説明

燃料電池

【課題】陰イオン、特に塩化物イオンの影響による触媒金属の溶出に起因するセル電圧の低下を抑制する。
【解決手段】標準水素電極に対する電位が0.200V以上の特定部位に銀を含む陰イオン捕捉層を設ける。特定部位としては、ガス拡散層28を構成するアノードガス拡散基材、ガス拡散層32を構成するカソードガス拡散基材、セパレータ34、36、アノード22に供給される燃料ガスが流通するマニホールド、カソード24に供給される酸化剤ガスが流通するマニホールドのうち、少なくとも一カ所が挙げられる。これにより、たとえば、塩化物イオンと銀の反応によりAgClを生成させることにより、塩化物イオンを除去することができ、塩化物イオンの影響による触媒金属の流出を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素と酸素の電気化学反応により発電する燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー変換効率が高く、かつ、発電反応により有害物質を発生しない燃料電池が注目を浴びている。こうした燃料電池の一つとして、100℃以下の低温で作動する固体高分子形燃料電池が知られている。
【0003】
固体高分子形燃料電池は、電解質膜である固体高分子膜を燃料極と空気極との間に配した基本構造を有し、燃料極に水素を含む燃料ガス、空気極に酸素を含む酸化剤ガスを供給し、以下の電気化学反応により発電する装置である。
【0004】
燃料極:H2→2H+ + 2e- ・・・・(1)
空気極:1/2O2 + 2H+ + 2e- → H2O ・・・・(2)
アノードよびカソードは、それぞれ触媒層とガス拡散層が積層した構造からなる。各電極の触媒層が固体高分子膜を挟んで対向配置され、燃料電池を構成する。触媒層は、触媒を担持した炭素粒子がイオン交換樹脂により結着されてなる層である。ガス拡散層は酸化剤ガスや燃料ガスの通過経路となる。
【0005】
アノードにおいては、供給された燃料中に含まれる水素が上記式(1)に示されるように水素イオンと電子に分解される。このうち水素イオンは固体高分子電解質膜の内部を空気極に向かって移動し、電子は外部回路を通って空気極に移動する。一方、カソードにおいては、カソードに供給された酸化剤ガスに含まれる酸素が燃料極から移動してきた水素イオンおよび電子と反応し、上記式(2)に示されるように水が生成する。このように、外部回路では燃料極から空気極に向かって電子が移動するため、電力が取り出される(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−203569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の燃料電池では、大気中の水分や水道水等に含まれる塩化物イオンなどの陰イオンが、運転中に酸化剤として外部から取り込まれる空気の水分に不純物として混入することがある。触媒として使用される白金の溶解反応の酸化還元電位は、標準電極電位に対して1.118Vであり、通常の燃料電池反応では溶解反応はほとんど起こらない(式(3)参照)。しかし、塩化物イオンが混入すると、白金の溶解電位は0.758Vとなり、燃料電池反応時の電圧(たとえば、0.8V)により白金の溶出が容易に起こる(式(4)参照)。このように、触媒として使用される白金の溶出が加速されることによりセル電圧が低下する。
【0007】
Pt ⇔Pt2+ + 2e- E0=1.118V ・・・・(3)
Pt + 4Cl- ⇔ [PtCl4]2- + 2e- E0=0.758V ・・・・(4)
また、燃料電池が停止している間に、燃料電池スタックや、カソードに供給される空気などを加湿するためのバブラーは室温で放置されるため、菌が繁殖することがある。菌が繁殖すると、電解質膜の分解などが起こり、再発電後にセル性能が低下するという問題がある。なお、同様な現象は、触媒としてルテニウムなどの金属を用いた場合にも起こりうる。
【0008】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃料電池に混入した陰イオンによるセル電圧低下を抑制する技術の提供にある。また、本発明の他の目的は、燃料電池が停止している間に菌が繁殖することに起因するセル性能の劣化を抑制する技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様は、燃料電池である。当該燃料電池は、 燃料ガスまたは酸化剤ガスが流通する流通路において、陰イオンと反応することにより難溶性塩を作る物質を含む陰イオン捕捉層が設けられていることを特徴とする。ここで、難溶性塩とは、25℃における水への溶解度が0.5g/100g(水)以下の物質をいう。この態様において、陰イオン捕捉層が銀を含んでもよく、陰イオン捕捉層が設けられた特定部位の標準水素電極に対する電位が0.200V以上であってもよい。また、 上記態様において、特定部位が、セパレータ、ガス拡散基材またはマニホールドのうち、少なくとも1カ所であってもよい。
【0010】
この態様によれば、陰イオン補足層に陰イオンが難溶性塩として捕らえられることにより、陰イオンによる燃料電池への影響が抑制される。より具体的には、陰イオン補足層に銀を含ませることにより、陰イオン捕捉層に含まれる銀と陰イオンが反応することにより、陰イオンが除去されるので、陰イオンの影響による触媒金属の流出が抑制され、ひいてはセル電圧の低下が抑制される。
【0011】
また、特定部位がセパレータの場合において、陰イオン捕捉層がセパレータの溝部分に選択的に設けられていてもよい。この場合、陰イオン捕捉層の厚さが1〜100μmであってもよい。
【0012】
また、特定部位がガス拡散基材の場合において、陰イオン捕捉層に含まれる銀の含有量がガス拡散基材の重量に対して0.1wt%〜15wt%であってもよい。
【0013】
なお、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれうる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、燃料電池に混入した陰イオンによるセル電圧の低下を抑制することができる。また、燃料電池に混入した菌によるセルの劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0016】
(実施の形態)
図1は、実施の形態に係る電極触媒およびこれを用いた燃料電池10の構造を模式的に示す斜視図である。図2は、図1のA−A線上の断面図である。燃料電池10は、平板状のセル50を備え、このセル50の両側にはセパレータ34およびセパレータ36が設けらている。この例では一つのセル50のみを示すが、セパレータ34やセパレータ36を介して複数のセル50を積層して、燃料電池10が構成されてもよい。セル50は、固体高分子電解質膜20、アノード22およびカソード24とを有する。アノード22は、触媒層26およびガス拡散層28からなる積層体を有する。同様に、カソード24は、触媒層30およびガス拡散層32からなる積層体を有する。アノード22の触媒層26とカソード24の触媒層30は、固体高分子電解質膜20を挟んで対向するように設けられている。
【0017】
アノード22側に設けられるセパレータ34にはガス流路38が設けられている。燃料供給用のマニホールド(図示せず)から燃料ガスがガス流路38に分配され、ガス流路38を通じてセル50に燃料ガスが供給される。同様に、カソード24側に設けられるセパレータ36にはガス流路40が設けられている。酸化剤供給用のマニホールド(図示せず)から酸化剤ガスがガス流路40に分配され、ガス流路40を通じてセル50に酸化剤ガスが供給される。具体的には、燃料電池10の運転時、燃料ガス、例えば水素ガスがガス流路38内をガス拡散層28の表面に沿って上方から下方へ流通することにより、アノード22に燃料ガスが供給される。一方、燃料電池10の運転時、酸化剤ガス、たとえば、空気がガス流路40内をガス拡散層32の表面に沿って上方から下方へ流通することにより、カソード24に酸化剤ガスが供給される。これにより、セル50内で反応が生じる。ガス拡散層28を介して触媒層26に水素ガスが供給されると、ガス中の水素がプロトンとなり、このプロトンが固体高分子電解質膜20中をカソード24側へ移動する。このとき放出される電子は外部回路に移動し、外部回路からカソード24に流れ込む。一方、ガス拡散層32を介して触媒層30に空気が供給されると、酸素がプロトンと結合して水となる。この結果、外部回路においてはアノード22からカソード24に向かって電子が流れることとなり、電力を取り出すことができる。
【0018】
固体高分子電解質膜20は、湿潤状態において良好なイオン伝導性を示し、アノード22およびカソード24の間でプロトンを移動させるイオン交換膜として機能する。固体高分子電解質膜20は、含フッ素重合体や非フッ素重合体等の固体高分子材料によって形成され、例えば、スルホン酸型パーフルオロカーボン重合体、ポリサルホン樹脂、ホスホン酸基又はカルボン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体等を用いることができる。スルホン酸型パーフルオロカーボン重合体の例として、ナフィオン(デュポン社製:登録商標)112などがあげられる。また、非フッ素重合体の例として、スルホン化された、芳香族ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホンなどが挙げられる。
【0019】
アノード22を構成する触媒層26は、イオン交換樹脂と、触媒を担持した炭素粒子すなわち触媒担持炭素粒子とから構成される。イオン交換樹脂は、触媒を担持した炭素粒子と固体高分子電解質膜20を接続し、両者間においてプロトンを伝達する役割を持つ。イオン交換樹脂は、固体高分子電解質膜20と同様の高分子材料から形成されてよい。担持される触媒には、例えば白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウムなどの1種または2種を合金化したものなどがある。また触媒を担持する炭素粒子には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノオニオンなどがある。
【0020】
アノード22を構成するガス拡散層28は、アノードガス拡散基材、およびアノードガス拡散基材に塗布された微細孔層を有する。アノードガス拡散基材は、電子伝導性を有する多孔体で構成されることが好ましく、たとえばカーボンペーパー、カーボンの織布または不織布などを用いることができる。
【0021】
アノードガス拡散基材に塗布された微細孔層は、導電性粉末と撥水剤とを混練して得られるペースト状の混練物である。導電性粉末としては、たとえば、カーボンブラックを用いることができる。また、撥水剤としては、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)などのフッ素系樹脂を用いることができる。なお、撥水剤は結着性を有することがこのましい。ここで、結着性とは、粘りの少ないものやくずれやすいものをつなぎ合わせ、粘りのあるもの(状態)にすることができる性質をいう。撥水剤が結着性を有することにより、導電性粉末と撥水剤とを混練することにより、ペースト状の混練物を得ることができる。
【0022】
カソード24を構成する触媒層30は、イオン交換樹脂と、触媒を担持した炭素粒子すなわち触媒担持炭素粒子とから構成される。イオン交換樹脂は、触媒を担持した炭素粒子と固体高分子電解質膜20を接続し、両者間においてプロトンを伝達する役割を持つ。イオン交換樹脂は、固体高分子電解質膜20と同様の高分子材料から形成されてよい。担持される触媒には、例えば白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウムなどの1種または2種を合金化したものなどがある。また触媒を担持する炭素粒子には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノオニオンなどがある。
【0023】
カソード24を構成するガス拡散層32は、カソードガス拡散基材、およびカソードガス拡散基材に塗布された微細孔層を有する。カソードガス拡散基材は、電子伝導性を有する多孔体で構成されることが好ましく、たとえばカーボンペーパー、カーボンの織布または不織布などを用いることができる。
【0024】
カソードガス拡散基材に塗布された微細孔層は、導電性粉末と撥水剤とを混練して得られるペースト状の混練物である。導電性粉末としては、たとえば、カーボンブラックを用いることができる。また、撥水剤としては、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)などのフッ素系樹脂を用いることができる。なお、撥水剤は結着性を有することがこのましい。ここで、結着性とは、粘りの少ないものやくずれやすいものをつなぎ合わせ、粘りのあるもの(状態)にすることができる性質をいう。撥水剤が結着性を有することにより、導電性粉末と撥水剤とを混練することにより、ペースト状の混練物を得ることができる。
【0025】
本実施の形態の燃料電池10では、標準水素電極に対する電位が0.200V以上の特定部位に銀を含む陰イオン捕捉層が設けられている。
【0026】
陰イオン捕捉層は、銀のみで形成されていてもよく、銀以外の物質、たとえば、亜鉛、鉛、マグネシウム、鉄 を含んでいてもよい。陰イオン捕捉層が捕捉する陰イオンとしては、フッ化物イオン(F-)、塩化物イオン(Cl-)、臭素イオン(Br-)、ヨウ素イオン(I-)などのハロゲンイオン、硫黄イオン(S-)、シアンイオン(CN-)、硝酸イオン(NO3-)、亜硝酸イオン(NO2-)、硫酸イオン(SO42-)などが挙げられる。
【0027】
標準水素電極に対する電位が0.200V以上の特定部位としては、アノードガス拡散基材、カソードガス拡散基材、セパレータ、マニホールドが挙げられる。
【0028】
これによれば、標準水素電極に対する電位が0.200V以上の特定部位において、陰イオン捕捉層に含まれる銀の存在下では、下記式(5)の反応が進行する。
【0029】
Ag + Cl- →AgCl + e- E0=0.222V ・・・(5)
すなわち、塩化物イオンが銀と反応して難溶性塩のAgClとなることにより、塩化物イオンが除去される。これにより、触媒として白金を使用した場合に、白金の溶出が生じにくくなり、白金溶出によるセル電圧の低下が抑制される。なお、特定部位に銀を含む陰イオン捕捉層を配置することは、他の臭素イオン、ヨウ素イオンなどのハロゲンイオンや硫黄イオン、シアンイオンにも有効である。なお、塩化物イオンなどの陰イオンは、空気が供給されるカソード側に混入しやすいため、陰イオン捕捉層をカソード側に設けることが好ましい。
【0030】
また、銀は菌繁殖抑制効果を有するため(たとえば、特開平6−3017参照)、燃料電池を長期間停止している間に、燃料電池中に菌が繁殖することが抑制される。この場合においても、菌は空気が残存するカソード側で繁殖が高いため、カソード側の特定部位に陰イオン捕捉層を設けることが効率的であり、コストを低減することができる。
【0031】
ここで、各特定部位における陰イオン捕捉層の形態について説明する。
【0032】
(セパレータ)
図3は、セパレータ36に陰イオン捕捉層100を設けた場合を示す図である。セパレータ36に陰イオン捕捉層100を設ける場合には、図3に示すように、ガス流路40の溝部分のみに陰イオン捕捉層100が設けられていることが望ましい。リブ部分110に陰イオン捕捉層が存在すると、運転時間が長くなるにつれて、銀と塩化物イオンとの反応により、比抵抗の大きい塩化銀が生成する。塩化銀がリブ部分に生成すると、セパレータ36とカソードガス拡散基材との間の界面抵抗が増加し、セル電圧が減少してしまう。なお、図3に示した例では、陰イオン捕捉層100が、ガス流路40の溝部分において全面に設けられているが、陰イオン捕捉層100が、ガス流路40の底部のみ、側部のみ、または上流側、たとえば上流側のみに設けられていてもよい。
【0033】
セパレータ36に陰イオン捕捉層100を設ける手法は特に限定されず、電解めっき、スパッタなどが適用可能である。電解めっきを用いる場合には、テーピングマスクによりリブ部分110にマスクを施すことにより、ガス流路40の溝部分のみに部分めっきを行うことができる。具体的には、電解銀めっき浴中にセパレータ36(ステンレスセパレータまたはカーボンセパレータ)を浸漬し、電流密度50A/cm、25℃で30秒間電解めっきを行う。本条件で得られた銀めっきの膜厚は約30μmであった。陰イオン捕捉層100の厚さは、電解時間および電流密度、温度によってコントロールが可能であり、厚さを1μm以上にすることで塩化物イオンに対して耐久性のあるセパレータを得ることができる。一方、陰イオン捕捉層100の厚さが100μmより厚くなると、陰イオンの捕捉に寄与しない銀の量が増えるため、コストが増加する。
【0034】
(ガス拡散基材)
カソードガス拡散基材に陰イオン捕捉層を設ける場合には、カソードガス拡散基材に撥水性を付与するためのテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)に、銀コロイド粒子(たとえば、99.9%、325μmメッシュ、ニラコ製)を混ぜて含浸する。図4は、ガス拡散基材に対する銀の添加量(wt%)を変えて、セル電圧および塩化物イオン添加時の電圧低下を測定した結果を示すグラフである。塩化物として100ppmのHClをガス拡散基材に添加した。銀粒子の含浸量は、カソードガス拡散基材の重さに対して、0.1wt%〜15wt%までの範囲が望ましい。銀粒子の含浸量が0.1wt%より少ないと、塩化物イオン添加による電圧低下の抑制効果が認められず、銀粒子の含浸量が15wt%より多いと、相対的に親水性の強い銀によってガス拡散性の低下が認められた。銀粒子の含浸量は、より好ましくは、1wt%〜5wt%であり、2wt%が最も良い性能を示した。
【0035】
(マニホールド)
通常、マニホールドは、セパレータの周辺領域に設けられた貫通孔によって形成されている。このため、マニホールドに陰イオン捕捉層を設ける場合には、セパレータに陰イオン捕捉層を設ける処理と同様に、テーピングマスクを用いて貫通孔以外にマスクを施した状態で銀電解めっきを行うことができる。
【0036】
(その他の例)
なお、上述した特定部位は、外部から電圧を印加しない状態で標準水素電極に対する電位が0.200V以上となる部位であるが、外部から電圧を印加することにより、標準水素電極に対する電位が0.200V以上としてもよい。たとえば、マニホールドに連通する酸化剤ガスの配管に、銀を含むフィルターを設け、このフィルターに0.200V以上の電圧を印加してもよい。これによれば、酸化剤が燃料電池に供給される前に、酸化剤に混入した塩化物イオンなどを除去することができる。
【0037】
この他、上述したガス拡散基材の例では、カーボンペーパーなどの多孔体に銀が保持されているが、ガス拡散基材そのものを銀の多孔質体としてもよい。
【0038】
上述した燃料電池の用途は、特に限定されず、家庭用、自動車用、または携帯機器用の電源として使用することができる。
【0039】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施の形態に係る燃料電池の構造を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線上の断面図である。
【図3】セパレータに陰イオン捕捉層を設けた場合を示す図である。
【図4】ガス拡散基材に対する銀の添加量(wt%)を変えて、セル電圧および塩化物イオン添加時の電圧低下を測定した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0041】
10 燃料電池、20 固体高分子電解質膜、22 アノード、24 カソード、26、30 触媒層、28、32 ガス拡散層、34、36 セパレータ、50 セル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスまたは酸化剤ガスが流通する流通路において、陰イオンと反応することにより難溶性塩を作る物質を含む陰イオン捕捉層が設けられていることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記陰イオン捕捉層が銀を含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記陰イオン捕捉層が設けられた特定部位の標準水素電極に対する電位が0.200V以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記特定部位が、セパレータ、ガス拡散基材またはマニホールドのうち、少なくとも1カ所であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記特定部位がセパレータの場合において、前記陰イオン捕捉層が前記セパレータの溝部分に選択的に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記陰イオン捕捉層の厚さが1〜100μmであることを特徴とする請求項5に記載の燃料電池。
【請求項7】
前記特定部位がガス拡散基材の場合において、前記陰イオン捕捉層に含まれる銀の含有量が前記ガス拡散基材の重量に対して0.1wt%〜15wt%であることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−177132(P2008−177132A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11915(P2007−11915)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)(平成18年度 新エネルギー・産業技術総合開発機構、「固体高分子形燃料電池実用化戦略的技術開発事業/要素技術開発/定置用燃料電池システムの低コスト化・高性能化のための電池スタック主要部材に関する基盤研究開発(電池スタック主要部材の高信頼性・高ロバスト化に関する研究開発)」、産業活力再生特別措置法30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】