片側面のみに像を与える透明物品
【課題】窓広告等に使用できる、片側面のみに像を与える透明物品の提供。
【解決手段】光の透過率が30〜95%でありかつ反射率が30〜95%である半透過半反射層、複屈折性が異なる領域をパターン状に2つ以上有するパターン化光学異方性層又は電圧印加によって液晶性化合物を駆動して光学異方性を制御してなる駆動型光学異方性層である複屈折性層、及び偏光層をこの順で含み、
前記複屈折性層に対し、前記偏光層と反対側には偏光層を含まない物品。
【解決手段】光の透過率が30〜95%でありかつ反射率が30〜95%である半透過半反射層、複屈折性が異なる領域をパターン状に2つ以上有するパターン化光学異方性層又は電圧印加によって液晶性化合物を駆動して光学異方性を制御してなる駆動型光学異方性層である複屈折性層、及び偏光層をこの順で含み、
前記複屈折性層に対し、前記偏光層と反対側には偏光層を含まない物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は片側面のみに像を与える透明物品に関する。本発明は特に複屈折パターンにより形成される像を片側面のみに与える透明物品に関する。
【背景技術】
【0002】
面を挟んで一方の側からは特定の表示を視認でき、反対側からは実質的にその表示を視認できない透明物品は、当面ガラス面などに応用して、広告表示などに有用である。この目的のために、ホログラムやハーフミラー、パール光沢などの特殊な視覚効果を有する光学物品が用いられている。例えば、特許文献1には、半透過半反射のハーフミラーを用いて、背後の光源の切り替えで広告表示とミラー表示を切り替える電飾看板が開示されている。また、特許文献2には、孔明きプラスチックフィルムを用いた自動車用広告として、明るい外部からは暗い内部は見えずに広告だけが見え、暗い内部からは貫通孔を通して明るい外部の景色が透けて見えるような指向性の広告媒体が開示されている。いずれも光学物品の透過率と反射率を制御し、光学物品を挟んで両側の明るさのバランスを変えることにより、特殊な視覚効果を実現している。
【0003】
しかし、いずれの場合も、環境の明るさによってのみ指向性を制御しているため、例えば昼と夜のように環境の明るさが変化すると、指向性に影響が出る。しかも特許文献2のような両側に観察者がいる透過型の態様では、特に暗い内部からは明るい外部は透けて見えるだけで、広告の表示は邪魔になってしまう。従って、特許文献2の広告をビルの窓広告に用いた場合、通常の印刷による広告と比較すればビル内部からの視認性は向上しているが、完全に見えなくすることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−10195号公報
【特許文献2】特開平11−65497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、一方の観測側からは特定の反射表示が見え、反対側からはその反射表示が見えない透明物品の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは複屈折性の異なる領域をパターン状に有する光学異方性層に半透過半反射層と偏光層を組み合わせることにより、層の片側でのみ視認できる像を与えることが可能であることを見出し、この知見を基に本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[17]を提供するものである。
【0007】
[1]光の透過率が30〜95%であり、かつ反射率が30〜95%である半透過半反射層、複屈折性層、及び偏光層をこの順で含み、
前記複屈折性層に対し、前記偏光層と反対側には偏光層を含まない物品。
[2]前記複屈折性層が、複屈折性が異なる領域をパターン状に2つ以上有するパターン化光学異方性層である[1]に記載の物品。
[3]複屈折性が異なる領域がレターデーション又は遅相軸の異なる領域である[2]に記載の物品。
[4]前記パターン化光学異方性層が、レターデーションが30〜1000nmである領域及びレターデーションが30nm未満である領域を少なくとも含む[2]に記載の物品。
【0008】
[5]前記パターン化光学異方性層が少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含む組成物から形成された層である[2]〜[4]のいずれか一項に記載の物品。
[6]前記パターン化光学異方性層が下記工程を含む方法で形成されたものである[5]に記載の物品:
(1)液晶性化合物を含む組成物からなる層を加熱または光照射する工程;
(2)工程(1)で得られた層にパターン露光を行う工程;
(3)工程(2)で得られた層を50℃以上400℃以下に加熱する工程。
【0009】
[7]前記複屈折性層が駆動型光学異方性層である[1]に記載の物品。
[8]前記駆動型光学異方性層が、電圧印加によって駆動される液晶性化合物を含む層であり、
前記電圧印加のための2つの電極層を有する[7]に記載の物品。
[9]前記2つの電極層の1つが、前記半透過半反射層である[8]に記載の物品。
[10]前記偏光層がヨウ素または二色性色素をドープしたポリビニルアルコールを含むフィルムを一軸延伸して作成した吸収型偏光層であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか一項に記載の物品。
【0010】
[11]偏光層が複屈折性の異なる二種のポリマー層を、20〜300nmの膜厚で交互に積層して一軸延伸した反射型偏光層であることを特徴とする(DBEF)[1]〜[9]のいずれか一項に記載の物品。
[12]偏光層がコレステリック液晶による円偏光選択反射層であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか一項に記載の物品。
[13]偏光層が重合性液晶性化合物と二色性色素の混合物を、液晶性を用いて配向させ、次いで重合させて配向を固定化させた層であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか一項に記載の物品。
【0011】
[14]偏光層が液晶性二色性色素を液晶性を用いて配向させた層であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか一項に記載の物品。
[15]広告に用いられる[1]〜[14]のいずれか一項に記載の物品。
[16][1]〜[15]のいずれか一項に記載の物品が貼付された窓ガラス。
[17][1]〜[15]のいずれか一項に記載の物品が貼付された眼鏡類。
【発明の効果】
【0012】
本発明により複屈折パターンを利用した片側面のみに像を与える透明物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】パターン化光学異方性層を有する物品の構成を模式的に示す図である。
【図2】添加剤層を有するパターン化光学異方性層を有する物品の構成を模式的に示す図である。
【図3】パターン化光学異方性層を複数有する物品の構成を模式的に示す図である。
【図4】基本的な複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図5】支持体または仮支持体上に光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図6】配向層を有する複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図7】粘着層を有する複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図8】印刷層を有する複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図9】力学特性制御層および転写層を有する転写型複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図10】添加剤層を有する複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図11】光学異方性層を複数有する複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図12】実施例で行ったパターン露光のパターンと各領域の露光量を示す図である。
【図13】レターデーションと、パターン露光時の露光量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0015】
本明細書において、レターデーション又はReは面内のレターデーションを表す。面内のレターデーション(Reθ)は透過または反射の分光スペクトルから、Journal of Optical Society of America,vol.39,p.791−794(1949)や特開2008−256590号公報に記載の方法を用いて位相差に換算する、スペクトル位相差法を用いて測定することができる。前記文献は透過スペクトルを用いた測定法であるが、特に反射の場合は、光が光学異方性層を2回通過するため、反射スペクトルより換算された位相差の半分を光学異方性層の位相差とすることができる。Re0は正面レターデーションである。Re(λ)は測定光として波長λnmの光を用いたものである。本明細書におけるレターデーション又はReは、R、G、Bに対してそれぞれ611±5nm、545±5nm、435±5nmの波長で測定されたものを意味し、特に色に関する記載がなければ545±5nmまたは590±5nmの波長で測定されたものを意味する。
【0016】
本明細書において、角度について「実質的に」とは、厳密な角度との誤差が±5°未満の範囲内であることを意味する。さらに、厳密な角度との誤差は、4°未満であることが好ましく、3°未満であることがより好ましい。レターデーションについて「実質的に」とは、レターデーションが±5%以内の差であることを意味する。さらに、レターデーションが実質的に0とは、レターデーションが5nm以下であることを意味する。また、屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域の任意の波長を指す。なお、本明細書において、「可視光」とは、波長が400〜700nmの光のことをいう。
【0017】
[片側面のみに像を与える透明物品]
本発明の物品は、少なくとも、半透過半反射層、複屈折性層、及び偏光層をこの順で含む。
半透過半反射層は光を反射する性質と、光を透過する性質を同時に有する層である。このような層の利用により他の実質的に透明な層を組み合わせた物品において透明性が保たれるとともに、複屈折性層及び偏光層との組み合わせで反射による像を与えることができる。半透過半反射層は電極層などの機能を併せて有していてもよい。
【0018】
複屈折性層は後述のパターン化光学異方性層又は駆動型光学異方性層であればよい。
本発明の物品においては、偏光層を通過した偏光が複屈折性層を通過、半透過半反射層で反射して再び複屈折性層を通過して面内で異なる楕円偏光が出射され、観測点側でさらに前記偏光層を通過して情報が可視化される。
上記の原理からわかるように、複屈折層からみて半透過半反射層側から観測した場合は上記の情報は確認できず、全面を実質的に透明にすることができる。なお本明細書において透明とは、約30%以上の光線透過率を有することを意味する。
そして、前記複屈折性層に対し、前記偏光層と反対側には偏光層を含まないことによって、片側面のみに像を与える。さらに好ましくは、前記半透過半反射層に対し、前記偏光層と反対側には偏光層を含まない。
【0019】
[半透過半反射層]
半透過半反射層は透過率が30〜95%、反射率が30〜95%であればよい。半透過半反射層は金属層の厚みを薄くする方法が安価で製造できるので好ましい。一方、金属による半透過半反射層は吸収を有しているため、吸収なしに透過率と反射率を制御できる誘電体多層膜は光利用効率の観点から好ましい。半透過半反射層は、電極層を兼ねていてもよい。また半透過半反射層は、例えば、複屈折層としてパターン化光学異方性層を用いる際、複屈折パターン形成後の複屈折パターンを有する物品上に形成してもよく、複屈折パターン形成前の複屈折パターン作製材料に既に設けられていてもよい。
【0020】
[偏光層]
偏光層とは、任意の偏光状態の偏光の透過率と、前記偏光と位相が180度異なる偏光の透過率とに10%以上の差を有する層のことを指す。一般的にはヨウ素や二色性色素をポリビニルアルコール(PVA)などの高分子フィルムにドープし、水中または空気中で一軸に延伸して二色性のヨウ素錯体または二色性色素を延伸方向に配向させた吸収型偏光層が用いられる。吸収型偏光層の他には、複屈折性の異なる二種のポリマー層を、20〜300nmの膜厚で交互に積層して一軸延伸した反射型偏光層(DBEF)やコレステリック液晶による円偏光層;重合性液晶性化合物と二色性色素との混合物を、液晶性を用いて配向させ、次いで重合させて配向を固定化させた層;液晶性二色性色素を液晶性を用いて配向させた層;複屈折性の異なる二種のポリマー層を相分離させて一軸延伸した散乱型偏光層;及び高分子分散液晶フィルムを一軸延伸した散乱型偏光層などが挙げられる。
【0021】
[複屈折性層]
複屈折性層はパターン化光学異方性層又は駆動型光学異方性層であればよい。それぞれについて、以下説明する。
【0022】
[パターン化光学異方性層]
本明細書において「パターン化光学異方性層」とは複屈折性が異なる領域をパターン状に有する光学異方性層を意味する。複屈折性の異なる領域は2つ以上であればよいが、3つ以上であることがより好ましい。複屈折性が同一である個々の領域は連続的形状であっても非連続的形状であってもよい。
パターン化光学異方性層は例えば後述の複屈折パターン作製材料を用いて容易に作製することができるが、複屈折性が異なる領域をパターン状に有する層であれば作製方法は特に限定されない。
【0023】
本明細書においては「複屈折パターン」との用語も用いる。複屈折パターンとは、広義には複屈折性の異なる2つ以上のドメインが2次元の面内または3次元的にパターニングされたものである。特に2次元の面内において、複屈折性は面内で屈折率が最大となる遅相軸の方向と、ドメイン内のレターデーションの大きさの2つのパラメータにより定義される。例えば液晶性化合物による位相差フィルムなどにおける面内の配向欠陥や厚み方向の液晶の傾斜分布も広義には複屈折パターンと言えるが、狭義にはあらかじめ決めたデザインなどを基に、意図して複屈折性を制御してパターン化したものを複屈折パターンと定義することが望ましい。本発明における複屈折パターンは、遅相軸の方向は一定であり、レターデーションの大きさの異なるドメインによって形成されたパターンでもよく、遅相軸の方向が異なるドメインによって形成されたパターンでもよく、遅相軸の方向及びレターデーションの大きさの双方が異なるドメインによって形成されたパターンでもよい。この中で、本発明における複屈折パターンは、遅相軸の方向は一定であり、レターデーションの大きさの異なるドメインによって形成されたパターンであることが好ましい。複屈折パターンは特に記載しない限り、複数層有していてもよく、複数層のパターンの境界は一致していても異なっていてもよい。
【0024】
図1〜3は、パターン化光学異方性層を有する本発明の物品の例である。この場合、物品は半透過半反射層13、パターン化光学異方性層101、偏光層20をこの順で有する。 図では複屈折性が異なる領域を101A、101B、101Cとして例示する。
【0025】
図1(a)に示す構成はそれぞれ、最も基本的なパターン化光学異方性層を有する物品の構成である。このような構成の物品を、粘着剤や接着剤を用いて対象とする窓ガラス面などに貼付して使用することができる。
【0026】
図1(b)は支持体を有する例である。
図1(c)に示す例は配向層14を有する例である。パターン化光学異方性層101として、液晶性化合物を含む溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、加熱または光照射して重合固定化した光学異方性層から形成された層を用いる場合、配向層14は液晶性化合物の配向を助けるための層として機能する。
図2(a)、(b)に示すパターン化光学異方性層を有する物品は、添加剤層を有するものである。添加剤層には、後述のように光学異方性層に可塑剤や光重合開始剤を後添加するための層、表面保護のためのハードコート層、指紋付着やマジックペンによる落書き防止の撥水層、タッチパネル性を付与する導電層、赤外線を透過させないことにより赤外線カメラで見えなくする遮蔽層、左右円偏光のいずれかを通過させないことにより円偏光フィルタで画像を見えなくする円偏光選択反射層、光学異方性層に感光性を付与する感光層、RFIDのアンテナとして作用するアンテナ層、水没した際に変色するなどして水没を検知する水没検知層、温度により色の変わるサーモトロピック層、像の色を制御する着色フィルタ層、磁気記録性を付与する磁性層等の他、マット層、散乱層、潤滑層、感光層、帯電防止層、レジスト層などとしての機能を有するものが含まれる。
【0027】
図3(a)に示すパターン化光学異方性層を有する物品は、パターン化光学異方性層を複数有するものである。複数の光学異方性層の面内遅相軸は同一でも異なっていてもよいが、異なっていることが好ましい。複数の光学異方性層の複屈折性が異なる領域は互いに同一でも異なっていてもよい。図には示さないが、パターン化光学異方性層は3つ以上あってもよい。レターデーションあるいは遅相軸の向きが互いに異なる光学異方性層を2層以上設け、それぞれに独立したパターンを与えることにより、さらに多彩な像を形成することができる。
【0028】
[複屈折パターン作製材料]
以下に、パターン化光学異方性層を有する物品の形成法の一例である、複屈折パターン作製材料を用いる方法について説明する。
複屈折パターン作製材料は複屈折パターンを作製する為の材料であり、所定の工程を経ることでパターン化光学異方性層を有する物品を作成することができる材料を指す。複屈折パターンの形成法については、特に記載がない限りこの方法に限定されない。
【0029】
複屈折パターン作製材料は通常、フィルム、またはシート形状であればよい。複屈折パターン作製材料は、光学異方性層又は、光学異方性層のみからなるもののほか、様々な副次的機能を付与することが可能である機能性層を有しているものであってもよい。機能性層としては、支持体、配向層、半透過半反射層、粘着層などが挙げられる。また、転写材料として用いられる複屈折パターン作製用材料、又は転写材料を用いて作製された複屈折パターン作製材料などにおいて、仮支持体、力学特性制御層を有していてもよい。
以下で示す構成の複屈折パターン作製材料を粘着剤や接着剤を用いて、半透過半反射層、偏光層、その他、対象とする物品に光学異方性層を転写することも可能である。
【0030】
図4(a)に示す複屈折パターン作製材料は、自己支持性を有する光学異方性層12のみからなる複屈折パターン作製材料の例である。
光学異方性層は複屈折性を有する層であり、一軸または二軸延伸されたポリマー層や配向した液晶性化合物を固定化した層、配向が揃った有機または無機単結晶層などにより形成されていればよい。光学異方性層としては、フォトマスクによる露光あるいはデジタル露光などのパターン露光や、ホットスタンプやサーマルヘッド、赤外線レーザ露光などのパターン加熱、針やペンによって機械的に加圧またはせん断を加える触針描画、反応性化合物の印刷などにより、光学異方性を任意に制御する機能を有することができる層が好ましい。そのような機能を有する光学異方性層は、後述の方法などにより、パターン化光学異方性層を得ることが容易であるからである。パターン形成のためには、フォトマスクによる露光あるいは走査露光などのパターン露光を用いることが好ましい。該パターニング工程に加えて必要に応じて熱や薬液による漂白、現像などと組み合わせてパターンを形成することもできる。この場合支持体の制約が少ないことから熱による漂白、現像が好ましい。図4(b)に示す複屈折パターン作製材料は、自己支持性を有する光学異方性層12に半透過半反射層13を付した例である。
【0031】
図5(a)、(b)は支持体上に光学異方性層12を有する例である。 図6(a)〜(c)に示す複屈折パターン作製材料は配向層14を有する例である。
図7(a)〜(d)は粘着層を有する複屈折パターン作製材料の例である。
図8(a)〜(d)は印刷層を有する複屈折パターン作製材料の例である。
【0032】
図9(a)〜(d)は力学特性制御層および転写層を有する転写型複屈折パターン作製材料の例である。
図10(a)〜(d)は添加剤層を有する複屈折パターン作製材料の例である。
図11(a)〜(d)に示す複屈折パターン作製材料は光学異方性層を複数有するものである。複数の光学異方性層の面内遅相軸は同一でも異なっていてもよいが、異なっていることが好ましい。図には示さないが、光学異方性層は3つ以上あってもよい。液晶性化合物を用いて光学異方性層を形成する場合、配向層があることが好ましいが、光学異方性層自体が配向層を兼ねることで図16(c)のように配向層を省略することもでき、さらに好ましい。転写型複屈折パターン作製材料を用いれば、複屈折パターンを有する層を複数有する物品の作製を容易に行うことができる。
【0033】
以下、複屈折パターン作製材料、それを用いたパターン化光学異方性層を有する物品の作製方法について、詳細に説明する。ただし、本発明はこの態様に限定されるものではなく、他の態様についても、以下の記載および従来公知の方法を参考にして実施可能であって、本発明は以下に説明する態様に限定されるものではない。
【0034】
[光学異方性層]
複屈折パターン作製材料における光学異方性層は、レターデーションを測定したときにレターデーションが実質的に0でない入射方向が一つでもある、即ち等方性でない光学特性を有する層である。
【0035】
複屈折パターン作製材料における光学異方性層としては、少なくとも1つのモノマーまたはオリゴマーおよびそれらを硬化させたものを含む層、少なくとも1つのポリマーを含む層、少なくとも1つの有機または無機単結晶を含む層などがあげられる。
ポリマーを含む前記光学異方性層は、複屈折性、透明性、耐溶媒性、強靭性および柔軟性といった異なった種類の要求を満たすことができる点で好ましい。該光学異方性層中のポリマーは未反応の反応性基を有することが好ましい。露光により未反応の反応性基が反応してポリマー鎖の架橋が起こるが、露光条件の異なる露光によってポリマー鎖の架橋の程度が異なり、その結果としてレターデーション値が変化して複屈折パターンが形成しやすくなると考えられるためである。
【0036】
光学異方性層は好ましくは20℃において、より好ましくは30℃において、さらに好ましくは40℃において固体であればよい。20℃において固体であると、他の機能性層の塗布や、支持体上への転写や貼合が容易であるからである。
他の機能性層の塗布を行う為、光学異方性層は耐溶媒性を有することが好ましい。本明細書において、「耐溶媒性を有する」とは対象の溶媒に2分間浸漬した後のレターデーションが浸漬前のレターデーションの30%から170%の範囲内に、より好ましくは50%から150%の範囲内に、最も好ましくは80%から120%の範囲内にあることを意味する。対象の溶媒としては水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N−メチルピロリドン、ヘキサン、クロロホルム、酢酸エチルの中から、好ましくはアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N−メチルピロリドンの中から、最も好ましくはメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、またはこれらの混合溶媒等があげられる。
【0037】
光学異方性層は20℃においてレターデーションが5nm以上であればよく、10nm以上10000nm以下であることが好ましく、20nm以上2000nm以下であることが最も好ましい。レターデーションが5nm以下では複屈折パターンの形成が困難である場合がある。レターデーションが10000nmを越えると、誤差が大きくなり実用できる精度を達成することが困難である場合がある。
【0038】
光学異方性層の製法としては特に限定されないが、少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、加熱または光照射して重合固定化して作製する方法;少なくとも2つ以上の反応性基を有するモノマーを重合固定化した層を延伸する方法;側鎖に反応性基を有するポリマーからなる層を延伸する方法;またはポリマーからなる層を延伸した後にカップリング剤等を用いて反応性基を導入する方法などが挙げられる。後述するように、光学異方性層は転写により形成されたものであってもよい。前記光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜10μmであることがさらに好ましい。
【0039】
[液晶性化合物を含有する組成物を配向固定化してなる光学異方性層]
光学異方性層の製法として少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、加熱または光照射して重合固定化して作製する場合について以下に説明する。本製法は、後述するポリマーを延伸して光学異方性層を得る製法と比較して、薄い膜厚で同等のレターデーションを有する光学異方性層を得ることが容易であり、好ましい。
【0040】
[液晶性化合物]
一般的に、液晶性化合物はその形状から、棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。本発明では、いずれの液晶性化合物を用いることもできるが、棒状液晶性化合物を用いることが好ましい。
なお、本明細書において、液晶性化合物を含む組成物から形成された層について記載されるとき、この形成された層において液晶性を有する化合物が含まれる必要はない。例えば、前記低分子液晶性化合物が熱、光等で反応する基を有しており、結果的に熱、光等で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失ったものが含まれる層であってもよい。また、液晶性化合物としては、2種以上の棒状液晶性化合物、2種以上の円盤状液晶性化合物、又は棒状液晶性化合物と円盤状液晶性化合物との混合物を用いてもよい。温度変化や湿度変化を小さくできることから、反応性基を有する棒状液晶性化合物または円盤状液晶性化合物を用いて形成することがより好ましく、少なくとも1つは1液晶分子中の反応性基が2以上あることがさらに好ましい。2種以上の液晶性化合物の混合物の場合、少なくとも1つが2以上の反応性基を有していることが好ましい。
【0041】
好ましくは、架橋機構の異なる2種類以上の反応性基を有する液晶性化合物を用い、条件を選択して2種類以上の反応性基の一部の種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有するポリマーを含む光学異方性層を作製するとよい。架橋機構としては縮合反応、水素結合、重合など特に限定はないが、2種以上のうち少なくとも一方は重合が好ましく、2種類以上の異なる重合を用いることがさらに好ましい。一般に架橋反応は、重合に用いられるビニル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基だけでなく、水酸基、カルボン酸基、アミノ基なども用いることができる。
【0042】
本明細書において、架橋機構の異なる2種類以上の反応性基を有する化合物とは、段階的に異なる架橋反応工程を用いて架橋させる化合物であり、各段階の架橋反応工程では、それぞれの架橋機構に応じた反応性基が官能基として反応する。また、例えば側鎖に水酸基を有するポリビニルアルコールのようなポリマーの場合で、ポリマーを重合する重合反応を行った後、側鎖の水酸基をアルデヒドなどで架橋させた場合は2種類以上の異なる架橋機構を用いたことになるが、本明細書において2種類以上の異なる反応性基を有する化合物というときは、好ましくは、支持体等の上に層を形成した時点において該層中で2種類以上の異なる反応性基を有する化合物であって、その後にその反応性基を段階的に架橋させることができる化合物であればよい。特に好ましい態様として2種以上の重合性基を有する液晶性化合物を用いることが好ましい。段階的に架橋させる反応条件として、温度の違い、光(照射線)の波長の違い、重合機構の違いのいずれでもよいが、反応を分離しやすい点から重合機構の違いを用いることが好ましく、用いる開始剤の種類によって制御することがさらに好ましい。重合機構としては、ラジカル重合性基とカチオン重合性基の組み合わせが好ましい。前記ラジカル重合性基がビニル基、(メタ)アクリル基であり、かつ前記カチオン重合性基がエポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基である組み合わせが反応性を制御しやすく特に好ましい。以下に反応性基の例を示す。
【0043】
【化1】
【0044】
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく 用いられる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。上記高分子液晶性化合物は、低分子の反応性基を有する棒状液晶性化合物が重合した高分子化合物である。棒状液晶性化合物の例としては、例えば、特開2008−281989号公報、特表平11−513019号公報(WO97/00600)および特表2006−526165号公報に記載のものが挙げられる。
【0045】
以下に、棒状液晶性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、一般式(I)で表される化合物は、特表平11−513019号公報(WO97/00600)に記載の方法で合成することができる。
【0046】
【化2】
【0047】
【化3】
【0048】
【化4】
【0049】
【化5】
【0050】
本発明の他の態様として、前記光学異方性層に円盤状液晶を使用した態様がある。前記光学異方性層は、モノマー等の低分子量の円盤状液晶性化合物の層または重合性の円盤状液晶性化合物の重合(硬化)により得られるポリマーの層であることが好ましい。前記円盤状液晶性化合物の例としては、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physicslett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルなどを挙げることができる。上記円盤状液晶性化合物は、一般的にこれらを分子中心の円盤状の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等の基(L)が放射線状に置換された構造であり、液晶性を示し、一般的に円盤状液晶とよばれるものが含まれる。ただし、このような分子の集合体が一様に配向した場合は負の一軸性を示すが、この記載に限定されるものではない。円盤状液晶性化合物の例としては特開2008−281989号公報の段落[0061]〜[0075]に記載のものが挙げられる。
液晶性化合物として、反応性基を有する円盤状液晶性化合物を用いる場合、水平配向、垂直配向、傾斜配向、およびねじれ配向のいずれの配向状態で固定されていてもよい。
【0051】
[重合性モノマー]
光学異方性層の形成に用いられる、液晶性化合物を含有する組成物には、液晶性化合物の架橋を促進するため重合性モノマーを添加してもよい。
重合性モノマーとしては、例えば、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有し、光の照射によって付加重合するモノマー又はオリゴマーを用いることができる。
そのようなモノマー及びオリゴマーとしては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有する化合物を挙げることができる。その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンやグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加した後(メタ)アクリレート化したもの等の多官能アクリレートや多官能メタクリレートを挙げることができる。
【0052】
更に特公昭48−41708号公報、特公昭50−6034号公報及び特開昭51−37193号公報に記載されているウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報及び特公昭52−30490号公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレー卜やメタクリレートを挙げることができる。
これらの中で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジぺンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジぺンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合性化合物B」も好適なものとして挙げることができる。
これらのモノマー又はオリゴマーは、単独でも、二種類以上を混合して使用してもよい。
【0053】
また、カチオン重合性モノマーを用いることもできる。例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、特開2001−40068号、特開2001−55507号、特開2001−310938号、特開2001−310937号、特開2001−220526号の各公報に例示されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
エポキシ化合物としては、以下の芳香族エポキシド、脂環式エポキシド及び脂肪族エポキシド等が挙げられる。
【0054】
芳香族エポキシドとしては、例えば、ビスフェノールA、あるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0055】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が挙げられる。
脂肪族エポキシドの好ましいものとしては、脂肪族多価アルコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリン或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0056】
また、本発明の組成物においては、カチオン重合性モノマーとして、単官能または2官能のオキセタンモノマーを用いることもできる。例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(東亜合成(株)製商品名OXT101等)、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン(同OXT121等)、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(同OXT211等)、ジ(1−エチル−3−オキセタニル)メチルエーテル(同OXT221等)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(同OXT212等)等を好ましく用いることができ、特に、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ(1−エチル−3−オキセタニル)メチルエーテルなどの化合物や、特開2001−220526号公報、同2001−310937号公報に記載されている公知のあらゆる官能または2官能オキセタン化合物を使用できる。
【0057】
[2層以上の光学異方性層]
液晶性化合物を含む組成物からなる光学異方性層を2層以上積層する場合、液晶性化合物の組み合わせについては特に限定されず、全て棒状性液晶性化合物からなる層の積層体、円盤状液晶性化合物を含む組成物からなる層と棒状性液晶性化合物を含む組成物からなる層の積層体、又は全て円盤状液晶性化合物からなる層の積層体のいずれであってもよい。また、各層の配向状態の組み合わせも特に限定されず、同じ配向状態の光学異方性層を積層してもよいし、異なる配向状態の光学異方性層を積層してもよい。
【0058】
[溶媒]
液晶性化合物を含有する組成物を、塗布液として、例えば支持体又は後述する配向層等の表面に塗布する場合の塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0059】
[配向固定化]
液晶性化合物の配向の固定化は、液晶性化合物に導入した反応性基の架橋反応により実施することが好ましく、反応性基の重合反応により実施することがさらに好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれるが、光重合反応がより好ましい。光重合反応としては、ラジカル重合、カチオン重合のいずれでも構わない。ラジカル光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。カチオン光重合開始剤の例には、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系等を例示する事ができ、有機スルフォニウム塩系、が好ましく、トリフェニルスルフォニウム塩が特に好ましい。これら化合物の対イオンとしては、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロフォスフェートなどが好ましく用いられる。
【0060】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。液晶性化合物の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、10mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、25〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は10〜1000mW/cm2であることが好ましく、20〜500mW/cm2であることがより好ましく、40〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは加熱条件下で光照射を実施してもよい。
【0061】
[偏光照射による光配向]
前記光学異方性層は、偏光照射による光配向で面内のレターデーションが発現あるいは増加した層であってもよい。偏光照射は、特開2009−69793号公報の段落「0091」〜「0092」の記載、特表2005−513241号公報(国際公開WO2003/054111)の記載などを参照して行うことができる。
【0062】
[ラジカル性の反応性基とカチオン性の反応性基を有する液晶化合物の配向状態の固定化]
前述したように、液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有することもまた好ましい。この場合、条件を選択して複数種類の反応性基の一部種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有するポリマーを含む光学異方性層を作製することが可能である。このような液晶性化合物として、ラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶性化合物(具体例としては例えば、前述のI−8〜I−15)を用いた場合に特に適した重合固定化の条件について以下に説明する。
【0063】
まず、重合開始剤としては重合させようと意図する反応性基に対して作用する光重合開始剤のみを用いることが好ましい。すなわち、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合にはラジカル光重合開始剤のみを、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合にはカチオン光重合開始剤のみを用いることが好ましい。光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜8質量%であることがより好ましく、0.5〜4質量%であることが特に好ましい。
【0064】
次に、重合のための光照射は紫外線を用いることが好ましい。この際、照射エネルギーおよび/または照度が強すぎるとラジカル性反応性基とカチオン性反応性基の両方が非選択的に反応してしまう恐れがある。したがって、照射エネルギーは、5mJ/cm2〜500mJ/cm2であることが好ましく、10〜400mJ/cm2であることがより好ましく、20mJ/cm2〜200mJ/cm2であることが特に好ましい。また照度は5〜500mW/cm2であることが好ましく、10〜300mW/cm2であることがより好ましく、20〜100mW/cm2であることが特に好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。
【0065】
また光重合反応のうち、ラジカル光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害され、カチオン光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害されない。従って、液晶性化合物としてラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶化合物を用いてその反応性基の片方種類を選択的に重合させる場合、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合には窒素などの不活性ガス雰囲気下で光照射を行うことが好ましく、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合には敢えて酸素を有する雰囲気下(例えば大気下)で光照射を行うことが好ましい。
【0066】
また、液晶性化合物としてラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶化合物を用いてその反応性基の片方の種類を選択的に重合させる場合において、その片方を選択的に重合させる手段として他方の重合性基に対応する重合禁止剤を用いることも好ましい。例えば、液晶性化合物としてラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶化合物を用いてそのカチオン性の反応基を選択的に重合させる場合にはラジカル性重合に対する重合禁止剤を少量加えることにより、その選択性を向上させることが可能である。このような重合禁止剤の使用量は、塗布液の固形分の0.001〜10質量%であることが好ましく、0.005〜5質量%であることがより好ましく、0.02〜1質量%であることが特に好ましい。例えばラジカル性重合に対する重合禁止剤としてはニトロベンゼン、フェノチアジン、ハイドロキノン等が挙げられる。また、一般に酸化防止剤として用いられるヒンダートフェノール類もラジカル性重合に対する重合禁止剤として有効である。
【0067】
[水平配向剤]
前記光学異方性層の形成用組成物中に、特開2009−69793号公報の段落「0098」〜「0105」に記載の、一般式(1)〜(3)で表される化合物および一般式(4)のモノマーを用いた含フッ素ホモポリマーまたはコポリマーの少なくとも一種を含有させることで、液晶性化合物の分子を実質的に水平配向させることができる。尚、本明細書において「水平配向」とは、棒状液晶の場合、分子長軸と透明支持体の水平面が平行であることをいい、円盤状液晶の場合、円盤状液晶性化合物のコアの円盤面と透明支持体の水平面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が10度未満の配向を意味するものとする。傾斜角は0〜5度が好ましく、0〜3度がより好ましく、0〜2度がさらに好ましく、0〜1度が最も好ましい。
水平配向剤の添加量としては、液晶性化合物の質量の0.01〜20質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.02〜1質量%が特に好ましい。なお、特開2009−69793号公報の段落「0098」〜「0105」に記載の一般式(1)〜(4)にて表される化合物は、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0068】
[延伸によって作製される光学異方性層]
光学異方性層はポリマーの延伸によって作製されたものでもよい。光学異方性層は少なくとも1つの未反応の反応性基を持つ事が好ましいが、このようなポリマーを作製する際にはあらかじめ反応性基を有するポリマーを延伸してもよいし、延伸後の光学異方性層にカップリング剤などを用いて反応性基を導入してもよい。延伸法によって得られる光学異方性層の特長としては、コストが安いこと、及び自己支持性を持つ(光学異方性層の形成及び維持に支持体を要しない)ことなどが挙げられる。
【0069】
[2層以上の光学異方性層]
上記のように複屈折パターン作製材料は、光学異方性層を2層以上有してもよい。2層以上の光学異方性層は法線方向に互いに隣接していてもよいし、間に別の機能性層を挟んでいてもよい。2層以上の光学異方性層は互いにほぼ同等のレターデーションを有していてもよく、異なるレターデーションを有していてもよい。また遅相軸の方向が互いにほぼ同じ方向を向いていてもよく、異なる向きを向いていてもよい。遅相軸の方向が互いにほぼ同じ方向を向いている2層以上の光学異方性層を用いることによって、大きなレターデーションを有するパターンを作製することができる。
【0070】
光学異方性層を2層以上含む複屈折パターン作製材料を作製する方法としては、複屈折パターン作製材料上に光学異方性層を直接形成する、別の複屈折パターン作製材料を転写材料として用いて複屈折パターン作製材料上に光学異方性層を転写するなどの方法が挙げられる。このうち複屈折パターン作製材料を転写材料として用いて複屈折パターン作製材料上に光学異方性層を転写する方法がより好ましい。
【0071】
[光学異方性層の後処理]
作製された光学異方性層を改質するために、様々な後処理を行ってもよい。後処理としては例えば、密着性向上の為のコロナ処理や、柔軟性向上の為の可塑剤添加、保存性向上の為の熱重合禁止剤添加、反応性向上の為のカップリング処理などが挙げられる。また、光学異方性層中のポリマーが未反応の反応性基を有する場合、該反応性基に対応する重合開始剤を添加することも有効な改質手段である。例えば、カチオン性の反応性基とラジカル性の反応性基を有する液晶性化合物をカチオン光重合開始剤を用いて配向固定化した光学異方性層に対してラジカル光重合開始剤を添加することで、後にパターン露光を行う際の未反応のラジカル性の反応性基の反応を促進することができる。可塑剤や光重合開始剤の添加手段としては、例えば、光学異方性層を該当する添加剤の溶液に浸漬する手段や、光学異方性層の上に該当する添加剤の溶液を塗布して浸透させる手段などが挙げられる。また、光学異方性層の上に他の層を塗布する際にその層の塗布液に添加剤を添加しておき、光学異方性層に浸漬させる添加剤層を用いる方法もあげられる。この際に浸漬させる添加剤、特には光重合開始剤の種類や量により、後に述べる複屈折パターン作製材料へのパターン露光時の各領域への露光量と最終的に得られる各領域のレターデーションとの関係を調整し、所望する材料特性に近づけることが可能である。
【0072】
前記光学異方性層上に形成する添加剤層は、フォトレジストのような感光性樹脂層の他、反射光沢を制御する散乱層、表面の傷つきを防止するハードコート層、指紋付着やマジックなどの落書きを防止する撥水撥油層、帯電によるごみつきを防止する帯電防止層などの表面層と共用してもよい。感光性樹脂層としては、少なくとも1種のポリマーと少なくとも1種の光重合開始剤を含んでいることが好ましい。ポリマーとしては特に限定はないが、ハードコート性を持たせるためにはTgの高い材料が好ましい。
【0073】
[支持体]
複屈折パターン作製材料はそれぞれ、力学的な安定性を保つ目的で支持体を有してもよい。複屈折パターン作製材料における支持体がそのまま複屈折パターンを有する物品における支持体となっていてもよく、複屈折パターンを有する物品における支持体が複屈折パターン作製材料における支持体とは別に(複屈折パターン形成時または形成後に、複屈折パターン作製材料における支持体と代わって又は追加で)設けられてもよい。支持体としては特に限定はなく、剛直なものでもフレキシブルなものでもよい。剛直な支持体としては特に限定はないが表面に酸化ケイ素皮膜を有するソーダガラス板、低膨張ガラス、ノンアルカリガラス、石英ガラス板等の公知のガラス板、アルミ板、鉄板、SUS板などの金属板、樹脂板、セラミック板、石板などが挙げられる。フレキシブルな支持体としては特に限定はないがセルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーなどのプラスチックフィルムや紙、アルミホイル、布などが挙げられる。取扱いの容易さから、剛直な支持体の膜厚としては、100〜3000μmが好ましく、300〜1500μmがより好ましい。フレキシブルな支持体の膜厚としては、3〜500μmが好ましく、10〜200μmがより好ましい。支持体は後に述べるベークで着色したり変形したりしないだけの耐熱性を有することが好ましい。後述する反射層の代わりに、支持体自体が反射機能を有することもまた好ましい。
【0074】
[配向層]
既に説明したように、光学異方性層の形成には、配向層を利用してもよい。配向層は、一般に支持体もしくは仮支持体上又は支持体もしくは仮支持体上に塗設された下塗層上に設けられる。配向層は、その上に設けられる液晶性化合物の配向方向を規定するように機能する。配向層は、光学異方性層に配向性を付与できるものであれば、どのような層でもよい。配向層の好ましい例としては、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理された層、アゾベンゼンポリマーやポリビニルシンナメートに代表される偏光照射により液晶の配向性を発現する光配向層、無機化合物の斜方蒸着層、およびマイクログルーブを有する層、さらにω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライドおよびステアリル酸メチル等のラングミュア・ブロジェット法(LB膜)により形成される累積膜、あるいは電場あるいは磁場の付与により誘電体を配向させた層を挙げることができる。配向層としてはラビングの態様ではポリビニルアルコールを含むことが好ましく、配向層の上または下の少なくともいずれか1層と架橋できることが特に好ましい。配向方向を制御する方法としては、光配向層およびマイクログルーブが好ましい。光配向層としては、ポリビニルシンナメートのように二量化によって配向性を発現するものが特に好ましく、マイクログルーブとしてはあらかじめ機械加工またはレーザ加工により作製したマスターロールのエンボス処理が特に好ましい。
【0075】
[粘着層]
複屈折パターン作製材料は、後述のパターン露光及びベーク後に作製される複屈折パターンを有する物品をさらに他の物品に貼付するための粘着層を有していてもよい。粘着層の材料は特に限定されないが、複屈折パターン作製の為のベークの工程を経てた後でも粘着性を有する材料であることが好ましい。粘着層は、複屈折パターン形成後の複屈折パターンを有する物品上に形成してもよい。
【0076】
[塗布方法]
光学異方性層、所望により形成される配向層、などの各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、スリットコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。二以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
【0077】
[パターン化光学異方性層を有する物品の作製]
複屈折パターン作製材料に少なくとも、パターン露光及び加熱(ベーク)をこの順に行うことにより、パターン化光学異方性層を有する物品を作製することができる。
【0078】
[パターン露光]
本明細書において、パターン露光とは、複屈折パターン作製材料の一部の領域のみが露光されるように行う露光又は2つ以上の領域に互いに露光条件の異なる露光を意味する。互いに露光条件の異なる露光には、未露光(露光しないこと)が含まれていてもよい。パターン露光の手法としてはマスクを用いたコンタクト露光、プロキシ露光、投影露光などでもよいし、レーザや電子線などを用いてマスクなしに決められた位置にフォーカスして直接描画する走査露光を用いてもよい。前記露光の光源の照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、青色レーザ等が挙げられる。好ましい露光量としては通常3〜2000mJ/cm2程度であり、より好ましくは5〜1000mJ/cm2程度、最も好ましくは10〜500mJ/cm2程度である。パターン露光の解像度を1200dpi以上にすることにより、マイクロ印刷画像が形成でき、好ましい。解像度を高めるためには、パターン露光時にパターン化光学異方性層が固体であり、尚且つ厚みが10μm以下であることが必要であり、好ましい。厚み10μm以下で実現するためにはパターン化光学異方性層が重合性液晶化合物を含む層を配向固定化したものであることが好ましく、重合性液晶化合物が架橋機構の異なる2種類以上の反応性基を有することが特に好ましい。
【0079】
[パターン露光時の露光条件]
複屈折パターン作製材料の2つ以上の領域に互いに露光条件の異なる露光を行う際、「2つ以上の領域」は互いに重なる部位を有していても有していなくてもよいが、互いに重なる部位を有していないことが好ましい。パターン露光は複数回の露光によって行われてもよく、もしくは、例えば領域によって異なる透過スペクトルを示す2つ以上の領域を有するマスク等を用いて1回の露光によって行われていてもよく、又は両者が組み合わされていてもよい。すなわち、パターン露光時に、異なる露光条件で露光された2つ以上の領域を生ずるような形で露光が行われていればよい。走査露光を用いる場合には、露光領域によって光源強度を変える、露光領域の照射スポットを変える、走査速度を変えるなどの手法で領域ごとに露光条件を変えることが可能であり、好ましい。
【0080】
露光条件としては、特に限定はされないが、露光ピーク波長、露光照度、露光時間、露光量、露光時の温度、露光時の雰囲気等が挙げられる。この中で、条件調整の容易性の観点から、露光ピーク波長、露光照度、露光時間、および露光量が好ましく、露光照度、露光時間および露光量がさらに好ましい。パターン露光時に相異なる露光条件で露光された領域はその後、焼成を経て相異なる、かつ露光条件によって制御された複屈折性を示す。特に異なるレターデーション値を与える。すなわち、パターン露光の際に領域ごとに露光条件を調整することにより、焼成を経た後に領域ごとに異なる、かつ所望のレターデーションを有する複屈折パターンを作製することが可能である。なお、異なる露光条件で露光された2つ以上の露光領域間の露光条件は不連続に変化させてもよいし、連続的に変化させてもよい。
【0081】
[マスク露光]
露光条件の異なる露光領域を生じる手段の一つとして、露光マスクを用いた露光は有用である。例えば1つの領域のみを露光するような露光マスクを用いて露光を行った後に、温度、雰囲気、露光照度、露光時間、露光波長を変えて別のマスクを用いた露光や全面露光を行うことで、先に露光された領域と後に露光された領域の露光条件は容易に変更することができる。また、露光照度、あるいは露光波長を変えるためのマスクとして領域によって異なる透過スペクトルを示す2つ以上の領域を有するマスクは特に有用である。この場合、ただ一度の露光を行うだけで複数の領域に対して異なる露光照度、あるいは露光波長での露光を行うことができる。異なる露光照度の下で同一時間の露光を行う事で異なる露光量を与えることができることは言うまでもない。
【0082】
[走査露光]
走査露光は、例えば、光により所望の2次元パターンを描画面上に形成する描画装置を応用して行うことができる。
このような描画装置の代表的な例として、光ビーム発生手段から導出された光ビームを、光ビーム偏向走査手段を介して被走査体上に走査させることにより、所定の画像等を記録するように構成された画像記録装置がある。この種の画像記録装置では、画像等の記録に際して、光ビーム発生手段から導出される光ビームを画像信号に対応して変調させる(特開平7−52453号公報)。
【0083】
また主走査方向に回転するドラムの外周面に貼着された被走査体上に対してレーザビームを副走査方向に走査することで記録を行うタイプ、および、ドラムの円筒内周面に貼着された被走査体上に対してレーザビームを回転走査させることで記録を行うタイプ(特許2783481号)の装置も使用できる。
【0084】
さらに、描画ヘッドにより2次元パターンを描画面上に形成する描画装置を用いることもできる。例えば、半導体基板や印刷版の作製で用いられている、露光ヘッドにより所望の2次元パターンを感光材料等の露光面上に形成する露光装置が使用できる。このような露光ヘッドとして代表的なものは、多数の画素を有し所望の2次元パターンを構成する光点群を発生させる画素アレイを備えている。この露光ヘッドを、露光面に対して相対移動させながら動作させることにより、所望の2次元パターンを露光面上に形成することができる。
【0085】
上記のような露光装置としては、たとえば、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)を露光面に対して所定の走査方向に相対的に移動させるとともに、その走査方向への移動に応じてDMDのメモリセルに多数のマイクロミラーに対応した多数の描画点データからなるフレームデータを入力し、DMDのマイクロミラーに対応した描画点群を時系列に順次形成することにより所望の画像を露光面に形成する露光装置が提案されている(特開2006−327084号公報)。
【0086】
露光ヘッドが備える空間光変調素子としては、上記のDMDの以外の、空間光変調素子を使用することもできる。なお、空間光変調素子は、反射型および透過型のいずれでもよい。そのほかの空間光変調素子の例としては、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)タイプの空間光変調素子(SLM;Special Light Modulator)、電気光学効果により透過光を変調する光学素子(PLZT素子)、液晶光シャッタ(FLC)等の液晶シャッターアレイなどが挙げられる。なお、MEMSとは、IC製造プロセスを基盤としたマイクロマシニング技術によるマイクロサイズのセンサ、アクチュエータ、そして制御回路を集積化した微細システムの総称であり、MEMSタイプの空間光変調素子とは、静電気力を利用した電気機械動作により駆動される空間光変調素子を意味している。
【0087】
さらに、回折格子ライトバルブ(GLV;Grating Light Valve)を複数ならべて二次元状に構成したものを用いることもできる。
露光ヘッドの光源としては、上記したレーザ光源の他に、ランプ等も使用可能である。
【0088】
[2つ以上の光学異方性層のパターン露光]
複屈折パターン作製材料にパターン露光を行って得られた積層体の上に新たな複屈折パターン作製用転写材料を転写し、その後に新たにパターン露光を行ってもよい。この場合、一度目及び二度目ともに未露光部である領域(通常レターデーション値が一番低い)、一度目に露光部であり二度目に未露光部である領域、及び、一度目及び二度目ともに露光部である領域(通常レターデーション値が一番高い)でベーク後に残るレターデーションの値を効果的に変えることができる。なお、一度目に未露光部であり二度目に露光部である領域は、二度目の露光により一度目及び二度目ともに露光部である領域と同様となると考えられる。同様にして転写とパターン露光を交互に三度、四度と行うことにより、四つ以上の領域を作ることも容易にできる。この手法は、異なる領域の間で、露光条件だけでは与え得ないような差異(光学軸の方向の違いや非常に大きなレターデーションの差異など)を持たせたい時に有用である。
【0089】
[加熱(ベーク)]
パターン露光された複屈折パターン作製材料に対して50℃以上400℃以下、好ましくは80℃以上400℃以下に加熱を行うことにより複屈折パターンを作製することができる。
なお、複屈折パターンはレターデーションが実質的に0である領域を含んでいてもよい。例えば、2種類以上の反応性基を有する液晶性化合物を用いて光学異方性層を形成した場合において、パターン露光で未露光であると上記ベークによってレターデーションが消失し、実質的に0となる場合がある。
【0090】
ベークを行った複屈折パターン材料の上には、新たな複屈折パターン作製用転写材料を転写し、その後に新たにパターン露光とベークを行ってもよい。この場合、一度目及び二度目の露光条件で組み合わせて、二度目のベーク後に残るレターデーションの値を効果的に変えることができる。この手法は、例えば互いに遅相軸の方向が異なる複屈折性を持つ二つの領域を互いに重ならない形で作りたい時に有用である。
【0091】
[熱書き込み]
上記のように、未露光領域にベークを行うことによってレターデーションを実質的に0にすることが可能であるため、複屈折パターンを有する物品には、パターン露光に基づくパターンに加えて、熱書き込みによるパターンが含まれていてもよい。熱書き込みはサーマルヘッド又は、赤外線やYAGなどのレーザ描画を用いて行うことができる。例えば、サーマルヘッドを有する小型のプリンタとの組み合わせを使用することができ、ダンボール箱などに熱書き込みする赤外線やYAGレーザをそのまま用いることもできる。
【0092】
[複屈折パターンに積層される機能性層]
複屈折パターン作製材料は、上述のように露光及びベークを行って複屈折性パターンを作製された後に、さらに様々な機能を持った機能性層を積層され、複屈折パターンを有する物品となっていてもよい。機能性層としては、特に限定されるものではないが、例えば、表面層、印刷層、などがあげられる。
【0093】
[表面層]
表面層としては、反射光沢を制御する散乱層、表面の傷つきを防止するハードコート層、指紋付着やマジックなどの落書きを防止する撥水撥油層、帯電によるごみつきを防止する帯電防止層などが挙げられる。散乱層としては、エンボスによる表面凹凸層、粒子などのマット剤を含むマット層が好ましい。ハードコート層としては、少なくとも1種類の二官能以上の重合性モノマーを含む層を光照射または熱により重合した層が好ましい。表面層は、パターン形成前の複屈折パターン作製材料にすでに設けられていてもよい。複屈折パターン作製材料においては、表面層は、例えば、添加剤層として、設けておくことができる。
【0094】
[保護層]
特に半透過半反射層を用いた態様の場合、光学干渉によるムラが顕在化することがある。そのため、光学異方性層との屈折率差を小さくするため、屈折率が1.4〜1.7で膜厚が30μm以上、好ましくは50μm以上、特に好ましくは100μm以上の保護層を光学的に接触した状態で貼合することにより、ムラを低減できるので好ましい。光学的な接触には、屈折率マッチングオイルや粘着剤、接着剤を用いることができるが、簡便性から粘着剤または接着剤が好ましい。
【0095】
[駆動型光学異方性層]
上述のように、複屈折性層は駆動型光学異方性層であってもよい。
駆動型光学異方性層とは、異方性光学結晶や液晶材料を用い、電気光学効果あるいは磁気光学効果などにより、偏光の位相を面内で電気的または磁気的に制御される層を指す。本発明においては、駆動型光学異方性層として、一般に広く用いられている液晶セルにおける液晶層と同様の層を用いることが好ましい。
【0096】
液晶セルは、一般的には一定の間隔に保たれた2枚の電極基板間に、電圧により分子が配向する液晶性化合物を挟持してなるセルである。本発明の物品においては、表示側の電極層はITOや導電性高分子などの透明電極層が用いられ、非表示側には透明電極層もしくは半透過半反射電極層が用いられる。前記の半透過半反射層が半透過半反射電極であってもよい。すなわち、この場合、本発明の物品は、半透過半反射層(電極)、複屈折性層(駆動型光学異方性層)、透明電極層及び偏光層をこの順で含んでいればよい。半透過半反射電極は、アルミニウムや銀など十分な厚みでは金属反射性を有する層を薄く形成したものや、ITOなどの高屈折率透明導電層とSiO2などの低屈折率透明層を交互積層したものなどを用いることができる。なお、非表示側に透明電極を用いた場合は、別途半透過半反射層が必要となる。
透明電極層としてはTFT基板を用いてもよい。
【0097】
電極層と駆動型光学異方性層の間には駆動液晶分子の配向のための配向層などの他の層が含まれていてもよい。また、電極層と半透過半反射層との間又は電極層と偏光層との間に、カラーフィルタ層などの他の層が含まれていてもよい。
【0098】
駆動型光学異方性層における液晶分子を駆動させるためには、電極配線を縦横にめぐらしたパッシブマトリクス方式や、TFTなどのスイッチング素子を画素ごとに形成したアクティブマトリクス方式のいずれかを用いることができる。ディスプレイに用いられるSTN、TN、VA、OCB、ECB、ブルー相などほとんど全ての液晶セルモードを本発明における駆動型光学異方性層として用いることができるが、面内の位相差を制御する観点から、ECB、OCB、VA、ブルー相が好ましい。
【0099】
IPSモードについては、上下に電極を配置するのでなく、片側に櫛型電極を2列配置して平行電界によって駆動するセルであり、一般的な液晶セルの構成と異なっている。IPSモードは面内の位相差の値を変化させないため、本発明においては表示上の制約があるが、非表示側に半透過半反射層を形成していれば用いることは可能である。
【0100】
[本発明の物品の応用]
本発明の物品は、透明である窓ガラスなどの面において、その片側のみに特定の情報を与えたい場合に有用である。例えば、本発明の物品を透明な窓に貼付することにより、片側に対象顧客がいて、反対側には顧客でない人がいる場合、顧客側にのみ必要な表示を行うことができる。より具体的な例としては、オフィスビルの窓に用いた場合、外側の顧客には広告が表示されるが、オフィス内部からは広告を見えないようにすることができる。
また、本発明の物品をサングラス、スキーゴーグルなど眼鏡類のレンズ面に設けることによって、使用者の視界を損なうことなく、レンズ面に広告又は装飾などを施すことが可能である。
【実施例】
【0101】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0102】
(配向層用塗布液AL−1の調製)
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、配向層用塗布液AL−1として用いた。
──────────────────────────────────―
配向層用塗布液組成(%)
──────────────────────────────────―
ポリビニルアルコール(PVA205、クラレ(株)製) 3.21
ポリビニルピロリドン(Luvitec K30、BASF社製) 1.48
蒸留水 52.10
メタノール 43.21
──────────────────────────────────―
【0103】
(光学異方性層用塗布液LC−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−1として用いた。
LC−1−1は2つの反応性基を有する液晶化合物であり、2つの反応性基の片方はラジカル性の反応性基であるアクリル基、他方はカチオン性の反応性基であるオキセタン基である。
【0104】
──────────────────────────────────―
光学異方性層用塗布液組成(%)
──────────────────────────────────―
重合性液晶化合物(LC−1−1) 32.83
水平配向剤(LC−1−2) 0.35
カチオン系光重合開始剤
(CPI100−P、サンアプロ株式会社製) 0.66
重合制御剤
(IRGANOX1076、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
0.07
メチルエチルケトン 48.09
シクロヘキサノン 20.00
──────────────────────────────────―
【0105】
【化6】
【0106】
(添加剤層OC−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、転写接着層用塗布液OC−1として用いた。ラジカル光重合開始剤RPI−1としては2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルスチリル)1,3,4−オキサジアゾールを用いた。
【0107】
──────────────────────────────────―
添加剤層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────―
バインダ(B−1) 27.44
ラジカル光重合開始剤(RPI−1) 0.49
メガファックF−176PF(大日本インキ化学工業(株)製) 4.65
メチルエチルケトン 67.42
──────────────────────────────────―
【0108】
【化7】
【0109】
(実施例1:複屈折パターン作製材料P−1の作製)
厚さ50μmのポリエチレンナフタレートフィルム(テオネックスQ83、帝人デュポン(株)製)の上にアルミニウムを蒸着し、透過率35%、反射率54%の半透過半反射層つき支持体を作製した。そのアルミニウムを蒸着した面上にワイヤーバーを用いて配向層用塗布液AL−1を塗布、乾燥した。乾燥膜厚は0.5μmであった。配向層をラビング処理した後、次いで、ワイヤーバーを用いて光学異方性層用塗布液LC−1を塗布、膜面温度80℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、空気下にて160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射してその配向状態を固定化して厚さ1.5μmの光学異方性層を形成した。この際用いた紫外線の照度はUV−A領域(波長320nm〜400nmの積算)において1000mW/cm2、照射量はUV−A領域において800mJ/cm2であった。光学異方性層のレターデーションは150nmであり、20℃で固体のポリマーで、耐MEK(メチルエチルケトン)性を示した。最後に、光学異方性層の上に添加剤層用塗布液OC−1を塗布、乾燥して0.8μmの添加剤層を形成し、複屈折パターン作製材料P−1を作製した。
このP−1をレーザ走査露光によるデジタル露光機(INPREX IP−3600H、富士フイルム(株)製)にて図12に示すように、0mJ/cm2、5mJ/cm2、10mJ/cm2、125mJ/cm2の露光量を用いてパターン露光し、次いで230℃のクリーンオーブンで1時間の焼成を行い、複屈折パターンを有する物品P−2を作製した。複屈折パターン作製材料P−1を用いて作製した物品において、最終的(焼成後)に得られるレターデーションと、パターン露光時の露光量との関係を示すグラフを図13に示す。
このパターン化光学異方性層上に、透過軸を光学異方性層の遅相軸に対して45度になるようにヨウ素系偏光板(HLC−5618、サンリッツ(株)製)を貼合し、本発明の実施例1の光学物品を作製した。作製した光学物品は、偏光板を貼合した側からはパターンを見ることができるが、反対側からはパターンが見えなかった。
【0110】
[実施例2]
(液晶セルの作製)
厚さ0.5mmのガラス基板上に、100x100の配線を形成し、1x1mmの大きさの画素電極としてアルミニウムを用いて電極部が透過率35%、反射率54%の半透過半反射層となるようにして液晶セル基板を作製した。対向基板として同じく厚さ0.5mmのガラス基板上にITO電極を形成し、パッシブ駆動方式のガラス基板を得た。次いで両方の基板上に溶剤可溶型のポリイミド前駆体であるSE7210(日産化学製)を塗布した後、200℃、30分加熱してポリイミド配向膜を形成した。さらに、2枚の基板をラビングした後、ラビング方向がパラレルとなるようにして10μmのフィルムスペーサを用いて液晶セルを作製し、ZLI−2359(Δn=0.0512、メルク社製)を封入してECBセルを作製した。ECBセルの半透過半反射電極と反対側に、ラビング方向に対して透過軸が45度となるように偏光板(HLC−5618、サンリッツ(株)製)を貼合し、実施例2の液晶セルを用いた光学物品を作製した。この液晶セルに電圧を加えることによりレターデーションが画素ごとに制御でき、偏光板側からは各画素にレターデーションに応じた発色を確認でき、反対側からはパターンが見えなかった。
【符号の説明】
【0111】
101 パターン化光学異方性層
11 (仮)支持体
12 光学異方性層
13 半透過半反射層
14 配向層
15 粘着層
16 印刷層
17 力学特性制御層
18 転写層
19 添加剤層又は表面層
20 偏光層
【技術分野】
【0001】
本発明は片側面のみに像を与える透明物品に関する。本発明は特に複屈折パターンにより形成される像を片側面のみに与える透明物品に関する。
【背景技術】
【0002】
面を挟んで一方の側からは特定の表示を視認でき、反対側からは実質的にその表示を視認できない透明物品は、当面ガラス面などに応用して、広告表示などに有用である。この目的のために、ホログラムやハーフミラー、パール光沢などの特殊な視覚効果を有する光学物品が用いられている。例えば、特許文献1には、半透過半反射のハーフミラーを用いて、背後の光源の切り替えで広告表示とミラー表示を切り替える電飾看板が開示されている。また、特許文献2には、孔明きプラスチックフィルムを用いた自動車用広告として、明るい外部からは暗い内部は見えずに広告だけが見え、暗い内部からは貫通孔を通して明るい外部の景色が透けて見えるような指向性の広告媒体が開示されている。いずれも光学物品の透過率と反射率を制御し、光学物品を挟んで両側の明るさのバランスを変えることにより、特殊な視覚効果を実現している。
【0003】
しかし、いずれの場合も、環境の明るさによってのみ指向性を制御しているため、例えば昼と夜のように環境の明るさが変化すると、指向性に影響が出る。しかも特許文献2のような両側に観察者がいる透過型の態様では、特に暗い内部からは明るい外部は透けて見えるだけで、広告の表示は邪魔になってしまう。従って、特許文献2の広告をビルの窓広告に用いた場合、通常の印刷による広告と比較すればビル内部からの視認性は向上しているが、完全に見えなくすることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−10195号公報
【特許文献2】特開平11−65497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、一方の観測側からは特定の反射表示が見え、反対側からはその反射表示が見えない透明物品の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは複屈折性の異なる領域をパターン状に有する光学異方性層に半透過半反射層と偏光層を組み合わせることにより、層の片側でのみ視認できる像を与えることが可能であることを見出し、この知見を基に本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[17]を提供するものである。
【0007】
[1]光の透過率が30〜95%であり、かつ反射率が30〜95%である半透過半反射層、複屈折性層、及び偏光層をこの順で含み、
前記複屈折性層に対し、前記偏光層と反対側には偏光層を含まない物品。
[2]前記複屈折性層が、複屈折性が異なる領域をパターン状に2つ以上有するパターン化光学異方性層である[1]に記載の物品。
[3]複屈折性が異なる領域がレターデーション又は遅相軸の異なる領域である[2]に記載の物品。
[4]前記パターン化光学異方性層が、レターデーションが30〜1000nmである領域及びレターデーションが30nm未満である領域を少なくとも含む[2]に記載の物品。
【0008】
[5]前記パターン化光学異方性層が少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含む組成物から形成された層である[2]〜[4]のいずれか一項に記載の物品。
[6]前記パターン化光学異方性層が下記工程を含む方法で形成されたものである[5]に記載の物品:
(1)液晶性化合物を含む組成物からなる層を加熱または光照射する工程;
(2)工程(1)で得られた層にパターン露光を行う工程;
(3)工程(2)で得られた層を50℃以上400℃以下に加熱する工程。
【0009】
[7]前記複屈折性層が駆動型光学異方性層である[1]に記載の物品。
[8]前記駆動型光学異方性層が、電圧印加によって駆動される液晶性化合物を含む層であり、
前記電圧印加のための2つの電極層を有する[7]に記載の物品。
[9]前記2つの電極層の1つが、前記半透過半反射層である[8]に記載の物品。
[10]前記偏光層がヨウ素または二色性色素をドープしたポリビニルアルコールを含むフィルムを一軸延伸して作成した吸収型偏光層であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか一項に記載の物品。
【0010】
[11]偏光層が複屈折性の異なる二種のポリマー層を、20〜300nmの膜厚で交互に積層して一軸延伸した反射型偏光層であることを特徴とする(DBEF)[1]〜[9]のいずれか一項に記載の物品。
[12]偏光層がコレステリック液晶による円偏光選択反射層であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか一項に記載の物品。
[13]偏光層が重合性液晶性化合物と二色性色素の混合物を、液晶性を用いて配向させ、次いで重合させて配向を固定化させた層であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか一項に記載の物品。
【0011】
[14]偏光層が液晶性二色性色素を液晶性を用いて配向させた層であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか一項に記載の物品。
[15]広告に用いられる[1]〜[14]のいずれか一項に記載の物品。
[16][1]〜[15]のいずれか一項に記載の物品が貼付された窓ガラス。
[17][1]〜[15]のいずれか一項に記載の物品が貼付された眼鏡類。
【発明の効果】
【0012】
本発明により複屈折パターンを利用した片側面のみに像を与える透明物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】パターン化光学異方性層を有する物品の構成を模式的に示す図である。
【図2】添加剤層を有するパターン化光学異方性層を有する物品の構成を模式的に示す図である。
【図3】パターン化光学異方性層を複数有する物品の構成を模式的に示す図である。
【図4】基本的な複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図5】支持体または仮支持体上に光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図6】配向層を有する複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図7】粘着層を有する複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図8】印刷層を有する複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図9】力学特性制御層および転写層を有する転写型複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図10】添加剤層を有する複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図11】光学異方性層を複数有する複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図12】実施例で行ったパターン露光のパターンと各領域の露光量を示す図である。
【図13】レターデーションと、パターン露光時の露光量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0015】
本明細書において、レターデーション又はReは面内のレターデーションを表す。面内のレターデーション(Reθ)は透過または反射の分光スペクトルから、Journal of Optical Society of America,vol.39,p.791−794(1949)や特開2008−256590号公報に記載の方法を用いて位相差に換算する、スペクトル位相差法を用いて測定することができる。前記文献は透過スペクトルを用いた測定法であるが、特に反射の場合は、光が光学異方性層を2回通過するため、反射スペクトルより換算された位相差の半分を光学異方性層の位相差とすることができる。Re0は正面レターデーションである。Re(λ)は測定光として波長λnmの光を用いたものである。本明細書におけるレターデーション又はReは、R、G、Bに対してそれぞれ611±5nm、545±5nm、435±5nmの波長で測定されたものを意味し、特に色に関する記載がなければ545±5nmまたは590±5nmの波長で測定されたものを意味する。
【0016】
本明細書において、角度について「実質的に」とは、厳密な角度との誤差が±5°未満の範囲内であることを意味する。さらに、厳密な角度との誤差は、4°未満であることが好ましく、3°未満であることがより好ましい。レターデーションについて「実質的に」とは、レターデーションが±5%以内の差であることを意味する。さらに、レターデーションが実質的に0とは、レターデーションが5nm以下であることを意味する。また、屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域の任意の波長を指す。なお、本明細書において、「可視光」とは、波長が400〜700nmの光のことをいう。
【0017】
[片側面のみに像を与える透明物品]
本発明の物品は、少なくとも、半透過半反射層、複屈折性層、及び偏光層をこの順で含む。
半透過半反射層は光を反射する性質と、光を透過する性質を同時に有する層である。このような層の利用により他の実質的に透明な層を組み合わせた物品において透明性が保たれるとともに、複屈折性層及び偏光層との組み合わせで反射による像を与えることができる。半透過半反射層は電極層などの機能を併せて有していてもよい。
【0018】
複屈折性層は後述のパターン化光学異方性層又は駆動型光学異方性層であればよい。
本発明の物品においては、偏光層を通過した偏光が複屈折性層を通過、半透過半反射層で反射して再び複屈折性層を通過して面内で異なる楕円偏光が出射され、観測点側でさらに前記偏光層を通過して情報が可視化される。
上記の原理からわかるように、複屈折層からみて半透過半反射層側から観測した場合は上記の情報は確認できず、全面を実質的に透明にすることができる。なお本明細書において透明とは、約30%以上の光線透過率を有することを意味する。
そして、前記複屈折性層に対し、前記偏光層と反対側には偏光層を含まないことによって、片側面のみに像を与える。さらに好ましくは、前記半透過半反射層に対し、前記偏光層と反対側には偏光層を含まない。
【0019】
[半透過半反射層]
半透過半反射層は透過率が30〜95%、反射率が30〜95%であればよい。半透過半反射層は金属層の厚みを薄くする方法が安価で製造できるので好ましい。一方、金属による半透過半反射層は吸収を有しているため、吸収なしに透過率と反射率を制御できる誘電体多層膜は光利用効率の観点から好ましい。半透過半反射層は、電極層を兼ねていてもよい。また半透過半反射層は、例えば、複屈折層としてパターン化光学異方性層を用いる際、複屈折パターン形成後の複屈折パターンを有する物品上に形成してもよく、複屈折パターン形成前の複屈折パターン作製材料に既に設けられていてもよい。
【0020】
[偏光層]
偏光層とは、任意の偏光状態の偏光の透過率と、前記偏光と位相が180度異なる偏光の透過率とに10%以上の差を有する層のことを指す。一般的にはヨウ素や二色性色素をポリビニルアルコール(PVA)などの高分子フィルムにドープし、水中または空気中で一軸に延伸して二色性のヨウ素錯体または二色性色素を延伸方向に配向させた吸収型偏光層が用いられる。吸収型偏光層の他には、複屈折性の異なる二種のポリマー層を、20〜300nmの膜厚で交互に積層して一軸延伸した反射型偏光層(DBEF)やコレステリック液晶による円偏光層;重合性液晶性化合物と二色性色素との混合物を、液晶性を用いて配向させ、次いで重合させて配向を固定化させた層;液晶性二色性色素を液晶性を用いて配向させた層;複屈折性の異なる二種のポリマー層を相分離させて一軸延伸した散乱型偏光層;及び高分子分散液晶フィルムを一軸延伸した散乱型偏光層などが挙げられる。
【0021】
[複屈折性層]
複屈折性層はパターン化光学異方性層又は駆動型光学異方性層であればよい。それぞれについて、以下説明する。
【0022】
[パターン化光学異方性層]
本明細書において「パターン化光学異方性層」とは複屈折性が異なる領域をパターン状に有する光学異方性層を意味する。複屈折性の異なる領域は2つ以上であればよいが、3つ以上であることがより好ましい。複屈折性が同一である個々の領域は連続的形状であっても非連続的形状であってもよい。
パターン化光学異方性層は例えば後述の複屈折パターン作製材料を用いて容易に作製することができるが、複屈折性が異なる領域をパターン状に有する層であれば作製方法は特に限定されない。
【0023】
本明細書においては「複屈折パターン」との用語も用いる。複屈折パターンとは、広義には複屈折性の異なる2つ以上のドメインが2次元の面内または3次元的にパターニングされたものである。特に2次元の面内において、複屈折性は面内で屈折率が最大となる遅相軸の方向と、ドメイン内のレターデーションの大きさの2つのパラメータにより定義される。例えば液晶性化合物による位相差フィルムなどにおける面内の配向欠陥や厚み方向の液晶の傾斜分布も広義には複屈折パターンと言えるが、狭義にはあらかじめ決めたデザインなどを基に、意図して複屈折性を制御してパターン化したものを複屈折パターンと定義することが望ましい。本発明における複屈折パターンは、遅相軸の方向は一定であり、レターデーションの大きさの異なるドメインによって形成されたパターンでもよく、遅相軸の方向が異なるドメインによって形成されたパターンでもよく、遅相軸の方向及びレターデーションの大きさの双方が異なるドメインによって形成されたパターンでもよい。この中で、本発明における複屈折パターンは、遅相軸の方向は一定であり、レターデーションの大きさの異なるドメインによって形成されたパターンであることが好ましい。複屈折パターンは特に記載しない限り、複数層有していてもよく、複数層のパターンの境界は一致していても異なっていてもよい。
【0024】
図1〜3は、パターン化光学異方性層を有する本発明の物品の例である。この場合、物品は半透過半反射層13、パターン化光学異方性層101、偏光層20をこの順で有する。 図では複屈折性が異なる領域を101A、101B、101Cとして例示する。
【0025】
図1(a)に示す構成はそれぞれ、最も基本的なパターン化光学異方性層を有する物品の構成である。このような構成の物品を、粘着剤や接着剤を用いて対象とする窓ガラス面などに貼付して使用することができる。
【0026】
図1(b)は支持体を有する例である。
図1(c)に示す例は配向層14を有する例である。パターン化光学異方性層101として、液晶性化合物を含む溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、加熱または光照射して重合固定化した光学異方性層から形成された層を用いる場合、配向層14は液晶性化合物の配向を助けるための層として機能する。
図2(a)、(b)に示すパターン化光学異方性層を有する物品は、添加剤層を有するものである。添加剤層には、後述のように光学異方性層に可塑剤や光重合開始剤を後添加するための層、表面保護のためのハードコート層、指紋付着やマジックペンによる落書き防止の撥水層、タッチパネル性を付与する導電層、赤外線を透過させないことにより赤外線カメラで見えなくする遮蔽層、左右円偏光のいずれかを通過させないことにより円偏光フィルタで画像を見えなくする円偏光選択反射層、光学異方性層に感光性を付与する感光層、RFIDのアンテナとして作用するアンテナ層、水没した際に変色するなどして水没を検知する水没検知層、温度により色の変わるサーモトロピック層、像の色を制御する着色フィルタ層、磁気記録性を付与する磁性層等の他、マット層、散乱層、潤滑層、感光層、帯電防止層、レジスト層などとしての機能を有するものが含まれる。
【0027】
図3(a)に示すパターン化光学異方性層を有する物品は、パターン化光学異方性層を複数有するものである。複数の光学異方性層の面内遅相軸は同一でも異なっていてもよいが、異なっていることが好ましい。複数の光学異方性層の複屈折性が異なる領域は互いに同一でも異なっていてもよい。図には示さないが、パターン化光学異方性層は3つ以上あってもよい。レターデーションあるいは遅相軸の向きが互いに異なる光学異方性層を2層以上設け、それぞれに独立したパターンを与えることにより、さらに多彩な像を形成することができる。
【0028】
[複屈折パターン作製材料]
以下に、パターン化光学異方性層を有する物品の形成法の一例である、複屈折パターン作製材料を用いる方法について説明する。
複屈折パターン作製材料は複屈折パターンを作製する為の材料であり、所定の工程を経ることでパターン化光学異方性層を有する物品を作成することができる材料を指す。複屈折パターンの形成法については、特に記載がない限りこの方法に限定されない。
【0029】
複屈折パターン作製材料は通常、フィルム、またはシート形状であればよい。複屈折パターン作製材料は、光学異方性層又は、光学異方性層のみからなるもののほか、様々な副次的機能を付与することが可能である機能性層を有しているものであってもよい。機能性層としては、支持体、配向層、半透過半反射層、粘着層などが挙げられる。また、転写材料として用いられる複屈折パターン作製用材料、又は転写材料を用いて作製された複屈折パターン作製材料などにおいて、仮支持体、力学特性制御層を有していてもよい。
以下で示す構成の複屈折パターン作製材料を粘着剤や接着剤を用いて、半透過半反射層、偏光層、その他、対象とする物品に光学異方性層を転写することも可能である。
【0030】
図4(a)に示す複屈折パターン作製材料は、自己支持性を有する光学異方性層12のみからなる複屈折パターン作製材料の例である。
光学異方性層は複屈折性を有する層であり、一軸または二軸延伸されたポリマー層や配向した液晶性化合物を固定化した層、配向が揃った有機または無機単結晶層などにより形成されていればよい。光学異方性層としては、フォトマスクによる露光あるいはデジタル露光などのパターン露光や、ホットスタンプやサーマルヘッド、赤外線レーザ露光などのパターン加熱、針やペンによって機械的に加圧またはせん断を加える触針描画、反応性化合物の印刷などにより、光学異方性を任意に制御する機能を有することができる層が好ましい。そのような機能を有する光学異方性層は、後述の方法などにより、パターン化光学異方性層を得ることが容易であるからである。パターン形成のためには、フォトマスクによる露光あるいは走査露光などのパターン露光を用いることが好ましい。該パターニング工程に加えて必要に応じて熱や薬液による漂白、現像などと組み合わせてパターンを形成することもできる。この場合支持体の制約が少ないことから熱による漂白、現像が好ましい。図4(b)に示す複屈折パターン作製材料は、自己支持性を有する光学異方性層12に半透過半反射層13を付した例である。
【0031】
図5(a)、(b)は支持体上に光学異方性層12を有する例である。 図6(a)〜(c)に示す複屈折パターン作製材料は配向層14を有する例である。
図7(a)〜(d)は粘着層を有する複屈折パターン作製材料の例である。
図8(a)〜(d)は印刷層を有する複屈折パターン作製材料の例である。
【0032】
図9(a)〜(d)は力学特性制御層および転写層を有する転写型複屈折パターン作製材料の例である。
図10(a)〜(d)は添加剤層を有する複屈折パターン作製材料の例である。
図11(a)〜(d)に示す複屈折パターン作製材料は光学異方性層を複数有するものである。複数の光学異方性層の面内遅相軸は同一でも異なっていてもよいが、異なっていることが好ましい。図には示さないが、光学異方性層は3つ以上あってもよい。液晶性化合物を用いて光学異方性層を形成する場合、配向層があることが好ましいが、光学異方性層自体が配向層を兼ねることで図16(c)のように配向層を省略することもでき、さらに好ましい。転写型複屈折パターン作製材料を用いれば、複屈折パターンを有する層を複数有する物品の作製を容易に行うことができる。
【0033】
以下、複屈折パターン作製材料、それを用いたパターン化光学異方性層を有する物品の作製方法について、詳細に説明する。ただし、本発明はこの態様に限定されるものではなく、他の態様についても、以下の記載および従来公知の方法を参考にして実施可能であって、本発明は以下に説明する態様に限定されるものではない。
【0034】
[光学異方性層]
複屈折パターン作製材料における光学異方性層は、レターデーションを測定したときにレターデーションが実質的に0でない入射方向が一つでもある、即ち等方性でない光学特性を有する層である。
【0035】
複屈折パターン作製材料における光学異方性層としては、少なくとも1つのモノマーまたはオリゴマーおよびそれらを硬化させたものを含む層、少なくとも1つのポリマーを含む層、少なくとも1つの有機または無機単結晶を含む層などがあげられる。
ポリマーを含む前記光学異方性層は、複屈折性、透明性、耐溶媒性、強靭性および柔軟性といった異なった種類の要求を満たすことができる点で好ましい。該光学異方性層中のポリマーは未反応の反応性基を有することが好ましい。露光により未反応の反応性基が反応してポリマー鎖の架橋が起こるが、露光条件の異なる露光によってポリマー鎖の架橋の程度が異なり、その結果としてレターデーション値が変化して複屈折パターンが形成しやすくなると考えられるためである。
【0036】
光学異方性層は好ましくは20℃において、より好ましくは30℃において、さらに好ましくは40℃において固体であればよい。20℃において固体であると、他の機能性層の塗布や、支持体上への転写や貼合が容易であるからである。
他の機能性層の塗布を行う為、光学異方性層は耐溶媒性を有することが好ましい。本明細書において、「耐溶媒性を有する」とは対象の溶媒に2分間浸漬した後のレターデーションが浸漬前のレターデーションの30%から170%の範囲内に、より好ましくは50%から150%の範囲内に、最も好ましくは80%から120%の範囲内にあることを意味する。対象の溶媒としては水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N−メチルピロリドン、ヘキサン、クロロホルム、酢酸エチルの中から、好ましくはアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N−メチルピロリドンの中から、最も好ましくはメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、またはこれらの混合溶媒等があげられる。
【0037】
光学異方性層は20℃においてレターデーションが5nm以上であればよく、10nm以上10000nm以下であることが好ましく、20nm以上2000nm以下であることが最も好ましい。レターデーションが5nm以下では複屈折パターンの形成が困難である場合がある。レターデーションが10000nmを越えると、誤差が大きくなり実用できる精度を達成することが困難である場合がある。
【0038】
光学異方性層の製法としては特に限定されないが、少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、加熱または光照射して重合固定化して作製する方法;少なくとも2つ以上の反応性基を有するモノマーを重合固定化した層を延伸する方法;側鎖に反応性基を有するポリマーからなる層を延伸する方法;またはポリマーからなる層を延伸した後にカップリング剤等を用いて反応性基を導入する方法などが挙げられる。後述するように、光学異方性層は転写により形成されたものであってもよい。前記光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜10μmであることがさらに好ましい。
【0039】
[液晶性化合物を含有する組成物を配向固定化してなる光学異方性層]
光学異方性層の製法として少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、加熱または光照射して重合固定化して作製する場合について以下に説明する。本製法は、後述するポリマーを延伸して光学異方性層を得る製法と比較して、薄い膜厚で同等のレターデーションを有する光学異方性層を得ることが容易であり、好ましい。
【0040】
[液晶性化合物]
一般的に、液晶性化合物はその形状から、棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。本発明では、いずれの液晶性化合物を用いることもできるが、棒状液晶性化合物を用いることが好ましい。
なお、本明細書において、液晶性化合物を含む組成物から形成された層について記載されるとき、この形成された層において液晶性を有する化合物が含まれる必要はない。例えば、前記低分子液晶性化合物が熱、光等で反応する基を有しており、結果的に熱、光等で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失ったものが含まれる層であってもよい。また、液晶性化合物としては、2種以上の棒状液晶性化合物、2種以上の円盤状液晶性化合物、又は棒状液晶性化合物と円盤状液晶性化合物との混合物を用いてもよい。温度変化や湿度変化を小さくできることから、反応性基を有する棒状液晶性化合物または円盤状液晶性化合物を用いて形成することがより好ましく、少なくとも1つは1液晶分子中の反応性基が2以上あることがさらに好ましい。2種以上の液晶性化合物の混合物の場合、少なくとも1つが2以上の反応性基を有していることが好ましい。
【0041】
好ましくは、架橋機構の異なる2種類以上の反応性基を有する液晶性化合物を用い、条件を選択して2種類以上の反応性基の一部の種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有するポリマーを含む光学異方性層を作製するとよい。架橋機構としては縮合反応、水素結合、重合など特に限定はないが、2種以上のうち少なくとも一方は重合が好ましく、2種類以上の異なる重合を用いることがさらに好ましい。一般に架橋反応は、重合に用いられるビニル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基だけでなく、水酸基、カルボン酸基、アミノ基なども用いることができる。
【0042】
本明細書において、架橋機構の異なる2種類以上の反応性基を有する化合物とは、段階的に異なる架橋反応工程を用いて架橋させる化合物であり、各段階の架橋反応工程では、それぞれの架橋機構に応じた反応性基が官能基として反応する。また、例えば側鎖に水酸基を有するポリビニルアルコールのようなポリマーの場合で、ポリマーを重合する重合反応を行った後、側鎖の水酸基をアルデヒドなどで架橋させた場合は2種類以上の異なる架橋機構を用いたことになるが、本明細書において2種類以上の異なる反応性基を有する化合物というときは、好ましくは、支持体等の上に層を形成した時点において該層中で2種類以上の異なる反応性基を有する化合物であって、その後にその反応性基を段階的に架橋させることができる化合物であればよい。特に好ましい態様として2種以上の重合性基を有する液晶性化合物を用いることが好ましい。段階的に架橋させる反応条件として、温度の違い、光(照射線)の波長の違い、重合機構の違いのいずれでもよいが、反応を分離しやすい点から重合機構の違いを用いることが好ましく、用いる開始剤の種類によって制御することがさらに好ましい。重合機構としては、ラジカル重合性基とカチオン重合性基の組み合わせが好ましい。前記ラジカル重合性基がビニル基、(メタ)アクリル基であり、かつ前記カチオン重合性基がエポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基である組み合わせが反応性を制御しやすく特に好ましい。以下に反応性基の例を示す。
【0043】
【化1】
【0044】
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく 用いられる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。上記高分子液晶性化合物は、低分子の反応性基を有する棒状液晶性化合物が重合した高分子化合物である。棒状液晶性化合物の例としては、例えば、特開2008−281989号公報、特表平11−513019号公報(WO97/00600)および特表2006−526165号公報に記載のものが挙げられる。
【0045】
以下に、棒状液晶性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、一般式(I)で表される化合物は、特表平11−513019号公報(WO97/00600)に記載の方法で合成することができる。
【0046】
【化2】
【0047】
【化3】
【0048】
【化4】
【0049】
【化5】
【0050】
本発明の他の態様として、前記光学異方性層に円盤状液晶を使用した態様がある。前記光学異方性層は、モノマー等の低分子量の円盤状液晶性化合物の層または重合性の円盤状液晶性化合物の重合(硬化)により得られるポリマーの層であることが好ましい。前記円盤状液晶性化合物の例としては、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physicslett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルなどを挙げることができる。上記円盤状液晶性化合物は、一般的にこれらを分子中心の円盤状の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等の基(L)が放射線状に置換された構造であり、液晶性を示し、一般的に円盤状液晶とよばれるものが含まれる。ただし、このような分子の集合体が一様に配向した場合は負の一軸性を示すが、この記載に限定されるものではない。円盤状液晶性化合物の例としては特開2008−281989号公報の段落[0061]〜[0075]に記載のものが挙げられる。
液晶性化合物として、反応性基を有する円盤状液晶性化合物を用いる場合、水平配向、垂直配向、傾斜配向、およびねじれ配向のいずれの配向状態で固定されていてもよい。
【0051】
[重合性モノマー]
光学異方性層の形成に用いられる、液晶性化合物を含有する組成物には、液晶性化合物の架橋を促進するため重合性モノマーを添加してもよい。
重合性モノマーとしては、例えば、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有し、光の照射によって付加重合するモノマー又はオリゴマーを用いることができる。
そのようなモノマー及びオリゴマーとしては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有する化合物を挙げることができる。その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンやグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加した後(メタ)アクリレート化したもの等の多官能アクリレートや多官能メタクリレートを挙げることができる。
【0052】
更に特公昭48−41708号公報、特公昭50−6034号公報及び特開昭51−37193号公報に記載されているウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報及び特公昭52−30490号公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレー卜やメタクリレートを挙げることができる。
これらの中で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジぺンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジぺンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合性化合物B」も好適なものとして挙げることができる。
これらのモノマー又はオリゴマーは、単独でも、二種類以上を混合して使用してもよい。
【0053】
また、カチオン重合性モノマーを用いることもできる。例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、特開2001−40068号、特開2001−55507号、特開2001−310938号、特開2001−310937号、特開2001−220526号の各公報に例示されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
エポキシ化合物としては、以下の芳香族エポキシド、脂環式エポキシド及び脂肪族エポキシド等が挙げられる。
【0054】
芳香族エポキシドとしては、例えば、ビスフェノールA、あるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0055】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が挙げられる。
脂肪族エポキシドの好ましいものとしては、脂肪族多価アルコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリン或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0056】
また、本発明の組成物においては、カチオン重合性モノマーとして、単官能または2官能のオキセタンモノマーを用いることもできる。例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(東亜合成(株)製商品名OXT101等)、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン(同OXT121等)、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(同OXT211等)、ジ(1−エチル−3−オキセタニル)メチルエーテル(同OXT221等)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(同OXT212等)等を好ましく用いることができ、特に、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ(1−エチル−3−オキセタニル)メチルエーテルなどの化合物や、特開2001−220526号公報、同2001−310937号公報に記載されている公知のあらゆる官能または2官能オキセタン化合物を使用できる。
【0057】
[2層以上の光学異方性層]
液晶性化合物を含む組成物からなる光学異方性層を2層以上積層する場合、液晶性化合物の組み合わせについては特に限定されず、全て棒状性液晶性化合物からなる層の積層体、円盤状液晶性化合物を含む組成物からなる層と棒状性液晶性化合物を含む組成物からなる層の積層体、又は全て円盤状液晶性化合物からなる層の積層体のいずれであってもよい。また、各層の配向状態の組み合わせも特に限定されず、同じ配向状態の光学異方性層を積層してもよいし、異なる配向状態の光学異方性層を積層してもよい。
【0058】
[溶媒]
液晶性化合物を含有する組成物を、塗布液として、例えば支持体又は後述する配向層等の表面に塗布する場合の塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0059】
[配向固定化]
液晶性化合物の配向の固定化は、液晶性化合物に導入した反応性基の架橋反応により実施することが好ましく、反応性基の重合反応により実施することがさらに好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれるが、光重合反応がより好ましい。光重合反応としては、ラジカル重合、カチオン重合のいずれでも構わない。ラジカル光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。カチオン光重合開始剤の例には、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系等を例示する事ができ、有機スルフォニウム塩系、が好ましく、トリフェニルスルフォニウム塩が特に好ましい。これら化合物の対イオンとしては、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロフォスフェートなどが好ましく用いられる。
【0060】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。液晶性化合物の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、10mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、25〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は10〜1000mW/cm2であることが好ましく、20〜500mW/cm2であることがより好ましく、40〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは加熱条件下で光照射を実施してもよい。
【0061】
[偏光照射による光配向]
前記光学異方性層は、偏光照射による光配向で面内のレターデーションが発現あるいは増加した層であってもよい。偏光照射は、特開2009−69793号公報の段落「0091」〜「0092」の記載、特表2005−513241号公報(国際公開WO2003/054111)の記載などを参照して行うことができる。
【0062】
[ラジカル性の反応性基とカチオン性の反応性基を有する液晶化合物の配向状態の固定化]
前述したように、液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有することもまた好ましい。この場合、条件を選択して複数種類の反応性基の一部種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有するポリマーを含む光学異方性層を作製することが可能である。このような液晶性化合物として、ラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶性化合物(具体例としては例えば、前述のI−8〜I−15)を用いた場合に特に適した重合固定化の条件について以下に説明する。
【0063】
まず、重合開始剤としては重合させようと意図する反応性基に対して作用する光重合開始剤のみを用いることが好ましい。すなわち、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合にはラジカル光重合開始剤のみを、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合にはカチオン光重合開始剤のみを用いることが好ましい。光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜8質量%であることがより好ましく、0.5〜4質量%であることが特に好ましい。
【0064】
次に、重合のための光照射は紫外線を用いることが好ましい。この際、照射エネルギーおよび/または照度が強すぎるとラジカル性反応性基とカチオン性反応性基の両方が非選択的に反応してしまう恐れがある。したがって、照射エネルギーは、5mJ/cm2〜500mJ/cm2であることが好ましく、10〜400mJ/cm2であることがより好ましく、20mJ/cm2〜200mJ/cm2であることが特に好ましい。また照度は5〜500mW/cm2であることが好ましく、10〜300mW/cm2であることがより好ましく、20〜100mW/cm2であることが特に好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。
【0065】
また光重合反応のうち、ラジカル光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害され、カチオン光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害されない。従って、液晶性化合物としてラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶化合物を用いてその反応性基の片方種類を選択的に重合させる場合、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合には窒素などの不活性ガス雰囲気下で光照射を行うことが好ましく、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合には敢えて酸素を有する雰囲気下(例えば大気下)で光照射を行うことが好ましい。
【0066】
また、液晶性化合物としてラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶化合物を用いてその反応性基の片方の種類を選択的に重合させる場合において、その片方を選択的に重合させる手段として他方の重合性基に対応する重合禁止剤を用いることも好ましい。例えば、液晶性化合物としてラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶化合物を用いてそのカチオン性の反応基を選択的に重合させる場合にはラジカル性重合に対する重合禁止剤を少量加えることにより、その選択性を向上させることが可能である。このような重合禁止剤の使用量は、塗布液の固形分の0.001〜10質量%であることが好ましく、0.005〜5質量%であることがより好ましく、0.02〜1質量%であることが特に好ましい。例えばラジカル性重合に対する重合禁止剤としてはニトロベンゼン、フェノチアジン、ハイドロキノン等が挙げられる。また、一般に酸化防止剤として用いられるヒンダートフェノール類もラジカル性重合に対する重合禁止剤として有効である。
【0067】
[水平配向剤]
前記光学異方性層の形成用組成物中に、特開2009−69793号公報の段落「0098」〜「0105」に記載の、一般式(1)〜(3)で表される化合物および一般式(4)のモノマーを用いた含フッ素ホモポリマーまたはコポリマーの少なくとも一種を含有させることで、液晶性化合物の分子を実質的に水平配向させることができる。尚、本明細書において「水平配向」とは、棒状液晶の場合、分子長軸と透明支持体の水平面が平行であることをいい、円盤状液晶の場合、円盤状液晶性化合物のコアの円盤面と透明支持体の水平面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が10度未満の配向を意味するものとする。傾斜角は0〜5度が好ましく、0〜3度がより好ましく、0〜2度がさらに好ましく、0〜1度が最も好ましい。
水平配向剤の添加量としては、液晶性化合物の質量の0.01〜20質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.02〜1質量%が特に好ましい。なお、特開2009−69793号公報の段落「0098」〜「0105」に記載の一般式(1)〜(4)にて表される化合物は、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0068】
[延伸によって作製される光学異方性層]
光学異方性層はポリマーの延伸によって作製されたものでもよい。光学異方性層は少なくとも1つの未反応の反応性基を持つ事が好ましいが、このようなポリマーを作製する際にはあらかじめ反応性基を有するポリマーを延伸してもよいし、延伸後の光学異方性層にカップリング剤などを用いて反応性基を導入してもよい。延伸法によって得られる光学異方性層の特長としては、コストが安いこと、及び自己支持性を持つ(光学異方性層の形成及び維持に支持体を要しない)ことなどが挙げられる。
【0069】
[2層以上の光学異方性層]
上記のように複屈折パターン作製材料は、光学異方性層を2層以上有してもよい。2層以上の光学異方性層は法線方向に互いに隣接していてもよいし、間に別の機能性層を挟んでいてもよい。2層以上の光学異方性層は互いにほぼ同等のレターデーションを有していてもよく、異なるレターデーションを有していてもよい。また遅相軸の方向が互いにほぼ同じ方向を向いていてもよく、異なる向きを向いていてもよい。遅相軸の方向が互いにほぼ同じ方向を向いている2層以上の光学異方性層を用いることによって、大きなレターデーションを有するパターンを作製することができる。
【0070】
光学異方性層を2層以上含む複屈折パターン作製材料を作製する方法としては、複屈折パターン作製材料上に光学異方性層を直接形成する、別の複屈折パターン作製材料を転写材料として用いて複屈折パターン作製材料上に光学異方性層を転写するなどの方法が挙げられる。このうち複屈折パターン作製材料を転写材料として用いて複屈折パターン作製材料上に光学異方性層を転写する方法がより好ましい。
【0071】
[光学異方性層の後処理]
作製された光学異方性層を改質するために、様々な後処理を行ってもよい。後処理としては例えば、密着性向上の為のコロナ処理や、柔軟性向上の為の可塑剤添加、保存性向上の為の熱重合禁止剤添加、反応性向上の為のカップリング処理などが挙げられる。また、光学異方性層中のポリマーが未反応の反応性基を有する場合、該反応性基に対応する重合開始剤を添加することも有効な改質手段である。例えば、カチオン性の反応性基とラジカル性の反応性基を有する液晶性化合物をカチオン光重合開始剤を用いて配向固定化した光学異方性層に対してラジカル光重合開始剤を添加することで、後にパターン露光を行う際の未反応のラジカル性の反応性基の反応を促進することができる。可塑剤や光重合開始剤の添加手段としては、例えば、光学異方性層を該当する添加剤の溶液に浸漬する手段や、光学異方性層の上に該当する添加剤の溶液を塗布して浸透させる手段などが挙げられる。また、光学異方性層の上に他の層を塗布する際にその層の塗布液に添加剤を添加しておき、光学異方性層に浸漬させる添加剤層を用いる方法もあげられる。この際に浸漬させる添加剤、特には光重合開始剤の種類や量により、後に述べる複屈折パターン作製材料へのパターン露光時の各領域への露光量と最終的に得られる各領域のレターデーションとの関係を調整し、所望する材料特性に近づけることが可能である。
【0072】
前記光学異方性層上に形成する添加剤層は、フォトレジストのような感光性樹脂層の他、反射光沢を制御する散乱層、表面の傷つきを防止するハードコート層、指紋付着やマジックなどの落書きを防止する撥水撥油層、帯電によるごみつきを防止する帯電防止層などの表面層と共用してもよい。感光性樹脂層としては、少なくとも1種のポリマーと少なくとも1種の光重合開始剤を含んでいることが好ましい。ポリマーとしては特に限定はないが、ハードコート性を持たせるためにはTgの高い材料が好ましい。
【0073】
[支持体]
複屈折パターン作製材料はそれぞれ、力学的な安定性を保つ目的で支持体を有してもよい。複屈折パターン作製材料における支持体がそのまま複屈折パターンを有する物品における支持体となっていてもよく、複屈折パターンを有する物品における支持体が複屈折パターン作製材料における支持体とは別に(複屈折パターン形成時または形成後に、複屈折パターン作製材料における支持体と代わって又は追加で)設けられてもよい。支持体としては特に限定はなく、剛直なものでもフレキシブルなものでもよい。剛直な支持体としては特に限定はないが表面に酸化ケイ素皮膜を有するソーダガラス板、低膨張ガラス、ノンアルカリガラス、石英ガラス板等の公知のガラス板、アルミ板、鉄板、SUS板などの金属板、樹脂板、セラミック板、石板などが挙げられる。フレキシブルな支持体としては特に限定はないがセルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーなどのプラスチックフィルムや紙、アルミホイル、布などが挙げられる。取扱いの容易さから、剛直な支持体の膜厚としては、100〜3000μmが好ましく、300〜1500μmがより好ましい。フレキシブルな支持体の膜厚としては、3〜500μmが好ましく、10〜200μmがより好ましい。支持体は後に述べるベークで着色したり変形したりしないだけの耐熱性を有することが好ましい。後述する反射層の代わりに、支持体自体が反射機能を有することもまた好ましい。
【0074】
[配向層]
既に説明したように、光学異方性層の形成には、配向層を利用してもよい。配向層は、一般に支持体もしくは仮支持体上又は支持体もしくは仮支持体上に塗設された下塗層上に設けられる。配向層は、その上に設けられる液晶性化合物の配向方向を規定するように機能する。配向層は、光学異方性層に配向性を付与できるものであれば、どのような層でもよい。配向層の好ましい例としては、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理された層、アゾベンゼンポリマーやポリビニルシンナメートに代表される偏光照射により液晶の配向性を発現する光配向層、無機化合物の斜方蒸着層、およびマイクログルーブを有する層、さらにω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライドおよびステアリル酸メチル等のラングミュア・ブロジェット法(LB膜)により形成される累積膜、あるいは電場あるいは磁場の付与により誘電体を配向させた層を挙げることができる。配向層としてはラビングの態様ではポリビニルアルコールを含むことが好ましく、配向層の上または下の少なくともいずれか1層と架橋できることが特に好ましい。配向方向を制御する方法としては、光配向層およびマイクログルーブが好ましい。光配向層としては、ポリビニルシンナメートのように二量化によって配向性を発現するものが特に好ましく、マイクログルーブとしてはあらかじめ機械加工またはレーザ加工により作製したマスターロールのエンボス処理が特に好ましい。
【0075】
[粘着層]
複屈折パターン作製材料は、後述のパターン露光及びベーク後に作製される複屈折パターンを有する物品をさらに他の物品に貼付するための粘着層を有していてもよい。粘着層の材料は特に限定されないが、複屈折パターン作製の為のベークの工程を経てた後でも粘着性を有する材料であることが好ましい。粘着層は、複屈折パターン形成後の複屈折パターンを有する物品上に形成してもよい。
【0076】
[塗布方法]
光学異方性層、所望により形成される配向層、などの各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、スリットコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。二以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
【0077】
[パターン化光学異方性層を有する物品の作製]
複屈折パターン作製材料に少なくとも、パターン露光及び加熱(ベーク)をこの順に行うことにより、パターン化光学異方性層を有する物品を作製することができる。
【0078】
[パターン露光]
本明細書において、パターン露光とは、複屈折パターン作製材料の一部の領域のみが露光されるように行う露光又は2つ以上の領域に互いに露光条件の異なる露光を意味する。互いに露光条件の異なる露光には、未露光(露光しないこと)が含まれていてもよい。パターン露光の手法としてはマスクを用いたコンタクト露光、プロキシ露光、投影露光などでもよいし、レーザや電子線などを用いてマスクなしに決められた位置にフォーカスして直接描画する走査露光を用いてもよい。前記露光の光源の照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、青色レーザ等が挙げられる。好ましい露光量としては通常3〜2000mJ/cm2程度であり、より好ましくは5〜1000mJ/cm2程度、最も好ましくは10〜500mJ/cm2程度である。パターン露光の解像度を1200dpi以上にすることにより、マイクロ印刷画像が形成でき、好ましい。解像度を高めるためには、パターン露光時にパターン化光学異方性層が固体であり、尚且つ厚みが10μm以下であることが必要であり、好ましい。厚み10μm以下で実現するためにはパターン化光学異方性層が重合性液晶化合物を含む層を配向固定化したものであることが好ましく、重合性液晶化合物が架橋機構の異なる2種類以上の反応性基を有することが特に好ましい。
【0079】
[パターン露光時の露光条件]
複屈折パターン作製材料の2つ以上の領域に互いに露光条件の異なる露光を行う際、「2つ以上の領域」は互いに重なる部位を有していても有していなくてもよいが、互いに重なる部位を有していないことが好ましい。パターン露光は複数回の露光によって行われてもよく、もしくは、例えば領域によって異なる透過スペクトルを示す2つ以上の領域を有するマスク等を用いて1回の露光によって行われていてもよく、又は両者が組み合わされていてもよい。すなわち、パターン露光時に、異なる露光条件で露光された2つ以上の領域を生ずるような形で露光が行われていればよい。走査露光を用いる場合には、露光領域によって光源強度を変える、露光領域の照射スポットを変える、走査速度を変えるなどの手法で領域ごとに露光条件を変えることが可能であり、好ましい。
【0080】
露光条件としては、特に限定はされないが、露光ピーク波長、露光照度、露光時間、露光量、露光時の温度、露光時の雰囲気等が挙げられる。この中で、条件調整の容易性の観点から、露光ピーク波長、露光照度、露光時間、および露光量が好ましく、露光照度、露光時間および露光量がさらに好ましい。パターン露光時に相異なる露光条件で露光された領域はその後、焼成を経て相異なる、かつ露光条件によって制御された複屈折性を示す。特に異なるレターデーション値を与える。すなわち、パターン露光の際に領域ごとに露光条件を調整することにより、焼成を経た後に領域ごとに異なる、かつ所望のレターデーションを有する複屈折パターンを作製することが可能である。なお、異なる露光条件で露光された2つ以上の露光領域間の露光条件は不連続に変化させてもよいし、連続的に変化させてもよい。
【0081】
[マスク露光]
露光条件の異なる露光領域を生じる手段の一つとして、露光マスクを用いた露光は有用である。例えば1つの領域のみを露光するような露光マスクを用いて露光を行った後に、温度、雰囲気、露光照度、露光時間、露光波長を変えて別のマスクを用いた露光や全面露光を行うことで、先に露光された領域と後に露光された領域の露光条件は容易に変更することができる。また、露光照度、あるいは露光波長を変えるためのマスクとして領域によって異なる透過スペクトルを示す2つ以上の領域を有するマスクは特に有用である。この場合、ただ一度の露光を行うだけで複数の領域に対して異なる露光照度、あるいは露光波長での露光を行うことができる。異なる露光照度の下で同一時間の露光を行う事で異なる露光量を与えることができることは言うまでもない。
【0082】
[走査露光]
走査露光は、例えば、光により所望の2次元パターンを描画面上に形成する描画装置を応用して行うことができる。
このような描画装置の代表的な例として、光ビーム発生手段から導出された光ビームを、光ビーム偏向走査手段を介して被走査体上に走査させることにより、所定の画像等を記録するように構成された画像記録装置がある。この種の画像記録装置では、画像等の記録に際して、光ビーム発生手段から導出される光ビームを画像信号に対応して変調させる(特開平7−52453号公報)。
【0083】
また主走査方向に回転するドラムの外周面に貼着された被走査体上に対してレーザビームを副走査方向に走査することで記録を行うタイプ、および、ドラムの円筒内周面に貼着された被走査体上に対してレーザビームを回転走査させることで記録を行うタイプ(特許2783481号)の装置も使用できる。
【0084】
さらに、描画ヘッドにより2次元パターンを描画面上に形成する描画装置を用いることもできる。例えば、半導体基板や印刷版の作製で用いられている、露光ヘッドにより所望の2次元パターンを感光材料等の露光面上に形成する露光装置が使用できる。このような露光ヘッドとして代表的なものは、多数の画素を有し所望の2次元パターンを構成する光点群を発生させる画素アレイを備えている。この露光ヘッドを、露光面に対して相対移動させながら動作させることにより、所望の2次元パターンを露光面上に形成することができる。
【0085】
上記のような露光装置としては、たとえば、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)を露光面に対して所定の走査方向に相対的に移動させるとともに、その走査方向への移動に応じてDMDのメモリセルに多数のマイクロミラーに対応した多数の描画点データからなるフレームデータを入力し、DMDのマイクロミラーに対応した描画点群を時系列に順次形成することにより所望の画像を露光面に形成する露光装置が提案されている(特開2006−327084号公報)。
【0086】
露光ヘッドが備える空間光変調素子としては、上記のDMDの以外の、空間光変調素子を使用することもできる。なお、空間光変調素子は、反射型および透過型のいずれでもよい。そのほかの空間光変調素子の例としては、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)タイプの空間光変調素子(SLM;Special Light Modulator)、電気光学効果により透過光を変調する光学素子(PLZT素子)、液晶光シャッタ(FLC)等の液晶シャッターアレイなどが挙げられる。なお、MEMSとは、IC製造プロセスを基盤としたマイクロマシニング技術によるマイクロサイズのセンサ、アクチュエータ、そして制御回路を集積化した微細システムの総称であり、MEMSタイプの空間光変調素子とは、静電気力を利用した電気機械動作により駆動される空間光変調素子を意味している。
【0087】
さらに、回折格子ライトバルブ(GLV;Grating Light Valve)を複数ならべて二次元状に構成したものを用いることもできる。
露光ヘッドの光源としては、上記したレーザ光源の他に、ランプ等も使用可能である。
【0088】
[2つ以上の光学異方性層のパターン露光]
複屈折パターン作製材料にパターン露光を行って得られた積層体の上に新たな複屈折パターン作製用転写材料を転写し、その後に新たにパターン露光を行ってもよい。この場合、一度目及び二度目ともに未露光部である領域(通常レターデーション値が一番低い)、一度目に露光部であり二度目に未露光部である領域、及び、一度目及び二度目ともに露光部である領域(通常レターデーション値が一番高い)でベーク後に残るレターデーションの値を効果的に変えることができる。なお、一度目に未露光部であり二度目に露光部である領域は、二度目の露光により一度目及び二度目ともに露光部である領域と同様となると考えられる。同様にして転写とパターン露光を交互に三度、四度と行うことにより、四つ以上の領域を作ることも容易にできる。この手法は、異なる領域の間で、露光条件だけでは与え得ないような差異(光学軸の方向の違いや非常に大きなレターデーションの差異など)を持たせたい時に有用である。
【0089】
[加熱(ベーク)]
パターン露光された複屈折パターン作製材料に対して50℃以上400℃以下、好ましくは80℃以上400℃以下に加熱を行うことにより複屈折パターンを作製することができる。
なお、複屈折パターンはレターデーションが実質的に0である領域を含んでいてもよい。例えば、2種類以上の反応性基を有する液晶性化合物を用いて光学異方性層を形成した場合において、パターン露光で未露光であると上記ベークによってレターデーションが消失し、実質的に0となる場合がある。
【0090】
ベークを行った複屈折パターン材料の上には、新たな複屈折パターン作製用転写材料を転写し、その後に新たにパターン露光とベークを行ってもよい。この場合、一度目及び二度目の露光条件で組み合わせて、二度目のベーク後に残るレターデーションの値を効果的に変えることができる。この手法は、例えば互いに遅相軸の方向が異なる複屈折性を持つ二つの領域を互いに重ならない形で作りたい時に有用である。
【0091】
[熱書き込み]
上記のように、未露光領域にベークを行うことによってレターデーションを実質的に0にすることが可能であるため、複屈折パターンを有する物品には、パターン露光に基づくパターンに加えて、熱書き込みによるパターンが含まれていてもよい。熱書き込みはサーマルヘッド又は、赤外線やYAGなどのレーザ描画を用いて行うことができる。例えば、サーマルヘッドを有する小型のプリンタとの組み合わせを使用することができ、ダンボール箱などに熱書き込みする赤外線やYAGレーザをそのまま用いることもできる。
【0092】
[複屈折パターンに積層される機能性層]
複屈折パターン作製材料は、上述のように露光及びベークを行って複屈折性パターンを作製された後に、さらに様々な機能を持った機能性層を積層され、複屈折パターンを有する物品となっていてもよい。機能性層としては、特に限定されるものではないが、例えば、表面層、印刷層、などがあげられる。
【0093】
[表面層]
表面層としては、反射光沢を制御する散乱層、表面の傷つきを防止するハードコート層、指紋付着やマジックなどの落書きを防止する撥水撥油層、帯電によるごみつきを防止する帯電防止層などが挙げられる。散乱層としては、エンボスによる表面凹凸層、粒子などのマット剤を含むマット層が好ましい。ハードコート層としては、少なくとも1種類の二官能以上の重合性モノマーを含む層を光照射または熱により重合した層が好ましい。表面層は、パターン形成前の複屈折パターン作製材料にすでに設けられていてもよい。複屈折パターン作製材料においては、表面層は、例えば、添加剤層として、設けておくことができる。
【0094】
[保護層]
特に半透過半反射層を用いた態様の場合、光学干渉によるムラが顕在化することがある。そのため、光学異方性層との屈折率差を小さくするため、屈折率が1.4〜1.7で膜厚が30μm以上、好ましくは50μm以上、特に好ましくは100μm以上の保護層を光学的に接触した状態で貼合することにより、ムラを低減できるので好ましい。光学的な接触には、屈折率マッチングオイルや粘着剤、接着剤を用いることができるが、簡便性から粘着剤または接着剤が好ましい。
【0095】
[駆動型光学異方性層]
上述のように、複屈折性層は駆動型光学異方性層であってもよい。
駆動型光学異方性層とは、異方性光学結晶や液晶材料を用い、電気光学効果あるいは磁気光学効果などにより、偏光の位相を面内で電気的または磁気的に制御される層を指す。本発明においては、駆動型光学異方性層として、一般に広く用いられている液晶セルにおける液晶層と同様の層を用いることが好ましい。
【0096】
液晶セルは、一般的には一定の間隔に保たれた2枚の電極基板間に、電圧により分子が配向する液晶性化合物を挟持してなるセルである。本発明の物品においては、表示側の電極層はITOや導電性高分子などの透明電極層が用いられ、非表示側には透明電極層もしくは半透過半反射電極層が用いられる。前記の半透過半反射層が半透過半反射電極であってもよい。すなわち、この場合、本発明の物品は、半透過半反射層(電極)、複屈折性層(駆動型光学異方性層)、透明電極層及び偏光層をこの順で含んでいればよい。半透過半反射電極は、アルミニウムや銀など十分な厚みでは金属反射性を有する層を薄く形成したものや、ITOなどの高屈折率透明導電層とSiO2などの低屈折率透明層を交互積層したものなどを用いることができる。なお、非表示側に透明電極を用いた場合は、別途半透過半反射層が必要となる。
透明電極層としてはTFT基板を用いてもよい。
【0097】
電極層と駆動型光学異方性層の間には駆動液晶分子の配向のための配向層などの他の層が含まれていてもよい。また、電極層と半透過半反射層との間又は電極層と偏光層との間に、カラーフィルタ層などの他の層が含まれていてもよい。
【0098】
駆動型光学異方性層における液晶分子を駆動させるためには、電極配線を縦横にめぐらしたパッシブマトリクス方式や、TFTなどのスイッチング素子を画素ごとに形成したアクティブマトリクス方式のいずれかを用いることができる。ディスプレイに用いられるSTN、TN、VA、OCB、ECB、ブルー相などほとんど全ての液晶セルモードを本発明における駆動型光学異方性層として用いることができるが、面内の位相差を制御する観点から、ECB、OCB、VA、ブルー相が好ましい。
【0099】
IPSモードについては、上下に電極を配置するのでなく、片側に櫛型電極を2列配置して平行電界によって駆動するセルであり、一般的な液晶セルの構成と異なっている。IPSモードは面内の位相差の値を変化させないため、本発明においては表示上の制約があるが、非表示側に半透過半反射層を形成していれば用いることは可能である。
【0100】
[本発明の物品の応用]
本発明の物品は、透明である窓ガラスなどの面において、その片側のみに特定の情報を与えたい場合に有用である。例えば、本発明の物品を透明な窓に貼付することにより、片側に対象顧客がいて、反対側には顧客でない人がいる場合、顧客側にのみ必要な表示を行うことができる。より具体的な例としては、オフィスビルの窓に用いた場合、外側の顧客には広告が表示されるが、オフィス内部からは広告を見えないようにすることができる。
また、本発明の物品をサングラス、スキーゴーグルなど眼鏡類のレンズ面に設けることによって、使用者の視界を損なうことなく、レンズ面に広告又は装飾などを施すことが可能である。
【実施例】
【0101】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0102】
(配向層用塗布液AL−1の調製)
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、配向層用塗布液AL−1として用いた。
──────────────────────────────────―
配向層用塗布液組成(%)
──────────────────────────────────―
ポリビニルアルコール(PVA205、クラレ(株)製) 3.21
ポリビニルピロリドン(Luvitec K30、BASF社製) 1.48
蒸留水 52.10
メタノール 43.21
──────────────────────────────────―
【0103】
(光学異方性層用塗布液LC−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−1として用いた。
LC−1−1は2つの反応性基を有する液晶化合物であり、2つの反応性基の片方はラジカル性の反応性基であるアクリル基、他方はカチオン性の反応性基であるオキセタン基である。
【0104】
──────────────────────────────────―
光学異方性層用塗布液組成(%)
──────────────────────────────────―
重合性液晶化合物(LC−1−1) 32.83
水平配向剤(LC−1−2) 0.35
カチオン系光重合開始剤
(CPI100−P、サンアプロ株式会社製) 0.66
重合制御剤
(IRGANOX1076、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
0.07
メチルエチルケトン 48.09
シクロヘキサノン 20.00
──────────────────────────────────―
【0105】
【化6】
【0106】
(添加剤層OC−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、転写接着層用塗布液OC−1として用いた。ラジカル光重合開始剤RPI−1としては2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルスチリル)1,3,4−オキサジアゾールを用いた。
【0107】
──────────────────────────────────―
添加剤層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────―
バインダ(B−1) 27.44
ラジカル光重合開始剤(RPI−1) 0.49
メガファックF−176PF(大日本インキ化学工業(株)製) 4.65
メチルエチルケトン 67.42
──────────────────────────────────―
【0108】
【化7】
【0109】
(実施例1:複屈折パターン作製材料P−1の作製)
厚さ50μmのポリエチレンナフタレートフィルム(テオネックスQ83、帝人デュポン(株)製)の上にアルミニウムを蒸着し、透過率35%、反射率54%の半透過半反射層つき支持体を作製した。そのアルミニウムを蒸着した面上にワイヤーバーを用いて配向層用塗布液AL−1を塗布、乾燥した。乾燥膜厚は0.5μmであった。配向層をラビング処理した後、次いで、ワイヤーバーを用いて光学異方性層用塗布液LC−1を塗布、膜面温度80℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、空気下にて160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射してその配向状態を固定化して厚さ1.5μmの光学異方性層を形成した。この際用いた紫外線の照度はUV−A領域(波長320nm〜400nmの積算)において1000mW/cm2、照射量はUV−A領域において800mJ/cm2であった。光学異方性層のレターデーションは150nmであり、20℃で固体のポリマーで、耐MEK(メチルエチルケトン)性を示した。最後に、光学異方性層の上に添加剤層用塗布液OC−1を塗布、乾燥して0.8μmの添加剤層を形成し、複屈折パターン作製材料P−1を作製した。
このP−1をレーザ走査露光によるデジタル露光機(INPREX IP−3600H、富士フイルム(株)製)にて図12に示すように、0mJ/cm2、5mJ/cm2、10mJ/cm2、125mJ/cm2の露光量を用いてパターン露光し、次いで230℃のクリーンオーブンで1時間の焼成を行い、複屈折パターンを有する物品P−2を作製した。複屈折パターン作製材料P−1を用いて作製した物品において、最終的(焼成後)に得られるレターデーションと、パターン露光時の露光量との関係を示すグラフを図13に示す。
このパターン化光学異方性層上に、透過軸を光学異方性層の遅相軸に対して45度になるようにヨウ素系偏光板(HLC−5618、サンリッツ(株)製)を貼合し、本発明の実施例1の光学物品を作製した。作製した光学物品は、偏光板を貼合した側からはパターンを見ることができるが、反対側からはパターンが見えなかった。
【0110】
[実施例2]
(液晶セルの作製)
厚さ0.5mmのガラス基板上に、100x100の配線を形成し、1x1mmの大きさの画素電極としてアルミニウムを用いて電極部が透過率35%、反射率54%の半透過半反射層となるようにして液晶セル基板を作製した。対向基板として同じく厚さ0.5mmのガラス基板上にITO電極を形成し、パッシブ駆動方式のガラス基板を得た。次いで両方の基板上に溶剤可溶型のポリイミド前駆体であるSE7210(日産化学製)を塗布した後、200℃、30分加熱してポリイミド配向膜を形成した。さらに、2枚の基板をラビングした後、ラビング方向がパラレルとなるようにして10μmのフィルムスペーサを用いて液晶セルを作製し、ZLI−2359(Δn=0.0512、メルク社製)を封入してECBセルを作製した。ECBセルの半透過半反射電極と反対側に、ラビング方向に対して透過軸が45度となるように偏光板(HLC−5618、サンリッツ(株)製)を貼合し、実施例2の液晶セルを用いた光学物品を作製した。この液晶セルに電圧を加えることによりレターデーションが画素ごとに制御でき、偏光板側からは各画素にレターデーションに応じた発色を確認でき、反対側からはパターンが見えなかった。
【符号の説明】
【0111】
101 パターン化光学異方性層
11 (仮)支持体
12 光学異方性層
13 半透過半反射層
14 配向層
15 粘着層
16 印刷層
17 力学特性制御層
18 転写層
19 添加剤層又は表面層
20 偏光層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の透過率が30〜95%であり、かつ反射率が30〜95%である半透過半反射層、複屈折性層、及び偏光層をこの順で含み、
前記複屈折性層に対し、前記偏光層と反対側には偏光層を含まない物品。
【請求項2】
前記複屈折性層が、複屈折性が異なる領域をパターン状に2つ以上有するパターン化光学異方性層である請求項1に記載の物品。
【請求項3】
複屈折性が異なる領域がレターデーション又は遅相軸の異なる領域である請求項2に記載の物品。
【請求項4】
前記パターン化光学異方性層が、レターデーションが30〜1000nmである領域及びレターデーションが30nm未満である領域を少なくとも含む請求項2に記載の物品。
【請求項5】
前記パターン化光学異方性層が少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含む組成物から形成された層である請求項2〜4のいずれか一項に記載の物品。
【請求項6】
前記パターン化光学異方性層が下記工程を含む方法で形成されたものである請求項5に記載の物品:
(1)液晶性化合物を含む組成物からなる層を加熱または光照射する工程;
(2)工程(1)で得られた層にパターン露光を行う工程;
(3)工程(2)で得られた層を50℃以上400℃以下に加熱する工程。
【請求項7】
前記複屈折性層が駆動型光学異方性層である請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記駆動型光学異方性層が、電圧印加によって駆動される液晶性化合物を含む層であり、
前記電圧印加のための2つの電極層を有する請求項7に記載の物品。
【請求項9】
前記2つの電極層の1つが、前記半透過半反射層である請求項8に記載の物品。
【請求項10】
前記偏光層がヨウ素または二色性色素をドープしたポリビニルアルコールを含むフィルムを一軸延伸して作成した吸収型偏光層であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項11】
偏光層が複屈折性の異なる二種のポリマー層を、20〜300nmの膜厚で交互に積層して一軸延伸した反射型偏光層であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項12】
偏光層がコレステリック液晶による円偏光選択反射層であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項13】
偏光層が重合性液晶性化合物と二色性色素の混合物を、液晶性を用いて配向させ、次いで重合させて配向を固定化させた層であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項14】
偏光層が液晶性二色性色素を液晶性を用いて配向させた層であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項15】
広告に用いられる請求項1〜14のいずれか一項に記載の物品。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の物品が貼付された窓ガラス。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の物品が貼付された眼鏡類。
【請求項1】
光の透過率が30〜95%であり、かつ反射率が30〜95%である半透過半反射層、複屈折性層、及び偏光層をこの順で含み、
前記複屈折性層に対し、前記偏光層と反対側には偏光層を含まない物品。
【請求項2】
前記複屈折性層が、複屈折性が異なる領域をパターン状に2つ以上有するパターン化光学異方性層である請求項1に記載の物品。
【請求項3】
複屈折性が異なる領域がレターデーション又は遅相軸の異なる領域である請求項2に記載の物品。
【請求項4】
前記パターン化光学異方性層が、レターデーションが30〜1000nmである領域及びレターデーションが30nm未満である領域を少なくとも含む請求項2に記載の物品。
【請求項5】
前記パターン化光学異方性層が少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含む組成物から形成された層である請求項2〜4のいずれか一項に記載の物品。
【請求項6】
前記パターン化光学異方性層が下記工程を含む方法で形成されたものである請求項5に記載の物品:
(1)液晶性化合物を含む組成物からなる層を加熱または光照射する工程;
(2)工程(1)で得られた層にパターン露光を行う工程;
(3)工程(2)で得られた層を50℃以上400℃以下に加熱する工程。
【請求項7】
前記複屈折性層が駆動型光学異方性層である請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記駆動型光学異方性層が、電圧印加によって駆動される液晶性化合物を含む層であり、
前記電圧印加のための2つの電極層を有する請求項7に記載の物品。
【請求項9】
前記2つの電極層の1つが、前記半透過半反射層である請求項8に記載の物品。
【請求項10】
前記偏光層がヨウ素または二色性色素をドープしたポリビニルアルコールを含むフィルムを一軸延伸して作成した吸収型偏光層であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項11】
偏光層が複屈折性の異なる二種のポリマー層を、20〜300nmの膜厚で交互に積層して一軸延伸した反射型偏光層であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項12】
偏光層がコレステリック液晶による円偏光選択反射層であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項13】
偏光層が重合性液晶性化合物と二色性色素の混合物を、液晶性を用いて配向させ、次いで重合させて配向を固定化させた層であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項14】
偏光層が液晶性二色性色素を液晶性を用いて配向させた層であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項15】
広告に用いられる請求項1〜14のいずれか一項に記載の物品。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の物品が貼付された窓ガラス。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の物品が貼付された眼鏡類。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−201240(P2011−201240A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72685(P2010−72685)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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