材の成形作業が不要になり、シール成形工程が一挙に簡単且つ経済的に遂行可能になるとともに、燃料電池80全体の製造コストの削減が容易に図られる等、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0071】
図16は、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池100の断面説明図である。
【0072】
燃料電池100は、複数の単位セル102を矢印A方向に積層するとともに、前記単位セル102は、電解質膜・電極構造体(電解質・電極接合体)104を第1金属セパレータ106及び第2金属セパレータ108で挟持する(図16及び図17参照)。電解質膜・電極構造体104は、固体高分子電解質膜30とカソード側電極32及びアノード側電極34とを備える。固体高分子電解質膜30、カソード側電極32及びアノード側電極34は、同一の外形寸法(表面積)に設定される。
【0073】
第1金属セパレータ106は、第2金属セパレータ108よりも小さな外形寸法に設定されており、この第1金属セパレータ106は、実質的に第1の実施形態の第1金属セパレータ22と同様に構成される。
【0074】
第2金属セパレータ108は、シール部材110を一体成形する。このシール部材110は、図16及び図18に示すように、面24aに第1燃料ガス流路52を周回して形成される内側シール部110a及び外側シール部110bを有する。
【0075】
内側シール部110aは、電解質膜・電極構造体104の周縁部に接触し、外側シール部110bは、隣り合う単位セル102を構成する第2金属セパレータ108に接触する(図16参照)。
【0076】
このように構成される第3の実施形態では、第1の実施形態の、所謂、段差MEAを構成する第1電解質膜・電極構造体20a及び第2電解質膜・電極構造体20bに代えて、所謂、全面電極型の電解質膜・電極構造体104を用いており、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0077】
図19は、本発明の第4の実施形態に係る燃料電池120の断面説明図である。
【0078】
燃料電池120は、複数の単位セル122を矢印A方向に積層するとともに、前記単位セル122は、電解質膜・電極構造体104と第1金属セパレータ106及び第2金属セパレータ126とを備える。第1金属セパレータ106は、第2金属セパレータ126よりも小さな外形寸法に設定される。
【0079】
図20に示すように、第2金属セパレータ126には、酸化剤ガス入口連通孔46a、冷却媒体入口連通孔48a、燃料ガス出口連通孔50b、燃料ガス入口連通孔50a、冷却媒体出口連通孔48b及び酸化剤ガス出口連通孔46bが、矢印A方向に貫通して設けられる。
【0080】
図21に示すように、第2金属セパレータ126の面24aには、燃料ガス流路52を周回して第1シール部材138が一体成形される。第1シール部材138は、内側シール部138a及び外側シール部138bを有し、前記内側シール部138aは、電解質膜・電極構造体104の周縁部に当接する。外側シール部138bは、隣り合う単位セル122を構成する第2金属セパレータ126に設けられた第2シール部材146(後述する)に接触する(図19参照)。
【0081】
図19及び図20に示すように、第2金属セパレータ126の面24bには、冷却媒体流路54を周回して第2シール部材146が一体成形される。第2シール部材146は、シール部146aを有し、前記シール部146aは、内側シール部138aと共に電解質膜・電極構造体104及び第1金属セパレータ106の周縁部を挟持する。
【0082】
このように構成される燃料電池120では、上記の第1乃至第3の実施形態と同様の効果が得られる。
【0083】
図22は、本発明の第5の実施形態に係る燃料電池150の断面説明図である。
【0084】
燃料電池150は、第4の実施形態に係る燃料電池120に対して冷却媒体流路54を複数、例えば、2つの電解質膜・電極構造体104毎に形成する、所謂、間引き冷却構造を採用する。
【0085】
この燃料電池150は、第1金属セパレータ106、電解質膜・電極構造体104、第2金属セパレータ152、電解質膜・電極構造体104、第2金属セパレータ126、第1金属セパレータ106、電解質膜・電極構造体104、第2金属セパレータ152、電解質膜・電極構造体104及び第2金属セパレータ126を矢印A方向に積層して構成される。
【0086】
第2金属セパレータ152は、一方の面側に、すなわち、電解質膜・電極構造体104を挟んで第1金属セパレータ106に対向する面側に、燃料ガス流路52が形成される一方、他の電解質膜・電極構造体104を挟んで第2金属セパレータ126に対向する面側に、酸化剤ガス流路40が形成される。
【0087】
これにより、第5の実施形態では、冷却媒体流路54が有効に削減(半減)される。このため、燃料電池150全体として、積層方向の寸法が一挙に短尺化されるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池の概略斜視説明図である。
【図2】前記燃料電池の断面説明図である。
【図3】前記燃料電池を構成する単位セルの分解斜視説明図である。
【図4】第1金属セパレータの一方の面の説明図である。
【図5】第2金属セパレータの一方の面の説明図である。
【図6】前記第2金属セパレータの他方の面の説明図である。
【図7】第4金属セパレータの一方の面の説明図である。
【図8】前記第4金属セパレータの他方の面の説明図である。
【図9】前記燃料電池内での酸化剤ガスの流れ説明図である。
【図10】前記燃料電池内での前記酸化剤ガスの別の流れ説明図である。
【図11】前記燃料電池内での燃料ガスの流れ説明図である。
【図12】前記燃料電池内での前記燃料ガスの別の流れ説明図である。
【図13】前記燃料電池内での冷却媒体の流れ説明図である。
【図14】前記燃料電池内での前記冷却媒体の別の流れ説明図である。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池の一部断面説明図である。
【図16】本発明の第3の実施形態に係る燃料電池の断面説明図である。
【図17】前記燃料電池の分解斜視説明図である。
【図18】前記燃料電池を構成する第2金属セパレータの一方の面の説明図である。
【図19】本発明の第4の実施形態に係る燃料電池の断面説明図である。
【図20】前記燃料電池の分解斜視説明図である。
【図21】前記燃料電池を構成する第2金属セパレータの一方の面の説明図である。
【図22】本発明の第5の実施形態に係る燃料電池の断面説明図である。
【図23】特許文献1の燃料電池の説明図である。
【符号の説明】
【0089】
10、80、100、120、150…燃料電池
12a、12b、82a、82b、102、122…単位セル
14…積層体
20a、20b、104…電解質膜・電極構造体
22、24、26、28、83、84、86、88、106、108、126、152…金属セパレータ
30、30a、30b…固体高分子電解質膜
32、32a、32b…カソード側電極 34、34a、34b…アノード側電極
40、64…酸化剤ガス流路 44、54…冷却媒体流路
46a…酸化剤ガス入口連通孔 46b…酸化剤ガス出口連通孔
48a…冷却媒体入口連通孔 48b…冷却媒体出口連通孔
50a…燃料ガス入口連通孔 50b…燃料ガス出口連通孔
52、66…燃料ガス流路
58a、60a、70a、72a…入口孔部
58b、60b、70b、72b…出口孔部
62、74、90、92、110、138、146…シール部材
62a〜62c、74a〜74c、90a〜90c、92a〜92c、110a、110b、138a、138b、146a…シール部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質の両側に一対の電極を配設した電解質・電極構造体を備え、前記電解質・電極構造体を第1金属セパレータ及び第2金属セパレータで挟持する燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる固体高分子電解質膜を採用している。この燃料電池では、固体高分子電解質膜の両側に、それぞれ電極触媒層と多孔質カーボンからなるアノード側電極及びカソード側電極を配設した電解質膜・電極構造体(電解質・電極構造体)を、セパレータ(バイポーラ板)によって挟持することにより単位セルが構成されている。通常、この単位セルを所定数だけ積層した燃料電池スタックが使用されている。
【0003】
一般的に、燃料電池は、セパレータの積層方向に貫通する入口連通孔及び出口連通孔が設けた、所謂、内部マニホールドを構成している。そして、燃料ガス、酸化剤ガス及び冷却媒体は、それぞれの入口連通孔から燃料ガス流路、酸化剤ガス流路及び冷却媒体流路に供給された後、それぞれの出口連通孔に排出されている。
【0004】
このため、燃料電池内では、燃料ガス、酸化剤ガス及び冷却媒体を個別にシールする必要があり、例えば、特許文献1の燃料電池が知られている。この燃料電池では、図23に示すように、電極構造体1を第1セパレータ2及び第2セパレータ3で挟持して構成されている。
【0005】
第1セパレータ2と第2セパレータ3との間は、外側シール部材4で密封されるとともに、前記第2セパレータ3と電極構造体1の外周との間は、内側シール部材5で密封されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−270202号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の燃料電池では、予め所望の形状を有する外側シール部材4及び内側シール部材5が形成された後、前記外側シール部材4及び前記内側シール部材5が、例えば、第2セパレータ3に支持されている。このため、燃料電池の製造工程が複雑化するとともに、組立作業が繁雑になるおそれがある。
【0008】
本発明はこの種のシール構造に関連してなされたものであり、構成の簡素化を図るとともに、特にシール成形作業が経済的且つ効率的に遂行可能な燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電解質の両側に一対の電極を配設した電解質・電極構造体を備え、前記電解質・電極構造体を第1金属セパレータ及び第2金属セパレータで挟持する燃料電池に関するものである。そして、第2金属セパレータは、第1金属セパレータより大きな外形寸法を有するとともに、前記第1金属セパレータは、全面にわたって金属面が露呈し、且つ、前記第2金属セパレータにのみシール部材が一体成形されている。
【0010】
そして、シール部材は、第2金属セパレータの電極に向かう一方の面に設けられ、電解質・電極構造体の周縁部に当接する内側シール部と、隣り合う第2金属セパレータの周縁部に当接する外側シール部とを有している。
【0011】
また、シール部材は、第2金属セパレータの電極に向かう面とは反対の他方の面に設けられ、隣接する第1金属セパレータに当接し且つ内側シール部と積層方向に重なり合うシール部を有することが好ましい。
【0012】
さらにまた、一対の電極は、第1電極と該第1電極よりも小さな表面積を有する第2電極とにより構成され、第1金属セパレータは、前記第1電極に向かって配置され、第2金属セパレータは、前記第1金属セパレータよりも大きな外形寸法を有し、前記第2電極に向かって配置されるとともに、シール部材は、前記第2金属セパレータの一方の面に設けられ、電解質・電極構造体の周縁部で電解質に当接する第1シール部と、前記第1金属セパレータの周縁部に当接する第2シール部と、隣り合う第2金属セパレータの周縁部に当接する第3シール部とを有することが好ましい。
【0013】
また、第1シール部は、燃料ガスシール用内側シール部を構成し、第2シール部は、酸化剤ガスシール用中間シール部を構成し、第3シール部は、冷却媒体シール用外側シール部を構成することが好ましい。
【0014】
さらに、一対の電極は、第1電極と該第1電極よりも小さな表面積を有する第2電極とにより構成され、第1金属セパレータは、前記第2電極に向かって配置され、第2金属セパレータは、前記第1金属セパレータよりも大きな外形寸法を有し、前記第1電極に向かって配置されるとともに、シール部材は、前記第2金属セパレータの一方の面に設けられ、隣接する前記第1金属セパレータの周縁部に当接する第1シール部と、前記第1金属セパレータを挟んで積層される電解質・電極構造体の周縁部で電解質に当接する第2シール部と、隣り合う第2金属セパレータの周縁部に当接する第3シール部とを有することが好ましい。
【0015】
さらにまた、第1シール部は、冷却媒体シール用内側シール部を構成し、第2シール部は、燃料ガスシール用中間シール部を構成し、第3シール部は、酸化剤ガスシール用外側シール部を構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、シール部材が第2金属セパレータに一体成形されるため、シール構造が一挙に簡素化し、予め所望の形状を有するシール部材を形成する構成に比べて、燃料電池の組立作業性が良好に向上する。組立時に、シール部材と第2金属セパレータとを相対的に位置決めする作業が不要になるからである。
【0017】
しかも、第1金属セパレータには、シール部材の成形作業が不要になり、第2金属セパレータにのみシール部材の成形作業を行えばよい。このため、シール成形作業が経済的且つ効率的に遂行されるとともに、燃料電池全体の製造コストの削減が容易に図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池10の概略斜視説明図であり、図2は、前記燃料電池10の断面説明図である。
【0019】
燃料電池10は、単位セル12a、12bを交互に矢印A方向(水平方向)に積層する積層体14を備えるとともに、前記積層体14の積層方向両端には、エンドプレート16a、16bが配設される。なお、エンドプレート16a、16b間は、図示しないタイロッドにより締め付けられているが、例えば、積層体14全体をケーシング(図示せず)内に収容して構成してもよい。
【0020】
単位セル12aは、第1電解質膜・電極構造体(電解質・電極構造体)20aを第1金属セパレータ22及び第2金属セパレータ24で挟持するとともに、単位セル12bは、第2電解質膜・電極構造体20bを第3金属セパレータ26及び第4金属セパレータ28で挟持する。単位セル12bは、単位セル12aを面方向に180°回転させることにより構成されている。実際上、第2電解質膜・電極構造体20bは、第1電解質膜・電極構造体20aと同一であり、第3金属セパレータ26は、第1金属セパレータ22と同一であり、第4金属セパレータ28は、第2金属セパレータ24と同一である。
【0021】
図3に示すように、第1電解質膜・電極構造体20aは、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜(電解質)30aと、該固体高分子電解質膜30aを挟持するカソード側電極(第1電極)32a及びアノード側電極(第2電極)34aとを備える。カソード側電極32aは、アノード側電極34aよりも大きな表面積に設定されるとともに、前記カソード側電極32aは、固体高分子電解質膜30aの全面を覆って設けられる(所謂、段差MEA)。
【0022】
カソード側電極32a及びアノード側電極34aは、カーボンペーパ等からなるガス拡散層(図示せず)と、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子を前記ガス拡散層の表面に一様に塗布して形成された電極触媒層(図示せず)とを有し、触媒塗布範囲36aが設けられる。第1電解質膜・電極構造体20aは、全体として略四角形状に構成されるとともに、所定の凹凸形状を有する外形形状部38aを有する。
【0023】
第1金属セパレータ22は、第2金属セパレータ24よりも小さな外形寸法に設定される。図3及び図4に示すように、第1金属セパレータ22の第1電解質膜・電極構造体20aに向かう面22aには、前記第1電解質膜・電極構造体20aの触媒塗布範囲36aに対応して第1酸化剤ガス流路40が形成される。この第1酸化剤ガス流路40は、面22a側に突出する凸部40aと凹部40bとを設けることにより、矢印B方向に直線状に延在して形成されるとともに、前記第1酸化剤ガス流路40の両側には、エンボス部40cが形成される。
【0024】
第1酸化剤ガス流路40の矢印B方向一端側には、波状に成形された入口部41aが設けられるとともに、矢印B方向他端側には、同様に波状に成形された出口部41bが設けられる。図4に示すように、入口部41a及び出口部41bは、第1電解質膜・電極構造体20aの外形形状部38aの外方に突出している。
【0025】
第1金属セパレータ22は、所望の凹凸形状を有する外形形状部42を有するとともに、この外形形状部42は、第1電解質膜・電極構造体20aの外形形状部38aよりも大きな寸法に設定される。第1金属セパレータ22の面22b側には、第1酸化剤ガス流路40を形成することにより、凹凸形状を反転させた第1冷却媒体流路44が形成される。
【0026】
図3に示すように、第2金属セパレータ24は、横長な長方形状を有している。この第2金属セパレータ24及び第4金属セパレータ28の矢印B方向の一端縁部には、積層方向である矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給するための酸化剤ガス入口連通孔46a、冷却媒体を供給するための冷却媒体入口連通孔48a、及び燃料ガス、例えば、水素含有ガスを排出するための燃料ガス出口連通孔50bが、矢印C方向(鉛直方向)に配列して設けられる。
【0027】
第2金属セパレータ24及び第4金属セパレータ28の矢印B方向の他端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを供給するための燃料ガス入口連通孔50a、冷却媒体を排出するための冷却媒体出口連通孔48b、及び酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス出口連通孔46bが、矢印C方向に配列して設けられる。
【0028】
図5に示すように、第2金属セパレータ24の第1電解質膜・電極構造体20aに向かう面24aには、触媒塗布範囲36aに対応して第1燃料ガス流路52が形成される。第1燃料ガス流路52は、面24a側に突出する凸部52a及び凹部52bが交互に設けられることによって、矢印B方向に延在して形成される。この第1燃料ガス流路52の両側には、エンボス部52cが形成される。
【0029】
図6に示すように、第2金属セパレータ24の面24bには、面24a側に第1燃料ガス流路52を形成することによって、第2冷却媒体流路54が形成される。第2冷却媒体流路54の矢印B方向一端側には、波状に成形された入口部56aが設けられるとともに、矢印B方向他端側には、同様に波状に成形された出口部56bが設けられる。
【0030】
入口部56a及び出口部56bは、第2金属セパレータ24に第3金属セパレータ26が重ね合わされた際に、この第3金属セパレータ26の切り欠き形状部に対応している。冷却媒体入口連通孔48aは、入口部56aを介して第2冷却媒体流路54に連通する一方、冷却媒体出口連通孔48bは、出口部56bを介して第2冷却媒体流路54に連通する。
【0031】
第2金属セパレータ24には、燃料ガス入口連通孔50aに近接して2つの燃料ガス用入口孔部58aが設けられるとともに、燃料ガス出口連通孔50bに近接して2つの燃料ガス用出口孔部58bが設けられる。酸化剤ガス入口連通孔46a近傍には、3つの酸化剤ガス用入口孔部60aが形成される一方、酸化剤ガス出口連通孔46bの近傍には、3つの酸化剤ガス用出口孔部60bが形成される。
【0032】
図2及び図5に示すように、第2金属セパレータ24の面24aには、シール部材62が一体成形される。このシール部材62は、第1燃料ガス流路52を周回し、順次、外方に向かって一体成形される第1シール部(内側シール部)62a、第2シール部62b及び第3シール部(外側シール部)62cを有する。シール部材62は、例えば、EPDM(エチレン−プロピレンゴム)、シリコーンゴム、ニトリルゴム又はアクリルゴムで構成され、例えば、シリコーン樹脂を所定温度(例えば、160℃〜170℃)に加熱した溶融樹脂を用いて射出成形される。
【0033】
第1シール部62aは、第1電解質膜・電極構造体20aの周縁部、すなわち、固体高分子電解質膜30aの周縁部に接触し、第2シール部62bは、第1金属セパレータ22の周縁部に接触し、第3シール部62cは、隣り合う単位セル12bを構成する第2金属セパレータに相当する第4金属セパレータ28に接触する。
【0034】
第1シール部62aは、燃料ガスの漏れを防止するための内側シール部材を構成し、第2シール部62bは、酸化剤ガスの漏れを防止するための中間シール部材を構成し、第3シール部62cは、冷却媒体の漏れを阻止するための外側シール部材を構成している。
【0035】
第2電解質膜・電極構造体20bは、上記の第1電解質膜・電極構造体20aと同様に構成されており、同一の構成要素には同一の参照数字に符号bを付して、その詳細な説明は省略する。
【0036】
第3金属セパレータ26は、第2電解質膜・電極構造体20b側の面26aに、第2酸化剤ガス流路64が形成される。第2酸化剤ガス流路64の矢印B方向一端側には、波状に成形された入口部63aが設けられるとともに、矢印B方向他端側には、同様に波状に成形された出口部63bが設けられる。入口部63a及び出口部63bは、第2電解質膜・電極構造体20bの外形形状の外方に突出している。第3金属セパレータ26の面26bは、第2金属セパレータ24の面24bに重なり合うことにより、第2冷却媒体流路54を一体的に形成する第3金属セパレータ26が所定の凹凸形状を有する外形形状部65を設ける。
【0037】
図7に示すように、第4金属セパレータ28の第2電解質膜・電極構造体20bに向かう面28aには、第2燃料ガス流路66が形成される。第2燃料ガス流路66は、凸部66aと凹部66bとによって矢印B方向に延在して形成されるとともに、両端側にはエンボス部66cが形成される。
【0038】
図8に示すように、第4金属セパレータ28の面28bには、面28aに第2燃料ガス流路66を形成することによって、第1冷却媒体流路44が形成される。この第1冷却媒体流路44は、第4金属セパレータ28と第1金属セパレータ22とが重なり合うことによって一体的に形成される。第1冷却媒体流路44の矢印B方向両端には、それぞれ外方に延在して波形状の入口部68aと出口部68bとが設けられる。
【0039】
入口部68aと出口部68bとは、第1金属セパレータ22の切り欠き形状部を介して第1冷却媒体流路44を冷却媒体入口連通孔48a及び冷却媒体出口連通孔48bに連通する。
【0040】
第4金属セパレータ28には、第2金属セパレータ24に設けられている入口孔部58a及び出口孔部58bに対して積層方向の位置をずらして2つの入口孔部70a及び2つの出口孔部70bが形成される。第4金属セパレータ28には、第2金属セパレータ24の3つの入口孔部60a及び3つの出口孔部60bに対して積層方向の位置をずらして3つの入口孔部72a及び3つの出口孔部72bが形成される。
【0041】
図7に示すように、面28aには、シール部材74が一体成形される。このシール部材74は、第2燃料ガス流路66を周回し、順次、外方に沿って設けられる第1シール部(内側シール部)74a、第2シール部74b及び第3シール部(外側シール部)74cを有する。燃料ガスシール用の内側シール部材である第1シール部74aは、第2電解質膜・電極構造体20bを構成する固体高分子電解質膜30bの周端部に接触し、酸化剤ガスシール用の中間シール部材である第2シール部74bは、第3金属セパレータ26の周端部に接触し、冷却媒体シール用の外側シール部材である第3シール部74cは、単位セル12aを構成する第2金属セパレータ24の周縁部に接触する。
【0042】
図9及び図10に示すように、第2金属セパレータ24及び第4金属セパレータ28には、第3シール部62c、74cによって酸化剤ガス入口連通孔46aを第1酸化剤ガス流路40及び第2酸化剤ガス流路64に連通する通路部76が形成される。この通路部76は、酸化剤ガス用の入口孔部(貫通孔)60a、72aを有する。同様に、図11及び図12に示すように、第2金属セパレータ24及び第4金属セパレータ28には、第3シール部62c、74cによって燃料ガス入口連通孔50aを第1燃料ガス流路52及び第2燃料ガス流路66に連通する通路部78が形成される。この通路部78は、燃料ガス用の入口孔部(貫通孔)58a、70aを有する。
【0043】
このように構成される燃料電池10の動作について、以下に説明する。
【0044】
図1に示すように、エンドプレート16aの酸化剤ガス入口連通孔46aには、酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給されるとともに、燃料ガス入口連通孔50aには、水素含有ガス等の燃料ガスが供給される。さらに、冷却媒体入口連通孔48aには、純水やエチレングリコール等の冷却媒体が供給される。
【0045】
ここで、単位セル12aを構成する第2金属セパレータ24には、図6に示すように、酸化剤ガス入口連通孔46aに面24b側から連通する3つの入口孔部60aが形成される。一方、単位セル12bを構成する第4金属セパレータ28には、図8に示すように、酸化剤ガス入口連通孔46aに面28b側から連通する3つの入口孔部72aが形成されている。
【0046】
このため、図9に示すように、酸化剤ガス入口連通孔46aに供給された酸化剤ガスの一部は、第2金属セパレータ24の入口孔部60aを通って面24a側に導入され、第1金属セパレータ22に設けられている入口部41aから第1酸化剤ガス流路40に供給される。
【0047】
一方、図10に示すように、単位セル12bでは、酸化剤ガス入口連通孔46aに供給された酸化剤ガスの一部が、第4金属セパレータ28に設けられている入口孔部72aから面28a側に導入され、第3金属セパレータ26の入口部63aから第2酸化剤ガス流路64に供給される。
【0048】
また、第2金属セパレータ24には、図6に示すように、面24b側で燃料ガス入口連通孔50aに連通する2つの入口孔部58aが形成されている。第4金属セパレータ28には、図8に示すように、面28b側で燃料ガス入口連通孔50aに連通する2つの入口孔部70aが形成されている。
【0049】
従って、図11に示すように、燃料ガス入口連通孔50aに供給された燃料ガスの一部は、第2金属セパレータ24の入口孔部58aを通って面24a側に導入され、この面24aに形成された第1燃料ガス流路52に供給される。
【0050】
さらに、図12に示すように、燃料ガス入口連通孔50aに供給された燃料ガスの一部は、第4金属セパレータ28の入口孔部70aから面28a側に導入され、この面28aに形成された第2燃料ガス流路66に供給される。
【0051】
これにより、図3に示すように、第1電解質膜・電極構造体20aでは、カソード側電極32aに供給される酸化剤ガスと、アノード側電極34aに供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費され、発電が行われる。同様に、第2電解質膜・電極構造体20bでは、カソード側電極32bに供給される酸化剤ガスと、アノード側電極34bに供給される燃料ガスとにより発電が行われる。
【0052】
単位セル12aの第1酸化剤ガス流路40を流れた酸化剤ガスは、出口部41bから第2金属セパレータ24に設けられた出口孔部60bを通って面24b側に移動し、酸化剤ガス出口連通孔46bに排出される。同様に、単位セル12bの第2酸化剤ガス流路64を流れた酸化剤ガスは、出口部63bから第4金属セパレータ28に設けられた出口孔部72bを通って酸化剤ガス出口連通孔46bに排出される。
【0053】
また、第2金属セパレータ24の第1燃料ガス流路52を流れた燃料ガスは、出口孔部58bを通って面24b側に移動した後、燃料ガス出口連通孔50bに排出される。同様に、第4金属セパレータ28の第2燃料ガス流路66を流れた燃料ガスは、出口孔部70bから面28b側に移動した後、燃料ガス出口連通孔50bに排出される。
【0054】
さらにまた、図8に示すように、第4金属セパレータ28の面28bには、第1冷却媒体流路44に連通する入口部68a及び出口部68bが設けられるとともに、前記入口部68a及び前記出口部68bは、第1金属セパレータ22の切り欠き形状部に対応している。
【0055】
このため、冷却媒体入口連通孔48aに供給された冷却媒体は、図13に示すように、第4金属セパレータ28の面28b側から入口部68aを通って前記第4金属セパレータ28と第1金属セパレータ22との間に形成された第1冷却媒体流路44に導入される。この第1冷却媒体流路44を通って冷却処理を施した冷却媒体は、出口部68bを通って面28b側から冷却媒体出口連通孔48bに排出される(図3参照)。
【0056】
一方、図6に示すように、第2金属セパレータ24の面24bには、第2冷却媒体流路54に連通するとともに、第3金属セパレータ26の切り欠き形状部に対応して入口部56a及び出口部56bが形成されている。
【0057】
従って、冷却媒体入口連通孔48aに供給された冷却媒体は、図14に示すように、面24b側から入口部56aを通って第2金属セパレータ24と第3金属セパレータ26との間に形成された第2冷却媒体流路54に供給される。この第2冷却媒体流路54を流れた冷却媒体は、出口部56bから面24b側に流動し、冷却媒体出口連通孔48bに排出される(図3参照)。
【0058】
この場合、第1の実施形態では、第2金属セパレータ24にシール部材62が一体成形されている。このため、例えば、所望の形状を有するシール部材62を予め形成した後、このシール部材62を第2金属セパレータ24に接合させる構成のように、前記シール部材62と前記第2金属セパレータ24とを相対的に位置決めする作業が不要になる。これにより、シール構造が一挙に簡素化するとともに、燃料電池10の組立作業性が良好に向上するという効果が得られる。
【0059】
しかも、図2及び図5に示すように、第2金属セパレータ24の面24aには、第1電解質膜・電極構造体20aを構成する固体高分子電解質膜30aの周縁部に当接する第1シール部62aと、第2金属セパレータ24の周縁部に当接する第2シール部62bと、隣り合う単位セル12bを構成する第4金属セパレータ28(実質的に第2金属セパレータ24と同等)に当接する第3シール部62cとが一体に成形されている。
【0060】
従って、第2金属セパレータ24では、面24a側にのみシール成形処理を施せばよく、面24b側にもシール成形処理を施す場合に比べて、シール成形工程が一挙に簡単且つ経済的に遂行可能になる。
【0061】
さらに、第1金属セパレータ22には、シール成形作業が不要になる。このため、第2金属セパレータ24にのみシール部材74の成形作業を行えばよく、シール成形作業が経済的且つ効率的に遂行されるとともに、燃料電池10全体の製造コストの削減が容易に図られる。
【0062】
さらにまた、第1燃料ガス流路52と入口孔部58a及び出口孔部58bとは、第1シール部62a、第2シール部62b及び第3シール部62cの三重シール構造によりシールされている。これにより、燃料ガスのシール性が良好に向上し、この燃料ガスの漏れを可及的に阻止することができるという利点がある。なお、単位セル12bでも上記の単位セル12aと同様の効果が得られる。
【0063】
また、第2金属セパレータ24に設けられている第1シール部62a、第2シール部62b及び第3シール部62cは、R形状の先端が平面部である固体高分子電解質膜30aの周縁部、第1金属セパレータ22の面22a及び第4金属セパレータ28の面28bに接触している。このため、シール部位における線圧の低下やリーク発生及びセパレータ変形が惹起することを確実に阻止することができる。
【0064】
図15は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池80の一部断面説明図である。なお、第1の実施形態に係る燃料電池10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3〜第5の実施形態においても同様に、その詳細な説明は省略する。
【0065】
燃料電池80は、単位セル82a、82bを交互に矢印A方向に積層する。単位セル82aは、第1電解質膜・電極構造体20aを第1金属セパレータ83及び第2金属セパレータ84で挟持する一方、単位セル82bは、第2電解質膜・電極構造体20bを第3金属セパレータ86及び第4金属セパレータ88で挟持する。
【0066】
第1金属セパレータ83は、第2金属セパレータ84よりも小さな外形寸法に設定されるとともに、前記第2金属セパレータ84には、シール部材90が一体成形される。このシール部材90は、外方に向かって、順次、形成される冷却媒体シール用の内側シール部90aと、燃料ガスシール用の中間シール部90bと、酸化剤ガスシール用の外側シール部90cとを有する。
【0067】
第3金属セパレータ86は、第4金属セパレータ88よりも小さな外形寸法に設定されるとともに、前記第4金属セパレータ88には、シール部材92が一体成形される。このシール部材92は、外方に向かって、順次、形成される冷却媒体シール用の内側シール部92aと、燃料ガスシール用の中間シール部92bと、酸化剤ガスシール用の外側シール部92cとを有する。
【0068】
この第4金属セパレータ88は、実質的に第2金属セパレータ84を180°反転させて使用する一方、第3金属セパレータ86は、実質的に第1金属セパレータ83を180°反転させて使用している。
【0069】
内側シール部90a、92aは、それぞれ第3金属セパレータ86及び第1金属セパレータ83の周縁部に当接し、中間シール部90b、92bは、それぞれ第2電解質膜・電極構造体20bの固体高分子電解質膜30bの周縁部、及び第1電解質膜・電極構造体20aの固体高分子電解質膜30aの周縁部に当接し、外側シール部90c、92cは、互いに隣接する第4金属セパレータ88及び第2金属セパレータ84の周縁部に当接する。
【0070】
このように構成される第2の実施形態では、第1金属セパレータ83及び第3金属セパレータ86にシール部材の成形作業が不要になり、シール成形工程が一挙に簡単且つ経済的に遂行可能になるとともに、燃料電池80全体の製造コストの削減が容易に図られる等、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0071】
図16は、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池100の断面説明図である。
【0072】
燃料電池100は、複数の単位セル102を矢印A方向に積層するとともに、前記単位セル102は、電解質膜・電極構造体(電解質・電極接合体)104を第1金属セパレータ106及び第2金属セパレータ108で挟持する(図16及び図17参照)。電解質膜・電極構造体104は、固体高分子電解質膜30とカソード側電極32及びアノード側電極34とを備える。固体高分子電解質膜30、カソード側電極32及びアノード側電極34は、同一の外形寸法(表面積)に設定される。
【0073】
第1金属セパレータ106は、第2金属セパレータ108よりも小さな外形寸法に設定されており、この第1金属セパレータ106は、実質的に第1の実施形態の第1金属セパレータ22と同様に構成される。
【0074】
第2金属セパレータ108は、シール部材110を一体成形する。このシール部材110は、図16及び図18に示すように、面24aに第1燃料ガス流路52を周回して形成される内側シール部110a及び外側シール部110bを有する。
【0075】
内側シール部110aは、電解質膜・電極構造体104の周縁部に接触し、外側シール部110bは、隣り合う単位セル102を構成する第2金属セパレータ108に接触する(図16参照)。
【0076】
このように構成される第3の実施形態では、第1の実施形態の、所謂、段差MEAを構成する第1電解質膜・電極構造体20a及び第2電解質膜・電極構造体20bに代えて、所謂、全面電極型の電解質膜・電極構造体104を用いており、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0077】
図19は、本発明の第4の実施形態に係る燃料電池120の断面説明図である。
【0078】
燃料電池120は、複数の単位セル122を矢印A方向に積層するとともに、前記単位セル122は、電解質膜・電極構造体104と第1金属セパレータ106及び第2金属セパレータ126とを備える。第1金属セパレータ106は、第2金属セパレータ126よりも小さな外形寸法に設定される。
【0079】
図20に示すように、第2金属セパレータ126には、酸化剤ガス入口連通孔46a、冷却媒体入口連通孔48a、燃料ガス出口連通孔50b、燃料ガス入口連通孔50a、冷却媒体出口連通孔48b及び酸化剤ガス出口連通孔46bが、矢印A方向に貫通して設けられる。
【0080】
図21に示すように、第2金属セパレータ126の面24aには、燃料ガス流路52を周回して第1シール部材138が一体成形される。第1シール部材138は、内側シール部138a及び外側シール部138bを有し、前記内側シール部138aは、電解質膜・電極構造体104の周縁部に当接する。外側シール部138bは、隣り合う単位セル122を構成する第2金属セパレータ126に設けられた第2シール部材146(後述する)に接触する(図19参照)。
【0081】
図19及び図20に示すように、第2金属セパレータ126の面24bには、冷却媒体流路54を周回して第2シール部材146が一体成形される。第2シール部材146は、シール部146aを有し、前記シール部146aは、内側シール部138aと共に電解質膜・電極構造体104及び第1金属セパレータ106の周縁部を挟持する。
【0082】
このように構成される燃料電池120では、上記の第1乃至第3の実施形態と同様の効果が得られる。
【0083】
図22は、本発明の第5の実施形態に係る燃料電池150の断面説明図である。
【0084】
燃料電池150は、第4の実施形態に係る燃料電池120に対して冷却媒体流路54を複数、例えば、2つの電解質膜・電極構造体104毎に形成する、所謂、間引き冷却構造を採用する。
【0085】
この燃料電池150は、第1金属セパレータ106、電解質膜・電極構造体104、第2金属セパレータ152、電解質膜・電極構造体104、第2金属セパレータ126、第1金属セパレータ106、電解質膜・電極構造体104、第2金属セパレータ152、電解質膜・電極構造体104及び第2金属セパレータ126を矢印A方向に積層して構成される。
【0086】
第2金属セパレータ152は、一方の面側に、すなわち、電解質膜・電極構造体104を挟んで第1金属セパレータ106に対向する面側に、燃料ガス流路52が形成される一方、他の電解質膜・電極構造体104を挟んで第2金属セパレータ126に対向する面側に、酸化剤ガス流路40が形成される。
【0087】
これにより、第5の実施形態では、冷却媒体流路54が有効に削減(半減)される。このため、燃料電池150全体として、積層方向の寸法が一挙に短尺化されるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池の概略斜視説明図である。
【図2】前記燃料電池の断面説明図である。
【図3】前記燃料電池を構成する単位セルの分解斜視説明図である。
【図4】第1金属セパレータの一方の面の説明図である。
【図5】第2金属セパレータの一方の面の説明図である。
【図6】前記第2金属セパレータの他方の面の説明図である。
【図7】第4金属セパレータの一方の面の説明図である。
【図8】前記第4金属セパレータの他方の面の説明図である。
【図9】前記燃料電池内での酸化剤ガスの流れ説明図である。
【図10】前記燃料電池内での前記酸化剤ガスの別の流れ説明図である。
【図11】前記燃料電池内での燃料ガスの流れ説明図である。
【図12】前記燃料電池内での前記燃料ガスの別の流れ説明図である。
【図13】前記燃料電池内での冷却媒体の流れ説明図である。
【図14】前記燃料電池内での前記冷却媒体の別の流れ説明図である。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池の一部断面説明図である。
【図16】本発明の第3の実施形態に係る燃料電池の断面説明図である。
【図17】前記燃料電池の分解斜視説明図である。
【図18】前記燃料電池を構成する第2金属セパレータの一方の面の説明図である。
【図19】本発明の第4の実施形態に係る燃料電池の断面説明図である。
【図20】前記燃料電池の分解斜視説明図である。
【図21】前記燃料電池を構成する第2金属セパレータの一方の面の説明図である。
【図22】本発明の第5の実施形態に係る燃料電池の断面説明図である。
【図23】特許文献1の燃料電池の説明図である。
【符号の説明】
【0089】
10、80、100、120、150…燃料電池
12a、12b、82a、82b、102、122…単位セル
14…積層体
20a、20b、104…電解質膜・電極構造体
22、24、26、28、83、84、86、88、106、108、126、152…金属セパレータ
30、30a、30b…固体高分子電解質膜
32、32a、32b…カソード側電極 34、34a、34b…アノード側電極
40、64…酸化剤ガス流路 44、54…冷却媒体流路
46a…酸化剤ガス入口連通孔 46b…酸化剤ガス出口連通孔
48a…冷却媒体入口連通孔 48b…冷却媒体出口連通孔
50a…燃料ガス入口連通孔 50b…燃料ガス出口連通孔
52、66…燃料ガス流路
58a、60a、70a、72a…入口孔部
58b、60b、70b、72b…出口孔部
62、74、90、92、110、138、146…シール部材
62a〜62c、74a〜74c、90a〜90c、92a〜92c、110a、110b、138a、138b、146a…シール部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質の両側に一対の電極を配設した電解質・電極構造体を備え、前記電解質・電極構造体を第1金属セパレータ及び第2金属セパレータで挟持する燃料電池であって、
前記第2金属セパレータは、前記第1金属セパレータより大きな外形寸法を有するとともに、
前記第1金属セパレータは、全面にわたって金属面が露呈し、且つ、前記第2金属セパレータにのみシール部材が一体成形され、
前記シール部材は、前記第2金属セパレータの前記電極に向かう一方の面に設けられ、前記電解質・電極構造体の周縁部に当接する内側シール部と、
隣り合う第2金属セパレータの周縁部に当接する外側シール部と、
を有することを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池において、前記シール部材は、前記第2金属セパレータの前記電極に向かう面とは反対の他方の面に設けられ、隣接する前記第1金属セパレータに当接し且つ前記内側シール部と積層方向に重なり合うシール部を有することを特徴とする燃料電池。
【請求項3】
請求項1記載の燃料電池において、前記一対の電極は、第1電極と該第1電極よりも小さな表面積を有する第2電極とにより構成され、
前記第1金属セパレータは、前記第1電極に向かって配置され、
前記第2金属セパレータは、前記第1金属セパレータよりも大きな外形寸法を有し、前記第2電極に向かって配置されるとともに、
前記シール部材は、前記第2金属セパレータの一方の面に設けられ、前記電解質・電極構造体の周縁部で前記電解質に当接する第1シール部と、
前記第1金属セパレータの周縁部に当接する第2シール部と、
隣り合う第2金属セパレータの周縁部に当接する第3シール部と、
を有することを特徴とする燃料電池。
【請求項4】
請求項3記載の燃料電池において、前記第1シール部は、燃料ガスシール用内側シール部を構成し、前記第2シール部は、酸化剤ガスシール用中間シール部を構成し、前記第3シール部は、冷却媒体シール用外側シール部を構成することを特徴とする燃料電池。
【請求項5】
請求項1記載の燃料電池において、前記一対の電極は、第1電極と該第1電極よりも小さな表面積を有する第2電極とにより構成され、
前記第1金属セパレータは、前記第2電極に向かって配置され、
前記第2金属セパレータは、前記第1金属セパレータよりも大きな外形寸法を有し、前記第1電極に向かって配置されるとともに、
前記シール部材は、前記第2金属セパレータの一方の面に設けられ、隣接する前記第1金属セパレータの周縁部に当接する第1シール部と、
前記第1金属セパレータを挟んで積層される前記電解質・電極構造体の周縁部で前記電解質に当接する第2シール部と、
隣り合う第2金属セパレータの周縁部に当接する第3シール部と、
を有することを特徴とする燃料電池。
【請求項6】
請求項5記載の燃料電池において、前記第1シール部は、冷却媒体シール用内側シール部を構成し、前記第2シール部は、燃料ガスシール用中間シール部を構成し、前記第3シール部は、酸化剤ガスシール用外側シール部を構成することを特徴とする燃料電池。
【請求項1】
電解質の両側に一対の電極を配設した電解質・電極構造体を備え、前記電解質・電極構造体を第1金属セパレータ及び第2金属セパレータで挟持する燃料電池であって、
前記第2金属セパレータは、前記第1金属セパレータより大きな外形寸法を有するとともに、
前記第1金属セパレータは、全面にわたって金属面が露呈し、且つ、前記第2金属セパレータにのみシール部材が一体成形され、
前記シール部材は、前記第2金属セパレータの前記電極に向かう一方の面に設けられ、前記電解質・電極構造体の周縁部に当接する内側シール部と、
隣り合う第2金属セパレータの周縁部に当接する外側シール部と、
を有することを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池において、前記シール部材は、前記第2金属セパレータの前記電極に向かう面とは反対の他方の面に設けられ、隣接する前記第1金属セパレータに当接し且つ前記内側シール部と積層方向に重なり合うシール部を有することを特徴とする燃料電池。
【請求項3】
請求項1記載の燃料電池において、前記一対の電極は、第1電極と該第1電極よりも小さな表面積を有する第2電極とにより構成され、
前記第1金属セパレータは、前記第1電極に向かって配置され、
前記第2金属セパレータは、前記第1金属セパレータよりも大きな外形寸法を有し、前記第2電極に向かって配置されるとともに、
前記シール部材は、前記第2金属セパレータの一方の面に設けられ、前記電解質・電極構造体の周縁部で前記電解質に当接する第1シール部と、
前記第1金属セパレータの周縁部に当接する第2シール部と、
隣り合う第2金属セパレータの周縁部に当接する第3シール部と、
を有することを特徴とする燃料電池。
【請求項4】
請求項3記載の燃料電池において、前記第1シール部は、燃料ガスシール用内側シール部を構成し、前記第2シール部は、酸化剤ガスシール用中間シール部を構成し、前記第3シール部は、冷却媒体シール用外側シール部を構成することを特徴とする燃料電池。
【請求項5】
請求項1記載の燃料電池において、前記一対の電極は、第1電極と該第1電極よりも小さな表面積を有する第2電極とにより構成され、
前記第1金属セパレータは、前記第2電極に向かって配置され、
前記第2金属セパレータは、前記第1金属セパレータよりも大きな外形寸法を有し、前記第1電極に向かって配置されるとともに、
前記シール部材は、前記第2金属セパレータの一方の面に設けられ、隣接する前記第1金属セパレータの周縁部に当接する第1シール部と、
前記第1金属セパレータを挟んで積層される前記電解質・電極構造体の周縁部で前記電解質に当接する第2シール部と、
隣り合う第2金属セパレータの周縁部に当接する第3シール部と、
を有することを特徴とする燃料電池。
【請求項6】
請求項5記載の燃料電池において、前記第1シール部は、冷却媒体シール用内側シール部を構成し、前記第2シール部は、燃料ガスシール用中間シール部を構成し、前記第3シール部は、酸化剤ガスシール用外側シール部を構成することを特徴とする燃料電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
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【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2007−324122(P2007−324122A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−119308(P2007−119308)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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