説明

爪切り

【解決手段】相対向する刃先部5a,6aを頭端部に有する上下両刃部5,6を上下両把持部8,7により操作して上下両刃先部5a,6aを互いに接近離間させるようにし、上側刃部5と下側把持部7とからなる刀身1と下側刃部6と上側把持部8とからなる刀身2とを互いに交差させてそれらの間の交差部3で回動可能に支持し、上下両把持部8,7に対する閉動操作に伴い上下両刃部5,6が互いに閉動することにより上下両刃先部5a,6aが互いに接近するとともに、上下両把持部8,7に対する開動操作に伴い上下両刃部5,6が互いに開動することにより上下両刃先部5a,6aが互いに離間し、上下両刃部5,6の刃先部5a,6aと交差部3の回動中心線4aとを結ぶ面P5,P6よりも、交差部3の回動中心線4aと上下両把持部8,7の尻端部8a,7aとを結ぶ面Q8,Q7を、上方に配置している。
【効果】上下両把持部8,7を操作し易い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに対向する刃先部を頭端部に有する上下両刃部を上下両把持部により操作してその上下両刃先部を互いに接近離間させるようにした爪切りにおいて、上下両把持部の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1にかかる爪切りでは、上側刃部と下側把持部とからなる刀身と下側刃部と上側把持部とからなる刀身とを互いにX状に交差させてそれらの間の交差部で回動可能に支持し、この上下両把持部に対する閉動操作に伴いこの上下両刃部が互いに回動して閉動することにより上下両刃先部が互いに接近するとともに、この上下両把持部に対する開動操作に伴いこの上下両刃部が互いに回動して開動することにより上下両刃先部が互いに離間する。
【特許文献1】実公昭40−22750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1にかかる爪切りでは、床等に足を載せた状態で上下両刃部の刃先部間に足指の爪を挿入した後に上下両把持部を手指で把持して開閉操作する際、上下両把持部が床等の近くに位置すると、その手指が床等に当って上下両把持部を操作しにくい。
【0004】
この発明は、各種爪切りで上下両把持部を改良して各種使用状態で上下両把持部を操作し易くすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
後記実施形態の図面(特に図1〜4)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかる爪切りにおいては、互いに対向する刃先部5a,6aを頭端部に有する上下両刃部5,6を上下両把持部8,7により操作してその上下両刃先部5a,6aを互いに接近離間させるようにし、下側把持部7及び上側把持部8を上下両刃部5,6よりも上方に配置している。
【0006】
請求項1の発明を前提とする請求項2の発明においては、前記上下両刃部5,6の延設方向に対し前記下側把持部7の延設方向を上方へ屈曲させている。
請求項1または請求項2の発明を前提とする請求項3の発明においては、前記上側刃部5の延設方向または下側刃部6の延設方向に対する前記下側把持部7の延設方向の交差角度θ75,θ76を30度以上150度以下に設定している。
【0007】
請求項1または請求項2または請求項3の発明を前提とする請求項4の発明においては、前記上側刃部5と前記下側把持部7とからなる刀身1と前記下側刃部6と前記上側把持部8とからなる刀身2とを互いに交差させてそれらの間の交差部3で回動可能に支持し、この上下両把持部8,7に対する閉動操作に伴いこの上下両刃部5,6が互いに回動して閉動することにより上下両刃先部5a,6aが互いに接近するとともに、この上下両把持部8,7に対する開動操作に伴いこの上下両刃部5,6が互いに回動して開動することにより上下両刃先部5a,6aが互いに離間する。
【0008】
請求項5の発明にかかる爪切りにおいては、互いに対向する刃先部5a,6aを頭端部に有する上下両刃部5,6を上下両把持部8,7により操作してその上下両刃先部5a,6aを互いに接近離間させるようにし、前記上側刃部5と前記下側把持部7とからなる刀身1と前記下側刃部6と前記上側把持部8とからなる刀身2とを互いに交差させてそれらの間の交差部3で回動可能に支持し、この上下両把持部8,7に対する閉動操作に伴いこの上下両刃部5,6が互いに回動して閉動することにより上下両刃先部5a,6aが互いに接近するとともに、この上下両把持部8,7に対する開動操作に伴いこの上下両刃部5,6が互いに回動して開動することにより上下両刃先部5a,6aが互いに離間し、この上下両刃部5,6の刃先部5a,6aと前記交差部3の回動中心線4aとを結ぶ面P5,P6よりも、この交差部3の回動中心線4aと上下両把持部8,7の尻端部8a,7aとを結ぶ面Q8,Q7を、上方に配置している。
【0009】
次に、請求項以外の技術的思想について実施形態の図面の符号を援用して説明する。
請求項2の発明を前提とする第6の発明においては、前記上下両刃部5,6の延設方向に対し前記上側把持部8の延設方向を上方へ屈曲させている。
【0010】
請求項3の発明を前提とする第7の発明においては、前記下側刃部6の延設方向に対する前記上側把持部8の延設方向の交差角度θ86を35度以上160度以下に設定している。
【0011】
第6の発明及び第7の発明では、請求項1〜3の発明と同様な効果を発揮させることができる。
請求項4または請求項5の発明を前提とする第8の発明において、前記下側把持部7の延設方向はその尻端部7a側で湾曲部分7bにより下方へ湾曲している。第8の発明では、下側把持部7を把持し易い。
【0012】
第8の発明を前提とする第9の発明において、前記上側刃部5と前記下側把持部7とからなる刀身1で屈曲部10を設け、その屈曲部10の延設方向は湾曲部分10aにより上方へ湾曲している。第9の発明では、下側把持部7を上下両刃部5,6よりも上方に配置させ易い。
【0013】
第9の発明を前提とする第10の発明において、前記屈曲部10の湾曲部分10aの曲率半径は前記下側把持部7の湾曲部分7bの曲率半径よりも小さく設定されている。第10の発明では、下側把持部7を上下両刃部5,6よりも上方に配置させ易いとともに、下側把持部7を把持し易い。
【0014】
請求項4または請求項5の発明、または第8の発明、または第9の発明、または第10の発明を前提とする第11の発明において、前記上側把持部8の延設方向はその尻端部8a側で湾曲部分8bにより下方へ湾曲している。第11の発明では、上側把持部8を把持し易い。
【0015】
第11の発明を前提とする第12の発明においては、前記下側刃部6と前記上側把持部8とからなる刀身2で屈曲部20を設け、その屈曲部20の延設方向は湾曲部分20aにより上方へ湾曲している。第12の発明では、上側把持部8を上下両刃部5,6よりも上方に配置させ易い。
【0016】
第12の発明を前提とする第13の発明において、前記屈曲部20の湾曲部分20aの曲率半径は前記上側把持部8の湾曲部分8bの曲率半径よりも小さく設定されている。第13の発明では、上側把持部8を上下両刃部5,6よりも上方に配置させ易いとともに、上側把持部8を把持し易い。
【0017】
第9の発明または第10の発明または第12の発明または第13の発明を前提とする第14の発明においては、前記両刀身1,2の交差部3に前記屈曲部10,20を設けている。第14の発明では、下側把持部7の全体や上側把持部8の全体を上下両刃部5,6よりも上方に配置させ易い。
【0018】
請求項4または請求項5の発明、または、第8の発明から第14の発明のうちいずれか一つの発明を前提とする第15の発明においては、前記両刀身1,2間の交差部3で一方の刀身1に交差孔11を設け、他方の刀身2の把持部8には指当部19を設けるとともにその指当部19と刃部6との間でその指当部19よりも幅狭の挿通部21を設け、この交差孔11は他方の刀身2の指当部19及び挿通部21を挿通することができ、この交差孔11に他方の刀身2の指当部19を挿通してこの交差孔11で他方の刀身2の挿通部21を回動させることにより、他方の刀身2の挿通部21をこの交差孔11に挿通して両刀身1,2を互いに交差させている。
【0019】
第15の発明を前提とする第16の発明において、前記交差孔11には、他方の刀身2の指当部19及び挿通部21を共に回動させることができない幅狭部12を設けるとともに、他方の刀身2の指当部19を回動させることはできないが他方の刀身2の挿通部21を回動させることができる幅広部13を設け、この交差孔11に他方の刀身2の指当部19を挿通してこの交差孔11の幅広部13で他方の刀身2の挿通部21を回動させることにより、他方の刀身2の挿通部21をこの交差孔11に挿通して両刀身1,2を互いに交差させている。
【0020】
第15〜16の発明では、両刀身1,2の上下両刃部5,6や上下両刃部7,8を形成した後でも、両刀身1,2を容易に組み付けることができる。
請求項4または請求項5の発明、または、第8の発明から第16の発明のうちいずれか一つの発明を前提とする第17の発明においては、前記上下両刃部5,6の刃先部5a,6aと前記交差部3の回動中心線4aとの間の距離よりも、この交差部3の回動中心線4aと前記上下両把持部8,7の尻端部8a,7aとの間の距離を、長くしている。第17の発明では、上下両把持部8,7を小さな力で操作し易い。
【0021】
請求項4または請求項5の発明、または、第8の発明から第17の発明のうちいずれか一つの発明を前提とする第18の発明において、前記上下両把持部8,7間にはこの上下両把持部8,7の尻端部8a,7aと前記交差部3の回動中心線4aとの間でこの上下両把持部8,7を互いに開動させるように付勢する付勢手段14を設けている。第18の発明では、付勢手段14により上下両把持部8,7を操作し易い。
【発明の効果】
【0022】
請求項1〜3の発明では、上下両刃部5,6の刃先部5a,6a間に足指の爪23や手指の爪24を挿入した後に上下両把持部8,7を別の手指により把持して開閉操作すると、上下両刃先部5a,6aが開閉してそれらの爪23,24を切ることができ、その際、それらの爪23,24の伸長方向に対し上下両把持部8,7が傾斜するため、例えば上下両把持部8,7が床等の障害物22の近くに位置する場合、その上下両把持部8,7を把持した手指が床等の障害物22に当りにくくなって上下両把持部8,7を操作し易い。従って、各種爪切りにおいて、各種使用状態で上下両把持部8,7が操作し易くなる。
【0023】
請求項4の発明では、上側刃部5と下側把持部7とからなる刀身1と下側刃部6と上側把持部8とからなる刀身2とを互いに交差させて回動可能に支持した形式の爪切りにおいて、請求項1〜3の発明と同様な効果を発揮させることができる。
【0024】
請求項5の発明では、上側刃部5と下側把持部7とからなる刀身1と下側刃部6と上側把持部8とからなる刀身2とを互いに交差させて回動可能に支持した形式の爪切りにおいて、請求項1〜3の発明と同様な効果を発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態にかかる爪切りについて図1〜4を参照して説明する。
図1及び図2(a)(b)(c)に示すように、第一刀身1と第二刀身2とが互いにX状に交差してそれらの間の交差部3に挿着された支軸4により回動可能に支持され、この支軸4よりも先端側で第一刀身1に上側刃部5が設けられているとともに第二刀身2に下側刃部6が設けられ、この支軸4よりも基端側で第一刀身1に下側把持部7が設けられているとともに第二刀身2に上側把持部8が設けられている。この上側刃部5の頭端部に刃先部5aが形成されているとともにこの下側刃部6の頭端部に刃先部6aが形成され、それらの刃先部5a,6aが相対向して屈曲されている。
【0026】
前記第一刀身1においては、下側把持部7に指当部9が設けられ、上側刃部5に対しこの指当部9が交差部3で屈曲部10を介して連続し、この屈曲部10の付近に交差孔11が形成されている。この第一刀身1は、前記支軸4の回動中心線4aに沿う幅方向Yで、この上側刃部5の幅寸法W5と屈曲部10の幅寸法W10と指当部9の幅寸法W9とが略同一(約18mm)になるように、上側刃部5の刃先部5aから屈曲部10を経て下側把持部7の尻端部7aにわたり一連に、ステンレス鋼等の金属材料でプレス成形や鍛造や金属粉末射出成形(MIM)等により一体形成されている。
【0027】
この交差孔11は、第一刀身1の長手方向へ延び、一定の幅寸法W12(約7mm)で長手方向へ延びる幅狭部12と、この幅狭部12の端部に対し下側把持部7側で連続してこの幅狭部12の幅寸法W12よりも大きい幅寸法(最大直径)W13(約10mm)を有する幅広部13とからなる。この下側把持部7において上側把持部8に面する内側には交差部3の回動中心線4aと下側把持部7の尻端部7aとの間でこの上下両把持部8,7を互いに開動させるように付勢する付勢手段14が設けられている。この付勢手段14については、その内側に形成された凹部15に蓋体16が嵌着され、その蓋体16内に圧縮コイルばね17と押圧体18とが嵌め込まれてその圧縮コイルばね17により付勢された押圧体18が蓋体16外に突出している。
【0028】
前記第二刀身2においては、上側把持部8に指当部19が設けられ、下側刃部6に対しこの指当部19が交差部3で屈曲部20を介して連続し、この屈曲部20の付近に挿通部21が形成されている。この第二刀身2は、前記支軸4の回動中心線4aに沿う幅方向Yで、この下側刃部6の幅寸法W6が前記上側刃部5の幅寸法W5及びこの指当部19の幅寸法W19と略同一(約18mm)になるとともに、この指当部19の幅寸法W19が前記指当部9の幅寸法W9と略同一(約18mm)になり、この挿通部21の幅寸法W21(約7mm)が前記交差孔11の幅狭部12の幅寸法W12よりも極僅かに小さく、且つ、この下側刃部6の幅寸法W6及び指当部19の幅寸法W19よりも小さくなるように、下側刃部6の刃先部6aから屈曲部20を経て上側把持部8の尻端部8aにわたり一連に、ステンレス鋼等の金属材料でプレス成形や鍛造や金属粉末射出成形(MIM)等により一体形成されている。前記幅狭部12から幅広部13にわたる交差孔11の長手方向長さは、この指当部19の幅寸法W19よりも長くなっている。
【0029】
前記第一刀身1と第二刀身2とを互いに分離した状態から下記のようにして互いにX状に交差させて組み付けることができる。まず、図3(a)に示すように、第二刀身2の上側把持部8において、その幅方向Yを第一刀身1の屈曲部10の幅方向Yに対し略直交するように配置し、その指当部19を尻端部8a側から第一刀身1の屈曲部10の交差孔11に対しその幅狭部12から幅広部13にわたり挿入する。次に、図3(b)に示すように、図3(a)の状態のまま、上側把持部8の指当部19を交差孔11に対しさらに挿入して交差孔11から抜いた後、上側把持部8の挿通部21を交差孔11の幅狭部12から幅広部13にわたり挿入する。さらに、図3(c)に示すように、上側把持部8の挿通部21を交差孔11で幅狭部12側から幅広部13側へ移動させて幅広部13に挿入する。次に、図3(d)に示すように、図3(c)の状態のまま、上側把持部8の挿通部21を交差孔11の幅広部13で90度回動させて上側把持部8の幅方向Yを屈曲部10の幅方向Yに略沿わせるように配置する。最後に、図3(e)に示すように、上側把持部8の挿通部21を交差孔11の幅広部13側から幅狭部12側へ移動させ、上側把持部8を下側把持部7側に閉じるとともに下側刃部6を上側刃部5側に閉じ、第一刀身1の支持孔と第二刀身2の支持孔とを互いに一致させた後に、図1に示すように、それらの支持孔に支軸4を挿入し、第一刀身1と第二刀身2とを回動可能に支持して互いに組み付ける。
【0030】
図1に示す組付け状態では、前記下側把持部7にある付勢手段14の押圧体18が前記上側把持部8を押し上げ、この上下両把持部8,7が互いに開くとともに、前記上下両刃部5,6の刃先部5a,6aが互いに開く。この上下両把持部8,7の指当部19,9を把持して押圧体18の弾性力に抗して互いに閉じると、この上下両把持部8,7及び上下両刃部5,6が支軸4の回動中心線4aを中心に互いに回動して閉動し、上下両刃先部5a,6aが互いに接近して当接する。また、この上下両把持部8,7の指当部19,9に対する把持力を解除すると、押圧体18の弾性力により上下両把持部8,7及び上下両刃部5,6が支軸4の回動中心線4aを中心に互いに回動して開動し、上下両刃先部5a,6aが互いに離間する。
【0031】
図1に示すように、前記両刀身1,2は下記の形態的特徴を有している。
第一刀身1においては、上側刃部5と下側把持部7との間の屈曲部10でその長手方向両側の延設方向がいずれも湾曲部分10aにより上方へ湾曲しているため、上側刃部5の延設方向に対し下側把持部7の延設方向が上方へ屈曲し、上側刃部5の刃先部5aと交差部3の回動中心線4aとを結ぶ面P5よりも、この交差部3の回動中心線4aと下側把持部7の尻端部7aとを結ぶ面Q7が上方に配置され、その面P5に対するその面Q7がなす交差角度θ75は30度以上150度以下好ましくは40度以上90度以下に設定されている。従って、下側把持部7は、上側把持部8よりも下方に配置されるとともに、上側刃部5及び下側刃部6よりも上方に配置される。また、下側把持部7の延設方向はその尻端部7a側で指当部9の湾曲部分7bにより下方へ湾曲してその湾曲部分7bが前記面Q7よりも上方へ膨らみ、屈曲部10の湾曲部分10aの曲率半径は下側把持部7の湾曲部分7bの曲率半径よりも小さく設定されている。さらに、上側刃部5の刃先部5aと交差部3の回動中心線4aとの間の距離(約16mm)よりも、この交差部3の回動中心線4aと下側把持部7の尻端部7aとの間の距離(約80mm)の方が長くなっている。前記付勢手段14は、この屈曲部10の湾曲部分10aとこの湾曲部分7bとの間で、且つ、前記交差孔11よりも尻端部7a側で、下側把持部7に設けられている。
【0032】
第二刀身2においては、下側刃部6と上側把持部8との間の屈曲部20でその長手方向両側の延設方向がいずれも湾曲部分20aにより上方へ湾曲しているため、下側刃部6の延設方向に対し上側把持部8の延設方向が上方へ屈曲し、下側刃部6の刃先部6aと交差部3の回動中心線4aとを結ぶ面P6よりも、この交差部3の回動中心線4aと上側把持部8の尻端部8aとを結ぶ面Q8が上方に配置され、その面P6に対するその面Q8がなす交差角度θ86(>θ75)は35度以上160度以下好ましくは45度以上100度以下に設定されている。その面P6に対する前記面Q7がなす交差角度θ76(<θ75)は30度以上150度以下好ましくは35度以上80度以下に設定されている。従って、上側把持部8は、下側把持部7よりも上方に配置されるとともに、下側刃部6及び上側刃部5よりも上方に配置される。また、上側把持部8の延設方向は、下側把持部7の延設方向と同様に、その尻端部8a側で指当部19の湾曲部分8bにより下方へ湾曲してその湾曲部分8bが前記面Q8よりも上方へ膨らみ、屈曲部20の湾曲部分20aの曲率半径は上側把持部8の湾曲部分8bの曲率半径よりも小さく設定されている。さらに、下側刃部6の刃先部6aと交差部3の回動中心線4aとの間の距離(約16mm)よりも、この交差部3の回動中心線4aと上側把持部8の尻端部8aとの間の距離(約80mm)の方が長くなっている。
【0033】
本実施形態は下記の効果を有する。
* 図4(a)に示す使用状態では、床等の障害物22に載せた足の指の爪23を、床等の障害物22に近付けた上下両刃部5,6の刃先部5a,6a間に挿入した後に、上下両把持部8,7を手指により把持して開閉操作すると、上下両刃先部5a,6aが開閉して爪23を切ることができる。その際、爪23の伸長方向に対し上下両把持部8,7は上方に配置されて床等の障害物22との間で大きな隙間Sを生じるため、その上下両把持部8,7を把持した手指が床等の障害物22に当りにくくなって上下両把持部8,7を操作し易い。また、上下両把持部8,7が床等の障害物22から上方に配置されて使用者に近付くため、使用者は手を必要以上に伸ばさなくても上下両把持部8,7を把持することができ、特に使用者が妊婦やお腹の出た人の場合、上下両把持部8,7を操作し易い。
【0034】
* 図4(b)に示す使用状態では、下側刃部6を上方に配置するとともに上側刃部5を下方に配置した状態で、手の指の爪24を上下両刃部5,6の刃先部5a,6a間に挿入した後に、上下両把持部8,7を手指により把持して開閉操作すると、上下両刃先部5a,6aが開閉して爪24を切ることができる。その際、手の指の爪24の伸長方向に対し上下両把持部8,7は下方に配置されて傾斜するため、使用者は必要以上に手を上げたり肘を曲げたりしなくても上下両把持部8,7を把持することができ、上下両把持部8,7を操作し易い。
【0035】
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
・ 図5(a)及び図5(b)に示す爪切りにおいては、いずれも、上下両刃部5,6に刃先部5a,6aの付近で支軸25が挿着され、上側刃部5上でその支軸25に押圧操作てことしての上側把持部8がピン25aにより支持されてそのピン25aから上方へ配置されている。図5(a)に示す爪切りにおいては、この上下両刃部5,6の尻端部5b,6bから延設さて互いに重合された下側把持部7が屈曲部10で上方へ屈曲されて上下両刃部5,6の上方へ配置されている。この上側把持部8及び下側把持部7には指当部26が設けられている。図5(b)に示す爪切りにおいては、この上下両刃部5,6で互いに重合された尻端部5b,6b側上に環状の下側把持部7が取着されている。この上側把持部8に指当部26が設けられているとともに、この下側把持部7の内側に指掛環27が設けられている。
【0036】
・ 前記交差孔11については、例えば、幅広部13を幅狭部12の端部に対し上側刃部5側で連続させたり、幅広部13を幅狭部12の長手方向中央部に設けたりして、幅狭部12と幅広部13との位置関係を変更してもよい。また、例えば、幅狭部12を省略して幅広部13のみにより交差孔11を形成して、交差孔11の形状を変更してもよい。
【0037】
・ 前記付勢手段14における圧縮コイルばね17に代えて、他のばねを利用してもよい。
・ 前記両刀身1,2において、それらを一体成形せずに、刃部5,6を金属で形成するとともに把持部7,8を樹脂で形成して、その刃部5,6と把持部7,8とを互いに組み付けてもよい。
【0038】
・ 前記両刀身1,2において、指の当る面を粗面仕上げとして滑止め手段を施し、そのほかの部分を鏡面仕上げとしてもよい。
・ 前記両刀身1,2の上下両刃部5,6間における幅方向Yの両側を爪飛散防止カバーにより塞いでもよい。
【0039】
・ 前記上下両刃先部5a,6aの当接時において両刀身1,2の長手方向へのそれらの間のずれ量(かぶり量)については、前記実施形態のようにゼロにしたり、または、その長手方向の両側向きで0.2mm程度設定してもよい。
【0040】
・ 前記上下両刃先部5a,6aには、強化のためにダイヤモンドやチタン合金等の被覆処理(被膜処理)を施したり、窒化や炭化等による表面硬化処理を施してもよい。また、ふっ素樹脂等のコーティングを上下両刃先部5a,6aに施して爪や爪かす等による汚れを防止するようにしてもよい。
【0041】
・ 前記交差部3の付近に刃部5,6や把持部7,8の開きを規制する開き規制手段を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態にかかる爪切りにおいて上下両刃先の開状態を示す側面図である。
【図2】(a)は本実施形態にかかる爪切りにおいて上下両刃先の閉状態を示す側面図であり、(b)は(a)の平面図であり、(c)は(a)の底面図である。
【図3】(a)(b)(c)(d)(e)はそれぞれ本実施形態にかかる爪切りにおいて両刀身を分解状態から組み付ける手順を示す斜視図である。
【図4】(a)(b)はそれぞれ使用状態を示す側面図である。
【図5】(a)(b)はそれぞれ他の実施形態にかかる爪切りにおいて上下両刃先の開状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0043】
1…第一刀身、2…第二刀身、3…交差部、4a…回動中心線、5…上側刃部、5a…刃先部、6…下側刃部、6a…刃先部、7…下側把持部、7a…尻端部、8…上側把持部、8a…尻端部、P5,P6…面、Q7,Q8…面、θ75,θ76,θ86…交差角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する刃先部を頭端部に有する上下両刃部を上下両把持部により操作してその上下両刃先部を互いに接近離間させるようにした爪切りにおいて、下側の把持部及び上側の把持部を上下両刃部よりも上方に配置したことを特徴とする爪切り。
【請求項2】
前記上下両刃部の延設方向に対し前記下側の把持部の延設方向を上方へ屈曲させたことを特徴とする請求項1に記載の爪切り。
【請求項3】
前記上側の刃部の延設方向または下側の刃部の延設方向に対する前記下側の把持部の延設方向の交差角度を30度以上150度以下に設定したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の爪切り。
【請求項4】
前記上側の刃部と前記下側の把持部とからなる刀身と前記下側の刃部と前記上側の把持部とからなる刀身とを互いに交差させてそれらの間の交差部で回動可能に支持し、この上下両把持部に対する閉動操作に伴いこの上下両刃部が互いに回動して閉動することにより上下両刃先部が互いに接近するとともに、この上下両把持部に対する開動操作に伴いこの上下両刃部が互いに回動して開動することにより上下両刃先部が互いに離間することを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3に記載の爪切り。
【請求項5】
互いに対向する刃先部を頭端部に有する上下両刃部を上下両把持部により操作してその上下両刃先部を互いに接近離間させるようにした爪切りにおいて、
前記上側の刃部と前記下側の把持部とからなる刀身と前記下側の刃部と前記上側の把持部とからなる刀身とを互いに交差させてそれらの間の交差部で回動可能に支持し、この上下両把持部に対する閉動操作に伴いこの上下両刃部が互いに回動して閉動することにより上下両刃先部が互いに接近するとともに、この上下両把持部に対する開動操作に伴いこの上下両刃部が互いに回動して開動することにより上下両刃先部が互いに離間し、
この上下両刃部の刃先部と前記交差部の回動中心線とを結ぶ面よりも、この交差部の回動中心線と上下両把持部の尻端部とを結ぶ面を、上方に配置した
ことを特徴とする爪切り。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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