説明

燃料電池

【課題】反応ガスのショートカットを一層低減させて発電効率を向上させることができる燃料電池を提供する。
【解決手段】セパレータ(12A)の幅方向(X)において、電極層(14A)の一端部(14Ae)とガス分配部(33)の一端部(33e)との距離(L1)がガス分配部(33)の一端部(33e)と流体流路(31)の一端部(31e)との距離(L2)よりも大きくなるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関し、特に、反応ガスのショートカットを低減する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池(例えば、高分子電解質型燃料電池)は、水素イオン伝導性を有する高分子電解質膜の一方の面に水素等の燃料ガスを供給すると共に他方の面に酸素等の酸化剤ガスを供給することにより、高分子電解質膜を介して電気化学反応を発生させ、それにより生じる反応エネルギーを電気的に取り出すものである。
【0003】
燃料電池は、一般的には複数のセルを積層し、それらをボルトなどの締結部材で加圧締結することにより構成されている。1つのセルは、膜電極接合体(以下、MEA:Membrane-Electrode-Assemblyという)を一対の板状の導電性のセパレータで挟んで構成されている。各セパレータには、それらを厚み方向に貫通する、反応ガス(燃料ガス又は酸化剤ガス)を供給するための供給用マニホールドと、反応ガスを排出するための排出用マニホールドとが形成されている。各セパレータのMEA側の面には、供給用マニホールドと排出用マニホールドとに連通する流体流路が形成されている。
【0004】
MEAは、高分子電解質膜と、当該電極膜の両面に配置された一対の電極層(多孔質電極ともいう)によって構成されている。一対の電極層は、それぞれ、高分子電解質膜よりも外形サイズが小さく、高分子電解質膜の周縁部が露出するように配置されている。高分子電解質膜と各電極層とは、熱プレスなどにより一体的に接合されている。高分子電解質膜の周縁部と各セパレータとの間には、反応ガスの漏洩を防止するための環状のシール部材が電極層の周縁部を囲むように配置されている。
【0005】
燃料電池においては、一方のセパレータの流体流路に反応ガスとして燃料ガスが供給されると共に、他方のセパレータの流体流路に反応ガスとして酸化剤ガスが供給されることにより、高分子電解質膜を介して電極層に電気化学反応が発生する。燃料電池は、この電気化学反応により生じた電力を、各セパレータを通じて外部に取り出すように構成されている。
【0006】
しかしながら、従来の燃料電池においては、本来、供給用マニホールドから供給された反応ガスの全部が流体流路を流れるべきところ、反応ガスの一部が流体流路ではなく電極層とシール部材との隙間に流れる、いわゆるショートカットの課題がある。電極層とシール部材との隙間を流れる反応ガスは発電に全く寄与しないため、ショートカットが発生した場合には、燃料電池の発電効率が低下することになる。
【0007】
反応ガスのショートカットを低減する技術としては、例えば特許文献1(特開2006−120376号公報)に開示されたものがある。図13は、特許文献1の燃料電池が備える発電セル100の構造を示す平面図である。図14は、発電セル100の一部拡大断面図である。
【0008】
特許文献1には、図13及び図14に示すように、一方の電極層(アノード電極)101の外方に位置するシール部材102と、MEA103の外方に位置するシール部材104との間に形成された隙間105に、第1リブ106と第2リブ107とを千鳥状に配置した構造が開示されている。この構造により、隙間105を通じて反応ガスがショートカットすることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−120376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の構造では、隙間105を通じた反応ガスのショートカットの防止には有効であるものの、電極層101とシール部材102との隙間108を反応ガスがショートカットすることを防ぐことはできない。従って、特許文献1の構造では、反応ガスのショートカットの課題を十分に解決することはできない。
【0011】
本発明の目的は、前記問題を解決することにあって、反応ガスのショートカットを一層低減させて発電効率を向上させることができる燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の第1態様によれば、高分子電解質膜を挟んで互いに対向する一対の電極層と、前記電解質膜及び前記一対の電極層を挟んで互いに対向する一対のセパレータと、を備える燃料電池において、
前記セパレータを貫通するように設けられ、反応ガスが供給される供給用マニホールドと、
前記セパレータを貫通するように設けられ、前記反応ガスを排出する排出用マニホールドと、
前記供給用マニホールドと前記排出用マニホールドとの間において前記セパレータの幅方向に並列に設けられた複数の流路溝で構成され、前記供給用マニホールドを通じて供給された前記反応ガスを前記排出用マニホールドに導く流体流路と、
前記供給用マニホールドと前記流体流路との間に設けられ、前記供給用マニホールドを通じて供給された前記反応ガスを前記複数の流路溝に分配するガス分配部と、
を備え、
前記セパレータの厚み方向から見たとき、前記セパレータの幅方向における、前記電極層の一端部と前記ガス分配部の一端部との距離が前記ガス分配部の一端部と前記流体流路の一端部との距離よりも大きい、燃料電池燃料電池を提供する。
【0013】
本発明の第2態様によれば、前記電極層の一端部に対して隙間を空けて設けられたシール部材又は枠体を備え、
前記流体流路の一端部に位置する前記流路溝の断面積が前記隙間の断面積よりも大きい、第1態様に記載の燃料電池を提供する。
【0014】
本発明の第3態様によれば、前記セパレータの幅方向における、前記ガス分配部の一端部と前記流体流路の一端部との位置が一致している、第1又は2態様に記載の燃料電池を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる燃料電池によれば、前記電極層の一端部と前記ガス分配部の一端部との距離が前記ガス分配部の一端部と前記流体流路の一端部との距離よりも大きくなるように構成されているので、供給用マニホールドからガス分配部に供給された燃料ガスが、流体流路に流れ易くなる。これにより、反応ガスのショートカットを一層低減させて発電効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る燃料電池の基本構成を模式的に示す分解斜視図である。
【図2】図1の燃料電池が備える発電セルの構成を模式的に示す分解斜視図である。
【図3】図2の発電セルが備えるアノードセパレータの一部拡大平面図である。
【図4】図3のA1−A1線を通るように切った発電セルの部分断面図である。
【図5】図3のアノードセパレータ上にアノード電極を配置した状態を示す平面図である。
【図6】図5の点線で囲まれた領域の拡大平面図である。
【図7】本発明の第2実施形態にかかる燃料電池が備える発電セルのアノードセパレータの一部拡大斜視図である。
【図8】本発明の第3実施形態にかかる燃料電池が備える発電セルのアノードセパレータの一部拡大平面図である。
【図9】図8のアノードセパレータ上にアノード電極を配置した状態を示す平面図である。
【図10】図9の一部拡大斜視図である。
【図11】図9のA2−A2線を通るように切った発電セルの部分断面図である。
【図12】本発明の第4実施形態にかかる燃料電池が備える発電セルの部分断面図である。
【図13】特許文献1の燃料電池が備える発電セルの構造を示す平面図である。
【図14】特許文献1の燃料電池が備える発電セルの一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の記述を続ける前に、添付図面において同様の部品については同じ参照符号を付している。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
《第1実施形態》
図1は、本発明の第1実施形態に係る燃料電池の基本構成を模式的に示す分解斜視図である。本第1実施形態に係る燃料電池は、水素を含有する燃料ガスと、空気などの酸素を含有する酸化剤ガスとを電気化学的に反応させることにより、電力と熱とを同時に発生させる高分子電解質型燃料電池である。
【0019】
本第1実施形態に係る燃料電池は、単電池である発電セル10を複数積層した発電セル積層体1の積層方向の両端部を、集電板2及び絶縁板3を介して一対の端板4,4で挟持した状態で、締結部材(図示せず)を用いて加圧締結して構成されている。
【0020】
集電板2は、発電セル10が発電した電流を外部に導くためのものである。集電板2は、例えば、銅、真鍮などのガス不透過性の導電性材料で構成されている。集電板2には、外部電線との接続のため、積層方向Xと交差する方向に突出する電流取り出し端子部2aが設けられている。絶縁板3は、例えば、フッ素系樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂などの絶縁性樹脂で構成されている。端板4は、例えば、鋼などの剛性の高い金属材料で構成されている。
【0021】
図2は、発電セル10の構成を模式的に示す断面図である。図2に示すように、発電セル10は、膜電極接合体11(以下、MEAという)と、MEA11の両面に配置された一対の板状の導電性のセパレータ12A,12Cとを有している。一対のセパレータの一方はアノードセパレータ12Aであり、他方はカソードセパレータ12Cである。アノードセパレータ12A及びカソードセパレータ12Cは、例えば、カーボン系、又は金属系の平板で構成されている。
【0022】
アノードセパレータ12A及びカソードセパレータ12Cの上部には、それらを厚み方向に貫通する、燃料ガス供給用マニホールド21と、酸化剤ガス供給用マニホールド22と、冷却媒体供給用マニホールド23とが設けられている。また、アノードセパレータ12A及びカソードセパレータ12Cの下部には、それらを厚み方向に貫通する、燃料ガス排出用マニホールド24と、酸化剤ガス排出用マニホールド25と、冷却媒体排出用マニホールド26とが設けられている。
【0023】
アノードセパレータ12AのMEA11側の面には、燃料ガス供給用マニホールド21を通じて供給された燃料ガスを燃料ガス排出用マニホールド24に導くように、流体流路として燃料ガス流路31が形成されている。燃料ガス流路31は、アノードセパレータ12Aの幅方向であるX方向に並列に設けられた複数の流路溝で構成されている。当該複数の流路溝は、それぞれ、X方向と直交するY方向に延在するストレート形状の流路溝である。なお、燃料ガス流路31の各流路溝は、ストレート形状の流路溝に限定されるものではなく、波型形状の流路溝であっても、ターン部を有する蛇行形状の流路溝であってもよい。
【0024】
カソードセパレータ12CのMEA11側の面には、酸化剤ガス供給用マニホールド22を通じて供給された酸化剤ガスを酸化剤ガス排出用マニホールド25に導くように、流体流路として酸化剤ガス流路32が形成されている。酸化剤ガス流路32は、X方向に並列に設けられた複数の流路溝で構成されている。当該複数の流路溝は、それぞれ、Y方向に延在するストレート形状の流路溝である。なお、酸化剤ガス流路32の各流路溝は、ストレート形状の流路溝に限定されるものではなく、波型形状の流路溝であっても、ターン部を有する蛇行形状の流路溝であってもよい。
【0025】
図3は、アノードセパレータ12Aの一部拡大平面図である。図3に示すように、燃料供給用マニホールド21と燃料ガス流路31との間、及び燃料ガス流路31と燃料排出用マニホールド24との間には、燃料ガスを燃料ガス流路31の各流路溝に(好ましくは均一に)分配するためのガス分配部33が設けられている。ガス分配部33には、複数のエンボス33aと、分配用流路33bとが設けられている。
【0026】
また、酸化剤ガス供給用マニホールド22と酸化剤ガス流路32との間、及び酸化剤ガス流路32と酸化剤ガス排出用マニホールド25との間には、酸化剤ガスを酸化剤ガス流路32に(好ましくは均一に)分配するためのガス分配部34が設けられている。ガス分配部34には、図示していないが、ガス分配部33と同様に、複数のエンボスと、分配用流路とが設けられている。
【0027】
アノードセパレータ12AのMEA11と反対側の面及びカソードセパレータ12CのMEA11と反対側の面には、冷却媒体供給用マニホールド23と冷却媒体排出用マニホールド26とを連通するように、冷却媒体流路35が形成されている。冷却媒体流路35は、複数のストレート形状の流路溝で構成されている。なお、冷却媒体流路35の流路溝は、ストレート形状の流路溝に限定されるものではなく、他の形状であってもよい。
【0028】
冷却媒体流路35の各流路溝は、図1に示すように複数の発電セル10が積層されたとき、隣接する発電セル10に形成された冷却媒体流路35の流路溝と一体化して、大面積の流路溝を構成するように形成されている。なお、冷却媒体流路35は、アノードセパレータ12AのMEA11と反対側の面及びカソードセパレータ12CのMEA11と反対側の面の両方に設けられる必要はなく、いずれか一方にのみ設けてもよい。
【0029】
図4は、図3のA1−A1線を通るように切った発電セル10の部分断面図である。図4に示すように、MEA11は、水素イオン伝導性を有する高分子電解質膜13と、当該高分子電解質膜13の両面に形成された一対の多孔質電極である電極層14A,14Cとを有している。一対の電極層の一方は、アノード電極14Aであり、他方はカソード電極14Cである。アノード電極14Aは、高分子電解質膜13の一方の表面に設けられており、アノード触媒層15Aと、その外側にガス通気性及び導電性を備えるアノードガス拡散層16Aとを有している。アノードガス拡散層16Aは、アノード触媒層15Aよりも外形サイズが大きく形成されている。同様に、カソード電極14Cは、高分子電解質膜13の他方の表面に設けられており、カソード触媒層15Cと、その外側にガス通気性及び導電性を備えるカソードガス拡散層16Cとを有している。カソードガス拡散層16Cは、カソード触媒層15Cよりも外形サイズが大きく形成されている。
【0030】
図3及び図4に示すように、アノードセパレータ12AのMEA11側の面には、アノード電極14Aの周縁部を包囲するように環状のシール部材36が設けられている。このシール部材36は、燃料ガス供給用マニホールド21及び燃料ガス排出用マニホールド24も包含するように配置されている。このシール部材36により、燃料ガスの外部への漏洩が防止されている。また、酸化剤ガス供給用マニホールド22、冷却媒体供給用マニホールド23、酸化剤ガス排出用マニホールド25、及び冷却媒体排出用マニホールド26のそれぞれの周縁部には、環状のシール部材37が配置されている。これらのシール部材37により、酸化剤ガス及び冷却媒体の燃料ガス流路31への流入が防止されている。
【0031】
同様に、カソードセパレータ12CのMEA11側の面には、カソード電極14Cの周縁部を包囲するように環状のシール部材38が設けられている。このシール部材38は、酸化剤ガス供給用マニホールド22及び酸化剤ガス排出用マニホールド25も包含するように配置されている。このシール部材38により、酸化剤ガスの外部への漏洩が防止されている。また、燃料ガス供給用マニホールド21、冷却媒体供給用マニホールド23、燃料ガス排出用マニホールド24、及び冷却媒体排出用マニホールド26のそれぞれの周縁部には、環状のシール部材(図示せず)が配置されている。これらのシール部材により、燃料剤ガス及び冷却媒体の酸化剤ガス流路32への流入が防止されている。
【0032】
なお、図示していないが、アノードセパレータ12AのMEA11と反対側の面及びカソードセパレータ12CのMEA11と反対側の面には、冷却媒体供給用マニホールド23、冷却媒体排出用マニホールド26、及び冷却媒体流路35を包含するように環状のシール部材が設けられている。このシール部材により、冷却媒体の外部への漏洩が防止されている。
【0033】
前記各シール部材としては、例えば、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、シリコーンゴム、フッ素ゴム等のシール部材を用いることができる。
【0034】
次に、図4〜図6を用いて、アノードセパレータ12Aとアノード電極14Aとシール部材36との位置関係について説明する。図5は、アノードセパレータ2上にアノード電極14Aを配置した状態を、燃料電池の厚み方向であるZ方向から見た平面図である。図6は、図5の点線で囲まれた領域B1の拡大平面図である。ここでは、X方向における、ガス分配部33の一端部を33eとし、アノード電極14Aの一端部を14Aeとする。また、X方向における燃料ガス流路31の一端部、すなわち、最もシール部材36側に位置する流路溝31aの一端部を31eとする。
【0035】
図4及び図6に示すように、本第1実施形態の燃料電池は、ガス分配部33の一端部33eとアノード電極14Aの一端部14Aeとの距離L2がガス分配部33の一端部33eと燃料ガス流路31の一端部31eとの距離L1よりも大きくなるように構成されている。ここで、アノード電極14Aは、厚さ数100μmの柔軟な導電性の多孔質部材で構成されるが一般的である。この場合、アノード電極14Aは、外形寸法の精度が悪く、0.5mm程度のバラツキを有する。このため、アノード電極14Aの一端部14Aeとシール部材36との間には、組立時にアノード電極14Aがシール部材36上に乗り上げるのを防止するため、例えば0.3mm程度の隙間40が設けられている。また、燃料ガス流路31の最もシール部材36側に位置する流路溝31aの断面積は、隙間40の断面積よりも大きくなるように設計されている。
【0036】
本第1実施形態によれば、前記構成により、燃料ガス供給用マニホールド21からガス分配部33に供給された燃料ガスが、燃料ガス流路31に流れ易くなる。これにより、燃料ガスがアノード電極14Aの一端部14Aeとシール部材36との隙間40に流れることを低減することができる。従って、簡単な構成で、反応ガス(燃料ガス)のショートカットを一層低減させ、発電効率を向上させることができる。
【0037】
なお、前記ではアノードセパレータ12Aについてのみ説明したが、図4に示すように、カソードセパレータ12Cもアノードセパレータ12Cと同様に、距離L2が距離L1よりも大きくなるように構成されている。これにより、反応ガス(酸化剤ガス)のショートカットを一層低減させ、発電効率を向上させることができる。
【0038】
なお、アノードセパレータ12A及びカソードセパレータ12Cの両方を、距離L2が距離L1よりも大きくなるように構成する必要はなく、少なくともいずれか一方が、距離L2が距離L1よりも大きくなるように構成されていればよい。
【0039】
《第2実施形態》
図7は、本発明の第2実施形態にかかる燃料電池が備える発電セルのアノードセパレータの一部拡大斜視図である。本第2実施形態にかかる燃料電池が前記第1実施形態にかかる燃料電池と異なる点は、ガス分配部33の一端部33eと燃料ガス流路31の一端部31eの位置が一致している点である。すなわち、距離L1=0となっている。
【0040】
本第2実施形態によれば、ガス分配部33の一端部33eと燃料ガス流路31の一端部31eの位置が一致しているので、燃料ガス供給用マニホールド21からガス分配部33に供給された燃料ガスが、燃料ガス流路31に一層流れ易くなる。これにより、簡単な構成で、反応ガスのショートカットを一層低減させ、発電効率を向上させることができる。
【0041】
なお、前記では、アノード側について説明したが、カソード側も同様に構成されてもよいことは言うまでもない。
【0042】
《第3実施形態》
図8は、本発明の第3実施形態にかかる燃料電池が備える発電セルのアノードセパレータの一部拡大平面図である。図9は、図8のアノードセパレータ上にアノード電極を配置した状態を示す平面図である。図10は、図9の一部拡大斜視図である。図11は、図9のA2−A2線を通るように切った発電セルの部分断面図である。本第3実施形態にかかる燃料電池が前記第1実施形態にかかる燃料電池と異なる点は、燃料ガス流路31がアノードセパレータ12Aではなくアノードガス拡散層16Aに設けられている点である。
【0043】
本第3実施形態によれば、前記第1実施形態と同様に距離L2が距離L1よりも大きくなるように構成されているので、燃料ガス供給用マニホールド21からガス分配部33に供給された燃料ガスが燃料ガス流路31に流れ易くなる。これにより、簡単な構成で、反応ガスのショートカットを一層低減させ、発電効率を向上させることができる。
【0044】
なお、アノードガス拡散層16Aにプレス加工などにより燃料ガス流路31を設ける場合、アノードガス拡散層16Aの外形寸法の精度が一層低下することになる。このため、アノード電極14Aの一端部14Aeとシール部材36との間の隙間40をより広く(例えば0.5mm以上)設けることが望まれる。このため、燃料ガス流路31の最もシール部材36側に位置する流路溝31aの断面積が隙間40の断面積よりも大きくなるように設計することが好ましい。
【0045】
なお、前記では、アノード側について説明したが、カソード側も同様に構成されてもよいことは言うまでもない。
【0046】
《第4実施形態》
図12は、本発明の第4実施形態にかかる燃料電池が備える発電セルの部分断面図である。本第4実施形態にかかる燃料電池が前記第1実施形態にかかる燃料電池と異なる点は、高分子電解質膜13の周縁部を保持するように枠体50が形成され、当該枠体50と各セパレータ12A,12Cとの間にシール部材36,38が設けられている点である。
【0047】
枠体50は、アノード電極14A及びカソード電極14Cの保護と、ハンドリング性を向上させることを目的として設けられている。枠体40の材料としては、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PP(ポリプロピレン)、LCP(液晶ポリマー)などの樹脂系の材料を用いることができる。
【0048】
本第4実施形態によれば、前記第1実施形態と同様に、距離L2が距離L1よりも大きくなるように構成されているので、簡単な構成で、反応ガスのショートカットを一層低減させ、発電効率を向上させることができる。
【0049】
なお、枠体50は、射出成形等によって、高分子電解質膜13の周縁部に形成されている。この枠体50の形成時において、枠体50とアノード電極14A、及び枠体50とカソード電極14Cとの間には隙間51が生じる。本第4実施形態においては、燃料ガス流路31の最もシール部材36側に位置する流路溝31aの断面積が隙間51の断面積よりも大きくなるように設計することが好ましい。これにより、燃料ガスが燃料ガス流路31に一層流れ易くすることができる。従って、簡単な構成で、反応ガスのショートカットを一層低減させ、発電効率を向上させることができる。
【0050】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。
【0051】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明にかかる燃料電池は、反応ガスのショートカットを一層低減させて発電効率を向上させることができるので、例えば、家庭用コージェネレーションシステム、自動車用燃料電池、モバイル用燃料電池、バックアップ用燃料電池などの用途に有用である。
【符号の説明】
【0053】
1 発電セル積層体
2 集電板
3 絶縁板
4 端板
10 セル
11 MEA
12A アノードセパレータ(セパレータ)
12C カソードセパレータ(セパレータ)
13A アノード電極(電極層)
13C カソード電極(電極層)
14A アノード触媒層
14C カソード触媒層
15A アノードガス拡散層
15C カソードガス拡散層
21 燃料ガス供給用マニホールド(供給用マニホールド)
22 酸化剤ガス供給用マニホールド(供給用マニホールド)
23 冷却媒体供給用マニホールド
24 燃料ガス排出用マニホールド
25 酸化剤ガス排出用マニホールド
26 冷却媒体排出用マニホールド
31 燃料ガス流路(流体流路)
32 酸化剤ガス流路(流体流路)
33,34 ガス分配部
35 冷却媒体流路
36〜38 シール部材
40 隙間
50 枠体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子電解質膜を挟んで互いに対向する一対の電極層と、前記電解質膜及び前記一対の電極層を挟んで互いに対向する一対のセパレータと、を備える燃料電池において、
前記セパレータを貫通するように設けられ、反応ガスが供給される供給用マニホールドと、
前記セパレータを貫通するように設けられ、前記反応ガスを排出する排出用マニホールドと、
前記供給用マニホールドと前記排出用マニホールドとの間において前記セパレータの幅方向に並列に設けられた複数の流路溝で構成され、前記供給用マニホールドを通じて供給された前記反応ガスを前記排出用マニホールドに導く流体流路と、
前記供給用マニホールドと前記流体流路との間に設けられ、前記供給用マニホールドを通じて供給された前記反応ガスを前記複数の流路溝に分配するガス分配部と、
を備え、
前記セパレータの厚み方向から見たとき、前記セパレータの幅方向における、前記電極層の一端部と前記ガス分配部の一端部との距離が前記ガス分配部の一端部と前記流体流路の一端部との距離よりも大きい、燃料電池。
【請求項2】
前記電極層の一端部に対して隙間を空けて設けられたシール部材又は枠体を備え、
前記流体流路の一端部に位置する前記流路溝の断面積が前記隙間の断面積よりも大きい、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記セパレータの幅方向における、前記ガス分配部の一端部と前記流体流路の一端部との位置が一致している、請求項1又は2に記載の燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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