説明

燃焼炉の熱分解ガス処理方法及び装置

【課題】N2製造装置やガス分析計等を設けることなく、且つ押込通風機の形式に左右されることなく、押込通風機の停止時における熱分解ガスの燃焼炉内での充満と外部からの空気の混入とによる熱分解ガスの化学反応の急激な進行を未然に防止し得る燃焼炉の熱分解ガス処理方法及び装置を提供する。
【解決手段】押込通風機14の停止時、空気タンク15に封入された空気を空気供給ライン17から燃焼炉5内へ導入することにより、残留した燃料による熱分解ガスを燃焼させるよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼炉の熱分解ガス処理方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、燃料として、石炭、バイオマス、タイヤチップ等の原料を用い、ガス化ガスを生成するガス化設備の開発が進められている。
【0003】
図6は従来のガス化設備の一例を示すものであって、該ガス化設備は、蒸気により流動媒体(硅砂、石灰石等)の流動層1を形成して投入される原料(石炭、バイオマス、タイヤチップ等)のガス化を行いガス化ガスと可燃性固形分とを生成するガス化炉2と、該ガス化炉2で生成された可燃性固形分が流動媒体と共に導入管3から導入され且つ空気又は酸素等の流動用ガスにより流動層4を形成して前記可燃性固形分の燃焼を行う燃焼炉5と、該燃焼炉5から排ガス管6を介して導入される燃焼排ガスより流動媒体を分離し該分離した流動媒体をダウンカマー7を介して前記ガス化炉2に供給するホットサイクロン等の媒体分離装置8と、前記ガス化炉2で生成されたガス化ガスより流動媒体を分離するホットサイクロン等の媒体分離装置9と、該媒体分離装置9で分離された流動媒体を回収する回収容器10とを備えてなる構成を有している。
【0004】
尚、図6中、11は前記ガス化炉2の底部へ導入される蒸気を流動層1内へ均一に吹き込むための分散板、12は前記ガス化炉2内部における導入管3が接続される部分を下方のみが開放されるように覆うことにより、ガス化炉2内のガス化ガスが導入管3を介して燃焼炉5側へ流出したり、逆に燃焼炉5内の空気又は酸素等の流動用ガスが導入管3を介してガス化炉2側へ流入したりすることを防止するための仕切壁、13は前記燃焼炉5の底部へ導入される流動用ガスを流動層4内へ均一に吹き込むための分散板、14は燃焼炉5へ流動用ガスを圧送する押込通風機である。
【0005】
前述の如きガス化設備においては、通常運転時、ガス化炉2において、蒸気により流動層1が形成されており、ここに石炭、バイオマス、タイヤチップ等の原料を投入すると、該原料は水蒸気ガス化してガス化され、ガス化ガスと可燃性固形分とが生成され、前記ガス化炉2で生成された可燃性固形分は流動媒体と共に導入管3から、前記流動用ガスにより流動層4が形成されている燃焼炉5へ導入され、該可燃性固形分の燃焼が行われ、該燃焼炉5からの燃焼排ガスは、排ガス管6を介してホットサイクロン等の媒体分離装置8へ導入され、該媒体分離装置8において、前記燃焼排ガスより流動媒体が分離され、該分離された流動媒体はダウンカマー7を介して前記ガス化炉2に戻され、循環される。
【0006】
ここで、前記燃焼炉5で可燃性固形分の燃焼に伴い高温になった流動媒体が燃焼排ガスと共に排ガス管6を通り前記媒体分離装置8で分離され、前記ダウンカマー7を介してガス化炉2に供給されることにより、ガス化炉2の高温が保持されると共に、原料の熱分解によって生成したガスや、その残渣原料が蒸気と反応することによって、水性ガス化反応[C+H2O=H2+CO]や水素転換反応[CO+H2O=H2+CO2]が起こり、H2やCO等の可燃性のガス化ガスが生成される。
【0007】
前記ガス化炉2で生成されたガス化ガスは、ホットサイクロン等の媒体分離装置9で流動媒体が分離され、該媒体分離装置9で分離された流動媒体は、回収容器10に回収される。
【0008】
ところで、前記ガス化設備における通常運転中の熱不足時、即ち前記ガス化炉2において原料のガス化のための充分な熱が得られないような場合には、図6中、仮想線で示される如く、前記ガス化炉2へ供給される原料と同じ石炭、バイオマス、タイヤチップ等の燃料が補助的に前記燃焼炉5へ投入されて燃焼が行われ、不足する熱を補うようになっている。一方、前記ガス化設備における起動時等の循環予熱運転時には、前記ガス化炉2への原料の投入は行わずに、該ガス化炉2の底部から蒸気の代わりに流動用の空気を供給した状態で、図6中、仮想線で示される如く、前記石炭、バイオマス、タイヤチップ等の燃料が予熱用として前記燃焼炉5へ投入されて燃焼が行われ、該燃焼炉5での燃料の燃焼に伴い高温になった流動媒体が燃焼排ガスと共に排ガス管6を通り前記媒体分離装置8で分離され、前記ダウンカマー7を介してガス化炉2に供給されることにより、ガス化設備の循環予熱が行われるようになっている。
【0009】
そして、前記ガス化設備における通常運転中の熱不足時や循環予熱運転時に、前記燃焼炉5内に投入する燃料として石炭を使用した場合、図7に示される如く、ある時点で燃焼炉5内に投入された石炭は、先ず最初のT1[sec](十秒程度)で揮発分が全量燃え尽きて完全燃焼し、この後、固定炭素分が徐々に燃えて行き、石炭投入からおよそT2[sec](数十秒程度)で完全燃焼することが一般的な文献から知られている。図7では、例えば停電や前記押込通風機14の故障等により該押込通風機14が停止した場合に、斜線部の面積に相当する未燃焼の揮発分が燃焼炉5内に残留する石炭に含まれていると推定できる。又、停電や前記押込通風機14の故障等により、該押込通風機14が停止してしまった場合、燃焼炉5内に石炭等の燃料が残留してその揮発分が燃焼せずに残り、該石炭の熱分解により発生した可燃性を有する熱分解ガスが燃焼炉5内に充満してしまい、外部から空気が燃焼炉5内に混入すると、前記熱分解ガスの化学反応が急激に進行してしまう可能性があった。尚、前記ガス化設備における通常運転中の熱不足時や循環予熱運転時に、前記燃焼炉5内にバイオマス、タイヤチップ等の燃料を投入する場合においても、前記石炭の場合と同様に、揮発分の燃焼後に固定炭素分の燃焼が進行する傾向を示すものと予測される。
【0010】
こうした不具合を解消するために、従来においては、N2等で燃焼炉5内の熱分解ガスをパージすることが行われていた。
【0011】
一方、ボイラや加熱炉等の平衡通風式燃焼装置において、インバータ制御の機能を有する遠心式の送風機の軸にフライホイールを取り付け、その慣性力によって燃焼装置へ供給される空気を確保することにより、インバータの瞬時的な停止に対しても燃焼装置を正常な状態に維持させるものとしては、例えば、特許文献1がある。
【0012】
又、原子炉格納容器内の水素等の可燃性ガス濃度を分析して酸素ボンベから酸素を供給することにより、水素等の可燃性ガスを再結合処理するものとしては、例えば、特許文献2がある。
【特許文献1】特許第3579995号公報
【特許文献2】特許第3596843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前述の如く、N2等で燃焼炉5内の熱分解ガスをパージするのでは、N2等の不活性ガスが大量に必要となると共に高価なN2製造装置も必要となり、あまり好ましい方法であるとは言えなかった。
【0014】
一方、特許文献1に開示されているもののように、遠心式の送風機の軸にフライホイールを取り付けるのでは、前記押込通風機14が遠心式ではなくルーツブロワ形式であった場合、構造上、フライホイールを取り付けることができず、実施不可能となる。
【0015】
又、特許文献2に開示されているもののように、原子炉格納容器内の水素等の可燃性ガス濃度を分析して酸素ボンベから酸素を供給するのでは、ガス分析計がどうしても必要となり、停電時等には対応が困難となる虞もあった。
【0016】
本発明は、斯かる実情に鑑み、N2製造装置やガス分析計等を設けることなく、且つ押込通風機の形式に左右されることなく、押込通風機の停止時における熱分解ガスの燃焼炉内での充満と外部からの空気の混入とによる熱分解ガスの化学反応の急激な進行を未然に防止し得る燃焼炉の熱分解ガス処理方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、押込通風機から圧送される流動用ガスにより流動層を形成して燃料を燃焼させる燃焼炉の熱分解ガス処理方法であって、
前記押込通風機の停止時、空気タンクに封入された空気を燃焼炉へ導入することにより、残留した燃料による熱分解ガスを燃焼させることを特徴とする燃焼炉の熱分解ガス処理方法にかかるものである。
【0018】
前述の如き燃焼炉の熱分解ガス処理方法を実施すると、停電や前記押込通風機の故障等により、該押込通風機が停止してしまった場合、燃焼炉内に残留した燃料の熱分解により発生した可燃性を有する熱分解ガスは、空気タンクから導入される空気によって燃焼し燃焼炉内に充満せず、外部から空気が燃焼炉内に混入したとしても、前記熱分解ガスの化学反応が急激に進行してしまう心配がなくなり、しかも、N2製造装置やガス分析計等を設けたり、押込通風機にフライホイールを取り付けたりする必要もない。
【0019】
前記燃焼炉の熱分解ガス処理方法においては、前記燃焼炉内における流動層へ空気を導入することができ、このようにすると、燃焼炉内における流動層内に残留した燃料をも完全に燃焼させることが可能となる。
【0020】
又、前記燃焼炉の熱分解ガス処理方法は、前記燃料が石炭、バイオマス、或いはタイヤチップである場合に特に有効となる。
【0021】
一方、本発明は、押込通風機から圧送される流動用ガスにより流動層を形成して燃料を燃焼させる燃焼炉の熱分解ガス処理装置であって、
前記押込通風機の停止時、燃焼炉内に残留した燃料による熱分解ガスを燃焼させるための空気が封入された空気タンクと、
該空気タンクと燃焼炉とをつなぐ空気供給ラインと
を備えたことを特徴とする燃焼炉の熱分解ガス処理装置にかかるものである。
【0022】
前述の如き燃焼炉の熱分解ガス処理装置では、停電や前記押込通風機の故障等により、該押込通風機が停止してしまった場合、燃焼炉内に残留した燃料の熱分解により発生した可燃性を有する熱分解ガスは、空気タンクから空気供給ラインを経て導入される空気によって燃焼し燃焼炉内に充満せず、外部から空気が燃焼炉内に混入したとしても、前記熱分解ガスの化学反応が急激に進行してしまう心配がなくなり、しかも、N2製造装置やガス分析計等を設けたり、押込通風機にフライホイールを取り付けたりする必要もない。
【0023】
前記燃焼炉の熱分解ガス処理装置においては、前記燃焼炉内における流動層へ空気を導入するよう、前記空気タンクと燃焼炉とを空気供給ラインでつなぐことができ、このようにすると、空気供給ラインから燃焼炉内における流動層へ導入される空気により、該燃焼炉内における流動層内に残留した燃料をも完全に燃焼させることが可能となる。
【0024】
又、前記燃焼炉の熱分解ガス処理装置においては、前記空気供給ライン途中に、通常時には閉じ且つ停電時には前記押込通風機の停止と連動して開く電磁開閉弁を設けることができ、このようにすると、停電時にはそれまで閉じていた電磁開閉弁が開き、空気タンクから空気が空気供給ラインを経て自動的に燃焼炉内へ導入されるため、フェイル・セイフ的な機能が発揮され、停電時でのより確実な対応が可能となる。
【0025】
又、前記燃焼炉の熱分解ガス処理装置は、前記燃料が石炭、バイオマス、或いはタイヤチップである場合に特に有効となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の燃焼炉の熱分解ガス処理方法及び装置によれば、N2製造装置やガス分析計等を設けることなく、且つ押込通風機の形式に左右されることなく、押込通風機の停止時における熱分解ガスの燃焼炉内での充満と外部からの空気の混入とによる熱分解ガスの化学反応の急激な進行を未然に防止し得るという優れた効果を奏し得る。
【0027】
又、本発明の燃焼炉の熱分解ガス処理方法及び装置において、燃焼炉内における流動層の下部へ空気を導入するようにすれば、上記効果に加え更に、燃焼炉内における流動層内に残留した燃料をも完全に燃焼させ得るという優れた効果を奏し得る。
【0028】
更に又、本発明の燃焼炉の熱分解ガス処理装置において、空気供給ライン途中に、通常時には閉じ且つ停電時には前記押込通風機の停止と連動して開く電磁開閉弁を設けるようにすれば、上記効果に加え更に、フェイル・セイフ的な機能を発揮し、停電時でのより確実な対応を行い得るという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0030】
図1は本発明を実施する形態の第一の例であって、図中、図6と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図6に示す従来のものと同様であるが、本図示例の特徴とするところは、図1に示す如く、ガス化設備における通常運転中の熱不足時や循環予熱運転時に、押込通風機14が停止した際、燃焼炉5内に残留した燃料による熱分解ガスを燃焼させるための空気が封入された空気タンク15を配置し、該空気タンク15と燃焼炉5内における流動層4の上方空間16とをつなぐ空気供給ライン17を設け、前記押込通風機14の停止時、前記空気タンク15に封入された空気を空気供給ライン17から燃焼炉5内における流動層4の上方空間16へ導入することにより、残留した燃料による熱分解ガスを燃焼させるよう構成した点にある。
【0031】
本図示例の場合、前記空気供給ライン17途中には開閉弁18を設けてあり、該開閉弁18としては、手動開閉弁を用いることも可能ではあるが、通常時には閉じ且つ停電時には前記押込通風機14の停止と連動して開く電磁開閉弁とすることが有効となる。
【0032】
ここで、図2は単位重量当りの燃料としての石炭に含まれる揮発分及び実際に発生する熱分解ガスの生成量の一例を横軸に時間をとって示す線図であり、この線図のように、熱分解ガスの生成量は、測定開始から最初のT[min](およそ一分以内)で急速に増え、その後は、ごく緩やかな傾斜角度で徐々に増加していく傾向を示すことが、本発明者等の実験結果により確認されている。このような線図を対象となる燃焼炉5において実際の計測結果を元に予め作成しておき、この線図及び図7に基づいて前記残留した燃料による熱分解ガスを燃焼させるのに必要となる前記空気タンク15の容量並びに空気の投入速度を決定すれば良い。
【0033】
次に、上記図示例の作用を説明する。
【0034】
前述の如く構成すると、ガス化設備における通常運転中の熱不足時や循環予熱運転時に、停電や前記押込通風機14の故障等により、該押込通風機14が停止してしまった場合、燃焼炉5内に残留した石炭、バイオマス、タイヤチップ等の燃料の熱分解により発生した可燃性を有する熱分解ガスは、開閉弁18を開くことにより空気タンク15から空気供給ライン17を経て導入される空気によって燃焼し燃焼炉5内に充満せず、外部から空気が燃焼炉5内に混入したとしても、前記熱分解ガスの化学反応が急激に進行してしまう心配がなくなり、しかも、N2製造装置やガス分析計等を設けたり、押込通風機14にフライホイールを取り付けたりする必要もない。
【0035】
ここで、前記開閉弁18として通常時には閉じ且つ停電時には前記押込通風機14の停止と連動して開く電磁開閉弁を用いるようにしておけば、停電時にはそれまで閉じていた開閉弁18としての電磁開閉弁が開き、空気タンク15から空気が空気供給ライン17を経て自動的に燃焼炉5内へ導入されるため、フェイル・セイフ的な機能が発揮され、停電時でのより確実な対応が可能となる。
【0036】
尚、更なるバックアップとして燃焼炉5内の酸素濃度を計測するようにしても良い。
【0037】
こうして、N2製造装置やガス分析計等を設けることなく、且つ押込通風機14の形式に左右されることなく、押込通風機14の停止時における熱分解ガスの燃焼炉5内での充満と外部からの空気の混入とによる熱分解ガスの化学反応の急激な進行を未然に防止し得る。
【0038】
図3は本発明を実施する形態の第二の例であって、図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図1に示すものと同様であるが、本図示例の特徴とするところは、図3に示す如く、前記燃焼炉5内における流動層4の下部へ空気を導入するよう、前記空気タンク15と燃焼炉5とを空気供給ライン17でつないだ点にある。
【0039】
図3に示す例のように構成すると、容量並びに圧力の大きな空気タンク15が必要にはなるものの、ガス化設備における通常運転中の熱不足時や循環予熱運転時に、停電や前記押込通風機14の故障等により、該押込通風機14が停止してしまった場合、開閉弁18が開いて空気供給ライン17から燃焼炉5内における流動層4の下部へ導入される空気により、該燃焼炉5内における流動層4内に残留した燃料としての石炭、バイオマス、タイヤチップ等の燃料をも完全に燃焼させることが可能となる。
【0040】
こうして、図3に示す例の場合、図1に示す例の場合と同様、N2製造装置やガス分析計等を設けることなく、且つ押込通風機14の形式に左右されることなく、押込通風機14の停止時における熱分解ガスの燃焼炉5内での充満と外部からの空気の混入とによる熱分解ガスの化学反応の急激な進行を未然に防止し得ることに加え更に、燃焼炉5内における流動層4内に残留した燃料としての石炭をも完全に燃焼させ得る。
【0041】
図4は本発明を実施する形態の第三の例であって、循環流動層燃焼炉(CFBC:Circulating Fluidized Bed Combustor)を備えたボイラ設備、即ち、燃焼炉5において、押込通風機14から圧送される空気又は酸素等の流動用ガスにより流動層4を形成し、ここに石炭、バイオマス、タイヤチップ等の燃料を投入して燃焼させ、前記燃焼炉5からの燃焼排ガスを排ガス管6を介してホットサイクロン等の媒体分離装置8へ導入し、該媒体分離装置8において前記排ガスより流動媒体を分離し、該分離された流動媒体をダウンカマー7を介し前記燃焼炉5に戻して循環させ、同時に、前記燃焼炉5の炉壁管(図示せず)内を流れる水を燃料の燃焼に伴う熱で加熱すると共に、前記媒体分離装置8で流動媒体が分離された燃焼排ガスの熱を熱交換器19で回収することにより、蒸気を発生させるボイラ設備に適用した例を示し、
該ボイラ設備における通常運転時に、押込通風機14が停止した際、燃焼炉5内に残留した燃料による熱分解ガスを燃焼させるための空気が封入された空気タンク15を配置し、該空気タンク15と燃焼炉5内における流動層4の上方空間16とをつなぐ空気供給ライン17を設け、前記押込通風機14の停止時、前記空気タンク15に封入された空気を空気供給ライン17から燃焼炉5内における流動層4の上方空間16へ導入することにより、残留した燃料による熱分解ガスを燃焼させるよう構成したものである。
【0042】
図4に示す例のように構成すると、ボイラ設備における通常運転時に、停電や前記押込通風機14の故障等により、該押込通風機14が停止してしまった場合、燃焼炉5内に残留した石炭、バイオマス、タイヤチップ等の燃料の熱分解により発生した可燃性を有する熱分解ガスは、開閉弁18を開くことにより空気タンク15から空気供給ライン17を経て導入される空気によって燃焼し燃焼炉5内に充満せず、外部から空気が燃焼炉5内に混入したとしても、前記熱分解ガスの化学反応が急激に進行してしまう心配がなくなり、しかも、N2製造装置やガス分析計等を設けたり、押込通風機14にフライホイールを取り付けたりする必要もない。
【0043】
ここで、図4に示す例の場合も、前記開閉弁18として通常時には閉じ且つ停電時には前記押込通風機14の停止と連動して開く電磁開閉弁を用いるようにしておけば、停電時にはそれまで閉じていた開閉弁18としての電磁開閉弁が開き、空気タンク15から空気が空気供給ライン17を経て自動的に燃焼炉5内へ導入されるため、フェイル・セイフ的な機能が発揮され、停電時でのより確実な対応が可能となる。
【0044】
尚、図4に示す例の場合も、更なるバックアップとして燃焼炉5内の酸素濃度を計測するようにしても良い。
【0045】
こうして、図4に示す例の場合も、図1及び図3に示す例の場合と同様、N2製造装置やガス分析計等を設けることなく、且つ押込通風機14の形式に左右されることなく、押込通風機14の停止時における熱分解ガスの燃焼炉5内での充満と外部からの空気の混入とによる熱分解ガスの化学反応の急激な進行を未然に防止し得る。
【0046】
図5は本発明を実施する形態の第四の例であって、図中、図4と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図4に示すものと同様であるが、本図示例の特徴とするところは、図5に示す如く、前記燃焼炉5内における流動層4の下部へ空気を導入するよう、前記空気タンク15と燃焼炉5とを空気供給ライン17でつないだ点にある。
【0047】
図5に示す例のように構成すると、容量並びに圧力の大きな空気タンク15が必要にはなるものの、ボイラ設備における通常運転時に、停電や前記押込通風機14の故障等により、該押込通風機14が停止してしまった場合、開閉弁18が開いて空気供給ライン17から燃焼炉5内における流動層4の下部へ導入される空気により、該燃焼炉5内における流動層4内に残留した燃料としての石炭、バイオマス、タイヤチップ等の燃料をも完全に燃焼させることが可能となる。
【0048】
こうして、図5に示す例の場合、図1、図3及び図4に示す例の場合と同様、N2製造装置やガス分析計等を設けることなく、且つ押込通風機14の形式に左右されることなく、押込通風機14の停止時における熱分解ガスの燃焼炉5内での充満と外部からの空気の混入とによる熱分解ガスの化学反応の急激な進行を未然に防止し得ることに加え更に、燃焼炉5内における流動層4内に残留した燃料としての石炭をも完全に燃焼させ得る。
【0049】
尚、本発明の燃焼炉の熱分解ガス処理方法及び装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、押込通風機から圧送される流動用ガスにより燃料を燃焼させる燃焼炉であれば、ガス化炉と燃焼炉とを備えたガス化設備や燃焼炉単体のボイラ設備に限らず、どのような設備の燃焼炉にも適用可能なこと等、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明を実施する形態の第一の例を示す全体概要構成図である。
【図2】単位重量当りの燃料としての石炭に含まれる揮発分及び実際に発生する熱分解ガスの生成量の一例を横軸に時間をとって示す線図である。
【図3】本発明を実施する形態の第二の例を示す全体概要構成図である。
【図4】本発明を実施する形態の第三の例を示す全体概要構成図である。
【図5】本発明を実施する形態の第四の例を示す全体概要構成図である。
【図6】従来例を示す全体概要構成図である。
【図7】ある時点で燃焼炉内に投入された燃料としての石炭に含まれる揮発分が完全燃焼するまでの時間及び固定炭素分が完全燃焼するまでの時間を示す線図である。
【符号の説明】
【0051】
4 流動層
5 燃焼炉
6 排ガス管
14 押込通風機
15 空気タンク
16 上方空間
17 空気供給ライン
18 開閉弁(電磁開閉弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押込通風機から圧送される流動用ガスにより流動層を形成して燃料を燃焼させる燃焼炉の熱分解ガス処理方法であって、
前記押込通風機の停止時、空気タンクに封入された空気を燃焼炉へ導入することにより、残留した燃料による熱分解ガスを燃焼させることを特徴とする燃焼炉の熱分解ガス処理方法。
【請求項2】
前記燃焼炉内における流動層へ空気を導入するようにした請求項1記載の燃焼炉の熱分解ガス処理方法。
【請求項3】
前記燃料が石炭、バイオマス、或いはタイヤチップである請求項1又は2記載の燃焼炉の熱分解ガス処理方法。
【請求項4】
押込通風機から圧送される流動用ガスにより流動層を形成して燃料を燃焼させる燃焼炉の熱分解ガス処理装置であって、
前記押込通風機の停止時、燃焼炉内に残留した燃料による熱分解ガスを燃焼させるための空気が封入された空気タンクと、
該空気タンクと燃焼炉とをつなぐ空気供給ラインと
を備えたことを特徴とする燃焼炉の熱分解ガス処理装置。
【請求項5】
前記燃焼炉内における流動層へ空気を導入するよう、前記空気タンクと燃焼炉とを空気供給ラインでつないだ請求項4記載の燃焼炉の熱分解ガス処理装置。
【請求項6】
前記空気供給ライン途中に、通常時には閉じ且つ停電時には前記押込通風機の停止と連動して開く電磁開閉弁を設けた請求項4又は5記載の燃焼炉の熱分解ガス処理装置。
【請求項7】
前記燃料が石炭、バイオマス、或いはタイヤチップである請求項4〜6のいずれか一つに記載の燃焼炉の熱分解ガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−221343(P2009−221343A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67087(P2008−67087)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】