物体を磁化するための方法及び装置並びに検出装置を校正するための方法及び装置
本発明は、物体を磁化するための方法及び装置、力及びトルクの検出装置を校正するための方法及び装置、特定分野で物体を磁化するための方法及び装置の使用、及び特定分野で力及びトルクの検出装置を校正するための方法及び装置の使用に関する。第一物体又は第二物体、あるいは第一物体及び第二物体を磁化するための方法は、第一物体が第二物体を取り囲むように第一物体を配置するステップと、第一電気信号を第二物体に加えるステップと、を含み、第一電気信号によって第一物体及び/又は第二物体の少なくとも一部が磁化される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を磁化するための方法及び装置と、力及びトルクの検出装置を校正するための方法及び装置と、特定の技術分野における物体を磁化するための装置の使用と、そして特定の技術分野における力及びトルクの検出装置を校正するための装置の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気トランスデューサ技術は、トルク及び位置の測定に応用されている。それは特に、シャフトや、トルクを受け又は直線運動に従う、あらゆる他の部分におけるトルクを非接触で測定するために開発された。回転又は往復運動をする構成部分、又は軸方向荷重やせん断力を受ける構成部分には、磁化された領域、即ち磁気的にエンコードされた領域が設けられ、そしてシャフトが回転し又は往復運動をする時、そのような磁気的にエンコードされた領域は、シャフトのトルク、力又は位置を決定できる磁場検出器(磁気コイルのような)に特長的な信号を発生する。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されたその種のセンサーでは、低価格で製造され且つ校正できる正確に規定された磁気的なエンコード領域を有することが重要である。
【特許文献1】国際公開第02/063262号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、磁気的にエンコードされた領域を持つ検出装置を提供することを目的とし、該検出装置が低価格で製造可能であって動作可能とされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、独立請求項に従って、物体を磁化するための方法及び装置と、力及びトルクの検出装置を校正するための方法及び装置と、特定技術分野における物体を磁化するための装置の使用と、特定技術分野における力及びトルクの検出装置を校正するための装置の使用とを提供することによって達成される。
【0006】
本発明の一実施形態によると、第一物体又は第二物体あるいは第一及び第二物体を磁化するための方法が提供され、該方法は第一物体が第二物体を取り囲むように第一物体を配置するステップと、第一電気信号を第二物体に加えるステップとを含み、そこでは該第一電気信号によって、第一物体又は第二物体あるいは第一及び第二物体の少なくとも一部分が磁化されるように構成される。
【0007】
本発明の別の実施形態によると、第一物体又は第二物体あるいは第一及び第二物体を磁化するための装置が提供される。装置は第一物体、第二物体及び電気信号源を含む。第一物体は、第一物体が第二物体を取り囲むように配置される。電気信号源は第一電気信号を第二物体に加えるように構成され、そこで第一電気信号によって、第一物体又は第二物体あるいは第一及び第二物体の少なくとも一部分が磁化される。
【0008】
本発明の更に別の実施形態によると、力及びトルクの検出装置を校正するための方法が提供され、該方法は、物体上の磁気的にエンコードされた領域及び物体に加えられた力又はトルクから生じる信号を検出するように構成された磁場検出器を有する、力及びトルクの検出装置を配置するステップと、物体に既知の力を加えるステップと、物体に加えられた既知の力に起因する信号を検出するステップと、既知の力と当該既知の力に起因する検出信号との間の相関関係に基づいて力及びトルクの検出装置を校正するステップとを含む。
【0009】
更には、本発明の別の実施形態によると、力及びトルクの検出装置を校正するための装置が提供され、該装置は、力及びトルクの検出装置と、既知の力を発生させる要素と校正ユニットを含む。力及びトルクの検出装置は、物体上の磁気的にエンコードされた領域、及び物体に加えられる力又はトルクから生じる信号を検出するように構成された磁場検出器を有する。既知の力を発生させる要素は、物体に既知の力を加えるように構成され、そして校正ユニットは、既知の力とこの既知の力に起因する検出信号との間の相関関係に基づいて、力及びトルクの検出装置を校正するように構成される。
【0010】
本発明の別の実施形態によると、上記した特長を持つ装置は、採鉱シャフト、コンクリート処理シリンダ、ギアボックス内のプッシュプルロッド、及びエンジンシャフトからなるグループ中の1つを磁化するために使用される。
【0011】
また、本発明の別の実施形態によると、上記した特長を持つ装置は、採鉱シャフト、コンクリート処理シリンダ、ギアボックス内のプッシュプルロッド、及びエンジンシャフトからなるグループの力及びトルクの検出装置を校正するために使用される。
【0012】
尚、本明細書で、「磁化」という表現は特に、微視的な磁石又は要素磁石、つまり、磁化可能な材料内に存在する磁気モーメント、磁性粒子又は磁区について、少なくともそれらの一部分がある特定の方向に整列し、ランダムな磁場方位が少なくとも部分的に除去されるように処理されることを意味する。
【0013】
第一物体を磁化するための方法、及び上述の例示的な実施形態による第一物体を磁化するための装置は、第一物体によって取り巻かれた第二物体に電気信号を加えることによって第一物体が磁化されるという利点を持つ。例えば、第二の要素としてのワイヤ、シャフト又はロッドは、第一物体としての中空シリンダによって取り囲まれる。そして、第二物体に対して適切な電気信号を加えることで、トランスの場合に起こる物理的効果と同様な物理効果によって第一物体内に磁化された領域を生成できる。換言すると、第二物体を通して流れる、電流パルスのような時間に依存した電気信号は、第一物体が磁化されるように、第一物体の磁化可能な材料に影響を与える磁場を生成する。本発明の磁化の方法は、特に採鉱及び掘削装置の分野で想起されるような、大型の中空シリンダであっても安価で容易な磁化が可能になる。従って、磁気的にエンコードされた領域は、既存の工業用の鋼鉄中空シリンダ又はチューブ内に形成することができる。これによって、例えば、掘削シャフトのような既存の磁化可能な物体内に磁気的にエンコードされた領域を設けることができ、そのような物体に加えられるトルク、曲げ力及び軸荷重を、磁化された物体の近くに配置されたコイルのような簡単な磁場検出器によって検出できるようになる。
【0014】
記載した実施形態によると、特に外側の第一物体が磁化される。但し、内側の第二物体が同様に磁化可能な材料でできている場合に、該第二物体が同時に磁化される。
【0015】
本発明の例示的な実施形態による第二物体を磁化するための方法及び装置に関連する別の利点には、選択された位置、例えば、第一物体の端部と第二物体の端部において、第一物体を第二物体に対して適時に接続する場合がある。そのような構成によると、第二物体を流れる電流がまた、そこで反対方向の磁場を形成するために第一物体に注入され、それによって物体中の電流分布が安定する。従って、高品質の磁気的にエンコードされた領域が第二物体内に形成され、より良好な再現性及び高い信頼性を持ったセンサーがもたらされる。
【0016】
記載した実施形態によると、特に内側の第二物体が磁化される。但し、外側の第一物体が同様に磁化可能な材料でできている場合に、第一物体が同時に磁化される。
【0017】
次に、力及びトルクの検出装置を校正するための方法及び装置について説明する。この校正方法の1つの構想は、単純に1つの既知の校正力、例えば、既知の質量物又は錘を、磁気的にエンコードされた領域(例えば、物体を磁化するための本発明の方法によって作られる)を持つ物体に加えることである。トルク及び力センサーに加えられるそのような重さ又は重力によって磁気信号が生じ、該信号は磁気的にエンコードされた領域の近傍に配置された磁場検出器によって検出される。従って、加えられた力と磁場検出器で得られた検出信号との相関性をもったデータ対が保存される。磁気的にエンコードされた領域は、例えば、物体を磁化するための上述の方法、又は上記特許文献1に記載の技術、又は以下に詳細について記載する、所謂PCME技術に従ったエンコードが可能である。
【0018】
そして、こうして測定された軸方向荷重と磁場検出器の検出信号との間の相関関係は、センサーの校正のために使用できる。このように校正された物体が、(例えば、掘削シャフトとして)実際に使用される場合に、測定された検出信号は、既知の質量を用いて推定された校正データの対を用いて、対応する軸方向荷重の力と関連付けることができる。また、校正中に、該校正を精緻化するために複数の校正データ対を測定することも可能である。
【0019】
更に、既知の軸方向荷重及びこれ対応する検出信号のデータ対はまた、校正情報として役立ち、該情報は、実際の使用中に、加えられるトルクを受けるセンサーとともに使用される。換言すると、軸方向荷重の校正は、トルクセンサーを校正する。この態様では、非常に重い物体を使用する応用において特に有利であり、例えば、採鉱用途における掘削シャフトの場合に、そのような掘削シャフトに加わるトルクを測定する場合に有用である。この場合、単に掘削シャフト、例えば、チューブを安定な地盤に置き、そして既知の質量要素を掘削シャフトの上部に置くことは非常に簡単である。これとは対照的に、トルクセンサーを校正するために、そのような掘削シャフトに校正用トルクを加えることは、非常に困難である。校正用の軸方向力を用いてトルクセンサーを校正することは、より簡単である。
【0020】
本発明のさらなる態様によると、上述した方法及び装置は採鉱シャフト、コンクリート処理シリンダ、ギアボックス内のプッシュプルロッド、及びエンジンシャフトに関して実施される。これら全ての適用形態において、そのようなトルク、力及び位置センサーの磁化及び校正は非常に有利である。というのも高精度で信頼できるように校正された、力、位置及びトルクのセンサーが、低コストで製造可能となるからである。特に、採鉱及び掘削装置に本発明のシステムが設けられ、掘削方向及び掘削力の監視に使用される。本発明のさらなる応用は、エンジンノッキングの評価及び解析である。
【0021】
従って、本発明によれば、大きな採鉱及び掘削装置の「作動中」に適用されて有効とされる、実際の機械力のリアルタイム(実時間)測定が可能となる。厳しい屋外条件及び研磨材料の取り扱いは、従来のセンシング技術では取り扱いが困難であるのに対して、本発明のシステムは何の問題もなしにそのような条件に適合できる。本発明によって測定される機械力は、トルク、曲げ、軸方向荷重及び潜在的な採鉱装置の過負荷である。
【0022】
本発明の磁化方法によって、ユニークなパワーシャフトエンコーディング工程が採用され、多種類の工業用鋼鉄の磁気特性を利用することができ、それにより標準的な掘削シャフトが高精密な力センサーに変わる。エンコーディング工程を応用するために要求される実際の時間はほんの一瞬であり、この時間は変わらない。掘削シャフトの所望の部分が本発明の工程で処理された後、シャフトの当該部分は、シャフトに加えられた機械力に関連して特定の信号を発する。この信号は、例えば、シャフト表面から数ミリメートル離れて置かれた受動の電気部品によって検出される。シャフトに何も付設する必要がなく、そして全くシャフトに触れる必要もないので、従って平均故障間隔がとても長い(即ち、本発明は非常に信頼性の高い検出の解決策を提供する)。この非接触とされる機械力の測定原理については、掘削又はパワー伝達シャフトの強磁性特性のみに依る。それは、シャフトのエンコード部分を通して伝わる機械的な力、つまり、回転トルク、曲げ力、せん断力、及び軸プッシュプル負荷を含む全ての機械力についてのリアルタイム情報を提供する。力センシング技術の全信号バンド幅は、ある実施形態によると29kHz又は毎秒約100,000測定サンプルである。また、掘削シャフトが機械的な過負荷にさらされて故障し、そのような時には、明確な信号を発生する。
【0023】
大きな装置では、機械力が対称に伝わらないか、パワーシャフト又は掘削シャフトを通して均等に分布しない場合がよくある。従って、例えば、磁場検出器は、より広い視野を得るために、シャフトのいくつかの危険箇所を「見る」。但し、特に静止状態で操作する装置(シャフトが回転しないような)では、多くの場合に1個の磁気検出装置のみで働くことが推奨される。
【0024】
本発明のセンサーは、水中や、オイルの中、又は非常に粉塵のある環境でさえ(コンクリートポンプやコンクリート混合ステーションのような)運転できる。該センサーは、非常に広い温度範囲、特に、−50℃から+210℃の温度に耐えられる。
【0025】
センサー信号検出ユニットは、磁場検出器から数メートル離間した特別注文製の専用電子回路に接続される。2本のワイヤのみ(「ツイストペア」)が、磁場検出器をこれに対応する電子回路に接続するために使用される。そのような電子回路の出力信号は、バッファされたアナログ+5V信号であり、+2500Vが零トルクに等しい。トルク、軸方向荷重又は曲げセンサーの場合に、全電流消費はセンサーチャンネル当り5mA未満である。
【0026】
磁場検出器は、磁気的にエンコードされた中空シャフトの外側か内側に置くことができる。そのようなシャフトを通して伝達される機械力が磁気的にエンコードされた部分を対称に通らないことを想定して、高解像度の「力の映像(force picture)」を把握できるように、数個の磁場検出器を、シャフトの周囲に幾何学的な配列で設置することができる。
【0027】
大型の掘削シャフトのエンコーディング工程については、特定の工場敷地に重いシャフトを輸送することの必要性を秘めており、これを排除するために、該工程を「現場」で行うことができる。エンコーディング装置はポータブル/可動性とされ、そして、ほぼ全ての気候条件下で使用できる。理想的な状況において、掘削シャフトはそれ自身、エンコーディング工程のために地上に置くことができる。但し、適正な状況では、掘削シャフトが掘削又は採鉱装置の中にまだ置かれている間に、該シャフトがエンコードされる。これは特に、シャフトに接近でき、該シャフトが覆い隠されていない場合に可能である。そのような移動可能な、磁化及び校正ユニットであれば、掘削シャフトの非常に近くまで持ってくることができる。
【0028】
本発明によるセンシング技術の特長は、永久的にエンコーディングされた掘削シャフトを校正する仕方である。1百万Nmのトルクを扱う能力をもった直径1mの掘削シャフトの場合に、シャフトのトルクセンサー校正のために「ビーム及び重量」法を適用することは通常困難である。水平で構造的に安定した表面にシャフトを真っ直ぐに置く場合に、磁気的にエンコードされたシャフトの測定性能については、「永久的」に埋め込まれた信号源の挙動の如何に依存して、比較的短い時間内に規定される。このことは、掘削装置が遠隔地で点検整備されて保守され、その場所に到達することが困難である場合において、特に有利である。
【0029】
本発明による機械力のセンシング技術は、掘削ヘッドが動いている方向を検出し、そして掘削ヘッド位置での掘削パイプの軸方向荷重(前方推力)を測定するために、大型オイル掘削装置において実施することができる。この応用では、全センサーシステムが、1,500バール(1億5千万Pa)を超える圧力と、200℃を超える温度にさらされる。別の応用では、センシングの方針が、大型の移動可能な又は移動するクレーンに加わる機械力を測定することにある。ここで、磁気的にエンコードされたセンサーの任務は、臨界的な負荷状態が起こる時に、クレーンが倒れ(倒れ落ちるか又は傾くことが)ないように防止することである。本発明の他の応用には、風力発電装置、大型押し出し装置、研磨剤ポンプステーション、及び大型の工業用ギアボックスシステムが挙げられる。
【0030】
第一物体(例えば、中空管)で取り囲まれた第二物体(例えば、シャフト)が、第一物体に電気信号を加えることで磁化可能であることを述べる。この態様は、第二物体を磁化するための方法に関連しており、該方法は、第一物体が第二物体を取り囲むように第一物体を配置するステップと、第一物体に電気信号を加えるステップとを含み、電気信号によって、少なくとも第二物体の一部分が磁化されるように構成される。この方法は、第一物体の外部で第二物体の端部が短絡される時に、例えば、2つのそのような端部が第一物体の外部にガイドされたワイヤによって互いに電気的に接続される場合に、特別に良く働く。
【0031】
次に、従属請求項を参照して、本発明のさらなる実施形態を説明する。
【0032】
以下に、物体を磁化する方法の例示的な実施形態について記述する。但し、これらの実施形態についてはまた、物体を磁化するための装置と、力及びトルクの検出装置を校正するための方法及び装置と、特定の技術分野における物体を磁化するための装置の使用と、特定の技術分野における力及びトルクの検出装置を校正するための装置の使用とに適用される。
【0033】
第一電気信号は、第一パルス信号又は一連の継続するパルス信号である。そのようなパルス信号は特に、ある規定の期間のみに零と異なる信号である。
【0034】
例えば、時間対電流図において、第一パルス信号は、基本的に垂直な、速い立ち上がりエッジを有し、緩やかな立ち下がりエッジを有する。そのようなパルス信号を用いると、得られる磁気的なエンコード領域が高い品質を持つ。また、複数のそのようなパルスを順次に印加して、磁気的なエンコード領域を形成することができる。
【0035】
第二電気信号は、第一電気信号を加えた後で第二物体に加えられ、第二電気信号が、少なくとも第一物体又は第二物体あるいは両物体の一部分が磁化されるように構成される。そして、第二電気信号は、振幅、符号、信号波形及び持続時間からなるグループのうちの少なくとも1つに関して第一電気信号と異なる。
【0036】
本実施形態によると、電流の流れる方向が反対とされる、2つのパルスが第二物体に印加される。
【0037】
第二電気信号は、第二パルス信号又は一連の継続するパルス信号であり、それは時間対電流図において、基本的に垂直な立ち上がりエッジを有し、そして遅い立ち下がりエッジを有する。
【0038】
本発明の方法の実施形態によると、第一物体は、第一電気信号及び第二電気信号を印加することによって磁化されるが、第一物体又は第二物体の表面あるいは第一物体及び第二物体の表面に対して基本的に垂直な方向において磁場構造が生成されて、第一方向に第一磁気流(電磁流量)が生じ、そして第二方向に第二磁気流が生じ、その際、該第一方向が第二方向とは反対とされる。2層の磁化の幾何学的方向は、磁化可能な材料に印加される2つの異なるパルスに起因し、これにより、以下に記述する技術に従ってPCMEのようなセンサーが製造される。
【0039】
第二電気信号はまた、電流又は電圧である。
【0040】
次に、物体を磁化するための装置の例示的な実施形態について記述する。但し、これらの実施形態はまた、物体を磁化するための方法と、力及びトルクの検出装置を校正するための方法及び装置と、特定技術分野における物体を磁化するための装置の使用と、特定の技術分野における力及びトルクの検出装置を校正するための装置の使用に適用される。
【0041】
第一物体は中空管である。例えば、第二物体を取り囲む第一物体には、中空円筒等を用いることができる。この構造は、非常に対称的な幾何学的構造を提供し、製造が容易である。しかしながら、中空管として配置される第一物体については、必ずしも円形の断面をもつ必要はなく、多角形(例えば、三角形又は四角形)の幾何学的構造の断面を持つことができる。そのような、更に非対称な配置を用いてセンシング特性を改善することができる。
【0042】
第二物体は、ワイヤ又はシャフト又は中空管である。そのようなシャフト又はワイヤは、第一物体の対称軸に沿って配置され、特に中空管として具体化される第一物体の対称軸に沿って配置される。第二物体が中空管である実施形態において、第二物体としての中空管の半径は、第一物体としての中空管の半径より小さく、よって、第二物体は第一物体によって取り囲まれる。中空管として配置される第二物体は、必ずしも円形断面をもつことはなく、また多角形(例えば、三角形又は四角形)の幾何学的構造の断面を持つことができる。そのような、更に非対称な配置を用いてセンシング特性を改善することができる。
【0043】
第二物体は、第一物体の中心に配置される。この構成において、非常に対称な電流及び磁場の分布が達成される。
【0044】
電気信号源はキャパシタ・バンクを含む。そのようなキャパシタ・バンクは複数のキャパシタ(コンデンサ)を含み、それらは全体で、非常に大きな電流振幅及び小さな時間幅をもったパルス信号を生成することができ、特に採鉱及び掘削装置の分野で想起される大きな物体を磁化するために生成される。そのようなキャパシタ・バンクは、例えば、0.5Fの容量を持つ。キャパシタ・バンクの他の選択肢として、電気信号源又は電力源が、通常の電源装置又はパワーパックを備えてもよい。
【0045】
第一物体は、第一接続部を持ち、そして第二接続部を持ってもよいし、第二物体が第一電気接続部及び第二電気接続部を持ってもよい。第一物体の第二電気接続部は、第二物体の第一電気接続部に結合される。この実施形態によると、2つの物体は、第一物体の一部分(例えば、1つの端部)が、第二物体の一部分(例えば、1つの端部)に結合するようにして接続される。この構成によって、第二物体を通して流れる電流が第一物体に注入され、電流を発生する磁場の「フィードバック」が達成される。このフィードバックによって、反対方向の磁場が第一物体に発生され、第二物体を通して流れる電流とともに、非常に対称な配置を与え、そして物体内部に有利な電流分布が生じる。この種の磁気的エンコーディングを有するトルク及び力のセンサーは、非常に高い信号対ノイズ(S/N)比と、小さいヒステリシスを持つ。
【0046】
前述の実施形態に関して、電気信号源は、第一電気信号が第一物体の第一電気接続部と第二物体の第二電気接続部との間で印加できるように接続される。この回路構成によると、電流は、第一物体の第一電気接続部から第一物体の第二電気接続部へ、そしてそこから第二物体の第一電気接続部へ、そしてそこから第二物体の第二電気接続部へと流れる。
【0047】
第一物体は第三電気接続部を持つこともでき、そして第二物体が第三電気接続部を持ってもよい。
【0048】
この実施形態に関して、電気信号源は、第一電気信号が第一物体の第一電気接続部と第二物体の第二電気接続部との間で印加できるように接続され、そして、第二電気信号が、第一物体の第三電気接続部と第二物体の第三電気接続部との間で印加できるように接続される。この構成により、第一及び第二物体の両端部から磁化電流を流すことができるとともに、第一及び第二物体がそれらの中央部で互いに電気的に結合される。
【0049】
装置は更に、第一物体の第二電気接続部を第二物体の第一電気接続部に結合するように配置された導電性結合要素を備えてもよい。そのような導電性結合要素は、金属板のような導電性プレートであり、それは第二物体としてのシャフトの一端部に結合され、そして第一物体としての中空管の一端面に結合される。しかしながら、導電性結合要素はまた、簡単なワイヤ等で実現してもよい。導電性結合要素はまた、導電性の液体、例えば、水銀をベースにしたもので実現してもよい。
【0050】
第一物体に加えて、第二物体は第一電気信号が印加された場合に磁化されるように構成することができる。換言すれば、第一物体が第二物体を取り囲むようにされた上述の配置によると、両方の物体が磁化され、それらはトルク又は力センサーの磁化された物体として使用できる。
【0051】
第二物体は第一接続部及び第二接続部を含むことができ、電気信号源は第二物体の第一接続部と第二接続部の間に接続される。この回路構成によると、電気信号源は、第一物体と断絶される。換言すると、この構成はトランスのような配置と考えることができ、第二物体を取り巻く第一物体が、2つの物体の間に直接のオーム接触なしに磁化される。これに関連して、第一物体の磁化は、第二物体に伝播する電気信号によって生じ、そして第一物体の材料における要素磁石を整列させることによって起きる。
【0052】
1つの典型的な実施形態によると、第二物体の一部は、第一物体により包囲されず、そして更に装置は遮蔽要素を含むことができる。該遮蔽要素は、第一物体で包囲されない第二物体の部分を、第一物体から電磁的に遮蔽するように配置及び構成される。この実施形態では、電気信号源への第二物体の配線がまた、磁場を発生させること、即ち、第一物体で包囲され又は取り囲まれた第二物体の部分によって発生する磁化を弱めるように、第一物体に影響を及ぼす磁場が発生することを考慮している。そのような望ましくない弱化を回避し、そして第一物体における一様且つ再現可能な磁化を達成するために、遮蔽要素は、第一物体で覆われていない第二物体の配線部分によって発生する磁場を遮蔽する。
【0053】
そのような遮蔽要素は、例えば、チューブのような物体でも良く、それは、第一物体と第一物体で包囲されない第二物体の部分との間に配置される磁化可能な材料で形成されるという選択肢もある。この構成では、遮蔽要素が、ある種の磁気的な「影」を形成し、第一物体を、第一物体により覆われていない第二物体の一部分から磁気的に分断する。
【0054】
また、遮蔽要素は、一本のチューブ(磁化可能な材料で任意に形成される)でもよく、これは、第一物体で包囲されない第二物体の部分を取り囲むように配置される。この実施形態によると、遮蔽チューブは、第一物体によって囲まれていない第二物体の部分のうち、その少なくとも一部分を取り囲む。
【0055】
別の選択肢として、遮蔽要素は、複数のチューブ(磁化可能な材料で任意に形成される)でもよく、それらは、第一物体で包囲されない第二物体の部分のうち、少なくとも一部分を取り囲むように配置される。そのような遮蔽チューブについては、遮蔽されるべき第二物体の部分の周りに、対称的に配置してもよい。
【0056】
次に、力及びトルクの検出装置を校正するための装置の実施形態について説明する。但し、これらの実施形態はまた、物体を磁化するための方法及び装置と、力及びトルクの検出装置を校正するための方法と、特定技術分野における物体を磁化するための装置の使用と、特定技術分野における力及びトルクの検出装置を校正するための装置の使用に適用する。
【0057】
校正装置において,既知の力を発生させる要素には既知の錘を用いることができる。この既知の錘は、例えば、1000kgとされ、これは、校正されるべき中空円筒状をした、力及びトルク検出装置の上部にただ載置されて、検出装置に加えられる一定且つ既知の軸方向荷重を形成し、それによって高精度な校正が可能となる。
【0058】
また、既知の力を発生させる要素は、既知のせん断応力を加えるように構成される。せん断応力を加えることによって、一対のデータ値(力と、これに起因する磁気信号)を校正のための基礎として得ることができる。
【0059】
あるいは、既知の力を発生させる要素が、既知のトルク、特に既知の反作用トルクであるように構成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
本発明の上記及び他の性質、目的、特長及び利点は、同一の部分又は要素が同一の参照番号で示してある添付の図と一緒に、次の説明及び添付の請求項から明白になる。
【0061】
先ず、シャフトのようなセンサー素子を持つセンサーを開示する。センサー素子は次の製造工程に従って製造される。即ち、
・センサー素子に第一電流パルスを加える際に、
・第一電流パルスは、センサー素子の長手方向の軸に沿った第一方向に第一電流が流れるように加えられ、
・第一電流パルスは、電流パルスを加えることによってセンサー素子内に磁気的にエンコードされた領域を生成する。
【0062】
更に別の第二電流パルスがセンサー素子に加えてもよいことを開示する。この第二電流パルスは、センサー素子の長手方向の軸に沿った方向に第二電流が流れるように加えられる。
【0063】
また、第一及び第二電流パルスの方向が互いに反対でもよいことを開示する。また、第一及び第二電流パルスの各々が立ち上がりエッジ及び立ち下りエッジを持ってもよい。例えば、立ち上がりエッジは立ち下がりエッジより急勾配である。
【0064】
電流パルスを加えることにより、センサー素子内に磁場構造がもたらされ、該構造は、センサー素子の断面図において第一方向をもつ第一の環状磁気流と、第二の方向をもつ第二磁気流が存在するものとされる。第一磁気流の半径は、第二磁気流の半径より大きくてもよい。円形でない断面を持つシャフトにおいては、磁気流が必ずしも円形でなく、基本的に、それぞれのセンサー素子の横断面に対応し、そしてこれに適合する形状を有する。
【0065】
トルクをセンサー素子に加えない場合、外部で検出できる磁場がないか、又は基本的に磁場が存在しないと考えられる。トルク又は力がセンサー素子にかかる時に、適切なコイルによって検出できる磁場がセンサー素子から発生する。このことについて、次に更に詳細に記述する。
【0066】
トルクセンサーは、センサー素子のコア領域を取り囲む円周表面を持つ。第一電流パルスは、センサー素子のコア領域内の第一方向に第一電流が流れるように、円周表面の第一位置でセンサー素子に導入される。第一電流パルスは円周表面の第二位置でセンサー素子から放出される。この第二位置は、第一位置から第一方向において離れている。第二電流パルスは、センサー素子のコア領域内又は該コア領域の近傍で第二方向に第二電流が流れるように、円周表面の第二位置又は第二位置の近傍でセンサー素子に導入されてもよい。第二電流パルスは、円周表面の第一位置又は第一位置の近傍でセンサー素子から放出される。
【0067】
既述のように、センサー素子はシャフトでもよい。そのようなシャフトのコア領域については、該コア領域がシャフトの中心を取り囲むように、長手方向に延びてシャフト内部に亘ってもよい。シャフトの円周表面はシャフトの外表面である。第一及び第二位置はそれぞれ、シャフトの外側の円周領域にある。それらの領域を構成する限定された数の接触部分があってもよい。例として、実際の接触領域は、例えば、電極としての、真鍮リングでできた電極領域を設けることで与えられる。また、導体のコアについては、絶縁なしのケーブルのような導体とシャフトとの間に良好な電気接触を与えるように、シャフトの周りでループ状にされてもよい。
【0068】
第一電流パルスや第二電流パルスは、センサー素子の一端面でセンサー素子に加えられない。第一電流パルスは、40から1400アンペア、又は60から800アンペア、又は75から600アンペア、又は80から500アンペアの間に最大値を持つことができる。電流パルスは、適切なエンコーディングがセンサー素子になされるように最大値を持ってもよい。但し、各種の使用材料及びセンサー素子の各種形状及びセンサー素子の様々な大きさのために、電流パルスの最大値は、これらのパラメータに従って調節される。第二電流パルスは、同様の最大値を持ってもよいし、又は第一最大値より約10、20、30、40、又は50%小さい最大値を持ってもよい。しかしながら、第二電流パルスはまた、第一最大値より10、20、40、50、60、又は80%高くされた、高めの最大値を持ってもよい。
【0069】
これらのパルスの持続時間は同じであってもよい。しかしながら、第一パルスが第二パルスより充分に長い持続時間を持つことは可能である。あるいは、第二パルスが第一パルスより長い持続時間を持つこともまた可能である。
【0070】
第一及び/又は第二電流パルスは、パルスの開始から最大値までの第一持続時間を持ち、そして最大値から基本的にパルスの終了までの第二持続時間を持つ。第一持続時間は第二持続時間よりも十分に長くてもよい。例えば、第一持続時間は300msより短くてもよく、第二持続時間は300msより長くてもよい。尚、第一持続時間が200msより短く、第二持続時間は400msより長いこともまた可能である。また、第一持続時間が20msから150msの間にあってもよく、その場合、第二持続時間は180msから700msの間にあってもよい。
【0071】
既述のように、複数の第一電流パルスのみでなく複数の第二電流パルスを加えることも可能である。センサー素子を鋼鉄で作ってもよく、その鋼鉄がニッケルを含んでもよい。一次側センサー、つまり、センサー素子に使用するセンサー材料は、DIN1.2721、又は1.4313、又は1.4542、又は1.2787、又は1.4034、又は1.4021、又は1.5752、又は1.6928に記載の、50NiCr13、又はX4CrNi13−4、又はX5CrNiCuNb16−4、又はX20CrNi17−4、又はX46Cr13、又はX20Cr13、又は14NiCr14、又はS155であってもよい。
【0072】
第一電流パルスは、少なくとも第一電極及び第二電極を持つ電極システムによって加えられる。第一電極は第一位置か又は第一位置の近傍に配置され、そして第二電極は第二位置か又は第二位置の近傍に配置される。
【0073】
第一及び第二電極の各々は複数の電極ピンを持ってもよい。第一及び第二電極の各々において複数の電極ピンは、センサー素子の周りに円周方向に配置され、センサー素子が、第一及び第二位置でシャフトの外部円周表面における複数の接触点で第一及び第二電極の電極ピンによって接触される。
【0074】
上記したように、電極ピンの代わりに、層状又は2次元電極表面を用いてもよい。例えば、電極表面は、電極とシャフト材料の間との良好な接触を保証するように、シャフトの表面に適用される。
【0075】
少なくとも第一電流パルスの1つ及び少なくとも第二電流パルスの1つをセンサー素子に加えてもよく、それによってセンサー素子が磁気的にエンコードされた領域を持ち、センサー素子の表面に対して基本的に垂直な方向において、センサー素子の磁気的にエンコードされた領域は、第一磁気流が第一方向で、第二磁気流が第二方向とされるように磁場構造を持つことになる。第一方向が第二方向とは反対とされる。
【0076】
センサー素子の断面図において、第一方向及び第一半径を持つ第一円形磁気流が生じ、そして第二方向及び第二半径を持つ第二円形磁気流が生じる。第一半径は第二半径より大きくてもよい。
【0077】
更に、センサー素子は、第一位置の近傍に第一ピン止めゾーンを持ち、そして第二位置の近傍に第二ピン止めゾーンを持ってもよい。
【0078】
ピン止めゾーンは次の方法に従って形成できる。この方法によると、第一位置又は第一位置の近傍に第一ピン止めゾーンを形成するためには、第二方向に第三電流が流れるように、第三電流パルスをセンサー素子の円周表面に加える。この第三電流は、第二方向において第一位置から離れた第三位置でセンサー素子から放出される。
【0079】
また、第二位置又は第二位置の近傍に第二ピン止めゾーンを形成するためには、第一方向に第四電流が流れるように、第四電流パルスを円周表面でセンサー素子に加えてもよい。この第四電流は、第一方向において第二位置から離れた第四位置で放出される。
【0080】
トルクセンサーは、磁気的にエンコードされた領域を持つ第一センサー素子を含んで提供され、この第一センサー素子は1つの表面を持つ。第一センサー素子の表面に対して基本的に垂直な方向において、第一センサー素子の磁気的にエンコードされた領域は、第一磁気流が第一方向とされ、そして第二磁気流が第二方向とされるように磁場構造を持つことができる。第一及び第二方向は互いに反対とされる。
【0081】
トルクセンサーは更に、1つ以上の磁場検出器を用いた第二センサー素子を含んでもよい。この第二センサー素子は、磁気的にエンコードされた領域における変動(変化量)を検出するように構成される。より正確には、第二センサー素子は、第一センサー素子の磁気的にエンコードされた領域から出る磁場の変動を検出するように構成される。
【0082】
磁気的にエンコードされた領域は、第一センサー素子の一部に沿って長手方向に延びるが、第一センサー素子の一端面から当該第一センサー素子の他端面にまで広がってはいない。換言すると、磁気的にエンコードされた領域は、第一センサー素子の全てに沿って延びるものではなく、その一部分に沿ってのみ延びている。
【0083】
第一センサー素子は、第一センサー素子の材料における変化を持ち、これは、磁気的にエンコードされた領域を変えるために、又は磁気的にエンコードされた領域を生成するために、第一センサー素子に加えられる、少なくとも1つの電流パルス又はサージ電流によって引き起こされる。そのような材料の変化は、例えば、電流パルスを加える電極システムと各センサー素子の表面との間の異なる接触抵抗によって引き起こされる場合がある。また、そのような変化は、例えば、焦げ跡、色の違い、又は焼きなまし痕等である。
【0084】
上記の変化はセンサー素子の外表面にあり、第一センサー素子の端面にはないが、それは、電流パルスがセンサー素子の外表面に印加され、その端面には印加されないからである。
【0085】
磁気センサーのためのシャフトは、その横断面において反対方向に走る少なくとも2つの円形磁気ループを持つことができる。そのようなシャフトは、上述の製造方法に従って製造される。
【0086】
更に、シャフトは、同心円状に配置された少なくとも2つの円形磁気ループを持つように提供される。
【0087】
トルクセンサーのためのシャフトは、以下の製造ステップに従って製造されて提供され、先ず、第一電流パルスがシャフトに印加される。この第一電流パルスは、シャフトの長手方向の軸に沿った第一方向に第一電流が流れるようにシャフトに印加される。第一電流パルスは、該電流パルスを加えることにより、シャフト内に磁気的にエンコードされた領域が生成されるように加えられる。これは、上述の電極システムを使用することによって、そして上述の電流パルスを加えることで行われる。
【0088】
電極システムは、トルクセンサーのためのセンサー素子に電流サージを加えるために提供されてもよく、電極システムは少なくとも第一電極及び第二電極を持ち、第一電極はセンサー素子の外表面の第一位置に設置される。第二電極はセンサー素子の外表面の第二位置に設置される。第一及び第二電極は、第一及び第二位置において少なくとも1つの電流パルスを印加し、そして放出するように構成され、それにより、センサー素子のコア領域内に電流が流れる。少なくとも1つの電流パルスによって、磁気的にエンコードされた領域がセンサー素子の一部分に作られる。
【0089】
電極システムは、少なくとも2つのグループの電極を含んでもよく、その各々が複数の電極ピンを含む。各電極の電極ピンは1つの円上に配置され、センサー素子は、該センサー素子の外表面における複数の接触点で該電極の電極ピンと接触する。
【0090】
尚、センサー素子の外表面はセンサー素子の端面を含まない。
【0091】
図1は、本発明によるトルクセンサーの1つの典型的な実施形態を示す。トルクセンサーは、長方形の横断面を持つ第一センサー素子、つまりシャフト2を含む。第一センサー素子2は基本的に、Xで示された方向に沿って延びる。第一センサー素子2の中央部には、エンコードされた領域4が存在する。第一位置は参照番号10で示され、エンコードされた領域の一端部を示し、そして第二位置は参照番号12で示され、エンコード領域、つまり、磁気的にエンコードすべき領域4の他端部を示す。矢印14及び16は、電流パルスを加えることを示している。図1に示すように、第一電流パルスは第一位置10の隣又は近くの外部領域で第一センサー素子2に加えられる。例えば、後で詳述するように、第一位置に近く、そして、例えば第一位置10に沿って第一センサー素子2の外表面を囲む複数の点又は領域で、電流が第一センサー素子2に導入される。矢印16で示すように、電流パルスは、例えばエンコードされるべき領域4の端部に沿った複数の場所で第二位置12の近く又は隣、又はその場で第一センサー素子2から放出される。既述のように、複数の電流パルスを、位置10から位置12へ、又は位置12から位置10へと交互に変わる方向をもって順次に加えてもよい。
【0092】
参照番号6は、第二センサー素子を示しており、これは、例えば制御回路8に接続されたコイルである。この制御回路8は、第二センサー素子6による信号出力を処理するように構成され、出力信号は、第一センサー素子2に加えられるトルクに対応して制御回路から出力される。制御回路8はアナログ又はデジタル回路でもよい。第二センサー素子6は、第一センサー素子2のエンコードされた領域4から出る磁場を検出するように構成される。
【0093】
既述のように、第一センサー素子2に加えられる応力又は力が存在しないならば、第二センサー素子6によって検出される磁場は基本的に存在しない。しかしながら、応力又は力が第一センサー素子2に加えられる場合、エンコードされた領域から出る磁場に変化があり、殆ど磁場が存在しない状態からの磁場の増加が第二センサー素子6によって検出されるようになる。
【0094】
本発明の他の典型的な実施形態によると、たとえ第一センサー素子に加えられる応力が存在しない場合でも、第一センサー素子2のエンコードされた領域4の外部又は近傍で検出可能な磁場が存在し得ることに注意を要する。しかしながら、第一センサー素子2に加えられる応力が、エンコードされた領域4から出る磁場の変化を引き起こすことに注意すべきである。
【0095】
次に、図2a、2b、3a、3b、及び4を参照して、本発明の1つの典型的な実施形態によるトルクセンサーの製造方法を記述する。特に、その方法は第一センサー素子2の磁気的にエンコードされた領域4の磁化に関する。
【0096】
図2aから分るように、電流Iが磁気的にエンコードされる領域4の一端部に加えられる。既述したこの端部は参照番号10で示され、そして第一センサー素子2の外表面の円周部であってもよい。電流Iは、磁気的にエンコードされた領域(つまり、磁気的にエンコードされるべき領域)の別の端部で第一センサー素子2から放出され、その端部は参照番号12によって示され、これは第二位置と呼ばれる。電流は、第一センサー素子からその外表面で、好ましくは、位置12の近くか又は近傍の領域において円周方向に第一センサー素子から取り出される。位置10及び12の間の破線で示すように、位置10で又は位置10に沿って第一センサー素子に導入された電流Iは、コア領域を通して又はコア領域に平行して位置12に流れる。換言すると、電流Iは第一センサー素子2内のエンコードされるべき領域4を通って流れる。
【0097】
図2bは、AA’に沿った断面図を示す。図2bの概略的表現として、電流は×印で図2bの平面内に示される。ここで、電流は、第一センサー素子2の横断面の中心部に示される。上述の又は以下に記述される形状を持ち、そして上述の又は以下に記述される最大値を持つ電流パルスの導入によって、断面図における1つの方向、ここでは時計回り方向に、磁気流方向を持つ磁気流構造20が生じる。図2bに示す磁気流構造20は、基本的に円形で描かれている。しかしながら、磁気流構造20は、第一センサー素子2の実際の断面に適合し、例えば、より楕円的であってもよい。
【0098】
図3a及び3bは、本発明の1つの典型的な実施形態による方法のステップを示し、これは図2a及び2bに示したステップの後に適用できる。図3aは、第二電流パルスを加える本発明の1つの典型的な実施形態に従った第一センサー素子を示し、そして図3bは、第一センサー素子2のBB’に沿った断面図を示す。
【0099】
図3aから分るように、図2aに比較して、図3aにおいて矢印16で示された電流Iは、位置12又はその近傍でセンサー素子2に導入され、そして位置10又はその近傍でセンサー素子2から放出され、つまり取り出される。換言すると、電流は図3aにおいて、図2aで導入された場所で放出され、その逆もまた成立する。従って、図3aにおける第一センサー素子2への電流Iの導入及び放出によって、図2aにおける各電流とは反対に、磁気的にエンコードされるべき領域4を通る電流が生じる。
【0100】
電流は、図3bにおいてセンサー素子2のコア領域に示されている。図2bと図3bとの比較から分るように、磁気流構造22は、図2bにおける磁気流構造20とは反対の方向をもつ。
【0101】
以前に示したように、図2a、2b、3a、及び3bに描かれたステップを、個別に適用し、又は互いに継続的に適用してもよい。最初に図2a及び2bに描かれたステップが行われ、次に図3a及び3bに描かれたステップが行われる時、図4に描かれたエンコードされた領域4を通して断面図に描かれた磁気流構造が作られる。図4から分るように、2つの磁気流構造20及び22はともに、エンコード領域内にエンコードされる。従って、第一センサー素子2の表面に対して基本的に垂直な方向において、センサー素子2のコアに向かう方向に、第一磁気流が第一方向を持ち、そしてその下層で第二磁気流が第二方向を持つことになる。図4に示すように、磁気流の方向は互いに反対とされる。
【0102】
従って、第一トルクセンサー素子2にトルクが加わらない場合には、2つの磁気流構造20及び22が相殺し、エンコードされた領域の外部では基本的に磁場が存在しない。しかしながら、応力又は力が第一センサー素子2に加わる場合に、磁気流構造20及び22は相殺を止め、エンコードされた領域の外部に磁場が生じ、これが第二センサー素子6によって検出される。このことについては、以下に詳述する。
【0103】
図5は、本発明の1つの典型的な実施形態による第一センサー素子2の別の典型例を示すが、これは、本発明の1つの典型的な実施形態に従った製造方法によって製造される1つの典型的な実施形態によるトルクセンサーに使用してもよい。図5から分るように、第一センサー素子2は、例えば、図2a、2b、3a、3b、及び4に描かれたステップ及び配置に従ってエンコードされるエンコード領域4を持つ。
【0104】
位置10及び12の近傍に、ピン止めゾーン42及び44を配置する。これらのゾーン42及び44は、エンコード領域4の不安定性を回避するために設けられる。換言すれば、ピン止めゾーン42及び44によって、エンコード領域4の開始位置と終了位置が、より明確になる。
【0105】
要するに、第一ピン止めゾーン42は、例えば、図2aを参照して記述されたのと同じ方法で、第一位置10の近く又は近傍で電流38を第一センサー素子2に導入することによって形成される。しかしながら、電流Iは、位置10の近く、つまり、そこでエンコードされる領域の端部から離れた第一位置30において第一センサー素子2から放出される。この追加の場所は参照番号30によって示される。この追加の電流パルスIの導入は、矢印38で示され、そして、その放出については矢印40で示す。電流パルスは、上述したのと同じ形状で最大値を有するものとされる。
【0106】
第二ピン止めゾーン44を形成するために、電流は、位置12の近く、つまりその近傍でエンコードされる領域4の端部から離れた位置32で第一センサー素子2に導入される。それから、電流は、位置12又はその近くで第一センサー素子2から放出される。電流パルスIの導入については、矢印34及び36で示す。
【0107】
ピン止めゾーン42及び44について好ましくは、これらのピン止めゾーン42及び44の磁気流構造が、近接したエンコード領域4において、それぞれに近接する磁気流構造とは反対の方向とされる。図5から分るように、ピン止めゾーンについては、エンコード領域4のコーディング又は完全なコーディングの後で、第一センサー素子2にコード化される。
【0108】
図6は、本発明の別の典型的な実施形態を示すが、そこではエンコード領域4が存在しない。換言すれば、本発明の1つの典型的な実施形態によると、ピン止めゾーンについては、磁気的にエンコードされる領域4を実際にエンコーディングする前に、第一センサー素子2にコード化される。
【0109】
図7は、本発明の1つの典型的な実施形態によるトルクセンサーのための第一センサー素子2を製造する方法についての、単純化したフローチャートを示す。
【0110】
ステップS1での開始後、方法はステップS2に続き、図2a及び2bを参照して記述したように、第一パルスが加えられる。それから、ステップS2の後に、方法はステップS3に続き、図3a及び3bを参照して記述したように、第二パルスが加えられる。
【0111】
それから、方法はステップS4に続き、ピン止めゾーンが第一センサー素子2にコード化されるべきか否かが決定される。ステップS4においてピン止めゾーンがないと決定される場合に、方法はステップS7に続き、そこで終了する。
【0112】
ステップS4においてピン止めゾーンが第一センサー素子2にコードされると決定された場合に、方法はステップS5へと続き、第三パルスが矢印38及び40で示されている方向でピン止めゾーン42に加えられ、そして矢印34及び36で示されている方向でピン止めゾーン44に加えられる。それから、方法はステップS6へと続き、第四パルスがそれぞれのピン止めゾーン42及び44に加えられる。ピン止めゾーン42に対して、第四パルスは、矢印38及び40で示した方向と反対の方向で加えられる。また、ピン止めゾーン44に対して、第四パルスが、矢印34及び36と反対の方向を持つピン止めゾーンに加えられる。それから、方法はステップS7に続き、そこで終了する。
【0113】
換言すると、2つのパルスは、磁気的にエンコードされる領域4をエンコード化するために加えられる。これらの電流パルスは、例えば反対の方向を持つ。更に、それぞれ対応する方向を持つ2つのパルスは、ピン止めゾーン42に加えられ、そしてピン止めゾーン44に加えられる。
【0114】
図8は、磁気的にエンコードされる領域4及びピン止めゾーンに加えられるパルスの電流対時間図形を示す。図8のy軸の正方向が、x方向への電流を示し、そして図8のy軸の負方向が、y方向への電流を示している。
【0115】
図8から分るように、磁気的にエンコードされる領域4のコーディングのために、最初にx方向への電流パルスを加える。図8から分るように、パルスの立ち上がりエッジが非常に鋭いのに対して、その立ち下りエッジは、立ち上がりエッジの傾向に比較して比較的長い傾向を持つ。図8に示すように、パルスは約75アンペアの最大値を持ってもよい。他の応用では、パルスは図8に示すほど鋭くなくてもよい。しかしながら、立ち上がりエッジは、立ち下がりエッジよりも更に急傾斜であるか、又は短い持続時間を持つべきである。
【0116】
それから、第二パルスは反対の方向をもって、エンコード領域4に加えられる。該パルスは、第一パルスと同じ形状を持ってもよい。しかしながら、第二パルスの最大値はまた、第一パルスの最大値と異なってもよい。パルスの周辺の形状は異なっていてもよい。
【0117】
それから、ピン止めゾーンのコーディングのために、第一及び第二パルスに類似したパルスが、図5及び6に関連して記述されたように、ピン止めゾーンに加えられる。そのようなパルスが、ピン止めゾーンに同時に加えられてもよいし、また、各々のピン止めゾーンに連続して加えられてもよい。図8に描かれているように、パルスは第一及び第二パルスと基本的に同じ形状を持ってもよい。但し、その最大値はもっと小さくてもよい。
【0118】
図9は、本発明の1つの典型的な実施形態によるトルクセンサーの第一センサー素子についての別の典型的な実施形態を示しており、磁気的にエンコードされる領域4をコード化するために、電流パルスを加える電極配置を示す。図9から分るように、絶縁されていない導線は第一センサー素子2の周りにループ状にされてもよく、その場合、この第一センサー素子2は、図9から分るように円形の横断面を持つ円形シャフトとされる。導線が第一センサー素子2の外表面に密着することを保証するためには、導線を矢印64で示すようにクランプしてもよい。
【0119】
図10aは、本発明の1つの典型的な実施形態による第一センサー素子の別の典型的な実施形態を示す。更に、図10aは、本発明の1つの典型的な実施形態による電極システムの別の典型的な実施形態を示す。図10aに描かれた電極システム80及び82は、第一センサー素子2に接触し、該素子は、2つの接触点を持つ三角形の横断面を有している。これらの接触点は、領域4、即ち、磁気的なエンコード領域としてエンコードされるべき領域の各側面において、三角形状の第一センサー素子の各面に付設される。よって、全体として、領域4の側面には6つの接触点がある。個々の接触点は互いに接続されてから1つの個々の接触点に接続される。
【0120】
電極システムと第一センサー素子2との間の接触点が限定された数のみであって、そして印加する電流パルスが非常に高い場合には、電極システムの接点と第一センサー素子2との間の異なる接触抵抗によって、電極システムの接触点で第一センサー素子2に焦げ跡をもたらす場合がある。これらの焦げ跡90は、変色であったり、溶接斑点であったり、焼きなまし箇所であったり、又は単なる焦げ跡である。本発明の1つの典型的な実施形態では、接触点の数を増やすか、又はそのような焦げ跡90を回避するような接触表面が設けられる。
【0121】
図11は、本発明の1つの典型的な実施形態による円形横断面を持つシャフトである第一センサー素子2の別の典型的な実施形態を示す。図11から分るように、磁気的にエンコードされる領域4は、第一センサー素子2の一端寄りの領域にある。本発明の1つの典型的な実施形態によると、磁気的にエンコードされる領域4は、第一センサー素子2の全長に及んではいない。図11から分るように、それはその一端に設置してもよい。但し、本発明の1つの典型的な実施形態によると、電流パルスは第一センサー素子2の外部円周表面から加えられるが、第一センサー素子2の端面100から印加されないことに注意を要する。
【0122】
次に、所謂PCME(「Pulse−Current−Modulated−Encoding」パルス電流変調エンコーディング)センシング技術について詳述する。それは、本発明の1つの典型的な実施形態によると、本発明によって部分的に消磁される、磁化可能な物体を磁化するために提供できる。そして、PCME技術は、部分的にトルク検出との関連で記述される。しかしながら、この概念は位置検出との関連でも同様に提供される。
【0123】
この記述では、多数の頭字語が使用されるが、そうでないと多くの説明及び記述が読みにくくなるからである。「ASIC」、「IC」、及び「PCB」の頭字語が既に市場標準の定義である一方で、特に磁気歪に基づいたNCTセンシング技術に関係する多くの用語がある。この記述で、NCT技術、又はPCMEへの言及がある場合に、それは本発明の典型的な実施形態に参照されることに注意を要する。
【0124】
表1は、PCME技術の以下の記述において使用する略語のリストを示す。
【表1】
【0125】
磁気の法則に基づく機械的応力のセンシング技術によって、強磁性材料が使用される場合に応用できる広範囲の「物理パラメータセンサー」(力センシング、トルクセンシング、及び材料診断解析のような)を設計して、生産することができる。「磁気の法則に基づいた」センサーを構築するために用いる最も一般的な技術は、誘導微分変位測定(捩じれシャフトを必要とする)、材料透磁率の変化の測定、そして磁気歪効果の測定である。
【0126】
過去20年以上、多数の様々な会社が、磁気的原理に基づくトルクセンサーをどのように設計し、そしてどのように生産するかに関して彼等自身の、そして非常に特殊な解決方法を開発してきた(即ち、ABB、FAST、Frauenhofer Institute、FT、Kubota、MDI、NCTE、RM、Siemens、その他)。これらの技術は、それぞれに開発段階にあり、そして「どのように働くか」、達成できる性能、システムの信頼性、そして製造及びシステム価格において異なっている。
【0127】
これらの技術のあるものは、トルクが測定されるべきシャフトに対して、機械的な変化が加えるか(シェブロン)、又は機械的な捩じれ効果(トルクで捩じれる長いシャフトを必要とする)に依存するか、又は何かがシャフト自身に付着すること(シャフト表面へのある特性を持つリングの圧入)、又は、特殊な物質でシャフト表面をコーティングすることを要求する。これまで誰も、厳しい性能許容値を達成して、(殆ど)どのシャフトサイズにも応用でき、そして既存の技術特許に基づかないところの大量生産工程を達成し得なかった。
【0128】
次に、磁気歪原理に基づく非接触トルク(NCT)センシング技術について記述する。これは以前に利用不可能であった非常に膨大な新しい特長及び改良された性能をユーザーに提供する。この技術は、充分に統合された(小さい空間で)、実時間(高い信号バンド幅)でのトルク測定を可能にし、それは信頼性があり、そして望まれる量が如何なる量であっても、手ごろな値段で生産できる。この技術は、PCME(Pulse−Current−Modulated−Encoding、パルス電流変調エンコーディング)、又は磁気歪横方向トルクセンサーと呼ばれる。
【0129】
PCME技術は、シャフトに機械的変化を与えずに、又はシャフトに何も付着しないでシャフトに応用できる。最も重要なことは、PCME技術が任意のシャフト直径に応用でき(殆ど全ての他の技術はこの点で限界を持つ)、そしてエンコーディング工程の間、シャフトを回転させ又はスピンさせる必要がなく(非常に簡単で低価格な製造工程)、これによって、この技術は大量生産の用途で大いに応用可能である。
【0130】
次に、磁場構造(センサー原理)について記述する。
【0131】
センサーの寿命は、「閉ループ」磁場設計に依存する。PCME技術は、互いの上に蓄えられ、反対方向に走っている2つの磁場構造に基づく。トルク応力又は運動応力がシャフト(別名センサーホスト、又はSH)に加わらない時、SHは磁気的に中性に振舞う(SHの外部で磁場は全く検出されない)。
【0132】
図12は、2つの磁場がシャフト内に生じ、閉じた円内を走っていることを示す。外側の磁場は1つの方向に走るとともに、その一方で内側の磁場はその反対方向に走る。
【0133】
図13は、PCMEセンシング技術が、互いに接近してできる2つの逆方向円形磁場ループを使用することを図示している(ピギーバックモード)。
【0134】
機械的応力(往復運動又はトルクのような)が、PCMEで磁化されたSH(センサーホスト又はシャフト)の両端に加えられる場合に、両方の磁気構造の磁束線(つまりループ)は、加えられたトルクに比例して傾く。
【0135】
図14に示すように、機械的応力がSHに加わらない時、磁束線はその最初の経路内で走る。機械的応力が加えられると、磁束線は加えられた応力(直線運動又はトルクのような)に比例して傾く。
【0136】
加えられたトルクの方向に依存して(SHに関して、時計回り又は反時計回り)、磁束線は、右に傾くか、又は左に傾く。磁束線が磁気的にエンコードされた領域の境界に到達すると、上層からの磁束線が下層からの磁束線と繋がり、その逆もまた同様である。そして、これは、完全に制御されたトロイダル形状を形成する。
【0137】
そのような磁気構造の利点は、以下の通りである。
・機械的応力がSHに加えられる場合の、減少した(殆ど排除された)寄生磁場構造(これは、良好なRSU性能をもたらす)。
・より高いセンサー出力信号勾配。これは、機械的な応力に関係する信号を発生するときに、互いに補足し合う2つの「アクティブな」層があることによる。
説明:単層センサー設計を用いる場合、エンコーディング領域境界に存在する「傾いた」磁束線は、1つの境界側から他の側へ「帰り道」を作らなければならない。この労力は、どれだけの信号が二次側センサーユニットを持つSHの外部でセンシングされ、そして測定されるために使用できるかに影響する。
・PCME技術が応用される場合、SH(シャフト)の大きさには殆ど制限がない。2層磁場構造は、如何なる中実の又は中空のシャフトの大きさにも応用できる。
・物理的な大きさ及びセンサー性能を非常に広範にプログラム化でき、従って目標の応用に合わせられる。
・このセンサー設計によって、シャフトに加えられる直線方向の力(負荷セルとして応用可能)を含む、全ての3次元軸から生じる機械的応力の測定が可能となる。
説明:初期の磁気歪センサー設計(例えば、FASTテクノロジーのもの)は、2次元軸のみに感度をもつように制限されており、直線上の力を測定できなかった。
【0138】
図15を参照すると、トルクがSHに加わる時、2つの逆方向の円形磁気ループの磁束線はセンサー領域の境界で互いに接続している。
【0139】
機械的トルク応力がSHに加わる時、磁場はもはや円の中で回らず、加えられたトルク応力に比例して幾分傾く。これは1つの層の磁場線を他の層の磁場線に接続させ、そしてこれによってトロイダル形状を形成する。
【0140】
図16を参照すると、これは、高レベルのトルクがSHに加わる場合、如何にして磁束線が角度を持ったトロイダル構造を形成するかについて誇張した表現で示している。
【0141】
次に、PCMエンコーディング(PCME)工程の特長及び利点について記述する。
【0142】
本発明によるNCTEからの磁気歪NCTセンシング技術は、以下に示す高性能センシング特性を提供する。
・センサーホストには、如何なる機械的な変化も要求されない(既存のシャフトをそのままで使用できる)。
・センサーホストに何も付着する必要がない(従って、シャフトの寿命の間、何も外れ落ちることがなく、変化することがない。即ち、高いMTBFである。)。
・測定中、SHは、あらゆる所望の速度で回転でき、往復運動ができ、又は動くことができる(rpmに制限なし)。
・非常に良好なRSU(Rotational Signal Uniformity回転信号一様性)性能。
・卓越した測定の線形性(FSの0.01%まで)。
・高い測定再現性。
・非常に高い信号分解能(14ビットより良い)。
・非常に高い信号バンド幅(10kHzより良い)。
【0143】
選択された磁気歪センシング技術のタイプ及び選択された物理的なセンサー設計に応じて、機械的パワー伝達シャフト(別名「センサーホスト」又はこれを短くした「SH」)は、それに如何なる機械的な変更をも加えることなく、また、シャフトに何ものをも付着せずに「そのままで」使用できる。これは「真の」非接触トルク測定原理と呼ばれ、これによって、シャフトが自由に、任意の所望の速度をもって両方向において回転できる。
【0144】
本発明の1つの典型的な実施形態によってここで記述されるPCMエンコーディング(PCME)製造工程は、如何なる他の磁気歪技術も提供できない追加的な特長を提供する(本技術のユニーク性)。
・他の選択肢の磁気歪エンコーディング工程(FASTの「RS」工程のような)と比較して3倍より大きい信号強度。
・容易で、簡単なシャフト装填工程(高い製造処理量)。
・磁気エンコーディング工程中に動く構成部品がないこと(複雑でない製造装置、即ち高いMTBF及び低価格)。
・1パーセント以下の目標精度を達成するために、NCTセンサーの「微調整」を可能にする工程。
・同一の工程サイクルにおいて、シャフトの「前処理」及び「後処理」を可能にする製造工程(高い製造処理量)。
・センシング技術及び製造工程はレシオメトリックであり、従って全てのシャフト径やチューブ直径に応用可能である。
・PCMエンコーディング工程は、SHが既に組み立てられている間に応用できる(接近可能性に依存する)(保守し易さ)。
・軸シャフトの運動に敏感でない最終センサー(実際に許容される軸シャフトの運動は磁気的にエンコードされた領域の物理的な「長さ」に依存する)。
・磁気的にエンコードされたSHは、中性のままであり、力(トルクのような)がSHに加えられないときには、殆ど無磁場である。
・全ての3次元軸において機械力に敏感である。
【0145】
次に、SHにおける磁束分布について記述する。
【0146】
PCME処理技術は、強磁性材料の望ましい、永久的な磁気エンコーディングを達成するために、SH(センサーホスト又はシャフト)を通して流れる電流を使用することに基づいている。望ましいセンサー性能及び特性を得るためには、非常に特殊で良く制御された電流が必要である。DC電流を使用した初期の実験は、どのようにして少量のDC電流と大量のDC電流が導体を流れるかについての理解に欠けていたために失敗した(この場合、「導体」は機械的パワーの伝達シャフトであり、別名センサーホスト又は短くして「SH」と呼ばれる。)。
【0147】
図17に、導体内の仮定された電流密度を示す。
【0148】
導体内の電流密度は、電流(DC)が導体を流れる時に、導体の全横断面に亘って一様に分布すると一般に仮定される。
【0149】
図18に、導体内で電流経路を束ねる磁場を形成する小さな電流を示す。
【0150】
少量の電流(DC)が導体を流れる時、電流密度は導体の中心で最高であるというのが我々の経験である。このことに対する2つの主な原因は、導体を流れる電流は、導体の中心で電流路を一緒に束ねている磁場を発生させること、そしてインピーダンスが導体の中心で最低であることによる。
【0151】
図19に、導体内の小さい電流の1つの典型的な流れを図示する。
【0152】
しかしながら、実際には電流は1つの接続極から他へと、「直」線で流れなくてもよい(天空の電気稲妻の形状のように)。
【0153】
あるレベルの電流では、発生した磁場が強磁性シャフト材料の永久磁化を引き起こすほど充分に大きい。電流がSHの中心の近く又はそこを流れるとき、永久にもたらされる磁場が同じ場所、即ちSHの中心の近く又は中心に存在する。今、シャフトに対して振動又は往復運動のために機械的なトルク又は線形力を加える時、内部に磁場をもったシャフトは、加えられた機械力に従ってその磁束経路を傾けることによって応答する。永久にもたらされる磁場がシャフト表面の下深くにあるとき、測定可能な効果は非常に小さく、一様でなく、従って信頼できるNCTセンサーシステムを作るには十分でない。
【0154】
図20には、飽和レベルでの導体内における一様な電流密度を示す。
【0155】
飽和レベルでのみ、電流密度(DCを用いる時)は導体全体の横断面に一様に分布する。この飽和レベルを達成する電流量は非常に多く、そして使用する導体の横断面及び伝導率(インピーダンス)に主に影響される。
【0156】
図21には、導体の表面下又は表面を流れる電流を示す(表皮効果)。
【0157】
導体内を交流(ラジオ周波数信号のような)が流れる時、信号が導体の表皮層を流れること、即ち、表皮効果と呼ばれることは一般に広く仮定される。交流の選択された周波数が、表皮効果の「場所/位置」及び「深さ」を規定する。高周波数において、電流は導体の表面を又は表面の近くを流れ(A)、他方、低周波数(20mm直径のSHの場合、5〜10Hzの領域)において、交流電流はシャフト横断面のもっと中心(E)を通過する。また、相対電流密度については、非常に低いAC周波数におけるシャフト中心付近の相対電流密度に比較して、より高いAC周波数において電流が占めている部分の方が高くなる(これは、低いAC周波数において、電流が流れるために利用可能な、より大きな面積があることによる)。
【0158】
図22には、異なる周波数をもって、交流を導体に流す場合における導体の電流密度(電流に対して90度の横断面)を示す。
【0159】
PCMEセンサー技術の望ましい磁場設計図は、2つの円形磁場構造であって、互いに近接する2つの層にもたらされ(「ピギーバック」)、そして互いに反対の方向に走っている(Counter−Circular:逆環状)の構造である。
【0160】
再び図13を参照すると、これは望ましい磁場センサー構造を示しており、つまり、互いに近接して位置し、互いに反対方向に走る、2つの閉じた磁気ループ、即ち、逆環状の「ピギーバック」磁場設計とされる。
【0161】
磁場設計を、SH(シャフト)に加えられる機械的な応力に対して高感度にするため、そして最も大きなセンサー信号を可能にするために、望ましい磁場構造は、シャフト表面に最も近いところに置かなければならない。円形磁場をSHの中心近くに置くことは、ユーザーに利用可能なセンサー出力信号の勾配を減少させ(センサー信号の多くは、強磁性のシャフト材料を通して伝わり、これは該材料が空気に比して一層高い透磁率を持つためである)、そして、センサー信号の不均一性を増加させる(二次側センサーに関連するシャフト回転及びシャフトの軸運動に関して)。
【0162】
図23には、シャフト表面の近くにできる磁場構造と、シャフトの中心付近にできる磁場構造を示す。
【0163】
AC(交流)を使用する場合に、SHの望ましい永久的な磁気エンコーディングを達成することは困難であり、これは、作られた磁場の極性が絶えず変化し、それ故にむしろ消磁システムとして働くことによる。
【0164】
PCME技術では、強電流(望ましい磁場構造の消失を防ぐために、「単極性」又はDC)がシャフト表面直下を流れることを要求する(センサー信号がシャフトの外側において一様であって、且つ測定可能であることを保証するため)。また、逆環状のピギーバック磁場構造を形成する必要がある。
【0165】
シャフトに2つの逆環状磁場構造を置くことは、該シャフトにそれらを交互に備えることによって可能である。最初、内側の層がSHにもたらされ、そしてその後に外側の層がより弱い磁気力(内側の層が偶然に中性化されて消去されることを防止する)を使用することによって生じる。これを達成するためには、FASTテクノロジーの特許に記述されているように、既知の「永久」磁石エンコーディング技術を適用することができ、又は、電流エンコーディングと「永久」磁石エンコーディングとの組み合わせを使用することによって行われる。
【0166】
もっと単純で速いエンコーディング工程は、電流のみを用いて、望ましい逆環状の「ピギーバック」磁場構造を実現することである。ここで最も挑戦的な部分は、逆環状の磁場を作ることにある。
【0167】
一様な電流は、電流方向(A)に関して、90度の角度において導電体の周りを走る一様な磁場を生成する。2つの導体を並べて置くと(B)、その時、2つの導体の間において磁場は互いの効果を打ち消し合うようになる(C)。尚、存在してはいるが、近接しておかれた2つ導体間に検出可能な(又は測定可能な)磁場はない。多数の導電体を並べて置く時(D)、「測定可能な」磁場は、「平らな」形状をした導体表面の外側を周回するようになる。
【0168】
図24には、一様な電流が流れる導体を横断面で見た時の磁気効果を示す。
【0169】
上記の「平らな」又は長方形の形状の導体を、「U」字型に曲げるものとする。「U」字型導体を通って電流を流すとその時、「U」字型の外形に沿った電流は、「U」字の内半部における測定可能な効果を打ち消している。
【0170】
図25を参照すると、「U」字型導体内の領域は、電流が導体を流れている時、磁気的に「中性」に見える。
【0171】
機械的応力が「U」字型導体の横断面に加えられない時、「U」字の内部(F)に磁場は存在しないように見える。しかし、「U」字型導体を曲げたり、又は捻ったりすると磁場はもはやその初めの経路(電流に対して90度の角度)に従わなくなる。加えられる機械力に依存して、磁場は幾分その経路を変え始める。その時点で、機械的な応力によってもたらされる磁場ベクトルは、導体の表面で、「U」字型の内部及び外部において感知され、そして測定される。この現象は非常に特別な電流レベルでのみ適用されることに注意すべきである。
【0172】
同じことが「O」型導体の設計にも当てはまる。「O」型導体(チューブ)を通して一様な電流を流すと、「O」型導体(チューブ)の内部で測定可能な磁場効果が互いに打ち消されてしまう(G)。
【0173】
図26を参照すると、「O」型導体内部の領域は、電流が導体を流れる時、磁気的に「中性」に見える。
【0174】
しかしながら、機械的な応力が「O」型導体(チューブ)に加えられる時、「O」型導体の内側に存在する磁場があったことが明白になる。内部の逆方向の磁場(外部磁場も同様)は、加えられるトルク応力に関連して傾き始める。この傾きの磁場が明瞭に感知され、そしてこれを測定できる。
【0175】
次に、エンコーディングパルス設計について記述する。
【0176】
SHの内部に望ましい磁場構造(逆環状のピギーバック磁場設計)を実現するために、本発明の方法における1つの典型的な実施形態によると、単極性の電流パルスがシャフト(又はSH)を通過する。「パルス」を使用することによって、望ましい「表皮効果」が得られる。「単極性」の電流方向(その電流の方向が変化しない)を使用することによって、生じる磁場効果が偶然に打ち消されることはなくなる。
【0177】
使用する電流パルスの形状は、望ましいPCMEセンサー設計を達成するために最も重要である。各々のパラメータは正確に且つ再現可能に制御されなければならず、該パラメータには、電流の立ち上がり時間、一定電流のオンタイム、最大電流振幅、そして電流の立ち下がり時間がある。また、電流が全シャフト表面に亘って非常に一様に出入りすることが非常に重要である。
【0178】
次に、長方形の電流パルス形状について記述する。
【0179】
図27に、長方形をした電流パルスを図示する。
【0180】
長方形をした電流パルスは、速い立ち上がり正エッジ及び速い立ち下り電流エッジを持つ。SHを通して長方形をした電流パルスを流す時、立ち上がりエッジがPCMEセンサーの目標磁場構造の形成に関与するのに対して、長方形をした電流パルスの平らな「オン」タイム及び立ち下がりエッジは逆効果を生じる。
【0181】
図28に、長方形をした電流エンコーディングパルス幅(定電流オンタイム)とセンサー出力信号勾配との間の関係を示す。
【0182】
次の例では、長方形状の電流パルスを用いて、直径15mmの14CrNi14シャフト内に逆環状の「ピギーバック」場が生成されて蓄えられた。パルス電流は、約270アンペアで最大値を持つ。また、パルスの「オンタイム」は、電子回路で制御された。エンコーディングパルスの立ち上がり及び立ち下がりエッジにおける高周波成分のために、この実験は真のDCエンコーディングSHの効果を精確には示すことができない。従って、1000msの定電流オンタイムパルスを流す時、センサー出力信号勾配曲線は20mV/Nmよりも上で最終的に平坦となる。
【0183】
速い立ち上がり電流パルスエッジを使用しない場合に(制御された一定のランプ勾配を使用するように)、センサー出力信号勾配は非常に悪化してしまう(10mV/Nm未満)。尚、この実験(14CrNi14を使用)では、信号のヒステリシスがFS信号の約0.95%であった(FS=75Nmのトルク)。
【0184】
図29に、いくつかの長方形の電流パルスを連続して使用することによるセンサー出力信号勾配の増加を示す。
【0185】
センサー出力信号勾配は、いくつかの長方形の電流エンコーディングパルスを連続して使用する場合に改善できる。他のエンコーディングパルス形状に比較すると、長方形の電流パルスにおける、速い立ち下がりの電流パルス信号勾配は、センサー出力信号勾配が最適な性能レベルに到達することを妨げる。少数(2から10)の電流パルスがSH(又はシャフト)に加えられた後では、センサー出力信号勾配がそれ以上大きくならないことを意味する。
【0186】
次に、放電電流パルス形状について記述する。
【0187】
放電電流パルスは定電流オンタイムを持たないし、そして速い立ち下がりエッジを持たない。従って、SHの磁気エンコーディングにおける主要で切実な作用は、この電流パルス型の速い立ち上がりエッジである。
【0188】
図30に示すように、PCMEセンサーを作るとき、急峻な立ち上がり電流エッジ及び典型的な放電曲線が最良の結果を与える。
【0189】
図31には、適正なパルス電流を特定することによるPCMEセンサー出力信号勾配の最適化を示す。
【0190】
パルス電流スケールの非常に低い端部(15mm直径のシャフトで、14CrNi14シャフト材料の場合、0〜75アンペア)において、放電電流パルス型は、強磁性シャフト内で持続する磁場を作り出すのに必要とされる磁場のしきい値を超えるほどには強力でない。パルス電流振幅を増加すると、2重の円形磁場構造がシャフト表面下に形成され始める。パルス電流振幅を増加すると、二次側センサーシステムの達成出来るトルクセンサー出力信号振幅も増加する。約400A〜425Aにおいて最適のPCMEセンサー設計が達成された(2つの逆方向を向いた磁場領域が、最良のセンサー性能に対する、互いの最適距離及び正しい磁束密度に達した。)。
【0191】
図32に、エンコーディングパルスの間の最適なPCME電流密度及び位置を持つセンサーホスト(SH)の横断面を示す。
【0192】
更にパルス電流振幅を増加する時、トルク力に関するセンサー信号振幅の絶対値は更に、しばらくの間増加する(図31の曲線2)が、一方で典型的なPCMEの全般的なセンサー性能は減退する(曲線1)。900Aのパルス電流振幅を過ぎると(15mm直径のシャフトの場合)、トルク力に関するセンサー信号振幅の絶対値が同様に降下し(曲線2)、PCMEセンサー性能は、その際、非常に悪くなる(曲線1)。
【0193】
図33に、各種の増加するパルス電流レベルについて、センサーホスト(SH)の横断面及び電気パルス電流密度を示す。
【0194】
電流がSHにおいて、より大きな横断面を占めるようになると、内部の円形部分と、外部の(シャフト表面の近くで)円形部分との間隔がより大きくなる。
【0195】
図34を参照すると、より良いPCMEセンサー性能が、逆環状の「ピギーバック」場の設計で間隔が狭い場合(A)に達成される。
【0196】
望ましい2重で逆向きの環状磁場構造は、二次側センサーの信号振幅をもたらすトルク力の下で閉ループ構造を作り難くなる。
【0197】
図35を参照すると、放電曲線を平らにすることはまた、センサー出力の信号勾配を増加させる。
【0198】
電流パルス放電時間を長くする(電流パルスを幅広くする)(B)と、センサー出力信号勾配が増加する。しかしながら、電流パルスの立ち下がりエッジを減少させるために必要な電流量は非常に多い。最高の実現可能なセンサー出力信号勾配を達成するためには、大きな電流振幅(最適の値で)と、可能な限り遅い放電時間とを組み合わせて使用することが、より実用的である。
【0199】
次に、一次側センサー処理に関連する電気接続装置について記述する。
【0200】
PCME技術(「PCME」技術という用語は、本発明の典型的な実施形態に関して使用されることに注意しなければならない)は、一次側センサーが生産される場所でシャフトを通して非常に大量のパルス変調電流を流すことに依存する。シャフトの表面が非常にきれいで、しかも導電性が高い場合に、多点の銅又は金の接続は、望ましいセンサー信号の一様性を達成するために充分である。重要なことはインピーダンスがシャフト表面への各々の接続点で同一であるということである。尚、このことは、ケーブルが主要な電流接続点(I)に接続する前に、ケーブル長(L)が同一であることを保証できる場合に、最良に達成出来る。
【0201】
図36には、シャフト表面への単純な電気的多点接続を示す。
【0202】
但し、多くの場合、信頼性があって再現性のある多点電気接続は、各々の接続点でインピーダンスが同一で、一定であることを保証することによってのみ達成できる。押圧されたバネを用いて、先鋭なコネクターが、シャフトの表面で可能な酸化又は絶縁層(多分、指紋によって作られた)を突き通す。
【0203】
図37に、バネ仕掛けの接触点を持つ多チャンネルの電気接続具を図示する。
【0204】
シャフトを処理する時、出来るだけ一様な方法で電流をシャフトに注入し、そして取り出すことが最も重要である。上の図は、シャフトの周りに取り付け具によって固定されている互いに絶縁された幾つかのコネクターを示す。この工具はシャフト処理保持クランプ(又は、SPHC)と呼ばれる。SPHCに必要とされる電気コネクターの数は、シャフトの外径に依存する。外径が大きいほど多くのコネクターが必要である。導電体同士の間隔は、1つの接続点から次の接続点まで同じでなければならない。この方法は対称「スポット」接触と呼ばれる。
【0205】
図38には、電気接続点の数を増やすことによって、パルス変調電流の出入りの取り組みを支援することが図示されている。それは、要求される電子回路の制御システムの複雑さを増すことにもなる。
【0206】
図39に、容易なシャフト取り付けのためにSPHCの開け方について1つの例を示す。
【0207】
次に、一次側センサー処理に関するエンコーディングの概要について記述する。
【0208】
主要シャフトのエンコーディングは、回転シャフトに適用される永久磁石を使用するか、又はシャフトの望ましい部分を通して流れる電流を使用することによって行われる。永久磁石を使用するときには、非常に複雑で連続する工程が、シャフト内で互いに接近した2層の閉ループ磁場を作るために必要となる。PCME手順を使用する時は、望ましい性能を達成するために可能な最も対称的な方法で、電流がシャフトに入り、そしてシャフトから出なければならない。
【0209】
図40を参照すると、2つのSPHC(Shaft Processing Holding Clamps:シャフト処理保持クランプ)が、計画されたセンシングエンコーディング領域の境界に位置される。1つのSPHCを通してパルス電流(I)がシャフトに入るが、一方で第二SPHCにおいてパルス電流(I)がシャフトを出る。2つのSPHC間の領域がそのとき一次側センサーに変わる。
【0210】
この特別なセンサー工程は、単一磁場(SF)エンコード領域を作る。この設計の1つの利点(以下に記述されるものに比較して)は、この設計が二次検出装置の場所に関して、あらゆる軸シャフト運動に対して敏感でないことである。この設計の不利な点は、軸(つまり一列に)に置かれたMFSコイルを使用する時、漂遊磁界(地球磁場のような)に対して敏感になることである。
【0211】
図41を参照すると、2重磁場(DF)エンコード領域(並んで反対の極性を持つ2つの独立に機能するセンサー領域を意味する)によって、軸(つまり線上に)に置かれたMFSコイルを使用する場合に、一様な漂遊磁界の効果が消去可能となる。しかしながら、この一次側センサー設計はまた、軸方向における(MFSコイルの場所に関係して)シャフトの運動の許容範囲を狭くする。PCME技術で2重磁場(DF)エンコード領域を作り出す2つの方法がある。それらは、磁気エンコード部分が1つからまた次へと作り出されるところの連続工程と、そして磁気エンコード部分が同時に作り出されるところの並行工程である。
【0212】
連続的な2重磁場設計の第一工程段階は、1つのセンサー部分を磁気的にエンコード化することであり(単一磁場工程と同一に)、それによって2つのSPHCの間隔が一次側センサー領域の所望の最終長の半分でなければならない。この工程の説明を単純化するため、最終的な一次側センサー領域の中央に置かれるSPHCを中央SPHC(C−SPHC)と呼び、そして中央SPHCの左側に置かれるSPHCをL−SPHCと呼ぶことにする。
【0213】
図42を参照すると、連続的な2重磁場エンコーディングの第二工程段階は、一次側センサー領域の中央に置かれるSPHCと(C−SPHCと呼ばれる)、そして中央SPHCの他の側(右側)に置かれる第二SPHC、R−SPHCと呼ばれるものを使用する。重要なことは、中央SPHC(C−SPHC)における電流方向が両方の工程段階で同一であることである。
【0214】
図43を参照すると、最終的な一次側センサー領域の性能は、2つのエンコード領域を相互の関連において如何に近くに置くことができるかに依存する。そしてこれは、使用する中央SPHCの設計に依存する。C−SPHCの軸方向における接触幅が狭いほど、2重磁場PCMEセンサーの性能が良くなる。
【0215】
図44は、本発明の別の典型的な実施形態によるパルスの加え方を示す。上の図から分るように、パルスは、シャフトの3箇所で加えられる。電流Iがシャフトに入る場所の中央電極の両側への電流分布のために、横方向の電極でシャフトを去る電流は、中央電極に入る電流の半分だけ、即ち、I/2である。電極はリングで描かれ、その大きさはシャフトの外表面の大きさに適合される。しかしながら、この本文において後述する複数のピン電極を含む電極のように、他の電極が使用される場合もあることに注意されたい。
【0216】
図45には、シャフトにトルク又は直線運動応力が加えられない時の2重磁場PCMEセンサー設計における2つのセンサー部分の磁束方向を示す。互いに逆方向の磁束ループ同士は相互作用しない。
【0217】
図46を参照すると、トルク力又は線形応力が1つの特別な方向に加えられる時、磁束ループは、シャフト内部において、増加する傾斜角度で走り始める。傾斜した磁束がPCME部分の境界に到達する時、図示のように磁束線は逆流方向の磁束線と相互作用する。
【0218】
図47を参照すると、加えられたトルクの方向が(例えば、時計回り方向から反時計回り方向へと)変化している時、PCMエンコードシャフト内部における逆流の磁束構造についての傾斜角度も変化する。
【0219】
次に、シャフト処理のための多チャンネル電流駆動部について記述する。
【0220】
シャフト表面への電流路についての、完全に同一のインピーダンスを保証できない場合には、電流制御駆動ステージがこの問題を克服するために使用される。
【0221】
図48に、小直径センサーホスト(SH)のための6チャンネル同期パルス電流駆動システムを示す。シャフト直径が大きくなると、電流駆動チャンネルの数が多くなる。
【0222】
次に、真鍮リング接触と対称「スポット」接触について記述する。
【0223】
シャフト直径が比較的に小さく、所望の検出領域においてシャフト表面がきれいでそして如何なる酸化もない場合には、簡単な「真鍮」リング(又は銅リング)接触法を、一次側センサーの処理に選択することができる。
【0224】
図49では、シャフト表面に対して、しっかりと取り付けられた真鍮リング(又は銅リング)が、電線のはんだ接続とともに使用される。2つの真鍮リング(銅リング)の間の領域がエンコードされる領域である。
【0225】
しかしながら、達成できるRSU性能については、対称「スポット」接触法を使用する場合よりも、はるかに低くなってしまう。
【0226】
次に、ホット・スポットの概念について記述する。
【0227】
標準の単一磁場(SF)PCMEセンサーは、ホット・スポット性能において非常に劣る。SF PCMEセンサー部分の外部磁束プロファイル(トルクが加えられたとき)は、近傍の環境における可能な変化(強磁性材料に関して)に非常に敏感である。SFエンコードセンサー部分の磁気境界が明瞭でないので(「ピン止め(pinned down)」されない)、それらは強磁性材料がPCME検出領域の近くに置かれる方向に向かって「拡がる(extend)」ことができる。
【0228】
図50を参照すると、PCME工程の磁化された検出領域は、検出領域の境界に接近する強磁性材料に非常に敏感である。
【0229】
ホット・スポットセンサー感度を減少するために、PCMEセンサー部分の境界は、それらをピン止めすることによって、明確に規定されることを要する(それらはもう移動できない)。
【0230】
図51に、2つのピン止め磁場領域を持つPCME処理の検出領域を示すが、その1つが検出領域の各側にある。
【0231】
ピン止め領域を検出領域の両側の近くに置くことによって、検出領域の境界は非常に特定な場所に束縛される。強磁性材料が検出領域に近づいて来る時、それはピン止め領域の外部境界に影響を与えるが、しかしそれは検出領域の境界において非常に限定的な影響を持つ。
【0232】
本発明の典型的な実施形態によると、SH(センサーホスト)が、どのように単一磁場(SF)検出領域及び2つのピン止め領域を、検出領域の各々の側に1つずつ、得るように処理できるかについて多数の異なる方法がある。各領域が互いの後に処理されるか(順次処理)、あるいは2つ又は3つの領域が同時に処理される(並行処理)。並行処理では、より一様なセンサーを供給する(低減された寄生磁場)が、目標のセンサー信号勾配に達するために更により高いレベルの電流を必要とする。
【0233】
図52には、ホット・スポットを減少させる(又は更に除去する)ために、主要検出領域の各々の側にピン止め領域を持つ単一磁場(SF)PCMEセンサーに対する並行処理を例示する。
【0234】
2重磁場PCMEセンサーは、センサーの中央領域が既にピン止めされているのでホット・スポットの効果に対してあまり敏感でない。しかしながら、残留するホット・スポット感度は更に、2重センサー領域の両側にピン止め領域を置くことによって減少できる。
【0235】
図53には、両側にピン止め領域を持つ2重磁場(DF)PCMEセンサーを示す。
【0236】
ピン止め領域が許容されないか又は可能でない時(例えば、限られた軸方向の間隔のみ利用できる場合)、検出領域は外部の強磁性材料の影響から磁気的に遮蔽されることを要する。
【0237】
次に、回転信号一様性(RSU)について説明する。
【0238】
現段階の理解によると、RSUセンサー性能は主に、電流が如何に周縁部で一様にSH表面に入って出るか、そして、電流が入る点と出る点との間の物理的な間隔に依存する。電流が入る点と出る点との間隔が大きいほど、RSU性能が良い。
【0239】
図54を参照すると、シャフト直径に対して、個々の円周面上に置かれた電流の流入点間の間隔が比較的に大きい時(そして、円周上に置かれた電流の出口点間の間隔が同じように大きい)、RSU性能が非常に劣ることになる。そのような場合に、PCMエンコーディング部分の長さは、出来るだけ大きくなければならない。そうでないと、生じた磁場が円周上で一様ではなくなる。
【0240】
図55を参照すると、PCMエンコーディング部分を拡げることによって、円周上での磁場分布は、電流が入る点と電流が出る点との間の半分の距離のところで、より一様になる(そしていつかはほぼ完全に)。従って、PCMEセンサーのRSU性能は、電流入口点と電流出口点の半分の中間地点で最良である。
【0241】
次に、NCTセンサーシステムの基本的な設計問題について記述する。
【0242】
PCMエンコーディング技術の詳細に立ち入ることなく、このセンシング技術のエンドユーザーは、その適用において、該センシング概念を利用し及び使用することを可能にするための、いくつかの設計上の詳細を知る必要がある。次に続くページでは、磁気歪に基づいたNCTセンサーの基本要素(一次側センサー、二次側センサー、そしてSCSP電子機器のような)と、個々のコンポーネントがどのようなものであるか、そしてこの技術を既存の製品に組み込む時にどのような選択を行う必要があるかについて記述する。
【0243】
原則として、PCMEセンシング技術は、スタンドアローンセンサー製品を製造するために使用できる。しかしながら、既存の工業上の応用において「スタンドアローン」製品のために利用できるものが殆どないか全く無い。PCME技術は、最終の製品を再設計する必要なしに既存の製品に応用できる。
【0244】
スタンドアローンのトルク検出装置又は位置検出装置がモーター伝動システムに応用される場合、全システムは、大幅な設計変更を被ることを要求される。
【0245】
次に、図56に、エンジンのシャフトにおけるPCMEセンサーの可能な場所を図示する。
【0246】
図56は、本発明の1つの典型的な実施形態による、例えば、モーターカーのギアボックスにおけるトルクセンサーのための可能な配置場所を示す。図56の上部には、本発明の1つの典型的な実施形態によるPCMEトルクセンサーの配置を示す。また、図56の下部には、本発明の典型的な実施形態の場合のように、ギアボックスの入力シャフトに一体化されていないスタンドアローン検出装置の配置を示す。
【0247】
図56上部から分るように、本発明の1つの典型的な実施形態によるトルクセンサーは、ギアボックスの入力シャフトに一体化することができる。換言すると、一次側センサーが入力シャフトの一部である。即ち、入力シャフトは、一次側センサー又はセンサー素子それ自身となるように磁気的にエンコードされてもよい。二次側センサー、即ちコイルは、例えば、入力シャフトのエンコード領域に近いベアリング部に収容されてもよい。これにより、動力源とギアボックスの間にトルクセンサーを配置する場合に、入力シャフトを邪魔する必要がなく、図56の下部に示すように、モーターにつながるシャフトとギアボックスにつながる別のシャフトとの間に、別のトルクセンサーを配置する必要はない。
【0248】
入力シャフトにエンコード領域が一体化されることで、例えば、車の場合、その入力シャフトに如何なる変更をも施すことなく、トルクセンサーを設けることができる。このことは、例えば、航空機の部品では非常に重要であり、というのも、各部品が航空機での使用を許可される前に、多数の検査を受けなければならないからである。本発明による、そのようなトルクセンサーは多分、当面のシャフトが変更されないので、航空機やタービン内のシャフトに実施される多数の検査なしで済ませることすら可能である。また、重大な影響がシャフトの材料に引き起こされることはない。
【0249】
更には、図56から分るように、本発明の1つの典型的な実施形態に従うトルクセンサーによって、ギアボックスと動力源との間の距離を低減させることができる。これは、動力源から出るシャフトとギアボックスへの入力シャフトとの間に、別個のスタンドアローンのトルクセンサーを設けることが明白であることによる。
【0250】
次に、センサーコンポーネントについて説明する。
【0251】
図57に示すように、非接触磁気歪センサー(NCTセンサー)は、本発明の1つの典型的な実施形態によると、3つの主要な機能要素、つまり、一次側センサー、二次側センサー、並びに信号調整及び信号処理(SCSP)電子機器から構成される。
【0252】
適用の種類(量及び品質の要請、目標製造コスト、製造工程の流れ)に応じて、顧客は、彼自身の管理下でセンサーシステムを製造するために個々のコンポーネントの購入を選択できるし、又は個々のモジュールの生産を下請けに外注することができる。
【0253】
図58は、非接触式トルク検出装置のコンポーネントを概略的に示したものである。但し、これらのコンポーネントはまた、非接触式の位置検出装置にも用いることができる。
【0254】
年間の生産目標が数千ユニットである場合に、「一次側センサーの磁気エンコーディング工程」を顧客の製造工程に統合することは、より効率的である。そのような場合、顧客は、特定用途向けの「磁気エンコーディング装置」を購入する必要がある。
【0255】
量産的な適用では、製造工程の価格及び統合化が重要であって、典型的には、NCTEが非接触センサーの作成に必要な個々の基本コンポーネント及び装置のみを供給する。
・IC(表面実装パッケージ、特定用途向け電子回路)
・MFSコイル(二次側センサーの部品として)
・センサーホストのエンコーディング装置(シャフト(=一次側センサー)に磁気エンコーディングを適用するための)
【0256】
要求量に応じて、MFSコイルは、フレーム上に既に組み立てられて提供することが可能で、そして、必要であれば、コネクターをもったワイヤハーネスに電気的に接続されて提供される。同様に、SCSP(信号調整及び信号処理)電子機器は、プリント回路基板に組み込まれたMFSコイルを持つか又は該コイルを持たないプリント回路基板構成で充分な機能をもって提供できる。
【0257】
図59は、検出装置のコンポーネントを示す。
【0258】
図60から分るように、要求されるMFSコイルの数は、物理的なセンサー設計上で予期されるセンサー性能及び機械的な許容誤差に依存する。完全なセンサーホスト(SH又は磁気的にコードされたシャフト)を有し、望ましくない寄生磁場からの干渉が最小限とされた、適切に設計されたセンサーシステムにおいて、2つのMFSコイルのみが必要である。しかしながら、SHが、二次側センサーの位置に関連して径方向又は軸方向に1ミリメートルの数分の1よりも大きく動いている場合に、望ましいセンサー性能を達成するため、そのときにはMFSコイルの数を増やす必要がある。
【0259】
次に、制御及び/又は評価の回路構成について説明する。
【0260】
本発明の1つの典型的な実施形態によると、SCSP電子機器は、NCTE専用IC、多数の外部の受動及び能動的電子回路、プリント回路基板(PCB)、及びSCSPハウジング又はケースから構成される。尚、SCSPユニットが使用される環境に応じて、ケースは適切に密封されることを要する。
【0261】
特定用途の必要条件に応じて、NCTE(本発明の1つの典型的な実施形態によると)は、多数の異なる特定用途向け回路を提供する。
・基本回路。
・集積された電圧調節器を有する基本回路。
・高い信号バンド幅回路。
・オプションの高電圧及びショート保護装置。
・オプションの故障検出回路。
【0262】
図61は、単一チャンネルとされる、低価格のセンサー電子機器の解を示す。
【0263】
図61から分るように、例えば、コイルを含む二次側センサーユニットが提供される。これらのコイルは、例えば図60に示すように配置され、一次側センサーユニット、即ち、センサーシャフト又はセンサー素子から、トルクがそれに加えられるときに出る磁場の変化を検出する。二次側センサーユニットはSCST内の基本ICに接続される。基本ICは、電圧調節器を介して正電源電圧に繋がる。基本ICはまた接地される。基本ICは、SCSTの外部にアナログ出力を与えるように構成され、その出力がセンサー素子に加えられる応力によって引き起こされる磁場の変動に対応する。
【0264】
図62は、一体化された故障検出を有する2チャンネルの、ショート保護システム設計を示す。本設計は5個のASICデバイスからなり、高度のシステム安全性を提供する。故障検出ICは、センサーシステムのどこかにワイヤの断線が起きた場合に、MFSコイルの故障、又は「基本IC」の電子的な駆動ステージの故障を識別する。
【0265】
次に、二次側センサーユニットについて説明する。
【0266】
図63に示された1つの実施形態によると、二次側センサーは、次の要素、つまり、1乃至8個のMFS(磁場センサー)コイル、位置決め及び接続用プレート、コネクターを有するワイヤハーネス、及び二次側センサーハウジングから構成される。
【0267】
MFSコイルは、位置決めプレートに取り付けてもよい。位置決めプレートを使用することにより、通常、各MFSコイルの2つの接続ワイヤを適切な方法で、はんだ付けし、接続することができる。そして、ワイヤハーネスは位置決めプレートに接続される。該プレートは、MFSコイルとワイヤハーネスとともに完全に組み立てられて、それから二次側センサーのハウジングによって組み込まれるか又は保持される。
【0268】
MFSコイルの主要な要素は、アモルファス(非晶質)のような材料で形成されることを要する心線である。
【0269】
二次側センサーユニットが使用される場所の環境に応じて、組み立てられた位置決めプレートを保護材料で覆う必要がある。該材料は、周囲温度の変化時にMFSコイルに機械的な応力又は圧力を引き起こすものであってはならない。
【0270】
動作温度が+110℃を超えない場所での適用において、顧客は二次側センサーユニット(SSU)の内部にSCSP電子機器(ASIC)を置くという選択肢を持つ。ASICデバイスが+125℃より高い温度で動作する場合、温度に関連した信号オフセット及び信号利得の変化を補償することが更に困難になる。
【0271】
MFSコイルとSCSP電子機器の間の推奨される最大ケーブル長は2メートルである。適切な接続ケーブルを使用する場合に、10メートルまでの距離については達成可能である。多チャンネルの適用において(同一の一次側センサーの場所で動作している2つの独立なSSU=冗長なセンサー機能)、信号のクロストークを避けるためには、SSUとSCSP電子機器との間で特別に遮蔽されたケーブルを考慮すべきである。
【0272】
二次側センサーユニット(SSU)の生産を計画する場合に、生産者は、SSUのどの部品又は複数の部品を下請けから購入すべきであり、そして、どの製造ステップを社内で行うのかを決定しなければならない。
【0273】
次に、二次側センサーユニット製造の選択肢について記述する。
【0274】
NCTセンサーを、特別注文のツール又は標準的な伝動システムに一体化する場合に、システムの生産者は、次の項目から選択する、いくつかの選択肢を持つ。
・カスタムメイドのSSU(ワイヤハーネス及びコネクターを含む)。
・選択されたモジュール又はコンポーネント;最終のSSU組み立て及びシステム試験は顧客の管理でなされてもよい。
・重要なコンポーネントのみ(MFSコイル又はMFS心線、特定用途向けIC)、そしてSSUを自社で生産する。
【0275】
図64は、二次側センサーユニット組み立ての1つの典型的な実施形態を示す。
【0276】
次に、一次側センサー設計について説明する。
【0277】
SSU(二次側センサーユニット)は、磁気的にエンコードされたSH(センサーホスト)の外側に置くことができ、また、SHが中空である場合にはSHの内側に置くこともできる。SSUが中空シャフトの内側に置かれる場合に、達成できるセンサー信号振幅は同じ強さであるが、一段と良い信号対ノイズ性能を持つ。
【0278】
図65は、一次側センサー及び二次側センサーの幾何学的な配置について2つの形態を示す。
【0279】
改善されたセンサー性能は、磁気的エンコーディング工程を、SH(シャフト)の真っ直ぐで平行な部分に適用する場合に達成される。15mm〜25mmの直径を持つシャフトでは、磁気的にエンコードされた領域の最適な最短長が25mmである。センサー性能は、その領域が45mmの長さで作成できる場合(ガード領域を加えて)、更に向上する。複雑で高度に統合された伝動(ギアボックス)システムでは、そのような間隔を見い出すのは困難である。更に理想的な状況では、磁気的にエンコードされた領域を14mmに短くすることができるが、これでは、所望のセンサー性能の全てを達成できない虞がある。
【0280】
図66に示すように、SSU(二次側センサーユニット)とセンサーホスト表面との間隔については、本発明の1つの典型的な実施形態によると、実現し得る最良の信号品質を達成するために、できるだけ小さく抑えるべきである。
【0281】
次に、一次側センサーエンコーディング装置について記述する。
【0282】
図67に、その一例を示す。
【0283】
どの磁気歪センシング技術を選択するかに応じて、センサーホスト(SH)は、それに従って加工され、且つ処理される必要がある。その技術は、互いに非常に多様で(ABB、FAST、FT、Kubota、MDI、NCTE、RM、Siemens等)、そして必要な処理装置もまた同様である。使用できる磁気歪センシング技術のいくつかでは、SHになされる如何なる物理的変更も必要とせず、磁気的な処理のみに依る(MDI、FAST、NCTE)。
【0284】
MDI技術は2段階工程であるが、FAST技術は3段階工程であり、そしてNCTE技術は1段階工程であって、PCMエンコーディングと呼ばれる。
【0285】
磁気処理の後、センサーホスト(SH又はシャフト)は「精密測定」装置となり、そしてそれ相応に取り扱うべきであることに注意を要する。磁気処理は、処理されたSHがその最終場所に注意深く置かれる前の、まさに最終ステップとすべきである。
【0286】
磁気処理は、次のような状況下において、顧客の製造工程(社内での磁気処理)の不可欠な部分であるべきものとされる。
・高生産量(何千の単位のように)。
・重いSH又は取り扱いが困難なSH(例えば、高い輸送費)。
・非常に特別な品質及び検査要求(例えば、国防用途)。
【0287】
全ての他の場合には、NCTEのような資格を持った公認の下請業者によって磁気的に処理されたSHを得ることは、更にコスト効率が良い。というのも、「社内」の磁気処理のためには、専用の製造装置が要求されるからである。そのような装置は、完全に手動運転され、又は半自動的とされ、あるいは完全に自動化することもできる。複雑さ及び自動化のレベルに応じて、装置はEUR20kからEUR500kより上の価格とされる。
【0288】
図68Aは、シャフト150を磁化して、該シャフト150上に磁気的にエンコードされた領域を形成する磁化装置140を示す。この磁化装置140は、他の物体によって取り囲まれたシャフトを含まない。電流がシャフト150の異なる端の間に加えられる時、シャフト150が磁化される。
【0289】
図68Bは、磁化されるべきシャフト150(図68Bに示されていない)を取り囲む中空管121を含む本発明の磁化装置160を示す。シャフト150の一端部は、シャフト150を取り囲む中空管121の一端部に結合されている。電流信号がシャフト150に印加される場合に、電流が中空管121に注入される。中空管121内を流れる電流によって作られる磁場は、シャフト150における電流分布を安定化させる。そのようにして、シャフト150は非常に一様な方法で磁化される。
【0290】
図68Cは、磁気的にエンコードされた領域122を有するトルク及び力の検出装置170の概念図であり、当該領域は、磁化装置160を用いて行われる磁化発生工程に従って形成される。この磁気的にエンコードされた領域122の長さは、磁化手続き中に流れる電流に沿う長さによって規定される(即ち、磁化電流を注入するための接触形状に依存する)。
【0291】
図68Cは、予め決められたトルク値で回転するシャフト150を有するトルクセンサー170を示しており、シャフト150の一部が磁化されて、磁気的にエンコードされた領域122を形成する。シャフト150が回転する場合に、磁気的にエンコードされた領域122は、磁場検出コイル123に磁気信号を発生させる。
【0292】
図68Dは、図68Aに示した磁化装置140で磁化されたトルク及び力の検出装置の信号対トルク図100(実験的に測定された曲線及び測定された曲線の特長を強調する概略的な曲線)を示す。
【0293】
図68Eは、図68Bに示した磁化装置160で磁化されたトルク及び力の検出装置170の信号対トルク図110(実験的に測定された曲線及び測定された曲線の特長を強調する概略的な曲線)を示す。
【0294】
図68D及び図68Eの図形100及び110はそれぞれ横座標101をもち、それに沿って磁気的にエンコードされた領域を持つシャフトに加えられたトルクが示される。図68D及び68Eは、横座標101に沿ってプロットされたトルクにおける1つの特定の値が加えられる場合に、コイル123によって検出される信号を縦座標102に沿って示す。
【0295】
図68D及び68Eには、各場合についてヒテリシスループ103及びベストフィット直線104を示す。明らかなように、ベストフィット直線104の勾配は、図68Dよりも図68Eで大きく、そしてヒステリシス特性は、図68Dよりも図68Eにおいて遥かに良く抑えられる。
【0296】
本発明による磁場エンコーディング工程の大きな挑戦の1つは、「エンコードされるべき」シャフト150の周りに一様な電流分布を実現すること、即ち、適切に磁化された領域122を持つようにすることである。それに失敗することは、回転信号一様性の性能悪化と、信号線形性の悪化をもたらすことになる。
【0297】
図68Dは、シャフト150が図68Aに従って処理された場合のセンサートルク信号を示す。図68Dに示すセンサー特性は、ある非線形性を示しており、これは、センサー信号のヒステリシス性能において否定的な影響をもつ。
【0298】
図68B、69、及び70に示す方法によって磁気的にエンコードされた領域122を形成するためにシャフト150を処理することは、センサー信号の線形性を大幅に改善するとともに、センサー信号のヒステリシスに肯定的な影響をもち、ヒステリシスが一段と小さくなる(図68E参照)。
【0299】
図68Aに対応する磁気的にエンコードされたセンサーは、ベストフィット直線104の勾配が13.8mV/Nmであって、3.72%のヒステリシスを持つ。これに対して、図68Bに従って磁化されたトルクセンサーは、図68Eに示すように、15.1mV/Nmの勾配と、わずか2.59%のヒステリシスを持つ。
【0300】
従って、信号対ノイズ比は、磁気的にエンコードされた領域122が本発明に従って生成される時に、格段に改善される。
【0301】
本発明に従って物体を磁化するための方法の基本原理はまた、自己調整工程として示されるが、実際の磁化工程中に逆方向の磁場を発生させることであり、この逆方向の磁場は、電気信号が「エンコードされるべき」検出領域122を通って非常に一様にシャフト150を通過することを保証する。
【0302】
シャフト150を取り囲んでいる導電性中空管121を通して、磁気的にエンコードされる領域122を形成するためにシャフト150の一部分を磁化するための電気信号を送り返すことによって、中空管121の内側に発現する磁場は、シャフト150の外側で作られている磁場と関連して働くことができる。シャフト150は、中空管121の内部において中心に位置され、そして、所望の場所を除いて、中空管121に接触することが許されない。
【0303】
図69は、本発明を更に深く理解するのに有用な図式を示す。この図69に示す配置は、中実シャフト150及び中空管121を示している。電流Iは、図69に示すように、中実シャフト150の周りに磁場を形成するために中実シャフト150に注入される。この電流Iが中空管121を通して流れる時、更に別の磁場が同様に中空管121の材料内に作られる。従って、図69は、本発明による、物体を磁化するための方法における1つの原理を図示する概略図である。
【0304】
図70A及び70Bは、本発明による物体を磁化するための装置を示す概略図である。
【0305】
シャフト150を磁化するために、中空管121が中実シャフト150を取り囲むように配置される。更に、電気信号Iが中実シャフト150に印加される。時間の横座標301及び電流の縦座標302を持つ図70Dの図形310に示すように、パルス電流信号300は、基本的に垂直な速い立ち上がりエッジと、遅い立ち下がりエッジを持つ。
【0306】
更に図70Aから分るように、中実シャフト150は中空管121の中心に配置される。中空管121は、第一電気接続部201及び第二電気接続部202を持ち、中空管121の第二電気接続部202が中実シャフト150の第一電気接続部203に結合している。更に、中実シャフトは第二電気接続部204を持つ。電流信号Iが中空管121の第一接続部201と中実シャフト150の第二接続部204との間に加えられるように、電気信号源(図示しない)が接続される。
【0307】
図70Bは、図70Aの形状を別の角度からみた図を示す。
【0308】
中空管121の内部の磁束方向(帰還電流方向に起因する)が、中実シャフト150を周回する磁場と同じ回転方向を持つので(前方の電流方向のため)、磁束密度は中空管121とシャフト150の間の空間でそれ自体一様に分布する。その結果、中実シャフト150及び中空管121内を流れる電流は両方の物体において均一に分布することになる。
【0309】
その結果生じる解は、センサー信号の回転信号一様性について大幅な性能向上をもたらし(図68E参照)、そして、これによって信号の非線形性及び信号ヒステリシスが改善され(より小さくなる)、更には信号勾配が増す(1つの加えられるトルクにおいて、より大きな信号)。
【0310】
給電ケーブルと「エンコードされるべき」シャフト150との間の電気接続において特に、その結果は非常に興味深い。ケーブルがシャフト(又はチューブ表面)と接続する場所におけるインピーダンスの僅かな違いによって、電流がこの特別な場所でシャフト150の周りに、一様には分布しない事態が引き起こされる。
【0311】
電流がシャフト150内を更に流れるにつれて、電流密度はシャフト150の周りでますます一様になる。電線が接続されているその場所でシャフト150の周りに電流が一様に入るならば、有効検出領域が、より大きくなる(該領域は、電線がシャフト150と接続する点の近くへと動く)。
【0312】
本発明によるシャフトを磁化する方法は、電流が最も一様に流れるように強制すること(電流密度をシャフトの周りの360度で監視する場合に関して)を、まさに行おうとするものである。
【0313】
このように、本発明は、シャフト150に対して行うことを要する電気接続の方法を単純化するという利点を持つ。更に、本発明はいくつかのセンサー性能を大幅に改善する。更にまた、エンコーディング装置が簡単化され、そして、これによって製造装置の価格が低減される。
【0314】
図70Cは、シャフト150を磁化するための装置についての別の配置を示す。第一及び第二接続部201、202の他に、中空管121は更に第三電気接続部351を持ち、そして中実シャフト150は第三電気接続部352を持つ。図70Cの場合、2つの異なるパルスI1及びI2は、図70Cに示すような配置で印加される。第一電気信号I1は、中空管121の第一電気接続部201と中実シャフト150の第二電気接続部204との間で加えられる。また、第二電気信号I2は、中空管121の第三電気接続部351と中実シャフト150の第三電気接続部352との間で加えられる。
【0315】
更に、導電性の結合要素350が、中空管121の第二電気接続部202を中実シャフト150の第一電気接続部203に結合するために設けられる。図70Cに示す電流分布は、要素121、150において一様な電流分布をもたらす磁場分布を達成し、それによって明確に規定された磁化、即ち、明確に規定された磁気的なエンコード領域122を持つセンサーを実現する。
【0316】
図71A及び71Bは、本発明によるシャフト150を磁化する装置の別の実施形態を示す。
【0317】
図71Aは、中空管121の接続部202と、導電性の中実シャフト150の接続部203との間の結合が、結合要素としての導電性ベースプレート400によって実現されるようにした構成を示す。
【0318】
図71Bは、電流を加えた状態における図71Aの装置を示す。電流は、シャフト150を通ってプレート400を通り、そしてそこから、シャフト150を流れる方向とは反対の方向に中空管121を通して流れる。図71Bから分るように、電流は複数の電気接続ケーブルを介して加えられ、それらのケーブルは中空管121の上部円形表面の周辺に沿って円周方向に配置される。例えば、6本又は8本のケーブルを持つそのような配置によって、非常に一様な電流分布がもたらされる。
【0319】
中空管121をシャフト150に結合するための導電性プレート400を設ける代わりに、中空管121をシャフト150から切り離したままにすることもでき(即ち、プレート400を省略できる)、そして、2つの反対方向の電流信号については、シャフト150を通して、そして中空管121を通して流すことができる。その場合に、シャフト150の電流がシャフト150を磁化させる役目をもち、そして中空管121の電流は、シャフト150の磁化の一様性を高めるために、逆方向の磁場を提供する役目を果たすことになる。従って、2つの信号は、その一方が中空管121に対して、そして他方がシャフト150に対して、同時に加えられる。
【0320】
次に、図72を参照して、本発明の別の実施形態による、磁化可能なチューブ501を磁化するための装置500について記述する。
【0321】
装置500は、磁化可能なチューブ501、即ち中空円筒と、第一部分502a、第二部分502b、及び第三部分502cを持つワイヤ502を含み、電流がワイヤ502を通して流れる。電源503は、スイッチ504が閉じている動作状態において、ワイヤ502に電流を注入するように設けられている。従って、スイッチ504を閉じることによって、パルス電流505がワイヤ502に注入される。しかしながら、パルス電流505の代わりに、例えば、図70Dに示すようなパルスを、同様にワイヤ502に注入できる。尚、図70Dに示すようなパルスが望ましいが、図72に示すような形状の、あらゆる適切なパルスをワイヤ502に注入しても構わない。
【0322】
磁化可能なチューブ501は、工業用鋼鉄で製作され、そして4cmの壁厚、88cmの直径、及び数メートルの長さを持つ。磁化されるべきチューブ501は、チューブ501がワイヤ502の第一部分502aを取り囲むように配置される。電源503は、ワイヤ502に電流パルス505を加えるように構成され、そのパルス電流505によって磁化可能なチューブ501が磁化されるようになっている。そのような電流パルス505がワイヤ502の第一部分502aに加えられる場合に、磁場はワイヤ502の第一部分502aの近傍及び周りに生成され、それはトランスの場合と同様に、磁化可能なチューブ501内部の要素磁石に影響を及ぼす。その結果、このパルス505によって、チューブ501が磁化されることになる。
【0323】
図72から分るように、ワイヤ502の第一部分502aは、中空管501の中心に配置される。図70A〜70Dに示した構成とは対照的に、電源503はワイヤ502に接続されるが、該電源は磁化可能なチューブ501から切り離される。更に、中空の遮蔽円筒506が設けられており、それは磁化可能なチューブ501と同様に製造される。更に分るように、特にワイヤ502の第三部分502cが、磁化可能なチューブ501による囲いから自由とされ、即ち、磁化可能なチューブ501によって囲まれていない。遮蔽円筒506は、磁化可能なチューブ501で包囲されていないワイヤ502の第三部分502cを、磁化可能なチューブ501から電磁気的に遮蔽する(即ち、減結合)ように配置され且つ構成される。そして、磁化可能な材料で作られた遮蔽チューブ506は、磁化可能なチューブ501とワイヤ502の第三部分502cとの間に配置される。従って、ワイヤ502の全ての部分、502a、502b、502cを通して流れる電流パルス505は、磁化可能なチューブ501によって取り囲まれた第一部分502aでのみ基本的に磁化可能なチューブ501に作用し、第一部分502aとは反対の方向に第三部分502cを流れている電流によって、磁化可能なチューブ501内に生成される磁化に対して否定的な影響を及ぼすこと、特に磁化を弱めることが避けられる。
【0324】
また、ワイヤ502の第二部分502bについては、遮蔽円筒506と同様な遮蔽要素によって磁化可能なチューブ501から遮蔽することができる。
【0325】
図73Aは、装置500の概略的な上面図を示す。図から分るように、遮蔽円筒506はチューブ501からワイヤ502の第三部分502cを効率良く遮蔽する。
【0326】
図73B〜73Dは遮蔽要素の実施形態を更に示している。
【0327】
図73Bは、4つの遮蔽円筒600〜603が、ワイヤ502の第三部分502cを中心としてその周りに配置されるようにした構成を示す。このように、磁化可能な材料で作られた遮蔽円筒600〜603は、ワイヤ502の部分502c、つまり、磁化可能なチューブ501で囲まれていない部分を取り巻くように配置される。
【0328】
図73Cは、複数の円柱シャフト610〜617を示しており、これらは、ワイヤ502の第三部分502cの周りに配置されることで、該第三部分、つまり、磁化可能なチューブ501で囲まれていない部分を、磁気可能なチューブ501から遮蔽するものである。
【0329】
図73Dは、第三部分502cを取り囲むように配置された6つのチューブ620〜625を示す。
【0330】
次に、図74を参照して、本発明の別の典型的な実施形態による、磁化可能なチューブ501を磁化するための装置700について記述する。
【0331】
図74の実施形態によると、遮蔽円筒506は、ワイヤ502の第三部分502cをとり囲むように配置される。更に、電気信号源503は、(充電された)キャパシタ・バンク701によって実現され、図70Dに示すようなパルスを発生するために、スイッチ504を閉じることによって放電される。磁化装置700は「移動可能」であって、運搬車702によって図示されており、該運搬車は、キャパシタ・バンク701を、磁気可能なチューブ501が磁化される場所(即ち、採鉱場所の掘削装置)へと輸送する。
【0332】
このように、図74の移動可能な処理ユニットを、掘削又は大型の機械設備シャフトの最も近くまで運ぶことができる。
【0333】
次に、図75A及び図75Bを参照して、力及びトルクの検出装置810を校正するための装置800について記述する。
【0334】
装置800は、力及びトルクの検出装置810と、1000kgの重量を持つ既知の質量部811と、校正ユニット818を備える。
【0335】
力及びトルクの検出装置810は、中空管813において磁気的にエンコードされた領域812と、4つの磁場検出コイル814〜817を有する。
【0336】
既知の重量811は、磁化された中空管813に既知の軸方向の力を加えるために力及びトルクの検出装置810の上端に置かれる。磁場検出コイル814〜817に接続された校正ユニット818は、既知の質量部811と、該質量部811の既知の力から生じる検出信号との間の相関関係に基づいて力及びトルクの検出装置810を校正するようになっている。
【0337】
このように、既知の質量部811は、水平で安定した基盤819上に立っている水平に置かれた中空管813の上端に加えられる。力及びトルクの検出装置810(図74に示すように磁化することができる)の上端に質量部811が加えられた結果として、磁気的なエンコード領域812によって生成される磁場が変化して、磁場検出コイル814〜817に信号が生じる。このように、校正ユニット818で処理される当該信号は、既知の質量部811によって、磁化されたチューブ813に加えられる既知の軸方向の力と相関性をもつ。この対をなすデータの組、即ち、既知とされる軸方向の力と、その際に検出された信号が、校正ユニット818に保存される。
【0338】
中空管813の上端面(その上に質量部811が置かれる)は、例えば、水平に配置され、そのためにチューブ813の上端の質量部811によって生じる力のベクトルが、基本的に中空管813の表面に対して垂直に向けられる(つまり、地球の中心に向けられる)。チューブ813及び/又は基盤819の上面が水平でない場合には、角度補正の計算が必要であるか又は該計算を行うことが望ましい。
【0339】
掘削シャフト813が地中に戻され、そして掘削のために使用される場合に、掘削シャフト813に加えられる軸方向の力及びトルクは、磁場検出コイル814〜817によって測定され、そして校正信号と比較される。このようにして、トルク及び力の絶対測定が、軸方向荷重811を用いた校正に基づいて行われる。
【0340】
校正において、コイル814〜817については、軸方向の力を測定できるように配置されることが必要である。また、トルク検出動作の場合に、コイル814〜817はトルクを測定できるように配置されることを要する。従って、コイル814〜817の軸は、校正モードから測定モードに変えるときに、それに従って方向を変えなければならない。
【0341】
図76A及び76Bは、磁場検出コイル814〜817を配置する場合に可能な、2つの形態を示す。
【0342】
図77は、磁気的にエンコードされた領域1001、1002、又は1003を持った掘削シャフト1000の3つの実現可能な形態を示す。
【0343】
標識1001〜1003は、掘削シャフト1000(つまり、回転のパワー伝動シャフト1000)が、どの場所に磁気的なエンコード領域を持つかを表している。現実には、エンコーディング1001〜1003は、光学的に見えないし、そしてシャフト1000の機械的特性のいずれをも変えず又は干渉もしない。掘削シャフト1000は、1つの特別な位置1001でエンコードされ、又は、ある部分1002でエンコードされ、又はその全体1003でエンコードされる。多くの場合、1つの特別な位置1001でのエンコーディングが、静的なシステム運用のためには妥当である。エンコーディングの選択肢1002、1003は、掘削シャフト1000が回転しているか、又はあるやり方で動いている場合に専ら用いられる。
【0344】
図78は、磁場検出コイル1100〜1103がどのように掘削シャフト1000の周りに配置されるかについて2つの形態を示す。
【0345】
次に、図79を参照して、物体を磁化するための装置6800について説明する。
【0346】
図79に示すように、中空管121によって包囲されたシャフト150は、電源503によって生成された電気信号を中空管121に印加することで磁化される。装置6800によって、シャフト150を磁化することができ、これは、中空管121がシャフト150を取り囲むように中空管121を配置するとともに、円周に沿って配置された複数の接触点を介して電気信号を中空管121に加えることで可能となる。電源503によって生成された電気信号は、例えば、少なくともシャフト150の一部分が磁化されるようなパルス信号である。そして、図79に示すように、中空管121の外部において、シャフト150の2つの端部は、中空管121の外部に配置されたワイヤ6801によって短絡されている。
【0347】
図80は、本発明の1つの実施形態による物体を磁化するための、更に別の装置6900を示す。
【0348】
装置6900の機能は、図72A、図72Bに示した装置の機能と非常に類似しているが、その相違点は、導電性プレート400が、シャフト150を中空管121に電気的に接触させる働きをもつ導電性流体6902(例えば、水銀)で置き換わっていることである。
【0349】
次に、装置6900がどのように動作するかについて記述する。シャフト150の直径と基本的に等しい内径及び中空管121の内径と基本的に等しい外径を持つ中空円筒の形状をした1つの(例えば、電気的に絶縁性の)スペーサー要素6901は、中空管121とこの中空管内に置かれたシャフト150との間隙を封じて、それらの間に体積をもつように配置される。次に、導電性流体6902が装置6900に注入されて、中空管121とシャフト150、スペーサー要素6901によって規定される空間が満され、これにより、非常に柔軟な方法で、中空管121とシャフト150が電気的に結合することになる。
【0350】
次に、図81を参照して、本発明による力及びトルクの検出装置を校正するための装置7000について説明する。
【0351】
装置7000は、トルク検出装置のシャフトを受け入れる基盤7001を含む。トルク検出装置は更に、2つの磁場検出コイル7004と、磁気的にエンコードされた領域7003を含み、該領域は、例えば、上述したPCME技術によって形成される。基盤7001は、シャフトが加えられる力によって動かず、また回転しないようにシャフト7002を受ける。モーター7005は、回転可能な要素7006(例えば、フライホイール)を駆動するように構成されている。この回転可能な要素7006は、制御可能な方法で回転でき、シャフト7002に結合されており、回転可能な要素7006の機械的な衝撃がシャフト7002に伝達され、シャフト7002に(反作用の)トルクが加わる。既知の値をもつ、そのような校正トルクに対する応答として、信号がコイル7004によって検出され、該コイルは、トルク検出装置の校正のために役立つ。従って、装置7000は、既知のトルク発生要素として、駆動される回転可能な要素7006を持つ。特に、回転可能な要素7006の回転状態における突然の変化(例えば、突然のブレーキ信号)は、校正信号としてトルク検出装置に加えられる(反作用の)トルク源として有用である。
【0352】
「備え(comprising)」という用語は、他の要素又はステップを除外しないし、そして「a」又は「an」は複数を除外しない。また、異なる実施形態に関連して記述された要素を結合してもよい。
尚、添付図は、本発明の理解を更に深めるために含まれるとともに、明細書の一部を構成するものとされ、本発明の実施形態を図示する。
【図面の簡単な説明】
【0353】
【図1】本発明の1つの典型的な実施形態によるトルクセンサーを製造する方法を説明するために、本発明の1つの典型的な実施形態によるセンサー素子を持つトルクセンサーを示す図である。
【図2a】本発明の原理及び本発明の製造方法における1つの典型的な実施形態を更に説明するために、本発明によるトルクセンサーのセンサー素子における1つの典型的な実施形態を示す図である。
【図2b】図2aのAA’線に沿った断面図を示す。
【図3a】本発明の原理及び本発明によるトルクセンサーの製造方法における1つの典型的な実施形態を更に説明するために、本発明によるトルクセンサーのセンサー素子の別の典型的な実施形態を示す図である。
【図3b】図3aのBB’線に沿った断面図である。
【図4】本発明の1つの典型的な実施形態による方法に従って製造された図2a及び3aのトルクセンサーにおけるセンサー素子の断面を示す図である。
【図5】本発明によるトルクセンサーを製造するための製造方法について典型的な実施形態を更に説明するために、本発明によるトルクセンサーのセンサー素子における別の典型的な実施形態を示す図である。
【図6】本発明によるトルクセンサーの製造方法の典型的な実施形態を更に説明するために、本発明によるトルクセンサーのセンサー素子における別の典型的な実施形態を示す図である。
【図7】本発明によるトルクセンサーを製造する方法の、ある典型的な実施形態を更に説明するためのフローチャート図である。
【図8】本発明の1つの典型的な実施形態による方法を更に説明するための電流対時間を示すグラフ図である。
【図9】本発明の1つの典型的な実施形態による電極システムを持った、本発明によるトルクセンサーのセンサー素子における別の典型的な実施形態を示す図である。
【図10a】本発明の1つの典型的な実施形態による電極システムを持った、本発明によるトルクセンサーの別の典型的な実施形態を示す図である。
【図10b】図10aの電極による電流サージを加えた後の図10aのセンサー素子を示す図である。
【図11】本発明によるトルクセンサーのためのトルクセンサー素子における、別の典型的な実施形態を示す図である。
【図12】2つの磁場がシャフトに生じて、閉じた円内を走っている様子を示す図であり、本発明の別の典型的な実施形態によるトルクセンサーのセンサー素子の概略図を示す。
【図13】本発明による製造方法に従って作られる2つの逆方向サイクル、つまり磁場ループを使用するPCMEセンシング技術を図示するための別の概略図を示す。
【図14】機械的応力が本発明の1つの典型的な実施形態によるセンサー素子に加わらない時、磁束線がその初めの経路を走ることを図示するための別の概略図を示す。
【図15】本発明の1つの典型的な実施形態の原理を更に説明するための別の概略図を示す。
【図16】本発明の1つの典型的な実施形態の原理を更に説明するための別の概略図を示す。
【図17】本発明の1つの典型的な実施形態の原理を更に説明するための概略図である。
【図18】本発明の1つの典型的な実施形態の原理を更に説明するための概略図である。
【図19】本発明の1つの典型的な実施形態の原理を更に説明するための概略図である。
【図20】本発明の1つの典型的な実施形態の原理を更に説明するための概略図である。
【図21】本発明の1つの典型的な実施形態の原理を更に説明するための概略図である。
【図22】本発明の1つの典型的な実施形態の原理を更に説明するための概略図である。
【図23】本発明の1つの典型的な実施形態の原理を更に説明するための別の概略図を示す。
【図24】本発明の1つの典型的な実施形態の原理を更に説明するための概略図を示す。
【図25】本発明の1つの典型的な実施形態の原理を更に説明するための概略図を示す。
【図26】本発明の1つの典型的な実施形態の原理を更に説明するための概略図を示す。
【図27】本発明の1つの典型的な実施形態の製造方法によるセンサー素子に加えられる電流パルスを図示するための電流対時間図である。
【図28】本発明の1つの典型的な実施形態による出力信号対電流パルス長を示す図である。
【図29】本発明の方法によるセンサー素子に加えられる本発明の1つの典型的な実施形態による電流パルスとともに電流対時間を示す図である。
【図30】本発明の1つの典型的な実施形態の方法によるシャフトのようなセンサー素子に加えられる電流パルスについて、1つの典型的な実施形態を示す別の電流対時間図である。
【図31】本発明の1つの典型的な実施形態に従う信号及び信号効率対電流図である。
【図32】本発明の1つの典型的な実施形態による望ましいPCME電流密度を持つセンサー素子の断面図を示す。
【図33】本発明の1つの典型的な実施形態による、各種の増加するパルス電流レベルでのセンサー素子及びパルス電流密度の断面図を示す。
【図34】本発明によるセンサー素子において、異なる電流パルスの磁気流によって達成される間隔を示す図である。
【図35】本発明の1つの典型的な実施形態によるセンサー素子に加えられる電流パルスの電流対時間図を示す。
【図36】本発明の1つの典型的な実施形態によるセンサー素子への電気的な多点接続を示す図である。
【図37】本発明の1つの典型的な実施形態によるセンサー素子に対して、電流パルスを加えるバネ装填の接触点を有する多チャンネルの電気接続具を示す図である。
【図38】本発明の1つの典型的な実施形態による増加された数の電気接続点を持つ電極システムを示す図である。
【図39】図37の電極システムにおける1つの典型的な実施形態を示す。
【図40】本発明の1つの典型的な実施形態による方法で使用するシャフト処理保持クランプを示す図である。
【図41】本発明によるセンサー素子の2重磁場のエンコード領域を示す図である。
【図42】本発明の1つの典型的な実施形態による、順次の2重磁場エンコーディングの工程段階を示す図である。
【図43】本発明の別の典型的な実施形態による2重磁場エンコーディングの別の工程段階を示す図である。
【図44】本発明の別の典型的な実施形態に従って、電流パルスの印加の説明を含む、センサー素子における別の典型的な実施形態を示す図である。
【図45】応力が加えられない時の本発明によるセンサー素子内の磁束方向を記した概略図を示す。
【図46】応力が加えられた時に図45のセンサー素子内における磁束方向を示す図である。
【図47】加えられたトルクの方向が変化している時に図45のPCMエンコードされたシャフト内部の磁束を示す図である。
【図48】本発明の1つの典型的な実施形態による6チャンネル同期パルス電流駆動システムを示す図である。
【図49】本発明の別の典型的な実施形態による電極システムを簡略化して示す図である。
【図50】本発明の1つの典型的な実施形態によるセンサー素子を示す図である。
【図51】2つのピン止め磁場領域とともにPCME処理検出領域を有する、本発明によるセンサー素子の別の典型的な実施形態を示す図である。
【図52】1つのエンコードされた領域及びピン止め領域を持つセンサー素子の製造のために、本発明の1つの典型的な実施形態による製造方法を説明するための概略図である。
【図53】本発明の1つの典型的な実施形態による製造方法に従って本発明の1つの典型的な実施形態によるセンサー素子を示す別の概略図である。
【図54】本発明の1つの典型的な実施形態を更に説明するための簡略化された概略図である。
【図55】本発明の1つの典型的な実施形態を更に説明するための簡略化された別の概略図である。
【図56】モーターのギアボックスにおける本発明の1つの典型的な実施形態によるトルクセンサーの適用を示す図である。
【図57】本発明の1つの典型的な実施形態によるトルクセンサーを示す図である。
【図58】本発明の1つの典型的な実施形態による非接触トルク検出装置における構成要素の概略図である。
【図59】本発明の1つの典型的な実施形態による検出装置の構成要素を示す図である。
【図60】本発明の1つの典型的な実施形態によるセンサー素子のコイル配置を示す図である。
【図61】本発明の1つの典型的な実施形態による単一チャンネルセンサー機器を示す図である。
【図62】本発明の1つの典型的な実施形態による2チャンネルの短絡保護システムを示す図である。
【図63】本発明の別の典型的な実施形態によるセンサーを示す図である。
【図64】本発明の1つの典型的な実施形態による二次側センサーユニット組み立てについて、1つの典型的な実施形態を示す図である。
【図65】本発明の1つの典型的な実施形態による一次側センサー及び二次側センサーの幾何学的な配置の2形態を示す図である。
【図66】二次側センサーとセンサーホストの間の間隔が出来るだけ小さい方が望ましいことを説明するための概略図である。
【図67】一次側センサーのエンコーディング装置について実施形態を示す図である。
【図68A】他の物体を取り囲む物体を含まない磁化装置を示す図である。
【図68B】他の物体を取り囲む物体を含む本発明による磁化装置を示す図である。
【図68C】本発明によって形成された磁気的なエンコード領域を持つトルク及び力の検出装置の概略図を示す。
【図68D】図68Aに示す磁化装置で磁化されたトルク及び力の検出装置の信号対トルク図である。
【図68E】図68Bに示す磁化装置で磁化されたトルク及び力の検出装置の信号対トルク図である。
【図69】本発明による物体を磁化するための方法の原理を示す概略図である。
【図70A】本発明による物体を磁化するための装置を示す概略図である。
【図70B】図70Aとともに本発明による物体を磁化するための装置を示す概略図である。
【図70C】本発明による物体を磁化するための別の装置を示す概略図である。
【図70D】図70A〜70Cに示された装置による物体を磁化するためのパルス信号を示す図である。
【図71A】本発明による物体を磁化するための装置の別の実施形態を示す図である。
【図71B】図71Aとともに本発明による物体を磁化するための装置の別の実施形態を示す図である。
【図72】本発明の1つの実施形態による物体を磁化するための更に別の装置を示す図である。
【図73A】本発明の実施形態による物体を磁化するための装置の上面図を示す。
【図73B】本発明の実施形態による物体を磁化するための様々な装置の上面図を示す。
【図73C】本発明の実施形態による物体を磁化するための様々な装置の上面図を示す。
【図73D】本発明の実施形態による物体を磁化するための様々な装置の上面図を示す。
【図74】本発明による物体を磁化するための別の装置を示す図である。
【図75A】本発明による力及びトルクの検出装置を校正するための装置を示す図である。
【図75B】本発明による力及びトルクの検出装置を校正するための装置の異なる方向から見た図を示す。
【図76A】本発明による力及びトルクの検出装置の概略図を示す。
【図76B】本発明による力及びトルクの検出装置の概略図を示す。
【図77】磁気的にエンコードされた中空円筒を異なる方向から見た図を示す。
【図78】本発明による検出装置を示す図である。
【図79】物体を磁化するための更に別の装置を示す図である。
【図80】本発明の1つの実施形態による物体を磁化するための更に別の装置を示す図である。
【図81】本発明による力及びトルクの検出装置を校正するための別の装置を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を磁化するための方法及び装置と、力及びトルクの検出装置を校正するための方法及び装置と、特定の技術分野における物体を磁化するための装置の使用と、そして特定の技術分野における力及びトルクの検出装置を校正するための装置の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気トランスデューサ技術は、トルク及び位置の測定に応用されている。それは特に、シャフトや、トルクを受け又は直線運動に従う、あらゆる他の部分におけるトルクを非接触で測定するために開発された。回転又は往復運動をする構成部分、又は軸方向荷重やせん断力を受ける構成部分には、磁化された領域、即ち磁気的にエンコードされた領域が設けられ、そしてシャフトが回転し又は往復運動をする時、そのような磁気的にエンコードされた領域は、シャフトのトルク、力又は位置を決定できる磁場検出器(磁気コイルのような)に特長的な信号を発生する。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されたその種のセンサーでは、低価格で製造され且つ校正できる正確に規定された磁気的なエンコード領域を有することが重要である。
【特許文献1】国際公開第02/063262号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、磁気的にエンコードされた領域を持つ検出装置を提供することを目的とし、該検出装置が低価格で製造可能であって動作可能とされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、独立請求項に従って、物体を磁化するための方法及び装置と、力及びトルクの検出装置を校正するための方法及び装置と、特定技術分野における物体を磁化するための装置の使用と、特定技術分野における力及びトルクの検出装置を校正するための装置の使用とを提供することによって達成される。
【0006】
本発明の一実施形態によると、第一物体又は第二物体あるいは第一及び第二物体を磁化するための方法が提供され、該方法は第一物体が第二物体を取り囲むように第一物体を配置するステップと、第一電気信号を第二物体に加えるステップとを含み、そこでは該第一電気信号によって、第一物体又は第二物体あるいは第一及び第二物体の少なくとも一部分が磁化されるように構成される。
【0007】
本発明の別の実施形態によると、第一物体又は第二物体あるいは第一及び第二物体を磁化するための装置が提供される。装置は第一物体、第二物体及び電気信号源を含む。第一物体は、第一物体が第二物体を取り囲むように配置される。電気信号源は第一電気信号を第二物体に加えるように構成され、そこで第一電気信号によって、第一物体又は第二物体あるいは第一及び第二物体の少なくとも一部分が磁化される。
【0008】
本発明の更に別の実施形態によると、力及びトルクの検出装置を校正するための方法が提供され、該方法は、物体上の磁気的にエンコードされた領域及び物体に加えられた力又はトルクから生じる信号を検出するように構成された磁場検出器を有する、力及びトルクの検出装置を配置するステップと、物体に既知の力を加えるステップと、物体に加えられた既知の力に起因する信号を検出するステップと、既知の力と当該既知の力に起因する検出信号との間の相関関係に基づいて力及びトルクの検出装置を校正するステップとを含む。
【0009】
更には、本発明の別の実施形態によると、力及びトルクの検出装置を校正するための装置が提供され、該装置は、力及びトルクの検出装置と、既知の力を発生させる要素と校正ユニットを含む。力及びトルクの検出装置は、物体上の磁気的にエンコードされた領域、及び物体に加えられる力又はトルクから生じる信号を検出するように構成された磁場検出器を有する。既知の力を発生させる要素は、物体に既知の力を加えるように構成され、そして校正ユニットは、既知の力とこの既知の力に起因する検出信号との間の相関関係に基づいて、力及びトルクの検出装置を校正するように構成される。
【0010】
本発明の別の実施形態によると、上記した特長を持つ装置は、採鉱シャフト、コンクリート処理シリンダ、ギアボックス内のプッシュプルロッド、及びエンジンシャフトからなるグループ中の1つを磁化するために使用される。
【0011】
また、本発明の別の実施形態によると、上記した特長を持つ装置は、採鉱シャフト、コンクリート処理シリンダ、ギアボックス内のプッシュプルロッド、及びエンジンシャフトからなるグループの力及びトルクの検出装置を校正するために使用される。
【0012】
尚、本明細書で、「磁化」という表現は特に、微視的な磁石又は要素磁石、つまり、磁化可能な材料内に存在する磁気モーメント、磁性粒子又は磁区について、少なくともそれらの一部分がある特定の方向に整列し、ランダムな磁場方位が少なくとも部分的に除去されるように処理されることを意味する。
【0013】
第一物体を磁化するための方法、及び上述の例示的な実施形態による第一物体を磁化するための装置は、第一物体によって取り巻かれた第二物体に電気信号を加えることによって第一物体が磁化されるという利点を持つ。例えば、第二の要素としてのワイヤ、シャフト又はロッドは、第一物体としての中空シリンダによって取り囲まれる。そして、第二物体に対して適切な電気信号を加えることで、トランスの場合に起こる物理的効果と同様な物理効果によって第一物体内に磁化された領域を生成できる。換言すると、第二物体を通して流れる、電流パルスのような時間に依存した電気信号は、第一物体が磁化されるように、第一物体の磁化可能な材料に影響を与える磁場を生成する。本発明の磁化の方法は、特に採鉱及び掘削装置の分野で想起されるような、大型の中空シリンダであっても安価で容易な磁化が可能になる。従って、磁気的にエンコードされた領域は、既存の工業用の鋼鉄中空シリンダ又はチューブ内に形成することができる。これによって、例えば、掘削シャフトのような既存の磁化可能な物体内に磁気的にエンコードされた領域を設けることができ、そのような物体に加えられるトルク、曲げ力及び軸荷重を、磁化された物体の近くに配置されたコイルのような簡単な磁場検出器によって検出できるようになる。
【0014】
記載した実施形態によると、特に外側の第一物体が磁化される。但し、内側の第二物体が同様に磁化可能な材料でできている場合に、該第二物体が同時に磁化される。
【0015】
本発明の例示的な実施形態による第二物体を磁化するための方法及び装置に関連する別の利点には、選択された位置、例えば、第一物体の端部と第二物体の端部において、第一物体を第二物体に対して適時に接続する場合がある。そのような構成によると、第二物体を流れる電流がまた、そこで反対方向の磁場を形成するために第一物体に注入され、それによって物体中の電流分布が安定する。従って、高品質の磁気的にエンコードされた領域が第二物体内に形成され、より良好な再現性及び高い信頼性を持ったセンサーがもたらされる。
【0016】
記載した実施形態によると、特に内側の第二物体が磁化される。但し、外側の第一物体が同様に磁化可能な材料でできている場合に、第一物体が同時に磁化される。
【0017】
次に、力及びトルクの検出装置を校正するための方法及び装置について説明する。この校正方法の1つの構想は、単純に1つの既知の校正力、例えば、既知の質量物又は錘を、磁気的にエンコードされた領域(例えば、物体を磁化するための本発明の方法によって作られる)を持つ物体に加えることである。トルク及び力センサーに加えられるそのような重さ又は重力によって磁気信号が生じ、該信号は磁気的にエンコードされた領域の近傍に配置された磁場検出器によって検出される。従って、加えられた力と磁場検出器で得られた検出信号との相関性をもったデータ対が保存される。磁気的にエンコードされた領域は、例えば、物体を磁化するための上述の方法、又は上記特許文献1に記載の技術、又は以下に詳細について記載する、所謂PCME技術に従ったエンコードが可能である。
【0018】
そして、こうして測定された軸方向荷重と磁場検出器の検出信号との間の相関関係は、センサーの校正のために使用できる。このように校正された物体が、(例えば、掘削シャフトとして)実際に使用される場合に、測定された検出信号は、既知の質量を用いて推定された校正データの対を用いて、対応する軸方向荷重の力と関連付けることができる。また、校正中に、該校正を精緻化するために複数の校正データ対を測定することも可能である。
【0019】
更に、既知の軸方向荷重及びこれ対応する検出信号のデータ対はまた、校正情報として役立ち、該情報は、実際の使用中に、加えられるトルクを受けるセンサーとともに使用される。換言すると、軸方向荷重の校正は、トルクセンサーを校正する。この態様では、非常に重い物体を使用する応用において特に有利であり、例えば、採鉱用途における掘削シャフトの場合に、そのような掘削シャフトに加わるトルクを測定する場合に有用である。この場合、単に掘削シャフト、例えば、チューブを安定な地盤に置き、そして既知の質量要素を掘削シャフトの上部に置くことは非常に簡単である。これとは対照的に、トルクセンサーを校正するために、そのような掘削シャフトに校正用トルクを加えることは、非常に困難である。校正用の軸方向力を用いてトルクセンサーを校正することは、より簡単である。
【0020】
本発明のさらなる態様によると、上述した方法及び装置は採鉱シャフト、コンクリート処理シリンダ、ギアボックス内のプッシュプルロッド、及びエンジンシャフトに関して実施される。これら全ての適用形態において、そのようなトルク、力及び位置センサーの磁化及び校正は非常に有利である。というのも高精度で信頼できるように校正された、力、位置及びトルクのセンサーが、低コストで製造可能となるからである。特に、採鉱及び掘削装置に本発明のシステムが設けられ、掘削方向及び掘削力の監視に使用される。本発明のさらなる応用は、エンジンノッキングの評価及び解析である。
【0021】
従って、本発明によれば、大きな採鉱及び掘削装置の「作動中」に適用されて有効とされる、実際の機械力のリアルタイム(実時間)測定が可能となる。厳しい屋外条件及び研磨材料の取り扱いは、従来のセンシング技術では取り扱いが困難であるのに対して、本発明のシステムは何の問題もなしにそのような条件に適合できる。本発明によって測定される機械力は、トルク、曲げ、軸方向荷重及び潜在的な採鉱装置の過負荷である。
【0022】
本発明の磁化方法によって、ユニークなパワーシャフトエンコーディング工程が採用され、多種類の工業用鋼鉄の磁気特性を利用することができ、それにより標準的な掘削シャフトが高精密な力センサーに変わる。エンコーディング工程を応用するために要求される実際の時間はほんの一瞬であり、この時間は変わらない。掘削シャフトの所望の部分が本発明の工程で処理された後、シャフトの当該部分は、シャフトに加えられた機械力に関連して特定の信号を発する。この信号は、例えば、シャフト表面から数ミリメートル離れて置かれた受動の電気部品によって検出される。シャフトに何も付設する必要がなく、そして全くシャフトに触れる必要もないので、従って平均故障間隔がとても長い(即ち、本発明は非常に信頼性の高い検出の解決策を提供する)。この非接触とされる機械力の測定原理については、掘削又はパワー伝達シャフトの強磁性特性のみに依る。それは、シャフトのエンコード部分を通して伝わる機械的な力、つまり、回転トルク、曲げ力、せん断力、及び軸プッシュプル負荷を含む全ての機械力についてのリアルタイム情報を提供する。力センシング技術の全信号バンド幅は、ある実施形態によると29kHz又は毎秒約100,000測定サンプルである。また、掘削シャフトが機械的な過負荷にさらされて故障し、そのような時には、明確な信号を発生する。
【0023】
大きな装置では、機械力が対称に伝わらないか、パワーシャフト又は掘削シャフトを通して均等に分布しない場合がよくある。従って、例えば、磁場検出器は、より広い視野を得るために、シャフトのいくつかの危険箇所を「見る」。但し、特に静止状態で操作する装置(シャフトが回転しないような)では、多くの場合に1個の磁気検出装置のみで働くことが推奨される。
【0024】
本発明のセンサーは、水中や、オイルの中、又は非常に粉塵のある環境でさえ(コンクリートポンプやコンクリート混合ステーションのような)運転できる。該センサーは、非常に広い温度範囲、特に、−50℃から+210℃の温度に耐えられる。
【0025】
センサー信号検出ユニットは、磁場検出器から数メートル離間した特別注文製の専用電子回路に接続される。2本のワイヤのみ(「ツイストペア」)が、磁場検出器をこれに対応する電子回路に接続するために使用される。そのような電子回路の出力信号は、バッファされたアナログ+5V信号であり、+2500Vが零トルクに等しい。トルク、軸方向荷重又は曲げセンサーの場合に、全電流消費はセンサーチャンネル当り5mA未満である。
【0026】
磁場検出器は、磁気的にエンコードされた中空シャフトの外側か内側に置くことができる。そのようなシャフトを通して伝達される機械力が磁気的にエンコードされた部分を対称に通らないことを想定して、高解像度の「力の映像(force picture)」を把握できるように、数個の磁場検出器を、シャフトの周囲に幾何学的な配列で設置することができる。
【0027】
大型の掘削シャフトのエンコーディング工程については、特定の工場敷地に重いシャフトを輸送することの必要性を秘めており、これを排除するために、該工程を「現場」で行うことができる。エンコーディング装置はポータブル/可動性とされ、そして、ほぼ全ての気候条件下で使用できる。理想的な状況において、掘削シャフトはそれ自身、エンコーディング工程のために地上に置くことができる。但し、適正な状況では、掘削シャフトが掘削又は採鉱装置の中にまだ置かれている間に、該シャフトがエンコードされる。これは特に、シャフトに接近でき、該シャフトが覆い隠されていない場合に可能である。そのような移動可能な、磁化及び校正ユニットであれば、掘削シャフトの非常に近くまで持ってくることができる。
【0028】
本発明によるセンシング技術の特長は、永久的にエンコーディングされた掘削シャフトを校正する仕方である。1百万Nmのトルクを扱う能力をもった直径1mの掘削シャフトの場合に、シャフトのトルクセンサー校正のために「ビーム及び重量」法を適用することは通常困難である。水平で構造的に安定した表面にシャフトを真っ直ぐに置く場合に、磁気的にエンコードされたシャフトの測定性能については、「永久的」に埋め込まれた信号源の挙動の如何に依存して、比較的短い時間内に規定される。このことは、掘削装置が遠隔地で点検整備されて保守され、その場所に到達することが困難である場合において、特に有利である。
【0029】
本発明による機械力のセンシング技術は、掘削ヘッドが動いている方向を検出し、そして掘削ヘッド位置での掘削パイプの軸方向荷重(前方推力)を測定するために、大型オイル掘削装置において実施することができる。この応用では、全センサーシステムが、1,500バール(1億5千万Pa)を超える圧力と、200℃を超える温度にさらされる。別の応用では、センシングの方針が、大型の移動可能な又は移動するクレーンに加わる機械力を測定することにある。ここで、磁気的にエンコードされたセンサーの任務は、臨界的な負荷状態が起こる時に、クレーンが倒れ(倒れ落ちるか又は傾くことが)ないように防止することである。本発明の他の応用には、風力発電装置、大型押し出し装置、研磨剤ポンプステーション、及び大型の工業用ギアボックスシステムが挙げられる。
【0030】
第一物体(例えば、中空管)で取り囲まれた第二物体(例えば、シャフト)が、第一物体に電気信号を加えることで磁化可能であることを述べる。この態様は、第二物体を磁化するための方法に関連しており、該方法は、第一物体が第二物体を取り囲むように第一物体を配置するステップと、第一物体に電気信号を加えるステップとを含み、電気信号によって、少なくとも第二物体の一部分が磁化されるように構成される。この方法は、第一物体の外部で第二物体の端部が短絡される時に、例えば、2つのそのような端部が第一物体の外部にガイドされたワイヤによって互いに電気的に接続される場合に、特別に良く働く。
【0031】
次に、従属請求項を参照して、本発明のさらなる実施形態を説明する。
【0032】
以下に、物体を磁化する方法の例示的な実施形態について記述する。但し、これらの実施形態についてはまた、物体を磁化するための装置と、力及びトルクの検出装置を校正するための方法及び装置と、特定の技術分野における物体を磁化するための装置の使用と、特定の技術分野における力及びトルクの検出装置を校正するための装置の使用とに適用される。
【0033】
第一電気信号は、第一パルス信号又は一連の継続するパルス信号である。そのようなパルス信号は特に、ある規定の期間のみに零と異なる信号である。
【0034】
例えば、時間対電流図において、第一パルス信号は、基本的に垂直な、速い立ち上がりエッジを有し、緩やかな立ち下がりエッジを有する。そのようなパルス信号を用いると、得られる磁気的なエンコード領域が高い品質を持つ。また、複数のそのようなパルスを順次に印加して、磁気的なエンコード領域を形成することができる。
【0035】
第二電気信号は、第一電気信号を加えた後で第二物体に加えられ、第二電気信号が、少なくとも第一物体又は第二物体あるいは両物体の一部分が磁化されるように構成される。そして、第二電気信号は、振幅、符号、信号波形及び持続時間からなるグループのうちの少なくとも1つに関して第一電気信号と異なる。
【0036】
本実施形態によると、電流の流れる方向が反対とされる、2つのパルスが第二物体に印加される。
【0037】
第二電気信号は、第二パルス信号又は一連の継続するパルス信号であり、それは時間対電流図において、基本的に垂直な立ち上がりエッジを有し、そして遅い立ち下がりエッジを有する。
【0038】
本発明の方法の実施形態によると、第一物体は、第一電気信号及び第二電気信号を印加することによって磁化されるが、第一物体又は第二物体の表面あるいは第一物体及び第二物体の表面に対して基本的に垂直な方向において磁場構造が生成されて、第一方向に第一磁気流(電磁流量)が生じ、そして第二方向に第二磁気流が生じ、その際、該第一方向が第二方向とは反対とされる。2層の磁化の幾何学的方向は、磁化可能な材料に印加される2つの異なるパルスに起因し、これにより、以下に記述する技術に従ってPCMEのようなセンサーが製造される。
【0039】
第二電気信号はまた、電流又は電圧である。
【0040】
次に、物体を磁化するための装置の例示的な実施形態について記述する。但し、これらの実施形態はまた、物体を磁化するための方法と、力及びトルクの検出装置を校正するための方法及び装置と、特定技術分野における物体を磁化するための装置の使用と、特定の技術分野における力及びトルクの検出装置を校正するための装置の使用に適用される。
【0041】
第一物体は中空管である。例えば、第二物体を取り囲む第一物体には、中空円筒等を用いることができる。この構造は、非常に対称的な幾何学的構造を提供し、製造が容易である。しかしながら、中空管として配置される第一物体については、必ずしも円形の断面をもつ必要はなく、多角形(例えば、三角形又は四角形)の幾何学的構造の断面を持つことができる。そのような、更に非対称な配置を用いてセンシング特性を改善することができる。
【0042】
第二物体は、ワイヤ又はシャフト又は中空管である。そのようなシャフト又はワイヤは、第一物体の対称軸に沿って配置され、特に中空管として具体化される第一物体の対称軸に沿って配置される。第二物体が中空管である実施形態において、第二物体としての中空管の半径は、第一物体としての中空管の半径より小さく、よって、第二物体は第一物体によって取り囲まれる。中空管として配置される第二物体は、必ずしも円形断面をもつことはなく、また多角形(例えば、三角形又は四角形)の幾何学的構造の断面を持つことができる。そのような、更に非対称な配置を用いてセンシング特性を改善することができる。
【0043】
第二物体は、第一物体の中心に配置される。この構成において、非常に対称な電流及び磁場の分布が達成される。
【0044】
電気信号源はキャパシタ・バンクを含む。そのようなキャパシタ・バンクは複数のキャパシタ(コンデンサ)を含み、それらは全体で、非常に大きな電流振幅及び小さな時間幅をもったパルス信号を生成することができ、特に採鉱及び掘削装置の分野で想起される大きな物体を磁化するために生成される。そのようなキャパシタ・バンクは、例えば、0.5Fの容量を持つ。キャパシタ・バンクの他の選択肢として、電気信号源又は電力源が、通常の電源装置又はパワーパックを備えてもよい。
【0045】
第一物体は、第一接続部を持ち、そして第二接続部を持ってもよいし、第二物体が第一電気接続部及び第二電気接続部を持ってもよい。第一物体の第二電気接続部は、第二物体の第一電気接続部に結合される。この実施形態によると、2つの物体は、第一物体の一部分(例えば、1つの端部)が、第二物体の一部分(例えば、1つの端部)に結合するようにして接続される。この構成によって、第二物体を通して流れる電流が第一物体に注入され、電流を発生する磁場の「フィードバック」が達成される。このフィードバックによって、反対方向の磁場が第一物体に発生され、第二物体を通して流れる電流とともに、非常に対称な配置を与え、そして物体内部に有利な電流分布が生じる。この種の磁気的エンコーディングを有するトルク及び力のセンサーは、非常に高い信号対ノイズ(S/N)比と、小さいヒステリシスを持つ。
【0046】
前述の実施形態に関して、電気信号源は、第一電気信号が第一物体の第一電気接続部と第二物体の第二電気接続部との間で印加できるように接続される。この回路構成によると、電流は、第一物体の第一電気接続部から第一物体の第二電気接続部へ、そしてそこから第二物体の第一電気接続部へ、そしてそこから第二物体の第二電気接続部へと流れる。
【0047】
第一物体は第三電気接続部を持つこともでき、そして第二物体が第三電気接続部を持ってもよい。
【0048】
この実施形態に関して、電気信号源は、第一電気信号が第一物体の第一電気接続部と第二物体の第二電気接続部との間で印加できるように接続され、そして、第二電気信号が、第一物体の第三電気接続部と第二物体の第三電気接続部との間で印加できるように接続される。この構成により、第一及び第二物体の両端部から磁化電流を流すことができるとともに、第一及び第二物体がそれらの中央部で互いに電気的に結合される。
【0049】
装置は更に、第一物体の第二電気接続部を第二物体の第一電気接続部に結合するように配置された導電性結合要素を備えてもよい。そのような導電性結合要素は、金属板のような導電性プレートであり、それは第二物体としてのシャフトの一端部に結合され、そして第一物体としての中空管の一端面に結合される。しかしながら、導電性結合要素はまた、簡単なワイヤ等で実現してもよい。導電性結合要素はまた、導電性の液体、例えば、水銀をベースにしたもので実現してもよい。
【0050】
第一物体に加えて、第二物体は第一電気信号が印加された場合に磁化されるように構成することができる。換言すれば、第一物体が第二物体を取り囲むようにされた上述の配置によると、両方の物体が磁化され、それらはトルク又は力センサーの磁化された物体として使用できる。
【0051】
第二物体は第一接続部及び第二接続部を含むことができ、電気信号源は第二物体の第一接続部と第二接続部の間に接続される。この回路構成によると、電気信号源は、第一物体と断絶される。換言すると、この構成はトランスのような配置と考えることができ、第二物体を取り巻く第一物体が、2つの物体の間に直接のオーム接触なしに磁化される。これに関連して、第一物体の磁化は、第二物体に伝播する電気信号によって生じ、そして第一物体の材料における要素磁石を整列させることによって起きる。
【0052】
1つの典型的な実施形態によると、第二物体の一部は、第一物体により包囲されず、そして更に装置は遮蔽要素を含むことができる。該遮蔽要素は、第一物体で包囲されない第二物体の部分を、第一物体から電磁的に遮蔽するように配置及び構成される。この実施形態では、電気信号源への第二物体の配線がまた、磁場を発生させること、即ち、第一物体で包囲され又は取り囲まれた第二物体の部分によって発生する磁化を弱めるように、第一物体に影響を及ぼす磁場が発生することを考慮している。そのような望ましくない弱化を回避し、そして第一物体における一様且つ再現可能な磁化を達成するために、遮蔽要素は、第一物体で覆われていない第二物体の配線部分によって発生する磁場を遮蔽する。
【0053】
そのような遮蔽要素は、例えば、チューブのような物体でも良く、それは、第一物体と第一物体で包囲されない第二物体の部分との間に配置される磁化可能な材料で形成されるという選択肢もある。この構成では、遮蔽要素が、ある種の磁気的な「影」を形成し、第一物体を、第一物体により覆われていない第二物体の一部分から磁気的に分断する。
【0054】
また、遮蔽要素は、一本のチューブ(磁化可能な材料で任意に形成される)でもよく、これは、第一物体で包囲されない第二物体の部分を取り囲むように配置される。この実施形態によると、遮蔽チューブは、第一物体によって囲まれていない第二物体の部分のうち、その少なくとも一部分を取り囲む。
【0055】
別の選択肢として、遮蔽要素は、複数のチューブ(磁化可能な材料で任意に形成される)でもよく、それらは、第一物体で包囲されない第二物体の部分のうち、少なくとも一部分を取り囲むように配置される。そのような遮蔽チューブについては、遮蔽されるべき第二物体の部分の周りに、対称的に配置してもよい。
【0056】
次に、力及びトルクの検出装置を校正するための装置の実施形態について説明する。但し、これらの実施形態はまた、物体を磁化するための方法及び装置と、力及びトルクの検出装置を校正するための方法と、特定技術分野における物体を磁化するための装置の使用と、特定技術分野における力及びトルクの検出装置を校正するための装置の使用に適用する。
【0057】
校正装置において,既知の力を発生させる要素には既知の錘を用いることができる。この既知の錘は、例えば、1000kgとされ、これは、校正されるべき中空円筒状をした、力及びトルク検出装置の上部にただ載置されて、検出装置に加えられる一定且つ既知の軸方向荷重を形成し、それによって高精度な校正が可能となる。
【0058】
また、既知の力を発生させる要素は、既知のせん断応力を加えるように構成される。せん断応力を加えることによって、一対のデータ値(力と、これに起因する磁気信号)を校正のための基礎として得ることができる。
【0059】
あるいは、既知の力を発生させる要素が、既知のトルク、特に既知の反作用トルクであるように構成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
本発明の上記及び他の性質、目的、特長及び利点は、同一の部分又は要素が同一の参照番号で示してある添付の図と一緒に、次の説明及び添付の請求項から明白になる。
【0061】
先ず、シャフトのようなセンサー素子を持つセンサーを開示する。センサー素子は次の製造工程に従って製造される。即ち、
・センサー素子に第一電流パルスを加える際に、
・第一電流パルスは、センサー素子の長手方向の軸に沿った第一方向に第一電流が流れるように加えられ、
・第一電流パルスは、電流パルスを加えることによってセンサー素子内に磁気的にエンコードされた領域を生成する。
【0062】
更に別の第二電流パルスがセンサー素子に加えてもよいことを開示する。この第二電流パルスは、センサー素子の長手方向の軸に沿った方向に第二電流が流れるように加えられる。
【0063】
また、第一及び第二電流パルスの方向が互いに反対でもよいことを開示する。また、第一及び第二電流パルスの各々が立ち上がりエッジ及び立ち下りエッジを持ってもよい。例えば、立ち上がりエッジは立ち下がりエッジより急勾配である。
【0064】
電流パルスを加えることにより、センサー素子内に磁場構造がもたらされ、該構造は、センサー素子の断面図において第一方向をもつ第一の環状磁気流と、第二の方向をもつ第二磁気流が存在するものとされる。第一磁気流の半径は、第二磁気流の半径より大きくてもよい。円形でない断面を持つシャフトにおいては、磁気流が必ずしも円形でなく、基本的に、それぞれのセンサー素子の横断面に対応し、そしてこれに適合する形状を有する。
【0065】
トルクをセンサー素子に加えない場合、外部で検出できる磁場がないか、又は基本的に磁場が存在しないと考えられる。トルク又は力がセンサー素子にかかる時に、適切なコイルによって検出できる磁場がセンサー素子から発生する。このことについて、次に更に詳細に記述する。
【0066】
トルクセンサーは、センサー素子のコア領域を取り囲む円周表面を持つ。第一電流パルスは、センサー素子のコア領域内の第一方向に第一電流が流れるように、円周表面の第一位置でセンサー素子に導入される。第一電流パルスは円周表面の第二位置でセンサー素子から放出される。この第二位置は、第一位置から第一方向において離れている。第二電流パルスは、センサー素子のコア領域内又は該コア領域の近傍で第二方向に第二電流が流れるように、円周表面の第二位置又は第二位置の近傍でセンサー素子に導入されてもよい。第二電流パルスは、円周表面の第一位置又は第一位置の近傍でセンサー素子から放出される。
【0067】
既述のように、センサー素子はシャフトでもよい。そのようなシャフトのコア領域については、該コア領域がシャフトの中心を取り囲むように、長手方向に延びてシャフト内部に亘ってもよい。シャフトの円周表面はシャフトの外表面である。第一及び第二位置はそれぞれ、シャフトの外側の円周領域にある。それらの領域を構成する限定された数の接触部分があってもよい。例として、実際の接触領域は、例えば、電極としての、真鍮リングでできた電極領域を設けることで与えられる。また、導体のコアについては、絶縁なしのケーブルのような導体とシャフトとの間に良好な電気接触を与えるように、シャフトの周りでループ状にされてもよい。
【0068】
第一電流パルスや第二電流パルスは、センサー素子の一端面でセンサー素子に加えられない。第一電流パルスは、40から1400アンペア、又は60から800アンペア、又は75から600アンペア、又は80から500アンペアの間に最大値を持つことができる。電流パルスは、適切なエンコーディングがセンサー素子になされるように最大値を持ってもよい。但し、各種の使用材料及びセンサー素子の各種形状及びセンサー素子の様々な大きさのために、電流パルスの最大値は、これらのパラメータに従って調節される。第二電流パルスは、同様の最大値を持ってもよいし、又は第一最大値より約10、20、30、40、又は50%小さい最大値を持ってもよい。しかしながら、第二電流パルスはまた、第一最大値より10、20、40、50、60、又は80%高くされた、高めの最大値を持ってもよい。
【0069】
これらのパルスの持続時間は同じであってもよい。しかしながら、第一パルスが第二パルスより充分に長い持続時間を持つことは可能である。あるいは、第二パルスが第一パルスより長い持続時間を持つこともまた可能である。
【0070】
第一及び/又は第二電流パルスは、パルスの開始から最大値までの第一持続時間を持ち、そして最大値から基本的にパルスの終了までの第二持続時間を持つ。第一持続時間は第二持続時間よりも十分に長くてもよい。例えば、第一持続時間は300msより短くてもよく、第二持続時間は300msより長くてもよい。尚、第一持続時間が200msより短く、第二持続時間は400msより長いこともまた可能である。また、第一持続時間が20msから150msの間にあってもよく、その場合、第二持続時間は180msから700msの間にあってもよい。
【0071】
既述のように、複数の第一電流パルスのみでなく複数の第二電流パルスを加えることも可能である。センサー素子を鋼鉄で作ってもよく、その鋼鉄がニッケルを含んでもよい。一次側センサー、つまり、センサー素子に使用するセンサー材料は、DIN1.2721、又は1.4313、又は1.4542、又は1.2787、又は1.4034、又は1.4021、又は1.5752、又は1.6928に記載の、50NiCr13、又はX4CrNi13−4、又はX5CrNiCuNb16−4、又はX20CrNi17−4、又はX46Cr13、又はX20Cr13、又は14NiCr14、又はS155であってもよい。
【0072】
第一電流パルスは、少なくとも第一電極及び第二電極を持つ電極システムによって加えられる。第一電極は第一位置か又は第一位置の近傍に配置され、そして第二電極は第二位置か又は第二位置の近傍に配置される。
【0073】
第一及び第二電極の各々は複数の電極ピンを持ってもよい。第一及び第二電極の各々において複数の電極ピンは、センサー素子の周りに円周方向に配置され、センサー素子が、第一及び第二位置でシャフトの外部円周表面における複数の接触点で第一及び第二電極の電極ピンによって接触される。
【0074】
上記したように、電極ピンの代わりに、層状又は2次元電極表面を用いてもよい。例えば、電極表面は、電極とシャフト材料の間との良好な接触を保証するように、シャフトの表面に適用される。
【0075】
少なくとも第一電流パルスの1つ及び少なくとも第二電流パルスの1つをセンサー素子に加えてもよく、それによってセンサー素子が磁気的にエンコードされた領域を持ち、センサー素子の表面に対して基本的に垂直な方向において、センサー素子の磁気的にエンコードされた領域は、第一磁気流が第一方向で、第二磁気流が第二方向とされるように磁場構造を持つことになる。第一方向が第二方向とは反対とされる。
【0076】
センサー素子の断面図において、第一方向及び第一半径を持つ第一円形磁気流が生じ、そして第二方向及び第二半径を持つ第二円形磁気流が生じる。第一半径は第二半径より大きくてもよい。
【0077】
更に、センサー素子は、第一位置の近傍に第一ピン止めゾーンを持ち、そして第二位置の近傍に第二ピン止めゾーンを持ってもよい。
【0078】
ピン止めゾーンは次の方法に従って形成できる。この方法によると、第一位置又は第一位置の近傍に第一ピン止めゾーンを形成するためには、第二方向に第三電流が流れるように、第三電流パルスをセンサー素子の円周表面に加える。この第三電流は、第二方向において第一位置から離れた第三位置でセンサー素子から放出される。
【0079】
また、第二位置又は第二位置の近傍に第二ピン止めゾーンを形成するためには、第一方向に第四電流が流れるように、第四電流パルスを円周表面でセンサー素子に加えてもよい。この第四電流は、第一方向において第二位置から離れた第四位置で放出される。
【0080】
トルクセンサーは、磁気的にエンコードされた領域を持つ第一センサー素子を含んで提供され、この第一センサー素子は1つの表面を持つ。第一センサー素子の表面に対して基本的に垂直な方向において、第一センサー素子の磁気的にエンコードされた領域は、第一磁気流が第一方向とされ、そして第二磁気流が第二方向とされるように磁場構造を持つことができる。第一及び第二方向は互いに反対とされる。
【0081】
トルクセンサーは更に、1つ以上の磁場検出器を用いた第二センサー素子を含んでもよい。この第二センサー素子は、磁気的にエンコードされた領域における変動(変化量)を検出するように構成される。より正確には、第二センサー素子は、第一センサー素子の磁気的にエンコードされた領域から出る磁場の変動を検出するように構成される。
【0082】
磁気的にエンコードされた領域は、第一センサー素子の一部に沿って長手方向に延びるが、第一センサー素子の一端面から当該第一センサー素子の他端面にまで広がってはいない。換言すると、磁気的にエンコードされた領域は、第一センサー素子の全てに沿って延びるものではなく、その一部分に沿ってのみ延びている。
【0083】
第一センサー素子は、第一センサー素子の材料における変化を持ち、これは、磁気的にエンコードされた領域を変えるために、又は磁気的にエンコードされた領域を生成するために、第一センサー素子に加えられる、少なくとも1つの電流パルス又はサージ電流によって引き起こされる。そのような材料の変化は、例えば、電流パルスを加える電極システムと各センサー素子の表面との間の異なる接触抵抗によって引き起こされる場合がある。また、そのような変化は、例えば、焦げ跡、色の違い、又は焼きなまし痕等である。
【0084】
上記の変化はセンサー素子の外表面にあり、第一センサー素子の端面にはないが、それは、電流パルスがセンサー素子の外表面に印加され、その端面には印加されないからである。
【0085】
磁気センサーのためのシャフトは、その横断面において反対方向に走る少なくとも2つの円形磁気ループを持つことができる。そのようなシャフトは、上述の製造方法に従って製造される。
【0086】
更に、シャフトは、同心円状に配置された少なくとも2つの円形磁気ループを持つように提供される。
【0087】
トルクセンサーのためのシャフトは、以下の製造ステップに従って製造されて提供され、先ず、第一電流パルスがシャフトに印加される。この第一電流パルスは、シャフトの長手方向の軸に沿った第一方向に第一電流が流れるようにシャフトに印加される。第一電流パルスは、該電流パルスを加えることにより、シャフト内に磁気的にエンコードされた領域が生成されるように加えられる。これは、上述の電極システムを使用することによって、そして上述の電流パルスを加えることで行われる。
【0088】
電極システムは、トルクセンサーのためのセンサー素子に電流サージを加えるために提供されてもよく、電極システムは少なくとも第一電極及び第二電極を持ち、第一電極はセンサー素子の外表面の第一位置に設置される。第二電極はセンサー素子の外表面の第二位置に設置される。第一及び第二電極は、第一及び第二位置において少なくとも1つの電流パルスを印加し、そして放出するように構成され、それにより、センサー素子のコア領域内に電流が流れる。少なくとも1つの電流パルスによって、磁気的にエンコードされた領域がセンサー素子の一部分に作られる。
【0089】
電極システムは、少なくとも2つのグループの電極を含んでもよく、その各々が複数の電極ピンを含む。各電極の電極ピンは1つの円上に配置され、センサー素子は、該センサー素子の外表面における複数の接触点で該電極の電極ピンと接触する。
【0090】
尚、センサー素子の外表面はセンサー素子の端面を含まない。
【0091】
図1は、本発明によるトルクセンサーの1つの典型的な実施形態を示す。トルクセンサーは、長方形の横断面を持つ第一センサー素子、つまりシャフト2を含む。第一センサー素子2は基本的に、Xで示された方向に沿って延びる。第一センサー素子2の中央部には、エンコードされた領域4が存在する。第一位置は参照番号10で示され、エンコードされた領域の一端部を示し、そして第二位置は参照番号12で示され、エンコード領域、つまり、磁気的にエンコードすべき領域4の他端部を示す。矢印14及び16は、電流パルスを加えることを示している。図1に示すように、第一電流パルスは第一位置10の隣又は近くの外部領域で第一センサー素子2に加えられる。例えば、後で詳述するように、第一位置に近く、そして、例えば第一位置10に沿って第一センサー素子2の外表面を囲む複数の点又は領域で、電流が第一センサー素子2に導入される。矢印16で示すように、電流パルスは、例えばエンコードされるべき領域4の端部に沿った複数の場所で第二位置12の近く又は隣、又はその場で第一センサー素子2から放出される。既述のように、複数の電流パルスを、位置10から位置12へ、又は位置12から位置10へと交互に変わる方向をもって順次に加えてもよい。
【0092】
参照番号6は、第二センサー素子を示しており、これは、例えば制御回路8に接続されたコイルである。この制御回路8は、第二センサー素子6による信号出力を処理するように構成され、出力信号は、第一センサー素子2に加えられるトルクに対応して制御回路から出力される。制御回路8はアナログ又はデジタル回路でもよい。第二センサー素子6は、第一センサー素子2のエンコードされた領域4から出る磁場を検出するように構成される。
【0093】
既述のように、第一センサー素子2に加えられる応力又は力が存在しないならば、第二センサー素子6によって検出される磁場は基本的に存在しない。しかしながら、応力又は力が第一センサー素子2に加えられる場合、エンコードされた領域から出る磁場に変化があり、殆ど磁場が存在しない状態からの磁場の増加が第二センサー素子6によって検出されるようになる。
【0094】
本発明の他の典型的な実施形態によると、たとえ第一センサー素子に加えられる応力が存在しない場合でも、第一センサー素子2のエンコードされた領域4の外部又は近傍で検出可能な磁場が存在し得ることに注意を要する。しかしながら、第一センサー素子2に加えられる応力が、エンコードされた領域4から出る磁場の変化を引き起こすことに注意すべきである。
【0095】
次に、図2a、2b、3a、3b、及び4を参照して、本発明の1つの典型的な実施形態によるトルクセンサーの製造方法を記述する。特に、その方法は第一センサー素子2の磁気的にエンコードされた領域4の磁化に関する。
【0096】
図2aから分るように、電流Iが磁気的にエンコードされる領域4の一端部に加えられる。既述したこの端部は参照番号10で示され、そして第一センサー素子2の外表面の円周部であってもよい。電流Iは、磁気的にエンコードされた領域(つまり、磁気的にエンコードされるべき領域)の別の端部で第一センサー素子2から放出され、その端部は参照番号12によって示され、これは第二位置と呼ばれる。電流は、第一センサー素子からその外表面で、好ましくは、位置12の近くか又は近傍の領域において円周方向に第一センサー素子から取り出される。位置10及び12の間の破線で示すように、位置10で又は位置10に沿って第一センサー素子に導入された電流Iは、コア領域を通して又はコア領域に平行して位置12に流れる。換言すると、電流Iは第一センサー素子2内のエンコードされるべき領域4を通って流れる。
【0097】
図2bは、AA’に沿った断面図を示す。図2bの概略的表現として、電流は×印で図2bの平面内に示される。ここで、電流は、第一センサー素子2の横断面の中心部に示される。上述の又は以下に記述される形状を持ち、そして上述の又は以下に記述される最大値を持つ電流パルスの導入によって、断面図における1つの方向、ここでは時計回り方向に、磁気流方向を持つ磁気流構造20が生じる。図2bに示す磁気流構造20は、基本的に円形で描かれている。しかしながら、磁気流構造20は、第一センサー素子2の実際の断面に適合し、例えば、より楕円的であってもよい。
【0098】
図3a及び3bは、本発明の1つの典型的な実施形態による方法のステップを示し、これは図2a及び2bに示したステップの後に適用できる。図3aは、第二電流パルスを加える本発明の1つの典型的な実施形態に従った第一センサー素子を示し、そして図3bは、第一センサー素子2のBB’に沿った断面図を示す。
【0099】
図3aから分るように、図2aに比較して、図3aにおいて矢印16で示された電流Iは、位置12又はその近傍でセンサー素子2に導入され、そして位置10又はその近傍でセンサー素子2から放出され、つまり取り出される。換言すると、電流は図3aにおいて、図2aで導入された場所で放出され、その逆もまた成立する。従って、図3aにおける第一センサー素子2への電流Iの導入及び放出によって、図2aにおける各電流とは反対に、磁気的にエンコードされるべき領域4を通る電流が生じる。
【0100】
電流は、図3bにおいてセンサー素子2のコア領域に示されている。図2bと図3bとの比較から分るように、磁気流構造22は、図2bにおける磁気流構造20とは反対の方向をもつ。
【0101】
以前に示したように、図2a、2b、3a、及び3bに描かれたステップを、個別に適用し、又は互いに継続的に適用してもよい。最初に図2a及び2bに描かれたステップが行われ、次に図3a及び3bに描かれたステップが行われる時、図4に描かれたエンコードされた領域4を通して断面図に描かれた磁気流構造が作られる。図4から分るように、2つの磁気流構造20及び22はともに、エンコード領域内にエンコードされる。従って、第一センサー素子2の表面に対して基本的に垂直な方向において、センサー素子2のコアに向かう方向に、第一磁気流が第一方向を持ち、そしてその下層で第二磁気流が第二方向を持つことになる。図4に示すように、磁気流の方向は互いに反対とされる。
【0102】
従って、第一トルクセンサー素子2にトルクが加わらない場合には、2つの磁気流構造20及び22が相殺し、エンコードされた領域の外部では基本的に磁場が存在しない。しかしながら、応力又は力が第一センサー素子2に加わる場合に、磁気流構造20及び22は相殺を止め、エンコードされた領域の外部に磁場が生じ、これが第二センサー素子6によって検出される。このことについては、以下に詳述する。
【0103】
図5は、本発明の1つの典型的な実施形態による第一センサー素子2の別の典型例を示すが、これは、本発明の1つの典型的な実施形態に従った製造方法によって製造される1つの典型的な実施形態によるトルクセンサーに使用してもよい。図5から分るように、第一センサー素子2は、例えば、図2a、2b、3a、3b、及び4に描かれたステップ及び配置に従ってエンコードされるエンコード領域4を持つ。
【0104】
位置10及び12の近傍に、ピン止めゾーン42及び44を配置する。これらのゾーン42及び44は、エンコード領域4の不安定性を回避するために設けられる。換言すれば、ピン止めゾーン42及び44によって、エンコード領域4の開始位置と終了位置が、より明確になる。
【0105】
要するに、第一ピン止めゾーン42は、例えば、図2aを参照して記述されたのと同じ方法で、第一位置10の近く又は近傍で電流38を第一センサー素子2に導入することによって形成される。しかしながら、電流Iは、位置10の近く、つまり、そこでエンコードされる領域の端部から離れた第一位置30において第一センサー素子2から放出される。この追加の場所は参照番号30によって示される。この追加の電流パルスIの導入は、矢印38で示され、そして、その放出については矢印40で示す。電流パルスは、上述したのと同じ形状で最大値を有するものとされる。
【0106】
第二ピン止めゾーン44を形成するために、電流は、位置12の近く、つまりその近傍でエンコードされる領域4の端部から離れた位置32で第一センサー素子2に導入される。それから、電流は、位置12又はその近くで第一センサー素子2から放出される。電流パルスIの導入については、矢印34及び36で示す。
【0107】
ピン止めゾーン42及び44について好ましくは、これらのピン止めゾーン42及び44の磁気流構造が、近接したエンコード領域4において、それぞれに近接する磁気流構造とは反対の方向とされる。図5から分るように、ピン止めゾーンについては、エンコード領域4のコーディング又は完全なコーディングの後で、第一センサー素子2にコード化される。
【0108】
図6は、本発明の別の典型的な実施形態を示すが、そこではエンコード領域4が存在しない。換言すれば、本発明の1つの典型的な実施形態によると、ピン止めゾーンについては、磁気的にエンコードされる領域4を実際にエンコーディングする前に、第一センサー素子2にコード化される。
【0109】
図7は、本発明の1つの典型的な実施形態によるトルクセンサーのための第一センサー素子2を製造する方法についての、単純化したフローチャートを示す。
【0110】
ステップS1での開始後、方法はステップS2に続き、図2a及び2bを参照して記述したように、第一パルスが加えられる。それから、ステップS2の後に、方法はステップS3に続き、図3a及び3bを参照して記述したように、第二パルスが加えられる。
【0111】
それから、方法はステップS4に続き、ピン止めゾーンが第一センサー素子2にコード化されるべきか否かが決定される。ステップS4においてピン止めゾーンがないと決定される場合に、方法はステップS7に続き、そこで終了する。
【0112】
ステップS4においてピン止めゾーンが第一センサー素子2にコードされると決定された場合に、方法はステップS5へと続き、第三パルスが矢印38及び40で示されている方向でピン止めゾーン42に加えられ、そして矢印34及び36で示されている方向でピン止めゾーン44に加えられる。それから、方法はステップS6へと続き、第四パルスがそれぞれのピン止めゾーン42及び44に加えられる。ピン止めゾーン42に対して、第四パルスは、矢印38及び40で示した方向と反対の方向で加えられる。また、ピン止めゾーン44に対して、第四パルスが、矢印34及び36と反対の方向を持つピン止めゾーンに加えられる。それから、方法はステップS7に続き、そこで終了する。
【0113】
換言すると、2つのパルスは、磁気的にエンコードされる領域4をエンコード化するために加えられる。これらの電流パルスは、例えば反対の方向を持つ。更に、それぞれ対応する方向を持つ2つのパルスは、ピン止めゾーン42に加えられ、そしてピン止めゾーン44に加えられる。
【0114】
図8は、磁気的にエンコードされる領域4及びピン止めゾーンに加えられるパルスの電流対時間図形を示す。図8のy軸の正方向が、x方向への電流を示し、そして図8のy軸の負方向が、y方向への電流を示している。
【0115】
図8から分るように、磁気的にエンコードされる領域4のコーディングのために、最初にx方向への電流パルスを加える。図8から分るように、パルスの立ち上がりエッジが非常に鋭いのに対して、その立ち下りエッジは、立ち上がりエッジの傾向に比較して比較的長い傾向を持つ。図8に示すように、パルスは約75アンペアの最大値を持ってもよい。他の応用では、パルスは図8に示すほど鋭くなくてもよい。しかしながら、立ち上がりエッジは、立ち下がりエッジよりも更に急傾斜であるか、又は短い持続時間を持つべきである。
【0116】
それから、第二パルスは反対の方向をもって、エンコード領域4に加えられる。該パルスは、第一パルスと同じ形状を持ってもよい。しかしながら、第二パルスの最大値はまた、第一パルスの最大値と異なってもよい。パルスの周辺の形状は異なっていてもよい。
【0117】
それから、ピン止めゾーンのコーディングのために、第一及び第二パルスに類似したパルスが、図5及び6に関連して記述されたように、ピン止めゾーンに加えられる。そのようなパルスが、ピン止めゾーンに同時に加えられてもよいし、また、各々のピン止めゾーンに連続して加えられてもよい。図8に描かれているように、パルスは第一及び第二パルスと基本的に同じ形状を持ってもよい。但し、その最大値はもっと小さくてもよい。
【0118】
図9は、本発明の1つの典型的な実施形態によるトルクセンサーの第一センサー素子についての別の典型的な実施形態を示しており、磁気的にエンコードされる領域4をコード化するために、電流パルスを加える電極配置を示す。図9から分るように、絶縁されていない導線は第一センサー素子2の周りにループ状にされてもよく、その場合、この第一センサー素子2は、図9から分るように円形の横断面を持つ円形シャフトとされる。導線が第一センサー素子2の外表面に密着することを保証するためには、導線を矢印64で示すようにクランプしてもよい。
【0119】
図10aは、本発明の1つの典型的な実施形態による第一センサー素子の別の典型的な実施形態を示す。更に、図10aは、本発明の1つの典型的な実施形態による電極システムの別の典型的な実施形態を示す。図10aに描かれた電極システム80及び82は、第一センサー素子2に接触し、該素子は、2つの接触点を持つ三角形の横断面を有している。これらの接触点は、領域4、即ち、磁気的なエンコード領域としてエンコードされるべき領域の各側面において、三角形状の第一センサー素子の各面に付設される。よって、全体として、領域4の側面には6つの接触点がある。個々の接触点は互いに接続されてから1つの個々の接触点に接続される。
【0120】
電極システムと第一センサー素子2との間の接触点が限定された数のみであって、そして印加する電流パルスが非常に高い場合には、電極システムの接点と第一センサー素子2との間の異なる接触抵抗によって、電極システムの接触点で第一センサー素子2に焦げ跡をもたらす場合がある。これらの焦げ跡90は、変色であったり、溶接斑点であったり、焼きなまし箇所であったり、又は単なる焦げ跡である。本発明の1つの典型的な実施形態では、接触点の数を増やすか、又はそのような焦げ跡90を回避するような接触表面が設けられる。
【0121】
図11は、本発明の1つの典型的な実施形態による円形横断面を持つシャフトである第一センサー素子2の別の典型的な実施形態を示す。図11から分るように、磁気的にエンコードされる領域4は、第一センサー素子2の一端寄りの領域にある。本発明の1つの典型的な実施形態によると、磁気的にエンコードされる領域4は、第一センサー素子2の全長に及んではいない。図11から分るように、それはその一端に設置してもよい。但し、本発明の1つの典型的な実施形態によると、電流パルスは第一センサー素子2の外部円周表面から加えられるが、第一センサー素子2の端面100から印加されないことに注意を要する。
【0122】
次に、所謂PCME(「Pulse−Current−Modulated−Encoding」パルス電流変調エンコーディング)センシング技術について詳述する。それは、本発明の1つの典型的な実施形態によると、本発明によって部分的に消磁される、磁化可能な物体を磁化するために提供できる。そして、PCME技術は、部分的にトルク検出との関連で記述される。しかしながら、この概念は位置検出との関連でも同様に提供される。
【0123】
この記述では、多数の頭字語が使用されるが、そうでないと多くの説明及び記述が読みにくくなるからである。「ASIC」、「IC」、及び「PCB」の頭字語が既に市場標準の定義である一方で、特に磁気歪に基づいたNCTセンシング技術に関係する多くの用語がある。この記述で、NCT技術、又はPCMEへの言及がある場合に、それは本発明の典型的な実施形態に参照されることに注意を要する。
【0124】
表1は、PCME技術の以下の記述において使用する略語のリストを示す。
【表1】
【0125】
磁気の法則に基づく機械的応力のセンシング技術によって、強磁性材料が使用される場合に応用できる広範囲の「物理パラメータセンサー」(力センシング、トルクセンシング、及び材料診断解析のような)を設計して、生産することができる。「磁気の法則に基づいた」センサーを構築するために用いる最も一般的な技術は、誘導微分変位測定(捩じれシャフトを必要とする)、材料透磁率の変化の測定、そして磁気歪効果の測定である。
【0126】
過去20年以上、多数の様々な会社が、磁気的原理に基づくトルクセンサーをどのように設計し、そしてどのように生産するかに関して彼等自身の、そして非常に特殊な解決方法を開発してきた(即ち、ABB、FAST、Frauenhofer Institute、FT、Kubota、MDI、NCTE、RM、Siemens、その他)。これらの技術は、それぞれに開発段階にあり、そして「どのように働くか」、達成できる性能、システムの信頼性、そして製造及びシステム価格において異なっている。
【0127】
これらの技術のあるものは、トルクが測定されるべきシャフトに対して、機械的な変化が加えるか(シェブロン)、又は機械的な捩じれ効果(トルクで捩じれる長いシャフトを必要とする)に依存するか、又は何かがシャフト自身に付着すること(シャフト表面へのある特性を持つリングの圧入)、又は、特殊な物質でシャフト表面をコーティングすることを要求する。これまで誰も、厳しい性能許容値を達成して、(殆ど)どのシャフトサイズにも応用でき、そして既存の技術特許に基づかないところの大量生産工程を達成し得なかった。
【0128】
次に、磁気歪原理に基づく非接触トルク(NCT)センシング技術について記述する。これは以前に利用不可能であった非常に膨大な新しい特長及び改良された性能をユーザーに提供する。この技術は、充分に統合された(小さい空間で)、実時間(高い信号バンド幅)でのトルク測定を可能にし、それは信頼性があり、そして望まれる量が如何なる量であっても、手ごろな値段で生産できる。この技術は、PCME(Pulse−Current−Modulated−Encoding、パルス電流変調エンコーディング)、又は磁気歪横方向トルクセンサーと呼ばれる。
【0129】
PCME技術は、シャフトに機械的変化を与えずに、又はシャフトに何も付着しないでシャフトに応用できる。最も重要なことは、PCME技術が任意のシャフト直径に応用でき(殆ど全ての他の技術はこの点で限界を持つ)、そしてエンコーディング工程の間、シャフトを回転させ又はスピンさせる必要がなく(非常に簡単で低価格な製造工程)、これによって、この技術は大量生産の用途で大いに応用可能である。
【0130】
次に、磁場構造(センサー原理)について記述する。
【0131】
センサーの寿命は、「閉ループ」磁場設計に依存する。PCME技術は、互いの上に蓄えられ、反対方向に走っている2つの磁場構造に基づく。トルク応力又は運動応力がシャフト(別名センサーホスト、又はSH)に加わらない時、SHは磁気的に中性に振舞う(SHの外部で磁場は全く検出されない)。
【0132】
図12は、2つの磁場がシャフト内に生じ、閉じた円内を走っていることを示す。外側の磁場は1つの方向に走るとともに、その一方で内側の磁場はその反対方向に走る。
【0133】
図13は、PCMEセンシング技術が、互いに接近してできる2つの逆方向円形磁場ループを使用することを図示している(ピギーバックモード)。
【0134】
機械的応力(往復運動又はトルクのような)が、PCMEで磁化されたSH(センサーホスト又はシャフト)の両端に加えられる場合に、両方の磁気構造の磁束線(つまりループ)は、加えられたトルクに比例して傾く。
【0135】
図14に示すように、機械的応力がSHに加わらない時、磁束線はその最初の経路内で走る。機械的応力が加えられると、磁束線は加えられた応力(直線運動又はトルクのような)に比例して傾く。
【0136】
加えられたトルクの方向に依存して(SHに関して、時計回り又は反時計回り)、磁束線は、右に傾くか、又は左に傾く。磁束線が磁気的にエンコードされた領域の境界に到達すると、上層からの磁束線が下層からの磁束線と繋がり、その逆もまた同様である。そして、これは、完全に制御されたトロイダル形状を形成する。
【0137】
そのような磁気構造の利点は、以下の通りである。
・機械的応力がSHに加えられる場合の、減少した(殆ど排除された)寄生磁場構造(これは、良好なRSU性能をもたらす)。
・より高いセンサー出力信号勾配。これは、機械的な応力に関係する信号を発生するときに、互いに補足し合う2つの「アクティブな」層があることによる。
説明:単層センサー設計を用いる場合、エンコーディング領域境界に存在する「傾いた」磁束線は、1つの境界側から他の側へ「帰り道」を作らなければならない。この労力は、どれだけの信号が二次側センサーユニットを持つSHの外部でセンシングされ、そして測定されるために使用できるかに影響する。
・PCME技術が応用される場合、SH(シャフト)の大きさには殆ど制限がない。2層磁場構造は、如何なる中実の又は中空のシャフトの大きさにも応用できる。
・物理的な大きさ及びセンサー性能を非常に広範にプログラム化でき、従って目標の応用に合わせられる。
・このセンサー設計によって、シャフトに加えられる直線方向の力(負荷セルとして応用可能)を含む、全ての3次元軸から生じる機械的応力の測定が可能となる。
説明:初期の磁気歪センサー設計(例えば、FASTテクノロジーのもの)は、2次元軸のみに感度をもつように制限されており、直線上の力を測定できなかった。
【0138】
図15を参照すると、トルクがSHに加わる時、2つの逆方向の円形磁気ループの磁束線はセンサー領域の境界で互いに接続している。
【0139】
機械的トルク応力がSHに加わる時、磁場はもはや円の中で回らず、加えられたトルク応力に比例して幾分傾く。これは1つの層の磁場線を他の層の磁場線に接続させ、そしてこれによってトロイダル形状を形成する。
【0140】
図16を参照すると、これは、高レベルのトルクがSHに加わる場合、如何にして磁束線が角度を持ったトロイダル構造を形成するかについて誇張した表現で示している。
【0141】
次に、PCMエンコーディング(PCME)工程の特長及び利点について記述する。
【0142】
本発明によるNCTEからの磁気歪NCTセンシング技術は、以下に示す高性能センシング特性を提供する。
・センサーホストには、如何なる機械的な変化も要求されない(既存のシャフトをそのままで使用できる)。
・センサーホストに何も付着する必要がない(従って、シャフトの寿命の間、何も外れ落ちることがなく、変化することがない。即ち、高いMTBFである。)。
・測定中、SHは、あらゆる所望の速度で回転でき、往復運動ができ、又は動くことができる(rpmに制限なし)。
・非常に良好なRSU(Rotational Signal Uniformity回転信号一様性)性能。
・卓越した測定の線形性(FSの0.01%まで)。
・高い測定再現性。
・非常に高い信号分解能(14ビットより良い)。
・非常に高い信号バンド幅(10kHzより良い)。
【0143】
選択された磁気歪センシング技術のタイプ及び選択された物理的なセンサー設計に応じて、機械的パワー伝達シャフト(別名「センサーホスト」又はこれを短くした「SH」)は、それに如何なる機械的な変更をも加えることなく、また、シャフトに何ものをも付着せずに「そのままで」使用できる。これは「真の」非接触トルク測定原理と呼ばれ、これによって、シャフトが自由に、任意の所望の速度をもって両方向において回転できる。
【0144】
本発明の1つの典型的な実施形態によってここで記述されるPCMエンコーディング(PCME)製造工程は、如何なる他の磁気歪技術も提供できない追加的な特長を提供する(本技術のユニーク性)。
・他の選択肢の磁気歪エンコーディング工程(FASTの「RS」工程のような)と比較して3倍より大きい信号強度。
・容易で、簡単なシャフト装填工程(高い製造処理量)。
・磁気エンコーディング工程中に動く構成部品がないこと(複雑でない製造装置、即ち高いMTBF及び低価格)。
・1パーセント以下の目標精度を達成するために、NCTセンサーの「微調整」を可能にする工程。
・同一の工程サイクルにおいて、シャフトの「前処理」及び「後処理」を可能にする製造工程(高い製造処理量)。
・センシング技術及び製造工程はレシオメトリックであり、従って全てのシャフト径やチューブ直径に応用可能である。
・PCMエンコーディング工程は、SHが既に組み立てられている間に応用できる(接近可能性に依存する)(保守し易さ)。
・軸シャフトの運動に敏感でない最終センサー(実際に許容される軸シャフトの運動は磁気的にエンコードされた領域の物理的な「長さ」に依存する)。
・磁気的にエンコードされたSHは、中性のままであり、力(トルクのような)がSHに加えられないときには、殆ど無磁場である。
・全ての3次元軸において機械力に敏感である。
【0145】
次に、SHにおける磁束分布について記述する。
【0146】
PCME処理技術は、強磁性材料の望ましい、永久的な磁気エンコーディングを達成するために、SH(センサーホスト又はシャフト)を通して流れる電流を使用することに基づいている。望ましいセンサー性能及び特性を得るためには、非常に特殊で良く制御された電流が必要である。DC電流を使用した初期の実験は、どのようにして少量のDC電流と大量のDC電流が導体を流れるかについての理解に欠けていたために失敗した(この場合、「導体」は機械的パワーの伝達シャフトであり、別名センサーホスト又は短くして「SH」と呼ばれる。)。
【0147】
図17に、導体内の仮定された電流密度を示す。
【0148】
導体内の電流密度は、電流(DC)が導体を流れる時に、導体の全横断面に亘って一様に分布すると一般に仮定される。
【0149】
図18に、導体内で電流経路を束ねる磁場を形成する小さな電流を示す。
【0150】
少量の電流(DC)が導体を流れる時、電流密度は導体の中心で最高であるというのが我々の経験である。このことに対する2つの主な原因は、導体を流れる電流は、導体の中心で電流路を一緒に束ねている磁場を発生させること、そしてインピーダンスが導体の中心で最低であることによる。
【0151】
図19に、導体内の小さい電流の1つの典型的な流れを図示する。
【0152】
しかしながら、実際には電流は1つの接続極から他へと、「直」線で流れなくてもよい(天空の電気稲妻の形状のように)。
【0153】
あるレベルの電流では、発生した磁場が強磁性シャフト材料の永久磁化を引き起こすほど充分に大きい。電流がSHの中心の近く又はそこを流れるとき、永久にもたらされる磁場が同じ場所、即ちSHの中心の近く又は中心に存在する。今、シャフトに対して振動又は往復運動のために機械的なトルク又は線形力を加える時、内部に磁場をもったシャフトは、加えられた機械力に従ってその磁束経路を傾けることによって応答する。永久にもたらされる磁場がシャフト表面の下深くにあるとき、測定可能な効果は非常に小さく、一様でなく、従って信頼できるNCTセンサーシステムを作るには十分でない。
【0154】
図20には、飽和レベルでの導体内における一様な電流密度を示す。
【0155】
飽和レベルでのみ、電流密度(DCを用いる時)は導体全体の横断面に一様に分布する。この飽和レベルを達成する電流量は非常に多く、そして使用する導体の横断面及び伝導率(インピーダンス)に主に影響される。
【0156】
図21には、導体の表面下又は表面を流れる電流を示す(表皮効果)。
【0157】
導体内を交流(ラジオ周波数信号のような)が流れる時、信号が導体の表皮層を流れること、即ち、表皮効果と呼ばれることは一般に広く仮定される。交流の選択された周波数が、表皮効果の「場所/位置」及び「深さ」を規定する。高周波数において、電流は導体の表面を又は表面の近くを流れ(A)、他方、低周波数(20mm直径のSHの場合、5〜10Hzの領域)において、交流電流はシャフト横断面のもっと中心(E)を通過する。また、相対電流密度については、非常に低いAC周波数におけるシャフト中心付近の相対電流密度に比較して、より高いAC周波数において電流が占めている部分の方が高くなる(これは、低いAC周波数において、電流が流れるために利用可能な、より大きな面積があることによる)。
【0158】
図22には、異なる周波数をもって、交流を導体に流す場合における導体の電流密度(電流に対して90度の横断面)を示す。
【0159】
PCMEセンサー技術の望ましい磁場設計図は、2つの円形磁場構造であって、互いに近接する2つの層にもたらされ(「ピギーバック」)、そして互いに反対の方向に走っている(Counter−Circular:逆環状)の構造である。
【0160】
再び図13を参照すると、これは望ましい磁場センサー構造を示しており、つまり、互いに近接して位置し、互いに反対方向に走る、2つの閉じた磁気ループ、即ち、逆環状の「ピギーバック」磁場設計とされる。
【0161】
磁場設計を、SH(シャフト)に加えられる機械的な応力に対して高感度にするため、そして最も大きなセンサー信号を可能にするために、望ましい磁場構造は、シャフト表面に最も近いところに置かなければならない。円形磁場をSHの中心近くに置くことは、ユーザーに利用可能なセンサー出力信号の勾配を減少させ(センサー信号の多くは、強磁性のシャフト材料を通して伝わり、これは該材料が空気に比して一層高い透磁率を持つためである)、そして、センサー信号の不均一性を増加させる(二次側センサーに関連するシャフト回転及びシャフトの軸運動に関して)。
【0162】
図23には、シャフト表面の近くにできる磁場構造と、シャフトの中心付近にできる磁場構造を示す。
【0163】
AC(交流)を使用する場合に、SHの望ましい永久的な磁気エンコーディングを達成することは困難であり、これは、作られた磁場の極性が絶えず変化し、それ故にむしろ消磁システムとして働くことによる。
【0164】
PCME技術では、強電流(望ましい磁場構造の消失を防ぐために、「単極性」又はDC)がシャフト表面直下を流れることを要求する(センサー信号がシャフトの外側において一様であって、且つ測定可能であることを保証するため)。また、逆環状のピギーバック磁場構造を形成する必要がある。
【0165】
シャフトに2つの逆環状磁場構造を置くことは、該シャフトにそれらを交互に備えることによって可能である。最初、内側の層がSHにもたらされ、そしてその後に外側の層がより弱い磁気力(内側の層が偶然に中性化されて消去されることを防止する)を使用することによって生じる。これを達成するためには、FASTテクノロジーの特許に記述されているように、既知の「永久」磁石エンコーディング技術を適用することができ、又は、電流エンコーディングと「永久」磁石エンコーディングとの組み合わせを使用することによって行われる。
【0166】
もっと単純で速いエンコーディング工程は、電流のみを用いて、望ましい逆環状の「ピギーバック」磁場構造を実現することである。ここで最も挑戦的な部分は、逆環状の磁場を作ることにある。
【0167】
一様な電流は、電流方向(A)に関して、90度の角度において導電体の周りを走る一様な磁場を生成する。2つの導体を並べて置くと(B)、その時、2つの導体の間において磁場は互いの効果を打ち消し合うようになる(C)。尚、存在してはいるが、近接しておかれた2つ導体間に検出可能な(又は測定可能な)磁場はない。多数の導電体を並べて置く時(D)、「測定可能な」磁場は、「平らな」形状をした導体表面の外側を周回するようになる。
【0168】
図24には、一様な電流が流れる導体を横断面で見た時の磁気効果を示す。
【0169】
上記の「平らな」又は長方形の形状の導体を、「U」字型に曲げるものとする。「U」字型導体を通って電流を流すとその時、「U」字型の外形に沿った電流は、「U」字の内半部における測定可能な効果を打ち消している。
【0170】
図25を参照すると、「U」字型導体内の領域は、電流が導体を流れている時、磁気的に「中性」に見える。
【0171】
機械的応力が「U」字型導体の横断面に加えられない時、「U」字の内部(F)に磁場は存在しないように見える。しかし、「U」字型導体を曲げたり、又は捻ったりすると磁場はもはやその初めの経路(電流に対して90度の角度)に従わなくなる。加えられる機械力に依存して、磁場は幾分その経路を変え始める。その時点で、機械的な応力によってもたらされる磁場ベクトルは、導体の表面で、「U」字型の内部及び外部において感知され、そして測定される。この現象は非常に特別な電流レベルでのみ適用されることに注意すべきである。
【0172】
同じことが「O」型導体の設計にも当てはまる。「O」型導体(チューブ)を通して一様な電流を流すと、「O」型導体(チューブ)の内部で測定可能な磁場効果が互いに打ち消されてしまう(G)。
【0173】
図26を参照すると、「O」型導体内部の領域は、電流が導体を流れる時、磁気的に「中性」に見える。
【0174】
しかしながら、機械的な応力が「O」型導体(チューブ)に加えられる時、「O」型導体の内側に存在する磁場があったことが明白になる。内部の逆方向の磁場(外部磁場も同様)は、加えられるトルク応力に関連して傾き始める。この傾きの磁場が明瞭に感知され、そしてこれを測定できる。
【0175】
次に、エンコーディングパルス設計について記述する。
【0176】
SHの内部に望ましい磁場構造(逆環状のピギーバック磁場設計)を実現するために、本発明の方法における1つの典型的な実施形態によると、単極性の電流パルスがシャフト(又はSH)を通過する。「パルス」を使用することによって、望ましい「表皮効果」が得られる。「単極性」の電流方向(その電流の方向が変化しない)を使用することによって、生じる磁場効果が偶然に打ち消されることはなくなる。
【0177】
使用する電流パルスの形状は、望ましいPCMEセンサー設計を達成するために最も重要である。各々のパラメータは正確に且つ再現可能に制御されなければならず、該パラメータには、電流の立ち上がり時間、一定電流のオンタイム、最大電流振幅、そして電流の立ち下がり時間がある。また、電流が全シャフト表面に亘って非常に一様に出入りすることが非常に重要である。
【0178】
次に、長方形の電流パルス形状について記述する。
【0179】
図27に、長方形をした電流パルスを図示する。
【0180】
長方形をした電流パルスは、速い立ち上がり正エッジ及び速い立ち下り電流エッジを持つ。SHを通して長方形をした電流パルスを流す時、立ち上がりエッジがPCMEセンサーの目標磁場構造の形成に関与するのに対して、長方形をした電流パルスの平らな「オン」タイム及び立ち下がりエッジは逆効果を生じる。
【0181】
図28に、長方形をした電流エンコーディングパルス幅(定電流オンタイム)とセンサー出力信号勾配との間の関係を示す。
【0182】
次の例では、長方形状の電流パルスを用いて、直径15mmの14CrNi14シャフト内に逆環状の「ピギーバック」場が生成されて蓄えられた。パルス電流は、約270アンペアで最大値を持つ。また、パルスの「オンタイム」は、電子回路で制御された。エンコーディングパルスの立ち上がり及び立ち下がりエッジにおける高周波成分のために、この実験は真のDCエンコーディングSHの効果を精確には示すことができない。従って、1000msの定電流オンタイムパルスを流す時、センサー出力信号勾配曲線は20mV/Nmよりも上で最終的に平坦となる。
【0183】
速い立ち上がり電流パルスエッジを使用しない場合に(制御された一定のランプ勾配を使用するように)、センサー出力信号勾配は非常に悪化してしまう(10mV/Nm未満)。尚、この実験(14CrNi14を使用)では、信号のヒステリシスがFS信号の約0.95%であった(FS=75Nmのトルク)。
【0184】
図29に、いくつかの長方形の電流パルスを連続して使用することによるセンサー出力信号勾配の増加を示す。
【0185】
センサー出力信号勾配は、いくつかの長方形の電流エンコーディングパルスを連続して使用する場合に改善できる。他のエンコーディングパルス形状に比較すると、長方形の電流パルスにおける、速い立ち下がりの電流パルス信号勾配は、センサー出力信号勾配が最適な性能レベルに到達することを妨げる。少数(2から10)の電流パルスがSH(又はシャフト)に加えられた後では、センサー出力信号勾配がそれ以上大きくならないことを意味する。
【0186】
次に、放電電流パルス形状について記述する。
【0187】
放電電流パルスは定電流オンタイムを持たないし、そして速い立ち下がりエッジを持たない。従って、SHの磁気エンコーディングにおける主要で切実な作用は、この電流パルス型の速い立ち上がりエッジである。
【0188】
図30に示すように、PCMEセンサーを作るとき、急峻な立ち上がり電流エッジ及び典型的な放電曲線が最良の結果を与える。
【0189】
図31には、適正なパルス電流を特定することによるPCMEセンサー出力信号勾配の最適化を示す。
【0190】
パルス電流スケールの非常に低い端部(15mm直径のシャフトで、14CrNi14シャフト材料の場合、0〜75アンペア)において、放電電流パルス型は、強磁性シャフト内で持続する磁場を作り出すのに必要とされる磁場のしきい値を超えるほどには強力でない。パルス電流振幅を増加すると、2重の円形磁場構造がシャフト表面下に形成され始める。パルス電流振幅を増加すると、二次側センサーシステムの達成出来るトルクセンサー出力信号振幅も増加する。約400A〜425Aにおいて最適のPCMEセンサー設計が達成された(2つの逆方向を向いた磁場領域が、最良のセンサー性能に対する、互いの最適距離及び正しい磁束密度に達した。)。
【0191】
図32に、エンコーディングパルスの間の最適なPCME電流密度及び位置を持つセンサーホスト(SH)の横断面を示す。
【0192】
更にパルス電流振幅を増加する時、トルク力に関するセンサー信号振幅の絶対値は更に、しばらくの間増加する(図31の曲線2)が、一方で典型的なPCMEの全般的なセンサー性能は減退する(曲線1)。900Aのパルス電流振幅を過ぎると(15mm直径のシャフトの場合)、トルク力に関するセンサー信号振幅の絶対値が同様に降下し(曲線2)、PCMEセンサー性能は、その際、非常に悪くなる(曲線1)。
【0193】
図33に、各種の増加するパルス電流レベルについて、センサーホスト(SH)の横断面及び電気パルス電流密度を示す。
【0194】
電流がSHにおいて、より大きな横断面を占めるようになると、内部の円形部分と、外部の(シャフト表面の近くで)円形部分との間隔がより大きくなる。
【0195】
図34を参照すると、より良いPCMEセンサー性能が、逆環状の「ピギーバック」場の設計で間隔が狭い場合(A)に達成される。
【0196】
望ましい2重で逆向きの環状磁場構造は、二次側センサーの信号振幅をもたらすトルク力の下で閉ループ構造を作り難くなる。
【0197】
図35を参照すると、放電曲線を平らにすることはまた、センサー出力の信号勾配を増加させる。
【0198】
電流パルス放電時間を長くする(電流パルスを幅広くする)(B)と、センサー出力信号勾配が増加する。しかしながら、電流パルスの立ち下がりエッジを減少させるために必要な電流量は非常に多い。最高の実現可能なセンサー出力信号勾配を達成するためには、大きな電流振幅(最適の値で)と、可能な限り遅い放電時間とを組み合わせて使用することが、より実用的である。
【0199】
次に、一次側センサー処理に関連する電気接続装置について記述する。
【0200】
PCME技術(「PCME」技術という用語は、本発明の典型的な実施形態に関して使用されることに注意しなければならない)は、一次側センサーが生産される場所でシャフトを通して非常に大量のパルス変調電流を流すことに依存する。シャフトの表面が非常にきれいで、しかも導電性が高い場合に、多点の銅又は金の接続は、望ましいセンサー信号の一様性を達成するために充分である。重要なことはインピーダンスがシャフト表面への各々の接続点で同一であるということである。尚、このことは、ケーブルが主要な電流接続点(I)に接続する前に、ケーブル長(L)が同一であることを保証できる場合に、最良に達成出来る。
【0201】
図36には、シャフト表面への単純な電気的多点接続を示す。
【0202】
但し、多くの場合、信頼性があって再現性のある多点電気接続は、各々の接続点でインピーダンスが同一で、一定であることを保証することによってのみ達成できる。押圧されたバネを用いて、先鋭なコネクターが、シャフトの表面で可能な酸化又は絶縁層(多分、指紋によって作られた)を突き通す。
【0203】
図37に、バネ仕掛けの接触点を持つ多チャンネルの電気接続具を図示する。
【0204】
シャフトを処理する時、出来るだけ一様な方法で電流をシャフトに注入し、そして取り出すことが最も重要である。上の図は、シャフトの周りに取り付け具によって固定されている互いに絶縁された幾つかのコネクターを示す。この工具はシャフト処理保持クランプ(又は、SPHC)と呼ばれる。SPHCに必要とされる電気コネクターの数は、シャフトの外径に依存する。外径が大きいほど多くのコネクターが必要である。導電体同士の間隔は、1つの接続点から次の接続点まで同じでなければならない。この方法は対称「スポット」接触と呼ばれる。
【0205】
図38には、電気接続点の数を増やすことによって、パルス変調電流の出入りの取り組みを支援することが図示されている。それは、要求される電子回路の制御システムの複雑さを増すことにもなる。
【0206】
図39に、容易なシャフト取り付けのためにSPHCの開け方について1つの例を示す。
【0207】
次に、一次側センサー処理に関するエンコーディングの概要について記述する。
【0208】
主要シャフトのエンコーディングは、回転シャフトに適用される永久磁石を使用するか、又はシャフトの望ましい部分を通して流れる電流を使用することによって行われる。永久磁石を使用するときには、非常に複雑で連続する工程が、シャフト内で互いに接近した2層の閉ループ磁場を作るために必要となる。PCME手順を使用する時は、望ましい性能を達成するために可能な最も対称的な方法で、電流がシャフトに入り、そしてシャフトから出なければならない。
【0209】
図40を参照すると、2つのSPHC(Shaft Processing Holding Clamps:シャフト処理保持クランプ)が、計画されたセンシングエンコーディング領域の境界に位置される。1つのSPHCを通してパルス電流(I)がシャフトに入るが、一方で第二SPHCにおいてパルス電流(I)がシャフトを出る。2つのSPHC間の領域がそのとき一次側センサーに変わる。
【0210】
この特別なセンサー工程は、単一磁場(SF)エンコード領域を作る。この設計の1つの利点(以下に記述されるものに比較して)は、この設計が二次検出装置の場所に関して、あらゆる軸シャフト運動に対して敏感でないことである。この設計の不利な点は、軸(つまり一列に)に置かれたMFSコイルを使用する時、漂遊磁界(地球磁場のような)に対して敏感になることである。
【0211】
図41を参照すると、2重磁場(DF)エンコード領域(並んで反対の極性を持つ2つの独立に機能するセンサー領域を意味する)によって、軸(つまり線上に)に置かれたMFSコイルを使用する場合に、一様な漂遊磁界の効果が消去可能となる。しかしながら、この一次側センサー設計はまた、軸方向における(MFSコイルの場所に関係して)シャフトの運動の許容範囲を狭くする。PCME技術で2重磁場(DF)エンコード領域を作り出す2つの方法がある。それらは、磁気エンコード部分が1つからまた次へと作り出されるところの連続工程と、そして磁気エンコード部分が同時に作り出されるところの並行工程である。
【0212】
連続的な2重磁場設計の第一工程段階は、1つのセンサー部分を磁気的にエンコード化することであり(単一磁場工程と同一に)、それによって2つのSPHCの間隔が一次側センサー領域の所望の最終長の半分でなければならない。この工程の説明を単純化するため、最終的な一次側センサー領域の中央に置かれるSPHCを中央SPHC(C−SPHC)と呼び、そして中央SPHCの左側に置かれるSPHCをL−SPHCと呼ぶことにする。
【0213】
図42を参照すると、連続的な2重磁場エンコーディングの第二工程段階は、一次側センサー領域の中央に置かれるSPHCと(C−SPHCと呼ばれる)、そして中央SPHCの他の側(右側)に置かれる第二SPHC、R−SPHCと呼ばれるものを使用する。重要なことは、中央SPHC(C−SPHC)における電流方向が両方の工程段階で同一であることである。
【0214】
図43を参照すると、最終的な一次側センサー領域の性能は、2つのエンコード領域を相互の関連において如何に近くに置くことができるかに依存する。そしてこれは、使用する中央SPHCの設計に依存する。C−SPHCの軸方向における接触幅が狭いほど、2重磁場PCMEセンサーの性能が良くなる。
【0215】
図44は、本発明の別の典型的な実施形態によるパルスの加え方を示す。上の図から分るように、パルスは、シャフトの3箇所で加えられる。電流Iがシャフトに入る場所の中央電極の両側への電流分布のために、横方向の電極でシャフトを去る電流は、中央電極に入る電流の半分だけ、即ち、I/2である。電極はリングで描かれ、その大きさはシャフトの外表面の大きさに適合される。しかしながら、この本文において後述する複数のピン電極を含む電極のように、他の電極が使用される場合もあることに注意されたい。
【0216】
図45には、シャフトにトルク又は直線運動応力が加えられない時の2重磁場PCMEセンサー設計における2つのセンサー部分の磁束方向を示す。互いに逆方向の磁束ループ同士は相互作用しない。
【0217】
図46を参照すると、トルク力又は線形応力が1つの特別な方向に加えられる時、磁束ループは、シャフト内部において、増加する傾斜角度で走り始める。傾斜した磁束がPCME部分の境界に到達する時、図示のように磁束線は逆流方向の磁束線と相互作用する。
【0218】
図47を参照すると、加えられたトルクの方向が(例えば、時計回り方向から反時計回り方向へと)変化している時、PCMエンコードシャフト内部における逆流の磁束構造についての傾斜角度も変化する。
【0219】
次に、シャフト処理のための多チャンネル電流駆動部について記述する。
【0220】
シャフト表面への電流路についての、完全に同一のインピーダンスを保証できない場合には、電流制御駆動ステージがこの問題を克服するために使用される。
【0221】
図48に、小直径センサーホスト(SH)のための6チャンネル同期パルス電流駆動システムを示す。シャフト直径が大きくなると、電流駆動チャンネルの数が多くなる。
【0222】
次に、真鍮リング接触と対称「スポット」接触について記述する。
【0223】
シャフト直径が比較的に小さく、所望の検出領域においてシャフト表面がきれいでそして如何なる酸化もない場合には、簡単な「真鍮」リング(又は銅リング)接触法を、一次側センサーの処理に選択することができる。
【0224】
図49では、シャフト表面に対して、しっかりと取り付けられた真鍮リング(又は銅リング)が、電線のはんだ接続とともに使用される。2つの真鍮リング(銅リング)の間の領域がエンコードされる領域である。
【0225】
しかしながら、達成できるRSU性能については、対称「スポット」接触法を使用する場合よりも、はるかに低くなってしまう。
【0226】
次に、ホット・スポットの概念について記述する。
【0227】
標準の単一磁場(SF)PCMEセンサーは、ホット・スポット性能において非常に劣る。SF PCMEセンサー部分の外部磁束プロファイル(トルクが加えられたとき)は、近傍の環境における可能な変化(強磁性材料に関して)に非常に敏感である。SFエンコードセンサー部分の磁気境界が明瞭でないので(「ピン止め(pinned down)」されない)、それらは強磁性材料がPCME検出領域の近くに置かれる方向に向かって「拡がる(extend)」ことができる。
【0228】
図50を参照すると、PCME工程の磁化された検出領域は、検出領域の境界に接近する強磁性材料に非常に敏感である。
【0229】
ホット・スポットセンサー感度を減少するために、PCMEセンサー部分の境界は、それらをピン止めすることによって、明確に規定されることを要する(それらはもう移動できない)。
【0230】
図51に、2つのピン止め磁場領域を持つPCME処理の検出領域を示すが、その1つが検出領域の各側にある。
【0231】
ピン止め領域を検出領域の両側の近くに置くことによって、検出領域の境界は非常に特定な場所に束縛される。強磁性材料が検出領域に近づいて来る時、それはピン止め領域の外部境界に影響を与えるが、しかしそれは検出領域の境界において非常に限定的な影響を持つ。
【0232】
本発明の典型的な実施形態によると、SH(センサーホスト)が、どのように単一磁場(SF)検出領域及び2つのピン止め領域を、検出領域の各々の側に1つずつ、得るように処理できるかについて多数の異なる方法がある。各領域が互いの後に処理されるか(順次処理)、あるいは2つ又は3つの領域が同時に処理される(並行処理)。並行処理では、より一様なセンサーを供給する(低減された寄生磁場)が、目標のセンサー信号勾配に達するために更により高いレベルの電流を必要とする。
【0233】
図52には、ホット・スポットを減少させる(又は更に除去する)ために、主要検出領域の各々の側にピン止め領域を持つ単一磁場(SF)PCMEセンサーに対する並行処理を例示する。
【0234】
2重磁場PCMEセンサーは、センサーの中央領域が既にピン止めされているのでホット・スポットの効果に対してあまり敏感でない。しかしながら、残留するホット・スポット感度は更に、2重センサー領域の両側にピン止め領域を置くことによって減少できる。
【0235】
図53には、両側にピン止め領域を持つ2重磁場(DF)PCMEセンサーを示す。
【0236】
ピン止め領域が許容されないか又は可能でない時(例えば、限られた軸方向の間隔のみ利用できる場合)、検出領域は外部の強磁性材料の影響から磁気的に遮蔽されることを要する。
【0237】
次に、回転信号一様性(RSU)について説明する。
【0238】
現段階の理解によると、RSUセンサー性能は主に、電流が如何に周縁部で一様にSH表面に入って出るか、そして、電流が入る点と出る点との間の物理的な間隔に依存する。電流が入る点と出る点との間隔が大きいほど、RSU性能が良い。
【0239】
図54を参照すると、シャフト直径に対して、個々の円周面上に置かれた電流の流入点間の間隔が比較的に大きい時(そして、円周上に置かれた電流の出口点間の間隔が同じように大きい)、RSU性能が非常に劣ることになる。そのような場合に、PCMエンコーディング部分の長さは、出来るだけ大きくなければならない。そうでないと、生じた磁場が円周上で一様ではなくなる。
【0240】
図55を参照すると、PCMエンコーディング部分を拡げることによって、円周上での磁場分布は、電流が入る点と電流が出る点との間の半分の距離のところで、より一様になる(そしていつかはほぼ完全に)。従って、PCMEセンサーのRSU性能は、電流入口点と電流出口点の半分の中間地点で最良である。
【0241】
次に、NCTセンサーシステムの基本的な設計問題について記述する。
【0242】
PCMエンコーディング技術の詳細に立ち入ることなく、このセンシング技術のエンドユーザーは、その適用において、該センシング概念を利用し及び使用することを可能にするための、いくつかの設計上の詳細を知る必要がある。次に続くページでは、磁気歪に基づいたNCTセンサーの基本要素(一次側センサー、二次側センサー、そしてSCSP電子機器のような)と、個々のコンポーネントがどのようなものであるか、そしてこの技術を既存の製品に組み込む時にどのような選択を行う必要があるかについて記述する。
【0243】
原則として、PCMEセンシング技術は、スタンドアローンセンサー製品を製造するために使用できる。しかしながら、既存の工業上の応用において「スタンドアローン」製品のために利用できるものが殆どないか全く無い。PCME技術は、最終の製品を再設計する必要なしに既存の製品に応用できる。
【0244】
スタンドアローンのトルク検出装置又は位置検出装置がモーター伝動システムに応用される場合、全システムは、大幅な設計変更を被ることを要求される。
【0245】
次に、図56に、エンジンのシャフトにおけるPCMEセンサーの可能な場所を図示する。
【0246】
図56は、本発明の1つの典型的な実施形態による、例えば、モーターカーのギアボックスにおけるトルクセンサーのための可能な配置場所を示す。図56の上部には、本発明の1つの典型的な実施形態によるPCMEトルクセンサーの配置を示す。また、図56の下部には、本発明の典型的な実施形態の場合のように、ギアボックスの入力シャフトに一体化されていないスタンドアローン検出装置の配置を示す。
【0247】
図56上部から分るように、本発明の1つの典型的な実施形態によるトルクセンサーは、ギアボックスの入力シャフトに一体化することができる。換言すると、一次側センサーが入力シャフトの一部である。即ち、入力シャフトは、一次側センサー又はセンサー素子それ自身となるように磁気的にエンコードされてもよい。二次側センサー、即ちコイルは、例えば、入力シャフトのエンコード領域に近いベアリング部に収容されてもよい。これにより、動力源とギアボックスの間にトルクセンサーを配置する場合に、入力シャフトを邪魔する必要がなく、図56の下部に示すように、モーターにつながるシャフトとギアボックスにつながる別のシャフトとの間に、別のトルクセンサーを配置する必要はない。
【0248】
入力シャフトにエンコード領域が一体化されることで、例えば、車の場合、その入力シャフトに如何なる変更をも施すことなく、トルクセンサーを設けることができる。このことは、例えば、航空機の部品では非常に重要であり、というのも、各部品が航空機での使用を許可される前に、多数の検査を受けなければならないからである。本発明による、そのようなトルクセンサーは多分、当面のシャフトが変更されないので、航空機やタービン内のシャフトに実施される多数の検査なしで済ませることすら可能である。また、重大な影響がシャフトの材料に引き起こされることはない。
【0249】
更には、図56から分るように、本発明の1つの典型的な実施形態に従うトルクセンサーによって、ギアボックスと動力源との間の距離を低減させることができる。これは、動力源から出るシャフトとギアボックスへの入力シャフトとの間に、別個のスタンドアローンのトルクセンサーを設けることが明白であることによる。
【0250】
次に、センサーコンポーネントについて説明する。
【0251】
図57に示すように、非接触磁気歪センサー(NCTセンサー)は、本発明の1つの典型的な実施形態によると、3つの主要な機能要素、つまり、一次側センサー、二次側センサー、並びに信号調整及び信号処理(SCSP)電子機器から構成される。
【0252】
適用の種類(量及び品質の要請、目標製造コスト、製造工程の流れ)に応じて、顧客は、彼自身の管理下でセンサーシステムを製造するために個々のコンポーネントの購入を選択できるし、又は個々のモジュールの生産を下請けに外注することができる。
【0253】
図58は、非接触式トルク検出装置のコンポーネントを概略的に示したものである。但し、これらのコンポーネントはまた、非接触式の位置検出装置にも用いることができる。
【0254】
年間の生産目標が数千ユニットである場合に、「一次側センサーの磁気エンコーディング工程」を顧客の製造工程に統合することは、より効率的である。そのような場合、顧客は、特定用途向けの「磁気エンコーディング装置」を購入する必要がある。
【0255】
量産的な適用では、製造工程の価格及び統合化が重要であって、典型的には、NCTEが非接触センサーの作成に必要な個々の基本コンポーネント及び装置のみを供給する。
・IC(表面実装パッケージ、特定用途向け電子回路)
・MFSコイル(二次側センサーの部品として)
・センサーホストのエンコーディング装置(シャフト(=一次側センサー)に磁気エンコーディングを適用するための)
【0256】
要求量に応じて、MFSコイルは、フレーム上に既に組み立てられて提供することが可能で、そして、必要であれば、コネクターをもったワイヤハーネスに電気的に接続されて提供される。同様に、SCSP(信号調整及び信号処理)電子機器は、プリント回路基板に組み込まれたMFSコイルを持つか又は該コイルを持たないプリント回路基板構成で充分な機能をもって提供できる。
【0257】
図59は、検出装置のコンポーネントを示す。
【0258】
図60から分るように、要求されるMFSコイルの数は、物理的なセンサー設計上で予期されるセンサー性能及び機械的な許容誤差に依存する。完全なセンサーホスト(SH又は磁気的にコードされたシャフト)を有し、望ましくない寄生磁場からの干渉が最小限とされた、適切に設計されたセンサーシステムにおいて、2つのMFSコイルのみが必要である。しかしながら、SHが、二次側センサーの位置に関連して径方向又は軸方向に1ミリメートルの数分の1よりも大きく動いている場合に、望ましいセンサー性能を達成するため、そのときにはMFSコイルの数を増やす必要がある。
【0259】
次に、制御及び/又は評価の回路構成について説明する。
【0260】
本発明の1つの典型的な実施形態によると、SCSP電子機器は、NCTE専用IC、多数の外部の受動及び能動的電子回路、プリント回路基板(PCB)、及びSCSPハウジング又はケースから構成される。尚、SCSPユニットが使用される環境に応じて、ケースは適切に密封されることを要する。
【0261】
特定用途の必要条件に応じて、NCTE(本発明の1つの典型的な実施形態によると)は、多数の異なる特定用途向け回路を提供する。
・基本回路。
・集積された電圧調節器を有する基本回路。
・高い信号バンド幅回路。
・オプションの高電圧及びショート保護装置。
・オプションの故障検出回路。
【0262】
図61は、単一チャンネルとされる、低価格のセンサー電子機器の解を示す。
【0263】
図61から分るように、例えば、コイルを含む二次側センサーユニットが提供される。これらのコイルは、例えば図60に示すように配置され、一次側センサーユニット、即ち、センサーシャフト又はセンサー素子から、トルクがそれに加えられるときに出る磁場の変化を検出する。二次側センサーユニットはSCST内の基本ICに接続される。基本ICは、電圧調節器を介して正電源電圧に繋がる。基本ICはまた接地される。基本ICは、SCSTの外部にアナログ出力を与えるように構成され、その出力がセンサー素子に加えられる応力によって引き起こされる磁場の変動に対応する。
【0264】
図62は、一体化された故障検出を有する2チャンネルの、ショート保護システム設計を示す。本設計は5個のASICデバイスからなり、高度のシステム安全性を提供する。故障検出ICは、センサーシステムのどこかにワイヤの断線が起きた場合に、MFSコイルの故障、又は「基本IC」の電子的な駆動ステージの故障を識別する。
【0265】
次に、二次側センサーユニットについて説明する。
【0266】
図63に示された1つの実施形態によると、二次側センサーは、次の要素、つまり、1乃至8個のMFS(磁場センサー)コイル、位置決め及び接続用プレート、コネクターを有するワイヤハーネス、及び二次側センサーハウジングから構成される。
【0267】
MFSコイルは、位置決めプレートに取り付けてもよい。位置決めプレートを使用することにより、通常、各MFSコイルの2つの接続ワイヤを適切な方法で、はんだ付けし、接続することができる。そして、ワイヤハーネスは位置決めプレートに接続される。該プレートは、MFSコイルとワイヤハーネスとともに完全に組み立てられて、それから二次側センサーのハウジングによって組み込まれるか又は保持される。
【0268】
MFSコイルの主要な要素は、アモルファス(非晶質)のような材料で形成されることを要する心線である。
【0269】
二次側センサーユニットが使用される場所の環境に応じて、組み立てられた位置決めプレートを保護材料で覆う必要がある。該材料は、周囲温度の変化時にMFSコイルに機械的な応力又は圧力を引き起こすものであってはならない。
【0270】
動作温度が+110℃を超えない場所での適用において、顧客は二次側センサーユニット(SSU)の内部にSCSP電子機器(ASIC)を置くという選択肢を持つ。ASICデバイスが+125℃より高い温度で動作する場合、温度に関連した信号オフセット及び信号利得の変化を補償することが更に困難になる。
【0271】
MFSコイルとSCSP電子機器の間の推奨される最大ケーブル長は2メートルである。適切な接続ケーブルを使用する場合に、10メートルまでの距離については達成可能である。多チャンネルの適用において(同一の一次側センサーの場所で動作している2つの独立なSSU=冗長なセンサー機能)、信号のクロストークを避けるためには、SSUとSCSP電子機器との間で特別に遮蔽されたケーブルを考慮すべきである。
【0272】
二次側センサーユニット(SSU)の生産を計画する場合に、生産者は、SSUのどの部品又は複数の部品を下請けから購入すべきであり、そして、どの製造ステップを社内で行うのかを決定しなければならない。
【0273】
次に、二次側センサーユニット製造の選択肢について記述する。
【0274】
NCTセンサーを、特別注文のツール又は標準的な伝動システムに一体化する場合に、システムの生産者は、次の項目から選択する、いくつかの選択肢を持つ。
・カスタムメイドのSSU(ワイヤハーネス及びコネクターを含む)。
・選択されたモジュール又はコンポーネント;最終のSSU組み立て及びシステム試験は顧客の管理でなされてもよい。
・重要なコンポーネントのみ(MFSコイル又はMFS心線、特定用途向けIC)、そしてSSUを自社で生産する。
【0275】
図64は、二次側センサーユニット組み立ての1つの典型的な実施形態を示す。
【0276】
次に、一次側センサー設計について説明する。
【0277】
SSU(二次側センサーユニット)は、磁気的にエンコードされたSH(センサーホスト)の外側に置くことができ、また、SHが中空である場合にはSHの内側に置くこともできる。SSUが中空シャフトの内側に置かれる場合に、達成できるセンサー信号振幅は同じ強さであるが、一段と良い信号対ノイズ性能を持つ。
【0278】
図65は、一次側センサー及び二次側センサーの幾何学的な配置について2つの形態を示す。
【0279】
改善されたセンサー性能は、磁気的エンコーディング工程を、SH(シャフト)の真っ直ぐで平行な部分に適用する場合に達成される。15mm〜25mmの直径を持つシャフトでは、磁気的にエンコードされた領域の最適な最短長が25mmである。センサー性能は、その領域が45mmの長さで作成できる場合(ガード領域を加えて)、更に向上する。複雑で高度に統合された伝動(ギアボックス)システムでは、そのような間隔を見い出すのは困難である。更に理想的な状況では、磁気的にエンコードされた領域を14mmに短くすることができるが、これでは、所望のセンサー性能の全てを達成できない虞がある。
【0280】
図66に示すように、SSU(二次側センサーユニット)とセンサーホスト表面との間隔については、本発明の1つの典型的な実施形態によると、実現し得る最良の信号品質を達成するために、できるだけ小さく抑えるべきである。
【0281】
次に、一次側センサーエンコーディング装置について記述する。
【0282】
図67に、その一例を示す。
【0283】
どの磁気歪センシング技術を選択するかに応じて、センサーホスト(SH)は、それに従って加工され、且つ処理される必要がある。その技術は、互いに非常に多様で(ABB、FAST、FT、Kubota、MDI、NCTE、RM、Siemens等)、そして必要な処理装置もまた同様である。使用できる磁気歪センシング技術のいくつかでは、SHになされる如何なる物理的変更も必要とせず、磁気的な処理のみに依る(MDI、FAST、NCTE)。
【0284】
MDI技術は2段階工程であるが、FAST技術は3段階工程であり、そしてNCTE技術は1段階工程であって、PCMエンコーディングと呼ばれる。
【0285】
磁気処理の後、センサーホスト(SH又はシャフト)は「精密測定」装置となり、そしてそれ相応に取り扱うべきであることに注意を要する。磁気処理は、処理されたSHがその最終場所に注意深く置かれる前の、まさに最終ステップとすべきである。
【0286】
磁気処理は、次のような状況下において、顧客の製造工程(社内での磁気処理)の不可欠な部分であるべきものとされる。
・高生産量(何千の単位のように)。
・重いSH又は取り扱いが困難なSH(例えば、高い輸送費)。
・非常に特別な品質及び検査要求(例えば、国防用途)。
【0287】
全ての他の場合には、NCTEのような資格を持った公認の下請業者によって磁気的に処理されたSHを得ることは、更にコスト効率が良い。というのも、「社内」の磁気処理のためには、専用の製造装置が要求されるからである。そのような装置は、完全に手動運転され、又は半自動的とされ、あるいは完全に自動化することもできる。複雑さ及び自動化のレベルに応じて、装置はEUR20kからEUR500kより上の価格とされる。
【0288】
図68Aは、シャフト150を磁化して、該シャフト150上に磁気的にエンコードされた領域を形成する磁化装置140を示す。この磁化装置140は、他の物体によって取り囲まれたシャフトを含まない。電流がシャフト150の異なる端の間に加えられる時、シャフト150が磁化される。
【0289】
図68Bは、磁化されるべきシャフト150(図68Bに示されていない)を取り囲む中空管121を含む本発明の磁化装置160を示す。シャフト150の一端部は、シャフト150を取り囲む中空管121の一端部に結合されている。電流信号がシャフト150に印加される場合に、電流が中空管121に注入される。中空管121内を流れる電流によって作られる磁場は、シャフト150における電流分布を安定化させる。そのようにして、シャフト150は非常に一様な方法で磁化される。
【0290】
図68Cは、磁気的にエンコードされた領域122を有するトルク及び力の検出装置170の概念図であり、当該領域は、磁化装置160を用いて行われる磁化発生工程に従って形成される。この磁気的にエンコードされた領域122の長さは、磁化手続き中に流れる電流に沿う長さによって規定される(即ち、磁化電流を注入するための接触形状に依存する)。
【0291】
図68Cは、予め決められたトルク値で回転するシャフト150を有するトルクセンサー170を示しており、シャフト150の一部が磁化されて、磁気的にエンコードされた領域122を形成する。シャフト150が回転する場合に、磁気的にエンコードされた領域122は、磁場検出コイル123に磁気信号を発生させる。
【0292】
図68Dは、図68Aに示した磁化装置140で磁化されたトルク及び力の検出装置の信号対トルク図100(実験的に測定された曲線及び測定された曲線の特長を強調する概略的な曲線)を示す。
【0293】
図68Eは、図68Bに示した磁化装置160で磁化されたトルク及び力の検出装置170の信号対トルク図110(実験的に測定された曲線及び測定された曲線の特長を強調する概略的な曲線)を示す。
【0294】
図68D及び図68Eの図形100及び110はそれぞれ横座標101をもち、それに沿って磁気的にエンコードされた領域を持つシャフトに加えられたトルクが示される。図68D及び68Eは、横座標101に沿ってプロットされたトルクにおける1つの特定の値が加えられる場合に、コイル123によって検出される信号を縦座標102に沿って示す。
【0295】
図68D及び68Eには、各場合についてヒテリシスループ103及びベストフィット直線104を示す。明らかなように、ベストフィット直線104の勾配は、図68Dよりも図68Eで大きく、そしてヒステリシス特性は、図68Dよりも図68Eにおいて遥かに良く抑えられる。
【0296】
本発明による磁場エンコーディング工程の大きな挑戦の1つは、「エンコードされるべき」シャフト150の周りに一様な電流分布を実現すること、即ち、適切に磁化された領域122を持つようにすることである。それに失敗することは、回転信号一様性の性能悪化と、信号線形性の悪化をもたらすことになる。
【0297】
図68Dは、シャフト150が図68Aに従って処理された場合のセンサートルク信号を示す。図68Dに示すセンサー特性は、ある非線形性を示しており、これは、センサー信号のヒステリシス性能において否定的な影響をもつ。
【0298】
図68B、69、及び70に示す方法によって磁気的にエンコードされた領域122を形成するためにシャフト150を処理することは、センサー信号の線形性を大幅に改善するとともに、センサー信号のヒステリシスに肯定的な影響をもち、ヒステリシスが一段と小さくなる(図68E参照)。
【0299】
図68Aに対応する磁気的にエンコードされたセンサーは、ベストフィット直線104の勾配が13.8mV/Nmであって、3.72%のヒステリシスを持つ。これに対して、図68Bに従って磁化されたトルクセンサーは、図68Eに示すように、15.1mV/Nmの勾配と、わずか2.59%のヒステリシスを持つ。
【0300】
従って、信号対ノイズ比は、磁気的にエンコードされた領域122が本発明に従って生成される時に、格段に改善される。
【0301】
本発明に従って物体を磁化するための方法の基本原理はまた、自己調整工程として示されるが、実際の磁化工程中に逆方向の磁場を発生させることであり、この逆方向の磁場は、電気信号が「エンコードされるべき」検出領域122を通って非常に一様にシャフト150を通過することを保証する。
【0302】
シャフト150を取り囲んでいる導電性中空管121を通して、磁気的にエンコードされる領域122を形成するためにシャフト150の一部分を磁化するための電気信号を送り返すことによって、中空管121の内側に発現する磁場は、シャフト150の外側で作られている磁場と関連して働くことができる。シャフト150は、中空管121の内部において中心に位置され、そして、所望の場所を除いて、中空管121に接触することが許されない。
【0303】
図69は、本発明を更に深く理解するのに有用な図式を示す。この図69に示す配置は、中実シャフト150及び中空管121を示している。電流Iは、図69に示すように、中実シャフト150の周りに磁場を形成するために中実シャフト150に注入される。この電流Iが中空管121を通して流れる時、更に別の磁場が同様に中空管121の材料内に作られる。従って、図69は、本発明による、物体を磁化するための方法における1つの原理を図示する概略図である。
【0304】
図70A及び70Bは、本発明による物体を磁化するための装置を示す概略図である。
【0305】
シャフト150を磁化するために、中空管121が中実シャフト150を取り囲むように配置される。更に、電気信号Iが中実シャフト150に印加される。時間の横座標301及び電流の縦座標302を持つ図70Dの図形310に示すように、パルス電流信号300は、基本的に垂直な速い立ち上がりエッジと、遅い立ち下がりエッジを持つ。
【0306】
更に図70Aから分るように、中実シャフト150は中空管121の中心に配置される。中空管121は、第一電気接続部201及び第二電気接続部202を持ち、中空管121の第二電気接続部202が中実シャフト150の第一電気接続部203に結合している。更に、中実シャフトは第二電気接続部204を持つ。電流信号Iが中空管121の第一接続部201と中実シャフト150の第二接続部204との間に加えられるように、電気信号源(図示しない)が接続される。
【0307】
図70Bは、図70Aの形状を別の角度からみた図を示す。
【0308】
中空管121の内部の磁束方向(帰還電流方向に起因する)が、中実シャフト150を周回する磁場と同じ回転方向を持つので(前方の電流方向のため)、磁束密度は中空管121とシャフト150の間の空間でそれ自体一様に分布する。その結果、中実シャフト150及び中空管121内を流れる電流は両方の物体において均一に分布することになる。
【0309】
その結果生じる解は、センサー信号の回転信号一様性について大幅な性能向上をもたらし(図68E参照)、そして、これによって信号の非線形性及び信号ヒステリシスが改善され(より小さくなる)、更には信号勾配が増す(1つの加えられるトルクにおいて、より大きな信号)。
【0310】
給電ケーブルと「エンコードされるべき」シャフト150との間の電気接続において特に、その結果は非常に興味深い。ケーブルがシャフト(又はチューブ表面)と接続する場所におけるインピーダンスの僅かな違いによって、電流がこの特別な場所でシャフト150の周りに、一様には分布しない事態が引き起こされる。
【0311】
電流がシャフト150内を更に流れるにつれて、電流密度はシャフト150の周りでますます一様になる。電線が接続されているその場所でシャフト150の周りに電流が一様に入るならば、有効検出領域が、より大きくなる(該領域は、電線がシャフト150と接続する点の近くへと動く)。
【0312】
本発明によるシャフトを磁化する方法は、電流が最も一様に流れるように強制すること(電流密度をシャフトの周りの360度で監視する場合に関して)を、まさに行おうとするものである。
【0313】
このように、本発明は、シャフト150に対して行うことを要する電気接続の方法を単純化するという利点を持つ。更に、本発明はいくつかのセンサー性能を大幅に改善する。更にまた、エンコーディング装置が簡単化され、そして、これによって製造装置の価格が低減される。
【0314】
図70Cは、シャフト150を磁化するための装置についての別の配置を示す。第一及び第二接続部201、202の他に、中空管121は更に第三電気接続部351を持ち、そして中実シャフト150は第三電気接続部352を持つ。図70Cの場合、2つの異なるパルスI1及びI2は、図70Cに示すような配置で印加される。第一電気信号I1は、中空管121の第一電気接続部201と中実シャフト150の第二電気接続部204との間で加えられる。また、第二電気信号I2は、中空管121の第三電気接続部351と中実シャフト150の第三電気接続部352との間で加えられる。
【0315】
更に、導電性の結合要素350が、中空管121の第二電気接続部202を中実シャフト150の第一電気接続部203に結合するために設けられる。図70Cに示す電流分布は、要素121、150において一様な電流分布をもたらす磁場分布を達成し、それによって明確に規定された磁化、即ち、明確に規定された磁気的なエンコード領域122を持つセンサーを実現する。
【0316】
図71A及び71Bは、本発明によるシャフト150を磁化する装置の別の実施形態を示す。
【0317】
図71Aは、中空管121の接続部202と、導電性の中実シャフト150の接続部203との間の結合が、結合要素としての導電性ベースプレート400によって実現されるようにした構成を示す。
【0318】
図71Bは、電流を加えた状態における図71Aの装置を示す。電流は、シャフト150を通ってプレート400を通り、そしてそこから、シャフト150を流れる方向とは反対の方向に中空管121を通して流れる。図71Bから分るように、電流は複数の電気接続ケーブルを介して加えられ、それらのケーブルは中空管121の上部円形表面の周辺に沿って円周方向に配置される。例えば、6本又は8本のケーブルを持つそのような配置によって、非常に一様な電流分布がもたらされる。
【0319】
中空管121をシャフト150に結合するための導電性プレート400を設ける代わりに、中空管121をシャフト150から切り離したままにすることもでき(即ち、プレート400を省略できる)、そして、2つの反対方向の電流信号については、シャフト150を通して、そして中空管121を通して流すことができる。その場合に、シャフト150の電流がシャフト150を磁化させる役目をもち、そして中空管121の電流は、シャフト150の磁化の一様性を高めるために、逆方向の磁場を提供する役目を果たすことになる。従って、2つの信号は、その一方が中空管121に対して、そして他方がシャフト150に対して、同時に加えられる。
【0320】
次に、図72を参照して、本発明の別の実施形態による、磁化可能なチューブ501を磁化するための装置500について記述する。
【0321】
装置500は、磁化可能なチューブ501、即ち中空円筒と、第一部分502a、第二部分502b、及び第三部分502cを持つワイヤ502を含み、電流がワイヤ502を通して流れる。電源503は、スイッチ504が閉じている動作状態において、ワイヤ502に電流を注入するように設けられている。従って、スイッチ504を閉じることによって、パルス電流505がワイヤ502に注入される。しかしながら、パルス電流505の代わりに、例えば、図70Dに示すようなパルスを、同様にワイヤ502に注入できる。尚、図70Dに示すようなパルスが望ましいが、図72に示すような形状の、あらゆる適切なパルスをワイヤ502に注入しても構わない。
【0322】
磁化可能なチューブ501は、工業用鋼鉄で製作され、そして4cmの壁厚、88cmの直径、及び数メートルの長さを持つ。磁化されるべきチューブ501は、チューブ501がワイヤ502の第一部分502aを取り囲むように配置される。電源503は、ワイヤ502に電流パルス505を加えるように構成され、そのパルス電流505によって磁化可能なチューブ501が磁化されるようになっている。そのような電流パルス505がワイヤ502の第一部分502aに加えられる場合に、磁場はワイヤ502の第一部分502aの近傍及び周りに生成され、それはトランスの場合と同様に、磁化可能なチューブ501内部の要素磁石に影響を及ぼす。その結果、このパルス505によって、チューブ501が磁化されることになる。
【0323】
図72から分るように、ワイヤ502の第一部分502aは、中空管501の中心に配置される。図70A〜70Dに示した構成とは対照的に、電源503はワイヤ502に接続されるが、該電源は磁化可能なチューブ501から切り離される。更に、中空の遮蔽円筒506が設けられており、それは磁化可能なチューブ501と同様に製造される。更に分るように、特にワイヤ502の第三部分502cが、磁化可能なチューブ501による囲いから自由とされ、即ち、磁化可能なチューブ501によって囲まれていない。遮蔽円筒506は、磁化可能なチューブ501で包囲されていないワイヤ502の第三部分502cを、磁化可能なチューブ501から電磁気的に遮蔽する(即ち、減結合)ように配置され且つ構成される。そして、磁化可能な材料で作られた遮蔽チューブ506は、磁化可能なチューブ501とワイヤ502の第三部分502cとの間に配置される。従って、ワイヤ502の全ての部分、502a、502b、502cを通して流れる電流パルス505は、磁化可能なチューブ501によって取り囲まれた第一部分502aでのみ基本的に磁化可能なチューブ501に作用し、第一部分502aとは反対の方向に第三部分502cを流れている電流によって、磁化可能なチューブ501内に生成される磁化に対して否定的な影響を及ぼすこと、特に磁化を弱めることが避けられる。
【0324】
また、ワイヤ502の第二部分502bについては、遮蔽円筒506と同様な遮蔽要素によって磁化可能なチューブ501から遮蔽することができる。
【0325】
図73Aは、装置500の概略的な上面図を示す。図から分るように、遮蔽円筒506はチューブ501からワイヤ502の第三部分502cを効率良く遮蔽する。
【0326】
図73B〜73Dは遮蔽要素の実施形態を更に示している。
【0327】
図73Bは、4つの遮蔽円筒600〜603が、ワイヤ502の第三部分502cを中心としてその周りに配置されるようにした構成を示す。このように、磁化可能な材料で作られた遮蔽円筒600〜603は、ワイヤ502の部分502c、つまり、磁化可能なチューブ501で囲まれていない部分を取り巻くように配置される。
【0328】
図73Cは、複数の円柱シャフト610〜617を示しており、これらは、ワイヤ502の第三部分502cの周りに配置されることで、該第三部分、つまり、磁化可能なチューブ501で囲まれていない部分を、磁気可能なチューブ501から遮蔽するものである。
【0329】
図73Dは、第三部分502cを取り囲むように配置された6つのチューブ620〜625を示す。
【0330】
次に、図74を参照して、本発明の別の典型的な実施形態による、磁化可能なチューブ501を磁化するための装置700について記述する。
【0331】
図74の実施形態によると、遮蔽円筒506は、ワイヤ502の第三部分502cをとり囲むように配置される。更に、電気信号源503は、(充電された)キャパシタ・バンク701によって実現され、図70Dに示すようなパルスを発生するために、スイッチ504を閉じることによって放電される。磁化装置700は「移動可能」であって、運搬車702によって図示されており、該運搬車は、キャパシタ・バンク701を、磁気可能なチューブ501が磁化される場所(即ち、採鉱場所の掘削装置)へと輸送する。
【0332】
このように、図74の移動可能な処理ユニットを、掘削又は大型の機械設備シャフトの最も近くまで運ぶことができる。
【0333】
次に、図75A及び図75Bを参照して、力及びトルクの検出装置810を校正するための装置800について記述する。
【0334】
装置800は、力及びトルクの検出装置810と、1000kgの重量を持つ既知の質量部811と、校正ユニット818を備える。
【0335】
力及びトルクの検出装置810は、中空管813において磁気的にエンコードされた領域812と、4つの磁場検出コイル814〜817を有する。
【0336】
既知の重量811は、磁化された中空管813に既知の軸方向の力を加えるために力及びトルクの検出装置810の上端に置かれる。磁場検出コイル814〜817に接続された校正ユニット818は、既知の質量部811と、該質量部811の既知の力から生じる検出信号との間の相関関係に基づいて力及びトルクの検出装置810を校正するようになっている。
【0337】
このように、既知の質量部811は、水平で安定した基盤819上に立っている水平に置かれた中空管813の上端に加えられる。力及びトルクの検出装置810(図74に示すように磁化することができる)の上端に質量部811が加えられた結果として、磁気的なエンコード領域812によって生成される磁場が変化して、磁場検出コイル814〜817に信号が生じる。このように、校正ユニット818で処理される当該信号は、既知の質量部811によって、磁化されたチューブ813に加えられる既知の軸方向の力と相関性をもつ。この対をなすデータの組、即ち、既知とされる軸方向の力と、その際に検出された信号が、校正ユニット818に保存される。
【0338】
中空管813の上端面(その上に質量部811が置かれる)は、例えば、水平に配置され、そのためにチューブ813の上端の質量部811によって生じる力のベクトルが、基本的に中空管813の表面に対して垂直に向けられる(つまり、地球の中心に向けられる)。チューブ813及び/又は基盤819の上面が水平でない場合には、角度補正の計算が必要であるか又は該計算を行うことが望ましい。
【0339】
掘削シャフト813が地中に戻され、そして掘削のために使用される場合に、掘削シャフト813に加えられる軸方向の力及びトルクは、磁場検出コイル814〜817によって測定され、そして校正信号と比較される。このようにして、トルク及び力の絶対測定が、軸方向荷重811を用いた校正に基づいて行われる。
【0340】
校正において、コイル814〜817については、軸方向の力を測定できるように配置されることが必要である。また、トルク検出動作の場合に、コイル814〜817はトルクを測定できるように配置されることを要する。従って、コイル814〜817の軸は、校正モードから測定モードに変えるときに、それに従って方向を変えなければならない。
【0341】
図76A及び76Bは、磁場検出コイル814〜817を配置する場合に可能な、2つの形態を示す。
【0342】
図77は、磁気的にエンコードされた領域1001、1002、又は1003を持った掘削シャフト1000の3つの実現可能な形態を示す。
【0343】
標識1001〜1003は、掘削シャフト1000(つまり、回転のパワー伝動シャフト1000)が、どの場所に磁気的なエンコード領域を持つかを表している。現実には、エンコーディング1001〜1003は、光学的に見えないし、そしてシャフト1000の機械的特性のいずれをも変えず又は干渉もしない。掘削シャフト1000は、1つの特別な位置1001でエンコードされ、又は、ある部分1002でエンコードされ、又はその全体1003でエンコードされる。多くの場合、1つの特別な位置1001でのエンコーディングが、静的なシステム運用のためには妥当である。エンコーディングの選択肢1002、1003は、掘削シャフト1000が回転しているか、又はあるやり方で動いている場合に専ら用いられる。
【0344】
図78は、磁場検出コイル1100〜1103がどのように掘削シャフト1000の周りに配置されるかについて2つの形態を示す。
【0345】
次に、図79を参照して、物体を磁化するための装置6800について説明する。
【0346】
図79に示すように、中空管121によって包囲されたシャフト150は、電源503によって生成された電気信号を中空管121に印加することで磁化される。装置6800によって、シャフト150を磁化することができ、これは、中空管121がシャフト150を取り囲むように中空管121を配置するとともに、円周に沿って配置された複数の接触点を介して電気信号を中空管121に加えることで可能となる。電源503によって生成された電気信号は、例えば、少なくともシャフト150の一部分が磁化されるようなパルス信号である。そして、図79に示すように、中空管121の外部において、シャフト150の2つの端部は、中空管121の外部に配置されたワイヤ6801によって短絡されている。
【0347】
図80は、本発明の1つの実施形態による物体を磁化するための、更に別の装置6900を示す。
【0348】
装置6900の機能は、図72A、図72Bに示した装置の機能と非常に類似しているが、その相違点は、導電性プレート400が、シャフト150を中空管121に電気的に接触させる働きをもつ導電性流体6902(例えば、水銀)で置き換わっていることである。
【0349】
次に、装置6900がどのように動作するかについて記述する。シャフト150の直径と基本的に等しい内径及び中空管121の内径と基本的に等しい外径を持つ中空円筒の形状をした1つの(例えば、電気的に絶縁性の)スペーサー要素6901は、中空管121とこの中空管内に置かれたシャフト150との間隙を封じて、それらの間に体積をもつように配置される。次に、導電性流体6902が装置6900に注入されて、中空管121とシャフト150、スペーサー要素6901によって規定される空間が満され、これにより、非常に柔軟な方法で、中空管121とシャフト150が電気的に結合することになる。
【0350】
次に、図81を参照して、本発明による力及びトルクの検出装置を校正するための装置7000について説明する。
【0351】
装置7000は、トルク検出装置のシャフトを受け入れる基盤7001を含む。トルク検出装置は更に、2つの磁場検出コイル7004と、磁気的にエンコードされた領域7003を含み、該領域は、例えば、上述したPCME技術によって形成される。基盤7001は、シャフトが加えられる力によって動かず、また回転しないようにシャフト7002を受ける。モーター7005は、回転可能な要素7006(例えば、フライホイール)を駆動するように構成されている。この回転可能な要素7006は、制御可能な方法で回転でき、シャフト7002に結合されており、回転可能な要素7006の機械的な衝撃がシャフト7002に伝達され、シャフト7002に(反作用の)トルクが加わる。既知の値をもつ、そのような校正トルクに対する応答として、信号がコイル7004によって検出され、該コイルは、トルク検出装置の校正のために役立つ。従って、装置7000は、既知のトルク発生要素として、駆動される回転可能な要素7006を持つ。特に、回転可能な要素7006の回転状態における突然の変化(例えば、突然のブレーキ信号)は、校正信号としてトルク検出装置に加えられる(反作用の)トルク源として有用である。
【0352】
「備え(comprising)」という用語は、他の要素又はステップを除外しないし、そして「a」又は「an」は複数を除外しない。また、異なる実施形態に関連して記述された要素を結合してもよい。
尚、添付図は、本発明の理解を更に深めるために含まれるとともに、明細書の一部を構成するものとされ、本発明の実施形態を図示する。
【図面の簡単な説明】
【0353】
【図1】本発明の1つの典型的な実施形態によるトルクセンサーを製造する方法を説明するために、本発明の1つの典型的な実施形態によるセンサー素子を持つトルクセンサーを示す図である。
【図2a】本発明の原理及び本発明の製造方法における1つの典型的な実施形態を更に説明するために、本発明によるトルクセンサーのセンサー素子における1つの典型的な実施形態を示す図である。
【図2b】図2aのAA’線に沿った断面図を示す。
【図3a】本発明の原理及び本発明によるトルクセンサーの製造方法における1つの典型的な実施形態を更に説明するために、本発明によるトルクセンサーのセンサー素子の別の典型的な実施形態を示す図である。
【図3b】図3aのBB’線に沿った断面図である。
【図4】本発明の1つの典型的な実施形態による方法に従って製造された図2a及び3aのトルクセンサーにおけるセンサー素子の断面を示す図である。
【図5】本発明によるトルクセンサーを製造するための製造方法について典型的な実施形態を更に説明するために、本発明によるトルクセンサーのセンサー素子における別の典型的な実施形態を示す図である。
【図6】本発明によるトルクセンサーの製造方法の典型的な実施形態を更に説明するために、本発明によるトルクセンサーのセンサー素子における別の典型的な実施形態を示す図である。
【図7】本発明によるトルクセンサーを製造する方法の、ある典型的な実施形態を更に説明するためのフローチャート図である。
【図8】本発明の1つの典型的な実施形態による方法を更に説明するための電流対時間を示すグラフ図である。
【図9】本発明の1つの典型的な実施形態による電極システムを持った、本発明によるトルクセンサーのセンサー素子における別の典型的な実施形態を示す図である。
【図10a】本発明の1つの典型的な実施形態による電極システムを持った、本発明によるトルクセンサーの別の典型的な実施形態を示す図である。
【図10b】図10aの電極による電流サージを加えた後の図10aのセンサー素子を示す図である。
【図11】本発明によるトルクセンサーのためのトルクセンサー素子における、別の典型的な実施形態を示す図である。
【図12】2つの磁場がシャフトに生じて、閉じた円内を走っている様子を示す図であり、本発明の別の典型的な実施形態によるトルクセンサーのセンサー素子の概略図を示す。
【図13】本発明による製造方法に従って作られる2つの逆方向サイクル、つまり磁場ループを使用するPCMEセンシング技術を図示するための別の概略図を示す。
【図14】機械的応力が本発明の1つの典型的な実施形態によるセンサー素子に加わらない時、磁束線がその初めの経路を走ることを図示するための別の概略図を示す。
【図15】本発明の1つの典型的な実施形態の原理を更に説明するための別の概略図を示す。
【図16】本発明の1つの典型的な実施形態の原理を更に説明するための別の概略図を示す。
【図17】本発明の1つの典型的な実施形態の原理を更に説明するための概略図である。
【図18】本発明の1つの典型的な実施形態の原理を更に説明するための概略図である。
【図19】本発明の1つの典型的な実施形態の原理を更に説明するための概略図である。
【図20】本発明の1つの典型的な実施形態の原理を更に説明するための概略図である。
【図21】本発明の1つの典型的な実施形態の原理を更に説明するための概略図である。
【図22】本発明の1つの典型的な実施形態の原理を更に説明するための概略図である。
【図23】本発明の1つの典型的な実施形態の原理を更に説明するための別の概略図を示す。
【図24】本発明の1つの典型的な実施形態の原理を更に説明するための概略図を示す。
【図25】本発明の1つの典型的な実施形態の原理を更に説明するための概略図を示す。
【図26】本発明の1つの典型的な実施形態の原理を更に説明するための概略図を示す。
【図27】本発明の1つの典型的な実施形態の製造方法によるセンサー素子に加えられる電流パルスを図示するための電流対時間図である。
【図28】本発明の1つの典型的な実施形態による出力信号対電流パルス長を示す図である。
【図29】本発明の方法によるセンサー素子に加えられる本発明の1つの典型的な実施形態による電流パルスとともに電流対時間を示す図である。
【図30】本発明の1つの典型的な実施形態の方法によるシャフトのようなセンサー素子に加えられる電流パルスについて、1つの典型的な実施形態を示す別の電流対時間図である。
【図31】本発明の1つの典型的な実施形態に従う信号及び信号効率対電流図である。
【図32】本発明の1つの典型的な実施形態による望ましいPCME電流密度を持つセンサー素子の断面図を示す。
【図33】本発明の1つの典型的な実施形態による、各種の増加するパルス電流レベルでのセンサー素子及びパルス電流密度の断面図を示す。
【図34】本発明によるセンサー素子において、異なる電流パルスの磁気流によって達成される間隔を示す図である。
【図35】本発明の1つの典型的な実施形態によるセンサー素子に加えられる電流パルスの電流対時間図を示す。
【図36】本発明の1つの典型的な実施形態によるセンサー素子への電気的な多点接続を示す図である。
【図37】本発明の1つの典型的な実施形態によるセンサー素子に対して、電流パルスを加えるバネ装填の接触点を有する多チャンネルの電気接続具を示す図である。
【図38】本発明の1つの典型的な実施形態による増加された数の電気接続点を持つ電極システムを示す図である。
【図39】図37の電極システムにおける1つの典型的な実施形態を示す。
【図40】本発明の1つの典型的な実施形態による方法で使用するシャフト処理保持クランプを示す図である。
【図41】本発明によるセンサー素子の2重磁場のエンコード領域を示す図である。
【図42】本発明の1つの典型的な実施形態による、順次の2重磁場エンコーディングの工程段階を示す図である。
【図43】本発明の別の典型的な実施形態による2重磁場エンコーディングの別の工程段階を示す図である。
【図44】本発明の別の典型的な実施形態に従って、電流パルスの印加の説明を含む、センサー素子における別の典型的な実施形態を示す図である。
【図45】応力が加えられない時の本発明によるセンサー素子内の磁束方向を記した概略図を示す。
【図46】応力が加えられた時に図45のセンサー素子内における磁束方向を示す図である。
【図47】加えられたトルクの方向が変化している時に図45のPCMエンコードされたシャフト内部の磁束を示す図である。
【図48】本発明の1つの典型的な実施形態による6チャンネル同期パルス電流駆動システムを示す図である。
【図49】本発明の別の典型的な実施形態による電極システムを簡略化して示す図である。
【図50】本発明の1つの典型的な実施形態によるセンサー素子を示す図である。
【図51】2つのピン止め磁場領域とともにPCME処理検出領域を有する、本発明によるセンサー素子の別の典型的な実施形態を示す図である。
【図52】1つのエンコードされた領域及びピン止め領域を持つセンサー素子の製造のために、本発明の1つの典型的な実施形態による製造方法を説明するための概略図である。
【図53】本発明の1つの典型的な実施形態による製造方法に従って本発明の1つの典型的な実施形態によるセンサー素子を示す別の概略図である。
【図54】本発明の1つの典型的な実施形態を更に説明するための簡略化された概略図である。
【図55】本発明の1つの典型的な実施形態を更に説明するための簡略化された別の概略図である。
【図56】モーターのギアボックスにおける本発明の1つの典型的な実施形態によるトルクセンサーの適用を示す図である。
【図57】本発明の1つの典型的な実施形態によるトルクセンサーを示す図である。
【図58】本発明の1つの典型的な実施形態による非接触トルク検出装置における構成要素の概略図である。
【図59】本発明の1つの典型的な実施形態による検出装置の構成要素を示す図である。
【図60】本発明の1つの典型的な実施形態によるセンサー素子のコイル配置を示す図である。
【図61】本発明の1つの典型的な実施形態による単一チャンネルセンサー機器を示す図である。
【図62】本発明の1つの典型的な実施形態による2チャンネルの短絡保護システムを示す図である。
【図63】本発明の別の典型的な実施形態によるセンサーを示す図である。
【図64】本発明の1つの典型的な実施形態による二次側センサーユニット組み立てについて、1つの典型的な実施形態を示す図である。
【図65】本発明の1つの典型的な実施形態による一次側センサー及び二次側センサーの幾何学的な配置の2形態を示す図である。
【図66】二次側センサーとセンサーホストの間の間隔が出来るだけ小さい方が望ましいことを説明するための概略図である。
【図67】一次側センサーのエンコーディング装置について実施形態を示す図である。
【図68A】他の物体を取り囲む物体を含まない磁化装置を示す図である。
【図68B】他の物体を取り囲む物体を含む本発明による磁化装置を示す図である。
【図68C】本発明によって形成された磁気的なエンコード領域を持つトルク及び力の検出装置の概略図を示す。
【図68D】図68Aに示す磁化装置で磁化されたトルク及び力の検出装置の信号対トルク図である。
【図68E】図68Bに示す磁化装置で磁化されたトルク及び力の検出装置の信号対トルク図である。
【図69】本発明による物体を磁化するための方法の原理を示す概略図である。
【図70A】本発明による物体を磁化するための装置を示す概略図である。
【図70B】図70Aとともに本発明による物体を磁化するための装置を示す概略図である。
【図70C】本発明による物体を磁化するための別の装置を示す概略図である。
【図70D】図70A〜70Cに示された装置による物体を磁化するためのパルス信号を示す図である。
【図71A】本発明による物体を磁化するための装置の別の実施形態を示す図である。
【図71B】図71Aとともに本発明による物体を磁化するための装置の別の実施形態を示す図である。
【図72】本発明の1つの実施形態による物体を磁化するための更に別の装置を示す図である。
【図73A】本発明の実施形態による物体を磁化するための装置の上面図を示す。
【図73B】本発明の実施形態による物体を磁化するための様々な装置の上面図を示す。
【図73C】本発明の実施形態による物体を磁化するための様々な装置の上面図を示す。
【図73D】本発明の実施形態による物体を磁化するための様々な装置の上面図を示す。
【図74】本発明による物体を磁化するための別の装置を示す図である。
【図75A】本発明による力及びトルクの検出装置を校正するための装置を示す図である。
【図75B】本発明による力及びトルクの検出装置を校正するための装置の異なる方向から見た図を示す。
【図76A】本発明による力及びトルクの検出装置の概略図を示す。
【図76B】本発明による力及びトルクの検出装置の概略図を示す。
【図77】磁気的にエンコードされた中空円筒を異なる方向から見た図を示す。
【図78】本発明による検出装置を示す図である。
【図79】物体を磁化するための更に別の装置を示す図である。
【図80】本発明の1つの実施形態による物体を磁化するための更に別の装置を示す図である。
【図81】本発明による力及びトルクの検出装置を校正するための別の装置を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一物体又は第二物体あるいは第一物体及び第二物体を磁化するための方法において、
第一物体が第二物体を取り囲むように第一物体を配置するステップと、
第一電気信号を第二物体に加えるステップと、を含み、
第一電気信号は、第一物体又は第二物体あるいは第一物体及び第二物体の少なくとも一部分が磁化されるように適合されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、第一電気信号は、第一パルス信号又は一連の継続するパルス信号であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、時間対電流図で、第一パルス信号が、基本的に垂直な速い立ち上がりエッジを有し、且つ遅い立ち下がりエッジを有することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法において、第一電気信号が電流又は電圧であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法において、
第二電気信号は第一電気信号を加えた後に第二物体に加えられ、第二電気信号は第一物体又は第二物体あるいは第一物体及び第二物体の少なくとも一部分が磁化されるように適合され、そして、第二電気信号は、振幅、符号、信号形状、及び持続時間からなるグループの少なくとも1つに関して、前記第一電気信号と異なることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、
第二電気信号が第二パルス信号又は一連の継続するパルス信号であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、
時間対電流図で、前記第二パルス信号は基本的に垂直な速い立ち上がりエッジを有し、且つ遅い立ち下がりエッジを有することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか一項に記載の方法であって、
前記した第一物体又は第二物体あるいは第一物体及び第二物体は、前記した第一電気信号及び第二電気信号を加えることによって磁化されるとともに、前記した第一物体又は第二物体あるいは第一物体及び第二物体の表面に対して基本的に垂直な方向において、第一磁気流が第一方向に存在し、かつ第二磁気流が第二方向に存在し、該第一方向が該第二方向と反対であるように磁場構造が生成されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項5乃至8のいずれか一項に記載の方法において、
前記第二電気信号が電流又は電圧であることを特徴とする方法。
【請求項10】
第一物体又は第二物体あるいは第一物体及び第二物体を磁化するための装置において、
第一物体と、
第二物体と、
電気信号源と、を含み、
前記第一物体は、該第一物体が前記第二物体を取り囲むように配置され、
前記電気信号源は、第一電気信号を第二物体に加えるように構成され、該第一電気信号が第一物体又は第二物体あるいは第一物体及び第二物体の少なくとも一部分が磁化されるように適合されることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置において、前記第一物体が中空管であることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載の装置において、
前記第二物体がシャフト、ワイヤ、及び中空管からなるグループの中の1つであることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項10乃至12のいずれか一項に記載の装置において、
前記第二物体が前記第一物体の中心に配置されることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項10乃至13のいずれか一項に記載の装置において、
前記電気信号源はキャパシターバンクを備えることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項10乃至14のいずれか一項に記載の装置において、
前記第一物体は第一電気接続部及び第二電気接続部を有し、前記第二物体は第一電気接続部及び第二電気接続部を有しており、そして前記第一物体の第二電気接続部が前記第二物体の第一電気接続部に結合されることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項15に記載の装置において、
前記電気信号源は、第一電気信号が前記第一物体の第一電気接続部と前記第二物体の第二電気接続部との間に印加できるように接続されることを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項15に記載の装置において、
前記第一物体が第三電気接続部を有し、前記第二物体が第三電気接続部を持つことを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項17に記載の装置において、
前記電気信号源は、前記第一電気信号が前記第一物体の第一電気接続部と前記第二物体の第二電気接続部との間に印加できるように接続されるとともに、前記第二電気信号が前記第一物体の第三電気接続部と前記第二物体の第三電気接続部との間に印加できるように接続されることを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項15乃至18のいずれか一項に記載の装置において、
前記第一物体の第二電気接続部を前記第二物体の第一電気接続部に結合するように配置された導電性の結合要素を更に備えたことを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項19に記載の装置において、
前記結合要素が導電性プレート又は導電性液体であることを特徴とする装置。
【請求項21】
請求項10乃至20のいずれか一項に記載の装置において、
前記第一物体に加えて、前記第二物体は、第一電気信号が加えられる時に磁化されるように適合されることを特徴とする装置。
【請求項22】
請求項10乃至14のいずれか一項に記載の装置において、
前記第二物体は第一接続部及び第二接続部を備え、前記電気信号源は前記第二物体の第一接続部と第二接続部との間に接続されることを特徴とする装置。
【請求項23】
請求項10乃至14、又は22のいずれか一項に記載の装置において、
前記電気信号源は第一物体から切断されていることを特徴とする装置。
【請求項24】
請求項22又は23に記載の装置において、
前記第二物体の一部分は、前記第一物体により包囲されておらず、更に前記第一物体で包囲されていない前記第二物体の部分を前記第一物体から電磁気的に遮蔽するように配置され且つ構成された遮蔽要素を含むことを特徴とする装置。
【請求項25】
請求項24に記載の装置において、
前記遮蔽要素は、第一要素と、前記第一物体で包囲されていない前記第二物体の部分との間に配置されることを特徴とする装置。
【請求項26】
請求項24に記載の装置において、
前記遮蔽要素が管であって、前記第一物体で包囲されていない前記第二物体の部分を取り囲むように配置されることを特徴とする装置。
【請求項27】
請求項24に記載の装置において、
遮蔽要素が複数の下位要素を備え、該要素は前記第一物体で包囲されていない前記第二物体の部分を取り囲むように配置されることを特徴とする装置。
【請求項28】
力及びトルクの検出装置を校正するための方法において、
物体上に磁気的にエンコードされた領域を持つ力及びトルクの検出装置と、物体に加えられる力又はトルクから生じる信号を検出するように構成された磁場検出器を配置するステップと、
物体に既知の力を加えるステップと、
物体に加えられる既知の力から生じる信号を検出するステップと、
既知の力と既知の力から生じる検出される信号との間の相関関係に基づいて力及びトルクの検出装置を校正するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項29】
力及びトルクの検出装置を校正するための装置において、
力及びトルクの検出装置と、
既知の力を発生させる要素と、
校正ユニットと、を含み、
力及びトルクの検出装置は、物体上に磁気的にエンコードされた領域と、物体に加えられる力又はトルクから生じる信号を検出するように構成される磁場検出器を持ち、
既知の力を発生させる要素は物体に既知の力を加えるように適合され、
前記校正ユニットは、既知の力と既知の力から生じ検出される信号との間の相関関係に基づいて力及びトルクの検出装置を校正するように構成されることを特徴とする装置。
【請求項30】
請求項29に記載の装置において、
既知の力を発生させる要素が既知の重量物であることを特徴とする装置。
【請求項31】
請求項29に記載の装置において、
既知の力を発生させる要素が既知のせん断応力を加えるように構成されることを特徴とする装置。
【請求項32】
請求項29に記載の装置において、
既知の力を発生させる要素が既知のトルクであることを特徴とする装置。
【請求項33】
請求項29乃至32のいずれか一項に記載の装置において、
力及びトルクの検出装置の物体上の磁気的にエンコードされた領域はその製造工程で、磁化可能な物体に第一電流パルスを加えることによって製造され、該第一電流パルスは、磁化可能な物体の長手方向の軸に沿った第一の方向に第一電流が流れるように加えられ、該電流パルスを加えることによって物体上に磁気的にエンコードされる領域が生成されることを特徴とする装置。
【請求項34】
請求項33に記載の装置において、
第二電流パルスが磁化可能な物体に加えられ、
前記第二電流パルスは、磁化可能な物体の長手方向の軸に沿った第二の方向に第二電流が流れるように加えられることを特徴とする装置。
【請求項35】
請求項34に記載の装置において、
第一及び第二電流パルスの各々は立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジを有し、立ち上がりエッジが立ち下がりエッジよりもより急勾配であることを特徴とする装置。
【請求項36】
請求項34又は35に記載の装置において、
前記第一方向が前記第二方向と反対であることを特徴とする装置。
【請求項37】
請求項33乃至36のいずれか一項に記載の装置において、
磁化可能な物体は、磁化可能な物体のコア領域を取り囲む周面を持ち、
前記第一電流パルスは、磁化可能な物体のコア領域における第一方向に第一電流が流れるように前記周面の第一位置で磁化可能な物体に導入され、
前記第一電流パルスは、前記周面の第二位置で磁化可能な物体から放出され、
前記第二位置が前記第一位置から第一方向において離れていることを特徴とする装置。
【請求項38】
請求項34乃至37のいずれか一項に記載の装置において、
第二電流パルスは、磁化可能な物体のコア領域の第二方向に第二電流が流れるように周面の第二場所にて、磁化可能な物体に導入され、
第二電流パルスは、前記周面の第一位置にて、磁化可能な物体から放出されることを特徴とする装置。
【請求項39】
請求項33乃至38のいずれか一項に記載の装置において、
前記第一電流パルスは、磁化可能な物体の一端面にて、磁化可能な物体に加えられないことを特徴とする装置。
【請求項40】
採鉱シャフト、コンクリート処理シリンダ、ギアボックス内のプッシュプルロッド、及びエンジンシャフトからなるグループの中の1つを磁化させるために、請求項10乃至27のいずれか一項に記載の装置を使用する方法。
【請求項41】
採鉱シャフト、コンクリート処理シリンダ、ギアボックス内のプッシュプルロッド、及びエンジンシャフトからなるグループの、力及びトルクの検出装置を校正するために請求項29乃至39のいずれか一項に記載の装置を使用する方法。
【請求項1】
第一物体又は第二物体あるいは第一物体及び第二物体を磁化するための方法において、
第一物体が第二物体を取り囲むように第一物体を配置するステップと、
第一電気信号を第二物体に加えるステップと、を含み、
第一電気信号は、第一物体又は第二物体あるいは第一物体及び第二物体の少なくとも一部分が磁化されるように適合されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、第一電気信号は、第一パルス信号又は一連の継続するパルス信号であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、時間対電流図で、第一パルス信号が、基本的に垂直な速い立ち上がりエッジを有し、且つ遅い立ち下がりエッジを有することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法において、第一電気信号が電流又は電圧であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法において、
第二電気信号は第一電気信号を加えた後に第二物体に加えられ、第二電気信号は第一物体又は第二物体あるいは第一物体及び第二物体の少なくとも一部分が磁化されるように適合され、そして、第二電気信号は、振幅、符号、信号形状、及び持続時間からなるグループの少なくとも1つに関して、前記第一電気信号と異なることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、
第二電気信号が第二パルス信号又は一連の継続するパルス信号であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、
時間対電流図で、前記第二パルス信号は基本的に垂直な速い立ち上がりエッジを有し、且つ遅い立ち下がりエッジを有することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか一項に記載の方法であって、
前記した第一物体又は第二物体あるいは第一物体及び第二物体は、前記した第一電気信号及び第二電気信号を加えることによって磁化されるとともに、前記した第一物体又は第二物体あるいは第一物体及び第二物体の表面に対して基本的に垂直な方向において、第一磁気流が第一方向に存在し、かつ第二磁気流が第二方向に存在し、該第一方向が該第二方向と反対であるように磁場構造が生成されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項5乃至8のいずれか一項に記載の方法において、
前記第二電気信号が電流又は電圧であることを特徴とする方法。
【請求項10】
第一物体又は第二物体あるいは第一物体及び第二物体を磁化するための装置において、
第一物体と、
第二物体と、
電気信号源と、を含み、
前記第一物体は、該第一物体が前記第二物体を取り囲むように配置され、
前記電気信号源は、第一電気信号を第二物体に加えるように構成され、該第一電気信号が第一物体又は第二物体あるいは第一物体及び第二物体の少なくとも一部分が磁化されるように適合されることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置において、前記第一物体が中空管であることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載の装置において、
前記第二物体がシャフト、ワイヤ、及び中空管からなるグループの中の1つであることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項10乃至12のいずれか一項に記載の装置において、
前記第二物体が前記第一物体の中心に配置されることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項10乃至13のいずれか一項に記載の装置において、
前記電気信号源はキャパシターバンクを備えることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項10乃至14のいずれか一項に記載の装置において、
前記第一物体は第一電気接続部及び第二電気接続部を有し、前記第二物体は第一電気接続部及び第二電気接続部を有しており、そして前記第一物体の第二電気接続部が前記第二物体の第一電気接続部に結合されることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項15に記載の装置において、
前記電気信号源は、第一電気信号が前記第一物体の第一電気接続部と前記第二物体の第二電気接続部との間に印加できるように接続されることを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項15に記載の装置において、
前記第一物体が第三電気接続部を有し、前記第二物体が第三電気接続部を持つことを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項17に記載の装置において、
前記電気信号源は、前記第一電気信号が前記第一物体の第一電気接続部と前記第二物体の第二電気接続部との間に印加できるように接続されるとともに、前記第二電気信号が前記第一物体の第三電気接続部と前記第二物体の第三電気接続部との間に印加できるように接続されることを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項15乃至18のいずれか一項に記載の装置において、
前記第一物体の第二電気接続部を前記第二物体の第一電気接続部に結合するように配置された導電性の結合要素を更に備えたことを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項19に記載の装置において、
前記結合要素が導電性プレート又は導電性液体であることを特徴とする装置。
【請求項21】
請求項10乃至20のいずれか一項に記載の装置において、
前記第一物体に加えて、前記第二物体は、第一電気信号が加えられる時に磁化されるように適合されることを特徴とする装置。
【請求項22】
請求項10乃至14のいずれか一項に記載の装置において、
前記第二物体は第一接続部及び第二接続部を備え、前記電気信号源は前記第二物体の第一接続部と第二接続部との間に接続されることを特徴とする装置。
【請求項23】
請求項10乃至14、又は22のいずれか一項に記載の装置において、
前記電気信号源は第一物体から切断されていることを特徴とする装置。
【請求項24】
請求項22又は23に記載の装置において、
前記第二物体の一部分は、前記第一物体により包囲されておらず、更に前記第一物体で包囲されていない前記第二物体の部分を前記第一物体から電磁気的に遮蔽するように配置され且つ構成された遮蔽要素を含むことを特徴とする装置。
【請求項25】
請求項24に記載の装置において、
前記遮蔽要素は、第一要素と、前記第一物体で包囲されていない前記第二物体の部分との間に配置されることを特徴とする装置。
【請求項26】
請求項24に記載の装置において、
前記遮蔽要素が管であって、前記第一物体で包囲されていない前記第二物体の部分を取り囲むように配置されることを特徴とする装置。
【請求項27】
請求項24に記載の装置において、
遮蔽要素が複数の下位要素を備え、該要素は前記第一物体で包囲されていない前記第二物体の部分を取り囲むように配置されることを特徴とする装置。
【請求項28】
力及びトルクの検出装置を校正するための方法において、
物体上に磁気的にエンコードされた領域を持つ力及びトルクの検出装置と、物体に加えられる力又はトルクから生じる信号を検出するように構成された磁場検出器を配置するステップと、
物体に既知の力を加えるステップと、
物体に加えられる既知の力から生じる信号を検出するステップと、
既知の力と既知の力から生じる検出される信号との間の相関関係に基づいて力及びトルクの検出装置を校正するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項29】
力及びトルクの検出装置を校正するための装置において、
力及びトルクの検出装置と、
既知の力を発生させる要素と、
校正ユニットと、を含み、
力及びトルクの検出装置は、物体上に磁気的にエンコードされた領域と、物体に加えられる力又はトルクから生じる信号を検出するように構成される磁場検出器を持ち、
既知の力を発生させる要素は物体に既知の力を加えるように適合され、
前記校正ユニットは、既知の力と既知の力から生じ検出される信号との間の相関関係に基づいて力及びトルクの検出装置を校正するように構成されることを特徴とする装置。
【請求項30】
請求項29に記載の装置において、
既知の力を発生させる要素が既知の重量物であることを特徴とする装置。
【請求項31】
請求項29に記載の装置において、
既知の力を発生させる要素が既知のせん断応力を加えるように構成されることを特徴とする装置。
【請求項32】
請求項29に記載の装置において、
既知の力を発生させる要素が既知のトルクであることを特徴とする装置。
【請求項33】
請求項29乃至32のいずれか一項に記載の装置において、
力及びトルクの検出装置の物体上の磁気的にエンコードされた領域はその製造工程で、磁化可能な物体に第一電流パルスを加えることによって製造され、該第一電流パルスは、磁化可能な物体の長手方向の軸に沿った第一の方向に第一電流が流れるように加えられ、該電流パルスを加えることによって物体上に磁気的にエンコードされる領域が生成されることを特徴とする装置。
【請求項34】
請求項33に記載の装置において、
第二電流パルスが磁化可能な物体に加えられ、
前記第二電流パルスは、磁化可能な物体の長手方向の軸に沿った第二の方向に第二電流が流れるように加えられることを特徴とする装置。
【請求項35】
請求項34に記載の装置において、
第一及び第二電流パルスの各々は立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジを有し、立ち上がりエッジが立ち下がりエッジよりもより急勾配であることを特徴とする装置。
【請求項36】
請求項34又は35に記載の装置において、
前記第一方向が前記第二方向と反対であることを特徴とする装置。
【請求項37】
請求項33乃至36のいずれか一項に記載の装置において、
磁化可能な物体は、磁化可能な物体のコア領域を取り囲む周面を持ち、
前記第一電流パルスは、磁化可能な物体のコア領域における第一方向に第一電流が流れるように前記周面の第一位置で磁化可能な物体に導入され、
前記第一電流パルスは、前記周面の第二位置で磁化可能な物体から放出され、
前記第二位置が前記第一位置から第一方向において離れていることを特徴とする装置。
【請求項38】
請求項34乃至37のいずれか一項に記載の装置において、
第二電流パルスは、磁化可能な物体のコア領域の第二方向に第二電流が流れるように周面の第二場所にて、磁化可能な物体に導入され、
第二電流パルスは、前記周面の第一位置にて、磁化可能な物体から放出されることを特徴とする装置。
【請求項39】
請求項33乃至38のいずれか一項に記載の装置において、
前記第一電流パルスは、磁化可能な物体の一端面にて、磁化可能な物体に加えられないことを特徴とする装置。
【請求項40】
採鉱シャフト、コンクリート処理シリンダ、ギアボックス内のプッシュプルロッド、及びエンジンシャフトからなるグループの中の1つを磁化させるために、請求項10乃至27のいずれか一項に記載の装置を使用する方法。
【請求項41】
採鉱シャフト、コンクリート処理シリンダ、ギアボックス内のプッシュプルロッド、及びエンジンシャフトからなるグループの、力及びトルクの検出装置を校正するために請求項29乃至39のいずれか一項に記載の装置を使用する方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図67】
【図68A】
【図68B】
【図68C】
【図68D】
【図68E】
【図69】
【図70A】
【図70B】
【図70C】
【図70D】
【図71A】
【図71B】
【図72】
【図73A】
【図73B】
【図73C】
【図73D】
【図74】
【図75A】
【図75B】
【図76A】
【図76B】
【図77】
【図78】
【図79】
【図80】
【図81】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図67】
【図68A】
【図68B】
【図68C】
【図68D】
【図68E】
【図69】
【図70A】
【図70B】
【図70C】
【図70D】
【図71A】
【図71B】
【図72】
【図73A】
【図73B】
【図73C】
【図73D】
【図74】
【図75A】
【図75B】
【図76A】
【図76B】
【図77】
【図78】
【図79】
【図80】
【図81】
【公表番号】特表2007−517206(P2007−517206A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546102(P2006−546102)
【出願日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014797
【国際公開番号】WO2005/064302
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(506225857)エヌシーティーエンジニアリング ゲーエムベーハー (10)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014797
【国際公開番号】WO2005/064302
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(506225857)エヌシーティーエンジニアリング ゲーエムベーハー (10)
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