物体を加工するシステムおよび方法
【課題】粒子ビームによって活性化された反応ガスを用いて物体を加工する加工システムであって、小型のガス供給装置を用いた加工システムを提供する。更に、加工中に物体を検査して、加工状態を監視及び制御できる加工システムを提供する。
【解決手段】システムは粒子ビームカラム26と、物体33を載置する物体ホルダ24と、ガス供給装置28とを備える。物体ホルダは、基台20と、該基台に対して移動可能な第1テーブル21と、該第1テーブルに対して移動可能な第2テーブル22と、該第2テーブルに対して回転可能な第3テーブル23とを備えて構成され、ガス供給装置28はカニューレ30とガスリザーバ31を備え、ホルダ32によって第1テーブル21に固定されている。粒子ビームカラム26で物体33を加工した後、該粒子ビームカラムを用いて物体から放出される電子を電子検出器17で検出し加工部の顕微鏡画像を取得する。
【解決手段】システムは粒子ビームカラム26と、物体33を載置する物体ホルダ24と、ガス供給装置28とを備える。物体ホルダは、基台20と、該基台に対して移動可能な第1テーブル21と、該第1テーブルに対して移動可能な第2テーブル22と、該第2テーブルに対して回転可能な第3テーブル23とを備えて構成され、ガス供給装置28はカニューレ30とガスリザーバ31を備え、ホルダ32によって第1テーブル21に固定されている。粒子ビームカラム26で物体33を加工した後、該粒子ビームカラムを用いて物体から放出される電子を電子検出器17で検出し加工部の顕微鏡画像を取得する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物体を加工するシステムおよび方法に関する。具体的には、本発明は、粒子ビームを用いて反応ガスを活性化する、物体を加工するシステムおよび方法に関する。さらに、本発明は、物体への材料の堆積、または、材料の物体からのアブレーションが、粒子ビームによって活性化された反応ガスによって行われるような、物体を加工するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野の状況では、物体表面の加工部分に反応ガスが供給され、その反応ガスの分子及び元素が物体表面の一部分に吸着し、また、その分子又は元素が活性化ビームによって活性化された表面において吸収されて、その表面で反応するか、または、物体表面の成分と反応することを誘発するような、材料加工システムが公知である。従って、使用された反応ガス及び物体表面に存在する材料に応じて、物体表面への材料の堆積または物体表面からの材料のアブレーションが選択的に行われる。よって、活性化ビームは、電子ビーム、イオンビーム、光線、または、これらの組み合わせを含み得る。記載した材料加工システムは、物体上における微細構造を加工または製造するために活用され得る。活用分野は、半導体産業における集積回路の製造のための光学リソグラフィか、または、ナノインプリントのためのスタンプの製造および加工に広がる。加工精度が不充分なので、微細構造に要求される精度を達成するために、しばしば、マスクをさらに加工することが必要とされる。そのようなマスクを正確に微細構造とすることは、より高次の集積をもたらし、より微細な構造の半導体部品を実現する。活性化ビームにより活性化された反応ガスを用いた加工システムのさらなる活用または応用は、微細構造の「直接書込」技術に関する。
【0003】
例えば、独国特許出願公開第10208043号A1明細書より、電子ビームが物体表面におけるガス供給配列によって供給されるガスを活性化し、材料の堆積およびアブレーションをそれぞれもたらすような、材料加工システムが公知である。よって、反応ガスの供給のために、カニューレが備えられ、それらは電子顕微鏡の物体フィールド付近に配置される。この物体フィールドも、物体の被加工位置に対応する。よって、このシステムのガス供給装置は、サイズが大きく複雑であり、また、反応ガスを供給し、加工後に反応ガスの不在下で電子ビームを用いて物体を検査する場合には反応ガスを供給しないようにするような、複雑な制御装置を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第10208043号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、粒子ビームによって活性化された反応ガスを用いて、物体上の所定の位置において、それぞれ、堆積とアブレーションを選択的に実施できる加工システム及び方法を提供することである。本発明の更なる目的は、局所的に所定の加工を行うことに加えて、物体を検査して、物体加工の進行および/または加工状態を、監視及び制御できる加工システムを提供することにある。
【0006】
本発明の更なる目的は、費用効果が高く、サイズが小さいガス供給装置を用いて、電子顕微鏡のような既存の粒子顕微鏡に簡潔な方法で一体化されている材料加工システムおよび材料加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの実施例によれば、物体を加工するためのシステムであって、該システムは、対物レンズを有する粒子ビームカラムと、対物レンズの前に被加工物体を配置するための物体ホルダと、対物レンズの前に配置された物体にガスを供給するためのカニューレを有するガス供給装置とを備える。よって、前記物体ホルダは、粒子ビームカラムに対して静止している基台と、該基台に備え付けられ、かつ、前記基台に対して第1方向に平行移動可能な第1テーブルと、前記第1テーブルに備え付けられ、かつ、前記第1テーブルに対して第2方向に平行移動可能な第2テーブルと、前記第2テーブルに備え付けられ、第2テーブルに対して、移動可能、特に回転可能な第3テーブルとを備える。従って、前記カニューレは前記第1テーブルに固定されている。
【0008】
カニューレは、円形、楕円のような輪形状、又は、方形もしくは矩形のような角のある形状、又は、不規則な断面形状を有する細管を備える。粒子ビームカラムは、荷電粒子ビームの生成のための粒子源と、粒子ビームを偏向させるための偏向および収束プレートと、粒子を加速させるための、電源に接続されたビーム管と、物体位置に粒子ビームを収束させることができる対物レンズと、電子、イオンまたは光子のような、物体から放出された粒子を検出する少なくとも1つの検出器を有する。特に、検出器は、物体から放出された電子を検出する電子検出器であってもよい。よって、用途に応じて、電子検出器は対物レンズ内部または外部に配置され得る。電子検出器は、二次電子および/または後方散乱電子のような、異なる特性を有する電子を検出するように構成されていてもよく、また、場合によってはエネルギーセレクタなどを用いて、複数の電子検出器が二次電子と後方散乱電子を別々に検出するように構成されていても良い。粒子ビームカラムの構成部品は、制御器によって制御され、1つの場所において物体加工を行い、顕微鏡画像、具体的には、物体の特定位置の電子顕微鏡画像を取得してもよい。従って、粒子ビームは物体表面全体を走査し、その一方で、検出器は物体から放出された粒子を検出して、顕微鏡画像を取得する。具体的には、1つまたは複数の電子検出器が物体から放出された電子を検出し、物体のその領域の電子顕微鏡画像を取得する。
【0009】
本発明の一実施例によると、物体は第3テーブルに取り付けられており、第3テーブルは第2テーブルに対して、第2テーブルは第1テーブルに対して、第1テーブルは基台に対してそれぞれ移動可能である。従って、これらの、第1、第2および第3テーブルは、テーブルの組み合わせとして構成されており、互いに対応して移動可能である。よって、第1テーブルは基台に対して第1方向に平行移動可能であり、第2テーブルは第1テーブルに対して第2方向に平行移動可能である。よって、第1方向と第2方向は互いに平行ではない。第2方向を第1方向に対して、実質的に直角に設定することが有利だが、傾斜角が30°、45°、60°でも良い。用途に応じて、第3テーブルの回転軸の方向を、粒子ビームカラムによる粒子ビームの方向と平行に設定することも有利であり得る。他の用途においては、上述の方向を平行とならないように設計することも有利であり得る。
【0010】
本発明の一実施形態によると、加工システムは、基台に対して第1テーブルを移動させるための第1アクチュエータを備える。この第1アクチュエータは制御器によって制御され、基台に対して第1テーブルを所望の位置におくことを可能にする。本用途におけるアクチュエータは、機械式、空気圧式またはモーター駆動式として設計され得る。特定の用途においては、アクチュエータは対応するテーブルを手動機械式に位置決めできるようにする。
【0011】
本発明の一実施形態によると、加工システムは、さらに第1テーブルに対して第2テーブルを移動させるための第2アクチュエータを備える。この第2アクチュエータも、制御器によって制御され、第1テーブルに対して第2テーブルを所望の位置におくことを可能にする。
【0012】
本発明の一実施形態によると、加工システムは、さらに第2テーブルに対して第3テーブルを移動させるための第3アクチュエータを備える。この第3アクチュエータも、制御器によって制御され、第2テーブルに対して第3テーブルを所望の位置におくことを可能にする。
【0013】
本発明の一実施形態によると、第1、第2および第3アクチュエータのうち少なくとも1つは、粒子ビームカラムの動作中に作動される。よって、動作中に、粒子ビームカラムの物体フィールドを物体表面の被加工部分に配置し、ガス供給装置のカニューレをこの部分に近づけ、また遠ざけることできる。よって、必ずしもガス供給装置のカニューレからの反応ガスの流れを制御することなく、物体の加工及び検査が、それぞれ実施できる。粒子ビームが物体の特定の場所に向けられると、ガス供給装置のカニューレを被加工位置付近に移動させることにより加工が行われ、ガス供給装置のカニューレを被加工位置から遠ざけることにより、物体の該当部分の検査が行われる。
【0014】
本発明の一実施形態によると、第1テーブルに対するカニューレの位置または/および方向は調節可能である。このようなカニューレの位置または/および方向の調節は、通常、粒子ビームカラムの動作中においては重要ではない。よって、第1テーブルに対する、このようなカニューレの位置変化または/および方向変化の影響は、基台に対する第1テーブルの位置変化の影響に比べて非常に小さく、おおよそ10〜100分の1程度である。このような、第1テーブルに対するカニューレの位置および/または方向の調節は、加工システムの初期調整のために行われる。
【0015】
本発明の一実施形態によると、ガス供給装置は物質リザーバを備え、カニューレを経て気体として供給され得る物質の予備を収容させることができる。よって、実質的に自立的なガス供給装置は、全体が真空容器内に備えられもよい。よって、真空容器外部に位置する貯留容器から真空容器内部に位置するガス供給装置へのガスパイプは不必要である。したがって、電子顕微鏡のような既存の粒子顕微鏡内に簡易な方法で内蔵されるような、コンパクトなガス供給装置がもたらされ得る。よって、本発明の一実施例によると、ガス供給装置のカニューレを通るガス流のための独立した制御器は不必要である。真空容器の外からのガス供給は、代替の技術的可能性である。物質リザーバは、例えば、カニューレを通るガス流を制御するために、その中の物質を適切な温度にするような、冷却および/または加熱する装置を備え得る。従って、供給されるガスは、昇華する固体、十分な蒸気圧を有する液体、および小さい開口を有する容器に保存されている気体から提供され得る。
【0016】
本発明の一実施形態によると、粒子ビームカラム及び物質リザーバは共通の真空容器内に配置されている。
【0017】
本発明の一実施形態によると、物質リザーバはカニューレと共に第1テーブルに備え付けられている。したがって、既存の電子顕微鏡に簡易な方法で内蔵され得る、特にコンパクトなガス供給装置が備えられている。さらに、物質リザーバは真空容器壁に備え付けられており、この場合、管のようなガスパイプが物質リザーバからカニューレに導かれている。
【0018】
本発明の一実施形態によると、ガス供給装置は物質リザーバとカニューレの間に配置されたロック弁を備えている。ロック弁は、真空容器外部の制御器により制御され、ロック弁が開いている間は、物体位置を加工し、固定弁が閉じている間は物体位置を検査するように制御できるか、これよりもさらに良好に制御されている。
【0019】
本発明の一実施形態によると、ロック弁は、粒子ビームカラムの動作中にロック弁を作動させるためのアクチュエータを備えている。また、開放された真空容器または真空容器外部のみをロック可能にする、機械式弁が備えられてもよい。
【0020】
本発明の一実施形態によると、加工方法がもたらされ、該方法は、カニューレの出口開口が近くに配置されている、粒子ビームカラムの物体フィールドに、物体の部分を配置することと、カニューレを経てガスを供給し、粒子ビームカラムを用いてそのガスを活性化することにより、物体を加工することと、カニューレを遠ざけ、カニューレの出口開口を粒子ビームカラムの物体フィールドから離間して配置することにより加工を完了させることと、粒子ビームカラムの物体フィールドに物体の一部を配置し、カニューレの出口開口を物体フィールドから離間して配置することと、粒子ビームカラムを用いて物体の部分の顕微鏡画像を取得することとを含む。
【0021】
従って、粒子ビームは物体の部分に向けられ、ガスノズルまたは出口開口は、充分な反応ガスがノズルから流れ出して物体部分に供給されるように調節される。よって、物体の部分は、粒子ビームカラムを用いてガスを活性化した後に加工され、材料のアブレーションおよび/または堆積を含む。物体の加工は、カニューレの出口開口が、粒子ビームが衝突するポイント付近に位置しないよう遠ざけることにより完了する。同時に、物体の他の部分が粒子ビームに当たるように、物体は遠ざけられる。物体の部分の検査を行うために、物体は再度その部分に粒子ビームが当たるように動かされる。物体付近で十分な量の反応ガスが存在しないため、その部分が加工されること無く、物体の部分についての、電子顕微鏡画像等の顕微鏡画像が取得できる。
【0022】
顕微鏡画像の取得は、特に、イオン又は電子ビームのような、粒子ビームによる物体全体の走査と、物体表面から放出された、イオン、電子、光子のような粒子の検出とを含む。
【0023】
本発明の一実施形態によると、物体加工中と電子顕微鏡画像取得中に、ガスがカニューレから排出される。よって、本発明の方法に従う本実施形態は、カニューレ外でのガス流の制御を必要としない。物体を加工するか、代わりに顕微鏡画像を取得するかの選択は、物体の部分に対してカニューレを移動させ、その部分に対して粒子ビームを移動させることにより行われる。
【0024】
本発明の一実施形態によると、カニューレは化学的に不活性の非磁化性材料から成り、また、カニューレは荷電を防ぐために表面が金属コーティングされ得る(例えば、金蒸着ガラスまたはテフロン(登録商標)チューブ)。
【0025】
本発明の一実施形態によると、本発明による加工システムが本発明による加工方法の実施に利用されている。
【0026】
本発明は、添付の図面を参照して、以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による加工システムの実施形態を示す。
【図2a】本発明による加工システムを異なる方向から見た図を示す。
【図2b】本発明による加工システムを異なる方向から見た図を示す。
【図2c】本発明による加工システムを異なる方向から見た図を示す。
【図3a】本発明による加工方法の1つの実施形態の1つのステップを示す。
【図3b】本発明による加工方法の1つの実施形態の1つのステップを示す。
【図3c】本発明による加工方法の1つの実施形態の1つのステップを示す
【図3d】本発明による加工方法の1つの実施形態の1つのステップを示す
【図3e】本発明による加工方法の1つの実施形態の1つのステップを示す
【図3f】本発明による加工方法の1つの実施形態の1つのステップを示す
【図4a】本発明によるガス供給装置の1つの実施形態を示す。
【図4b】本発明によるガス供給装置の1つの実施形態を示す。
【図5a】本発明による加工システムの実施形態において利用され得るカニューレの1つの実施形態を示す。
【図5b】本発明による加工システムの実施形態において利用され得るカニューレの1つの実施形態を示す。
【図5c】本発明による加工システムの実施形態において利用され得るカニューレの1つの実施形態を示す。
【図5d】本発明による加工システムの実施形態において利用され得るカニューレの1つの実施形態を示す。
【図6a】本発明による加工システムの1つの実施形態と、本発明による加工方法の実施形態における1つのステップを示す。
【図6b】本発明による加工システムの1つの実施形態と、本発明による加工方法の実施形態における1つのステップを示す。
【図6c】本発明による加工システムの1つの実施形態と、本発明による加工方法の実施形態における1つのステップを示す。
【図6d】本発明による加工システムの1つの実施形態と、本発明による加工方法の実施形態における1つのステップを示す。
【図6e】本発明による加工システムの1つの実施形態と、本発明による加工方法の実施形態における1つのステップを示す。
【図6f】本発明による加工システムの1つの実施形態と、本発明による加工方法の実施形態における1つのステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明の一実施例に従う、物体表面を加工するためのシステム1の断面図を示す。システム1は、カソードとして構成される電子ビーム電子源3を備え、軸15に沿って電子ビーム8を生成する。更に、システム1は集束/偏向要素19を備え、電子ビーム8を集束および偏向させる。電子ビーム8は、電極端子7を経て電源に接続するビーム管5の内部を進む。例えば+8kvの、所定の電位がビーム管5に印加される。ビーム管5に印加された電位は、電子源3とビーム管5との間および、物体33の表面33aに向かう電子を加速させるビーム管5の一部分に、電場を生成させる。よって、電子ビームは軸15に沿って進み、物体33の表面33aの加工位置35に電子ビーム管の物体フィールド75が位置するようになる。電子ビーム管の物体フィールドは、電子ビーム8が衝突するポイント75としても示される。
【0029】
電子ビームを集束させるために、集束レンズ11を電子ビーム8の周囲に環状に配置する。集束レンズ11は磁気レンズおよび静電液浸レンズの組み合わせである。よって、磁気レンズは内部ポールピースと外部ポールピース9を含む。コイル13での電流によって、ポールピース9,10を通る電磁流が誘導によって生成され、アキシャルギャップ16の領域に磁場が存在するようになる。この磁場が、図1では物体33の表面33aの加工位置が位置していた電子ビームカラムの物体フィールド75に電子ビーム8を集束させる。
【0030】
電極端子18’を経て電極版18は電源に接続され、電極版18に電位が印加され得る。ビーム管5と電極版18との間に適切な電圧を印加することで、電子源3から放出されて、最初に、電子源とビーム管5との間の電場によって加速された一次電子を、位置35における衝突に先立って、8keV以下の一次エネルギーまで減速できる。例えば、1keVのエネルギーは、反応ガスの供給において、物体33の表面33aのポイント35における材料の堆積またはアブレーションに適している。しかし、更に高いエネルギーも可能である。
【0031】
電極版18の更なる機能は、物体33の表面33aと電極版18との間で引力場を構築して、電子ビーム8の衝突時に物体33から放出される電子が電子検出器17に到達できるようにすることである。加工位置35の周囲において、物体33の表面33aの一部分を走査し、放出される電子を検出器17により検出することで、加工位置35の周囲の表面領域の電子顕微鏡画像を得ることができる。このようにして取得された電子顕微鏡画像は、物体の表面領域の加工状態を反映して、更なる加工を制御することを可能にする。
【0032】
本実施形態においては、電子検出器17はレンズ内検出器として構成されている。他の実施形態は、集束レンズ11の外部に電子検出器を備えている。電子を生成し、偏向し、集束し、検出するための上述した全ての要素が、電子ビームカラム26を形成している。
【0033】
加工および検査中においては、それぞれ、物体33は、本発明に従う加工システム1を用いており、物体33は物体ホルダ24によって保持されている。物体ホルダ24は、基台20、第1テーブル21、第2テーブル22、および、第3テーブル23を備える。アクチュエータ41を用いて、第1テーブル21は基台20に対して第1方向41’に沿って移動できる。よって、基台20は、典型的には真空容器壁を介して電子ビームカラム26に固定接続される。アクチュエータ42を介して、第2テーブル22は、第1テーブル21に対して第2方向42’に移動可能である。アクチュエータ43を介して、第3テーブル23は、第2テーブル22に対して軸43’について回転可能である。
【0034】
加工システム1は真空容器2によって封じられ、真空容器2は適切な真空ポンプにより排気される。アクチュエータ41、42および43は、真空容器2の外部の制御器に接続され、テーブル21、22、23の相互の移動および基台20に対する移動を行う。よって、このような移動は電子ビーム柱の操作中に有効である。アクチュエータ41、42および43に代えて、機械式駆動装置を備えてもよい。
【0035】
システム1はさらに、ガス供給装置28も備え得る。ガス供給装置28は、カニューレ出口開口30’、ガスリザーバ31、調節ねじ441、442、443と、ホルダまたはてこ装置32を備えている。調節ねじ441、442、443に代えて、他の調節要素も備え得る。よって、ガス供給装置28のホルダ32は、例えば、プラグホルダまたはバヨネットロック等により、固定的かつ取り外し可能に、物体ホルダ24の第1テーブルに接続されている。ガス供給装置28における、カニューレ30のカニューレ出口開口30’は、物体33の表面33aの加工位置35に向けられるか、または、加工位置35付近に配置され、加工位置35に選択的に反応ガスを供給する。
【0036】
図1に示した実施形態は、電子ビーム8が物体33の表面33aの加工位置35に衝突して、物体33の表面33aに吸着した反応ガス分子若しくは反応ガス元素、または、加工位置35周囲のスペースに存在する反応ガス分子または反応ガス元素を活性化して、加工位置35における材料の堆積またはアブレーションを行う。また、電子ビームによりイオン化した不活性ガス等を供給して、表面に衝突させた時に、表面の電荷中性化を誘発させる。
【0037】
ガス供給装置を局所的に調節して、カニューレ出口開口30’を物体33の表面33a上に電子ビームが衝突するポイント75の付近に配置させるために、例えば、調節ねじ441がカニューレ出口開口30’を第1方向41’に移動させ、調節ねじ442がカニューレ出口開口30’を第2方向42’に移動させ、調節ねじ443がカニューレ出口開口30’を第1および第2方向に垂直な第3方向zに移動させるように備えられている。このような調節は、平行移動および/または回転により行われる。しかし、典型的には調節ねじは真空容器2の外側からは制御できず、ただ、カニューレの出口開口30’を電子ビーム8の衝突ポイント75に対して初期調整できるように設けられている。しかし、他の実施形態では、調節ねじは外側から制御できる。実際に物体を加工または検査している間は、カニューレ出口開口は第1テーブル21に対して固定されている。
【0038】
図2a、2bおよび2cは、本発明による加工システムの更なる実施形態1aの互い直交する異方向から見た図を示す。図2aは図1に示した加工システムと同じ方向から見た場合の、加工システム1aの側面図である。両図面において同一または類似の構成部品は同じ参照符号を付し、このうちのいくつかの参照符号については、図2a、2bおよび2cでは同じ参照符号に「a」を付加して示している。しかし、真空容器は、参照符号2a’として示している。類似の構成部品の機能は、図1を参照して説明した機能に類似する。よって、これらの構成部品の説明は図1における説明と同様である。
【0039】
図2cは矢印2c加工システム1aを、図2aに示した矢印2cの方向から見た図を示す。図2bは本発明に従う加工システム1aを、図2cに示した矢印2bの方向から見た図を示す。さらに、図2a、2bおよび2cにおいては、真空容器2a’にウィンドウ102が設けられており、真空容器2a’の内部スペースを外側から検査できるようにする。
【0040】
図3a、3b、3c、3d、3eおよび3fは、本発明に従う加工方法の実施形態を示す。図3aと3b、3cと3d、3eと3fの各ペアは、図2aおよび2cと同様に、それぞれ、様々な方法ステップの最中における、本発明による加工システム1aの側面図と平面図を示す。
【0041】
図3aは、最初に、加工位置35は、電子ビームが加工位置35に衝突するように配置される。よって、物体33の位置35は、電子ビームカラム26の物体フィールド75に配置される。対応して、カニューレ出口開口30a’は、加工位置35付近に配置され、ガスをリザーバ31aから加工位置35に供給する。よって、加工位置35付近のスペース内に存在する反応ガスまたは加工位置35において物体表面に吸着されている反応ガスは、電子ビーム8によって活性化され、物体33の表面への材料の堆積を促すか、または、物体33の表面からの材料のアブレーションを促すか、または、物体33の表面における表面荷電の電荷補償を促すことになる。
【0042】
ここで、物体33の加工位置35の加工状態を評価することが、加工位置35の加工が望ましい形で進行しているか否か決定するために必要である。粒子ビームにより反応ガスを一斉に活性化せずに、これを可能にするために、第1テーブル21aは、基台20aに対して矢印121の方向に移動し、ガス供給装置28aのカニューレ30aのカニューレ出口開口30’aは、電子ビームが衝突するポイント75とは間隔をあけて配置されている。この移動後の状態を図3cに側面図として示し、図3dに平面図として示す。ガス供給装置28aおよびカニューレ出口開口30a’は、てこ装置32aを介して、第1テーブル21aに固定接続されているので、ガス供給装置28aの移動のためには、基台20aに対してテーブル21aが平行移動することが必要となる。第1テーブル21aの移動と同時に、そこに備え付けられている第2テーブル22aも、第2テーブル22aに備え付けられている第3テーブル23aも同様にして平行移動される。従って、物体33の加工位置35は電子ビーム8が衝突するポイント75からは間隔をあけた位置に移動される。
【0043】
物体を加工する方法における、次ステップにおいて、電子ビームが衝突するポイント75の付近に加工位置35を配置するために、第3テーブル23aは第2テーブル22a(図3eにおける矢印によって示される)に対して、加工位置35が電子ビーム8の衝突するポイント75と一致するまで回転される。このような回転後の状態は、図3eおよび3fに示す。図3a〜3fに示したような方法においては、回転角は合計180°になる。加工位置35の配置に依存して、この回転角は、180°より大きくも小さくもなる。図3e〜3fにより、第3テーブル23aを第2テーブル22a対して回転した後に、カニューレ出口開口30a’は、電子ビーム8の衝突ポイント75や、物体33の加工位置35から間隔をあけて位置していることが明確である。図3eおよび3fに示された、この配置において、物体33の加工位置35の電子顕微鏡画像は、電子ビーム8の走査により得られ、このとき、十分な量の反応ガスが存在しないので、電子ビーム8による走査は大きな反応を伴わない。
【0044】
第1テーブル21aを最初に平行移動して、次いで、第3テーブル23aを回転させることに代えて、第3テーブル23aを最初に回転し、次いで、第1テーブル21aを平行移動するか、または、両方の動作を同時に行ってもよい。
【0045】
電子顕微鏡画像が、物体33の加工場所35の、加工状態または加工の進行状況を判断するために考慮され得る。判断した加工状態または加工の進行状況に応じて、加工位置35における、材料の更なる堆積または加工位置35からの材料のアブレーションが必要となり得る。この場合、第3テーブル23aが第2テーブル22aに対して回転して、図3eおよび3fに示した状態から図3cおよび3dに示した状態に再度戻される。この状態から、第1テーブル21aは基台20aに対して平行移動して、図3aおよび3bに示した状態に戻される。この状態は、物体33の加工位置が電子ビーム8の衝突するポイント75に配置されることを特徴とし、ガス供給装置28aのカニューレ出口開口30a’は加工位置35付近に配置され、加工位置35付近のガスを電子ビーム8により活性化して、加工位置35を加工できるようにする。
【0046】
図3b、3dおよび3fに示した、本発明による加工システム1aの平面図のように、基台20aに対する第1テーブル21aの平行移動は、第1方向41’において行われ、第2テーブル22aの第1テーブル21aに対する平行移動は、第2方向42’において可能である。平行移動方向41’および42’が、互いに直交することは明白である。
【0047】
加工位置35の加工が完了すると直ぐに、更なる加工位置が以下の要領で到達する。第2テーブル22aが第1テーブル21aに対して方向42’に平行移動し、第3テーブル23aが第2テーブル22aに対して、z軸の周囲に、電子ビーム8の衝突するポイント75内に加工位置が配置されるまで回転する。このように、更なる加工位置35が到達するために、第1テーブル21aは基台20aに対して平行移動せず、ガス供給装置28aのカニューレ出口開口30a’は、電子ビームが衝突するポイント75に対して不変の位置に残り、これにより更なる加工位置付近に位置するようになる。よって、加工は、実質的には物体上の任意の位置に施され、そこおいて材料の堆積およびアブレーションが行われる。更に、この更なる加工位置は、第1テーブル21aを基台20aに対して平行移動し、第3テーブル23aを第2テーブル22aに対して回転させて、反応ガスが実質的に存在しない状態で電子ビーム8により検査されることにより、この更なる加工位置の電子顕微鏡画像が得られる。
【0048】
図4aおよび4bは、本発明によるガス供給装置の実施形態28bおよび28cの燃焼図を模式的に示す。図4aは、物質31b’を含む物質リザーバ31b、中間部58b、角部50bおよびカニューレ30bを備える、ガス供給装置28bを示す。ガス供給装置28bは、更に、てこ装置32bに接続された、接続部57bを備える。てこ装置32bはねじ62を用いて電子顕微鏡のサンプルホルダに備え付けられている。本発明の実施形態において、ガス供給装置28bは、それぞれ、図1および2に示す、実施形態1および1aの第1テーブル21および21aに取り付けられている。よって、ガス供給装置28bと、第1テーブル21および21aのそれぞれとの固定接続は確保されている。
【0049】
ガス供給装置28bのカニューレ30bは、非磁性化の導電性材料により成る。カニューレ出口開口30b’から延びる第1セクションにおいて、カニューレ30bの断面積は小さい。この部分のカニューレ30bの断面直径は約1〜2mmである。連結器54bに向かう第2セクションにおいては、カニューレの断面積は、約5〜8mmの直径を示すまでに大きくなる。
【0050】
結合部54bを用いて、カニューレ30bは、結合部51bを介して、角部50bに気密に接続されている。角部50bは、不活性かつ耐腐食性の材料(例えば、ステンレス鋼)より成る。角部50bを用いて、セッティング角度を大きくして、カニューレ30bが加工システム1および1aのそれぞれの構成部品を妨げないようにすることも可能である。角部によりもたらされる曲がり角は、0°〜90°であり得る。角部50bは、角部50bの結合部52bおよび中間部58bの結合部56bを介して、気密に中間部58bに接続されている。中間部58bは、中間部58bの結合部60bおよびリザーバ31bの結合部61bを介して、物質リザーバ31bに気密に接続され得る。
【0051】
中間部58bの環状開口59bと、角部50b内の環状開口53bと、カニューレ30bの環状開口55bを介して、物質リザーバ31b内に存在する物質31b’が、カニューレ出口開口30b’に到達する。この物質31b’は、物質リザーバ31b内に固体、液体または気体状態で保存されている。従って、この物質から生成された反応ガスが、カニューレ出口開口30b’付近に位置する物体加工位置に供給される。
【0052】
物質リザーバは不活性かつ耐腐食性の材料(例えば、ガラスまたはステンレス鋼)から成る。何時でも充填状況がモニターできるので、ガラスから成る物質リザーバが有利である。さらに、ガスの代わりまたはガスに加えて、前駆材料のような液体材料または固体材料が含まれても良い。往々にして、この前駆材料は容易に分解するので、ガラス製の物質リザーバ31bを活用すれば、この前駆材料の状態の監視は有利に可能になる。加工システム1および1aそれぞれにおける動作中に、固体の前駆材料はそれ自体の蒸気圧により蒸発し、環状キャビティにより形成される、僅か数センチメートルのガラスパイプ系を通じて、カニューレ出口開口30b’に向かって流れていく。
【0053】
ガス供給装置28bの全体の大きさは、最大拡張の方向に約5〜15cmである。ガス供給装置28bは大きさが小さいので、簡易に真空容器内部に設置できる。ガス供給装置に真空容器の外部からガスを供給するための、特別なフランジを設ける必要は無い。
【0054】
図4bは、本発明に従うガス供給システムの更なる実施形態28cを示す。類似の構成部品は、同様の参照符号により再度示され、これらの説明は図4aの説明と同様である。
【0055】
図4aに示したガス供給装置の実施形態28bの構成部品に加えて、図4bに示したガス供給装置28cは、物質リザーバ31cと中間部58cとの間に、結合部62cと66cによって気密に結合されている、ロック装置64cを備える。ロック装置64cは、例えば、不活性の耐腐食性材料(例えば、ステンレス鋼)から成る、ロッキングタップまたはロック弁を備え得る。ロック装置64cは、純粋に機械式、空気式または電気機械式にアクチュエータにより作動されるか、または、ミニチュアソレノイド弁であっても良い。それぞれ、真空容器2および2aの外から、ロック装置64cを制御することは信号線67を介して可能になる。
【0056】
図4aに示した、ガス供給装置28bと、図4bに示した、ガス供給装置28cの更なる違いは、ガス供給装置28cが、更に調節要素44c1、44c2、44c3を有するところにある。これらの調節要素は、カニューレ出口開口30c’が、互いに直交する、3つの空間方向461、462および463に平行移動することを可能にする。ガス供給装置28cを、加工システム1または1aの第1テーブル21または21aにおいて固定して、互いに直交する3つの空間方向に平行移動することにより、カニューレ出口開口30c’は電子ビーム8または8aの物体フィールド付近に配置され得る。加工システム1または1aの動作中に、調節要素44c1、44c2、44c3は作動される必要がない。特に、これらの調節要素の調節範囲は、基台20に対する第1テーブル21の平行移動範囲または基台20aに対する第1テーブル21aの平行移動範囲に比べて10〜50分の1である。
【0057】
図5a、5b、5cおよび5dは、それぞれ、本発明に従うガス供給装置のカニューレの実施形態30d、30e、30fおよび30gを示す。図示したカニューレは様々な名形状および大きさの、縦断面および横断面を有する。特に、カニューレ30fはカニューレ出口開口30f’の領域において断面が拡大し、カニューレ30gはカニューレ出口開口30g’の前の第1セクションにおいて屈曲する。
【0058】
ガス供給装置内に、外部制御器により制御される弁を設けた場合、電子顕微鏡画像の取得による加工位置の検査のために、加工中にガス供給装置からのガスの送り出しが外部から中断され、これにより、不必要な反応ガスの供給を伴わずに検査を行うことができる。更に、ガス供給システムは加熱ブロックまたはペルティエ素子を有する冷却ブロックを備え、ガスリザーバまたはガス供給装置全体を加熱または冷却できるようにする。よって、ガス流量の制御等のために、蒸気圧を増減させることが可能となる。よって、揮発性が非常に低い材料や、揮発性が非常に高いも利用できる。結合部として、気密結合(例えば、ルアーロックのような円錐形)を用いても良い。
【0059】
図6a、6b、6c、6d、6eおよび6fは、本発明に従う加工システムの一実施形態における、各ステップを示す。図6aと6b、6cと6d、6eと6fの各ペアは、図2aおよび2cと同様に、それぞれ、様々な方法ステップの最中における、本発明による加工システム1bの側面図と平面図を示す。加工システム1bは、図1および2に示した本発明に従う加工システムの実施形態1および1aと共通する、多くの構成部品を有する。しかし、本発明に従う加工システムの既述の実施形態に対する相違点は、物体33の保持のために物体ホルダ24bを備えることにある。実施形態1および1aの、ホルダ24および24aと同様に、物体ホルダ24bが基台20b、第1テーブル21b、第2テーブル22bおよび第3テーブル23bを備える。第1手テーブル21bは基台20bに対して第1方向41’に平行移動可能である。この平行移動は、アクチュエータによっても実施可能である。第2テーブル22bは、第1テーブル21bに対して第2方向42’に平行移動可能である。物体ホルダ24bは、本発明に従う実施形態1および1aの物体ホルダ24および24aのそれぞれに、実質的に対応する。しかし、図6a〜6fに示した実施形態においては、第3テーブル23bは第2テーブル22bに対して回転移動できないが、第2テーブル22bに対して第1方向41’に平行移動可能である。
【0060】
図6aは、最初に、加工位置35が、カニューレ出口開口30b’と、電子ビーム8bの衝突するポイント75の付近に位置することを示す。よって、物体33は加工位置35において、電子ビーム8bにより活性化された反応ガスにより加工され得る。
【0061】
加工位置35における加工状態を検査するために、図6cおよび6dに示した第2方法ステップにおいて、第1テーブル21bは基台20bに対して矢印121の方向に平行移動して、ガス供給装置28bのカニューレ30bの出口開口30b’が、電子ビーム8bが衝突するポイント75から離間して配置される。同時に、電子ビーム8bの衝突するポイント75は物体33の加工位置35から離間して配置される。
【0062】
図6eおよび6fに示した第3加工ステップにおいて、物体33の加工位置35を検査するために、電子ビーム8bの衝突するポイント75が物体33の加工位置35に達するまで、第3テーブル23bが第2テーブル22bに対して矢印121’の方向に平行移動される。よって、カニューレ出口開口30b’は電子ビーム8bが衝突するポイント75から離間して位置するようになる。従って、実質的に反応ガスが存在しない状況において、加工位置35の電子顕微鏡画像が取得され、加工位置35の加工状態を決定できる。図3a〜3fに示した、物体加工の方法と同様に、この電子顕微鏡画像は、加工位置35の更なる加工が必要か否か決定するために考慮される。
【0063】
本発明の更なる実施形態では、第3テーブルが第2テーブルに対して平行移動可能であり、かつ、第2テーブルに対して回転可能に取り付けられている。
【0064】
上述の物体を加工するためのシステムの実施形態において、図1、2a〜2c、4aおよび4bに示したガス供給装置28、28a、28cをそれぞれ代替して用いても良い。必要に応じて、図5a、5b、5cおよび5dのそれぞれに示した、カニューレ30d、30e、30fまたは30gが用いられても良い。
【技術分野】
【0001】
本発明は物体を加工するシステムおよび方法に関する。具体的には、本発明は、粒子ビームを用いて反応ガスを活性化する、物体を加工するシステムおよび方法に関する。さらに、本発明は、物体への材料の堆積、または、材料の物体からのアブレーションが、粒子ビームによって活性化された反応ガスによって行われるような、物体を加工するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野の状況では、物体表面の加工部分に反応ガスが供給され、その反応ガスの分子及び元素が物体表面の一部分に吸着し、また、その分子又は元素が活性化ビームによって活性化された表面において吸収されて、その表面で反応するか、または、物体表面の成分と反応することを誘発するような、材料加工システムが公知である。従って、使用された反応ガス及び物体表面に存在する材料に応じて、物体表面への材料の堆積または物体表面からの材料のアブレーションが選択的に行われる。よって、活性化ビームは、電子ビーム、イオンビーム、光線、または、これらの組み合わせを含み得る。記載した材料加工システムは、物体上における微細構造を加工または製造するために活用され得る。活用分野は、半導体産業における集積回路の製造のための光学リソグラフィか、または、ナノインプリントのためのスタンプの製造および加工に広がる。加工精度が不充分なので、微細構造に要求される精度を達成するために、しばしば、マスクをさらに加工することが必要とされる。そのようなマスクを正確に微細構造とすることは、より高次の集積をもたらし、より微細な構造の半導体部品を実現する。活性化ビームにより活性化された反応ガスを用いた加工システムのさらなる活用または応用は、微細構造の「直接書込」技術に関する。
【0003】
例えば、独国特許出願公開第10208043号A1明細書より、電子ビームが物体表面におけるガス供給配列によって供給されるガスを活性化し、材料の堆積およびアブレーションをそれぞれもたらすような、材料加工システムが公知である。よって、反応ガスの供給のために、カニューレが備えられ、それらは電子顕微鏡の物体フィールド付近に配置される。この物体フィールドも、物体の被加工位置に対応する。よって、このシステムのガス供給装置は、サイズが大きく複雑であり、また、反応ガスを供給し、加工後に反応ガスの不在下で電子ビームを用いて物体を検査する場合には反応ガスを供給しないようにするような、複雑な制御装置を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第10208043号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、粒子ビームによって活性化された反応ガスを用いて、物体上の所定の位置において、それぞれ、堆積とアブレーションを選択的に実施できる加工システム及び方法を提供することである。本発明の更なる目的は、局所的に所定の加工を行うことに加えて、物体を検査して、物体加工の進行および/または加工状態を、監視及び制御できる加工システムを提供することにある。
【0006】
本発明の更なる目的は、費用効果が高く、サイズが小さいガス供給装置を用いて、電子顕微鏡のような既存の粒子顕微鏡に簡潔な方法で一体化されている材料加工システムおよび材料加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの実施例によれば、物体を加工するためのシステムであって、該システムは、対物レンズを有する粒子ビームカラムと、対物レンズの前に被加工物体を配置するための物体ホルダと、対物レンズの前に配置された物体にガスを供給するためのカニューレを有するガス供給装置とを備える。よって、前記物体ホルダは、粒子ビームカラムに対して静止している基台と、該基台に備え付けられ、かつ、前記基台に対して第1方向に平行移動可能な第1テーブルと、前記第1テーブルに備え付けられ、かつ、前記第1テーブルに対して第2方向に平行移動可能な第2テーブルと、前記第2テーブルに備え付けられ、第2テーブルに対して、移動可能、特に回転可能な第3テーブルとを備える。従って、前記カニューレは前記第1テーブルに固定されている。
【0008】
カニューレは、円形、楕円のような輪形状、又は、方形もしくは矩形のような角のある形状、又は、不規則な断面形状を有する細管を備える。粒子ビームカラムは、荷電粒子ビームの生成のための粒子源と、粒子ビームを偏向させるための偏向および収束プレートと、粒子を加速させるための、電源に接続されたビーム管と、物体位置に粒子ビームを収束させることができる対物レンズと、電子、イオンまたは光子のような、物体から放出された粒子を検出する少なくとも1つの検出器を有する。特に、検出器は、物体から放出された電子を検出する電子検出器であってもよい。よって、用途に応じて、電子検出器は対物レンズ内部または外部に配置され得る。電子検出器は、二次電子および/または後方散乱電子のような、異なる特性を有する電子を検出するように構成されていてもよく、また、場合によってはエネルギーセレクタなどを用いて、複数の電子検出器が二次電子と後方散乱電子を別々に検出するように構成されていても良い。粒子ビームカラムの構成部品は、制御器によって制御され、1つの場所において物体加工を行い、顕微鏡画像、具体的には、物体の特定位置の電子顕微鏡画像を取得してもよい。従って、粒子ビームは物体表面全体を走査し、その一方で、検出器は物体から放出された粒子を検出して、顕微鏡画像を取得する。具体的には、1つまたは複数の電子検出器が物体から放出された電子を検出し、物体のその領域の電子顕微鏡画像を取得する。
【0009】
本発明の一実施例によると、物体は第3テーブルに取り付けられており、第3テーブルは第2テーブルに対して、第2テーブルは第1テーブルに対して、第1テーブルは基台に対してそれぞれ移動可能である。従って、これらの、第1、第2および第3テーブルは、テーブルの組み合わせとして構成されており、互いに対応して移動可能である。よって、第1テーブルは基台に対して第1方向に平行移動可能であり、第2テーブルは第1テーブルに対して第2方向に平行移動可能である。よって、第1方向と第2方向は互いに平行ではない。第2方向を第1方向に対して、実質的に直角に設定することが有利だが、傾斜角が30°、45°、60°でも良い。用途に応じて、第3テーブルの回転軸の方向を、粒子ビームカラムによる粒子ビームの方向と平行に設定することも有利であり得る。他の用途においては、上述の方向を平行とならないように設計することも有利であり得る。
【0010】
本発明の一実施形態によると、加工システムは、基台に対して第1テーブルを移動させるための第1アクチュエータを備える。この第1アクチュエータは制御器によって制御され、基台に対して第1テーブルを所望の位置におくことを可能にする。本用途におけるアクチュエータは、機械式、空気圧式またはモーター駆動式として設計され得る。特定の用途においては、アクチュエータは対応するテーブルを手動機械式に位置決めできるようにする。
【0011】
本発明の一実施形態によると、加工システムは、さらに第1テーブルに対して第2テーブルを移動させるための第2アクチュエータを備える。この第2アクチュエータも、制御器によって制御され、第1テーブルに対して第2テーブルを所望の位置におくことを可能にする。
【0012】
本発明の一実施形態によると、加工システムは、さらに第2テーブルに対して第3テーブルを移動させるための第3アクチュエータを備える。この第3アクチュエータも、制御器によって制御され、第2テーブルに対して第3テーブルを所望の位置におくことを可能にする。
【0013】
本発明の一実施形態によると、第1、第2および第3アクチュエータのうち少なくとも1つは、粒子ビームカラムの動作中に作動される。よって、動作中に、粒子ビームカラムの物体フィールドを物体表面の被加工部分に配置し、ガス供給装置のカニューレをこの部分に近づけ、また遠ざけることできる。よって、必ずしもガス供給装置のカニューレからの反応ガスの流れを制御することなく、物体の加工及び検査が、それぞれ実施できる。粒子ビームが物体の特定の場所に向けられると、ガス供給装置のカニューレを被加工位置付近に移動させることにより加工が行われ、ガス供給装置のカニューレを被加工位置から遠ざけることにより、物体の該当部分の検査が行われる。
【0014】
本発明の一実施形態によると、第1テーブルに対するカニューレの位置または/および方向は調節可能である。このようなカニューレの位置または/および方向の調節は、通常、粒子ビームカラムの動作中においては重要ではない。よって、第1テーブルに対する、このようなカニューレの位置変化または/および方向変化の影響は、基台に対する第1テーブルの位置変化の影響に比べて非常に小さく、おおよそ10〜100分の1程度である。このような、第1テーブルに対するカニューレの位置および/または方向の調節は、加工システムの初期調整のために行われる。
【0015】
本発明の一実施形態によると、ガス供給装置は物質リザーバを備え、カニューレを経て気体として供給され得る物質の予備を収容させることができる。よって、実質的に自立的なガス供給装置は、全体が真空容器内に備えられもよい。よって、真空容器外部に位置する貯留容器から真空容器内部に位置するガス供給装置へのガスパイプは不必要である。したがって、電子顕微鏡のような既存の粒子顕微鏡内に簡易な方法で内蔵されるような、コンパクトなガス供給装置がもたらされ得る。よって、本発明の一実施例によると、ガス供給装置のカニューレを通るガス流のための独立した制御器は不必要である。真空容器の外からのガス供給は、代替の技術的可能性である。物質リザーバは、例えば、カニューレを通るガス流を制御するために、その中の物質を適切な温度にするような、冷却および/または加熱する装置を備え得る。従って、供給されるガスは、昇華する固体、十分な蒸気圧を有する液体、および小さい開口を有する容器に保存されている気体から提供され得る。
【0016】
本発明の一実施形態によると、粒子ビームカラム及び物質リザーバは共通の真空容器内に配置されている。
【0017】
本発明の一実施形態によると、物質リザーバはカニューレと共に第1テーブルに備え付けられている。したがって、既存の電子顕微鏡に簡易な方法で内蔵され得る、特にコンパクトなガス供給装置が備えられている。さらに、物質リザーバは真空容器壁に備え付けられており、この場合、管のようなガスパイプが物質リザーバからカニューレに導かれている。
【0018】
本発明の一実施形態によると、ガス供給装置は物質リザーバとカニューレの間に配置されたロック弁を備えている。ロック弁は、真空容器外部の制御器により制御され、ロック弁が開いている間は、物体位置を加工し、固定弁が閉じている間は物体位置を検査するように制御できるか、これよりもさらに良好に制御されている。
【0019】
本発明の一実施形態によると、ロック弁は、粒子ビームカラムの動作中にロック弁を作動させるためのアクチュエータを備えている。また、開放された真空容器または真空容器外部のみをロック可能にする、機械式弁が備えられてもよい。
【0020】
本発明の一実施形態によると、加工方法がもたらされ、該方法は、カニューレの出口開口が近くに配置されている、粒子ビームカラムの物体フィールドに、物体の部分を配置することと、カニューレを経てガスを供給し、粒子ビームカラムを用いてそのガスを活性化することにより、物体を加工することと、カニューレを遠ざけ、カニューレの出口開口を粒子ビームカラムの物体フィールドから離間して配置することにより加工を完了させることと、粒子ビームカラムの物体フィールドに物体の一部を配置し、カニューレの出口開口を物体フィールドから離間して配置することと、粒子ビームカラムを用いて物体の部分の顕微鏡画像を取得することとを含む。
【0021】
従って、粒子ビームは物体の部分に向けられ、ガスノズルまたは出口開口は、充分な反応ガスがノズルから流れ出して物体部分に供給されるように調節される。よって、物体の部分は、粒子ビームカラムを用いてガスを活性化した後に加工され、材料のアブレーションおよび/または堆積を含む。物体の加工は、カニューレの出口開口が、粒子ビームが衝突するポイント付近に位置しないよう遠ざけることにより完了する。同時に、物体の他の部分が粒子ビームに当たるように、物体は遠ざけられる。物体の部分の検査を行うために、物体は再度その部分に粒子ビームが当たるように動かされる。物体付近で十分な量の反応ガスが存在しないため、その部分が加工されること無く、物体の部分についての、電子顕微鏡画像等の顕微鏡画像が取得できる。
【0022】
顕微鏡画像の取得は、特に、イオン又は電子ビームのような、粒子ビームによる物体全体の走査と、物体表面から放出された、イオン、電子、光子のような粒子の検出とを含む。
【0023】
本発明の一実施形態によると、物体加工中と電子顕微鏡画像取得中に、ガスがカニューレから排出される。よって、本発明の方法に従う本実施形態は、カニューレ外でのガス流の制御を必要としない。物体を加工するか、代わりに顕微鏡画像を取得するかの選択は、物体の部分に対してカニューレを移動させ、その部分に対して粒子ビームを移動させることにより行われる。
【0024】
本発明の一実施形態によると、カニューレは化学的に不活性の非磁化性材料から成り、また、カニューレは荷電を防ぐために表面が金属コーティングされ得る(例えば、金蒸着ガラスまたはテフロン(登録商標)チューブ)。
【0025】
本発明の一実施形態によると、本発明による加工システムが本発明による加工方法の実施に利用されている。
【0026】
本発明は、添付の図面を参照して、以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による加工システムの実施形態を示す。
【図2a】本発明による加工システムを異なる方向から見た図を示す。
【図2b】本発明による加工システムを異なる方向から見た図を示す。
【図2c】本発明による加工システムを異なる方向から見た図を示す。
【図3a】本発明による加工方法の1つの実施形態の1つのステップを示す。
【図3b】本発明による加工方法の1つの実施形態の1つのステップを示す。
【図3c】本発明による加工方法の1つの実施形態の1つのステップを示す
【図3d】本発明による加工方法の1つの実施形態の1つのステップを示す
【図3e】本発明による加工方法の1つの実施形態の1つのステップを示す
【図3f】本発明による加工方法の1つの実施形態の1つのステップを示す
【図4a】本発明によるガス供給装置の1つの実施形態を示す。
【図4b】本発明によるガス供給装置の1つの実施形態を示す。
【図5a】本発明による加工システムの実施形態において利用され得るカニューレの1つの実施形態を示す。
【図5b】本発明による加工システムの実施形態において利用され得るカニューレの1つの実施形態を示す。
【図5c】本発明による加工システムの実施形態において利用され得るカニューレの1つの実施形態を示す。
【図5d】本発明による加工システムの実施形態において利用され得るカニューレの1つの実施形態を示す。
【図6a】本発明による加工システムの1つの実施形態と、本発明による加工方法の実施形態における1つのステップを示す。
【図6b】本発明による加工システムの1つの実施形態と、本発明による加工方法の実施形態における1つのステップを示す。
【図6c】本発明による加工システムの1つの実施形態と、本発明による加工方法の実施形態における1つのステップを示す。
【図6d】本発明による加工システムの1つの実施形態と、本発明による加工方法の実施形態における1つのステップを示す。
【図6e】本発明による加工システムの1つの実施形態と、本発明による加工方法の実施形態における1つのステップを示す。
【図6f】本発明による加工システムの1つの実施形態と、本発明による加工方法の実施形態における1つのステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明の一実施例に従う、物体表面を加工するためのシステム1の断面図を示す。システム1は、カソードとして構成される電子ビーム電子源3を備え、軸15に沿って電子ビーム8を生成する。更に、システム1は集束/偏向要素19を備え、電子ビーム8を集束および偏向させる。電子ビーム8は、電極端子7を経て電源に接続するビーム管5の内部を進む。例えば+8kvの、所定の電位がビーム管5に印加される。ビーム管5に印加された電位は、電子源3とビーム管5との間および、物体33の表面33aに向かう電子を加速させるビーム管5の一部分に、電場を生成させる。よって、電子ビームは軸15に沿って進み、物体33の表面33aの加工位置35に電子ビーム管の物体フィールド75が位置するようになる。電子ビーム管の物体フィールドは、電子ビーム8が衝突するポイント75としても示される。
【0029】
電子ビームを集束させるために、集束レンズ11を電子ビーム8の周囲に環状に配置する。集束レンズ11は磁気レンズおよび静電液浸レンズの組み合わせである。よって、磁気レンズは内部ポールピースと外部ポールピース9を含む。コイル13での電流によって、ポールピース9,10を通る電磁流が誘導によって生成され、アキシャルギャップ16の領域に磁場が存在するようになる。この磁場が、図1では物体33の表面33aの加工位置が位置していた電子ビームカラムの物体フィールド75に電子ビーム8を集束させる。
【0030】
電極端子18’を経て電極版18は電源に接続され、電極版18に電位が印加され得る。ビーム管5と電極版18との間に適切な電圧を印加することで、電子源3から放出されて、最初に、電子源とビーム管5との間の電場によって加速された一次電子を、位置35における衝突に先立って、8keV以下の一次エネルギーまで減速できる。例えば、1keVのエネルギーは、反応ガスの供給において、物体33の表面33aのポイント35における材料の堆積またはアブレーションに適している。しかし、更に高いエネルギーも可能である。
【0031】
電極版18の更なる機能は、物体33の表面33aと電極版18との間で引力場を構築して、電子ビーム8の衝突時に物体33から放出される電子が電子検出器17に到達できるようにすることである。加工位置35の周囲において、物体33の表面33aの一部分を走査し、放出される電子を検出器17により検出することで、加工位置35の周囲の表面領域の電子顕微鏡画像を得ることができる。このようにして取得された電子顕微鏡画像は、物体の表面領域の加工状態を反映して、更なる加工を制御することを可能にする。
【0032】
本実施形態においては、電子検出器17はレンズ内検出器として構成されている。他の実施形態は、集束レンズ11の外部に電子検出器を備えている。電子を生成し、偏向し、集束し、検出するための上述した全ての要素が、電子ビームカラム26を形成している。
【0033】
加工および検査中においては、それぞれ、物体33は、本発明に従う加工システム1を用いており、物体33は物体ホルダ24によって保持されている。物体ホルダ24は、基台20、第1テーブル21、第2テーブル22、および、第3テーブル23を備える。アクチュエータ41を用いて、第1テーブル21は基台20に対して第1方向41’に沿って移動できる。よって、基台20は、典型的には真空容器壁を介して電子ビームカラム26に固定接続される。アクチュエータ42を介して、第2テーブル22は、第1テーブル21に対して第2方向42’に移動可能である。アクチュエータ43を介して、第3テーブル23は、第2テーブル22に対して軸43’について回転可能である。
【0034】
加工システム1は真空容器2によって封じられ、真空容器2は適切な真空ポンプにより排気される。アクチュエータ41、42および43は、真空容器2の外部の制御器に接続され、テーブル21、22、23の相互の移動および基台20に対する移動を行う。よって、このような移動は電子ビーム柱の操作中に有効である。アクチュエータ41、42および43に代えて、機械式駆動装置を備えてもよい。
【0035】
システム1はさらに、ガス供給装置28も備え得る。ガス供給装置28は、カニューレ出口開口30’、ガスリザーバ31、調節ねじ441、442、443と、ホルダまたはてこ装置32を備えている。調節ねじ441、442、443に代えて、他の調節要素も備え得る。よって、ガス供給装置28のホルダ32は、例えば、プラグホルダまたはバヨネットロック等により、固定的かつ取り外し可能に、物体ホルダ24の第1テーブルに接続されている。ガス供給装置28における、カニューレ30のカニューレ出口開口30’は、物体33の表面33aの加工位置35に向けられるか、または、加工位置35付近に配置され、加工位置35に選択的に反応ガスを供給する。
【0036】
図1に示した実施形態は、電子ビーム8が物体33の表面33aの加工位置35に衝突して、物体33の表面33aに吸着した反応ガス分子若しくは反応ガス元素、または、加工位置35周囲のスペースに存在する反応ガス分子または反応ガス元素を活性化して、加工位置35における材料の堆積またはアブレーションを行う。また、電子ビームによりイオン化した不活性ガス等を供給して、表面に衝突させた時に、表面の電荷中性化を誘発させる。
【0037】
ガス供給装置を局所的に調節して、カニューレ出口開口30’を物体33の表面33a上に電子ビームが衝突するポイント75の付近に配置させるために、例えば、調節ねじ441がカニューレ出口開口30’を第1方向41’に移動させ、調節ねじ442がカニューレ出口開口30’を第2方向42’に移動させ、調節ねじ443がカニューレ出口開口30’を第1および第2方向に垂直な第3方向zに移動させるように備えられている。このような調節は、平行移動および/または回転により行われる。しかし、典型的には調節ねじは真空容器2の外側からは制御できず、ただ、カニューレの出口開口30’を電子ビーム8の衝突ポイント75に対して初期調整できるように設けられている。しかし、他の実施形態では、調節ねじは外側から制御できる。実際に物体を加工または検査している間は、カニューレ出口開口は第1テーブル21に対して固定されている。
【0038】
図2a、2bおよび2cは、本発明による加工システムの更なる実施形態1aの互い直交する異方向から見た図を示す。図2aは図1に示した加工システムと同じ方向から見た場合の、加工システム1aの側面図である。両図面において同一または類似の構成部品は同じ参照符号を付し、このうちのいくつかの参照符号については、図2a、2bおよび2cでは同じ参照符号に「a」を付加して示している。しかし、真空容器は、参照符号2a’として示している。類似の構成部品の機能は、図1を参照して説明した機能に類似する。よって、これらの構成部品の説明は図1における説明と同様である。
【0039】
図2cは矢印2c加工システム1aを、図2aに示した矢印2cの方向から見た図を示す。図2bは本発明に従う加工システム1aを、図2cに示した矢印2bの方向から見た図を示す。さらに、図2a、2bおよび2cにおいては、真空容器2a’にウィンドウ102が設けられており、真空容器2a’の内部スペースを外側から検査できるようにする。
【0040】
図3a、3b、3c、3d、3eおよび3fは、本発明に従う加工方法の実施形態を示す。図3aと3b、3cと3d、3eと3fの各ペアは、図2aおよび2cと同様に、それぞれ、様々な方法ステップの最中における、本発明による加工システム1aの側面図と平面図を示す。
【0041】
図3aは、最初に、加工位置35は、電子ビームが加工位置35に衝突するように配置される。よって、物体33の位置35は、電子ビームカラム26の物体フィールド75に配置される。対応して、カニューレ出口開口30a’は、加工位置35付近に配置され、ガスをリザーバ31aから加工位置35に供給する。よって、加工位置35付近のスペース内に存在する反応ガスまたは加工位置35において物体表面に吸着されている反応ガスは、電子ビーム8によって活性化され、物体33の表面への材料の堆積を促すか、または、物体33の表面からの材料のアブレーションを促すか、または、物体33の表面における表面荷電の電荷補償を促すことになる。
【0042】
ここで、物体33の加工位置35の加工状態を評価することが、加工位置35の加工が望ましい形で進行しているか否か決定するために必要である。粒子ビームにより反応ガスを一斉に活性化せずに、これを可能にするために、第1テーブル21aは、基台20aに対して矢印121の方向に移動し、ガス供給装置28aのカニューレ30aのカニューレ出口開口30’aは、電子ビームが衝突するポイント75とは間隔をあけて配置されている。この移動後の状態を図3cに側面図として示し、図3dに平面図として示す。ガス供給装置28aおよびカニューレ出口開口30a’は、てこ装置32aを介して、第1テーブル21aに固定接続されているので、ガス供給装置28aの移動のためには、基台20aに対してテーブル21aが平行移動することが必要となる。第1テーブル21aの移動と同時に、そこに備え付けられている第2テーブル22aも、第2テーブル22aに備え付けられている第3テーブル23aも同様にして平行移動される。従って、物体33の加工位置35は電子ビーム8が衝突するポイント75からは間隔をあけた位置に移動される。
【0043】
物体を加工する方法における、次ステップにおいて、電子ビームが衝突するポイント75の付近に加工位置35を配置するために、第3テーブル23aは第2テーブル22a(図3eにおける矢印によって示される)に対して、加工位置35が電子ビーム8の衝突するポイント75と一致するまで回転される。このような回転後の状態は、図3eおよび3fに示す。図3a〜3fに示したような方法においては、回転角は合計180°になる。加工位置35の配置に依存して、この回転角は、180°より大きくも小さくもなる。図3e〜3fにより、第3テーブル23aを第2テーブル22a対して回転した後に、カニューレ出口開口30a’は、電子ビーム8の衝突ポイント75や、物体33の加工位置35から間隔をあけて位置していることが明確である。図3eおよび3fに示された、この配置において、物体33の加工位置35の電子顕微鏡画像は、電子ビーム8の走査により得られ、このとき、十分な量の反応ガスが存在しないので、電子ビーム8による走査は大きな反応を伴わない。
【0044】
第1テーブル21aを最初に平行移動して、次いで、第3テーブル23aを回転させることに代えて、第3テーブル23aを最初に回転し、次いで、第1テーブル21aを平行移動するか、または、両方の動作を同時に行ってもよい。
【0045】
電子顕微鏡画像が、物体33の加工場所35の、加工状態または加工の進行状況を判断するために考慮され得る。判断した加工状態または加工の進行状況に応じて、加工位置35における、材料の更なる堆積または加工位置35からの材料のアブレーションが必要となり得る。この場合、第3テーブル23aが第2テーブル22aに対して回転して、図3eおよび3fに示した状態から図3cおよび3dに示した状態に再度戻される。この状態から、第1テーブル21aは基台20aに対して平行移動して、図3aおよび3bに示した状態に戻される。この状態は、物体33の加工位置が電子ビーム8の衝突するポイント75に配置されることを特徴とし、ガス供給装置28aのカニューレ出口開口30a’は加工位置35付近に配置され、加工位置35付近のガスを電子ビーム8により活性化して、加工位置35を加工できるようにする。
【0046】
図3b、3dおよび3fに示した、本発明による加工システム1aの平面図のように、基台20aに対する第1テーブル21aの平行移動は、第1方向41’において行われ、第2テーブル22aの第1テーブル21aに対する平行移動は、第2方向42’において可能である。平行移動方向41’および42’が、互いに直交することは明白である。
【0047】
加工位置35の加工が完了すると直ぐに、更なる加工位置が以下の要領で到達する。第2テーブル22aが第1テーブル21aに対して方向42’に平行移動し、第3テーブル23aが第2テーブル22aに対して、z軸の周囲に、電子ビーム8の衝突するポイント75内に加工位置が配置されるまで回転する。このように、更なる加工位置35が到達するために、第1テーブル21aは基台20aに対して平行移動せず、ガス供給装置28aのカニューレ出口開口30a’は、電子ビームが衝突するポイント75に対して不変の位置に残り、これにより更なる加工位置付近に位置するようになる。よって、加工は、実質的には物体上の任意の位置に施され、そこおいて材料の堆積およびアブレーションが行われる。更に、この更なる加工位置は、第1テーブル21aを基台20aに対して平行移動し、第3テーブル23aを第2テーブル22aに対して回転させて、反応ガスが実質的に存在しない状態で電子ビーム8により検査されることにより、この更なる加工位置の電子顕微鏡画像が得られる。
【0048】
図4aおよび4bは、本発明によるガス供給装置の実施形態28bおよび28cの燃焼図を模式的に示す。図4aは、物質31b’を含む物質リザーバ31b、中間部58b、角部50bおよびカニューレ30bを備える、ガス供給装置28bを示す。ガス供給装置28bは、更に、てこ装置32bに接続された、接続部57bを備える。てこ装置32bはねじ62を用いて電子顕微鏡のサンプルホルダに備え付けられている。本発明の実施形態において、ガス供給装置28bは、それぞれ、図1および2に示す、実施形態1および1aの第1テーブル21および21aに取り付けられている。よって、ガス供給装置28bと、第1テーブル21および21aのそれぞれとの固定接続は確保されている。
【0049】
ガス供給装置28bのカニューレ30bは、非磁性化の導電性材料により成る。カニューレ出口開口30b’から延びる第1セクションにおいて、カニューレ30bの断面積は小さい。この部分のカニューレ30bの断面直径は約1〜2mmである。連結器54bに向かう第2セクションにおいては、カニューレの断面積は、約5〜8mmの直径を示すまでに大きくなる。
【0050】
結合部54bを用いて、カニューレ30bは、結合部51bを介して、角部50bに気密に接続されている。角部50bは、不活性かつ耐腐食性の材料(例えば、ステンレス鋼)より成る。角部50bを用いて、セッティング角度を大きくして、カニューレ30bが加工システム1および1aのそれぞれの構成部品を妨げないようにすることも可能である。角部によりもたらされる曲がり角は、0°〜90°であり得る。角部50bは、角部50bの結合部52bおよび中間部58bの結合部56bを介して、気密に中間部58bに接続されている。中間部58bは、中間部58bの結合部60bおよびリザーバ31bの結合部61bを介して、物質リザーバ31bに気密に接続され得る。
【0051】
中間部58bの環状開口59bと、角部50b内の環状開口53bと、カニューレ30bの環状開口55bを介して、物質リザーバ31b内に存在する物質31b’が、カニューレ出口開口30b’に到達する。この物質31b’は、物質リザーバ31b内に固体、液体または気体状態で保存されている。従って、この物質から生成された反応ガスが、カニューレ出口開口30b’付近に位置する物体加工位置に供給される。
【0052】
物質リザーバは不活性かつ耐腐食性の材料(例えば、ガラスまたはステンレス鋼)から成る。何時でも充填状況がモニターできるので、ガラスから成る物質リザーバが有利である。さらに、ガスの代わりまたはガスに加えて、前駆材料のような液体材料または固体材料が含まれても良い。往々にして、この前駆材料は容易に分解するので、ガラス製の物質リザーバ31bを活用すれば、この前駆材料の状態の監視は有利に可能になる。加工システム1および1aそれぞれにおける動作中に、固体の前駆材料はそれ自体の蒸気圧により蒸発し、環状キャビティにより形成される、僅か数センチメートルのガラスパイプ系を通じて、カニューレ出口開口30b’に向かって流れていく。
【0053】
ガス供給装置28bの全体の大きさは、最大拡張の方向に約5〜15cmである。ガス供給装置28bは大きさが小さいので、簡易に真空容器内部に設置できる。ガス供給装置に真空容器の外部からガスを供給するための、特別なフランジを設ける必要は無い。
【0054】
図4bは、本発明に従うガス供給システムの更なる実施形態28cを示す。類似の構成部品は、同様の参照符号により再度示され、これらの説明は図4aの説明と同様である。
【0055】
図4aに示したガス供給装置の実施形態28bの構成部品に加えて、図4bに示したガス供給装置28cは、物質リザーバ31cと中間部58cとの間に、結合部62cと66cによって気密に結合されている、ロック装置64cを備える。ロック装置64cは、例えば、不活性の耐腐食性材料(例えば、ステンレス鋼)から成る、ロッキングタップまたはロック弁を備え得る。ロック装置64cは、純粋に機械式、空気式または電気機械式にアクチュエータにより作動されるか、または、ミニチュアソレノイド弁であっても良い。それぞれ、真空容器2および2aの外から、ロック装置64cを制御することは信号線67を介して可能になる。
【0056】
図4aに示した、ガス供給装置28bと、図4bに示した、ガス供給装置28cの更なる違いは、ガス供給装置28cが、更に調節要素44c1、44c2、44c3を有するところにある。これらの調節要素は、カニューレ出口開口30c’が、互いに直交する、3つの空間方向461、462および463に平行移動することを可能にする。ガス供給装置28cを、加工システム1または1aの第1テーブル21または21aにおいて固定して、互いに直交する3つの空間方向に平行移動することにより、カニューレ出口開口30c’は電子ビーム8または8aの物体フィールド付近に配置され得る。加工システム1または1aの動作中に、調節要素44c1、44c2、44c3は作動される必要がない。特に、これらの調節要素の調節範囲は、基台20に対する第1テーブル21の平行移動範囲または基台20aに対する第1テーブル21aの平行移動範囲に比べて10〜50分の1である。
【0057】
図5a、5b、5cおよび5dは、それぞれ、本発明に従うガス供給装置のカニューレの実施形態30d、30e、30fおよび30gを示す。図示したカニューレは様々な名形状および大きさの、縦断面および横断面を有する。特に、カニューレ30fはカニューレ出口開口30f’の領域において断面が拡大し、カニューレ30gはカニューレ出口開口30g’の前の第1セクションにおいて屈曲する。
【0058】
ガス供給装置内に、外部制御器により制御される弁を設けた場合、電子顕微鏡画像の取得による加工位置の検査のために、加工中にガス供給装置からのガスの送り出しが外部から中断され、これにより、不必要な反応ガスの供給を伴わずに検査を行うことができる。更に、ガス供給システムは加熱ブロックまたはペルティエ素子を有する冷却ブロックを備え、ガスリザーバまたはガス供給装置全体を加熱または冷却できるようにする。よって、ガス流量の制御等のために、蒸気圧を増減させることが可能となる。よって、揮発性が非常に低い材料や、揮発性が非常に高いも利用できる。結合部として、気密結合(例えば、ルアーロックのような円錐形)を用いても良い。
【0059】
図6a、6b、6c、6d、6eおよび6fは、本発明に従う加工システムの一実施形態における、各ステップを示す。図6aと6b、6cと6d、6eと6fの各ペアは、図2aおよび2cと同様に、それぞれ、様々な方法ステップの最中における、本発明による加工システム1bの側面図と平面図を示す。加工システム1bは、図1および2に示した本発明に従う加工システムの実施形態1および1aと共通する、多くの構成部品を有する。しかし、本発明に従う加工システムの既述の実施形態に対する相違点は、物体33の保持のために物体ホルダ24bを備えることにある。実施形態1および1aの、ホルダ24および24aと同様に、物体ホルダ24bが基台20b、第1テーブル21b、第2テーブル22bおよび第3テーブル23bを備える。第1手テーブル21bは基台20bに対して第1方向41’に平行移動可能である。この平行移動は、アクチュエータによっても実施可能である。第2テーブル22bは、第1テーブル21bに対して第2方向42’に平行移動可能である。物体ホルダ24bは、本発明に従う実施形態1および1aの物体ホルダ24および24aのそれぞれに、実質的に対応する。しかし、図6a〜6fに示した実施形態においては、第3テーブル23bは第2テーブル22bに対して回転移動できないが、第2テーブル22bに対して第1方向41’に平行移動可能である。
【0060】
図6aは、最初に、加工位置35が、カニューレ出口開口30b’と、電子ビーム8bの衝突するポイント75の付近に位置することを示す。よって、物体33は加工位置35において、電子ビーム8bにより活性化された反応ガスにより加工され得る。
【0061】
加工位置35における加工状態を検査するために、図6cおよび6dに示した第2方法ステップにおいて、第1テーブル21bは基台20bに対して矢印121の方向に平行移動して、ガス供給装置28bのカニューレ30bの出口開口30b’が、電子ビーム8bが衝突するポイント75から離間して配置される。同時に、電子ビーム8bの衝突するポイント75は物体33の加工位置35から離間して配置される。
【0062】
図6eおよび6fに示した第3加工ステップにおいて、物体33の加工位置35を検査するために、電子ビーム8bの衝突するポイント75が物体33の加工位置35に達するまで、第3テーブル23bが第2テーブル22bに対して矢印121’の方向に平行移動される。よって、カニューレ出口開口30b’は電子ビーム8bが衝突するポイント75から離間して位置するようになる。従って、実質的に反応ガスが存在しない状況において、加工位置35の電子顕微鏡画像が取得され、加工位置35の加工状態を決定できる。図3a〜3fに示した、物体加工の方法と同様に、この電子顕微鏡画像は、加工位置35の更なる加工が必要か否か決定するために考慮される。
【0063】
本発明の更なる実施形態では、第3テーブルが第2テーブルに対して平行移動可能であり、かつ、第2テーブルに対して回転可能に取り付けられている。
【0064】
上述の物体を加工するためのシステムの実施形態において、図1、2a〜2c、4aおよび4bに示したガス供給装置28、28a、28cをそれぞれ代替して用いても良い。必要に応じて、図5a、5b、5cおよび5dのそれぞれに示した、カニューレ30d、30e、30fまたは30gが用いられても良い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を加工するためのシステムであって、該システムは、
対物レンズを有する粒子ビームカラムと、
前記対物レンズの前に被加工物体を配置するための物体ホルダと、
前記対物レンズの前に配置された物体にガスを供給するためのカニューレを備えるガス供給装置と
を備え、前記物体ホルダが、
粒子ビームカラムに対して静止している基台と、
該基台に備え付けられ、かつ、前記基台に対して第1方向に平行移動可能な第1テーブルと、
前記第1テーブルに備え付けられ、かつ、前記第1テーブルに対して第2方向に平行移動可能な第2テーブルと、
前記第2テーブルに備え付けられ、該第2テーブルに対して、移動可能、特に回転可能な第3テーブルと
を備え、
前記カニューレが前記第1テーブルに固定されていることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記基台に対して前記第1テーブルを移動させるための第1アクチュエータをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1テーブルに対して前記第2テーブルを移動させるための第2アクチュエータをさらに備える、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第2テーブルに対して前記第3テーブルを移動させるための第3アクチュエータをさらに備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1、第2および第3アクチュエータのうち少なくとも1つは、前記粒子ビームカラムの動作中に作動され得る、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記カニューレの位置および方向の少なくとも一方が、前記第1テーブルに対して調節可能である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記ガス供給装置が物質リザーバを備え、カニューレを経て気体として供給され得る物質の蓄積を収容できる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記粒子ビームカラム及び前記物質リザーバが共通の真空容器内に配置されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記物質リザーバが前記カニューレと共に前記第1テーブルに備え付けられている、請求項7または8に記載のシステム。
【請求項10】
前記ガス供給装置が前記物質リザーバと前記カニューレの間に配置されたロック弁を備えている、請求項7〜9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記物質リザーバが、前記粒子ビームカラムの動作中に前記ロック弁を作動させるためのアクチュエータを備えている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
加工方法であって、
a. カニューレの出口開口が近くに配置されている、粒子ビームカラムの物体フィールドに、物体の部分を配置し、次いで、
b. 前記カニューレを経てガスを供給し、前記粒子ビームカラムを用いて該ガスを活性化することにより、前記物体を加工し、
c. 前記カニューレを遠ざけ、前記カニューレの出口開口を前記粒子ビームカラムの前記物体フィールドから離間して配置することにより加工を完了させ、
d. 前記粒子ビームカラムの前記物体フィールドに前記物体の一部を配置し、前記カニューレの出口開口を前記物体フィールドから離間して配置し、
e. 前記粒子ビームカラムを用いて前記物体の部分の顕微鏡画像を取得する
ことを含む加工方法。
【請求項13】
前記物体の加工中および前記電子顕微鏡画像の取得中に、ガスがカニューレから排出される、請求項12に記載の加工方法。
【請求項14】
前記方法は請求項1〜11のいずれか1項に記載のシステムを用いて実施されることを特徴とする、請求項12または13に記載の加工方法。
【請求項1】
物体を加工するためのシステムであって、該システムは、
対物レンズを有する粒子ビームカラムと、
前記対物レンズの前に被加工物体を配置するための物体ホルダと、
前記対物レンズの前に配置された物体にガスを供給するためのカニューレを備えるガス供給装置と
を備え、前記物体ホルダが、
粒子ビームカラムに対して静止している基台と、
該基台に備え付けられ、かつ、前記基台に対して第1方向に平行移動可能な第1テーブルと、
前記第1テーブルに備え付けられ、かつ、前記第1テーブルに対して第2方向に平行移動可能な第2テーブルと、
前記第2テーブルに備え付けられ、該第2テーブルに対して、移動可能、特に回転可能な第3テーブルと
を備え、
前記カニューレが前記第1テーブルに固定されていることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記基台に対して前記第1テーブルを移動させるための第1アクチュエータをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1テーブルに対して前記第2テーブルを移動させるための第2アクチュエータをさらに備える、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第2テーブルに対して前記第3テーブルを移動させるための第3アクチュエータをさらに備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1、第2および第3アクチュエータのうち少なくとも1つは、前記粒子ビームカラムの動作中に作動され得る、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記カニューレの位置および方向の少なくとも一方が、前記第1テーブルに対して調節可能である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記ガス供給装置が物質リザーバを備え、カニューレを経て気体として供給され得る物質の蓄積を収容できる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記粒子ビームカラム及び前記物質リザーバが共通の真空容器内に配置されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記物質リザーバが前記カニューレと共に前記第1テーブルに備え付けられている、請求項7または8に記載のシステム。
【請求項10】
前記ガス供給装置が前記物質リザーバと前記カニューレの間に配置されたロック弁を備えている、請求項7〜9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記物質リザーバが、前記粒子ビームカラムの動作中に前記ロック弁を作動させるためのアクチュエータを備えている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
加工方法であって、
a. カニューレの出口開口が近くに配置されている、粒子ビームカラムの物体フィールドに、物体の部分を配置し、次いで、
b. 前記カニューレを経てガスを供給し、前記粒子ビームカラムを用いて該ガスを活性化することにより、前記物体を加工し、
c. 前記カニューレを遠ざけ、前記カニューレの出口開口を前記粒子ビームカラムの前記物体フィールドから離間して配置することにより加工を完了させ、
d. 前記粒子ビームカラムの前記物体フィールドに前記物体の一部を配置し、前記カニューレの出口開口を前記物体フィールドから離間して配置し、
e. 前記粒子ビームカラムを用いて前記物体の部分の顕微鏡画像を取得する
ことを含む加工方法。
【請求項13】
前記物体の加工中および前記電子顕微鏡画像の取得中に、ガスがカニューレから排出される、請求項12に記載の加工方法。
【請求項14】
前記方法は請求項1〜11のいずれか1項に記載のシステムを用いて実施されることを特徴とする、請求項12または13に記載の加工方法。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図3f】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図6e】
【図6f】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図3f】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図6e】
【図6f】
【公開番号】特開2009−146887(P2009−146887A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−290179(P2008−290179)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(504020452)カール・ツァイス・エヌティーエス・ゲーエムベーハー (36)
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss NTS GmbH
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290179(P2008−290179)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(504020452)カール・ツァイス・エヌティーエス・ゲーエムベーハー (36)
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss NTS GmbH
【Fターム(参考)】
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