説明

燐を含む触媒組成物及びそれを利用したヒドロホルミル化の方法

燐を含む触媒組成物及びそれを利用したヒドロホルミル化の方法を提供する。電位金属触媒にリガンドとして単座及び二座の燐化合物を組合わせた触媒組成物及び触媒組成物をオレフィン系化合物、一酸化炭素及び水素の混合気体と共に攪拌しつつ、加温、加圧してアルデヒドを製造するオレフィン系化合物のヒドロホルミル化の方法を提供する。これにより、非常に高い触媒活性を得て、ノルマル−またはイソ−アルデヒドに対する選択性(N/I選択性)を任意に調節できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燐を含む触媒組成物及びそれを利用したヒドロホルミル化の方法に係り、更に詳細には、電位金属触媒にリガンドとして単座及び二座の燐化合物を組合わせた触媒組成物、並びにこのような触媒組成物をオレフィン系の化合物と一酸化炭素及び水素の混合気体と共に攪拌しつつ、加温、加圧してアルデヒドを製造するオレフィン系化合物のヒドロホルミル化の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、OXO反応として公知のヒドロホルミル化反応とは、金属触媒及びリガンドの存在下で、各種オレフィンと合成気体(Synthetic gas、CO/H)とが反応して、オレフィンに炭素数が一つ増加した線型及び分枝型のアルデヒドが生成される過程を意味する。OXO反応は、1938年ドイツのOtto Roelenにより初めて発見され、2001年を基準に世界的に約8百40万トンの各種アルデヒド(アルコール誘導体を含む)がOXO工程により生産及び消費されている(SRI報告書、November 2002、682.700A)。OXO反応により合成された各種アルデヒドは、酸化または還元過程により、アルデヒド誘導体である酸及びアルコールに変形される。さらに、アルドールなどの縮合反応後、酸化または還元反応により長いアルキル基が含まれた多様な酸及びアルコールに変形されうる。このようなアルコール及び酸は、溶媒、添加剤、及び各種可塑剤の原料として使用されている。
【0003】
現在、OXOの工程に使用される触媒は、主にコバルト(Co)とロジウム(Rh)系列であり、適用するリガンドの種類及び運転条件により生成されるアルデヒドのN(normal)/I(iso)選択性が変わる。現在、全世界の70%以上のOXO工場が、ロジウム系の触媒を適用した低圧OXO工程を採択している。
【0004】
OXO触媒の中心金属としては、コバルト(Co)及びロジウム(Rh)の他にもイリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)などが適用可能である。しかし、各金属は、Rh≫Co>Ir、Ru>Os>Pt>Pd>Fe>Niなどの順に触媒活性を表すと知られているため、ほとんどの工程及び研究は、ロジウムとコバルトとに集中している。リガンドとしては、ホスフィン(PR、R=C、n−C)、ホスフィンオキシド(O=P(C)、ホスファイト、アミン、アミド、イソニトリルなどが適用可能であるが、触媒の活性、安定性及び価格面において、トリフェニルホスフィン(TPP)より優れたリガンドはほとんどない。したがって、ほとんどのOXO工程で、触媒としてはRh金属を使用し、リガンドとしてはTPPを適用しており、また、触媒系の安定性を向上させるために、リガンドであるTPPは、触媒の100当量以上を適用すると知られている。
【0005】
イーストマン・コダック社及びユニオン・カーバイド社(現在は、Dowに統合された)により、高い触媒活性及び高いN/I選択性を表す二座ホスフィンリガンドが開発された(米国特許第4694109号明細書、米国特許第4668651号明細書)。
【0006】
最近では、既存のアルキルホスフィンまたはアリールホスフィンに代えて、更に高い触媒活性及び選択性を付与できる新規なリガンドを開発しようとする多くの研究が行われている。
【0007】
例えば、Moloy,K.M.とPeterson,J.F.らは、N−ピロリルホスフィンリガンドを開発してアメリカ化学会紙に報告した(JACS 1995,117,7696)。
【0008】
米国特許第5,710,344号は、一つ以上のP−CまたはP−N結合を含む二座配位子を利用した、ヒドロホルミル化反応による線型アルデヒドの製造に関して開示している。
【0009】
最近には、線型(ノルマル)アルデヒドだけでなく、イソアルデヒドを原料とした製品の開発によりイソアルデヒドの需要が増加しているところ、従来のこのような触媒組成物としては、ノルマルアルデヒドに対する高い選択性によってイソアルデヒドに対する生産量の増加に限界がある。したがって、優れた触媒活性を維持しつつ、N/I選択性を任意に調節して、所望する量のノルマル及びイソアルデヒドを製造する技術が切実に要求される状況である。
【特許文献1】米国特許第4694109号明細書
【特許文献2】米国特許第4668651号明細書
【特許文献3】米国特許第5,710,344号
【非特許文献1】SRI報告書、November 2002、682.700A
【非特許文献2】JACS 1995,117,7696
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が達成しようとする技術的課題は、Rh/TPPに比べて高い触媒活性を維持しつつ、N/I選択性を調節できる二座配位子、単座配位子及び遷移金属触媒を含むヒドロホルミル化触媒組成物を提供することである。
【0011】
本発明が達成しようとする他の技術的課題は、前記触媒組成物をオレフィン系化合物、一酸化炭素及び水素の混合気体と共に攪拌しつつ、加温、加圧してアルデヒドを製造するオレフィン系化合物のヒドロホルミル化の方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記技術的課題を達成するために、
(a)下記化学式1:
【化1】

[前記式1で、R及びRは、それぞれ炭素原子数1ないし20の置換または非置換のアルキル基;炭素原子数1ないし20の置換または非置換のアルコキシ基;炭素原子数5ないし20の置換または非置換のシクロアルカンまたはシクロアルケン;炭素原子数6ないし36の置換または非置換のアリール基;炭素原子数1ないし20の置換または非置換のヘテロアルキル基;炭素原子数4ないし36の置換または非置換のヘテロアリール基;または炭素原子数4ないし36の置換または非置換の複素環基であり、Ar−Arは、ビスアリール系化合物であり、Xは、酸素(O)または硫黄(S)である]
で表示される二座配位子;
(b)下記化学式2:
【化2】

[前記式2で、R、R、及びRは、それぞれ炭素原子数1ないし20の置換または非置換のアルキル基;炭素原子数1ないし20の置換または非置換のアルコキシ基;炭素原子数5ないし20の置換または非置換のシクロアルカンまたはシクロアルケン;炭素原子数6ないし36の置換または非置換のアリール基;炭素原子数1ないし20の置換または非置換のヘテロアルキル基;炭素原子数4ないし36の置換または非置換のヘテロアリール基;または炭素原子数4ないし36の置換または非置換の複素環基であり、この時置換基は、ニトロ(−NO)、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、炭素原子数1ないし4のアルキル基である]
で表示される単座配位子;
(c)下記化学式3:
【化3】

[前記式3で、Mは、遷移金属であり、L、L及びLは、それぞれ水素、CO、アセチルアセトナート、シクロオキタジエン、ノルボルネン、塩素、またはトリフェニルホスフィンであり、l、m、及びnは、それぞれ0ないし5の値を有し、但し、l、m及びnが同時に0である場合は除外される]
で表示される遷移金属触媒を含む触媒組成物を提供する。
【0013】
本発明は、他の技術的課題を達成するために、前記触媒組成物を、オレフィン系化合物、一酸化炭素及び水素の混合気体と共に攪拌しつつ、加温、加圧してアルデヒドを製造するオレフィン系化合物のヒドロホルミル化の方法を提供する。
【0014】
本発明の一実施例によれば、前記オレフィン系化合物は、下記化学式4:
【化4】

[前記化学式4で、R及びRは、それぞれ水素、炭素原子数1ないし20のアルキル基、フッ素(−F)、塩素(−Cl)、臭素(−Br)、トリフルオロメチル(−CF)、または0ないし5個の置換基を有する炭素原子数6ないし20のフェニル基であり、この時、フェニル基の置換基は、ニトロ基(−NO)、フッ素(−F)、塩素(−Cl)、臭素(−Br)、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基である]
で表示される化合物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明による単座及び二座の燐化合物のリガンドを含む触媒組成物を利用したオレフィン系化合物のヒドロホルミル化の方法によれば、非常に高い触媒活性を得て、ノルマル−またはイソ−アルデヒドに対する選択性(N/I選択性)を任意に調節できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る触媒組成物は、二座配位子、単座配位子及び遷移金属触媒を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の二座配位子は、好ましくは、前記化学式1で表示される二座配位子のR及びRが、それぞれピロール、フェニル、またはインドールであり、この時、燐が窒素原子と直接連結されていることが好ましい。
【0018】
また、前記化学式1のビスアリール系の化合物は、下記化学式5:
【化5】

[前記化学式5で、
、R、R10、及びR11は、それぞれ水素、炭素原子数1ないし20のアルキル基、炭素原子数6ないし20のアリール基、トリアリールシリル基、トリアルキルシリル基、カルボアルコキシ基、カルボアリールオキシ、アリールオキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アミド、ハロゲン、ニトリル基であり、この時、カルボアルコキシ基、−CORのRは、炭素原子数1ないし20のアルキル基、炭素原子数6ないし20のアリール基であり、
は、メチル、メトキシ、t−ブチル基、Rは、水素、R10は、メチル、メトキシ、t−ブチル、及びR11は、メチルまたは水素であることが好ましい]
または化学式6:
【化6】

[前記化学式6で、
12、R13、R14、R15、R16、及びR17は、それぞれ水素、炭素原子数1ないし20のアルキル基、炭素原子数6ないし20のアリール基、トリアリールシリル基、トリアルキルシリル基、カルボアルコキシ基、カルボアリールオキシ、アリールオキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アミド、ハロゲン、ニトリル基であり、この時、カルボアルコキシ基、−CORのRは、炭素原子数1ないし20のアルキル基、炭素原子数6ないし20のアリール基である]
で表される化合物である。
【0019】
本発明の単座配位子は、好ましくは、前記化学式2のR、R、及びRが、それぞれフェニル基、フェニルオキシ基、シクロヘキシル基、またはt−ブチル基である。
【0020】
遷移金属触媒において、遷移金属(M)は、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、またはイリジウム(Ir)であることが好ましく、具体的な例としては、アセチルアセトナートジカルボニルロジウム(Rh(AcAc)(CO))、アセチルアセトナートカルボニルトリフェニルホスフィンロジウム(Rh(AcAc)(CO)(TPP))、ヒドリドカルボニルトリ(トリフェニルホスフィン)ロジウム(HRh(CO)(TPP))、アセチルアセトナートジカルボニルイリジウム(Ir(AcAc)(CO))、またはヒドリドカルボニルトリ(トリフェニルホスフィン)イリジウム(HIr(CO)(TPP))が好ましい。
【0021】
本発明の触媒組成物において、前記遷移金属の含量は、反応溶液を基準として、50ないし500ppmであることが好ましい。遷移金属の含量が、50ppmより少ない場合、ヒドロホルミル化の反応速度が遅くなるため、商業的に好ましくなく、500ppmより多い場合には、遷移金属が高価であるため、コストが上がり、反応速度面においても更に有利な効果が得られない。
【0022】
前記遷移金属1モルを基準として、前記二座配位子の含量は、0.5ないし20モルであり、前記単座配位子の含量は、0.1ないし50モルである。好ましくは、前記二座配位子の含量は、1ないし10モルであり、前記単座配位子の含量は、0.5ないし20モルである。この時、二座配位子の含量が0.5モルより少ない場合、触媒の安全性に問題が発生し、20モルより多い場合、N/I選択性は高いが、触媒活性が低下するという問題点がある。単座配位子の含量が0.5モルより少ない場合、触媒活性は高いが、N/I選択性が調節されないという問題が発生し、50モルより多い場合、触媒の安全性及び活性が低下するという問題が発生する。
【0023】
本発明によれば、前記単座配位子の含量を変化させることにより、二座配位子単独の触媒組成物を使用したヒドロホルミル化反応での優れた触媒活性を維持しつつ、生成されるアルデヒドのN/I選択性を任意に調節できるということが確認できる。これは、添加される本発明の単座配位子が触媒反応を起こす過程で、二座配位子と競争して触媒の中心金属と結合するためであると把握される。
【0024】
すなわち、遷移金属1モルを基準として、前記二座配位子の含量が、0.5ないし2モルであり、前記単座配位子の含量が、1ないし10モルであれば、N/I値が、2ないし3であり、前記二座配位子の含量が、3ないし10モルであり、前記単座配位子の含量が、1ないし10モルであれば、N/I値が15ないし18である。
【0025】
この時、前記遷移金属触媒が、アセチルアセトナートジカルボニルロジウム(Rh(AcAc)(CO))であり、前記二座配位子が、1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル−ビス(ホスホアミダイト)(BPO−P(Pyl))であり、及び前記単座配位子が、トリフェニルホスフィン(TPP)であることが特に好ましい。
【0026】
前記オレフィン系化合物は、エテン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、及びスチレンからなる群から選択された化合物であることが好ましい。
【0027】
本発明に係り、ヒドロホルミル化反応に使用される溶媒としては、プロパンアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒドのようなアルデヒド類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、及びシクロヘキサノンのようなケトン類;ベンゼン、トルエン及びキシレンのような芳香族類;オルトジクロロベンゼンを含むハロゲン化芳香族;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン及びジオキサンのようなエーテル類;塩化メチレンを含むハロゲン化パラフィン類;ヘプタンのようなパラフィン炭化水素などが使用され、好ましくは、各種アルデヒド及びトルエンなどの芳香族である。
【0028】
本発明のヒドロホルミル化の方法に使用される合成機体CO/Hの組成は、広範囲に変わりうる。CO/Hのモル比は、通常的に約5:95ないし70:30、好ましくは、約40:60ないし60:40の範囲内であり、CO/Hのモル比は、約1:1であるものを使用することが、特に好ましい。
【0029】
ヒドロホルミル化反応の温度は、通常的に約20ないし180℃であり、好ましくは、約50ないし150℃範囲内である。反応圧力は、約1ないし700barであり、好ましくは、1ないし300barの範囲内である。
【実施例】
【0030】
以下、下記の実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。
【0031】
(実施例1ないし9:アセチルアセトナートジカルボニルロジウム(Rh(AcAc)(CO))触媒及び二座及び単座の燐化合物を適用したプロペンのヒドロホルミル化反応)
Auto Clave社製のハイスループットスクリーン(HTS)の反応器に触媒であるRh(AcAc)(CO) 0.100mg(0.390mmol)、GC分析の内標物質であるヘキサデカン 0.2mL及び下記表1に記載されたロジウムに対するモル比により、二座配位子であるBPO−P(Pyl)及び、単座配位子であるTPP(トリフェニルホスフィン)またはTPPI(トリフェニルホスファイト)をトルエンに溶解させて、全体溶液を100mLにした後に添加した。前記反応溶液に、プロペン:CO:Hのモル比が1:1:1である反応気体を注入して、反応器内の圧力を6barに維持した後、85℃で攪拌しつつ2.5時間反応させた。
【0032】
前記反応に対する触媒及びリガンドの種類、触媒に対するリガンドのモル比、反応温度、N/I選択性及び触媒活性を表1に詳細に記載した。
【0033】
下記表1で、N/I値は、反応で生成されたノルマル−ブチルアルデヒドの量をイソ−ブチルアルデヒドの量で割った値であり、各アルデヒドの生成量は、内標物質として添加したヘキサデカンの量を基準に気体クロマトグラフィー(GC)分析により求めた。
【0034】
触媒活性は、前記反応で生成されたノルマルアルデヒドとイソアルデヒドと総量を、ブチルアルデヒドの分子量、使用した触媒の濃度、そして反応時間で割った値である。この時、触媒活性の単位は、mol(BAL)/mol(Rh)/hである。
【0035】
【表1】

【0036】
(比較例1:アセチルアセトナートジカルボニルロジウム(Rh(AcAc)(CO))触媒及びトリフェニルホスフィン(TPP)を利用したプロペンのヒドロホルミル化反応)
リガンドとしてTTPを単独で使用し、リガンド対ロジウムのモル比が100であることを除いては、実施例1と同じ方法で触媒活性実験を行い、その結果を表2に表した。
【0037】
(比較例2:アセチルアセトナートジカルボニルロジウム(Rh(AcAc)(CO))触媒及びトリピロリルホスフィン(P(Pyl))を利用したプロペンのヒドロホルミル化反応)
リガンドとしてTPPの代わりにP(Pyl)を使用し、リガンド対ロジウムのモル比が50であることを除いては、比較例1と同じ方法で触媒活性実験を行い、その結果を表2に表した。
【0038】
(比較例3:アセチルアセトナートジカルボニルロジウム(Rh(AcAc)(CO))触媒及び1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル−ビス(ホスホアミダイト)(BPO−P(Pyl))を利用したプロペンのヒドロホルミル化反応)
リガンドとしてTPPの代わりにBPO−P(Pyl)を使用し、リガンド対ロジウムのモル比が1、3または5であることを除いては、比較例1と同じ方法で触媒活性実験を行い、その結果を表2に表した。
【0039】
【表2】

【0040】
前記比較例1ないし比較例2に使用された単座である化合物を適用したプロペンのヒドロホルミル化反応に対する触媒活性及びN/I選択性を説明すれば、前記表2に表すように、一般的に多く使用されるTPPの場合、前記条件での触媒活性は、8.4mol(BAL)/mol(Rh)/hであり、N/I選択性は、3.9である。同じ条件でトリピロリルホスフィン(P(Pyl))をリガンドとして適用した場合には、TPPを適用した場合より多少低い触媒活性を表したが、ノルマル−ブチルアルデヒドに対する多少高い選択性(N/I選択性10.1)を表した。特に、P(Pyl)を適用する場合、反応温度を下げれば、触媒活性は多少低下するが、N/I選択性は、急激に向上することと知られている。
【0041】
表1を参照すれば、実施例1の場合は、二座配位子比較例3の反応条件に単座配位子であるTPPを、ロジウムに対し1モル比を添加したものであって、触媒活性は、約12%向上し、ノルマル−ブチルアルデヒドに対する選択性は、8.7から3.2に低下した。すなわち、イソブチルアルデヒドに対する選択性は、2倍以上向上し、3モル比のTPPを3モル比添加した実施例2の場合は、N/I選択性の値は、2.0である。
【0042】
二座配位子であるBPO−P(Pyl)を、追加的に2モル比を添加すれば、既存のRh/TPP工程に比べて240%に達する触媒活性を維持しつつ、15以上の高いN/I選択性を維持可能であり、ノルマルブチルアルデヒドに対する生産量の増加を図りうる。
単座配位子としてTPPIを適用した実施例8ないし実施例9の場合にも、TPPを適用した場合と類似した傾向が表れることが分かる。
【0043】
以上の結果により、触媒であるアセチルアセトナートジカルボニルロジウム(Rh(AcAc)(CO))に二座配位子である1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル−ビス(ホスホアミダイト)(BPO−P(Pyl)及び単座配位子であるTPPまたはTPPIリガンドが添加された触媒組成物を利用すれば、運転中のプロペンのヒドロホルミル化反応システムに二座配位子の含量のみを変化させることにより、ノルマル及びイソブチルアルデヒドの生産量を調節できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る電位金属触媒にリガンドとして単座及び二座の燐化合物を組合わせた触媒組成物は、アルデヒドを製造するオレフィン系化合物のヒドロホルミル化の方法に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記化学式:
【化1】

[前記式1で、
及びRは、それぞれ炭素原子数1ないし20の置換または非置換のアルキル基;炭素原子数1ないし20の置換または非置換のアルコキシ基;炭素原子数5ないし20の置換または非置換のシクロアルカンまたはシクロアルケン;炭素原子数6ないし36の置換または非置換のアリール基;炭素原子数1ないし20の置換または非置換のヘテロアルキル基;炭素原子数4ないし36の置換または非置換のヘテロアリール基;または炭素原子数4ないし36の置換または非置換の複素環基であり、
Ar−Arは、ビスアリール系化合物であり、
Xは、酸素(O)または硫黄(S)である]
1で表示される二座配位子;
(b)下記化学式2:
【化2】

[前記式2で、
、R、及びRは、それぞれ炭素原子数1ないし20の置換または非置換のアルキル基;炭素原子数1ないし20の置換または非置換のアルコキシ基;炭素原子数5ないし20の置換または非置換のシクロアルカンまたはシクロアルケン;炭素原子数6ないし36の置換または非置換のアリール基;炭素原子数1ないし20の置換または非置換のヘテロアルキル基;炭素原子数4ないし36の置換または非置換のヘテロアリール基;または炭素原子数4ないし36の置換または非置換の複素環基であり、この時置換基は、ニトロ(−NO)、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、炭素原子数1ないし4のアルキル基である]
で表示される単座配位子;
(c)下記化学式3:
【化3】

[前記式3で、
Mは、遷移金属であり、
、L及びLは、それぞれ水素、CO、アセチルアセトナート、シクロオキタジエン、ノルボルネン、塩素、またはトリフェニルホスフィンであり、
l、m、及びnは、それぞれ0ないし5の値を有し、但し、l、m及びnが同時に0である場合は除外される]
で表示される遷移金属触媒;
を含む触媒組成物。
【請求項2】
前記式1で表示される二座配位子のR及びRが、それぞれピロール、フェニル、またはインドールであり、この時、燐が窒素原子と直接連結されていることを特徴とする請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
前記式1で表示される二座配位子のビスアリール系化合物が下記式4:
【化4】

[前記式4で、
、R、R10、及びR11は、それぞれ水素、炭素原子数1ないし20のアルキル基、炭素原子数6ないし20のアリール基、トリアリールシリル基、トリアルキルシリル基、カルボアルコキシ基、カルボアリールオキシ、アリールオキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アミド、ハロゲン、ニトリル基であり、この時カルボアルコキシ基、−CORのRは、炭素原子数1ないし20のアルキル基、炭素原子数6ないし20のアリール基である]
または式5:
【化5】

[前記式5で、
12、R13、R14、R15、R16、及びR17、は、それぞれ水素、炭素原子数1ないし20のアルキル基、炭素原子数6ないし20のアリール基、トリアリールシリル基、トリアルキルシリル基、カルボアルコキシ基、カルボアリールオキシ、アリールオキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アミド、ハロゲン、ニトリル基であり、この時カルボアルコキシ基、−CORのRは、炭素原子数1ないし20のアルキル基、炭素原子数6ないし20のアリール基である]
のものであることを特徴とする請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項4】
前記式5の置換基のうち、Rは、メチル、メトキシ、t−ブチル基であり、Rは、水素であり、R10は、メチル、メトキシ、t−ブチルであり、R11は、メチルまたは水素であることを特徴とする請求項3に記載の触媒組成物。
【請求項5】
前記式2で表示される単座配位子のR、R、及びRは、それぞれフェニル基、フェニルオキシ基、シクロヘキシル基、またはt−ブチル基であることを特徴とする請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項6】
前記式3の遷移金属は、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、またはイリジウム(Ir)であることを特徴とする請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項7】
前記遷移金属触媒は、アセチルアセトナートジカルボニルロジウム(Rh(AcAc)(CO))、アセチルアセトナートカルボニルトリフェニルホスフィンロジウム(Rh(AcAc)(CO)(TPP))、ヒドリドカルボニルトリ(トリフェニルホスフィン)ロジウム(HRh(CO)(TPP))、アセチルアセトナートジカルボニルイリジウム(Ir(AcAc)(CO))、またはヒドリドカルボニルトリ(トリフェニルホスフィン)イリジウム(HIr(CO)(TPP))であることを特徴とする請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項8】
前記遷移金属の含量は、触媒溶液を基準に50ないし500ppmであり、遷移金属1モルを基準に前記二座配位子の含量は、0.5ないし20モルであり、前記単座配位子の含量は、0.1ないし50モルであることを特徴とする請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項9】
遷移金属1モルを基準として、前記単座配位子の含量が0.1ないし10モルである場合、前記二座配位子の含量が0.5ないし2モルであれば、N/I値は、2ないし3であり、前記二座配位子の含量が3ないし10モルであれば、N/I値は、15ないし18であることを特徴とする請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項10】
前記遷移金属触媒は、アセチルアセトナートジカルボニルロジウム(Rh(AcAc)(CO))であり、前記二座配位子が、1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル−ビス(ホスホアミダイト)(BPO−P(Pyl))であり、前記単座配位子がトリフェニルホスフィンオキシド(TPPO)であることを特徴とする請求項9に記載の触媒組成物。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のうち、何れか1項に記載の触媒組成物を、オレフィン系化合物、一酸化炭素及び水素の混合気体と共に攪拌しつつ、加温、加圧してアルデヒドを製造するオレフィン系化合物のヒドロホルミル化の方法。
【請求項12】
前記オレフィン系化合物は、下記式6:
【化6】

[前記式4で、
及びRは、それぞれ水素、炭素原子数1ないし20のアルキル基、フッ素(−F)、塩素(−Cl)、臭素(−Br)、トリフルオロメチル(−CF)、または0ないし5個の置換基を有する炭素原子数6ないし20のフェニル基であり、この時、フェニル基の置換基は、ニトロ基(−NO)、フッ素(−F)、塩素(−Cl)、臭素(−Br)、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基である]
で表示されるオレフィン系化合物であることを特徴とする請求項11に記載のヒドロホルミル化の方法。
【請求項13】
前記オレフィン系化合物は、エテン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、及びスチレンからなる群から選択された化合物であることを特徴とする請求項11に記載のヒドロホルミル化の方法。

【公表番号】特表2007−507340(P2007−507340A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532068(P2006−532068)
【出願日】平成16年7月3日(2004.7.3)
【国際出願番号】PCT/KR2004/001646
【国際公開番号】WO2005/120705
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】