説明

燃料電池

【課題】燃料電池スタックにおいて、シールガスケット一体型MEAの電解質膜とシール部材の剥離を防止する技術を提供することを目的とする。
【解決手段】シールガスケット一体型MEA45Aは、接合部材458を備える。複数個の接合部材458Aは、それぞれ円柱状を成し、MEA部451の周縁部に均等な間隔で配列されている。また、接合部材458Aは、MEA部451を貫通している。そして、シールガスケット450は、MEA部451の周縁部と、その周縁部に配設された複数の接合部材458Aとを覆うような状態で、MEA部451の外周に一体的に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関するものであり、特に、高分子電解質膜の両面に触媒電極が形成されたMEA(Membrance Electrode Assembly:膜電極接合体)とシール部材とを一体的に形成し、セパレータを介在させて積層したスタック構造を有する燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の高分子電解質膜型燃料電池において、高分子電解質膜の両面に触媒電極が形成されたMEA方式が採用されている。そして、燃料ガスおよび酸化剤ガスのガス流路をそれぞれ各面に設けたセパレータと、MEAとを交互に積層した積層構造を有する燃料電池がある。
このような燃料電池において、燃料ガスや酸化剤ガスの漏洩を防止するために、MEAとシール部材とを一体的に形成する技術が提案されている(例えば、特許文献1。)
【0003】
【特許文献1】特開2001−102072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池の運転時、水素極で水素ガスが水素イオン(H)と電子(e)に分かれ、水素イオンが高分子電解質膜内を水素極側から酸素極側へ移動する。ここで、水素イオンが高分子電解質膜内を移動するためには、水が必要である。そのため、高分子電解質膜が十分な水素イオンの導電性を確保するために、高分子電解質膜は、膜中に十分な量の水分が含有されるように管理されている。従って、燃料電池の運転時は、高分子電解質膜は、十分な水分を含有している。しかしながら、燃料電池の停止時にまで、高分子電解質膜が多量の水分を含有していると、例えば、低温始動する際に、電解質膜が凍結することにより燃料電池が運転できない場合がある。そのため、燃料電池の停止時には、電解質膜をパージすることにより乾燥させている。このように、燃料電池の運転および停止に伴い、高分子電解質膜の湿潤状態が変化するため、高分子電解質膜は収縮する。
また、燃料電池の運転時には、燃料電池の自己発熱により高分子電解質膜の温度が燃料電池の停止時に比べて上昇する。このように、燃料電池の運転および停止に伴う高分子電解質膜の温度変化によってもまた、高分子電解質膜は収縮する。
【0005】
一方、シール部材は、主にゴム等の弾性を有する材料を用いて形成されるが、形成時の成型温度と常温との差によって収縮する。また、ゴム等は硬化過程において、高分子鎖間の化学結合形成(架橋)によって架橋構造が形成されるが、その架橋反応によってもシール部材は収縮する。
【0006】
このように、高分子電解質膜とシール部材は、共に収縮し得る。ここで、電解質膜の収縮率は、シール部材の収縮率より大きいため、MEAとシール部材を一体的に形成した場合であっても、シール部材と高分子電解質膜の密着部位が剥がれることがある。そうすると、燃料ガスと酸化剤ガスがクロスリークする恐れがある。
燃料ガスと酸化剤ガスがクロスリークすると、燃料ガスとして使用される水素が触媒で反応せず、直接酸素と反応してしまうため、水素の電気化学反応効率が悪くなり、発電効率が悪くなるという問題があった。
【0007】
従って、本発明は、上述の従来技術の問題点を解決し、電解質膜とシール部材の剥離を防止する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の燃料電池は、少なくとも高分子電解質膜および該高分子電解質膜の両面に形成された電極を有するMEA(Membrance Electrode Assembly)を、セパレータを介在させて複数積層したスタック構造を有する燃料電池であって、少なくとも前記高分子電解質膜の周縁部の少なくとも一部を貫通する複数の電解質膜貫通部を有する接合部材と、少なくとも前記接合部材の一部と、前記高分子電解質膜の前記周縁部とを覆うように、前記MEAと一体的に形成されるシール部材とを備えることを要旨とする。
【0009】
本明細書中において、MEA(Membrance Electrode Assembly)とは、少なくとも高分子電解質膜(以下、単に「電解質膜」という。)と、電解質膜の両面に形成された電極とを有する膜電極接合体をいう。さらに、ガス拡散性または集電性を確保するために、電極上に多孔質な導電性部材からなる拡散層を有するものであってもよい。
【0010】
また、高分子電解質膜の周縁部とは、縁だけでなく、縁を含む幅をもった範囲をいう。すなわち、接合部材を高分子電解質膜の周縁に沿って電解質膜の端に配置してもよい。また、例えば、高分子電解質膜の周縁部に、燃料ガス、酸化剤ガス、または冷却媒体が流通することが可能なマニホールドを形成する複数の貫通孔を備える場合に、それら貫通孔が高分子電解質膜の周縁に沿って端に配置され、さらに、その内側に接合部材を配置するようにしてもよい。
【0011】
また、接合部材の電解質膜貫通部は、電解質膜のみを貫通するものであってもよいし、電解質膜および電極を貫通するものであってもよい。例えば、MEAにおいて電極を電解質膜より小さく形成し、電解質膜の周縁部が電極から突出するように電極を配置し、露出した電解質膜の周縁部を電解質膜貫通部が貫通するようにしてもよい。この場合に、シール部材が接合部材と電解質膜のみを覆うように、MEAと一体的に形成されると、シール部材を形成する際の温度変化等により、電極が変形したり破損したりするのを防止することができ、好適である。
【0012】
また、シール部材は、少なくとも接合部材の一部を覆うように形成されるため、接合部材は、全体がシール部材に内包されてもよいし、例えば、電解質膜貫通部がシール部材をも貫通するように形成されてもよい。
【0013】
上記したように、本発明の燃料電池によれば、接合部材が電解質膜を貫通した状態で、シール部材が、電解質膜と一体的に形成されている。そのため、シール部材と電解質膜とは接着され、さらに、シール部材と電解質膜とは接合部材によって接合される。従って、シール部材と電解質膜とがそれぞれ収縮しようとしても、シール部材と電解質膜とは接合部材によって接合されているため、シール部材および電解質膜の収縮は制限され、接着されたシール部材と電解質膜との剥離を防止することができる。よって、燃料ガスと酸化剤ガスがクロスリークするのを防止することができるため、燃料ガスと酸化剤ガスが直接反応することによって異常燃焼を生じるのを防止することができる。また、燃料ガスと酸化剤ガスが直接反応することによって、燃料ガスの触媒における反応効率が低下し、発電効率が低下するのを防止することができる。
【0014】
また、本発明の燃料電池において、前記接合部材は、枠状に一周するように形成されたフレーム部をさらに備え、前記電解質膜貫通部は、前記フレーム部から突設されているものとしてもよい。
【0015】
上記したように、本発明の燃料電池によれば、電解質膜の周縁部を枠状に一周するように形成されたフレーム部と、フレーム部から突設された電解質膜貫通部を有する接合部材によって、電解質膜とシール部材とが接合されている。そのため、電解質膜の全周にわたり、電解質膜とシール部材との剥離を防止することができる。
【0016】
また、本発明の燃料電池において、前記接合部材は、少なくとも前記フレーム部が、前記シール部材より剛性が高い高剛性材料より成るものとしてもよい。
【0017】
シール部材は、シール性能を得るために、ゴム等のヤング率の低い(すなわち、剛性が低く、柔らかい)材料を用いることが多い。そして、シール部材を形成する際に、例えば、射出成型によると、成型の際の温度変化や架橋反応により、シール部材が波打つように変形することがある。このような場合に、本発明の燃料電池によれば、シール部材は、接合部材を覆うように形成され、接合部材のフレーム部はシール部材より剛性が高いため、シール部材の収縮が制限され、上述のようなシール部材の変形を抑制することができる。
【0018】
上記燃料電池において、前記シール部材は、前記MEAが前記セパレータを介して複数積層された場合に、燃料ガス、酸化剤ガス、または冷却媒体が流通することが可能なマニホールドを形成する複数の貫通孔を備え、前記フレーム部は、前記貫通孔が、前記フレーム部の外周に位置するように、形成されるものとしてもよい。
【0019】
上記したように、本発明の燃料電池によれば、シール部材に設けられた、燃料ガス、酸化剤ガス、または冷却媒体が流通することが可能なマニホールドを形成する複数の貫通孔は、フレーム部の外周に位置する。フレーム部を、MEAの周縁部のうち、端に配設すると、MEAの外周にシール部材を形成することができるようになり、MEAの外形をシール部材より小さく形成することができる。従って、高価なMEAを小さくすることができるようになり、燃料電池のコストを低減することができる。
【0020】
また、本発明の燃料電池において、少なくとも前記フレーム部は、前記シール部材に内包されているものとしてもよい。
【0021】
上記したように、本発明の燃料電池によれば、少なくともフレーム部がシール部材に内包されている。そして、シール部材が、接合部材の配設されたMEAと一体的に形成される際に、接合部材のフレーム部は、シール部材と接着される。そのため、フレーム部がシール部材に内包されず、シール部材から突出した状態に接合部材が設けられた場合と比較すると、例えば、フレーム部が、シール部材と接着されていないことにより、接合部材がシール部材および電解質膜から抜け落ちたりすることが防止され、電解質膜とシール部材の接合を、さらに強固にすることができる。
【0022】
また、本発明の燃料電池によれば、前記電解質膜貫通部は、少なくとも前記高分子電解質膜および前記電極を貫通し、かつ、絶縁性を有する材料から成るものとしてもよい。
【0023】
上記したように、本発明の燃料電池によれば、接合部材の電解質膜貫通部は、少なくとも電解質膜および電極を貫通し、さらに、拡散層をも貫通してもよい。MEAにおいて、電解質膜、電極および拡散層を同じ大きさに形成して積層する場合に好適である。この場合、電極および拡散層は、導電性部材であるため、接合部材の電解質膜貫通部を絶縁性にすることにより、電極で発生した電気の短絡を防止することができる。
【0024】
また、本発明の燃料電池によれば、前記接合部材は、前記MEAを、前記セパレータを介在させて積層する際に、前記セパレータの周縁部の少なくとも一部に嵌合する嵌合部をさらに備え、前記電解質膜貫通部および前記嵌合部の間が絶縁されているものとしてもよい。
【0025】
上記したように本発明の燃料電池によれば、MEAを、セパレータを介在させて積層する際に、接合部材の嵌合部をセパレータの周縁部の一部に嵌合させることができる。接合部材の嵌合部を、セパレータの周縁部の一部に嵌合させることにより、MEAとセパレータの面方向の位置は固定されるため、簡単に精度良く、MEAおよびセパレータを積層することができ、容易にスタック構造の燃料電池を作ることができる。すなわち、接合部材は、上述したように、シール部材と電解質膜の剥離を防止すると共に、MEAとセパレータの面方向の位置決めを容易にする効果を奏する。
また、セパレータは、導電性の材料を用いるため、接合部材の嵌合部がセパレータの周縁部と嵌合する場合に、電解質膜貫通部と嵌合部との間が絶縁されていないと、発生した電気が短絡することがある。このような場合に、接合部材の電解質膜貫通部と嵌合部との間が絶縁されていることにより、発生した電気が短絡するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1の実施例:
A1.燃料電池スタックの構成:
A2.燃料電池モジュール:
A2.1.セパレータ:
A2.2.シールガスケット一体型MEA:
B.第2の実施例:
C.第3の実施例:
D.第4の実施例:
E.変形例:
【0027】
A.第1の実施例:
A1.燃料電池スタックの構成:
図1は、本発明の第1の実施例としての燃料電池スタック100の概略構成を示す斜視図である。この燃料電池スタック100は、水素と酸素との電気化学反応によって発電するセルを、セパレータを介在させて、複数積層したスタック構造を有している。各セルは、後述するように、プロトン伝導性を有する電解質膜を挟んで、アノードと、カソードとを配置した構成となっている。本実施例では、電解質膜として、固体高分子膜を用いるものとした。電解質として、固体酸化物等、他の電解質を用いるものとしてもよい。なお、セルの積層数は、燃料電池スタック100に要求される出力に応じて任意に設定可能である。
【0028】
燃料電池スタック100は、一端から、エンドプレート10、絶縁板20、集電板30、複数の燃料電池モジュール40、集電板50、絶縁板60、エンドプレート70の順に積層することによって構成されている。これらには、燃料電池スタック100内に、燃料ガスとしての水素や、酸化剤ガスとしての空気や、冷却水を流すための図示しない供給口や、排出口や、流路が設けられている。水素は、図示しない水素タンクから供給される。また、空気や、冷却水は、図示しないポンプによって加圧されて供給される。燃料電池モジュール40は、後述する膜電極接合体(以下、「MEA」という。)およびシールガスケットを一体的に備えるシールガスケット一体型MEA45Aと、セパレータ41と、によって構成されている。この燃料電池モジュール40、および、シールガスケット一体型MEA45Aについては、後述する。
【0029】
燃料電池スタック100には、また、図示するように、テンションプレート80が備えられている。燃料電池スタック100には、スタック構造のいずれかの箇所における接触抵抗の増加等による電池性能の低下を抑制し、また、シールガスケット一体型MEA45Aのシール性能を十分に得るために、スタック構造の積層方向に押圧力が加えられ、テンションプレート80をボルト82によって燃料電池スタック100の両端のエンドプレート10,70に固定することによって、各燃料電池モジュール40は、積層方向に所定の締結力で締結されている。
【0030】
なお、エンドプレート10、70、および、テンションプレート80は、剛性を確保するため、鋼等の金属によって形成されている。絶縁板20、60は、ゴムや、樹脂等の絶縁性部材によって形成されている。集電板30、50は、緻密質カーボンや、銅板などのガス不透過な導電性部材によって形成されている。集電板30、50には、それぞれ図示しない出力端子が設けられており、燃料電池スタック100で発電した電力を出力可能となっている。
【0031】
A2.燃料電池モジュール:
先に説明したように、燃料電池モジュール40は、セパレータ41と、シールガスケット一体型MEA45Aとによって構成されている。以下、セパレータ41、および、シールガスケット一体型MEA45Aについて説明する。
【0032】
A2.1.セパレータ:
図2は、セパレータ41の構成部品、および、セパレータ41の平面図である。本実施例におけるセパレータ41は、それぞれ複数の貫通孔が設けられた3枚の金属製の平板、すなわち、カソード対向プレート42と、中間プレート43と、アノード対向プレート44とから構成されている。そして、セパレータ41は、カソード対向プレート42と、中間プレート43と、アノード対向プレート44とを、この順に重ね合わせ、ホットプレス接合することによって作製されている。本実施例では、カソード対向プレート42と、中間プレート43と、アノード対向プレート44とは、同一の四角形の形状を有するステンレス鋼製の平板を用いるものとした。カソード対向プレート42と、中間プレート43と、アノード対向プレート44として、ステンレス鋼の代わりに、チタンやアルミニウム等、他の金属製の平板を用いるものとしてもよい。また、中間プレート43として、樹脂製のプレートを用いるものとしてもよい。
【0033】
図2(a)は、シールガスケット一体型MEA45Aのカソード側の面と当接するカソード対向プレート42の平面図である。図示するように、カソード対向プレート42は、空気供給用貫通孔422aと、複数の空気供給口422iと、複数の空気排出口422oと、空気排出用貫通孔422bと、水素供給用貫通孔424aと、水素排出用貫通孔424bと、冷却水供給用貫通孔426aと、冷却水排出用貫通孔426bとを備えている。本実施例では、空気供給用貫通孔422aと、空気排出用貫通孔422bと、水素供給用貫通孔424aと、水素排出用貫通孔424bと、冷却水供給用貫通孔426aと、冷却水排出用貫通孔426bとは、ほぼ矩形であり、複数の空気供給口422iと、複数の空気排出口422oとは、直径が同一の円形であるものとした。
【0034】
図2(b)は、シールガスケット一体型MEA45Aのアノード側の面と当接するアノード対向プレート44の平面図である。図示するように、アノード対向プレート44は、空気供給用貫通孔442aと、空気排出用貫通孔442bと、水素供給用貫通孔444aと、複数の水素供給口444iと、複数の水素排出口444oと、水素排出用貫通孔444bと、冷却水供給用貫通孔446aと、冷却水排出用貫通孔446bとを備えている。本実施例では、空気供給用貫通孔442aと、空気排出用貫通孔442bと、水素供給用貫通孔444aと、水素排出用貫通孔444bと、冷却水供給用貫通孔446aと、冷却水排出用貫通孔446bとは、ほぼ矩形であり、複数の水素供給口444iと、複数の水素排出口444oとは、直径が同一の円形であるものとした。
【0035】
図2(c)は、中間プレート43の平面図である。図示するように、中間プレート43は、空気供給用貫通孔432aと、空気排出用貫通孔432bと、水素供給用貫通孔434aと、水素排出用貫通孔434bと、複数の冷却水流路形成用貫通孔436とを備えている。そして、空気供給用貫通孔432aには、空気供給用貫通孔432aからカソード対向プレート42の複数の空気供給口422iに、それぞれ空気を流すための複数の空気供給用流路形成部432cが設けられている。また、空気排出用貫通孔432bには、カソード対向プレート42の複数の空気排出口422oから空気排出用貫通孔432bに空気を流すための複数の空気排出用流路形成部432dが設けられている。また、水素供給用貫通孔434aには、水素供給用貫通孔434aからアノード対向プレート44の複数の水素供給口444iに、それぞれ水素を流すための複数の水素供給用流路形成部432eが設けられている。また、水素排出用貫通孔434bには、アノード対向プレート44の複数の水素排出口444oから水素排出用貫通孔434bに水素を流すための複数の水素排出用流路形成部432fが設けられている。
【0036】
図2(d)は、セパレータ41の平面図である。ここでは、アノード対向プレート44側から見た平面図を示した。
【0037】
図から分かるように、アノード対向プレート44と、中間プレート43と、カソード対向プレート42において、空気供給用貫通孔442aと、空気供給用貫通孔432aと、空気供給用貫通孔422aとは、それぞれ同じ位置に形成されている。また、空気排出用貫通孔442bと、空気排出用貫通孔432bと、空気排出用貫通孔422bも、それぞれ同じ位置に形成されている。また、水素供給用貫通孔444aと、水素供給用貫通孔434aと、水素供給用貫通孔424aも、それぞれ同じ位置に形成されている。また、水素排出用貫通孔444bと、水素排出用貫通孔434bと、水素排出用貫通孔424bも、それぞれ同じ位置に形成されている。
【0038】
また、アノード対向プレート44と、カソード対向プレート42において、冷却水供給用貫通孔446aと、冷却水供給用貫通孔426aとは、それぞれ同じ位置に形成されている。また、冷却水排出用貫通孔446bと、冷却水排出用貫通孔426bも、それぞれ同じ位置に形成されている。
【0039】
また、中間プレート43において、複数の冷却水流路形成用貫通孔436は、それぞれ、その一端が、アノード対向プレート44の冷却水供給用貫通孔446a、および、カソード対向プレート42の冷却水供給用貫通孔426aと重なるとともに、その他端が、アノード対向プレート44の冷却水排出用貫通孔446b、および、カソード対向プレート42の冷却水排出用貫通孔426bと重なるように形成されている。
【0040】
なお、中間プレート43における空気供給用流路形成部432c、空気排出用流路形成部432d、水素供給用流路形成部432e、水素排出用流路形成部432fの幅は、それぞれ、カソード対向プレート42の空気供給口422i、空気排出口422o、アノード対向プレート44の水素供給口444i、水素排出口444oの直径よりも大きく設定されている。こうすることによって、カソード対向プレート42と、中間プレート43と、アノード対向プレート44とを重ね合わせて接合したときに、これらがわずかにずれても、所望の経路で空気や水素を流すことができる。
【0041】
このセパレータ41において、水素と、空気と、冷却水の流れは、以下の通りである。すなわち、カソード対向プレート42の水素供給用貫通孔424a、中間プレート43の水素供給用貫通孔434a、アノード対向プレート44の水素供給用貫通孔444aを流れる水素は、中間プレート43の水素供給用貫通孔434aから分岐して、複数の水素供給用流路形成部432eを通り、アノード対向プレート44の複数の水素供給口444iから、後述するシールガスケット一体型MEA45AのMEA部451のアノードに対して垂直な方向に供給される。そして、アノードから排出されるアノードオフガスは、アノード対向プレート44の複数の444o、および、中間プレート43の水素排出用流路形成部432fを通って、排出される。
【0042】
また、アノード対向プレート44の空気供給用貫通孔442a、中間プレート43の空気供給用貫通孔432a、カソード対向プレート42の空気供給用貫通孔422aを流れる空気は、中間プレート43の空気供給用貫通孔432aから分岐して、空気供給用流路形成部432cを通り、カソード対向プレート42の複数の空気供給口422iから、後述するシールガスケット一体型MEA45AのMEA部451のカソードに対して垂直な方向に供給される。そして、カソードから排出されるカソードオフガスは、カソード対向プレート42の複数の空気排出口422o、および、中間プレート43の432dを通って、排出される。
【0043】
また、アノード対向プレート44の冷却水供給用貫通孔446a、中間プレート43の複数の冷却水流路形成用貫通孔436の一端、カソード対向プレート42の冷却水供給用貫通孔426aを流れる冷却水は、中間プレート43の冷却水流路形成用貫通孔436から分岐して、中間プレート43内を通り、冷却水流路形成用貫通孔436の他端から排出される。
【0044】
A2.2.シールガスケット一体型MEA:
図3は、シールガスケット一体型MEA45Aを示す説明図である。図3(a)に、シールガスケット一体型MEA45Aのカソード側から見た平面図を示した。また、図3(b)に、図3(a)におけるA−A断面図を示した。そして、図3(c)に図3(b)におけるB−B断面図を示した。シールガスケット一体型MEA45Aの外形は、セパレータ41の外形の四隅をそれぞれ切り欠いた形状を成している。
【0045】
MEA部451は、図3(c)に示したように、平面略正方形状を成し、図3(b)に示したように、電解質膜46の一方の面に、カソード側触媒電極47cと、カソード用拡散層48cとをこの順に積層させ、他方の面に、アノード側触媒電極47aと、アノード用拡散層48aとを、この順にそれぞれ積層させた膜電極接合体(MEA)である。本実施例では、アノード用拡散層48a、および、カソード用拡散層48cとして、カーボン多孔体を用いるものとした。
【0046】
シールガスケット450には、図3(a)に示したように、セパレータ41と同様に、空気供給用貫通孔452aと、水素供給用貫通孔454aと、空気排出用貫通孔452bと、水素排出用貫通孔454bと、冷却水供給用貫通孔456aと、冷却水排出用貫通孔456bとが形成されている。そして、図3(b)に示すように、これら各貫通孔、および、MEA部451の周囲には、それぞれ凸状のシール部459が一体的に設けられており、図3(a)中に細線で示したシールラインSLが形成されている。本実施例では、シールガスケット450として、シリコーンゴムを用いるものとした。
【0047】
接合部材458Aは、図3(b)および(c)に示すように、円柱状を成す。そして、図3(c)に示すように、複数個の接合部材458Aは、MEA部451の周縁部に均等な間隔で配列されている。また、図3(b)に示すように、接合部材458Aは、MEA部451を貫通している。そして、シールガスケット450は、MEA部451の周縁部と、その周縁部に配設された複数の接合部材458Aとを覆うような状態で、MEA部451の外周に一体的に形成されている。ここで、図3(b)に示すように、接合部材458Aは、シールガスケット450のシール部459の形成するシールラインSLに相当する位置に配設されている。なお、本実施例において、接合部材458Aは、シールガスケット450のヤング率より高いヤング率を有する高剛性材料であって、絶縁性を有する材料を用いるものとする。例えば、エポキシ樹脂、フェノール、ポリスチレン、尿素樹脂等の熱硬化性樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PES(ポリエーテルスルホン)等の熱可塑性樹脂を用いることができる。このような絶縁性の材料を用いることにより、接合部材458aが触媒電極47a、47c、および拡散層48a、48cを貫通しても、それらの間で電気的に短絡が生じるのを防止することができる。
【0048】
本実施例では、シリコーンゴムを用い、射出成型によりシールガスケット450をMEA部451および接合部材458Aと一体的に形成している。具体的には、複数の接合部材458Aを貫通させたMEA部451を、金型にセットし、型締めする。続いて、金型のキャビティーにシリコーンゴムを注入する。ここで、キャビティーは、シリコーンゴムを注入すると、シリコーンゴムがMEA部451の周縁部を覆うような形状に形成されている。そして、シリコーンゴムを硬化させた後、型開きすることにより、図3(a)に示すシールガスケット一体型MEA45Aを得る。シールガスケット450が、このような工程によってMEA部451および接合部材458Aと一体的に形成されると、シリコーンゴムが硬化する際の加硫(架橋)反応により、接合部材458Aと、MEA部451は、それぞれシールガスケット450と接着される。
【0049】
以上説明したように、本実施例の燃料電池スタック100によれば、接合部材458AがMEA部451を貫通し、接合部材458AのMEA部451から突出した部分がシールガスケット450に刺さった状態で接着されている。すなわち、MEA部451とシールガスケット450とをピンで固定したような状態になっている。
そのため、シールガスケット450とMEA部451の電解質膜46とがそれぞれ収縮しようとしても、シールガスケット450とMEA部451とは接合部材458Aによって接合されているため、シールガスケット450と電解質膜46の収縮は制限される。従って、一体的に形成されることにより接着されたシールガスケット450と電解質膜46との剥離を防止することができる。
従来は、シールガスケット一体型MEAにおいて、シールガスケットと電解質膜との接着部位が剥離すると、水素と空気がクロスリークして、水素と空気中の酸素が直接化学反応を起こすことにより、水素の触媒電極における反応効率が悪くなり、発電効率が低下することがあった。しかしながら、本実施例の燃料電池スタック100によれば、シールガスケット450と電解質膜46との剥離を防止することができるため、そのような発電効率の低下を防止することができる。また、水素と空気がクロスリークすることにより、異常燃焼が生じるのを防止することもできる。
【0050】
また、接合部材458Aは、シールガスケット450に突設されたシール部459によって形成されるシールラインSLに沿うように、シール部459の内部に配置されている。ここで、接合部材458Aは、シールガスケット450より剛性の高い高剛性材料を用いて形成されているため、シール部459がセパレータ41を押圧する押圧力が大きくなり、シールガスケット450のシール性を向上することができる。
【0051】
なお、本実施例において、接合部材458Aは、シールラインSLに対応する位置に配置されているが、この位置に限定されるものではなく、MEA部451とシールガスケット450とが重なる部位であればよい。また、接合部材458Aの個数および形状は、本実施例に限定されない。
また、本実施例では、シールガスケット450として、シリコーンゴムを用いるものとしたが、これに限られず、ガス不透過性、弾力性、耐熱性を有する他の部材を用いるものとしてもよい。
【0052】
B.第2の実施例:
第2の実施例の燃料電池スタックの構成は、シールガスケット一体型MEA45B以外の構成は、第1の実施例の燃料電池スタック100の構成と同じである。また、本実施例におけるシールガスケット一体型MEA45Bは、接合部材以外の部分は、第1の実施例におけるシールガスケット一体型MEA45Aと同じである。以下、本実施例におけるシールガスケット一体型MEA45Bの構成について説明する。
【0053】
図4は、第2の実施例におけるシールガスケット一体型MEA45Bを示す説明図である。図4(a)に、シールガスケット一体型MEA45Bの平面図を示した。また、図4(b)に、図4(a)におけるA−A断面図を示した。また、図4(c)には、接合部材458Bの平面図を示した。
【0054】
図4(a)に示したように、本実施例におけるシールガスケット一体型MEA45Bのシールガスケット450は、第1の実施例のシールガスケット一体型MEA45Aと同様に、外形はセパレータ41の四隅をそれぞれ切り欠いた形状を有している。また、シールガスケット一体型MEA45BにおけるMEA部451と、空気供給用貫通孔452aと、空気排出用貫通孔452bと、水素供給用貫通孔454aと、水素排出用貫通孔454bと、冷却水供給用貫通孔456aと、冷却水排出用貫通孔456bとは、第1の実施例におけるシールガスケット一体型MEA45Aと同じである。
【0055】
図4(b)および(c)に示すように、接合部材458Bは、MEA部451とほぼ同寸法の略正方形の枠状を成すフレーム部458B1と、フレーム部458B1からそれぞれ突設された円柱状を成す複数の電解質膜貫通部458B2と、によって構成されている。そして、接合部材458Bの各電解質膜貫通部458B2は、第1の実施例と同様に、それぞれMEA部451を貫通している。そして、シールガスケット450は、MEA部451の周縁部と、その周縁部に配設された接合部材458Bとを覆うような状態で、MEA部451の外周に一体的に形成されている。また、接合部材458Bは、シールガスケット450のシール部459によって形成されるシールラインSLに相当する位置に配置されている。
【0056】
なお、本実施例のシールガスケット一体型MEA45Bは、第1の実施例におけるシールガスケット一体型MEA45Aと同一の材料を用いて、同一の工程で形成されている。
【0057】
以上説明したように、本実施例の燃料電池スタックによれば、接合部材458Bの電解質膜貫通部458B2がMEA部451を貫通している。そして、第1の実施例と同様に、接合部材458Bを配設したMEA部451と一体的にシールガスケット450を形成することにより、接合部材458Bの電解質膜貫通部458B2の電解質膜46から突出した部分と、フレーム部458B1は、それぞれシールガスケット450と接着している。これにより、シールガスケット450とMEA部451とは接合部材458Bによって接合されている。
従って、シールガスケット450とMEA部451の電解質膜46とがそれぞれ収縮しようとしても、シールガスケット450とMEA部451とは接合部材458Aによって接合されているため、第1の実施例と同様にシールガスケット450および電解質膜46の収縮は制限される。そして、一体的に形成されることにより接着されたシールガスケット450と電解質膜46との剥離を防止することができる。よって、第1の実施例と同様に、発電効率の低下を防止することができる。
また、第1の実施例と同様に、接合部材458Bは、シールガスケット450に突設されたシール部459によって形成されるシールラインSLに相当する位置に配置されている。そのため、第1の実施例と同様に、シールガスケット450のシール性を向上することができる。
【0058】
また、本実施例のシールガスケット一体型MEA45Bにおいて、シールガスケット450は、射出成型によってMEA部451と一体的に形成される。このようにシールガスケットがMEA部と一体的に形成される場合、シールガスケットとMEA部とは、収縮率が異なり、また、シールガスケットはヤング率の小さい柔らかいシリコーンゴムから成るため、成型時の成型収縮により、シールガスケットが波打つように変形することがある。しかしながら、本実施例のシールガスケット一体型MEA45Bでは、シールガスケット450より曲げ弾性率(ヤング率)の大きい高剛性材料からなる接合部材458Bが、枠状を成すフレーム部458B1を有するため、製造時のシールガスケット450の変形を抑制することができる。
【0059】
C.第3の実施例:
第3の実施例の燃料電池スタックの構成は、シールガスケット一体型MEA以外の部分は、第1の実施例の燃料電池スタック100の構成と同じである。以下、本実施例におけるシールガスケット一体型MEA45Cについて説明する。
【0060】
図5は、第3の実施例におけるシールガスケット一体型MEA45Cを示す説明図である。図5(a)に、シールガスケット一体型MEA45Cの平面図を示した。また、図5(b)に、図5(a)におけるA−A断面図を示した。また、図5(c)には、セパレータ41と、シールガスケット一体型MEA45Cとを交互に積層させたときの、図5(a)におけるB−B断面図を示した。
【0061】
図5(a)に示したように、本実施例におけるシールガスケット一体型MEA45Cのシールガスケット450は、第1の実施例および第2の実施例のシールガスケット一体型MEAと同様に、外形はセパレータ41の四隅をそれぞれ切り欠いた形状を有している。また、シールガスケット一体型MEA45Cにおける空気供給用貫通孔452aと、空気排出用貫通孔452bと、水素供給用貫通孔454aと、水素排出用貫通孔454bと、冷却水供給用貫通孔456aと、冷却水排出用貫通孔456bとは、第1の実施例の実施例におけるシールガスケット一体型MEA45Aと同じである。
【0062】
一方、図5(b)に示すように、MEA部451Cは、第1の実施例および第2の実施例と同様に、電解質膜46の一方の面に、カソード側触媒電極47cと、カソード用拡散層48cとをこの順に積層させ、他方の面に、アノード側触媒電極47aと、アノード用拡散層48aとを、この順にそれぞれ積層させた膜電極接合体である。但し、第1の実施例および第2の実施例と異なり、MEA部451Cは、シールガスケット450の端部にまで及んでいる。そして、MEA部451Cの外形は、シールガスケット450と同様に、セパレータ41の四隅をそれぞれ切り欠いた形状を成す。また、MEA部451Cの周縁部には、シールガスケット450における空気供給用貫通孔452aと、空気排出用貫通孔452bと、水素供給用貫通孔454aと、水素排出用貫通孔454bと、冷却水供給用貫通孔456aと、冷却水排出用貫通孔456bとに相当する貫通孔が形成されている。
【0063】
そして、図5(a)に示すように、シールガスケット一体型MEA45Cにおいて、シールガスケット450の周縁部にあたる4辺に、接合部材458Cがそれぞれ配設されている。そして、図5(b)および(c)に示すように、接合部材458Cは、複数の電解質膜貫通部458C2と、セパレータ41の外周部と嵌合可能に形成された凹部458C5を有する嵌合部458C3と、電解質膜貫通部458C2と嵌合部458C3とを連結する連結部458C4とによって構成されている。ここで、各電解質膜貫通部458C2は、それぞれ円柱状を成し、第2の実施例と同様にMEA部451Cを貫通している。また、嵌合部458C3は、シールガスケット450の端面に接するように配置されている。そして、図5(a)に示すように、シールガスケット450は、MEA部451Cに形成された貫通孔の周囲を囲むようにMEA部451Cと一体的に形成されている。すなわち、接合部材458Cにおいて、複数の電解質膜貫通部458C2および連結部458C4は、シールガスケット450に内包されており、嵌合部458C3は、シールガスケット450の外側に配置されている。
【0064】
なお、本実施例のシールガスケット一体型MEA45Cは、第1の実施例におけるシールガスケット一体型MEA45Aと同一の材料を用いて、同一の工程で形成されている。
【0065】
以上説明したように、第3の実施例の燃料電池スタックによれば、接合部材458Cの電解質膜貫通部458C2がMEA部451Cを貫通している。そして、第1の実施例と同様に、接合部材458Cを配設したMEA部451Cと一体的にシールガスケット450を形成することにより、接合部材458Cの電解質膜貫通部458C2の電解質膜46から突出した部分と、連結部458C4は、それぞれシールガスケット450と接着している。これにより、シールガスケット450とMEA部451Cとは接合部材458Cによって接合されている。
そのため、第1の実施例および第2の実施例と同様に、シールガスケット450とMEA部451Cの電解質膜46とがそれぞれ収縮しようとしても、シールガスケット450とMEA部451Cとは接合部材458Cによって接合されているため、シールガスケット450と電解質膜46の収縮は制限され、シールガスケット450と電解質膜46との剥離を防止することができる。よって、第1の実施例および第2の実施例と同様に、発電効率の低下を防止することができる。
【0066】
さらに、本実施例の接合部材458Cは、セパレータ41と嵌合可能に凹部458C5が形成された嵌合部458C3を有している。そして、嵌合部458C3は、シールガスケット450の端面に接するように、シールガスケット450の外側に配置されている。従って、図5(c)に示すように、セパレータ41と、シールガスケット一体型MEA45Cとを交互に積層するときに、セパレータ41の4つの辺に、接合部材458Cの凹部458C5をそれぞれ嵌合させれば、セパレータ41の面方向の位置決めを容易に、かつ、精度良く行うことができる。
【0067】
また、従来のスタック構造を有する燃料電池は、シールガスケット一体型MEAとセパレータを交互に積層した場合に、シールガスケットのシール部が、セパレータの両面からセパレータを押圧している。ここで、例えば、燃料電池スタックの運転時に反応ガス圧により、セパレータ41と、シールガスケット一体型MEAと間に横ズレが生じると、1枚のセパレータを両面から押圧するシール部のシールラインがずれてしまう。これにより、セパレータが傾いたり、セパレータに割れや変形が生じることがあった。しかしながら、本実施例の燃料電池スタックによれば、図5(c)に示すように、シールガスケット一体型MEA45Cとセパレータ41を交互に積層する際に、接合部材458Cの凹部458C5をセパレータ41の4つの辺にそれぞれ嵌合させることにより、セパレータ41とシールガスケット一体型MEA45Cの面方向の位置が固定され、横ズレが生じるのを抑制することができる。従って、1枚のセパレータ41を両面から押圧するシール部459のシールラインSLのずれが抑制され、セパレータ41が傾いたり、セパレータ41に割れや変形が生じたりするのを防止することができる。
【0068】
D.第4の実施例:
第4の実施例の燃料電池スタックの構成は、シールガスケット一体型MEA45D以外の部分は、第1の実施例の燃料電池スタックと同じである。以下、本実施例におけるシールガスケット一体型MEA45Dの構成について説明する。
【0069】
図6は、第4の実施例におけるシールガスケット一体型MEA45Dを示す説明図である。図6(a)に、シールガスケット一体型MEA45Dの平面図を示した。また、図6(b)に、図6(a)におけるA−A断面図を示した。また、図6(c)には、接合部材458Dの平面図を示した。
【0070】
図6(a)に示したように、本実施例におけるシールガスケット一体型MEA45Dのシールガスケット450は、第1の実施例のシールガスケット一体型MEA45Aと同様に、外形はセパレータ41の四隅をそれぞれ切り欠いた形状を有している。また、シールガスケット一体型MEA45DにおけるMEA部451と、空気供給用貫通孔452aと、空気排出用貫通孔452bと、水素供給用貫通孔454aと、水素排出用貫通孔454bと、冷却水供給用貫通孔456aと、冷却水排出用貫通孔456bとは、第1の実施例におけるシールガスケット一体型MEA45Aと同じである。
【0071】
図6(b)および(c)に示すように、接合部材458Dは、MEA部451とほぼ同寸法の略正方形の枠状を成すフレーム部458D1と、フレーム部458D1からそれぞれ突設された円柱状を成す複数の電解質膜貫通部458D2と、セパレータ41に嵌合可能に形成された凹部458D5を有する嵌合部458D3と、フレーム部458D1と嵌合部458D3とを連結する連結部458D4とによって構成されている。そして、各電解質膜貫通部458D2は、第3の実施例と同様にそれぞれMEA部451を貫通している。そして、シールガスケット450は、MEA部451の周縁部と、その周縁部に配設された接合部材458Dの一部を覆うような状態で、MEA部451の外周に一体的に形成されている。また、嵌合部458D3は、シールガスケット450の端面に接するように配置されている。
【0072】
なお、本実施例のシールガスケット一体型MEA45Dは、第1の実施例におけるシールガスケット一体型MEA45Aと同一の材料を用いて、同一の工程で形成されている。
【0073】
以上説明したように、第4の実施例の燃料電池スタックによれば、接合部材458Dの電解質膜貫通部458D2がMEA部451を貫通している。そして、第1の実施例と同様に、接合部材458Dを配設したMEA部451と一体的にシールガスケット450を形成することにより、接合部材458Dの電解質膜貫通部458D2の電解質膜46から突出した部分と、フレーム部458D1と、連結部458D4は、それぞれシールガスケット450に接着されている。これにより、シールガスケット450とMEA部451とは接合部材458Dによって接合されている。
そのため、シールガスケット450とMEA部451の電解質膜46とがそれぞれ収縮しようとしても、シールガスケット450とMEA部451とは接合部材458Dによって接合されているため、第1の実施例ないし第3の実施例と同様に、シールガスケット450と、電解質膜46の収縮は制限され、シールガスケット450と電解質膜46との剥離を防止することができる。
【0074】
また、本実施例の接合部材458Dは、セパレータ41と嵌合可能に凹部458D5が形成されている。従って、第3の実施例と同様に、セパレータ41と、シールガスケット一体型MEA45Aとを積層させるときに、セパレータ41の面方向の位置決めを容易に、かつ、精度良く行うことができる。また、第3の実施例と同様に、燃料電池スタックの運転時に、セパレータ41と、シールガスケット一体型MEA45Dと間に横ズレが生じるのを抑制することができ、セパレータ41が傾いたり、セパレータ41に割れや変形が生じるのを防ぐことができる。
【0075】
また、接合部材458Dを用いると、シールガスケット一体型MEAにおいて、MEAがシールガスケットの端部にまで及んでいない形状(本実施例と同様の形状)であっても、第3の実施例と同様に、シールガスケット450と電解質膜46との剥離を防止すると共に、セパレータ41の割れや変形を防止することができる。従って、高価な電解質膜を小さく形成することができるため、コストを低減することができる。
【0076】
E.変形例:
以上、本発明のいくつかの実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様での実施が可能である。
【0077】
上記した実施例において、MEAは、外形が同一の大きさの電解質膜46、アノード側触媒電極47a、カソード側触媒電極47c、アノード用拡散層48a、およびカソード用拡散層48cを積層して構成されているが、これに限定されない。例えば、電解質膜46のみを大きく形成し、電解質膜46に対して他の膜を積層する際に、他の膜の外周より外側に、電解質膜46の周縁部が露出するように構成してもよい。この場合、シールガスケット一体型MEAは、電解質膜46の露出している周縁部のみを、シールガスケット450にて挟み込んだ状態となるように、形成することができる。このようにすると、例えば、射出成型によりシールガスケットをMEAと一体的に形成する際に、触媒電極47a,47cには、シールガスケット450を形成するためのシリコーンゴムが架からないため、成型時の熱により触媒電極47a,47cが変形したり、電極が破損したりするのを防止することができる。
【0078】
また、上記した第1および第2の実施例において、接合部材として、絶縁性を有する材料を用いるようにしたが、以下のような構成とすることにより、導電性を有する材料を用いるようにしてもよい。すなわち、第1および第2の実施例のように、接合部材とセパレータとが接触しない(すなわち、嵌合部を有していない)構成においては、MEAとして、上述したように、電解質膜46のみを大きく形成し、他の膜の外周よりも外側に電解質膜46の周縁部が露出するようなMEAを用い、電解質膜46の周縁部のみを接合部材で貫通させるように構成する。このような構成では、接合部材とセパレータとが接触しないため、接合部材として導電性を有するの材料を用いたとしても、電解質膜46とセパレータとが電気的に短絡することがなく、また、接合部材が触媒電極47a,47cを貫通していないため、電極間で電気的に短絡することもない
【0079】
また、上記した第3および第4の実施例において、接合部材として、絶縁性を有する材料を用いるようにしたが、以下のような構成としてもよい。例えば、接合部材のうち、電解質膜貫通部を絶縁性を有する材料で形成し、嵌合部、連結部、およびフレーム部等を導電性を有する材料で形成する。接合部材をこのような構成とすれば、たとえ、電解質膜貫通部が触媒電極47a,47cを貫通していても、電極間で電気的に短絡することはなく、また、セパレータから嵌合部に電流が流れたとしても、電極間で電気的に短絡することはない。
【0080】
また、上記した実施例において、セパレータは、カソード対向プレートと、中間プレートと、アノード対向プレートとの3枚のプレートによって構成されているものとしたが、これに限られない。例えば、カーボン等、1つのブロック状の部材を加工して形成したセパレータを用いるものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1の実施例としての燃料電池スタック100の概略構成を示す斜視図である。
【図2】セパレータ41の構成部品およびセパレータ41の平面図である。
【図3】シールガスケット一体型MEA45Aを示す説明図である。
【図4】第2の実施例におけるシールガスケット一体型MEA45Bを示す説明図である。
【図5】第3の実施例におけるシールガスケット一体型MEA45Cを示す説明図である。
【図6】第4の実施例におけるシールガスケット一体型MEA45Dを示す説明図である。
【符号の説明】
【0082】
10...エンドプレート
20...絶縁板
30...集電板
40...燃料電池モジュール
41...セパレータ
42...カソード対向プレート
43...中間プレート
44...アノード対向プレート
46...電解質膜
47a...アノード側触媒電極
47c...カソード側触媒電極
48a...アノード用拡散層
48c...カソード用拡散層
50...集電板
60...絶縁板
70...エンドプレート
80...テンションプレート
82...ボルト
100...燃料電池スタック
422a,432a,442a,452a...空気供給用貫通孔
422b,432b,442b,452b...空気排出用貫通孔
422i...空気供給口
422o...空気排出口
424a,434a,444a,454a...水素供給用貫通孔
424b,434b,444b,454b...水素排出用貫通孔
426a,446a,456a...冷却水供給用貫通孔
426b,446b,456b...冷却水排出用貫通孔
432c...空気供給用流路形成部
432d...空気排出用流路形成部
432e...水素供給用流路形成部
432f...水素排出用流路形成部
436...冷却水流路形成用貫通孔
444i...水素供給口
444o...水素排出口
45A,45B,45C,45D...シールガスケット一体型MEA
450...シールガスケット
458A,458B,458C,458D...接合部材
458B1,458D1...フレーム部
458B2,458C2,458D2...電解質膜貫通部
458C3,458D3...嵌合部
458C4,458D4...連結部
458C5,458D5...凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも高分子電解質膜および該高分子電解質膜の両面に形成された電極を有するMEA(Membrance Electrode Assembly)を、セパレータを介在させて複数積層したスタック構造を有する燃料電池であって、
少なくとも前記高分子電解質膜の周縁部の少なくとも一部を貫通する複数の電解質膜貫通部を有する接合部材と、
少なくとも前記接合部材の一部と、前記高分子電解質膜の前記周縁部とを覆うように、前記MEAと一体的に形成されるシール部材と、
を備えることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池において、
前記接合部材は、
枠状に一周するように形成されたフレーム部をさらに備え、
前記電解質膜貫通部は、
前記フレーム部から突設されていることを特徴とする燃料電池。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料電池において、
前記接合部材は、
少なくとも前記フレーム部が、前記シール部材より剛性が高い高剛性材料より成ることを特徴とする燃料電池。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の燃料電池において、
前記シール部材は、
前記MEAが前記セパレータを介して複数積層された場合に、燃料ガス、酸化剤ガス、または冷却媒体が流通することが可能なマニホールドを形成する複数の貫通孔を備え、
前記フレーム部は、
前記貫通孔が、前記フレーム部の外周に位置するように、形成されることを特徴とする燃料電池。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4の任意の一つに記載の燃料電池において、
少なくとも前記フレーム部は、
前記シール部材に内包されていることを特徴とする燃料電池。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の任意の一つに記載の燃料電池において、
前記電解質膜貫通部は、
少なくとも前記高分子電解質膜および前記電極を貫通し、かつ、絶縁性を有する材料から成ることを特徴とする燃料電池。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6の任意の一つに記載の燃料電池において、
前記接合部材は、
前記MEAを、前記セパレータを介在させて積層する際に、前記セパレータの周縁部の少なくとも一部に嵌合する嵌合部をさらに備え、
前記電解質膜貫通部および前記嵌合部の間が絶縁されていることを特徴とする燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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