説明

燻煙剤充填容器及びその製造方法

【課題】生産効率と品質を向上させた燻煙剤充填容器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】上部が開口し熱によって蒸散する燻煙剤14を収容した燻煙剤収容部11と、蒸散した燻煙剤14を放出するための噴煙口15を有し、燻煙剤収容部11の上部開口に嵌着される上蓋12と、上蓋12の面上に設けられ噴煙口15を塞ぎ、燻煙剤14を蒸散する際に発生する熱によって噴煙口15を解放する封止部材13と、を備える燻煙剤充填容器1において、封止部材13が、上蓋12面上を覆うと共に、封止部材13の一部が噴煙口15内に入り込むことを特徴とする燻煙剤充填容器1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燻煙剤充填容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋内等の密閉空間内で害虫駆除や防菌防黴処理を行う手段として燻煙剤は広く使用され、かかる燻煙剤を充填した燻煙剤充填容器が実用化されている。
【0003】
燻煙剤充填容器は、基本的には、燻煙剤収容部と、この燻煙剤収容部の上部開口に嵌着される上蓋とから構成される。ここで燻煙剤収容部とは、発熱によって蒸散する燻煙剤を収容した容器である。一方、上蓋には、蒸散した燻煙剤を放出するための噴煙口を有している。
【0004】
ところで燻煙剤充填容器には、使用前に燻煙剤が噴煙口から漏れるのを防ぐために、噴煙口を含めた上蓋の面上に封止部材を設けて噴煙口を塞ぐのが望ましい。この封止部材は、燻煙剤を蒸散させるときに発生する熱によって噴煙口を開放して、蒸散された燻煙剤を放出することを可能にするために、熱融着性の材料を使用するのが望ましい。
【0005】
ここで、封止部材を設けて噴煙口を塞ぐ封止技術として、これまでに熱融着性樹脂フィルムを上蓋の面上に貼り付ける技術(特許文献1及び2参照)や、上蓋に設けられている突起で熱融着性フィルムを固定する技術(特許文献3参照)が開示されている。
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第2589896号公報
【特許文献2】特開2006−306887号公報
【特許文献3】特許第3530819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで熱融着性樹脂フィルムを上蓋に貼り付ける方法としては、接着剤を使用してフィルムを貼り付ける方法、特許文献3に示される上蓋に設けられる突起物で固定する方法、フィルムをヒートシールする方法等が考えられる。いずれの方法を採用しても、封止部材は噴煙口を塞いでいるが、このとき封止部材は、当該噴煙口上を覆っているにすぎず、封止部材が上蓋に十分に接着されていないことがあった。このため、製品である燻煙剤充填容器に衝撃等が加わったときに、封止部材である熱融着性樹脂フィルムが上蓋から剥がれることがあった。また、この熱融着性樹脂フィルムを上蓋に貼り付けるときに、フィルムと噴煙口との間にわずかにすき間が生じることがあり、このすき間から燻煙剤から漏れることがあった。
【0008】
また、封止部材として使用される熱融着性樹脂フィルムは、膜厚が薄いため、製品である燻煙剤充填容器に衝撃等が加わったときに、フィルム自体が破損することがあった。
【0009】
さらに、接着剤を使用する方法では、使用する接着剤に含まれる溶剤を除去するための換気が必要となり、生産効率を下げる原因となっていた。また貼り付けるフィルムを供給するときにフィルムの2枚落ちや、フィルムの未挿入が起こることがあり、これにより不良品が発生するという問題があった。また上蓋に設けられる突起物で固定する方法では、当該突起物を上蓋に形成する工程が必要となる。一方、フィルムをヒートシールする方法では、上述した換気や上蓋の形成工程に関する問題は発生しないが、フィルムを上蓋に接着するのに時間がかかり、フィルムの2枚落ちや、フィルムの未挿入による不良品の発生という問題が依然として残っていた。また熱融着性樹脂フィルムを封止部材として使用する際には、上蓋の大きさに合わせてフィルムを用意したり加工したりする必要があった。
【0010】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、品質と生産効率とを向上させた燻煙剤充填容器及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題は、以下の本発明により解決することができる。
【0012】
即ち、本発明の燻煙剤充填容器は、上部が開口し熱によって蒸散する燻煙剤を収容した燻煙剤収容部と、
蒸散した該燻煙剤を放出するための噴煙口を有し、該燻煙剤収容部の上部開口に嵌着される上蓋と、
該上蓋の面上に設けられ該噴煙口を塞ぎ、該燻煙剤を蒸散する際に発生する熱によって該噴煙口を開放する封止部材と、を備える燻煙剤充填容器において、
前記封止部材が、前記上蓋面上を覆うと共に、前記封止部材の一部が前記噴煙口内に入り込むことを特徴とする燻煙剤充填容器を特徴とする。
【0013】
本発明の燻煙剤充填容器において、好ましくは、前記封止部材が有する粘性と、前記封止部材の一部が前記噴煙口内に入り込むことにより、前記封止部材が、前記上蓋と接着していることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の燻煙剤充填容器において、好ましくは、前記封止部材が、溶融状態の熱溶融性樹脂材料を前記噴煙口上を含む前記上蓋面上に展延して固化させた樹脂膜であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の燻煙剤充填容器の製造方法は、上部が開口し発熱によって蒸散する燻煙剤を収容した燻煙剤収容部と、
蒸散した該燻煙剤を放出するための噴煙口を有し、該収容部の上部開口に嵌着される上蓋と、
該上蓋の面上に設けられ該噴煙口を塞ぎ、該燻煙剤を蒸散する際に発生する熱によって該噴煙口を開放する封止部材と、を備える燻煙剤充填容器の製造方法において、
前記上蓋を回転させながら前記噴煙口上を含む前記上蓋の面上に溶融状態の樹脂材料を噴射して、該樹脂材料を前記上蓋の面上に展延することで前記封止部材を形成することを特徴とする。
【0016】
本発明の燻煙剤充填容器の製造方法において、好ましくは、前記樹脂材料の軟化点が70℃〜150℃の範囲にある樹脂であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の燻煙剤充填容器は、封止部材の一部が噴煙口内に入り込んでいる。このため、使用前において、燻煙剤充填容器に衝撃等が加わったとしても当該樹脂膜が剥がれないので、燻煙剤が噴煙口から漏れることがない。従って、燻煙剤充填容器の品質、特に、封止性能が向上される。
【0018】
一方、本発明の燻煙剤充填容器を製造する際に、熱融着性樹脂フィルムは使用しなくてよいので、熱融着性樹脂フィルムを使用したときに問題となっていたフィルムの2枚落ちや、フィルムの未挿入による不良品が発生しなくなる。また、封止部材を設ける際に接着剤を使用しないので、溶剤を除去するための換気が不要となり、封止部材を設ける際に要する時間を短くすることができる。さらに、フィルムを接着剤で接着する場合と比べて封止部材が有する封止効果が大きくなる。従って、燻煙剤充填容器の品質及び生産効率が向上される。
【0019】
以上より、本発明によれば、生産効率と品質を向上させた燻煙剤充填容器及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の燻煙剤充填容器は、燻煙剤収容部と、上蓋と、封止部材と、を備えるものである。ここで燻煙剤収容部は、上部が開口し発熱によって蒸散する燻煙剤を収容した金属等からなる耐熱性の容器である。上蓋は、蒸散した燻煙剤を放出するための噴煙口を有し、燻煙剤収容部の上部開口に嵌着される金属等からなる耐熱性の蓋材である。尚、上蓋に設けられる噴煙口の数は、1個であってもよいし、複数個であってもよい。また、後述する本発明の燻煙剤充填容器の製造方法を実施することができれば、上蓋に設けられる噴煙口の形状は、特に限定されない。封止部材は、燻煙剤充填容器を使用する前には上蓋の面上に設けられ噴煙口を塞ぐ部材である。この封止部材は、燻煙剤を蒸散する際に発生する熱、即ち、蒸散された燻煙剤が有する熱によって噴煙口を開放する部材である。
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の燻煙剤充填容器の具体例について詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の燻煙剤充填容器における第一の実施形態を示す断面図である。また図2は、図1の燻煙剤充填容器に使用される上蓋を示す図であり、(a)は上蓋の底面図であり、(b)は、(a)中のX−X’の断面図である。
【0023】
図1に示される本実施形態の燻煙剤充填容器1は、燻煙剤収容部11と、燻煙剤収容部11の上部開口に嵌着される上蓋12と、上蓋12の面上に設けられる封止部材13と、から構成される。図1の燻煙剤充填容器1において、燻煙剤収容部11には発熱によって蒸散する燻煙剤14が収納されている。図1の燻煙剤充填容器1において、上蓋12には、蒸散した燻煙剤を放出する噴煙口15が複数設けられている。また上蓋12の中央には、発熱部材16を装着するための装着孔17が設けられており、この装着孔17の周縁部には発熱部材16を保持するための支持片18が設けられている。尚、本実施形態において、発熱部材16は燻煙剤14に直接接している。
【0024】
本実施形態の燻煙剤充填容器1は、発熱部材16の先端には点火ヘッド16aが設けられている。ここで図1の燻煙剤充填容器を使用する際には、点火ヘッド16aを摩擦板で擦って点火する。すると、発熱部材16に収納されている発熱剤が燃焼し熱が発生する。そしてこの熱によって燻煙剤14が気化し高温のガス状物質又はエアロゾルとなって燻煙剤収容部11内に蒸散する。ここで蒸散した燻煙剤の温度が封止部材13の構成材料である熱溶融性樹脂材料の融点又は軟化点よりも高くなると、封止部材13が融解又は流動化して、封止部材13が塞いでいた噴煙口15が開放される。このように噴煙口15が開放されたときに、蒸散した燻煙剤は噴煙口15から放出される。
【0025】
図1及び図2に示されるように、封止部材13は、噴煙口15を含めた上蓋12の面上に設けられている。より具体的には、封止部材13は、上蓋12の面上であって装着孔17の外周に設けられる。ここで封止部材13は上蓋12の上面上に設けてもよいし上蓋12の底面上に設けてもよい。ただし燻煙剤を蒸散する際に発生する熱により噴煙口15の開放を効率よく行うためには、好ましくは、上蓋12の底面上に封止部材13を設ける。
【0026】
また、封止部材13は、図2(a)に示されるように、上蓋12に設けられている噴煙口15を塞いでいればよく、上蓋12の面全体にわたって封止部材を設ける必要はない。一方、封止部材13を設ける際に、封止部材の一部が噴煙口15内に入り込んでいるため、燻煙剤充填容器に衝撃等が加わったとしても、封止部材が剥がれることはない。これにより本発明の燻煙剤充填容器は、使用前において細粒状の燻煙剤を噴煙口から漏れるのを防ぐ効果(封止効果)は従来の封止技術と比べて大きい。この封止効果をより高めるために、噴煙口15の側壁の2分の1以上が封止部材13で充填されるのが好ましい。
【0027】
ところで封止部材13は、封止部材13が有する粘性と、封止部材の一部が、前記噴煙口内に入り込むことにより、上蓋12の面上に接着されている。ここで封止部材13として、好ましくは、溶融状態の熱溶融性樹脂材料を噴煙口15上を含む上蓋12面上に展延して固化させた樹脂膜である。封止部材13として当該樹脂膜を設けることにより、封止効果はより大きくなる。
【0028】
また、この樹脂膜は、上蓋12を回転したときに発生する遠心力を利用して展延して固化させて形成するのが好ましい。尚、樹脂膜の具体的な形成方法については、後述する。
【0029】
図3は、本発明の燻煙剤充填容器における第二の実施形態を示す断面図である。以下、本実施形態と第一の実施形態との相違点を中心に説明する。図3に示されるように、本実施形態の燻煙剤充填容器2は、上蓋12が、底板部12aと、胴部12bと、天板部12cと、から構成されている。ここで底板部12aには、発熱部材16を装着するための装着孔17と、発熱部材16を保持するための支持片18と、蒸散した燻煙剤を放出する噴煙口15とが設けられている。一方、天板部12cには、発熱部材16の発熱ヘッド16aが顕出する中央孔21と、複数の噴煙口22が設けられている。
【0030】
本実施形態において、噴煙口15を含めた上蓋12の面上に封止部材13を設ける場合、熱による噴煙口15の開放を効率よく行うために、好ましくは、底板部12aの底面上に封止部材13を設ける。
【0031】
図4は、本発明の燻煙剤充填容器における第三の実施形態を示す断面図である。また図5は、図4の燻煙剤充填容器に使用される上蓋を示す図であり、(a)は上蓋の底面図であり、(b)は、(a)中のX−X’の断面図である。
【0032】
図4に示される本実施形態の燻煙剤充填容器3は、基本的には、燻煙剤等を収納する収納容器31と、収納容器31の上部開口に嵌着される上蓋32と、上蓋32の面上に設けられる封止部材33と、から構成される。
【0033】
図4の燻煙剤充填容器3において、収納容器31の内部には、金属等の熱伝導性の良好な部材からなり収納容器31を上下に分割する仕切り34が設けられている。ここで仕切り34の上方は燻煙剤35が収納されている燻煙剤収容部31aであり、仕切り34の下方は水と混合すると発熱する発熱剤(不図示)が収納されている発熱剤収納部31bである。図4の燻煙剤充填容器3において、上蓋32には、蒸散した燻煙剤を放出する噴煙口36が複数設けられている。
【0034】
尚、図4の燻煙剤充填容器3において、燻煙剤35を蒸散させるための熱を発生させる発熱部材に相当する発熱剤は、燻煙剤と接触しない位置に設けられている。このように本発明の燻煙剤充填容器において、発熱部材は必ずしも燻煙剤と直接接する位置で設ける必要はない。
【0035】
図4の燻煙剤充填容器3を使用する際には、水の入った容器内に燻煙剤充填容器3を入れる。すると、発熱剤収納部31bに収納されている発熱剤が水と接触することで熱が発生する。この熱が仕切り34を通って燻煙剤収容部31aに到達すると、この熱によって加熱された燻煙剤35が気化し高温のガス状物質又はエアロゾルとなって燻煙剤収容部31a内に蒸散する。ここで蒸散した燻煙剤の温度が封止部材33の構成材料である熱溶融性樹脂材料の融点又は軟化点よりも高くなったときに、封止部材33が融解又は流動化して、封止部材33が塞いでいた噴煙口36が開放される。このように噴煙口36が開放されたときに、蒸散した燻煙剤は噴煙口36から放出される。
【0036】
図4及び図5に示されるように、封止部材33は、噴煙口36を含めた上蓋32の面上に設けられている。ここで封止部材33は上蓋32の上面上に設けてもよいし上蓋32の底面上に設けてもよい。ただし熱による噴煙孔36の開放を効率よく行うためには、好ましくは、上蓋32の底面上に封止部材33を設ける。
【0037】
また、封止部材33は、図5(a)に示されるように、上蓋32に設けられている噴煙口36を塞いでいればよく、上蓋32の面全体にわたって封止部材を設ける必要はない。ここで封止部材33を設ける際に、封止部材が噴煙口36内に入り込んでいる。これにより本発明の燻煙剤充填容器は、使用前において燻煙剤を噴煙口から漏れるのを防ぐ効果(封止効果)は従来の封止技術と比べて大きい。この封止効果をより高めるために、好ましくは、噴煙口36の側壁の2分の1以上を封止部材33で充填する。
【0038】
図6は、本発明の燻煙剤充填容器における第四の実施形態を示す断面図である。以下、本実施形態と第三の実施形態との相違点を中心に説明する。図6の燻煙剤充填容器4は、上蓋32が、底板部32aと、胴部32bとから構成されている。ここで底板部32aには、蒸散した燻煙剤を放出する噴煙口36が複数設けられている。
【0039】
本実施形態において、噴煙口36を含めた上蓋32の面上に封止部材33を設ける場合、熱による噴煙口36の開放を効率よく行うために、好ましくは、底板部32aの底面上に封止部材33を設ける。
【0040】
以上、具体的な実施形態を挙げて本発明の燻煙剤充填容器について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、構成部材の1つである上蓋12,32は、噴煙口15,36を有する板状の部材、即ち、図3及び図6に示される底板部12a,32aが含まれていれば、その全体形状については特に限定されるものではない。
【0041】
次に、本発明の燻煙剤充填容器の製造方法について説明する。
【0042】
本発明の燻煙剤充填容器を構成する部材のうち燻煙剤収容部及び上蓋は、それぞれ公知の方法により製造することができる。
【0043】
次に、封止部材の形成方法について説明する。封止部材の形成する際には、具体的には、溶融状態の樹脂材料を供給する樹脂供給手段と、上蓋を回転させるための回転手段とを備えた装置を用いて封止部材を形成する。
【0044】
以下、封止部材の形成方法について図面を参照しながらより具体的に説明する。
【0045】
図7は、封止部材の形成装置を示す概略図である。図7の封止部材形成装置70は、アプリケーター71、ホース72及びノズル73からなる樹脂供給手段と、回転手段に相当するターレット74とから構成される。
【0046】
図7の封止部材形成装置70において、アプリケーター71は、溶融状態の樹脂材料を貯蔵する樹脂収容タンク75と、樹脂収容タンク75からノズル73へ向けて溶融状態の樹脂材料を移送するポンプ76とを備えている。また図7の封止部材形成装置70において、ノズル73には、樹脂材料の噴射を制御するコントローラー77を備えている。尚、樹脂材料は温度によってその粘度が変化するので、ノズル73から噴射される樹脂材料の温度は一定に保たれるのが好ましい。図7の封止部材形成装置70においては、アプリケーター71によって樹脂の温度が制御される。
【0047】
図7の封止部材形成装置70で封止部材を形成する際には、まず上蓋78を、塗布面が上になるようにしてターレット74上に置き、ターレット74に備え付けられている固定具79で上蓋78を固定する。尚、上蓋78を固定する方法としては、例えば、図7に示されるように上蓋の胴部を固定する方法があるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0048】
一方、ノズル73は、ターレット74の上方に固定されている。このときノズル73の固定位置は、好ましくは、塗布面の中心、即ち、上蓋78の中心に合わせるようにする。ただし、上記第一及び第二の実施形態のように、上蓋78の中心に発熱部材を装着するための装着孔が設けられている場合は、ノズル73の位置を塗布面の中心に最も近い装着孔の外縁に合わせるように固定する。
【0049】
次に、ターレット74を回転させながら、ノズル74から溶融状態の樹脂材料を噴煙口上を含む上蓋78の面上に噴射する。そうすると、溶融状態の樹脂材料が遠心力により上蓋78の面上を展延する。この方法で封止部材を形成すると、上蓋78を固定しノズル73をスキャンしながら溶融状態の樹脂材料を噴射する方法と比較して、樹脂材料の使用量を少なくすることができる。またターレットの回転によって生じる遠心力の大きさ、樹脂材料の溶融粘度等を考慮しつつターレットの回転速度を適宜調整すれば、上蓋のサイズが変わったとしても同一の装置で封止部材を形成することができる。このため、従来のように、上蓋のサイズに応じてサイズの異なる樹脂フィルムを複数種類用意する必要はない。
【0050】
尚、本工程において、ターレット74を回転させる時期と、樹脂材料を噴射する時期はほぼ同時であるが、好ましくは、ターレット74の回転を先にする。また本工程において、ターレット74を回転するときの回転速度は、上蓋のサイズに依存するが、好ましくは、回転数にして500rpm〜1500rpmである。回転数が500rpm未満であると、溶融状態の樹脂材料を展延するのに十分な遠心力が働かなくなる。また回転数が1500rpmを越えると、樹脂材料が上蓋78を飛び出して周囲に飛散することがある。
【0051】
ノズル73から噴射される樹脂材料は熱融着性樹脂(熱可塑性樹脂)である。熱融着性樹脂として、例えば、EVA系樹脂、ゴム系樹脂、オレフィン系樹脂等が挙げられるが、本発明では特に限定されない。
【0052】
熱融着性樹脂の中でも、好ましくは、軟化点が70℃〜150℃の範囲にある樹脂である。軟化点が70℃未満であると、製品を保管・輸送するときに形成された封止部材が劣化する場合がある。一方、軟化点が150℃を超えると、燻煙剤を蒸散するときに発生する熱で噴煙口を解放することができなくなる場合がある。
【0053】
また熱可塑性樹脂の中でも、温度が160℃〜200℃における樹脂材料の溶融粘度が500mPa・s〜2000mPa・sであるものがより好ましい。溶融粘度が500mPa・s〜2000mPa・sの範囲であれば、上述した回転速度で噴煙口を塞ぐことが可能である。
【0054】
ところでノズル73から樹脂材料を噴出する際には、コントローラー77により単位時間当たりの樹脂の噴出量及び樹脂の噴出時間を適宜調整する。ここで樹脂の噴出時間が短すぎると成膜性が不十分となる一方で、樹脂の噴出時間が長すぎると生産コストがかかると共に使用時に噴出口が開放しきれない恐れがある。樹脂の噴出時間は、目安として0.1秒〜1.0秒である。一方、上蓋1個あたりの樹脂の噴出量は、上蓋の大きさにより異なるが、目安として0.5g/個〜20g/個である。
【0055】
本発明の製造方法により封止部材を形成すると、封止部材として従来使用されてきた熱融着性樹脂フィルムを使用する必要がなくなるので、従来からの課題であるフィルムの2枚落ちや、フィルムの未挿入による不良品の発生を未然に防ぐことができる。また本発明の製造方法では、熱融着性樹脂フィルムを接着する接着剤も不要である。このため接着剤に含まれる溶剤を揮発させる必要がなく作業時間を短縮することができる。そのため生産効率を向上させることができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0057】
[実施例1]
(封止部材の形成)
図3に示される燻煙剤充填容器を構成する上蓋について、以下に示す方法により封止部材を形成した。尚、使用した上蓋は、直径5.6cm、胴部高さ2.0cmの円筒状の蓋材であって、底板部中央に設けられている装着孔の直径が1.3cmである。
【0058】
この上蓋を、塗布面である底板部の底面が上を向いた状態でターレット上へ移送し、ターレットに固定した。尚、溶融状態の樹脂材料を噴射するためのノズルは、ターレット上方に固定されている。具体的には、上蓋をターレット上に固定した際に、上蓋が有する装着孔の外縁上となる位置に、ノズルは固定されている。また、ノズルは、ホースを介してアプリケーター(ノードソン株式会社製、デュラブルー D4Lメルター)に接続されており、アプリケーターには、熱融着性の樹脂材料(積水フーラー株式会社製、ADVANTRA PHC−9458S、軟化点105℃、180℃における樹脂の粘度が950mPa・sである)が溶融状態で仕込まれている。
【0059】
次に、ターレットの回転を開始し、その直後にノズルから溶融状態の樹脂材料を噴射した。このときターレットの回転速度は、1000rpmとした。一方、溶融状態の樹脂材料を噴射する際に、噴射温度を200℃とし、上蓋1個当りの噴射量を0.9g/個とし、噴射時間を0.40秒とした。
【0060】
樹脂材料が冷却・固化した後、封止部材の形成状況を確認したところ、全ての噴煙口が封止部材によって塞がれていることがわかった。
【0061】
(噴煙試験)
以上の工程で形成した封止部材を備える上蓋に点火ヘッドを有する発熱部材を取り付けた後、この上蓋を燻煙剤収容部に嵌着することにより、図3の燻煙剤充填容器を得た。
【0062】
得られた燻煙剤充填容器について噴煙試験を行った。具体的には、燻煙剤充填容器を使用した後に、噴出口が開放されるか否かを検証した。
【0063】
検証の結果、蒸散した燻煙剤が噴出口から放出されるのが確認された。また使用後、噴出口は全て開放されていることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の燻煙剤充填容器における第一の実施形態を示す断面図である。
【図2】図1の燻煙剤充填容器に使用される上蓋を示す図であり、(a)は上蓋の底面図であり、(b)は、(a)中のX−X’の断面図である。
【図3】本発明の燻煙剤充填容器における第二の実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明の燻煙剤充填容器における第三の実施形態を示す断面図である。
【図5】図4の燻煙剤充填容器に使用される上蓋を示す図であり、(a)は上蓋の底面図であり、(b)は、(a)中のX−X’の断面図である。
【図6】本発明の燻煙剤充填容器における第四の実施形態を示す断面図である。
【図7】封止部材の形成装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0065】
1,2,3,4 燻煙剤充填容器
11,31a 燻煙剤収容部
12,32,78 上蓋
12a,32a 底板部
12b,32b 胴部
12c 天板部
13,33 封止部材
14,35 燻煙剤
15,36 噴煙口
16 発熱部材
16a 点火ヘッド
17 装着孔
18 支持片
21 中央孔
22 噴煙口
31 収納容器
31b 発熱剤収納部
34 仕切り
70 封止部材形成装置
71 アプリケーター
72 ホース
73 ノズル
74 ターレット
75 樹脂収容タンク
76 ポンプ
77 コントローラー
79 固定具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が開口し熱によって蒸散する燻煙剤を収容した燻煙剤収容部と、
蒸散した該燻煙剤を放出するための噴煙口を有し、該燻煙剤収容部の上部開口に嵌着される上蓋と、
該上蓋の面上に設けられ該噴煙口を塞ぎ、該燻煙剤を蒸散する際に発生する熱によって該噴煙口を開放する封止部材と、を備える燻煙剤充填容器において、
前記封止部材が、前記上蓋面上を覆うと共に、前記封止部材の一部が前記噴煙口内に入り込むことを特徴とする燻煙剤充填容器。
【請求項2】
前記封止部材が有する粘性と、前記封止部材の一部が前記噴煙口内に入り込むことにより、前記封止部材が、前記上蓋と接着していることを特徴とする請求項1に記載の燻煙剤充填容器。
【請求項3】
前記封止部材が、溶融状態の熱溶融性樹脂材料を前記噴煙口上を含む前記上蓋面上に展延して固化させた樹脂膜であることを特徴とする請求項1又は2に記載の燻煙剤充填容器。
【請求項4】
上部が開口し熱によって蒸散する燻煙剤を収容した燻煙剤収容部と、
蒸散した該燻煙剤を放出するための噴煙口を有し、該燻煙剤収容部の上部開口に嵌着される上蓋と、
該上蓋の面上に設けられ該噴煙口を塞ぎ、該燻煙剤を蒸散する際に発生する熱によって該噴煙口を開放する封止部材と、を備える燻煙剤充填容器の製造方法において、
前記上蓋を回転させながら前記噴煙口上を含む前記上蓋の面上に溶融状態の樹脂材料を噴射して、該樹脂材料を前記上蓋の面上に展延することで前記封止部材を形成することを特徴とする燻煙剤充填容器の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂材料が、軟化点が70℃〜150℃の範囲にある樹脂であることを特徴とする請求項4に記載の製造方法の燻煙充填容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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