説明

爪用貼付剤

【課題】副作用が低減された爪用貼付剤の提供。
【解決手段】支持体と、該支持体の少なくとも片面上に配置された粘着剤層とからなり、該粘着剤層が粘着基剤、テルビナフィン及び/又はその薬理学的に許容できる塩、並びに溶解剤としての酢酸ナトリウム及び/又はソルビタンモノラウレートを含有する、爪用貼付剤。上記爪用貼付剤は、爪白癬に対して効果が期待されるテルビナフィンについて、爪の内部への透過性を十分に向上させると共に、皮膚への透過性を極めて少ないレベルまで低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、爪用貼付剤に関し、特に抗真菌剤としてのテルビナフィンを含有する爪用貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
テルビナフィンは、効果的な抗真菌剤として知られており、特に爪白癬の治療に用いられている。爪白癬は、白癬菌の爪内への侵入に起因し、爪表面の白濁や肥厚、変形などの症状を特徴とする難治性の疾患である。現在、爪白癬の治療はテルビナフィンやイトラコナゾールなどの抗真菌剤を長期的に経口投与するのが主流であるが、抗真菌剤の長期間服用による肝障害などの重篤な副作用や他剤との相互作用といった問題点がある。
【0003】
これに対して、血中への薬物透過の少ない爪用外用剤は、抗真菌剤の経口投与による副作用を軽減できると考えられる。これまで、いくつかの抗真菌剤配合の爪用外用剤が提案されているが、高いバリア能を有する爪への十分な薬物透過量を得られないため、必ずしも高い治療効果を有していないのが現状である。
【0004】
このような爪用外用剤としては、例えば抗真菌剤配合液剤がある(特許文献1)。しかし、液剤の場合、患部への投与量を調整することが難しく、持続的な投与も困難であることから、爪への薬物の十分な透過が得られないことが考えられる。また、抗真菌剤配合のネイルラッカー剤も提案されており(特許文献2)、この製剤は持続的な投与を可能としているものの、投与方法が煩雑であり、薬物透過性が必ずしも高くはなく、さらに爪への着色・変色などが生じるおそれがある。
【0005】
さらに、投与が便利である点から抗真菌剤を含有する貼付剤も提案されている(特許文献3〜6)。これらの爪用貼付剤の場合、液剤などの貼付剤でない外用剤に比べて使用感が改善され、また爪に直接貼付することで薬物を持続的に作用させることを可能としているため、爪への薬物透過性が改善されているものの、未だに爪白癬治療に十分な薬物透過量を達成するには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−68975号公報
【特許文献2】特開平5−85929号公報
【特許文献3】特開平10−330247号公報
【特許文献4】特表2003−525641号公報
【特許文献5】特表平9−504536号公報
【特許文献6】特表2005−501885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
爪は指趾先端の背面にある表皮の角質が硬化して出来た皮膚の付属器官であり、皮膚での角質層に相当する。皮膚の角質層が軟ケラチンと呼ばれる硫黄含量の低いタンパク質を主成分としているのに対し、爪は硫黄を多く含む硬ケラチンを主成分としており、物理化学的に安定で難水溶性のタンパク質としての性質を有している。また、爪中の脂質量は皮膚角質層に比べて著しく少ないため、通常の皮膚への薬物吸収とは全く異なる挙動を示す。
【0008】
これまでの爪用貼付剤は、爪への薬物透過性を改善させるため、皮膚への透過性も高くなることから、抗真菌薬が血中へと移行してしまい、結果的に経口投与時に認められるような肝障害などの副作用の問題が生じる懸念がある。
【0009】
本発明は、爪と皮膚との薬物吸収挙動の相違に着目し、上述した従来の爪用貼付剤の問題点に鑑みてなされたものである。即ち、本発明は、爪白癬に対して効果が期待されるテルビナフィンについて、爪の内部への透過性を十分に向上させると共に、皮膚への透過性を極めて少ないレベルまで低減させた爪用貼付剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者らは、溶解剤としての酢酸ナトリウム及び/又はソルビタンモノラウレートを含有する爪用貼付剤によれば、テルビナフィン及び/又はその薬理学的に許容できる塩の爪への透過性が十分に認められる一方で、皮膚への透過性が極めて少ないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、支持体と、該支持体の少なくとも片面上に配置された粘着剤層とからなり、該粘着剤層が粘着基剤、テルビナフィン及び/又はその薬理学的に許容できる塩、並びに溶解剤としての酢酸ナトリウム及び/又はソルビタンモノラウレートを含有する爪用貼付剤を提供する。このような爪用貼付剤によれば、十分な爪への透過性が得られる一方で、皮膚への透過性を極めて少ないレベルまで低減させることが可能となる。また、溶解剤が含有されるため、テルビナフィン及び/又はその薬理学的に許容できる塩を高含有量で含有することができ、薬物を爪へ継続的に高用量で送達することが可能となる。
【0012】
粘着基剤はアクリル系粘着剤からなるものであることが好ましい。また、上記アクリル系粘着剤は水酸基又はカルボン酸基を有するアクリル系共重合体であることが好ましい。このような爪用貼付剤によれば、爪への透過性をより高めることができ、皮膚への透過性をより効果的に低減できる。
【0013】
粘着剤層は、該層の全質量基準でテルビナフィン及び/又はその薬理学的に許容できる塩を0.5〜50質量%含有することが好ましい。0.5〜50質量%との含有濃度は、通常の貼付剤と比較すると高い含有濃度となっており、このような高濃度では通常、薬物の結晶化に伴う粘着力の低下などの好ましくない現象が生じるのが一般的であるが、本発明の貼付剤の場合、テルビナフィンを高濃度に溶解させることができるため、そのような現象が生じず、薬物を爪へ継続的に高用量で送達することが可能となる。
【0014】
テルビナフィンの薬理学的に許容できる塩は塩酸テルビナフィンであることが好ましい。塩酸テルビナフィンは本発明の爪用貼付剤において爪への透過性に特に優れ、抗真菌剤として有効である。
【0015】
粘着剤層はさらに可塑剤を含有することが好ましい。可塑剤の含有により、貼付剤の柔軟性をより容易に調節でき、貼付性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の爪用貼付剤によれば、爪白癬に対して効果が期待されるテルビナフィンについて、爪の内部への透過性を十分に向上させることができ、皮膚への透過性を極めて少ないレベルまで低減させることができる。本発明の爪用貼付剤を爪白癬などの爪疾患に適用することよって、爪白癬などの爪疾患の治療効果を従来に比べて向上させることができ、テルビナフィンによる肝障害などの副作用を最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の爪用貼付剤は、少なくとも、支持体と、該支持体の少なくとも片面上に配置された粘着剤層とからなる。また、使用時に剥離される剥離シートが粘着剤層上にさらに積層されてもよい。
【0018】
支持体は、特に限定されないが、粘着剤層中に比較的高含有量で含有させるテルビナフィンの放出に影響しないものが望ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ナイロン(登録商標)、ポリウレタン等のフィルム又はシート、或いはこれらの積層体、複合素材等を用いることができる。中でも、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステルが爪への貼付時の密着感及び薬物の放出性への影響の点から好ましく用いられる。支持体は、伸縮性又は非伸縮性のもののいずれも使用できるが、付着性の点から伸縮性のものが好ましい。
【0019】
粘着剤層中には、少なくとも、粘着基剤、薬物としてテルビナフィン又はその薬理学的に許容できる塩、溶解剤としての酢酸ナトリウム及び/又はソルビタンモノラウレート等が含有される。なお、粘着剤層には、爪への着色・変色を引き起こさない点から、揮発性溶媒を使用しないことが好ましい。
【0020】
薬物としては、少なくともテルビナフィン及び/又はその薬理学的に許容できる塩が粘着剤層中に含有される。含有濃度としては、粘着剤層全質量に対して、0.5〜50質量%が好ましく、2.5〜50質量%がより好ましい。この含有濃度は、通常の貼付剤と比較すると高いものとなっており、このような高濃度では通常、薬物の結晶化に伴う粘着力が低下するなどの好ましくない現象が生じる。しかしながら、本発明の貼付剤の場合、テルビナフィンを高濃度に溶解させることができるため、そのような現象が生じず、薬物を爪へ継続的に高用量で送達することが可能となる。含有濃度としては、50質量%を超えると製剤の物性に悪影響を及ぼす傾向があり、0.5質量%未満であると治療効果を発揮するに十分な薬物を送達できなくなる傾向がある。
【0021】
テルビナフィンの薬理学的に許容できる塩としては、テルビナフィンの塩酸塩、硫酸塩、メシル酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩など本発明の効果を得られる限りにおいて特に限定されないが、塩酸塩である塩酸テルビナフィンが特に好ましく用いられる。
【0022】
また、任意成分である薬物成分としては、例えばビホナゾール、クロトリマゾール、チオコナゾール、ミコナゾール、エコナゾール、イソコナゾール、スルコナゾール、オキシコナゾール、クロコナゾール、ケトコナゾール、ネチコナゾール、ラノコナゾール、オモコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール等のアゾール系抗真菌薬、例えばナフチフィン等のアリルアミン系抗真菌薬、例えばブテナフィン等のベンジルアミン系抗真菌薬、例えばアモロルフィン等のモルホリン系抗真菌薬、例えばリラナフタート、ナフチオメートN、トルナフタート(ナフチオメートT)、トルシクラート等のチオカルバミン系抗真菌薬、例えばウンデシレン酸、ウンデシレン酸亜鉛、フェニル−11−ヨード−10−ウンデシノエート等の脂肪酸系抗真菌薬、サリチル酸等のサリチル酸系抗真菌薬、例えばシッカニン、トリコマイシン、ピロールニトリン、ナイスタチン、ピマリシン、グリセオフルビン、バリオチン等の抗真菌抗生物質類抗真菌薬、例えばアンフォテリシンB等のポリエン系抗真菌薬、例えばエキサラミド等のベンズアミド系抗真菌薬、例えばシクロピロクスオラミン等のピリミジン系抗真菌薬、例えばハロプロジン等のヨードプロパルギル系抗真菌薬、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、チアントール、フルシトシン、2,4,6−トリブロムフェニルカプロン酸エステル、トリメチルセチルアンモニウムペンタクロロフェネート、イオウ及び木槿皮或いはこれらの塩等をさらに含有させることも可能である。
【0023】
粘着基剤中の粘着剤成分としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、及びシリコーン系粘着剤等が挙げられるが、その中でもアクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0024】
アクリル系粘着剤としては、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、2−エチルヘキシルメタアクリレート等に代表される(メタ)アクリル酸誘導体を少なくとも一種含有させて重合又は共重合したものであれば特にその限定はないが、例えば、医薬品添加物事典2005(日本医薬品添加剤協会編集)に粘着剤として収載されているアクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体溶液、アクリル酸エステル・酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体、アクリル酸メチル・アクリル酸2−エチルヘキシル共重合樹脂エマルジョン、アクリル樹脂アルカノールアミン液に含有するアクリル系高分子等の粘着剤、オイドラギットシリーズ(樋口商会)、DURO−TAKアクリル粘着剤シリーズ(ナショナルスターチアンドケミカル社製)を用いることが可能である。また、その中でも水酸基又はカルボン酸基を有するアクリル系共重合体である粘着剤が、爪への粘着性、薬物放出性の面から好ましく使用することができる。ここで、水酸基又はカルボン酸基を有するアクリル粘着剤とは、(メタ)アクリロイルモノマー((メタ)アクリロイル基を含むモノマーをいう)の2種以上の共重合体で水酸基若しくはカルボキシル基を有するもの、又は、(メタ)アクリロイルモノマーとエチレン性不飽和基を有するモノマー((メタ)アクリロイルモノマーを除く)の共重合体で水酸基若しくはカルボキシル基を有するもの、であって粘着性を示す化合物をいう。その中でも、DURO−TAKアクリル粘着剤シリーズが好ましく用いられる。
【0025】
上記アクリル系粘着剤に対しては、ゴム系粘着剤のゴム成分を含有させることも可能であり、このようなゴム成分としては、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、ポリイソブチレン(PIB)、ポリイソプレン及びブチルゴム等を例示することができる。このうち品質設計の容易さやコストの点から、天然ゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリイソブチレン及びポリイソプレンから選ばれた少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0026】
粘着基材の質量は、粘着剤層全質量に対して5〜85質量%とすることが好ましく、10〜80質量%がより好ましい。
【0027】
粘着剤層は可塑剤を含有してもよい。使用され得る可塑剤としては、例えばパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等の石油系オイル、スクワラン、スクワレン、例えばオリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油、ラッカセイ油等の植物系オイル、シリコンオイル、例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の二塩基酸エステル、例えばポリブテン、液状イソプレンゴム等の液状ゴム、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピルなどの液状脂肪酸エステル類、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、サリチル酸グリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、クロタミトン等が挙げられる。特に流動パラフィン、液状ポリブテン、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、ラウリン酸ヘキシルが好ましい。
【0028】
粘着剤層は、溶解剤としての酢酸ナトリウム及び/又はソルビタンモノラウレートを含有する。これらの溶解剤を含有することにより、薬物(特に、テルビナフィン及び/又はその薬理学的に許容できる塩)の爪への透過性が高まり、一方で皮膚への透過性は極めて低く抑えられる。また、この効果は、酢酸ナトリウムを粘着剤層全質量に対して0.5〜30質量%、好ましくは1〜20質量%含有させることでより効果的になる。ソルビタンモノラウレートについては、粘着剤層全質量に対して、0.5〜20質量%、好ましくは1〜10質量%含有させることが好ましい。
【0029】
また、酢酸ナトリウムとソルビタンモノラウレートとの配合比は、1:40〜60:1が好ましい。さらに好ましくは、爪への吸収性を高めるために“テルビナフィン及び/又はその薬理学的に許容できる塩(塩酸テルビナフィン等)”、“酢酸ナトリウム”、“ソルビタンモノラウレート”の三者の配合比を100:100:100〜100:60:40で配合することが好ましい。上記の配合比にすることにより、粘着剤層中に“テルビナフィン及び/又はその薬理学的に許容できる塩”を0.5質量%以上含有させても、十分に溶解させることが可能となり、さらには、爪への透過性が向上する。一方、このような配合にすることにより、薬物の皮膚透過性を極めて低いレベルまで低減させることが可能となり、結果的に薬物の全身循環系への移行を防ぎ、より副作用を低減することが可能となる。さらに、爪への透過性のみを向上させることが可能となり、感染部位への十分な薬物の送達が可能になり、効率的に治療効果を発揮させることができる。
【0030】
爪用貼付剤の粘着剤層中には、上記の他、粘着付与剤、任意成分である吸収促進剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、色素、架橋剤、充填剤、防腐剤が任意成分として含有される。
【0031】
粘着付与剤としては、例えばロジン、ロジンのグリセリンエステル、水添ロジン、水添ロジンのグリセリンエステル、ロジンのペンタエリストールエステル等のロジン誘導体、例えばアルコンP100(荒川化学工業)等の脂環族飽和炭化水素樹脂、例えばクイントンB170(日本ゼオン)等の脂肪族系炭化水素樹脂、例えばクリアロンP−125(ヤスハラケミカル)等のテルペン樹脂、マレイン酸レジン等が挙げられる。
【0032】
任意成分である吸収促進剤としては、例えば炭素数6〜20の脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、アミド、又はエーテル類、芳香族系有機酸、芳香族系アルコール、芳香族系有機酸エステル又はエーテル(以上は飽和、不飽和のいずれでもよく、また、環状、直鎖状分枝状のいずれでもよい)、さらに、乳酸エステル類、酢酸エステル類、モノテルペン系化合物、セスキテルペン系化合物、エイゾン(Azone)、エイゾン(Azone)誘導体、ピロチオデカン、グリセリン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類(Span系)、ポリソルベート系(Tween系)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系(HCO系)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ショ糖脂肪酸エステル類、植物油等が挙げられる。
【0033】
吸収促進剤は、具体的にはカプリル酸、カプリン酸、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリン酸メチル、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸セチル、サリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸エチレングリコール、ケイ皮酸、ケイ皮酸メチル、クレゾール、乳酸セチル、乳酸ラウリル、酢酸エチル、酢酸プロピル、ゲラニオール、チモール、オイゲノール、テルピネオール、l−メントール、ボルネオロール、d−リモネン、イソオイゲノール、イソボルネオール、ネロール、dl−カンフル、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ショ糖モノラウレート、ポリソルベート20、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HCO−60、ピロチオデカン、オリーブ油が好ましく、特に、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリン酸ジエタノールアミド、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、プロピレングリコールモノラウレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ピロチオデカンがより好ましい。
【0034】
抗酸化剤としては、トコフェロール及びこれらのエステル誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、ノルジヒドログアヤレチン酸、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。
【0035】
充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、例えばケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩、ケイ酸、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜鉛酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等が望ましい。
【0036】
架橋剤としては、アミノ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、有機系架橋剤、金属又は金属化合物等の無機系架橋剤が望ましい。
【0037】
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等が望ましい。
【0038】
紫外線吸収剤としては、p−アミノ安息香酸誘導体、アントラニル酸誘導体、サリチル酸誘導体、クマリン誘導体、アミノ酸系化合物、イミダゾリン誘導体、ピリミジン誘導体、ジオキサン誘導体等が望ましい。
【0039】
爪用貼付剤は、好ましくは使用前、すなわち保管時等に粘着剤層が剥離シートで保護され、使用前に剥離される。
【0040】
剥離シートとしては、特に限定はされないが、剥離処理を施したポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルが好ましく用いられる。
【0041】
爪用貼付剤の製造方法としては、通常用いられる方法であれば特に限定はされず、一例として薬物を含む基剤組成を熱融解させ、離型紙又は支持体に塗工後、支持体又は離型紙と張り合わせる方法が挙げられる。また、薬物を含む基剤成分をトルエン、ヘキサン、酢酸エチル等の溶媒に溶解させ、離型紙又は支持体上に伸展して溶剤を乾燥除去後、支持体あるいは離型紙と張り合わせ本剤を得ることも可能である。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。尚、実施例において、「%」は全て「質量%」を意味するものとする。
【0043】
(実施例1)
下記の表1に示す組成を含有する爪用貼付剤を製造した。具体的には、予め、塩酸テルビナフィン、酢酸ナトリウム及びミリスチン酸イソプロピルを乳鉢に取りよく混合した後、酢酸エチルに溶解したアクリル系粘着剤と混合した。離型紙上に塗工後溶剤の酢酸エチルを乾燥除去し、PETフィルム支持体と張り合わせて実施例1の爪用貼付剤を得た。
【0044】
【表1】

【0045】
(実施例2)
アクリル系粘着剤(DURO−TAK87−2194、ナショナルスターチ&ケミカル社)の代わりに、アクリル系粘着剤(DURO−TAK87−2516、ナショナルスターチ&ケミカル社)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の爪用貼付剤を得た。
【0046】
(実施例3)
下記の表2に示す組成を含有する爪用貼付剤を製造した。具体的には、予め、塩酸テルビナフィン、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート及びミリスチン酸イソプロピルを乳鉢に取りよく混合した後、酢酸エチルに溶解したアクリル系粘着剤と混合した。離型紙上に塗工後溶剤の酢酸エチルを乾燥除去し、PETフィルム支持体と張り合わせて実施例3の爪用貼付剤を得た。
【0047】
【表2】

【0048】
(実施例4)
ソルビタンモノラウレートの代わりにTween80を使用したこと以外は、実施例3と同様にして、実施例4の爪用貼付剤を得た。
【0049】
(比較例1)
下記の表3に示す組成を含有する爪用貼付剤を製造した。具体的には、予め、塩酸テルビナフィン及びミリスチン酸イソプロピルを乳鉢に取りよく混合した後、酢酸エチルに溶解したアクリル系粘着剤と混合した。離型紙上に塗工後溶剤の酢酸エチルを乾燥除去し、PETフィルム支持体と張り合わせて比較例1の爪用貼付剤を得た。
【0050】
【表3】

【0051】
(実施例5)
下記の表4に示す組成を含有する爪用貼付剤を製造した。具体的には、予め、塩酸テルビナフィン、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート及びミリスチン酸イソプロピルを乳鉢に取りよく混合した後、酢酸エチルに溶解したアクリル系粘着剤と混合した。離型紙上に塗工後溶剤の酢酸エチルを乾燥除去し、PETフィルム支持体と張り合わせて実施例5の爪用貼付剤を得た。
【0052】
【表4】

【0053】
(実施例6)
塩酸テルビナフィンを5.0%とし、アクリル系粘着剤を82.5%とし、ミリスチン酸イソプロピルを8.2%とし、酢酸ナトリウムを1.3%としたこと以外は、実施例5と同様にして、実施例6の爪用貼付剤を得た。
【0054】
(実施例7)
塩酸テルビナフィンを7.5%とし、アクリル系粘着剤を79.6%とし、ミリスチン酸イソプロピルを8.0%とし、酢酸ナトリウムを1.9%としたこと以外は、実施例5と同様にして、実施例7の爪用貼付剤を得た。
【0055】
(実施例8)
塩酸テルビナフィンを10.0%とし、アクリル系粘着剤を76.8%とし、ミリスチン酸イソプロピルを7.7%とし、酢酸ナトリウムを2.5%としたこと以外は、実施例5と同様にして、実施例8の爪用貼付剤を得た。
【0056】
(実施例9)
下記の表5に示す組成を含有する爪用貼付剤を製造した。具体的には、予め、塩酸テルビナフィン、酢酸ナトリウム及びソルビタンモノラウレートを乳鉢に取りよく混合した後、酢酸エチルに溶解したアクリル系粘着剤と混合した。離型紙上に塗工後溶剤の酢酸エチルを乾燥除去し、PETフィルム支持体と張り合わせて実施例9の爪用貼付剤を得た。
【0057】
【表5】

【0058】
(実施例10)
下記の表6に示す組成を含有する爪用貼付剤を製造した。具体的には、予め、塩酸テルビナフィン、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート及びミリスチン酸イソプロピルを乳鉢に取りよく混合した後、酢酸エチルに溶解したアクリル系粘着剤と混合した。離型紙上に塗工後溶剤の酢酸エチルを乾燥除去し、PETフィルム支持体と張り合わせて実施例10の爪用貼付剤を得た。
【0059】
【表6】

【0060】
(実施例11)
アクリル系粘着剤を86.4%とし、ミリスチン酸イソプロピルを4.3%としたこと以外は、実施例10と同様にして、実施例11の爪用貼付剤を得た。
【0061】
(実施例12)
アクリル系粘着剤を84.4%とし、ミリスチン酸イソプロピルを6.3%としたこと以外は、実施例10と同様にして、実施例12の爪用貼付剤を得た。
【0062】
(実施例13)
下記の表7に示す組成を含有する爪用貼付剤を製造した。具体的には、予め、塩酸テルビナフィン、酢酸ナトリウム及びソルビタンモノラウレートを乳鉢に取りよく混合した後、酢酸エチルに溶解したアクリル系粘着剤と混合した。離型紙上に塗工後溶剤の酢酸エチルを乾燥除去し、PETフィルム支持体と張り合わせて実施例13の爪用貼付剤を得た。
【0063】
【表7】

【0064】
(実施例14)
塩酸テルビナフィンを15.0%とし、アクリル系粘着剤を74.5%とし、酢酸ナトリウムを7.5%としたこと以外は、実施例13と同様にして、実施例14の爪用貼付剤を得た。
【0065】
(実施例15)
塩酸テルビナフィンを20.0%とし、アクリル系粘着剤を67.0%とし、酢酸ナトリウムを10.0%としたこと以外は、実施例13と同様にして、実施例15の爪用貼付剤を得た。
【0066】
(実施例16)
塩酸テルビナフィンを25.0%とし、アクリル系粘着剤を59.5%とし、酢酸ナトリウムを12.5%としたこと以外は、実施例13と同様にして、実施例16の爪用貼付剤を得た。
【0067】
(実施例17)
塩酸テルビナフィンを30.0%とし、アクリル系粘着剤を52.0%とし、酢酸ナトリウムを15.0%としたこと以外は、実施例13と同様にして、実施例17の爪用貼付剤を得た。
【0068】
(実施例18 爪貼付剤の性能評価)
<放出試験>
実施例1〜17及び比較例1において得られた爪用貼付剤を、富山産業株式会社製、溶出試験器NTR−6100を用いて放出試験を行った。まず、爪用貼付剤を所定の面積に裁断し、剥離シートを剥がして回転シリンダーに装着した。次に、外周部に37℃の温水を循環させ、レセプター層にポリエチレングリコール含有リン酸緩衝生理食塩水を用い、2時間毎に8時間までサンプリングを行った。得られたレセプター溶液中の薬物濃度を高速液体クロマトグラフ法により測定し、放出量を算出した。
【0069】
<爪デバイス試験>
実施例1〜17及び比較例1において得られた爪用貼付剤について爪デバイス試験を行った。まず、健常ヒト爪を数mm角の正方形に小片化し、周囲をシリコンシート及びシリコンボンドにてコーキングした。コーキングされた爪の上下をシリコン製O−リングではさみ、クライオチューブを加工したデバイス本体に組み込んだ後、チューブ内を牛血清アルブミン含有リン酸緩衝生理食塩水(レシーバー液)で満たした。次に、爪上面に実施例1〜17及び比較例1において得られた爪用貼付剤を貼付し、32℃で3.5日間×2枚、又は5日間×1枚放置した。爪小片を取り出し乾燥後、グラインダーにて爪の上・中層を研磨して除去し下層のみとし、爪小片の下面に毛瘡白癬菌(Trichophyton mentagrophytes)の小分生子を接種して、35℃で7日間培養した。菌の生育を視覚的に観察して生育度を0から4の5段階(数字が大きいほど生育度が高い)にスコア化(薬効スコア)して判定を行った。その後、爪小片に5NのNaOH水溶液を加えて爪を溶解し、抽出した薬物量をLC/MS/MSにて測定し、爪中量を算出した。また、レシーバー液中の薬物量をLC/MS/MSにて測定し、爪透過量を算出した。
【0070】
<ヘアレスマウス皮膚透過試験>
ヘアレスマウス背部皮膚を剥離し、真皮側をレセプター層側にし、37℃の温水を外周部に循環させたフロースルーセル(5cm)に装着した。角質層側に実施例1〜4及び比較例1において得られた爪用貼付剤を貼付し、レセプター層に生理食塩水を用い、5mL/時間の速さで2時間毎に24時間までサンプリングを行った。各時間に得られたレセプター溶液は、流量を正確に測り、高速液体クロマトグラフ法により薬物濃度を測定した。流量及び薬物濃度の測定値より1時間当たりの透過速度を算出し、皮膚透過量を求めた。
【0071】
<実施例1及び2の爪用貼付剤の性能評価>
異なるアクリル系粘着剤からなる粘着基剤を含有する貼付剤(実施例1及び2)において、性能の相違を評価した。評価の結果は表8に示した。表8から、アクリル系粘着剤の場合には、塩酸テルビナフィンの放出量が多くて、爪透過性及び抗真菌効果が高いにもかかわらず、皮膚透過性が殆どなかったことが確認された。また、DURO−TAK87−2194よりはDURO−TAK87−2516のほうがより高い爪透過性を示したことも確認された。
【0072】
【表8】

【0073】
<実施例3、4及び比較例1の爪用貼付剤の性能評価>
溶解剤が添加され、又は添加せず、或いは添加された溶解剤の種類が異なる爪用貼付剤(実施例3、4及び比較例1)において、性能の相違を評価した。具体的には、実施例3の貼付剤は溶解剤としての酢酸ナトリウム及びソルビタンモノラウレートを含有し、実施例4の貼付剤は溶解剤としての酢酸ナトリウム、またソルビタンモノラウレートの代わりにTween80を含有するが、比較例の貼付剤は溶解剤を含有していない。評価の結果は表9に示した。表9から、酢酸ナトリウムは爪透過性に大きく寄与しており、またソルビタンモノラウレートも爪透過性を上昇させていることが確認された。
【0074】
【表9】

【0075】
<実施例5〜8の爪用貼付剤の性能評価>
塩酸テルビナフィンの含有量が異なる爪用貼付剤(実施例5〜8)において、性能の相違を評価した。評価の結果は、表10に示した。表10から、塩酸テルビナフィン濃度の上昇に伴って、放出量や爪透過性が上昇し、抗真菌効果も高くなることが確認された。
【0076】
【表10】

【0077】
<実施例9〜12の爪用貼付剤の性能評価>
可塑剤であるミリスチン酸イソプロピルが添加され、又は添加せず、或いは添加される量が異なる爪用貼付剤(実施例9〜12)において、性能の相違を評価した。評価の結果は、表11に示した。表11から、ミリスチン酸イソプロピルが添加されていなくても、また添加されて濃度が異なっても爪透過性に殆ど影響を与えなかったことが確認された。
【0078】
【表11】

【0079】
<実施例13〜17の爪用貼付剤の性能評価>
塩酸テルビナフィンの含有量が異なる爪用貼付剤(実施例13〜17)において、性能の相違を評価した。評価の結果は、表12に示した。表12から、塩酸テルビナフィン濃度の上昇に伴って、放出量や爪透過性が上昇し、抗真菌効果も高くなることが確認された。
【0080】
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体の少なくとも片面上に配置された粘着剤層とからなり、該粘着剤層が粘着基剤、テルビナフィン及び/又はその薬理学的に許容できる塩、並びに溶解剤としての酢酸ナトリウム及び/又はソルビタンモノラウレートを含有する、爪用貼付剤。
【請求項2】
前記粘着基剤がアクリル系粘着剤からなる、請求項1に記載の爪用貼付剤。
【請求項3】
前記アクリル系粘着剤が水酸基又はカルボン酸基を有するアクリル系共重合体である、請求項2に記載の爪用貼付剤。
【請求項4】
前記粘着剤層が、該層の全質量基準でテルビナフィン及び/又はその薬理学的に許容できる塩を0.5〜50質量%含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の爪用貼付剤。
【請求項5】
前記テルビナフィンの薬理学的に許容できる塩が塩酸テルビナフィンである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の爪用貼付剤。
【請求項6】
前記粘着剤層がさらに可塑剤を含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の爪用貼付剤。

【公開番号】特開2011−140504(P2011−140504A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45953(P2011−45953)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【分割の表示】特願2008−531990(P2008−531990)の分割
【原出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000160522)久光製薬株式会社 (121)
【Fターム(参考)】