説明

燃焼加熱器および燃焼加熱システム

【課題】安価な構成で、燃料ガスを燃焼室に導入する導入路を高精度に形成しつつ筐体の十分な剛性を確保する。
【解決手段】燃焼加熱器110は、加熱板118と、加熱板に対向配置された配置板120と、加熱板と配置板の外周に沿って配され、加熱板と配置板とで空間を囲繞する外周壁122と、加熱板と配置板の間に配置された仕切板124と、加熱板、配置板、および外周壁で囲繞される空間内に配置された燃焼室126と、配置板と仕切板とを側壁とし燃焼室に連続し燃料ガスを導く導入路128と、加熱板と仕切板とを側壁とし燃焼室に連続し燃焼室から排気ガスを当燃焼加熱器外に導くと共に、仕切板を通じて排気ガスの熱で燃料ガスを予熱する導出路130と、配置板の導入路と逆側から配置板を支持する支持板132と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を燃焼させて被加熱物を加熱する燃焼加熱器および複数の燃焼加熱器を連接した燃焼加熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料ガスを燃焼させた燃焼熱で輻射体を加熱し、輻射体の輻射面からの輻射熱で、工業材料や食品等を加熱する燃焼加熱器が広く普及している。このような燃焼加熱器について、例えば、輻射強度を向上させるために輻射面に輻射率の高い材料、形状を適用する技術が提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
上述した従来の燃焼加熱器では、輻射面の表面に設けた炎口で燃料ガスを燃焼させ、排気ガスを回収せずに周囲の環境に排気していた。したがって、排熱を回収できず熱効率が低下し、また、炎口の面積分、輻射面の面積が小さくなって輻射強度を高くできなかった。さらに、排気ガスの熱によって装置周辺の環境温度が上昇したり、排気ガスが充満してしまったりして、労働環境の改善を図れない場合があった。
【0004】
そこで、熱効率を向上させた燃焼加熱器が提案されている。この燃焼加熱器は、燃料ガスの導入路から、燃焼室および燃焼後の排気ガスの導出路までを密閉構造とし、導入路と導出路とを隣接させ、排気ガスの熱で燃焼前の燃料ガスを予熱して熱効率を高めている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−324925号公報
【特許文献2】特開2007−212082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献2のような燃焼加熱器は、輻射面を有する加熱板、加熱板と対向配置された配置板、および加熱板と配置板の間に配置された仕切板等で構成され、配置板と仕切板とで挟まれた空間が燃料ガスの導入路となる。この配置板は、燃料ガスの導入路を形成するための高い面精度や高温耐酸化性が必要とされると共に、筐体の一部を成すため剛性も要求される。燃焼加熱器は、配置板としてこのような複数の要求を満たす部材を使用するため、製造コストが高くなってしまっていた。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、安価な構成で、燃料ガスを燃焼室に導入する導入路を高精度に形成しつつ筐体の十分な剛性を確保することが可能な、燃焼加熱器および燃焼加熱システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の燃焼加熱器は、加熱板と、加熱板に対向配置された配置板と、加熱板と配置板の外周に沿って配され、加熱板と配置板とで空間を囲繞する外周壁と、加熱板と配置板の間に配置された仕切板と、加熱板、配置板、および外周壁で囲繞される空間内に配置された燃焼室と、配置板と仕切板とを側壁とし燃焼室に連続して燃料ガスを導く導入路と、加熱板と仕切板とを側壁とし燃焼室に連続して燃焼室から排気ガスを当該燃焼加熱器外に導くと共に、仕切板を通じて排気ガスの熱で燃料ガスを予熱する導出路と、配置板の導入路に対して逆側から配置板を支持する支持板と、を備えることを特徴とする。
【0009】
配置板は、支持板よりも高温耐酸化性に優れる材料で形成されていてもよい。
【0010】
燃焼室は外周壁の内側に外周壁に沿って配され、燃焼室の外周壁側の面および配置板側の面に連続配置され、断熱性を有する第1断熱部をさらに備えてもよい。
【0011】
第1断熱部は、支持板よりも高温耐酸化性に優れる材料で形成されていてもよい。
【0012】
配置板と支持板との間に狭持され、断熱性を有する第2断熱部をさらに備えてもよい。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の燃焼加熱システムは、加熱板と、加熱板に対向配置された配置板と、加熱板と配置板の外周に沿って配され、加熱板と配置板とで空間を囲繞する外周壁と、加熱板と配置板の間に配置された仕切板と、加熱板、配置板、および外周壁で囲繞される空間内に配置された燃焼室と、配置板と仕切板とを側壁とし燃焼室に連続して燃料ガスを導く導入路と、加熱板と仕切板とを側壁とし燃焼室に連続して燃焼室から排気ガスを当該燃焼加熱器外に導くと共に、仕切板を通じて排気ガスの熱で燃料ガスを予熱する導出路とを備える燃焼加熱器を複数連接した燃焼加熱システムであって、配置板の導入路に対して逆側から、連接する複数の燃焼加熱器における複数の配置板を支持する一連の板部材である支持板を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、安価な構成で、燃料ガスを燃焼室に導入する導入路を高精度に形成しつつ筐体の十分な剛性を確保可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】燃焼加熱システムの外観例を示した外観斜視図である。
【図2】図1のAA断面を示した斜視図である。
【図3】燃焼加熱システムの内側を示した斜視図である。
【図4】図1のBB断面図である。
【図5】変形例における図1のBB断面図である。
【図6】燃焼加熱器の構造を説明するための組立図である。
【図7】複数の突起部を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
燃焼加熱器は、本体容器内に、燃焼室と、燃料ガス(未燃焼ガス:燃焼前のガス)の導入路と、排気ガス(燃焼ガス:燃焼後のガス)の導出路とが密閉された状態で形成され、導出路を流れる排気ガスの熱で導入路を流れる燃料ガスを予熱することで、燃焼室において超過エンタルピ燃焼を実現する。このような燃焼加熱器は、排気ガスの熱を回収しているので、熱効率が高く、排気ガス自体も回収されるため、労働環境を損なわない。また、炎口が不要なため、輻射面の面積を縮小しなくて済み輻射強度が高いといった利点も有する。
【0018】
このような燃焼加熱器のうち、特に、ディスク型の燃焼加熱器は、伝熱を担う仕切板が、一対の薄板(加熱板、配置板)よりも小型の薄板からなり、一対の薄板の間に空隙を設けて配置するといった簡易な構成で、導入路と導出路とに熱交換をさせている。さらに、ディスク型の燃焼加熱器は、輻射面を有する薄板の形状の自由度が高く、燃焼室の配置の自由度も高いため、燃焼室を大きくとることで燃焼負荷率(燃焼室内の単位体積あたりの発熱)を抑え、局所的な劣化や損傷を回避できる。
【0019】
このような高い熱効率と排気ガスの回収機能を両立する使い勝手の良さから、今後、燃焼を終えた排気ガスをそのまま周囲の環境に排気する従来の燃焼加熱器を、本実施形態のディスク型の燃焼加熱器に置き換える機会が増えることが見込まれる。しかし、現在のディスク型燃焼加熱器は比較的小型のものが多く、大きさの制約により、従来の大型燃焼加熱器をディスク型燃焼加熱器にすぐに置き換えるということができなかった。
【0020】
ここで、ディスク型燃焼加熱器の熱量や加熱面積の増加を試みて、単純に2次元方向に燃焼加熱器を大きくしようとすると、密閉性を安定的に維持するために製造コストが膨らみ、また、燃焼加熱器内の導入路と導出路を仕切っている仕切板の熱変形が大きくなって、温度分布が偏ったり、不完全燃焼によるCO排出濃度が高まったりしてしまい、燃焼加熱器がその性能を十分に発揮できないおそれが生じる。そこで、本願発明者は、複数の燃焼加熱器を連設する燃焼加熱システムに着目した。ここで、連設は、燃焼加熱器を連なった状態に設けることを言い、複数の燃焼加熱器を一体的に形成することも含む。
【0021】
このような燃焼加熱システムを構成する燃焼加熱器において、配置板と仕切板とで挟まれた空間が燃料ガスの導入路となる。そのため、配置板は、燃料ガスの導入路を形成するための高い面精度や高温耐酸化性が必要とされ、さらに、筐体の一部を成す場合、剛性も要求される。そのような高機能材料を用いると、燃焼加熱器の製造コストが高くなってしまっていた。
【0022】
本実施形態における複数の燃焼加熱器を連設した燃焼加熱システムは、安価な構成で、燃料ガスを燃焼室に導入する導入路を高精度で形成しつつ筐体の十分な剛性を確保することを可能とする。
【0023】
(燃焼加熱システム100)
図1は、燃焼加熱システム100の外観例を示した外観斜視図であり、図2は、図1のAA断面を示した斜視図であり、図3は、燃焼加熱システム100の内部状態を示した斜視図である。図3では、燃焼加熱システム100の内側を説明するため、加熱板を取り外した状態を示す。
【0024】
図1〜図3に示すように、燃焼加熱システム100は、複数(ここでは2つ)の燃焼加熱器110を連設してなり、燃料ガスの供給を受けて、それぞれの燃焼加熱器110を加熱し、その排気ガスを回収する。
【0025】
また、図2、図3に示すように、燃焼加熱器110間の接続部位には、連設された燃焼加熱器110内の密閉空間を連通する火移り部102が形成されている。ただし、密閉空間といっても、気体中で用いる場合、必ずしも完全密閉する必要はない。本実施形態の燃焼加熱システム100では、例えば、イグナイタ(図示せず)等の点火装置による1回の点火によって、火移り部102を通じ連設するすべての燃焼加熱器110に火炎が広がって点火される。
【0026】
ここでは、大きな熱量や加熱面積を実現するため、熱量や加熱面積が比較的小さい燃焼加熱器110を複数組み合わせる。こうして、燃焼加熱器110単体を大きく設計した場合と比較して、個々の熱変形を抑制することができる。また、熱量や加熱面積の増加要求に伴って、燃焼加熱器110をさらに連設したとしても、個々の燃焼能力は、燃焼加熱器110の増加の影響を受けないため、その安定性や耐久性を維持することができる。ここでは、説明の便宜のため、燃焼加熱器110を2つのみ連設する場合を挙げているが、燃焼加熱器110の長手方向および短手方向に任意に燃焼加熱器110を連設することができ、様々な縦横比の燃焼加熱システム100を形成することができる。
【0027】
(燃焼加熱器110)
図4は、図1のBB断面図である。図4(a)に示すように、燃焼加熱器110は、加熱板118と、配置板120と、外周壁122と、仕切板124と、燃焼室126と、導入路128と、導出路130と、支持板132と、第1断熱部134と、第2断熱部136と、第3断熱部138と、第1配管部140と、第2配管部142とを含んで構成される。なお、本実施形態では、燃焼加熱器110は、外形が220mm×140mm(長手方向に2つ連設すると440mm×140mm)程度のものを例に挙げて説明する。ただし、燃焼加熱器110の外形は、かかる大きさに限定されず、任意の大きさに設定することができる。
【0028】
本実施形態における燃焼加熱器110は、本体容器に、都市ガス等と燃焼用酸化剤ガスとしての空気とが予め混合された燃料ガス(予混合ガス)が供給される予混合タイプとするが、かかる場合に限定されず、燃焼室126や燃焼室126の直前の導入路128において両者が混合して拡散燃焼を行う拡散タイプであってもよい。
【0029】
加熱板118および配置板120は、対向して配置され、耐熱性および高温耐酸化性が高い素材、例えば、ステンレス鋼(SUS:Stainless Used Steel)や、熱伝導率が高い素材、例えば、黄銅(真鍮)等で形成され、互いに略平行(本実施形態における超過エンタルピ燃焼を起こさせるための実質的な平行)に配置される。また、加熱板118は、燃焼室126で生成された燃焼熱で加熱される輻射体としても機能する。
【0030】
さらに、加熱板118には、凹凸が形成された凹凸部118aが設けられている。かかる構成により、加熱板118および配置板120の温度差や加熱板118および配置板120の素材の違いによる熱膨張の変形量の差を凹凸部118aで吸収し、外周壁122との結合部分等に生じる応力が小さくなるため、加熱と冷却を繰り返すことによる熱疲労および高温クリープを抑えることができる。また、加熱板118の輻射面の面積が大きくなるため、輻射強度を高めることも可能となる。
【0031】
外周壁122は、上面視において、内周がトラック形状(略平行な2つの線分と、その2つの線分をつなぐ2つの円弧(半円)からなる形状)に、外周が矩形に形成され(図3参照)、加熱板118と配置板120の外周に沿って配され、加熱板122と配置板120とで空間を囲繞する。また、外周壁122の外周面を輻射面として用いることもできる。本実施形態において、外周壁122は後述する支持板132と一体に形成されるが、別体に形成してもよい。
【0032】
燃焼加熱器110は、外周壁122の外表面の面積より加熱板118の面積の方が大きい。この加熱板118が輻射面となり、燃焼室126で燃料ガスが燃焼すると、輻射や空気の対流によって輻射面から熱が伝達して被加熱物が加熱される。また、燃焼加熱システム100のように燃焼加熱器110が複数連設される場合、その複数の燃焼加熱器110すべての輻射面において、ほぼ同等の輻射熱を得ることができる。本実施形態においては、燃焼加熱器110の上下壁面のうち上側の面(加熱板118の上面)を輻射面とするが、かかる場合に限定されず、下側の面(後述する支持板132の下面)を輻射面としたり上下壁面の両面を輻射面としたりしてもよい。
【0033】
仕切板124は、加熱板118よりも外形が小さく、外周壁122の内周面に沿った形状に形成され(図3参照)、加熱板118および配置板120の間で、加熱板118および配置板120と略平行に配置される。仕切板124と加熱板118および配置板120との間にはそれぞれ空隙が形成される。また、仕切板124は、耐熱性および高温耐酸化性が高い素材、例えば、ステンレス鋼や、熱伝導率が高い素材、例えば、黄銅等で形成される。かかる仕切板124と加熱板118および配置板120は、間に空隙が形成されれば、傾いて対向配置されてもよい。また、仕切板124、加熱板118および配置板120は、その厚みに制限はなく、平板に限らず凹凸に形成されてもよい。
【0034】
燃焼室126は、外周壁122、加熱板118、および配置板120で囲繞される空間内に配置される。また、燃焼室126は、仕切板124の外周端部に面しており、外周壁122より内側に外周壁122に沿って形成される。このように外周壁122に沿って燃焼室126を形成する構成により燃焼室126の体積を十分に確保でき、燃焼負荷率を低くできる。
【0035】
図4(a)に示すように、本体容器内では、厚み方向(加熱板118の上面に直交する方向)に、導入路128と導出路130とが重ねて形成される。導入路128は、配置板120と、仕切板124とを側壁とする、配置板120と仕切板124に挟まれた空間であり、燃焼室126に連続して配され、本体容器中央に流入した燃料ガスを燃焼室126に放射状に導く。
【0036】
導出路130は、加熱板118と、仕切板124とを側壁とし、燃焼室126に連続して配され、燃焼室126から排気ガスを本体容器中央に集約して当該燃焼加熱器110外に導く。また、図4(a)に示すように、本体容器内では、厚み方向に、導入路128と導出路130とが重なって形成されているので、仕切板124を通じて排気ガスの熱を伝達し、燃料ガスを予熱することができる。
【0037】
支持板132は、配置板120の導入路128と逆側から配置板120を支持する。また、配置板120は、支持板132よりも高温耐酸化性に優れる材料で形成されている。換言すれば、支持板132は、配置板120と比較して高温耐酸化性が劣る材料、例えば、SUS304等で形成されても、少なくとも筺体として燃焼加熱システム100全体を支持する剛性を備えればよい。
【0038】
配置板120に高温耐酸化性を持たせ、配置板120より低温側に支持板132を配する構成により、燃焼加熱器110は、支持板132に廉価な部材を用いることができ、製造コストを低減することが可能となる。
【0039】
第1断熱部134は、燃焼室126の外周壁122側の面および配置板120側の面に連続配置され、断熱性を有する。
【0040】
第1断熱部134を備える構成により、外周壁122が直接火炎に接触することがなくなる。そのため、火炎の接触に耐えるため高温耐酸化性を確保する役割を第1断熱部134に、筐体の剛性を確保する役割を外周壁122(支持板132)に、それぞれ機能分担しているため、高温耐酸化性、剛性を同時に満たす部材を用いる必要がなく製造コストを抑えることができる。
【0041】
第1断熱部134は、支持板132よりも高温耐酸化性に優れる材料で形成されている。換言すれば、支持板132は、第1断熱部134と比較して高温耐酸化性が劣る材料で形成されてもよい。
【0042】
第1断熱部134に高温耐酸化性を持たせ、第1断熱部134より低温側に支持板132を配する構成により、燃焼加熱器110は、支持板132に廉価な部材を用いることができ、製造コストを低減することが可能となる。
【0043】
図5は、変形例における図1のBB断面図である。上記実施形態における第1断熱部134と配置板120とを一体形成し、図5に示すような配置板220としてもよい。かかる構成により、部品点数を削減し、製造コストを抑制することが可能となる。
【0044】
図4に戻って、第2断熱部136は、配置板120と支持板132との間に狭持され、断熱性を有する。第3断熱部138は、外周壁122(支持板132)と第1断熱部134および第2断熱部136との間に狭持され、断熱性を有する。
【0045】
第2断熱部136および第3断熱部138を設ける構成により、第1断熱部134の温度が高く維持され、燃焼室126における火炎の温度が上昇する。その結果、不完全燃焼の発生が抑えられ、燃焼加熱器110は、CO排出濃度を抑制することが可能となる。
【0046】
第1配管部140は、導入路128に挿通し、燃料ガスを当該燃焼加熱器110内に導く。具体的に、支持板132の中心部には、第1配管部140の外径と同一径の孔132aが設けられ、配置板120の中心部には、第1配管部140の内径と同一径の孔120aが設けられている。この支持板132の孔132aを第1配管部140が貫通し、配置板120の孔120aの内周部分に第1配管部140の内周部分が連続するように接続されている。また、第2断熱部136の中心部にも第1配管部140を通すための孔136aが設けられている。ここでは、孔132a、136aの内径と第1配管部140の外径とが等しくなる。
【0047】
第2配管部142は、第1配管部140内部に配される。即ち、第1配管部140と第2配管部142とで二重管を形成する。また、第2配管部142は、導出路130に挿通し、排気ガスを当該燃焼加熱器110外に導く。具体的に、仕切板124の中心部には、第2配管部142の外径と同一径の孔124aが設けられており、この孔124aの内周部分に第2配管部142が嵌合される。さらに、第2配管部142は、排気ガスの熱を、第1配管部140を流れる燃料ガスに伝達する役割も担う。
【0048】
また、第2配管部142には、蛇腹部142aが設けられている。第2配管部142の熱膨張による変形量を、蛇腹部142aの部分が流路方向に縮むことで吸収でき、加熱と冷却を繰り返すことによる熱疲労および高温クリープを抑えることができる。
【0049】
図6は、燃焼加熱器110の構造を説明するための組立図である。ここで、図6の組立図を用いて、各構成要素の位置関係を説明する。まず、支持板132の第1切り抜き部132bに、第2断熱部136が挿入される。そして、第1断熱部134が第2断熱部136の上から重ねられる。
【0050】
図4(a)の円部分を拡大した図4(b)に示すように、支持板132には、第1断熱部134を嵌合するための切り欠き部132cが設けられている。第1断熱部134は、支持板132の切り抜き部132bおよび配置板120の切り欠き部120bに嵌合して水平方向の位置ずれが制限される。また、切り抜き部132bは第1断熱部134が嵌合した際、支持板132と第1断熱部134との間で遊びができるように大きめに設けられている。そのため、第1断熱部134が熱膨張しても膨張に伴う応力の発生を回避できる。
【0051】
続いて、配置板120が第1断熱部134の上から重ねられる。図4(b)に示すように、配置板120にも切り欠き部120bが設けられており、第1断熱部134と嵌合する。したがって、第1断熱部134の水平方向の位置ずれが制限される。また、配置板120の切り欠き部120bも大きめに設けられており、第1断熱部134が熱膨張しても膨張に伴う応力の発生を回避できる。
【0052】
そして、仕切板124が重ねられ、最後に、加熱板118が全体を覆う。加熱板118は、支持板132より外形が一回り大きく、支持板132を覆いこんで、折り返し部118bが折り返すことで、支持板132と固着される。
【0053】
また、配置板120は、第1配管部140の端部に固定されるのに対し、仕切板124は第1配管部140より突出している第2配管部142の端部に固定され、第1配管部140の端部と第2配管部142の端部の差分だけ、配置板120と仕切板124とが離隔することとなる。このとき、仕切板124の側面と、外周壁122の円筒状の内周面との間には燃焼室126としての空隙が形成される。
【0054】
本実施形態においては、第1配管部140の内部に第2配管部142が配されるが、かかる場合に限定されず、第1配管部140および第2配管部142を加熱板118側から導入路128および導出路130に挿通させ、第2配管部142の内部に第1配管部140が配されてもよい。
【0055】
ここで、燃料ガスおよび排気ガスの流れを具体的に説明する。図4(b)中、白抜き矢印は燃料ガスの流れを、濃い灰色で塗りつぶした矢印は排気ガスの流れを、黒色で塗りつぶした矢印は熱の移動を示す。第1配管部140に燃料ガスを供給すると、燃料ガスは配置板120の中心部から導入路128に流入し、水平方向に放射状に広がりながら燃焼室126に向けて流れる。そして、燃料ガスは、燃焼室126において外周壁122に衝突し、燃焼した後、高温の排気ガスとなり、排気ガスは加熱板118に伝熱した後、燃焼室126から導出路130を通じて第2配管部142に流入する。
【0056】
仕切板124は比較的熱伝導し易い素材で形成されており、導出路130を通過する排気ガスの熱は、仕切板124を介して導入路128を通過する燃料ガスに伝わる(伝熱する)。ここでは、導出路130を流れる排気ガスと導入路128を流れる燃料ガスとが、仕切板124を挟んで対向流(カウンタフロー)となっているため、排気ガスの熱で燃料ガスを効率的に予熱することが可能となり、高い熱効率を得ることができる。このように燃料ガスを予熱してから燃焼する、所謂、超過エンタルピ燃焼によって、燃料ガスの燃焼を安定化し、不完全燃焼によって生じるCOの濃度を極低濃度に抑えることができる。
【0057】
さらに、燃焼室126において安定した燃焼を可能とするために、導入路128と燃焼室126との境界において、燃料ガスの流れに垂直な断面形状(以下、流路断面形状と称す)における代表寸法は、火炎を導入路128側に通さない(燃焼反応が導入路128の方に伝播されない)程度の消炎距離(消炎等価径を含む)を考慮し、消炎距離以下とするとよい。ここで、代表寸法は、燃料ガスが燃焼室126に流入する直前の流路の断面形状によって定まる寸法である。例えば、流路断面形状が円形状である場合には、代表寸法は円形断面の直径を指し、流路断面形状が円形状以外である場合には、代表寸法は断面の水力相当直径を指す。水力相当直径Dは、4×流路断面積/ぬれ縁長さで求められる。ぬれ縁長さは、流路断面における、燃料ガスが接触する壁(配置板120、仕切板124)部分の長さを示す。
【0058】
例えば、配置板120と仕切板124との距離を消炎距離以下とすれば、火炎が導入路128内に侵入することがなくなり、燃焼が安定化される。しかし、配置板120と仕切板124との距離を消炎距離以下で均一にするためには、配置板120と仕切板124の面精度や取り付け精度を高める必要がある。そこで、本実施形態においては、配置板120と仕切板124との距離を消炎距離よりも大きくしてもよいこととし、仕切板124の下面(配置板120側)の燃焼室126近傍に配置板120と当接する複数の突起部152を所定の間隔Lを空けて配置する。
【0059】
図7は、複数の突起部152を説明するための説明図である。図7では、図3のCC断面からの斜視図を示す。図7において、複数の突起部152の構造の理解を容易にするため、突起部152のうち、仕切板124で隠れている部分を破線で示す。また、矢印154は燃料ガスの流れの向きを示す。導入路128は、仕切板124に設けられた複数の突起部152によって、流路断面が狭められている。燃料ガスは、導入路128のうち、図6(b)の部分拡大図および、図7で示すように、隣接する突起部152の間の空隙を通じて燃焼室126に流入する。このとき、突起部152同士の間隔Lが流路断面形状の代表寸法となる。
【0060】
ここで、燃料ガスの消炎距離dは、管壁モデルの径の大きさで表されるものであり、式(1)により求められる。
d=2λ・Nu1/2/Cp・ρu・Su …式(1)
式(1)において、λは熱伝導率、Nuはヌセルト数、Cpは定圧比熱、ρuは燃料ガスの密度、Suは燃焼速度である。
【0061】
本実施形態の燃焼加熱器110は、上述した代表寸法(突起部152同士の間隔L)が消炎距離d以下となるように設計されているため、燃焼室126において安定した燃焼が可能となる。また、複数の突起部152を設ける構成に限定されず、仕切板124の下面の燃焼室126近傍に、1つの円環形の突起部を設けてもよい。この場合、突起部と配置板120との距離が代表寸法となる。かかる構成により、より簡易な構造で導入路128の代表寸法を消炎距離d以下とすることができる。
【0062】
以上、説明したように、燃焼加熱器110は、導出路130から導入路128に対して熱を伝達するので熱効率を非常に高くでき、第2配管部142を通じて排気ガスを回収するので、労働環境を損なうこともない。
【0063】
また、燃焼加熱器110は、導入路128を形成するための面精度、高温耐酸化性を確保する役割を配置板120に、筐体の剛性を確保する役割を支持板132に、それぞれ機能分担しているため、高温耐酸化性、剛性の両方を満たす高価な部材を使用する必要がなく、また支持板132が配置板120と同等の面精度を満たす必要がないため、製造コストを抑えることができる。
【0064】
また、複数の燃焼加熱器110で筐体を一体形成する場合、筐体は比較的面積が大きくなり、より剛性が求められる。しかし、配置板が筐体の一部を成す場合、燃料ガスの導入路を形成するための高い面精度や高温耐酸化性も必要とされている。そのため、燃焼加熱システムは、配置板としてこのような複数の要求を満たす部材、加工精度が必要となるため、製造コストが高くなってしまっていた。
【0065】
本実施形態の燃焼加熱システム100は、配置板120が筐体としての役割を成す必要がなく、支持板132は燃焼加熱システム100全体で一体形成し、配置板120は燃焼加熱器110毎に分割して配置することができる。そのため、配置板120の面積を比較的小さく抑えることができ、製造時において面精度や仕切板124との平行度の確保が容易となる。また、使用時においても、燃焼加熱システム100に衝撃があったり、熱変形を起こしたりしても、配置板120の面積が比較的小さいことから、配置板120と仕切板124との平行度の低下を抑制できる。
【0066】
また、上述した実施形態では、燃焼室126は、外周壁122に沿って形成されるとしたが、かかる場合に限らず、燃焼室126は、外周壁122、加熱板118、および配置板120で囲繞される空間内であればよい。ただし、排気ガスによる燃料ガスの予熱効果を十分に確保するため、燃焼室126は、例えば、加熱板118と仕切板124との間の空間、または仕切板124と配置板120との間の空間のうち、配置板120に設けられた孔120aから外周壁122までの中間位置より外周壁122に近い空間のいずれかの位置に設けられることが望ましい。
【0067】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、燃料を燃焼させて被加熱物を加熱する燃焼加熱器および複数の燃焼加熱器を連接した燃焼加熱システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
110 …燃焼加熱器
118 …加熱板
120、220 …配置板
122 …外周壁
124 …仕切板
126 …燃焼室
128 …導入路
130 …導出路
132 …支持板
134 …第1断熱部
136 …第2断熱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱板と、
前記加熱板に対向配置された配置板と、
前記加熱板と前記配置板の外周に沿って配され、該加熱板と該配置板とで空間を囲繞する外周壁と、
前記加熱板と前記配置板の間に配置された仕切板と、
前記加熱板、前記配置板、および前記外周壁で囲繞される空間内に配置された燃焼室と、
前記配置板と前記仕切板とを側壁とし前記燃焼室に連続して燃料ガスを導く導入路と、
前記加熱板と前記仕切板とを側壁とし前記燃焼室に連続して該燃焼室から排気ガスを当該燃焼加熱器外に導くと共に、該仕切板を通じて該排気ガスの熱で前記燃料ガスを予熱する導出路と、
前記配置板の前記導入路に対して逆側から前記配置板を支持する支持板と、
を備えることを特徴とする燃焼加熱器。
【請求項2】
前記配置板は、前記支持板よりも高温耐酸化性に優れる材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃焼加熱器。
【請求項3】
前記燃焼室は前記外周壁の内側に該外周壁に沿って配され、
前記燃焼室の前記外周壁側の面および前記配置板側の面に連続配置され、断熱性を有する第1断熱部をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の燃焼加熱器。
【請求項4】
前記第1断熱部は、前記支持板よりも高温耐酸化性に優れる材料で形成されていることを特徴とする請求項3に記載の燃焼加熱器。
【請求項5】
前記配置板と前記支持板との間に狭持され、断熱性を有する第2断熱部をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の燃焼加熱器。
【請求項6】
加熱板と、該加熱板に対向配置された配置板と、該加熱板と該配置板の外周に沿って配され、該加熱板と該配置板とで空間を囲繞する外周壁と、該加熱板と該配置板の間に配置された仕切板と、該加熱板、該配置板、および該外周壁で囲繞される空間内に配置された燃焼室と、該配置板と該仕切板とを側壁とし該燃焼室に連続して燃料ガスを導く導入路と、該加熱板と該仕切板とを側壁とし該燃焼室に連続して該燃焼室から排気ガスを当該燃焼加熱器外に導くと共に、該仕切板を通じて該排気ガスの熱で該燃料ガスを予熱する導出路とを備える燃焼加熱器を複数連接した燃焼加熱システムであって、
前記配置板の前記導入路に対して逆側から、連接する複数の燃焼加熱器における複数の該配置板を支持する一連の板部材である支持板を備えることを特徴とする燃焼加熱システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図4】
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