説明

燃焼炉に供給される燃焼対象物の処理システム、処理方法およびこれらを用いた燃焼炉の燃焼制御システム

【課題】 燃焼炉に供給される燃焼対象物が組成変動の激しい場合であっても、安定した燃焼制御が可能な燃焼対象物の供給が可能な処理システム、処理方法およびこれらを用いた燃焼炉の燃焼制御システムを提供すること。
【解決手段】 ピット2に投入される投入物情報およびピット2内の画像情報を入力し、瞬時の画像情報に対して2値化処理等を行い瞬時の燃焼対象物情報を推算し、連続する画像情報を基に燃焼対象物Gの落下軌跡を推算し、これらを基に蓄積された燃焼対象物分布状態Aを推算し、質の分布状態Aを基にピット2内の燃焼対象物Gを攪拌し、量の分布状態Aを基に燃焼対象物Gを燃焼炉に移送することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼炉に供給される燃焼対象物の処理システム、処理方法およびこれらを用いた燃焼炉の燃焼制御システムに関し、特に、ごみ焼却炉に供給される廃棄物等組成変動の激しい燃焼対象物に対し、燃焼炉に供給する前に貯留されるピットにおける攪拌処理等の均一化を図る処理システム、処理方法およびこれらを用いた燃焼炉の燃焼制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ごみ処理施設などにおいて処理される廃棄物は、種々雑多な物質が混在するために、廃棄物の性質(ごみ質)はさまざまな要因により安定せず、変動が激しい。従って、こうした組成変動の激しい燃焼対象物を、そのまま燃焼炉に供給すると、安定した燃焼制御が困難となり、ダイオキシンや一酸化炭素(CO)あるいは窒素酸化物(NOx)の発生などの原因となる。また、発熱量の大きな組成の燃焼対象物の燃焼における高熱や燃焼により発生する腐食性物質による燃焼炉の損傷も大きくなることがある。
【0003】
こうした燃焼炉の安定した燃焼制御を実現するために、
(i)燃焼炉に供給される燃焼対象物の量と質を把握し、それに対応した燃焼炉の運転条件(燃焼温度や空気供給量などの条件)を制御する方法、あるいは
(ii)予め燃焼炉に供給される燃焼対象物を所定量貯留し、攪拌して均一化することによって、安定した量と質の燃焼対象物を燃焼炉に供給する方法
などが提案され、実用化されている。
【0004】
例えば、前者については、図8に例示するような流動式の焼却装置を挙げることができる。給じん量を正確に予測、測定すると共に、ごみの性状をも判別できる算出機構を有し、それにより給じん量、二次空気量等を制御できるように、給じん機101と、該給じん機のごみの出口部105と流動床式焼却炉103のごみの供給口とを結ぶシュート部102を有し、前記給じん機101のごみの出口部105からごみの落下する様子を観察できる位置に取り付けたテレビカメラ104の画像をリアルタイムで処理し、ごみの落下量113又はこれと発熱量114を算出し、算出した信号により、ごみの給じん量、二次空気量、流動空気量を制御115することができる(例えば特許文献1参照)。ここで、106はボイラ、107はホッパ、108は流動層、109はモーター、110は送風機、111は押込空気、112は2次空気、116はモーター回転数制御、117は二次空気量制御、118は流動空気量制御を示す。
【0005】
また、後者については、ごみピット内に投入されるごみを、そのごみ質を色調にて捉えてクレーンを制御することにより、ごみ質の均一化を図ることができるように、図9に例示するようなクレーンを用いて攪拌するごみ処理工場用自動クレーンの制御装置を挙げることができる。具体的には、2台一対のカメラ202a、202bのステレオ視による視差を利用してごみピットP内に堆積したごみ高さを計測するごみ高さ計測手段と、ごみ高さ計測手段により計測されたごみ高さの情報をごみ高さマップとして記憶するごみ高さ記憶手段と、ごみ高さの情報よりごみの色調を判別して記憶するごみ色調記憶手段とを備え、ごみ色調マップに基づいてごみピットP内の異質ごみGaを特定し、異質ごみGaを攪拌するようにクレーン201が制御される(例えば特許文献2参照)。ここで、Dは2台一対としたカメラの間隔、Gはごみ、Hはホッパ、Rはクレーン操作室、211はクレーンガーダ、212はバケット、213はクラブ、214はクレーンガーダの走行レールを示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−060842号公報
【特許文献2】特開2007−126246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術には、次のような課題があった。すなわち、焼却装置に投入される直前の給じん量を正確に予測、測定すると共に、ごみの性状をも判別し、給じん量、二次空気量等を制御する方法においては、ごみの性状がある程度均一な場合には、高い制御機能を発揮することができるが、ごみの性状が非常に不安定で大きな変動のある場合には、十分な制御ができず、焼却炉内の燃焼状態が不安定になり、安定した燃焼制御は困難であった。
【0008】
また、ごみ焼却炉ピットでのごみ高さおよび色調により、監視し、攪拌操作を行う方法にあっては、特定の時間におけるごみ高さおよび色調の情報、つまり表面情報のみを基に操作が行われるために、十分な均一性を確保することが困難であった。ごみ高さを一定に制御してもごみ質の均一性は担保されず、表面のみの色調から得られるごみ質の情報だけではピット内全体のごみ質を均一に攪拌することができず、上記の課題を十分に解消することはできなかった。
【0009】
さらに、従来は、ごみ収集車からピットにダンプされるごみの情報を把握することができなかったため、攪拌操作は操作員の技術に頼っていた。操作員による操作だけでは十分攪拌されずに焼却炉内に投入される場合も多く、焼却炉内の燃焼状態が不安定になり、ダイオキシン類やCO、NOx等の発生増加、未燃物の増加、炉温の異常変動などの原因となる。
【0010】
本発明の目的は、上記従来技術の有する問題点に鑑みて、燃焼炉に供給される燃焼対象物が組成変動の激しい場合であっても、安定した燃焼制御が可能な燃焼対象物の供給が可能な処理システム、処理方法およびこれらを用いた燃焼炉の燃焼制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下に示す燃焼炉に供給される燃焼対象物の処理システム、処理方法およびこれらを用いた燃焼炉の燃焼制御システムにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0012】
本発明は、燃焼炉に供給される燃焼対象物を貯留するピットと、該ピットに燃焼対象物を投入する投入口と、貯留された燃焼対象物を攪拌する攪拌手段と、貯留された燃焼対象物を燃焼炉に移送する移送手段と、蓄積される燃焼対象物を投入口からピット内まで撮影する画像モニタと、を備えた燃焼炉に供給される燃焼対象物の処理システムであって、
(a)ピットに投入される燃焼対象物全体または個別の量および質を含む投入物情報および前記画像モニタからの画像情報を入力し、
(b)前記投入口近傍の瞬時の画像情報に対して、2値化処理、マスク処理、ノイズ除去処理およびラベリング処理を行い、前記投入物情報を基に、投入された燃焼対象物の個別の大きさあるいは量および質を含む瞬時の燃焼対象物情報を推算し、
(c)投入口からピット内への経路の連続する所定時間の画像情報を基に、特定された燃焼対象物の位置を検出し、該燃焼対象物の落下軌跡を推算し、
(d)ピット内を所定の領域に区分し、前記投入物情報、瞬時の燃焼対象物情報および燃焼対象物の落下軌跡を基に、蓄積された燃焼対象物の量および質の分布状態Aを推算し、
(e)該質の分布状態Aにおいて、区分された領域間の差が所定の範囲外となった場合に、前記攪拌手段を駆動させ、ピット内の燃焼対象物を攪拌し、
(f)前記量の分布状態Aにおいて、蓄積された燃焼対象物の全体または特定の領域の量および質が所定の範囲内にあるときに、前記移送手段を駆動させ、該燃焼対象物を燃焼炉に移送する
演算処理部を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、予めピットに貯留された後に燃焼炉に供給される燃焼対象物を処理する方法であって、該ピットに投入される燃焼対象物全体または個別の量および質を含む投入物情報、およびピットへの投入口からピット内まで撮影された燃焼対象物の画像情報を基に、
(b)前記投入口近傍の瞬時の画像情報に対して、2値化処理、マスク処理、ノイズ除去処理およびラベリング処理を行い、前記投入物情報を基に、投入された燃焼対象物の個別の大きさあるいは量および質を含む瞬時の燃焼対象物情報を推算し、
(c)投入口からピット内への経路の連続する所定時間の画像情報を基に、特定された燃焼対象物の位置を検出し、該燃焼対象物の落下軌跡を推算し、
(d)ピット内を所定の領域に区分し、前記投入物情報、瞬時の燃焼対象物情報および燃焼対象物の落下軌跡を基に、蓄積された燃焼対象物の量および質の分布状態Aを推算し、
(e)該質の分布状態Aにおいて、区分された領域間の差が所定の範囲外となった場合にピット内の燃焼対象物を攪拌し、
(f)前記量の分布状態Aにおいて、蓄積された燃焼対象物の全体または特定の領域の量および質が所定の範囲内にあるときに燃焼対象物を燃焼炉に移送する
ことを特徴とする。
【0014】
燃焼炉に供給される燃焼対象物には、種々雑多な物質や成分が混在しその組成が大きく変動する場合があり、安定した燃焼条件を形成することが難しい。本発明は、こうした燃焼対象物を予めピットに貯留するとともに、ピットに投入される投入物情報と蓄積される燃焼対象物の投入口からピット内までの画像情報を基に、ピット内の燃焼対象物の量と質の分布状態を推算し、推算結果を基に適切な攪拌操作を行い、均一化された燃焼対象物を燃焼炉に供給することによって、燃焼炉の安定な燃焼条件を確保することを可能としたものである。具体的には、例えば廃棄物を燃焼対象物とする場合には、収集された家庭用ごみや事務系ごみあるいは商業系ごみなどによって、ごみ質を概ね区分することができ、収集車から投入される燃焼対象物の量と質を特定し、投入物情報とすることができる。従って、こうした投入物情報と画像情報に基づき、投入される個々の燃焼対象物の移動・貯留状態を推算し、ピット内の燃焼対象物全体としての分布状態の把握および均一な分布状態を形成する攪拌操作を設定することができる。これにより、燃焼炉に供給される燃焼対象物が組成変動の激しい場合であっても、安定した燃焼制御が可能な燃焼対象物の供給が可能な処理システムあるいは処理方法を形成することが可能となった。
【0015】
ここで、画像情報に対する「2値化」とは、各画素を固定のしきい値と比較してその大小により白と黒のみで画像を作成することをいい、例えば廃棄物を燃焼対象物とする場合に、家庭用ごみ袋特有の色彩から、他のごみやピットの壁等との色彩と区別し、他の要素を排除した画像情報を得ることができる。画像情報に対する「マスク処理」とは、画像等の一部領域の変化のみを見たいとき、対象としたい一部領域を該画像等から切り出すことをいい、切り出した画像の2値化処理を行うことにより、対象領域の特定の燃焼対象物のみの画像情報を得ることができる。画像情報に対する「ノイズ除去処理」とは、主として2値画像処理において適用される代表的な演算処理として、「膨張」と「縮退」を行うことをいい、例えば乱れた白黒画像において、切れている成分を接続するためには、廃棄物を示す黒い部分を膨張させてから縮退を行い、細かい帯状部分を切断する場合には、背景となる白い領域を膨張させてから縮退を行い、また光の加減でできる細かい成分を除去するには、「膨張」と「縮退」を繰り返し行うことによって、ノイズを除去することができる。画像情報に対する「ラベリング処理」とは、画像上の画素の集合に番号をつけ、画素を分類する処理のことであり、ラベリングされた領域ごとに区別して処理することができ、ラベリングされた領域の情報(個数、面積、形状)をまとめることで、画像情報を小さくし効率よい作業ができる。「区分された領域」とは、ピット内を平面上に一定間隔に区分された領域をいい、蓄積された燃焼対象物の量および質の不均一性を判断する単位として用いられる。
【0016】
また、本発明は、上記燃焼炉に供給される燃焼対象物の処理システムまたは処理方法であって、ピット内の特定時間における画像情報に対して、2値化処理、マスク処理、ノイズ除去処理およびラベリング処理を行い、蓄積された燃焼対象物の量および質の分布状態Bを推算し、該特定時間における前記分布状態Aと対比して、区分された領域間の量または/および質の差が所定の範囲外となった場合に、前記燃焼対象物の落下軌跡の補正を行い、補正された分布状態Aを推算することを特徴とする。
【0017】
上記のように、本発明に係る燃焼対象物の処理システムまたは処理方法においては、投入物情報および画像情報を基に、いくつかの推算処理を行う。このとき、各情報の中には所定の割合で不確定要素があり、推算結果の誤差要因となる。例えば廃棄物を燃焼対象物とする場合に、投入物情報におけるごみ質として設定した比重が実際に袋内のごみと異なることがあり、推算された落下軌跡にズレが生じたり、既にピット内にあるごみに衝突して蓄積位置が移動し、その分布状態が変化することがある。また、実際に袋内のごみ質との相違は、設定した発熱量の誤差となる。本発明は、ピット内の特定時間における画像情報から、こうした変動や誤差による影響を補正することによって、より実態に近い分布状態を推算できるようにしたものである。
【0018】
本発明は、上記いずれかの燃焼炉に供給される燃焼対象物の処理システムまたは処理方法を用いた燃焼炉の燃焼制御システムであって、ピット内に蓄積された燃焼対象物に対して前記本処理システムまたは処理方法において推算された、量および質の分布状態Aを基に、燃焼炉に供給された燃焼対象物の発熱量を推算し、該燃焼炉の燃焼制御の指標の1つとすることを特徴とする。
【0019】
安定な燃焼条件で燃焼炉を稼動させるには、燃焼対象物の供給量および発熱量の安定化を図ることが好ましい一方、例えば廃棄物のようにその供給量やごみ質の変動の大きな燃焼対象物の場合には、こうした条件を確保することは非常に難しかった。上記本発明に係る燃焼対象物の処理システムまたは処理方法においては、供給量は移送手段を制御することによって任意に設定することが可能であり、発熱量についても貯留された燃焼対象物の質的分布状態を把握した上で、適切に攪拌することによって質的均一性が確保することが可能となった。つまり、発熱量の均一性を有し、かつ発熱量が推算された燃焼対象物の供給が可能となった。従って、こうした処理システムまたは処理方法から得られた燃焼対象物の量および質の情報、特にリアルタイムの発熱量を燃焼炉の燃焼制御の指標の1つとして用いることによって、実稼動状態における最適な燃焼状態での制御を行うことが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る燃焼対象物の処理システムの概略全体構成図
【図2】本発明に係る本処理システムの処理操作を例示する説明図
【図3】本発明に係るピット内の画像情報を例示する概略図
【図4】本発明に係る画像情報の処理操作を例示する説明図
【図5】本発明に係る燃焼対象物の落下軌跡の推算処理操作を例示する説明図
【図6】本発明に係る燃焼対象物の落下軌跡を例示する説明図
【図7】本発明に係る燃焼対象物の処理システムを用いた燃焼炉を例示する概略図
【図8】従来技術に係る流動式の焼却装置を例示する概略図
【図9】従来技術に係るごみ処理工場用自動クレーンの制御装置を例示する概略図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。すなわち、本発明に係る燃焼炉に供給される燃焼対象物の処理システム、処理方法およびこれらを用いた燃焼炉の燃焼制御システムを、例えばストーカ式ごみ焼却炉に適用した場合を1つの実施態様として説明する。
【0022】
<本発明に係る燃焼対象物の処理システム>
本発明に係る燃焼炉に供給される燃焼対象物の処理システム(以下「本処理システム」という)は、ストーカ式ごみ焼却炉(燃焼炉に相当し、以下「焼却炉」という)に供給される廃棄物(燃焼対象物に相当)を貯留する廃棄物ピット(ピットに相当)と、該ピットに燃焼対象物を投入する投入口と、貯留された燃焼対象物を攪拌する攪拌手段と、貯留された廃棄物を燃焼炉に移送する移送手段と、蓄積される廃棄物を投入口からピット内まで撮影する画像モニタと、ピット内の廃棄物を撹拌する手段と、該廃棄物を燃焼炉に移送する手段と、入力された所定の情報を基に所定の演算・推算を行い撹拌手段および移送手段を駆動させる演算処理部を備える。
【0023】
〔本処理システムの構成〕
図1は、本処理システムの概略全体構成例を示す。各所から収集・搭載された廃棄物Gが、ごみ収集車Cから投入口1を介してピット2内に投入される。このとき、予め投入される廃棄物Gの投入量およびごみ質を含む投入物情報を各ごみ収集車Cごとに得ることができる。投入された廃棄物Gは、ピット上部に設けられた画像モニタ3によって、投入口1からピット2内に移動する状態がリアルタイムに撮影され、廃棄物Gの画像情報を得ることができる。貯留された廃棄物Gは、ごみ質が均一となるように撹拌機4(撹拌手段に相当)によって撹拌された後、クレーン5によって捕集され、ホッパ6(クレーン5と合せ、移送手段に相当)によって燃焼炉(図示せず)に供給される。このとき、撹拌機4、クレーン5およびホッパ6の作動は、演算処理部7に入力された投入物情報および画像情報を基に演算・推算された出力信号によって制御される。
【0024】
ここで、収集された廃棄物Gは、バラバラの分散されたごみについては、例えば破砕ごみや剪定ごみ(落ち葉、剪定枝などの植物ごみ)、汚泥などは、画像情報から投入されるごみの形状や色などを識別し、ごみの種類を判定することができる。また、昨今、家庭用ごみや事務系ごみまたは商業系ごみなどごみ質によって異なる色や表面模様の袋体に大別されていることが多く、本処理システムでは、袋体単位で、ごみ質を特定し比重または発熱量等の投入物情報を設定することができる。従って、投入されたごみの総重量や総容積とともに、投入された廃棄物Gのごみ質や発熱量を推算することができる。さらに、画像情報として、こうした袋体の色や模様を認識することによって、ごみ質の区分および分布状態の推算を行うことができる。従って、これらが混在する廃棄物Gが投入された場合において、袋体単位で廃棄物Gの分布状態を推算することによって、分散状態のごみの分布状態と同等の推算が可能となり適切な攪拌処理を行い、均一な廃棄物Gを燃焼炉に供給することができる。また、ごみ収集車Cの属性情報(収集する対象物が特定される場合や分別収集能力の有無等の情報)、積載重量、収集エリアなどの情報も利用して、ごみ質を推定することができる。
【0025】
このとき、水分を多く含む家庭ごみの場合は低い発熱量であり、紙類を多く含む事務系ごみの場合は安定した略一定の発熱量となり、高い発熱量のプラスチックなどが多く含まれる商業系ごみの場合は高い発熱量となる。従って、予めごみの種類ごとの平均発熱量をデータベース化しておくことによって、投入された廃棄物の発熱量および燃焼炉に供給される廃棄物の発熱量を推算することが可能となり、こうした情報によって、燃焼炉に供給される廃棄物Gの供給量やごみ質を制御し最適条件での燃焼条件を実現することが可能となる。つまり、家庭ごみを多く含む廃棄物Gは比較的低い温度で少ない空気供給量という燃焼炉の運転条件が好ましく、紙類を多く含む事務系ごみの場合は、安定した温度で安定的な空気供給の運転条件の設定が可能となり、高い発熱量のプラスチックなどが多く含まれる商業系ごみの場合は、高い温度で多くの空気供給量を必要とする。燃焼炉の運転条件を、予めこうした供給される廃棄物Gの発熱量の情報を基に設定することによって、実際に燃焼された場合における燃焼条件の修正や調整を非常に狭い範囲にすることができる。
【0026】
投入口1は、異なる方向からの廃棄物Gの投入によりピット2内の廃棄物Gの投入量あるいはごみ質が比較的均等となるように、複数設けられることが好ましい。さらに、本処理システムにおいては、後述するように、ピット2内の廃棄物Gの均一化を図るように、収集車Cに積載された廃棄物Gのごみ質等の情報を基に、投入口1の選択制御することも可能である。
【0027】
なお、図1においては、攪拌機4を別途設けた構成例を示したが、ごみ質が比較的均一で、攪拌の必要性の少ない場合には、攪拌機4を設けずにクレーン5によって攪拌操作を行うようにしてもよい。
【0028】
また、画像モニタ3は、投入口1からピット2内の状態がカラー情報としてリアルタイムに撮影できるものであれば、位置や数量などに特に制限はないが、図1においては、広角のビデオカメラを1台設けた構成を例示した。特に、投入口1からピット2への廃棄物Gの移動状態を明確に把握できるように、移動経路に傾斜を設け、廃棄物Gの移動状態を正面から撮影できる配置が好ましく、同時にピット2内を上部正面から撮影できる配置が好ましい。
【0029】
〔本処理システムの処理操作について〕
本処理システムは、演算処理部7によって、以下の処理操作が制御される。
(a)ピットに投入される廃棄物全体または個別の量および質を含む投入物情報、および前記画像モニタからの画像情報を入力する。
(b)前記投入口近傍の瞬時の画像情報に対して、2値化処理、マスク処理、ノイズ除去処理およびラベリング処理を行い、前記投入物情報を基に、投入された廃棄物の個別の大きさあるいは投入量およびごみ質を含む瞬時の廃棄物情報を推算する。
(c)投入口からピット内への経路の連続する所定時間の画像情報を基に、特定された廃棄物の位置を検出し、該廃棄物の落下軌跡を推算する。
(d)ピット内を所定の領域に区分し、前記投入物情報、瞬時の廃棄物情報および廃棄物の落下軌跡を基に、蓄積された廃棄物の量およびごみ質の分布状態Aを推算する。
(e)該質の分布状態Aにおいて、区分された領域間の差が所定の範囲外となった場合に、前記攪拌手段を駆動させ、ピット内の廃棄物を攪拌する。
(f)前記量の分布状態Aにおいて、蓄積された廃棄物の全体または特定の領域の量および質が所定の範囲内にあるときに、前記移送手段を駆動させ、該廃棄物を燃焼炉に移送する。
【0030】
次に、本処理システムの各処理操作について、図2〜図6に基づき詳述する。図2は、入力される投入物情報(車両情報)と画像情報を始点として、ピット内の攪拌制御および燃焼炉の燃焼制御に至る本処理システムの処理操作の概要を例示する。画像情報の処理内容は、投入される廃棄物の画像処理、廃棄物の堆積分布の画像処理、ピット内の廃棄物の画像処理からなり、これらに車両情報データとごみ発熱量データベースが用いられる。投入物情報と画像情報に基づき、投入される個々の燃焼対象物の移動・貯留状態を推算し、ピット内の燃焼対象物全体としての分布状態の把握および均一な分布状態を形成する攪拌操作を設定することができる。これにより、燃焼炉に供給される燃焼対象物が組成変動の激しい場合であっても、燃焼炉に対する安定した燃焼制御が可能な燃焼対象物の供給が可能な処理システムを形成することが可能となった。
【0031】
(a)投入物情報および画像情報の入力
ピットに投入される廃棄物全体または個別の量および質を含む投入物情報、および前記画像モニタからの画像情報が、演算処理部7に入力される。ここで、投入物情報および画像情報は、少なくとも、以下の情報を有する。
(a−1)投入物情報(車両情報)
具体的には、図2に示すように、車両情報として、特定の収集車Cに係る業者名、ごみ収集エリア、収集ごみの種類として袋体入りか否か、家庭用ごみ・事務系ごみ・商業系ごみの種別および袋体入りの場合の識別方法(各々の色や模様等)、積載したごみの容積、積載したごみの重量の情報が入力される。このとき、上述のように、予め袋体単位のごみ質を特定し比重または発熱量等の投入物情報を設定することができ、投入されたごみの総重量や総容積特定の投入口1から投入された廃棄物の量および質を含む投入物情報を得ることができる。
(a−2)投入ごみの画像情報
具体的には、図3に示すように、特定の投入口1近傍の画像情報(複数の投入口の場合は、各投入口ごとの画像)が入力される。個々のごみ袋体の色や形状、あるいは破砕ごみや剪定ごみまたはその他ごみの種類を識別することができる。また、各ごみの種類あるいは予め設定された袋体のごみ質から、ごみ発熱量データベースを基に投入される個々のごみの重量および発熱量を推算することができる。
(a−3)ピット内ごみの画像情報
具体的には、図3に示すように、投入されたごみが堆積されたピット2内の画像情報が入力される。特定時間における個々の領域にあるごみ層表面の色やごみ層の粒度の分布を識別することができる。また、ごみ層の種類あるいは予め設定された袋体のごみ質から、堆積された廃棄物Gのごみ質の分布状態、さらにはごみの重量およびごみ発熱量データベースを基に発熱量の分布状態を推算することができる。
【0032】
(b)投入口近傍の瞬時の画像情報に基づく瞬時の燃焼対象物情報の推算
動画像を切り出した静止画像を画像情報として処理し、収集車Cから投入されるごみ袋体の数や色、形状などを、認識する。つまり、瞬時の画像情報を、以下に示す2値化、マスク処理、ノイズ処理、ラベリング処理するとともに、ごみ袋体の面積、個数、色を把握する。認識したごみ袋体の面積からは、例えば楕円体の形状を仮定してごみ袋体の体積を計算し、車両情報である積載重量を用いてごみ袋体の見かけ密度を推算する。ごみ袋体の色や表面の模様からは、廃棄物の種類、つまり、家庭ごみ、事務系ごみを判断する。さらに、落ち葉、剪定枝などの植物ごみは袋の色傾向(緑色)から判断する。また袋体ごみではない、破砕ごみや剪定ごみ、汚泥などは、投入されるごみの形状や色などを識別し、ごみの種類を判定する。ここで、ごみ種類ごとの平均発熱量をデータベース化しておき、収集されるごみ収集車Cの積載重量、収集エリアなどの情報も利用して、画像処理によりごみ種類と量が分かった段階で、投入ごみの発熱量を算出する。
【0033】
具体的には、図4に示すように、投入口1近傍の瞬時の画像情報に対して、以下のように、2値化処理、マスク処理、ノイズ除去処理、およびラベリング処理を行い、識別された廃棄物Gの個別の大きさあるいは投入量を推算し、さらに投入物情報およびごみ発熱量データベースを基に、発熱量等ごみ質を含む瞬時の廃棄物情報を推算する。
(b−1)2値化処理
画像情報に対する「2値化」とは、各画素を固定のしきい値と比較してその大小により白と黒のみで画像を作成することをいう。具体的には、図4(b−1)に示すように、例えば家庭用ごみ袋特有の色彩から、他のごみやピットの壁等との色彩と区別し、他の要素を排除した画像情報を得ることができる。
(b−2)マスク処理
画像情報に対する「マスク処理」とは、画像等の一部領域の変化のみを見たいとき、対象としたい一部領域を該画像等から切り出す(抽出)ことをいう。具体的には、図4(b−2)に示すように、投入口1近傍の、廃棄物Gが投入された直後の領域の画像を抽出し、2値化処理を行うことにより、対象領域の特定の廃棄物G(例えば家庭用ごみ)のみの画像情報を得ることができる。
(b−3)ノイズ除去処理
画像情報に対する「ノイズ除去処理」とは、主として2値画像処理において適用される代表的な演算処理として、「膨張」と「縮退」を行うことをいう。具体的には、図4(b−3)に示すように、マスク処理された廃棄物G(例えば袋体の家庭用ごみ)の白黒画像が乱れた場合(例えば袋体の像の周端部が異常な凸凹を有する場合など)、切れている成分を接続するためには、廃棄物Gを示す黒い部分を膨張させてから縮退を行い、細かい帯状部分を切断する場合には、背景となる白い領域を膨張させてから縮退を行い、また光の加減でできる細かい成分を除去するには、「膨張」と「縮退」を繰り返し行うことによって、ノイズを除去することができる。
(b−4)ラベリング処理
画像情報に対する「ラベリング処理」とは、画像上の画素の集合に番号をつけ、画素を分類する処理のことである。具体的には、図4(b−4)に示すように、ラベリングされた領域ごとに廃棄物G(例えば家庭用ごみ)を区別して処理することができ、ラベリングされた領域の情報(個数、面積、形状)をまとめ、連結成分を形成することで、画像情報を小さくし効率よい作業ができる。
【0034】
(c)投入口からピット内への廃棄物の落下軌跡の推算
図5および図6に示すように、投入口1からピット2内への経路の連続する所定時間の画像情報を基に、特定された廃棄物Gの位置を検出し、廃棄物Gの落下軌跡を求め、堆積位置を推算する。落下軌跡によって、動画から切り出した静止画間でのごみ個体の移動を検出する。ここでは、廃棄物Gをごみ袋体G1〜G3とし、複数の時間の画像情報に対して、上述(b)の処理操作を行い、その落下軌跡を推算した場合を図5(A)〜(D)に示す。当初の廃棄物Gの処理操作後の3つのごみ袋体G1a〜G3a(図5(A))に対し、例えば1secあるいは0.5sec後の移動方向および移動速度を推定し、移動位置G1b〜G3b(図5(B))を想定するとともに、実際の同時間後の画像情報に対して同様の処理操作を行った後の移動位置G1c〜G3c(図5(C))とのズレを補正し、落下ベクトルG1ad〜G3ad(図5(D))を設定する。これを繰り返し行うことによって、図6(A)に示すような各ごみ袋体G1〜G3に対する落下軌跡を推算することができ、さらに図6(B)に示すような投入口1からピット2内の区分された領域(ピット2を平面上に一定間隔に区分された領域をいい、例えばs5−t3、s6−t3およびs8−t4などで表わされる領域)への落下軌跡を推算することができる。つまり、廃棄物Gの投入場所(投入口1)とそこからピット2内までの広がりを追跡することが可能となる。
【0035】
また、上記においては、廃棄物Gを点あるいは均等な円として、ごみ袋体G1〜G3を捉えたが、実際には種々の形状を有することから、各時間の画像情報からごみ袋体G1〜G3の重心位置を求めて、その重心位置の移動を追跡することによって、各ごみ袋体G1〜G3に対する投入口1からピット2内への落下軌跡を推算することができる。具体的には、図5(E)に示すように、以下のステップの操作処理を行う。
(c−1)ごみ袋体G1〜G3の落下ベクトルを設定する
(c−2)動画(画像情報)から静止画の切り出し(抽出)を行う(図5(A))
(c−3)落下するごみ袋体G1〜G3の重心位置G1a〜G3aを検出する(図5(A))
(c−4)落下ベクトルを加え、次の重心G1b〜G3bを予測する(図5(B))
(c−5)動画から次の静止画の切り出しを行う(図5(C))
(c−6)次の画像のごみ袋体の重心位置G1c〜G3cを検出する(図5(C))
(c−7)重心予測位置近傍の重心を検索し、次のごみ袋体の重心位置G1d〜G3dを設定し(図5(C))、各ごみ袋体G1〜G3の落下軌跡を設定する
(c−8)上記(c−4)〜(c−7)を繰り返し、投入口1からピット2内までのごみ袋体G1〜G3の落下軌跡を設定する
【0036】
(d)ピット内に蓄積された廃棄物の量およびごみ質の分布状態Aの推算
ピット内を所定の領域に区分し、(a)投入物情報、(b)瞬時の廃棄物情報および(c)廃棄物の落下軌跡を基に、蓄積された廃棄物の量およびごみ質の分布状態Aを推算する。つまり、投入口1からピット2内までの廃棄物Gの所定の広がりを有する落下軌跡を追跡することによって、ピット2内の廃棄物Gの平面的(2次元的)分布および堆積時間の累積による立体的(3次元的)分布を推算することが可能となる。
(d−1)収集車Cからの廃棄物Gの各ごみ袋体あるいは各種のごみ単体について、瞬時の廃棄物情報およびその落下軌跡からピット2内の平面位置を推算することができる。これによって、瞬時の2次元の廃棄物Gの分布状態を得ることができる。
(d−2)2次元の分布状態を順次経過時間に対応させて蓄積させることによって、堆積した廃棄物Gの3次元の分布状態を得ることができる。つまり、個々の廃棄物Gの堆積位置や堆積高さおよび堆積広がりを求めることができ、蓄積された廃棄物Gの量および質の分布状態Aを推算することができる。投入されたごみの体積、比重、種類などの要素が、分布状態Aを構成する。
【0037】
このとき、特定時間におけるピット2内に堆積された廃棄物Gの画像情報(廃棄物Gの表面上の分布情報)に対して、上記(b)と同様、2値化処理、マスク処理、ノイズ除去処理およびラベリング処理を行い、蓄積された燃焼対象物の量および質の分布状態Bを推算することができる。また、堆積した廃棄物Gの分布については、廃棄物Gの投入前後の静止画の差分画像より求めることができる。このときの分散状態Bを、該特定時間における上記分布状態Aと対比して、区分された領域間の量または/および質の差が所定の範囲外となった場合に、前記燃焼対象物の落下軌跡の補正を行い、補正された分布状態Aを推算することが好ましい。つまり、理想的に両者は一致することが望ましいが、本処理システムにおいては、投入物情報および画像情報を基に、いくつかの推算処理を行うことから、各情報の中には所定の割合で不確定要素があり、推算結果の誤差要因となる。例えば投入物情報におけるごみ質として設定した比重が実際にごみ袋体内のごみと異なることがあり、推算された落下軌跡にズレが生じ分布状態のずれが生じることがある。あるいは、既にピット2内にあるごみに衝突して蓄積位置が移動し、その分布状態が変化することがある。また、実際に袋内のごみ質との相違は、設定した発熱量の誤差となる。本処理システムにおいては、ピット内の特定時間における画像情報から、こうした変動や誤差による影響を補正することによって、より実態に近い分布状態を推算できる。
【0038】
(e)ピット内の廃棄物の攪拌
質の分布状態Aにおいて、区分された領域間の差が所定の範囲外となった場合に、攪拌機4を駆動させ、ピット2内の廃棄物Gを攪拌する。つまり、上述のように、投入された廃棄物G自体の質の相違以外に、投入場所の相違や投入された廃棄物Gの広がりによるピット2内の不均一な分布状態が形成される。このとき、ピット2内の質のばらつきは、燃焼炉に供給される廃棄物Gの発熱量のばらつきとなり、安定な燃焼条件を確保することができない。従って、例えばごみ攪拌移動モデルとして、ピット2内の区分された領域単位で、その領域の3次元の平均発熱量を推算し、領域間での平均発熱量の差(ばらつき)が所定の範囲(例えば200kcal)外となった場合を不均一であると設定し、分布状態Aがこうした不均一な状態となった場合、演算操作部7から攪拌機4に対して駆動信号が発せられる。具体的には、ある2つの領域(例えば図6(B)におけるs3−t2とs9−t5)の平均発熱量(単位容積当たりの推算発熱量)の差が200kcalを超えた場合、質の不均一性が高いとして両者の中間位置に攪拌機4を移動させて、2つの領域を含む広域を攪拌し均一化を図る。所定時間の均一操作後あるいは攪拌操作を行いながら、2つの領域を含む広域内の画像モニタ3からの画像情報を演算操作部7に入力し、堆積層表面の色分布や粒度分布から質の均一性を推算することによって、質の均一性を確保することができる。ただし、例えば燃焼炉の燃焼条件から高い発熱量の廃棄物が必要となるなどの特別な場合においては、質の不均一な分布状態を保持し、高い発熱量の廃棄物をクレーンで捕集し燃焼炉に供給することも可能である。本処理システムにおいては、こうしたフレキシビティのある処理操作を行うことも可能である。
【0039】
(f)ピット内の廃棄物の燃焼炉への移送
量の分布状態Aにおいて、蓄積された廃棄物Gの全体または特定の領域の量および質が所定の範囲内にあるときに、クレーン5およびホッパ6を駆動させ、廃棄物Gを燃焼炉に移送する。「特定の領域の量および質が所定の範囲内にあるとき」としたのは、投入場所の相違や投入された廃棄物Gの広がりによって、ピット2内の領域間に量的なバラツキが生じて不均一な分布状態が形成されることがある。粘着性の少ない物質からなる堆積物は、堆積量が多くなれば堆積高さの大きな領域から徐々に小さな領域に移動して均一化するが、廃棄物Gのような物質は逆に拡大することがある。このとき、質の均一性が確保されていれば、量の不均一性は順次移送させれば、燃焼炉に対する弊害はないことから、攪拌操作を行わずに、堆積高さの大きな領域から徐々にクレーン5で採取することによって、量の均一性を次第に確保することができ、仕事量も最小とすることができる。つまり、廃棄物Gの量の分布状態と質の分布状態とは、必ずしも一致するものではないが、燃焼炉の安定した燃焼を確保する本処理システムの目的から、質の均一性を主とする攪拌制御を行うことが好ましい。質の均一性を有する一方、量の不均一性がない場合であっても、攪拌操作を行わずに、量および質が所定の範囲内にある領域から優先的に移送することによって量の均一性は実質的に確保することが可能となる。
【0040】
〔ピット内の廃棄物の均一化について〕
本処理システムにおいては、上記のようにピット2内の廃棄物Gの分布状態を把握し、不均一な分布状態に対応して撹拌手段を用いて均一化を図ることを基本としている。ここで、ピット2内の廃棄物Gの分布状態については、瞬時の分布状態情報として推算することが可能である。また、投入物情報は、収集車Cからゴミを投入する前に入手することが可能である。さらに、不均一な分布状態にあるピット2内の部位と投入口1との対応関係は、廃棄物Gの落下軌跡から推算できることから、当該部位の均一化を図るために、分布状態情報として推算する演算プロセスを逆にすることによって、次に廃棄物Gを投入する投入口1を特定することができる。従って、特定時間の収集車Cの廃棄物Gを特定の投入口1から投入することによって、その瞬時における最良のピット2内の廃棄物Gの分布状態の均一性を確保することができる。つまり、本処理システムは、撹拌手段を用いた均一化処理を最小のエネルギーによって行うことができるという、従前にない廃棄物処理が可能となった。
【0041】
以上のように、本発明に係る処理システムおよび処理方法を用いることによって、さらに以下のような優れた技術的効果を得ることができる。
(i)オンラインで廃棄物情報(ごみ種類、密度、発熱量、分布など)が得られるようになる。
(ii)ピット内の不均一領域を検出し、攪拌処理要否の指標が得られ、ごみを効率よく均一化することができる。
(iii)廃棄物を効率よく均一化できることになり、クレーン操作回数、操作時間を減らすことができコスト削滅につながる。
(iv)今までは困難であった、投入された廃棄物の質を把握できるので、燃焼制御に反映することができる、安定したごみ質の廃棄物を供給することができ、燃焼炉の安定した燃焼運転を実現することができる。
(v)収集車に積載されている廃棄物の種類や量の情報を収集することができ、廃棄物の搬入管理に役立てることができる。
(vi)ただし、質の不均一な分布状態を保持し、例えば高い発熱量の廃棄物を選択的にクレーンで捕集し燃焼炉に供給することも可能である。こうしたフレキシビティのある処理操作を行うことも可能である。
【0042】
<本処理システムを用いた燃焼炉の燃焼制御システム>
本発明に係る燃焼炉の燃焼制御システム(以下「本燃焼システム」という)は、ストーカ式ごみ焼却炉に対し、本処理システムから供給されるごみ(燃焼対象物)および助燃用空気を入力とし、発生する熱量、排ガスおよび塵灰を出力とする。また、燃焼炉に投入される燃焼対象物の量、燃焼対象物の質、空気量、空気の温度およびストーカ速度のいずれかを制御対象とし、炉内の温度、ガス濃度、ガス流れ方向、ガス流速、蒸発量のいずれかに加え、本処理システムにおいて推算された燃焼対象物の発熱量を制御指標として制御する。このとき、該発熱量は、本処理システムにおいて均一に制御されることから、供給される燃焼対象物に対する燃焼炉における燃焼条件は、非常に高い安定性を確保することができる。
【0043】
〔本処理システムを用いた本燃焼システムの構成〕
図7は、本燃焼システムの概略全体構成例を示す。焼却炉20は、本処理システム10から供給されるごみGを受け入れる受入ホッパ21とごみを燃焼させるストーカ23が炉本体22に設けられ、受入ホッパ21のごみは、ごみ供給装置24によってストーカ23に送られる。ストーカ23は、燃焼ストーカ23aと後燃焼ストーカ23bとから構成され、それぞれ別々に往復移動駆動されてごみを送給する。炉本体22は、ストーカ23の上部に設けられた一次燃焼ゾーン22aと、さらにその上部の二次燃焼ゾーン22bと、ストーカ23および一次燃焼ゾーン22aに空気を供給する一次燃焼空気供給装置25と、二次燃焼ゾーン22bに二次燃焼空気を供給する二次燃焼空気供給装置26と、塵灰を排出する灰排出部27と、炉内の排ガスを排出する排ガス排出部28が設けられる。排ガス排出部28からの排ガスは、バグフィルタ29でダストを分離した後、煙突30から放出される。灰排出部27からの塵灰は、バグフィルタ29からのダストとともに、分離されてダスト貯留部31に貯留され、薬液供給部32からの重金属安定剤等の薬液や水補給部33からの補給水によって処理される。
【0044】
受入ホッパ21に投入されたごみは、燃焼ストーカ23a・後燃焼ストーカ23bの順に送られながら、一次燃焼空気によって一次燃焼する。燃焼ストーカ23aでは、一次燃焼空気により、主としてごみが燃焼する。燃焼ストーカ23aに供給される一次燃焼空気はごみの燃焼に必要十分な量であり、燃焼ストーカ23a上のごみから発生するガスは高濃度のNOxを含んでいる。後燃焼ストーカ23bでは、焼却灰中の未燃分の燃え切りを図る。二次燃焼ゾーン22bでは、その下部,中部,上部に二次燃焼空気を供給して、一次燃焼ゾーン2aからの未燃物または不完全燃焼物を完全燃焼させる。燃焼によって発生した塵灰は、灰排出部27から排出され、炉内の排ガスは、排ガス排出部28から排出される。このとき、排ガス中のCOやNOxおよび酸素(O)などが所定濃度以下となるように管理される。
【0045】
本燃焼システムの制御機構は、ごみの投入量を制御操作するごみ供給装置24、ストーカ速度を制御操作するストーカ駆動装置(図示せず)、一次燃焼空気供給装置25、二次燃焼空気供給装置26、一次燃焼空気の温度を制御操作する一次燃焼空気予熱器(図示せず)、二次燃焼空気の温度を制御操作する二次燃焼空気予熱器を有する。また、受入ホッパ21に投入されるごみの量と質を測定するセンサ部(図示せず)、焼却炉20内の燃焼状態を検出するセンサ部として、例えばNOx濃度計、O濃度計、CO濃度計が二次燃焼ゾーン22b、一次燃焼ゾーン22aの少なくとも一方に設けられている(図示せず)。さらに、温度分布を検出する温度センサ、燃焼に伴うエネルギー量に相当する蒸発量を測定するセンサが設けられている。これらセンサ部からの各検出信号(検出情報)が、プロセスデータとしてそれぞれ制御装置(図示せず)に入力される。
【0046】
本燃焼システムは、以上の各構成要素が結合し、複数のプロセスデータや操作量を処理・操作する。具体的には、蒸発量、燃焼対象物の量や質、ガス濃度、ガス流速、炉内温度等のプロセスデータを基に、燃切点位置、ボイラ蒸発量、ごみ層レベル、排ガスO濃度、一次空気量、二次空気量、燃焼室出口温度等が算出され、これらのデータが制御装置に取り込まれて、ボイラ蒸発量や空気過剰率が設定値となるように最適な給じん速度、ストーカ速度、空気ダンパ開度等の操作量が算出される。
【0047】
本燃焼システムの制御機構は、こうした通常の制御機構に加え、本処理システム10の演算処理部7と接続され、本燃焼システムの制御機能の一部とすることが可能である。具体的には、演算処理部7からの信号として、ピット2内に貯留されるごみの量(重量)および質(発熱量)の総量や分布状態Aの情報が制御装置に入力される。制御装置は、こうした入力を基に、制御機構を制御操作する操作量を算出するとともに、上記の制御機構との間の制御信号を送受信する。制御装置からは、こうして算出された操作量が制御機構に送信され、制御操作が行われる。
【0048】
制御システムとしては、瞬時のデータに対して安定化制御を行うPID制御系を基本とし、上位制御として、瞬時のデータ変動量に対して動的最適化制御を行う自己回帰モデル制御系(AR制御系)と、予め設定した制御範囲を逸脱する瞬時のデータあるいはその変動量に対して定常復帰制御を行うファジイ制御系とを備え、各制御系の機能を有効に連結して使用することが好ましい。より実プラントの稼動状態における設計条件に近い最適な燃焼状態での制御を行うことができると同時に、実稼動状態においても、リアルタイムの最適な燃焼制御を行うことができる。
【0049】
このとき、通常は攪拌されごみ質が均一化された廃棄物Gの供給量を設定し、演算処理部7を介してクレーン5およびホッパ6を駆動させてピット2内の廃棄物Gの移送制御を行い、最適条件で安定した燃焼条件を確保することができる。しかしながら、既述のように、必要に応じて例えば高い発熱量のごみを選択的に供給できるように、本処理システムの攪拌制御を制限してするピット2内の廃棄物Gが不均一な分布状態Aを維持するように制御することも可能である。また、収集車Cの車両情報(投入物情報)を基に、ピット2に投入する前の特定の収集車Cの積載する廃棄物Gを優先して投入させ、所望の供給量あるいは発熱量の廃棄物Gを燃焼炉に供給するように制御することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る処理システムおよびこれを用いた本燃焼システムを適用できる燃焼炉としては、焼却炉に限定されるものではなく、電気式灰溶融炉、ガス化溶融炉などであってもよい。また、上記ではストーカ式ごみ焼却炉の自動燃焼制御装置を構成例としているが、ストーカ式以外のごみ焼却炉や電気式灰溶融炉、ガス化溶融炉などであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 投入口
2 ピット
3 画像モニタ
4 撹拌機(撹拌手段)
5 クレーン(移送手段)
6 ホッパ(移送手段)
7 演算処理部
C ごみ収集車
G 廃棄物(燃焼対象物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼炉に供給される燃焼対象物を貯留するピットと、該ピットに燃焼対象物を投入する投入口と、貯留された燃焼対象物を攪拌する攪拌手段と、貯留された燃焼対象物を燃焼炉に移送する移送手段と、蓄積される燃焼対象物を投入口からピット内まで撮影する画像モニタと、を備えた燃焼炉に供給される燃焼対象物の処理システムであって、
(a)ピットに投入される燃焼対象物全体または個別の量および質を含む投入物情報、および前記画像モニタからの画像情報を入力し、
(b)前記投入口近傍の瞬時の画像情報に対して、2値化処理、マスク処理、ノイズ除去処理およびラベリング処理を行い、前記投入物情報を基に、投入された燃焼対象物の個別の大きさあるいは量および質を含む瞬時の燃焼対象物情報を推算し、
(c)投入口からピット内への経路の連続する所定時間の画像情報を基に、特定された燃焼対象物の位置を検出し、該燃焼対象物の落下軌跡を推算し、
(d)ピット内を所定の領域に区分し、前記投入物情報、瞬時の燃焼対象物情報および燃焼対象物の落下軌跡を基に、蓄積された燃焼対象物の量および質の分布状態Aを推算し、
(e)該質の分布状態Aにおいて、区分された領域間の差が所定の範囲外となった場合に、前記攪拌手段を駆動させ、ピット内の燃焼対象物を攪拌し、
(f)前記量の分布状態Aにおいて、蓄積された燃焼対象物の全体または特定の領域の量および質が所定の範囲内にあるときに、前記移送手段を駆動させ、該燃焼対象物を燃焼炉に移送する
演算処理部を備えることを特徴とする燃焼炉に供給される燃焼対象物の処理システム。
【請求項2】
ピット内の特定時間における画像情報に対して、2値化処理、マスク処理、ノイズ除去処理およびラベリング処理を行い、蓄積された燃焼対象物の量および質の分布状態Bを推算し、該特定時間における前記分布状態Aと対比して、区分された領域間の量または/および質の差が所定の範囲外となった場合に、前記燃焼対象物の落下軌跡の補正を行い、補正された分布状態Aを推算することを特徴とする請求項1記載の燃焼炉に供給される燃焼対象物の処理システム。
【請求項3】
予めピットに貯留された後に燃焼炉に供給される燃焼対象物を処理する方法であって、該ピットに投入される燃焼対象物全体または個別の量および質を含む投入物情報、およびピットへの投入口からピット内まで撮影された燃焼対象物の画像情報を基に、
(b)前記投入口近傍の瞬時の画像情報に対して、2値化処理、マスク処理、ノイズ除去処理およびラベリング処理を行い、前記投入物情報を基に、投入された燃焼対象物の個別の大きさあるいは量および質を含む瞬時の燃焼対象物情報を推算し、
(c)投入口からピット内への経路の連続する所定時間の画像情報を基に、特定された燃焼対象物の位置を検出し、該燃焼対象物の落下軌跡を推算し、
(d)ピット内を所定の領域に区分し、前記投入物情報、瞬時の燃焼対象物情報および燃焼対象物の落下軌跡を基に、蓄積された燃焼対象物の量および質の分布状態Aを推算し、
(e)該質の分布状態Aにおいて、区分された領域間の差が所定の範囲外となった場合にピット内の燃焼対象物を攪拌し、
(f)前記量の分布状態Aにおいて、蓄積された燃焼対象物の全体または特定の領域の量および質が所定の範囲内にあるときに燃焼対象物を燃焼炉に移送する
ことを特徴とする燃焼炉に供給される燃焼対象物の処理方法。
【請求項4】
ピット内の特定時間における画像情報に対して、2値化処理、マスク処理、ノイズ除去処理およびラベリング処理を行い、蓄積された燃焼対象物の量および質の分布状態Bを推算し、該特定時間における前記分布状態Aと対比して、区分された領域間の量または/および質の差が所定の範囲外となった場合に、前記燃焼対象物の落下軌跡の補正を行い、補正された分布状態Aを推算することを特徴とする請求項3記載の燃焼炉に供給される燃焼対象物の処理方法。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載の燃焼炉に供給される燃焼対象物の処理システムまたは処理方法を用いた燃焼炉の燃焼制御システムであって、ピット内に蓄積された燃焼対象物に対して前記本処理システムまたは処理方法において推算された、量および質の分布状態Aを基に、燃焼炉に供給された燃焼対象物の発熱量を推算し、該燃焼炉の燃焼制御の指標の1つとすることを特徴とする燃焼炉の燃焼制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−27349(P2011−27349A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174630(P2009−174630)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】