説明

燃焼システム、燃焼方法

【課題】 バイオマス由来の燃料のみで燃焼を行うことができる燃焼システムを提供する。
【解決手段】 バイオマスを燃料とした燃焼システム10は、バイオマスからバイオマス液体燃料を搾油する搾油装置11と、搾油装置11により搾油されたバイオマス搾油残渣からバイオガスを抽出するガス化炉14と、搾油装置11により搾油されたバイオマス液体燃料と、ガス化炉14により抽出されたバイオガスとを混焼させる混焼エンジン17とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物種子由来のバイオガスと植物種子由来の植物油とを混焼する燃焼システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、植物又はその廃材、家畜糞尿、生ゴミ、食品廃棄物などのバイオマスを原料としたバイオガスや、バイオマス由来の液体燃料を発電所における燃焼システムに利用する試みが行われている。このようなバイオマス燃料を用いる場合には、運転開始時などに、灯油や都市ガス等の化石燃料からなる補助燃料との混燃が必要となる。
【0003】
例えば、特許文献1には、このような補助燃料とバイオマス由来の燃料とを混燃させる際に、熱効率が最適になるように燃料の混燃割合を制御可能な燃焼システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−156501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の燃焼システムでは、補助燃料として化石燃料を使用しており、バイオマス由来の燃料のみで燃焼を行っているわけではない。
【0006】
本発明の目的は、バイオマス由来の燃料のみで燃焼を行うことができる燃焼システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の燃焼システムは、バイオマスを燃料とした燃焼システムであって、前記バイオマスからバイオマス液体燃料を抽出する液体燃料抽出装置と、前記液体燃料抽出装置によりバイオマス液体燃料が抽出された後のバイオマス搾油残渣からバイオガスを生成するガス化炉と、前記液体燃料抽出装置により抽出されたバイオマス液体燃料と、前記ガス化炉により生成されたバイオガスとを混焼させるエンジンとを備えることを特徴とする。
上記の燃焼システムにおいて、前記バイオマスは植物種子であってもよい。
【0008】
また、本発明の燃焼方法は、バイオマスを燃料とした燃焼方法であって、前記バイオマスからバイオマス液体燃料を抽出するステップと、前記バイオマス液体燃料が抽出された後のバイオマス搾油残渣からバイオガスを生成するステップと、前記抽出されたバイオマス液体燃料と、前記生成されたバイオガスとをエンジンで混焼させるステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バイオマスから抽出したバイオマス液体燃料と、バイオマス液体燃料を抽出した後のバイオマス搾油残渣から生成したバイオガスと、を混焼させるため、バイオマス由来の燃料のみでの燃焼を行える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(A)は燃料として軽油を用いて燃焼を行った場合の時間毎のNO、CO、Oの発生量を示す表であり、(B)は燃料としてジェトロファ油を用いて燃焼を行った場合の時間毎のNO、CO、Oの発生量を示す表である。
【図2】(A)は燃料として軽油を用いて燃焼を行った場合の時間毎のNO、CO、Oの発生量を示す表であり、(B)は廃食油のエマルジョンと模擬バイオガスとを混焼した場合時間毎のNO、CO、Oの発生量を示す表である。
【図3】本実施形態の燃焼システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本願発明者らは、ジェトロファなどの植物から搾油した植物油によりエンジンを燃焼することができることを確かめるため、燃焼実験を行ったので以下説明する。
本実験では、燃料として軽油を用いて燃焼を行った場合(軽油専焼)と、ジェトロファから搾油して得られたジェトロファ油を用いて燃焼を行った場合(植物油専焼)について、NO、CO、CO2、O2の発生量、発電効率、及び周波数の測定を行った。なお、本実験では、2kWエンジンを用いて燃焼を行っている。
【0012】
図1(A)は燃料として軽油を用いて燃焼を行った場合の時間毎のNO、CO、Oの発生量を示す表であり、(B)は燃料としてジェトロファ油を用いて燃焼を行った場合の時間毎のNO、CO、Oの発生量を示す表である。同図に示すように、軽油と比較してもジャトロファ油を70℃程度に加温してやれば問題なく専焼できる事を確認した。また、ノズル先端へ異常なカーボンの堆積はなく、50時間運転経過後のエンジン分解点検でも異常は認められなかった。
以上の実験により、燃料として植物油(ジェトロファ油)を用いてエンジンで燃焼を行うことができることが確認された。
【0013】
次に、本願発明者らは、廃食油のエマルジョンと、バイオガスとを混焼することが可能であることを実験により確認したので以下説明する。
本実験では、3kWエンジンを用いて、廃食油のエマルジョン50%とバイオガスを模擬した模擬バイオガス50%とを混焼した場合と、軽油を専焼した場合とについて、NO、CO、CO2、O2の発生量、発電効率、及び周波数の測定を行った。なお、模擬バイオガスはメタン及びCO2を夫々60%、40%の割合で混合してなる気体である。
【0014】
図2(A)は燃料として軽油を用いて燃焼を行った場合の時間毎のNO、CO、Oの発生量を示す表であり、(B)は廃食油のエマルジョンと模擬バイオガスとを混焼した場合時間毎のNO、CO、Oの発生量を示す表である。
データ採取日の諸条件で、若干の変動はあるが、運転データに大幅な突変は発生していない。また、25時間毎に燃料噴射ノズルを抜取り観察したが、ノズル先端へ異常なカーボンの堆積はなく、100時間運転経過後のエンジン分解点検でも異常は認められなかった。
以上の実験により、廃食油のエマルジョンと、バイオガスとを混焼することができることが確認された。
【0015】
また、上記のようにジェトロファ油のみで燃焼を行うことができるため、同じ植物由来の液体燃料である廃食油のエマルジョンに代えて、ジェトロファ油を用いることも可能であると考えられる。
【0016】
そこで、上記の実験結果に基づく考察をふまえ、本実施形態の燃焼システムは以下に説明する構成とした。
図3は、本実施形態の燃焼システム10の構成を示す図である。同図に示すように、本実施形態の燃焼システム10は、搾油装置11と、植物油タンク16と、植物性残渣貯蔵庫12と、ガス化炉14と、ガスタンク15と、混焼エンジン17とにより構成される。
【0017】
搾油装置11は、例えば、ジェトロファなどの植物種子が供給され、供給された植物種子から植物油を抽出する。搾油装置11により搾油された植物油は植物油タンクへ、植物油が抽出された植物種子は植物性残渣貯蔵庫12へと送られる。
【0018】
ガス化炉14は、植物性残渣貯蔵庫12から送られてきたバイオマス搾油残渣を酸化・還元させてバイオガスを生成する。ガス化炉14において生成されたバイオガスはガスタンク15へと送られ、貯蔵される。
混焼エンジン17は、植物油タンク16から植物油が、ガスタンク15からバイオガスが供給され、これらを混焼させて発電を行う。
【0019】
以下、燃焼システム10により混焼を行う流れを説明する。
まず、燃料である植物種子から搾油装置11により植物油を搾油する。搾油された植物油は植物油タンク16に貯蔵する。
次に、バイオマス液体燃料が抽出された後のバイオマス搾油残渣は植物性残渣貯蔵庫12に貯蔵される。
【0020】
次に、植物性残渣貯蔵庫12から混焼に必要な量のバイオマス搾油残渣をガス化炉14に供給し、ガス化炉14によりバイオガスを生成する。生成されたバイオガスはガスタンク15に貯蔵される。
次に、混焼エンジン17にガスタンク15からバイオガスを、植物油タンク16から植物油を供給し、混焼エンジン17によりこれらを混焼して発電を行う。
【0021】
本実施形態によれば、植物種子由来の植物油と、搾油後の植物種子由来の搾油残渣とから生成したバイオガスを混焼しており、完全に植物種子由来の燃料により発電を行うことができる。
【0022】
なお、本実施形態では植物種子から植物油及びバイオガスを抽出して、これらを混焼させる場合について説明したが、これに限らず、植物種子以外のバイオマスから抽出したバイオマス液体燃料と、バイオマス液体燃料を抽出したバイオマスおよび農業残渣等(例えば稲藁,木質,トウモロコシの芯)から生成したバイオガスとを混焼させることも可能である。
【符号の説明】
【0023】
10 燃焼システム
11 搾油装置
12 植物性残渣貯蔵庫
14 ガス化炉
15 ガスタンク
16 植物油タンク
17 燃焼エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスを燃料とした燃焼システムであって、
前記バイオマスからバイオマス液体燃料を抽出する液体燃料抽出装置と、
前記液体燃料抽出装置によりバイオマス液体燃料が抽出された後のバイオマス搾油残渣からバイオガスを生成するガス化炉と、
前記液体燃料抽出装置により抽出されたバイオマス液体燃料と、前記ガス化炉により生成されたバイオガスとを混焼させるエンジンとを備えることを特徴とする燃焼システム。
【請求項2】
請求項1記載の燃焼システムであって、
前記バイオマスは植物種子であることを特徴とする燃焼システム。
【請求項3】
バイオマスを燃料とした燃焼方法であって、
前記バイオマスからバイオマス液体燃料を抽出するステップと、
前記バイオマス液体燃料が抽出された後のバイオマス搾油残渣からバイオガスを生成するステップと、
前記抽出されたバイオマス液体燃料と、前記生成されたバイオガスとをエンジンで混焼させるステップとを備えることを特徴とする燃焼方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−236472(P2010−236472A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87073(P2009−87073)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】