燃料電池
【課題】燃料としてメタノールなどの液体燃料、酸化剤として液状の酸化剤を用いた燃料電池において、酸化剤を高い効率でカソードに供給して電流密度及び出力密度が格段に高い燃料電池を提供する。
【解決手段】基板1上に溝11,21を2本形成し、これら溝を有する基板を電解質膜3と重ね合わせて2本の流路11a,21aを形成し、上記流路を形成する溝の内面又は電解質膜の面の上に触媒12a,22aを担持した集電体層12,22を設けると共に、上記流路の一方に燃料液11b、他方に酸化剤液21bとして過酸化水素水溶液を各々流通させて、燃料液のアノード反応及び酸化剤液のカソード反応と共に、電解質膜を介して水素イオンが移動するように構成した燃料電池。
【解決手段】基板1上に溝11,21を2本形成し、これら溝を有する基板を電解質膜3と重ね合わせて2本の流路11a,21aを形成し、上記流路を形成する溝の内面又は電解質膜の面の上に触媒12a,22aを担持した集電体層12,22を設けると共に、上記流路の一方に燃料液11b、他方に酸化剤液21bとして過酸化水素水溶液を各々流通させて、燃料液のアノード反応及び酸化剤液のカソード反応と共に、電解質膜を介して水素イオンが移動するように構成した燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料としてメタノール等の燃料液、酸化剤として酸化剤液を用いた高電流密度及び高出力密度を与える燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子電解質型燃料電池(PEFC)は、二次電池よりも高いエネルギー密度を実現できる可能性を有しており、例えば携帯情報端末等への次世代のエネルギー源として注目されている。一般に燃料電池の燃料としては水素(H2)を用いており、図10に示されるように、固体高分子電解質sの一方に設けられたアノードa側で下記式(1)のアノード反応により、プロトンと電子を出し、プロトンは電解質中を移動し、電子は外部回路を移動して、カソードc側で下記式(2)のカソード反応により酸素を還元している。なお、全反応は下記式(3)で表され、水素と酸素とから水が生成される。
H2→2H++e- (1)
1/2O2+2H++2e-→H2O (2)
H2+1/2O2→H2O (3)
【0003】
また、プロトンを供与する物質、即ち、燃料として、例えばメタノールを用いることができ、このようなものは一般に直接メタノール型燃料電池(DMFC)と称されている。このDMFCは、図11に示されるように、固体高分子電解質sの一方に設けられたアノードa側で下記式(4)のアノード反応により、メタノールと水の各一分子から二酸化炭素を生成し、この際プロトンと電子を得ている。また、カソードc側では、下記式(5)のカソード反応により酸素を還元している。なお、全反応は下記式(6)で表され、メタノールと酸素とから水が生成される。
CH3OH+H2O→CO2+6H++6e- (4)
3/2O2+6H++6e-→3H2O (5)
CH3OH+3/2O2→CO2+2H2O (6)
【0004】
一方、カソード反応に供される酸化剤としては上述したようなガス状の酸素を用いる場合の他に、酸素溶存溶液により酸素を供給するものが、特に携帯電気機器等の電源として有望視されている小型燃料電池において検討されているが、酸素飽和状態にした溶液を供給しても発電量の増大の要求に伴って必要となる十分な酸素量を供給することができず、カソード反応の酸素供給が律速となって、十分な発電性能が得られていなかった。
【0005】
また、酸素供給量を増やすために微細な酸素又は空気の気泡を含ませた酸素溶存溶液を用いた場合、微細な流路に酸素溶存溶液を流通させる小型燃料電池の場合、その流路が極めて細いために、気泡が滞留して流路を閉塞したり、液流の流れを乱したりする状態となり、固体高分子電解質からのプロトンの移行や、カソード反応がスムーズに進行しなくなるという問題がある。
【0006】
そのため、特に、小型燃料電池において有望な、液状の酸化剤を供給する燃料電池において、従来の飽和酸素溶存溶液の酸化剤供給容量を超えて高い効率で酸化剤をカソードに供給する燃料電池の開発が望まれていた。
【0007】
なお、本発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある。
【特許文献1】特開2004−172075号公報
【特許文献2】特開2004−165142号公報
【特許文献3】特開2005−197188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、燃料としてメタノール等の液状の燃料、酸化剤として液状の酸化剤を用いた燃料電池において、高い電流密度かつ出力密度で発電が可能な燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の燃料電池は、直接メタノール型燃料電池(DMFC)と称される燃料電池などの、プロトンを供与する物質である燃料として液状のもの、即ち、燃料液を用いるものであるが、本発明は、酸化剤も液状のもの、即ち、酸化剤液を用いるものであり、この酸化剤液として過酸化水素水を用いるものである。そして、特に、燃料液及び酸化剤液の流路として微細な流路が形成されてなる小型燃料電池において、酸化剤液として過酸化水素水を用いることにより、飽和酸素溶存溶液を酸化剤液として用いた従来の燃料電池に比べて、酸化剤を高い効率でカソードに供給することができ、その結果、電流密度及び出力密度が格段に向上して、従来にない極めて優れた燃料電池となることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0010】
従って、本発明は、以下の燃料電池を提供する。
[1] 互いに隣接して形成された第1及び第2の溝を有する一の基板上に、上記第1及び第2の溝双方の開口部を覆うように一の電解質膜を積重して各々第1及び第2の流路を形成し、上記第1の流路を形成する上記第1の溝の内面又は電解質膜の面の上、及び上記第2の流路を形成する上記第2の溝の内面又は電解質膜の面の上に、各々触媒を担持した集電体層を設けると共に、上記第1の流路に燃料液、上記第2の流路に酸化剤液を各々流通させて、上記燃料液のアノード反応及び上記酸化剤液のカソード反応と共に、上記電解質膜を介して上記第1の流路から上記第2の流路へ水素イオンが移動するように構成した燃料電池であって、上記酸化剤液が過酸化水素水溶液であることを特徴とする燃料電池。
[2] 第1の溝を有する第1の基板と第2の溝を有する第2の基板とを、上記第1及び第2の溝を互いに対向させて一の電解質膜を介して積重して各々第1及び第2の流路を形成し、上記第1の流路を形成する上記第1の溝の内面又は電解質膜の面の上、及び上記第2の流路を形成する上記第2の溝の内面又は電解質膜の面の上に、各々触媒を担持した集電体層を設けると共に、上記第1の流路に燃料液、上記第2の流路に酸化剤液を各々流通させて、上記燃料液のアノード反応及び上記酸化剤液のカソード反応と共に、上記電解質膜を介して上記第1の流路から上記第2の流路へ水素イオンが移動するように構成した燃料電池であって、上記酸化剤液が過酸化水素水溶液であることを特徴とする燃料電池。
[3] 上記第1の溝の内面及び上記第2の溝の内面の上に、各々触媒を有する集電体層を設けると共に、上記燃料液及び酸化剤液が各々電解質膜に直接接触するように構成してなることを特徴とする[1]又は[2]記載の燃料電池。
[4] 上記基板がSi基板又は樹脂基板であることを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載の燃料電池。
[5]上記溝の幅が1000μm以下、かつ深さが1000μm以下であることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載の燃料電池。
[6] 上記触媒が金属触媒であることを特徴とする[1]乃至[5]のいずれかに記載の燃料電池。
[7] 上記金属が白金又は白金合金であることを特徴とする[6]記載の燃料電池。
[8] 上記燃料液がメタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブタノールから選ばれる1種若しくは2種以上の混合物又はそれらの水溶液であることを特徴とする[1]乃至[7]のいずれかに記載の燃料電池。
[9] 上記過酸化水素の濃度が0.01〜5mol/Lであることを特徴とする[1]乃至[8]のいずれかに記載の燃料電池。
[10] 上記過酸化水素水溶液を流路の断面積1mm2当たり0.1〜50ml/minの流速で流通させることを特徴とする[1]乃至[9]のいずれかに記載の燃料電池。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、飽和酸素溶存溶液を酸化剤液として用いた従来の燃料電池に比べて、酸化剤を高い効率でカソードに供給することができ、その結果、電流密度及び出力密度が格段に高い直接メタノール型の燃料電池を提供することができる。特に、本発明の燃料電池においては、バイポーラ構造の燃料電池のような、通常カーボンペーパーなどで形成されるガス拡散層を備えるものと異なり、過酸化水素が分解して生成した酸素ガスが、ガス拡散層の細孔中で滞留して酸化剤液の供給が阻害されることがないことから、過酸化水素水溶液を酸化剤として効率的に使用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明の第1の発明に係る燃料電池は、互いに隣接して形成された第1及び第2の溝を有する一の基板上に、上記第1及び第2の溝双方の開口部を覆うように一の電解質膜を積重して各々第1及び第2の流路を形成し、上記第1の流路を形成する上記第1の溝の内面又は電解質膜面の上、及び上記第2の流路を形成する上記第2の溝の内面又は電解質膜面の上に、各々触媒を担持した集電体層を設けると共に、上記第1の流路に燃料液、上記第2の流路に酸化剤液を各々流通させて、上記燃料液のアノード反応及び上記酸化剤液のカソード反応と共に、上記電解質膜を介して上記第1の流路から上記第2の流路へ水素イオンが移動するように構成した燃料電池であり、上記酸化剤液が過酸化水素水溶液であるものである。
【0013】
このような燃料電池としては、例えば、図1に示されるものが具体的に例示される。即ち、この燃料電池は、基板1の上面に、互いに隣接して第1の溝11及び第2の溝21が形成され、この基板1上に、第1の溝11及び第2の溝21の双方の上面開口部を覆うように電解質膜3が積重されており、第1の溝11と電解質膜3とにより第1の流路11a、第2の溝21と電解質膜3とにより第2の流路21aが形成されている。また、この場合、第1の流路11aを形成する第1の溝11の内面(即ち、側面及び下面)上に触媒12aを担持した集電体層(アノード)12が形成され、第2の流路21aを形成する第2の溝21の内面(即ち、側面及び下面)上に触媒22aを担持した集電体層(カソード)22が設けられている。更に、集電体層(アノード)12と集電体層(カソード)22とは、電気的に接続されて回路を形成しており、第1の流路11aに燃料液(この場合は、メタノール)11b、第2の流路21aに酸化剤液21bを各々流通させて、燃料液11bのアノード反応及び酸化剤液21bのカソード反応と共に、電解質膜3を介して第1の流路11a(燃料液11b)から第2の流路21a(酸化剤液21b)へ水素イオン(H+)が移動するように構成されているものであり、この燃料電池は、いわゆる平面型と呼ばれるものである。そして、この燃料電池では、酸化剤液21bとして、過酸化水素水溶液が用いられる。
【0014】
また、本発明の第2の発明に係る燃料電池は、第1の溝を有する第1の基板と第2の溝を有する第2の基板とを、上記第1及び第2の溝を互いに対向させて一の電解質膜を介して積重して各々第1及び第2の流路を形成し、上記第1の流路を形成する上記第1の溝の内面又は電解質膜面の上、及び上記第2の流路を形成する上記第2の溝の内面又は電解質膜面の上に、各々触媒を担持した集電体層を設けると共に、上記第1の流路に燃料液、上記第2の流路に酸化剤液を各々流通させて、上記燃料液のアノード反応及び上記酸化剤液のカソード反応と共に、上記電解質膜を介して上記第1の流路から上記第2の流路へ水素イオンが移動するように構成した燃料電池であり、上記酸化剤液が過酸化水素水溶液であるものである。
【0015】
このような燃料電池としては、例えば、図2に示されるものが具体的に例示される。即ち、この燃料電池は、第1の基板1の上面に第1の溝11、第2の基板2の下面に第2の溝21が各々形成され、この第1の溝11と第2の溝21を互いに対向させて電解質膜3を介して第1の基板1と第2の基板2とが積重されており、電解質膜3が第1の溝11の上面開口部及び第2の溝21の下面開口部を各々閉塞して、第1の溝11と電解質膜3とにより第1の流路11a、第2の溝21と電解質膜3とにより第2の流路21aが形成されている。また、この場合、第1の流路11aを形成する第1の溝11の内面(即ち、側面及び下面)上に触媒12aを担持した集電体層(アノード)12が形成され、第2の流路21aを形成する第2の溝21の内面(即ち、側面及び上面)上に触媒22aを担持した集電体層(カソード)22が設けられている。更に、集電体層(アノード)12と集電体層(カソード)22とは、電気的に接続されて回路を形成しており、第1の流路11aに燃料液(この場合は、メタノール)11b、第2の流路21aに酸化剤液21bを各々流通させて、燃料液11bのアノード反応及び酸化剤液21bのカソード反応と共に、電解質膜3を介して第1の流路11a(燃料液11b)から第2の流路21a(酸化剤液21b)へ水素イオン(H+)が移動するように構成されているものである。そして、この燃料電池では、酸化剤液21bとして、過酸化水素水溶液が用いられる。
【0016】
本発明においては、上記第1及び第2の発明いずれにおいても、図1及び図2に各々示されるように、第1の溝11の内面(側面及び下面)及び第2の溝21の内面(側面及び下面又は上面)の上に、各々触媒12a,22aを有する集電体層12,22を設けることが集電性の観点から好ましく、更に、第1の流路11aを形成する電解質膜3の面の上及び第2の流路21aを形成する電解質膜3の面の上のいずれにも触媒及び集電体層を設けることなく、燃料液及び酸化剤液が各々電解質膜に直接接触するように構成することが特に好ましい。
【0017】
図4及び図5に、上記図1及び図2で示した態様の本発明の燃料電池におけるプロトン輸送の概念図を示す。図4はアノード側であり、
CH3OH+H2O→CO2+6H++6e-
で示される反応が進行する。また、図5はカソード側であり、
3H2O2+6H++6e-→6H2O
又は
3H2O2→3H2O+3/2O2
3/2O2+6H++6e-→3H2O
で示される反応が進行する。なお、図4及び図5において、12は集電体層(アノード)、12aはアノード触媒、22は集電体層(カソード)、22aはカソード触媒、3は電解質膜である。
【0018】
このような態様の燃料電池においては、従来の膜−電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)構造を採用していないため、特に高い集電効率を達成することができる点で好適である。また、集電体層に触媒を担持する場合においても、例えば電析を行うことで担持させることができ、触媒の担持も容易である。更に、触媒と燃料又は酸化剤を、溝内面全体で接触させることができるため、反応効率が向上する点においても好適である。
【0019】
なお、本発明の燃料電池は、上述した例に限定されるものではなく、例えば、上記第1の発明に係る燃料電池としては、図3に示されるものを挙げることもできる。即ち、この燃料電池は、基板1の上面に、互いに隣接して第1の溝11及び第2の溝21が形成され、この基板1上に、第1の溝11及び第2の溝21の双方の上面開口部を覆うように電解質膜3が積重されており、第1の溝11と電解質膜3とにより第1の流路11a、第2の溝21と電解質膜3とにより第2の流路21aが形成されている。また、この場合、第1の流路11aを形成する第1の溝11の内面(即ち、側面及び下面)上に触媒12aを担持した集電体層(アノード)12が形成され、一方、第2の流路21aを形成する電解質膜の面上に触媒22aを担持した集電体層(カソード)22が設けられている。更に、集電体層(アノード)12と集電体層(カソード)22とは、電気的に接続されて回路を形成しており、第1の流路11aに燃料液(この場合は、メタノール)11b、第2の流路21aに酸化剤液21bを各々流通させて、燃料液11bのアノード反応及び酸化剤液21bのカソード反応と共に、電解質膜3を介して第1の流路11a(燃料液11b)から第2の流路21a(酸化剤液21b)へ水素イオン(H+)が移動するように構成されている。そして、この燃料電池では、酸化剤液21bとして、過酸化水素水溶液が用いられる。
【0020】
本発明においては、基板としてSi基板を用いることができる。Si基板は、半導体製造において用いられるリソグラフィ、エッチング等の微細加工手法を用いることにより、基板上に微細な溝を精度よく形成することができることから好適である。なお、基板はSi基板に限定されるものではなく、強度があり、寸法安定性が優れている材料であれば使用可能であり、例えば、ポリアクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ABS樹脂若しくはこれらの混合物、又はこれらの材料に無機材料を充填してなる複合材料などの樹脂基板を用いることもできる。
【0021】
ここで、本発明の燃料電池の第1及び第2の溝の幅及び深さは、燃料電池の用途、大きさ及びその発電容量に応じて適宜変化させることができ、特に限定されるものではないが、小型の燃料電池とする場合には、例えば溝の幅が1000μm以下、特に100μm以下、かつ溝の深さが1000μm以下、特に100μm以下とすることが好ましい。なお、溝の幅及び深さの下限は特に限定されるものではないが、通常、各々10μm程度以上である。
【0022】
また、第1及び第2の溝の形状は、特に限定されるものではないが、異方性形状(角型)又は等方性形状(丸型、半円型)とすることができる。また、溝側壁は垂直の場合の他、溝の側壁をテーパ形状(溝を断面逆台形形状)として集電体層を蒸着により形成する場合における蒸着効率を向上させることもできる。
【0023】
更に、第1の溝と第2の溝との間の距離は、上記第1の発明の場合、プロトンの移動が平面移動となるので、距離が短いほうが好ましいが、あまり短いとプロトンの移動以外にメタノールの移動が生じるので、メタノール移動が生じないように適宜調整することができるが、微小化、集積化の観点から第1の溝と第2の溝との間の距離は、1000μm以下、特に100μm以下とすることが好ましい。一方、その下限は、特に限定されるものではないが、通常、溝の幅の1/10程度以上である。
【0024】
本発明においては、集電体層は、例えば、溝の内壁側から密着層であるチタン層と導電層である金層との積層体に、触媒を担持させたものが挙げられる。この触媒が担持される電極部分の金属としては、これに限定されるものではなく、集電機能を発揮する金属であれば、いずれも使用可能である。
【0025】
一方、集電体層に担持される触媒としては、アノード側には燃料の酸化触媒として機能する金属、カソード側には酸化剤の還元触媒として機能する金属が用いられる。このようなものとしては、白金又は白金合金が好ましく、白金合金としては、白金と、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、鉄、ニッケル、金、コバルト、パラジウム、タングステン、モリブデン及び錫からなる群より選択される1種又は2種以上の元素との白金合金を用いることができる。特に、高起電力及び高出力の燃料電池が得られる点から、アノード側に白金ルテニウム合金、カソード側に白金を用いることが好ましい。
【0026】
電解質膜としては、プロトン輸送材料が含浸されたPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなる固体高分子電解質膜が好ましい。このような電解質は適度な強度、伸度、弾性、硬さ、こわさを有しているので、本発明の燃料電池を構成する上で好適である。プロトン輸送材料としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系高分子が好ましい。固体高分子電解質膜としては、例えば、「フレオミン膜」(商標名:旭硝子社製)、「ナフィオン膜」(商標名:デュポン社製)等が好適に用いられる。なお、電解質膜の厚さは、通常50〜200μm程度である。
【0027】
また、第1の流路に流通させる燃料液としては、プロトンを供与する燃料液であれば限定されるものではないが、例えば、アルコール、特には、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブタノールから選ばれる1種若しくは2種以上の混合物又はそれらの水溶液を好適に挙げることができる。また、アセトン等のケトン、ジメチルエーテル等のエーテルを用いることも可能である。燃料液を水溶液で用いる場合の濃度は、特に限定されるものではないが、例えば、メタノール水溶液の場合、通常1〜3mol/Lである。
【0028】
一方、本発明においては、酸化剤液として過酸化水素水溶液を用いる。酸化剤液として過酸化水素水を用いることにより、飽和酸素溶存溶液を酸化剤液として用いた従来の燃料電池に比べて、酸化剤を高い効率でカソードに供給することができ、その結果、電流密度及び出力密度が格段に向上した従来にない極めて優れた燃料電池となる。
【0029】
この場合、過酸化水素水溶液中の過酸化水素濃度は0.01〜5mol/L、特に0.03〜3mol/Lであることが好ましい。過酸化水素濃度がこの範囲にある燃料電池において、特に高い電流密度と出力密度が達成できる。また、過酸化水素水溶液を流路に流通させる流速を、流路の断面積1mm2当たり0.1〜50ml/min、特に1〜20ml/minとすることが好適である。この流速が遅すぎると、カソードに十分な量の酸化剤が供給できない場合や、過酸化水素の分解により生成した酸素が流路内で気泡を形成して過酸化水素のカソードへの供給を妨げる場合があり、また、流速が速すぎると、流路内の内圧が上がって液漏れの原因となる場合がある。
【0030】
また、燃料液及び酸化剤液中においてプロトンの移動を促進させるために、硫酸等の電解質を添加することが好ましい。これにより、溝内部で発生したプロトンを電解質膜まで効率的に移動させることができる。なお、燃料液及び酸化剤液の流通には、ポンプ等を適宜使用すればよい。
【0031】
このようなセルを1単位として、複数のセルから燃料電池スタックを構成し、大容量又は長寿命の燃料電池を構成することができる。また、この際、同一基板上に複数の溝を形成し、これらを電気的に接合して燃料電池スタックを構成することで、簡易な製造方法で大容量又は長寿命の燃料電池を構成することも可能である。
【0032】
次に、本発明の燃料電池の製造工程の一例を、上記第1の発明の一例として例示した図1に示される燃料電池の場合を例として説明する。まず、図6(A)に示されるように、基板1の熱酸化により酸化膜1aを形成する(熱酸化工程)。次に、図6(B)及び(C)に示されるように、レジスト1bを使用してエッチングにより基板1上の酸化膜1aのパターニングを行う(リソグラフィ工程及び酸化膜エッチング工程)。次に、図6(D)及び(E)に示されるように、Deep−RIEレジストパターンを形成後、RIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)装置を用いて第1の溝11及び第2の溝21の形成を行い、その後レジストを剥離し、次いで熱酸化を行う(Siエッチング(溝形成)工程及び熱酸化工程)。
【0033】
次に、図7(F)〜(H)に示されるように、金属電極及び配線部のパターニングを行ってレジストパターン1cを形成し、集電体層20として、密着層としてのTiと集電体金属としてのAuとを真空エレクトロンビーム(EB)蒸着により蒸着させ、リフトオフによりパターン部以外のレジスト及び金属を除去する(リソグラフィ(ドライフィルム)工程、金属蒸着工程及びリフトオフ工程)。なお、金属蒸着工程において、基板を左右に揺動しているのは、溝の側壁への蒸着を良好とさせるためである。次に、図7(I)に示されるように、電極部となる溝内の集電体層12,22上に電析法により触媒12a,22aを担持する(触媒電析工程)。最後に、図7(J)に示されるように電解質膜3を積層し、セルを完成させる(電解質膜積重工程)。なお、基板と電解質膜は、両者を積重した状態で押圧することにより、適宜密着させることが可能である。
【0034】
このように基板に燃料液及び酸化剤液を流通させる溝を各々形成すると共に、電極を形成して電解質膜を載せるという簡易な構成で、超小型の燃料電池を提供することができる。Siの微細加工技術であるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を用いることで、公知の半導体製造と同様のプロセス技術により、燃料電池を製造することができるので、大量生産におけるコストの低廉化を図ることができる。また、同一基板平面に隣接した溝を形成してセルを構成すれば、製造が簡易となり、製造コストの低廉化を図ることもできる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0036】
[実施例1〜4、比較例1]
図1に示される構成の燃料電池を作成し、酸化剤液として過酸化水素水溶液(実施例)及び飽和酸素溶存水溶液(比較例)を各々用いて燃料電池の性能を評価した。結果を表1並びに図8及び9に示す。なお、設定条件は以下のとおりである。
【0037】
基板及び溝
基板:Si基板(2cm×2.5cm 厚さ200μm)
溝幅:100μm、溝深さ:50μm(溝断面積0.005mm2)
溝長さ:6mm
溝間距離:50μm
単電極面積0.0091cm2
電解質膜
電解質膜:デュポン社製ナフィオン112(厚さ51μm)
集電体及び触媒
アノード:Au集電体
+Pt−Ru触媒(Pt=1.5C/cm2+Pt−Ru=1C/cm2)
カソード:Au集電体
+Pt触媒(Pt=2C/cm2)
なお、触媒は電気めっき(パルスめっき)により形成した。
燃料液
2mol/L CH3OH+0.5mol/L H2SO4水溶液
流速:80μL/min
酸化剤液
H2O2(濃度は表1参照)+0.5mol/L H2SO4水溶液
O2(飽和)+0.5mol/L H2SO4水溶液
流速:80μL/min(溝断面積1mm2当たり16ml/minに相当)
【0038】
【表1】
【0039】
以上の結果から、酸化剤液として過酸化水素水溶液を用いた本発明の燃料電池が、酸化剤液として飽和溶存酸素水溶液を用いた従来のものに比べ、電流密度及び出力密度が格段に高く、極めて性能の高い燃料電池であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施例に係る燃料電池の断面図である。
【図2】本発明の他の実施例に係る燃料電池の断面図である。
【図3】本発明の別の実施例に係る燃料電池の断面図である。
【図4】アノード側のプロトン輸送の概念図である。
【図5】カノード側のプロトン輸送の概念図である。
【図6】燃料電池の製造工程の説明図である。
【図7】燃料電池の製造工程の説明図である。
【図8】実施例及び比較例における燃料電池の発電特性を示すグラフであり、電流密度に対して出力密度をプロットしたグラフ(I−P曲線)である。
【図9】実施例及び比較例における燃料電池の発電特性を示すグラフであり、電流密度に対してセル電圧をプロットしたグラフ(I−V曲線)である。
【図10】PEFCの燃料電池の模式図である。
【図11】従来のDMFCの燃料電池の模式図である。
【符号の説明】
【0041】
1 (第1の)基板
2 第2の基板
11 第1の溝
21 第2の溝
11a 第1の流路
21a 第2の流路
11b 燃料液
21b 酸化剤液
12 集電体体(アノード)
12a アノード触媒
22 集電体体(カソード)
22a カソード触媒
3 電解質膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料としてメタノール等の燃料液、酸化剤として酸化剤液を用いた高電流密度及び高出力密度を与える燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子電解質型燃料電池(PEFC)は、二次電池よりも高いエネルギー密度を実現できる可能性を有しており、例えば携帯情報端末等への次世代のエネルギー源として注目されている。一般に燃料電池の燃料としては水素(H2)を用いており、図10に示されるように、固体高分子電解質sの一方に設けられたアノードa側で下記式(1)のアノード反応により、プロトンと電子を出し、プロトンは電解質中を移動し、電子は外部回路を移動して、カソードc側で下記式(2)のカソード反応により酸素を還元している。なお、全反応は下記式(3)で表され、水素と酸素とから水が生成される。
H2→2H++e- (1)
1/2O2+2H++2e-→H2O (2)
H2+1/2O2→H2O (3)
【0003】
また、プロトンを供与する物質、即ち、燃料として、例えばメタノールを用いることができ、このようなものは一般に直接メタノール型燃料電池(DMFC)と称されている。このDMFCは、図11に示されるように、固体高分子電解質sの一方に設けられたアノードa側で下記式(4)のアノード反応により、メタノールと水の各一分子から二酸化炭素を生成し、この際プロトンと電子を得ている。また、カソードc側では、下記式(5)のカソード反応により酸素を還元している。なお、全反応は下記式(6)で表され、メタノールと酸素とから水が生成される。
CH3OH+H2O→CO2+6H++6e- (4)
3/2O2+6H++6e-→3H2O (5)
CH3OH+3/2O2→CO2+2H2O (6)
【0004】
一方、カソード反応に供される酸化剤としては上述したようなガス状の酸素を用いる場合の他に、酸素溶存溶液により酸素を供給するものが、特に携帯電気機器等の電源として有望視されている小型燃料電池において検討されているが、酸素飽和状態にした溶液を供給しても発電量の増大の要求に伴って必要となる十分な酸素量を供給することができず、カソード反応の酸素供給が律速となって、十分な発電性能が得られていなかった。
【0005】
また、酸素供給量を増やすために微細な酸素又は空気の気泡を含ませた酸素溶存溶液を用いた場合、微細な流路に酸素溶存溶液を流通させる小型燃料電池の場合、その流路が極めて細いために、気泡が滞留して流路を閉塞したり、液流の流れを乱したりする状態となり、固体高分子電解質からのプロトンの移行や、カソード反応がスムーズに進行しなくなるという問題がある。
【0006】
そのため、特に、小型燃料電池において有望な、液状の酸化剤を供給する燃料電池において、従来の飽和酸素溶存溶液の酸化剤供給容量を超えて高い効率で酸化剤をカソードに供給する燃料電池の開発が望まれていた。
【0007】
なお、本発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある。
【特許文献1】特開2004−172075号公報
【特許文献2】特開2004−165142号公報
【特許文献3】特開2005−197188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、燃料としてメタノール等の液状の燃料、酸化剤として液状の酸化剤を用いた燃料電池において、高い電流密度かつ出力密度で発電が可能な燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の燃料電池は、直接メタノール型燃料電池(DMFC)と称される燃料電池などの、プロトンを供与する物質である燃料として液状のもの、即ち、燃料液を用いるものであるが、本発明は、酸化剤も液状のもの、即ち、酸化剤液を用いるものであり、この酸化剤液として過酸化水素水を用いるものである。そして、特に、燃料液及び酸化剤液の流路として微細な流路が形成されてなる小型燃料電池において、酸化剤液として過酸化水素水を用いることにより、飽和酸素溶存溶液を酸化剤液として用いた従来の燃料電池に比べて、酸化剤を高い効率でカソードに供給することができ、その結果、電流密度及び出力密度が格段に向上して、従来にない極めて優れた燃料電池となることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0010】
従って、本発明は、以下の燃料電池を提供する。
[1] 互いに隣接して形成された第1及び第2の溝を有する一の基板上に、上記第1及び第2の溝双方の開口部を覆うように一の電解質膜を積重して各々第1及び第2の流路を形成し、上記第1の流路を形成する上記第1の溝の内面又は電解質膜の面の上、及び上記第2の流路を形成する上記第2の溝の内面又は電解質膜の面の上に、各々触媒を担持した集電体層を設けると共に、上記第1の流路に燃料液、上記第2の流路に酸化剤液を各々流通させて、上記燃料液のアノード反応及び上記酸化剤液のカソード反応と共に、上記電解質膜を介して上記第1の流路から上記第2の流路へ水素イオンが移動するように構成した燃料電池であって、上記酸化剤液が過酸化水素水溶液であることを特徴とする燃料電池。
[2] 第1の溝を有する第1の基板と第2の溝を有する第2の基板とを、上記第1及び第2の溝を互いに対向させて一の電解質膜を介して積重して各々第1及び第2の流路を形成し、上記第1の流路を形成する上記第1の溝の内面又は電解質膜の面の上、及び上記第2の流路を形成する上記第2の溝の内面又は電解質膜の面の上に、各々触媒を担持した集電体層を設けると共に、上記第1の流路に燃料液、上記第2の流路に酸化剤液を各々流通させて、上記燃料液のアノード反応及び上記酸化剤液のカソード反応と共に、上記電解質膜を介して上記第1の流路から上記第2の流路へ水素イオンが移動するように構成した燃料電池であって、上記酸化剤液が過酸化水素水溶液であることを特徴とする燃料電池。
[3] 上記第1の溝の内面及び上記第2の溝の内面の上に、各々触媒を有する集電体層を設けると共に、上記燃料液及び酸化剤液が各々電解質膜に直接接触するように構成してなることを特徴とする[1]又は[2]記載の燃料電池。
[4] 上記基板がSi基板又は樹脂基板であることを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載の燃料電池。
[5]上記溝の幅が1000μm以下、かつ深さが1000μm以下であることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載の燃料電池。
[6] 上記触媒が金属触媒であることを特徴とする[1]乃至[5]のいずれかに記載の燃料電池。
[7] 上記金属が白金又は白金合金であることを特徴とする[6]記載の燃料電池。
[8] 上記燃料液がメタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブタノールから選ばれる1種若しくは2種以上の混合物又はそれらの水溶液であることを特徴とする[1]乃至[7]のいずれかに記載の燃料電池。
[9] 上記過酸化水素の濃度が0.01〜5mol/Lであることを特徴とする[1]乃至[8]のいずれかに記載の燃料電池。
[10] 上記過酸化水素水溶液を流路の断面積1mm2当たり0.1〜50ml/minの流速で流通させることを特徴とする[1]乃至[9]のいずれかに記載の燃料電池。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、飽和酸素溶存溶液を酸化剤液として用いた従来の燃料電池に比べて、酸化剤を高い効率でカソードに供給することができ、その結果、電流密度及び出力密度が格段に高い直接メタノール型の燃料電池を提供することができる。特に、本発明の燃料電池においては、バイポーラ構造の燃料電池のような、通常カーボンペーパーなどで形成されるガス拡散層を備えるものと異なり、過酸化水素が分解して生成した酸素ガスが、ガス拡散層の細孔中で滞留して酸化剤液の供給が阻害されることがないことから、過酸化水素水溶液を酸化剤として効率的に使用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明の第1の発明に係る燃料電池は、互いに隣接して形成された第1及び第2の溝を有する一の基板上に、上記第1及び第2の溝双方の開口部を覆うように一の電解質膜を積重して各々第1及び第2の流路を形成し、上記第1の流路を形成する上記第1の溝の内面又は電解質膜面の上、及び上記第2の流路を形成する上記第2の溝の内面又は電解質膜面の上に、各々触媒を担持した集電体層を設けると共に、上記第1の流路に燃料液、上記第2の流路に酸化剤液を各々流通させて、上記燃料液のアノード反応及び上記酸化剤液のカソード反応と共に、上記電解質膜を介して上記第1の流路から上記第2の流路へ水素イオンが移動するように構成した燃料電池であり、上記酸化剤液が過酸化水素水溶液であるものである。
【0013】
このような燃料電池としては、例えば、図1に示されるものが具体的に例示される。即ち、この燃料電池は、基板1の上面に、互いに隣接して第1の溝11及び第2の溝21が形成され、この基板1上に、第1の溝11及び第2の溝21の双方の上面開口部を覆うように電解質膜3が積重されており、第1の溝11と電解質膜3とにより第1の流路11a、第2の溝21と電解質膜3とにより第2の流路21aが形成されている。また、この場合、第1の流路11aを形成する第1の溝11の内面(即ち、側面及び下面)上に触媒12aを担持した集電体層(アノード)12が形成され、第2の流路21aを形成する第2の溝21の内面(即ち、側面及び下面)上に触媒22aを担持した集電体層(カソード)22が設けられている。更に、集電体層(アノード)12と集電体層(カソード)22とは、電気的に接続されて回路を形成しており、第1の流路11aに燃料液(この場合は、メタノール)11b、第2の流路21aに酸化剤液21bを各々流通させて、燃料液11bのアノード反応及び酸化剤液21bのカソード反応と共に、電解質膜3を介して第1の流路11a(燃料液11b)から第2の流路21a(酸化剤液21b)へ水素イオン(H+)が移動するように構成されているものであり、この燃料電池は、いわゆる平面型と呼ばれるものである。そして、この燃料電池では、酸化剤液21bとして、過酸化水素水溶液が用いられる。
【0014】
また、本発明の第2の発明に係る燃料電池は、第1の溝を有する第1の基板と第2の溝を有する第2の基板とを、上記第1及び第2の溝を互いに対向させて一の電解質膜を介して積重して各々第1及び第2の流路を形成し、上記第1の流路を形成する上記第1の溝の内面又は電解質膜面の上、及び上記第2の流路を形成する上記第2の溝の内面又は電解質膜面の上に、各々触媒を担持した集電体層を設けると共に、上記第1の流路に燃料液、上記第2の流路に酸化剤液を各々流通させて、上記燃料液のアノード反応及び上記酸化剤液のカソード反応と共に、上記電解質膜を介して上記第1の流路から上記第2の流路へ水素イオンが移動するように構成した燃料電池であり、上記酸化剤液が過酸化水素水溶液であるものである。
【0015】
このような燃料電池としては、例えば、図2に示されるものが具体的に例示される。即ち、この燃料電池は、第1の基板1の上面に第1の溝11、第2の基板2の下面に第2の溝21が各々形成され、この第1の溝11と第2の溝21を互いに対向させて電解質膜3を介して第1の基板1と第2の基板2とが積重されており、電解質膜3が第1の溝11の上面開口部及び第2の溝21の下面開口部を各々閉塞して、第1の溝11と電解質膜3とにより第1の流路11a、第2の溝21と電解質膜3とにより第2の流路21aが形成されている。また、この場合、第1の流路11aを形成する第1の溝11の内面(即ち、側面及び下面)上に触媒12aを担持した集電体層(アノード)12が形成され、第2の流路21aを形成する第2の溝21の内面(即ち、側面及び上面)上に触媒22aを担持した集電体層(カソード)22が設けられている。更に、集電体層(アノード)12と集電体層(カソード)22とは、電気的に接続されて回路を形成しており、第1の流路11aに燃料液(この場合は、メタノール)11b、第2の流路21aに酸化剤液21bを各々流通させて、燃料液11bのアノード反応及び酸化剤液21bのカソード反応と共に、電解質膜3を介して第1の流路11a(燃料液11b)から第2の流路21a(酸化剤液21b)へ水素イオン(H+)が移動するように構成されているものである。そして、この燃料電池では、酸化剤液21bとして、過酸化水素水溶液が用いられる。
【0016】
本発明においては、上記第1及び第2の発明いずれにおいても、図1及び図2に各々示されるように、第1の溝11の内面(側面及び下面)及び第2の溝21の内面(側面及び下面又は上面)の上に、各々触媒12a,22aを有する集電体層12,22を設けることが集電性の観点から好ましく、更に、第1の流路11aを形成する電解質膜3の面の上及び第2の流路21aを形成する電解質膜3の面の上のいずれにも触媒及び集電体層を設けることなく、燃料液及び酸化剤液が各々電解質膜に直接接触するように構成することが特に好ましい。
【0017】
図4及び図5に、上記図1及び図2で示した態様の本発明の燃料電池におけるプロトン輸送の概念図を示す。図4はアノード側であり、
CH3OH+H2O→CO2+6H++6e-
で示される反応が進行する。また、図5はカソード側であり、
3H2O2+6H++6e-→6H2O
又は
3H2O2→3H2O+3/2O2
3/2O2+6H++6e-→3H2O
で示される反応が進行する。なお、図4及び図5において、12は集電体層(アノード)、12aはアノード触媒、22は集電体層(カソード)、22aはカソード触媒、3は電解質膜である。
【0018】
このような態様の燃料電池においては、従来の膜−電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)構造を採用していないため、特に高い集電効率を達成することができる点で好適である。また、集電体層に触媒を担持する場合においても、例えば電析を行うことで担持させることができ、触媒の担持も容易である。更に、触媒と燃料又は酸化剤を、溝内面全体で接触させることができるため、反応効率が向上する点においても好適である。
【0019】
なお、本発明の燃料電池は、上述した例に限定されるものではなく、例えば、上記第1の発明に係る燃料電池としては、図3に示されるものを挙げることもできる。即ち、この燃料電池は、基板1の上面に、互いに隣接して第1の溝11及び第2の溝21が形成され、この基板1上に、第1の溝11及び第2の溝21の双方の上面開口部を覆うように電解質膜3が積重されており、第1の溝11と電解質膜3とにより第1の流路11a、第2の溝21と電解質膜3とにより第2の流路21aが形成されている。また、この場合、第1の流路11aを形成する第1の溝11の内面(即ち、側面及び下面)上に触媒12aを担持した集電体層(アノード)12が形成され、一方、第2の流路21aを形成する電解質膜の面上に触媒22aを担持した集電体層(カソード)22が設けられている。更に、集電体層(アノード)12と集電体層(カソード)22とは、電気的に接続されて回路を形成しており、第1の流路11aに燃料液(この場合は、メタノール)11b、第2の流路21aに酸化剤液21bを各々流通させて、燃料液11bのアノード反応及び酸化剤液21bのカソード反応と共に、電解質膜3を介して第1の流路11a(燃料液11b)から第2の流路21a(酸化剤液21b)へ水素イオン(H+)が移動するように構成されている。そして、この燃料電池では、酸化剤液21bとして、過酸化水素水溶液が用いられる。
【0020】
本発明においては、基板としてSi基板を用いることができる。Si基板は、半導体製造において用いられるリソグラフィ、エッチング等の微細加工手法を用いることにより、基板上に微細な溝を精度よく形成することができることから好適である。なお、基板はSi基板に限定されるものではなく、強度があり、寸法安定性が優れている材料であれば使用可能であり、例えば、ポリアクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ABS樹脂若しくはこれらの混合物、又はこれらの材料に無機材料を充填してなる複合材料などの樹脂基板を用いることもできる。
【0021】
ここで、本発明の燃料電池の第1及び第2の溝の幅及び深さは、燃料電池の用途、大きさ及びその発電容量に応じて適宜変化させることができ、特に限定されるものではないが、小型の燃料電池とする場合には、例えば溝の幅が1000μm以下、特に100μm以下、かつ溝の深さが1000μm以下、特に100μm以下とすることが好ましい。なお、溝の幅及び深さの下限は特に限定されるものではないが、通常、各々10μm程度以上である。
【0022】
また、第1及び第2の溝の形状は、特に限定されるものではないが、異方性形状(角型)又は等方性形状(丸型、半円型)とすることができる。また、溝側壁は垂直の場合の他、溝の側壁をテーパ形状(溝を断面逆台形形状)として集電体層を蒸着により形成する場合における蒸着効率を向上させることもできる。
【0023】
更に、第1の溝と第2の溝との間の距離は、上記第1の発明の場合、プロトンの移動が平面移動となるので、距離が短いほうが好ましいが、あまり短いとプロトンの移動以外にメタノールの移動が生じるので、メタノール移動が生じないように適宜調整することができるが、微小化、集積化の観点から第1の溝と第2の溝との間の距離は、1000μm以下、特に100μm以下とすることが好ましい。一方、その下限は、特に限定されるものではないが、通常、溝の幅の1/10程度以上である。
【0024】
本発明においては、集電体層は、例えば、溝の内壁側から密着層であるチタン層と導電層である金層との積層体に、触媒を担持させたものが挙げられる。この触媒が担持される電極部分の金属としては、これに限定されるものではなく、集電機能を発揮する金属であれば、いずれも使用可能である。
【0025】
一方、集電体層に担持される触媒としては、アノード側には燃料の酸化触媒として機能する金属、カソード側には酸化剤の還元触媒として機能する金属が用いられる。このようなものとしては、白金又は白金合金が好ましく、白金合金としては、白金と、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、鉄、ニッケル、金、コバルト、パラジウム、タングステン、モリブデン及び錫からなる群より選択される1種又は2種以上の元素との白金合金を用いることができる。特に、高起電力及び高出力の燃料電池が得られる点から、アノード側に白金ルテニウム合金、カソード側に白金を用いることが好ましい。
【0026】
電解質膜としては、プロトン輸送材料が含浸されたPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなる固体高分子電解質膜が好ましい。このような電解質は適度な強度、伸度、弾性、硬さ、こわさを有しているので、本発明の燃料電池を構成する上で好適である。プロトン輸送材料としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系高分子が好ましい。固体高分子電解質膜としては、例えば、「フレオミン膜」(商標名:旭硝子社製)、「ナフィオン膜」(商標名:デュポン社製)等が好適に用いられる。なお、電解質膜の厚さは、通常50〜200μm程度である。
【0027】
また、第1の流路に流通させる燃料液としては、プロトンを供与する燃料液であれば限定されるものではないが、例えば、アルコール、特には、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブタノールから選ばれる1種若しくは2種以上の混合物又はそれらの水溶液を好適に挙げることができる。また、アセトン等のケトン、ジメチルエーテル等のエーテルを用いることも可能である。燃料液を水溶液で用いる場合の濃度は、特に限定されるものではないが、例えば、メタノール水溶液の場合、通常1〜3mol/Lである。
【0028】
一方、本発明においては、酸化剤液として過酸化水素水溶液を用いる。酸化剤液として過酸化水素水を用いることにより、飽和酸素溶存溶液を酸化剤液として用いた従来の燃料電池に比べて、酸化剤を高い効率でカソードに供給することができ、その結果、電流密度及び出力密度が格段に向上した従来にない極めて優れた燃料電池となる。
【0029】
この場合、過酸化水素水溶液中の過酸化水素濃度は0.01〜5mol/L、特に0.03〜3mol/Lであることが好ましい。過酸化水素濃度がこの範囲にある燃料電池において、特に高い電流密度と出力密度が達成できる。また、過酸化水素水溶液を流路に流通させる流速を、流路の断面積1mm2当たり0.1〜50ml/min、特に1〜20ml/minとすることが好適である。この流速が遅すぎると、カソードに十分な量の酸化剤が供給できない場合や、過酸化水素の分解により生成した酸素が流路内で気泡を形成して過酸化水素のカソードへの供給を妨げる場合があり、また、流速が速すぎると、流路内の内圧が上がって液漏れの原因となる場合がある。
【0030】
また、燃料液及び酸化剤液中においてプロトンの移動を促進させるために、硫酸等の電解質を添加することが好ましい。これにより、溝内部で発生したプロトンを電解質膜まで効率的に移動させることができる。なお、燃料液及び酸化剤液の流通には、ポンプ等を適宜使用すればよい。
【0031】
このようなセルを1単位として、複数のセルから燃料電池スタックを構成し、大容量又は長寿命の燃料電池を構成することができる。また、この際、同一基板上に複数の溝を形成し、これらを電気的に接合して燃料電池スタックを構成することで、簡易な製造方法で大容量又は長寿命の燃料電池を構成することも可能である。
【0032】
次に、本発明の燃料電池の製造工程の一例を、上記第1の発明の一例として例示した図1に示される燃料電池の場合を例として説明する。まず、図6(A)に示されるように、基板1の熱酸化により酸化膜1aを形成する(熱酸化工程)。次に、図6(B)及び(C)に示されるように、レジスト1bを使用してエッチングにより基板1上の酸化膜1aのパターニングを行う(リソグラフィ工程及び酸化膜エッチング工程)。次に、図6(D)及び(E)に示されるように、Deep−RIEレジストパターンを形成後、RIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)装置を用いて第1の溝11及び第2の溝21の形成を行い、その後レジストを剥離し、次いで熱酸化を行う(Siエッチング(溝形成)工程及び熱酸化工程)。
【0033】
次に、図7(F)〜(H)に示されるように、金属電極及び配線部のパターニングを行ってレジストパターン1cを形成し、集電体層20として、密着層としてのTiと集電体金属としてのAuとを真空エレクトロンビーム(EB)蒸着により蒸着させ、リフトオフによりパターン部以外のレジスト及び金属を除去する(リソグラフィ(ドライフィルム)工程、金属蒸着工程及びリフトオフ工程)。なお、金属蒸着工程において、基板を左右に揺動しているのは、溝の側壁への蒸着を良好とさせるためである。次に、図7(I)に示されるように、電極部となる溝内の集電体層12,22上に電析法により触媒12a,22aを担持する(触媒電析工程)。最後に、図7(J)に示されるように電解質膜3を積層し、セルを完成させる(電解質膜積重工程)。なお、基板と電解質膜は、両者を積重した状態で押圧することにより、適宜密着させることが可能である。
【0034】
このように基板に燃料液及び酸化剤液を流通させる溝を各々形成すると共に、電極を形成して電解質膜を載せるという簡易な構成で、超小型の燃料電池を提供することができる。Siの微細加工技術であるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を用いることで、公知の半導体製造と同様のプロセス技術により、燃料電池を製造することができるので、大量生産におけるコストの低廉化を図ることができる。また、同一基板平面に隣接した溝を形成してセルを構成すれば、製造が簡易となり、製造コストの低廉化を図ることもできる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0036】
[実施例1〜4、比較例1]
図1に示される構成の燃料電池を作成し、酸化剤液として過酸化水素水溶液(実施例)及び飽和酸素溶存水溶液(比較例)を各々用いて燃料電池の性能を評価した。結果を表1並びに図8及び9に示す。なお、設定条件は以下のとおりである。
【0037】
基板及び溝
基板:Si基板(2cm×2.5cm 厚さ200μm)
溝幅:100μm、溝深さ:50μm(溝断面積0.005mm2)
溝長さ:6mm
溝間距離:50μm
単電極面積0.0091cm2
電解質膜
電解質膜:デュポン社製ナフィオン112(厚さ51μm)
集電体及び触媒
アノード:Au集電体
+Pt−Ru触媒(Pt=1.5C/cm2+Pt−Ru=1C/cm2)
カソード:Au集電体
+Pt触媒(Pt=2C/cm2)
なお、触媒は電気めっき(パルスめっき)により形成した。
燃料液
2mol/L CH3OH+0.5mol/L H2SO4水溶液
流速:80μL/min
酸化剤液
H2O2(濃度は表1参照)+0.5mol/L H2SO4水溶液
O2(飽和)+0.5mol/L H2SO4水溶液
流速:80μL/min(溝断面積1mm2当たり16ml/minに相当)
【0038】
【表1】
【0039】
以上の結果から、酸化剤液として過酸化水素水溶液を用いた本発明の燃料電池が、酸化剤液として飽和溶存酸素水溶液を用いた従来のものに比べ、電流密度及び出力密度が格段に高く、極めて性能の高い燃料電池であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施例に係る燃料電池の断面図である。
【図2】本発明の他の実施例に係る燃料電池の断面図である。
【図3】本発明の別の実施例に係る燃料電池の断面図である。
【図4】アノード側のプロトン輸送の概念図である。
【図5】カノード側のプロトン輸送の概念図である。
【図6】燃料電池の製造工程の説明図である。
【図7】燃料電池の製造工程の説明図である。
【図8】実施例及び比較例における燃料電池の発電特性を示すグラフであり、電流密度に対して出力密度をプロットしたグラフ(I−P曲線)である。
【図9】実施例及び比較例における燃料電池の発電特性を示すグラフであり、電流密度に対してセル電圧をプロットしたグラフ(I−V曲線)である。
【図10】PEFCの燃料電池の模式図である。
【図11】従来のDMFCの燃料電池の模式図である。
【符号の説明】
【0041】
1 (第1の)基板
2 第2の基板
11 第1の溝
21 第2の溝
11a 第1の流路
21a 第2の流路
11b 燃料液
21b 酸化剤液
12 集電体体(アノード)
12a アノード触媒
22 集電体体(カソード)
22a カソード触媒
3 電解質膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣接して形成された第1及び第2の溝を有する一の基板上に、上記第1及び第2の溝双方の開口部を覆うように一の電解質膜を積重して各々第1及び第2の流路を形成し、上記第1の流路を形成する上記第1の溝の内面又は電解質膜の面の上、及び上記第2の流路を形成する上記第2の溝の内面又は電解質膜の面の上に、各々触媒を担持した集電体層を設けると共に、上記第1の流路に燃料液、上記第2の流路に酸化剤液を各々流通させて、上記燃料液のアノード反応及び上記酸化剤液のカソード反応と共に、上記電解質膜を介して上記第1の流路から上記第2の流路へ水素イオンが移動するように構成した燃料電池であって、上記酸化剤液が過酸化水素水溶液であることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
第1の溝を有する第1の基板と第2の溝を有する第2の基板とを、上記第1及び第2の溝を互いに対向させて一の電解質膜を介して積重して各々第1及び第2の流路を形成し、上記第1の流路を形成する上記第1の溝の内面又は電解質膜の面の上、及び上記第2の流路を形成する上記第2の溝の内面又は電解質膜の面の上に、各々触媒を担持した集電体層を設けると共に、上記第1の流路に燃料液、上記第2の流路に酸化剤液を各々流通させて、上記燃料液のアノード反応及び上記酸化剤液のカソード反応と共に、上記電解質膜を介して上記第1の流路から上記第2の流路へ水素イオンが移動するように構成した燃料電池であって、上記酸化剤液が過酸化水素水溶液であることを特徴とする燃料電池。
【請求項3】
上記第1の溝の内面及び上記第2の溝の内面の上に、各々触媒を有する集電体層を設けると共に、上記燃料液及び酸化剤液が各々電解質膜に直接接触するように構成してなることを特徴とする請求項1又は2記載の燃料電池。
【請求項4】
上記基板がSi基板又は樹脂基板であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の燃料電池。
【請求項5】
上記溝の幅が1000μm以下、かつ深さが1000μm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の燃料電池。
【請求項6】
上記触媒が金属触媒であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の燃料電池。
【請求項7】
上記金属が白金又は白金合金であることを特徴とする請求項6記載の燃料電池。
【請求項8】
上記燃料液がメタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブタノールから選ばれる1種若しくは2種以上の混合物又はそれらの水溶液であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の燃料電池。
【請求項9】
上記過酸化水素の濃度が0.01〜5mol/Lであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の燃料電池。
【請求項10】
上記過酸化水素水溶液を流路の断面積1mm2当たり0.1〜50ml/minの流速で流通させることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載の燃料電池。
【請求項1】
互いに隣接して形成された第1及び第2の溝を有する一の基板上に、上記第1及び第2の溝双方の開口部を覆うように一の電解質膜を積重して各々第1及び第2の流路を形成し、上記第1の流路を形成する上記第1の溝の内面又は電解質膜の面の上、及び上記第2の流路を形成する上記第2の溝の内面又は電解質膜の面の上に、各々触媒を担持した集電体層を設けると共に、上記第1の流路に燃料液、上記第2の流路に酸化剤液を各々流通させて、上記燃料液のアノード反応及び上記酸化剤液のカソード反応と共に、上記電解質膜を介して上記第1の流路から上記第2の流路へ水素イオンが移動するように構成した燃料電池であって、上記酸化剤液が過酸化水素水溶液であることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
第1の溝を有する第1の基板と第2の溝を有する第2の基板とを、上記第1及び第2の溝を互いに対向させて一の電解質膜を介して積重して各々第1及び第2の流路を形成し、上記第1の流路を形成する上記第1の溝の内面又は電解質膜の面の上、及び上記第2の流路を形成する上記第2の溝の内面又は電解質膜の面の上に、各々触媒を担持した集電体層を設けると共に、上記第1の流路に燃料液、上記第2の流路に酸化剤液を各々流通させて、上記燃料液のアノード反応及び上記酸化剤液のカソード反応と共に、上記電解質膜を介して上記第1の流路から上記第2の流路へ水素イオンが移動するように構成した燃料電池であって、上記酸化剤液が過酸化水素水溶液であることを特徴とする燃料電池。
【請求項3】
上記第1の溝の内面及び上記第2の溝の内面の上に、各々触媒を有する集電体層を設けると共に、上記燃料液及び酸化剤液が各々電解質膜に直接接触するように構成してなることを特徴とする請求項1又は2記載の燃料電池。
【請求項4】
上記基板がSi基板又は樹脂基板であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の燃料電池。
【請求項5】
上記溝の幅が1000μm以下、かつ深さが1000μm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の燃料電池。
【請求項6】
上記触媒が金属触媒であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の燃料電池。
【請求項7】
上記金属が白金又は白金合金であることを特徴とする請求項6記載の燃料電池。
【請求項8】
上記燃料液がメタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブタノールから選ばれる1種若しくは2種以上の混合物又はそれらの水溶液であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の燃料電池。
【請求項9】
上記過酸化水素の濃度が0.01〜5mol/Lであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の燃料電池。
【請求項10】
上記過酸化水素水溶液を流路の断面積1mm2当たり0.1〜50ml/minの流速で流通させることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載の燃料電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2007−73347(P2007−73347A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−259469(P2005−259469)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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