説明

片口金形ランプ用の特にニオブをベースとする線及び枠線並びに製造方法及び使用

ニオブ又はタンタル又はニオブ−タンタル合金をベースとし、片口金形ランプ用の高温に耐える線は、本発明によれば、線材料がリンで富化され、かつ焼なましされた状態へ変換される。この線は、少なくとも200MPaの耐力Rp 0.2又は少なくとも300MPaの引張強さRmを有する。片口金形ランプ用の枠線の製造のためには、ニオブ又はタンタル又それらの合金をベースとする金属を、リンでドープし、ドープされた金属を線に冷間加工し、この線を焼なましし、枠線に成形する。この枠線は、片口金形ランプ中の発光管のための同時の電流供給及び保持に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片口金形ランプ用の特にニオブベースの枠線(Gestelle)、枠線に使用されることができる線、発光管用の保持金具及び電流供給としてのそのような枠線の使用、並びに枠線を有する片口金形ランプの製造方法に関する。
【0002】
従来、片口金形ランプ用の枠線は、ニオブからなり、かつASTM B392による改良された設計においては、ジルコニウム1%を有するニオブ−ジルコニウム合金(NbZr1)からなる。枠線は、一方では、発光管を保持し、かつ他方では発光管に電流を供給する役割を有する。発光管に沿って通じている線によって引き起こされる影は望ましくない。商業用途のためには、発光管寸法指定に応じて1.2mm、1mm、0.72mm、0.5mm及び0.35mmの直径を有する線が存在する。
【0003】
米国特許(US-B1)第6,326,726号明細書には、ばねの硬さの(federhartem)合金鋼からなり、場合によりニッケルでめっきされた、線枠が記載されている。
【0004】
米国特許(US)第3,882,346号明細書には、片口金形ランプ用の金属枠が記載されている。
【0005】
本発明の課題は、材料を節約すること、影を減少させること、並びに高温に耐える線を提供することである。
【0006】
前記課題を解決するためには、枠線の耐力(Dehngrenze)又は引張強さが改善される。室温で測定されるこれらのパラメーターが増加する場合に、1000℃を上回る温度での材料のより高い安定性が規定される。影は確かに、W 2.5〜10質量%を有するはるかに高価なタンタル−タングステン合金からなるより細い枠線によって減少されることができたが、しかしながら枠線の質量は減少されることはできなかった。
【0007】
前記の解決手段は、独立請求項に記載されている。
【0008】
好ましい実施態様は、従属請求項の対象である。
【0009】
本発明は、片口金形ランプ用の減少された直径を有する枠線及びこれに適した線に関する。適した線は、1000℃を上回る温度での改善された機械的性質を有し、ニオブ又はタンタルをベースとする高温に耐える線であり、前記線は、線材料がリンで富化されており、かつ特に焼なましされた状態へ変換されていることによって達成されるか、もしくは少なくとも200MPaの耐力Rp 0.2又は少なくとも300MPaの引張強さRmによって特徴付けられている。
【0010】
本発明によれば、ニオブ、タンタル、及びニオブ又はタンタルをベースとする合金の耐力及び引張強さが、リンでのドーピングにより本質的に高められることができた。これは、内部応力が、焼なましによりもたらされる再結晶によって崩壊されている状態の材料に特に当てはまる。本発明によれば、焼なましにより応力除去され(entspannten)、ニオブベース又はタンタルベースの線又はこれから成形された枠線については、150MPaを上回り、特に200MPaを上回り、かつ好ましくは250MPaを上回る耐力Rp 0.2が提供される。本発明により達成可能な引張強さRmは応力除去された(焼なましされた)状態で、例えば直径0.5mmを有する枠線に関して測定して、250MPaを上回り、特に300MPaを上回る。本発明によれば、本願出願時にまだ公開されていない独国特許出願(DE)第10 2004 011 214号明細書に記載されたリンでドープされたニオブからなる線から、枠線が成形されることができる。この線又はこの線から成形された枠線は、本発明による機械的性質を達成するために、なお応力除去されなければならない。応力除去のためには、焼なましが適している。これに関連して、焼なましされた状態は、もはや焼なましされない線の内部応力の崩壊後の再結晶された状態を呼ぶ。改善された耐力及び引張強さに加えて、リンでドープされたニオブの機械的性質はさらに、成形が線をスプールに巻き取ることにより減少されていることで改善されている。
【0011】
それゆえ、ニオブ又はニオブをベースとする金属のリンドーピングによって、より高価なタンタルの極めて良好な機械的な高温特性さえも上回る。タンタルは、140MPaのより低い耐力Rp 0.2及び引張強さにも関わらず、より良好な機械的な高温特性を有する。タンタルをベースとする金属は、150MPaの耐力又は200の引張強さ以上で、さらにまた明らかに改善された1000〜2000℃での機械的性質を示す。高価なタンタルがニオブによって部分的に置換される場合には、最大温度耐性までの機械的性質は、ニオブ約50%の含分までほんの少しだけ変わる。70%のニオブ含分以上で、ニオブとの差異はごく僅かになる。
【0012】
別の合金成分、特に耐火金属は十分に有利な影響を与えうる。Zr、Hf、Ta、Mo及びWは、1000℃超でのニオブの機械的性質を改善するのに適している。Zr、Hf、Mo及びWについては、0.5〜2質量%が適していることがわかっている。そのような合金は、冷間加工可能(kalt umformbar)であり、かつMo又はWの含量が増加するにつれてこの性質を失う。
【0013】
Taは、合金成分として、1桁だけより高い含量の範囲内ではじめて、機械的性質の明らかな改善に寄与し、その際にTa及びニオブからなる合金は、個々の成分に比較して、特に高温領域で、常に改善された機械的性質を有する。
【0014】
ニオブ−タンタル合金も、又はタンタルそれ自体も、別の合金成分、特に耐火金属によって、十分に有利な作用を示しうる。Zr、Hf、Mo及びWは、1000℃超でのニオブ−タンタル合金又はタンタルそれ自体の機械的性質を改善するのに適している。Zr、Hf、Mo及びWについては、0.5〜2質量%が適していることがわかっている。そのような合金は、冷間加工可能であり、かつMo又はWの含量が増加するにつれてこの性質を失う。
【0015】
耐力及び引張強さへのこれらの金属の影響は、1質量%までの合金含分の場合に30MPaの範囲内である。リン100〜500ppmの付加的なドーピングは、100MPaを上回る耐力及び引張強さの増大を可能にする。
【0016】
耐力及び引張強さは、DIN EN 10002-1"室温での引張試験"に定義されている。
【0017】
室温で引抜きされた線(冷間加工)にとって決定的であるのは、さらに、線の再結晶のための仕上げ焼なましである。
【0018】
200〜500MPaの耐力又は300〜600MPaの引張強さを有するニオブ又はタンタルをベースとする線は、従来の直径の65〜75%及びそれ以下で安定性損失のない枠線が、25〜50質量%及びそれ以上の材料節約と同時に可能になるように改善された機械的な高温特性を有する。影は、線の直径と少なくとも同じ程度で減少される。その他の性質に関して、本発明による枠線は、公知の枠線に関して少なくとも同等である。タンタルをベースとする金属の場合に、1000℃超での良好な機械的性質のためには、150MPaの耐力又は250MPaの引張強さで既に十分である。
【0019】
Pでのドーピングの限界は、P含量の上昇に付随して現れる冷間加工性の低下によって与えられている。
【0020】
パーセントの桁でのP含量で、冷間加工も熱間加工も不可能である。
【0021】
枠線は、一方ではニオブ又はタンタルをベースとし、かつ他方では少なくとも200MPaの耐力又は少なくとも300MPaの引張強さを有するこれらの線から成形される。タンタルをベースとする金属の場合に、150MPaの耐力又は250MPaの引張強さで既に十分である。
【0022】
好ましくは、ニオブ又はタンタルをベースとするこれらの線は、次のものを含有する:
・リン、特に100〜2000ppm又は
・別の、特に4〜6亜族の、少なくとも1つの耐火金属、その際にZr、Hf、Mo又はWの含量は好ましくは0.5〜2質量%及び極めて特に好ましくは0.8〜1.5質量%である、又は
・Nb又はTa又はNb及びTa 少なくとも95質量%。
【0023】
線からの枠線の成形のためには、曲げ及び溶接が考えられる。枠線の実証された形は、ガロース形(galgenfoermig)である。
【0024】
類似して、リンドーピングを用いてタンタル及びタンタル−ニオブ合金の機械的性質は改善されることができる。
【0025】
本発明によれば、枠線の1000℃超での枠線の機械的性質が、本発明による金属合金を用いて、室温で測定される引張強さ又は耐力が達成される場合には、発光管をランプの寿命にわたってその位置で安定に保持するのに十分であることが見出された。本発明によれば、それゆえ、室温での性質それ自体ではなく、むしろ1000℃超でのこれらの材料の性質が重要である。ベース材料が、ニオブ又はタンタル又はそれらの合金からなり、これが好ましくは副次的な量のジルコニウム、ハフニウム、モリブデン又はタングステンと合金化されていることが決定的である。好ましくは、ベース材料は90質量%を大幅に上回る。
【0026】
本発明による枠線材料は好ましくは冷間加工可能である。この要件は、モリブデン、タングステン及びレニウムとの合金化を制限する。ニオブ及びタンタルからなる合金は、純金属に比較して改善された安定性を有する。しかしながら、この効果は、タンタル10質量%超のタンタル含量以上ではじめて、事実上重要である。
【0027】
リン100〜2000ppmでのベース金属の本発明によるドーピングは、以下によって行われる:
・P又はP含有母合金の添加による電子線溶融又は
・P又はP含有母合金の添加によるアーク溶融又は
・P又はP含有母合金の添加によるNb粉末からの焼結ブロック製造又は
・既にPでドープされたNb粉末からの焼結ブロック製造。
【0028】
以下に、本発明は、実施例に基づいて及び図に関連して明確に示される。
【0029】
図1は、片口金形放電ランプの断面図である。
【0030】
Nb 9400g及びP 600gを、保護ガス下でのアーク炉中で保護ガス下に母合金に溶融させる。この母合金は極めて硬く、かつこれは1600℃ですら加工不可能であるほど脆い。
【0031】
ニオブ溶融ブロックは、電子線溶融によるリン6%を含有する母合金の均質な添加下にPでドープされるので、リン100〜2000μg/gを有するニオブ合金となる。リン350±50ppmを有するこうして製造されたニオブ合金は室温で、0.84mm、0.72mm、0.5、0.35mm、0.24mm及び0.13mmの直径を有する線に引抜きされる。
【0032】
本発明による0.84mm線は、市販の1.2mm線を置換する;
本発明による0.72mm線は、市販の1mm線を置換する;
本発明による0.5mm線は、市販の0.72mm線を置換する;
本発明による0.35mm線は、市販の0.5mm線を置換する、
本発明による0.24mm線は、市販の0.35mm線を置換する;
本発明による0.13mm線は、特に軽い発光管用に提供される。
【0033】
形に関して、枠線は、標準の枠線に対して線直径を除いて不変のままである。それに応じて、使用された材料は60%に低下した。影は、22%だけ低下された。
【0034】
それぞれの線は焼なましされ、この際にエントロピー減少が起こるので、線は焼なましの際に再結晶される。再結晶された線は、本発明により所望の性質を有する。これらはガロース形の枠線に成形されることができる。このためには、これらは曲げられるか又は溶接される。ガロース形の枠線を、Mo箔7及び接続ピン2と溶接する。
【0035】
表 試験結果
【表1】

【0036】
P 350μg/gでのドーピングの例で、270MPaの耐力が焼なましされた状態で達成される。その場合に、1000℃を上回る温度での機械的性質は、枠線が、常用のNbZr1%枠線に比較して75%の直径で十分であるように改善される。
【0037】
2000μg/gまでのより高いP−ドーピングの場合にさらに、耐力のさらなる増加が達成されることができる。500MPaの耐力の場合に、65%未満への直径減少が実現可能である。これは、50質量%を上回る材料節約をもたらす。
【0038】
図1による構成は、ガラス球1の内部にどのようにセラミック発光管(Keramikbrenner)5が枠線4の片側で保持されるかを明確に示している。前記ガラス室中で支配的な作動条件は、発光管の高温、放出される光及び外部雰囲気条件の排除によって特徴付けられている。発光管自体は、接続ピン2及び6を介して電気的に及び機械的に接続される。接続ピン2及び6は枠線と同じ材料からなるか、又は選択的に不変のままである。モリブデン箔からのガラスダクト(Glasdurchfuehrung)7及びモリブデンからなる外部接続ピンは、気密な圧着接続との関係で使用される。枠線4及び接続ピン2は、一方では発光管の電流供給に及び他方では、発光管をランプ中で機械的に固定するか、もしくは保持するのに利用される。本発明によれば、このためには、電気的及び機械的な要件を満たし、ひいては材料節約をもたらし、そしてまた影の減少が付随して現れる、特に細い枠線が供給される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】片口金形放電ランプの断面図。
【符号の説明】
【0040】
1 ガラス球、 2 接続ピン、 4 枠線、 5 セラミック発光管、 6 接続ピン、 7 ガラスダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材料がリンで富化されており、かつ焼なましされた状態へ変換されていることを特徴とする、ニオブ又はタンタル又はニオブ−タンタル合金をベースとし、片口金形ランプ用の高温に耐える線。
【請求項2】
線が、少なくとも200MPaの耐力Rp 0.2又は少なくとも300MPaの引張強さRmを有することを特徴とする、ニオブをベースとする線から成形されている、片口金形ランプ用の枠線。
【請求項3】
枠線の材料がリンで富化されている、請求項2記載の枠線。
【請求項4】
線材料がリンで富化されていることを特徴とする、タンタル又はタンタル−ニオブ合金をベースとし、片口金形ランプ用の高温に耐える線。
【請求項5】
線が、少なくとも200MPaの耐力Rp 0.2又は少なくとも300MPaの引張強さRmを有する、請求項4記載の線。
【請求項6】
請求項1、4又は5記載の線からなる、枠線。
【請求項7】
0.1〜1mmの直径である、請求項2、3又は6記載の枠線。
【請求項8】
ニオブ又はタンタル又それらの合金をベースとする金属を、リンでドープし、ドープされた金属を線に冷間加工し、これを線として焼なましし、枠線に成形することを特徴とする、片口金形ランプ用の枠線の製造方法。
【請求項9】
同時に片口金形ランプ中の発光管に電流供給しかつ発光管を保持するための、ニオブ又はタンタル又はニオブ−タンタル合金をベースとし、リンでドープされた金属からなる枠線の使用。
【請求項10】
ランプ中に含まれている発光管を有する及び、発光管を片側で枠線で固定されており、その枠線の耐力Rp 0.2が少なくとも200MPaであるか又はその引張強さRmが少なくとも300MPaであることを特徴とする、ニオブをベースとする金属からなる枠線の使用、片口金形ランプの製造方法。
【請求項11】
線材料をリンで焼き入れ、焼き入れた材料を線に冷間加工し、線を応力除去し、特に焼なましすることを特徴とする、ニオブ又はタンタルをベースとする線の製造方法。

【公表番号】特表2009−504908(P2009−504908A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525493(P2008−525493)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【国際出願番号】PCT/EP2006/007952
【国際公開番号】WO2007/020014
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(390023560)ヴェー ツェー ヘレーウス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (42)
【氏名又は名称原語表記】W.C.Heraeus GmbH 
【住所又は居所原語表記】Heraeusstrasse 12−14, D−63450 Hanau, Germany
【Fターム(参考)】