説明

物体検出装置

【課題】物体が持ち上げられたり、設置されたりしたことを精度良く検出し、幅広い分野で使用できる利便性の高い物体検出装置を提供することを目的とする。
【解決手段】物体の設置または持ち上げを受けて変形するように配設された圧電センサ4と、前記圧電センサ4の出力信号をもとに演算を行い、物体の持ち上げまたは設置を判定する演算手段11とを具備し、前記演算手段11は、第1の判定閾値と第2の判定閾値を記憶し、前記感圧手段の出力信号の信号レベルを算出する出力信号算出手段18を有し、前記感圧手段4の始動時の出力信号の信号レベルが前記第1の判定閾値を超えている場合に、物体が設置されたと判定し、前記出力信号の信号レベルが前記第2の判定閾値を超えている場合に、物体が持ち上げられたと判定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の設置あるいは持ち上げを受けてこれを検出する物体検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の物体検出装置は、什器等の移動をセンサ部で検知する装置がある。
【0003】
図5はその具体的構成を示すもので、例えば、手提金庫、キーボックス等が持ち上げられたり、移動させられたことを感知するセンサ部101と、登録するため、あるいは、警報ブザーを解除若しくはセットするための暗証番号またはパスワードを入力するためのデータ入力部102と、前記登録された暗証番号またはパスワード等が記憶されているメモリ103と、解除された警報ブザー装置を再度セットするためのリセットボタン104と、データ入力部102から入力されたデータが前記登録された暗証番号あるいはパスワードと一致するか否かの判断等の前記一連の処理を行うマイクロコンピュータ105と、持ち上げられたり、移動されたり等の異常をセンサ部101が感知した時にマイクロコンピュータ105の指示により警報音を発する警報装置106とから構成されている。
【0004】
上記構成により、手提金庫、キーボックス等が持ち上げられた場合に、センサ部101が検出し警報装置106から警報を発生させるといったような防犯動作を行う(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−306460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、物体が持ち上げられたり、移動させられたりしたことのみを検知するため、使用用途が防犯用等に限定されていた。
【0006】
また、センサ部については記載がなく、例えばセンサとして接点式のスイッチを使用した場合は、広い部位をカバーするために大量のスイッチが必要であったりするという課題があった。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、物体が持ち上げられたり、設置されたりしたことを精度良く検出し、防犯のみならず物体の個数管理等まで使用できる利便性の高い物体検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の物体検出装置は、物体の設置または持ち上げを受けて変形するように配設された感圧手段と、前記感圧手段の出力信号をもとに演算を行い、物体の持ち上げまたは設置を判定する演算手段とを具備し、演算手段は第1の判定閾値と第2の判定閾値を記憶し、感圧手段の出力信号の信号レベルを算出する出力信号算出手段を有し、感圧手段の初動時の出力信号の信号レベルが、第1の判定閾値を超えている場合に、物体が設置されたと判定し、出力信号の信号レベルが、第2の判定閾値を超えている場合に、物体が持ち上げられたと判定するようにしたものである。
【0009】
これにより、物体の設置または持ち上げを精度良く判別し、利便性の高い物体検出装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0010】
本願発明の物体検出装置では、物体の設置または持ち上げを確実に検出し、幅広い用途に使用できる物体検出装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
第1の発明は、物体の設置または持ち上げを受けて変形するように配設された感圧手段と、前記感圧手段の出力信号をもとに演算を行い、物体の持ち上げまたは設置を判定する演算手段とを具備し、前記演算手段は、第1の判定閾値と第2の判定閾値を記憶し、前記感圧手段の出力信号の信号レベルを算出する出力信号算出手段を有し、前記感圧手段の初動時の出力信号の信号レベルが、前記第1の判定閾値を超えている場合に、物体が設置されたと判定し、前記出力信号の信号レベルが、前記第2の判定閾値を超えている場合に、物体が持ち上げられたと判定するようにした。
【0012】
これにより、物体が持ち上げられたり、移動させられたりした場合に警報を発生させる等の防犯用として使用可能である。また、物体の持ち上げだけでなく設置をしたことも検出が可能であるため、防犯以外に物体の個数管理等にも使用することができ、幅広い用途に使用できる物体検出装置を実現できる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、第1の判定閾値と第2の判定閾値とを調整する閾値調整手段を有することで、使用者の用途や、設置環境によって値を調整することができるので、利便性の高い物体検出装置を実現できる。
【0014】
第3の発明は、第1の発明において、感圧手段の出力電圧は検出部を介して演算手段に出力する物体検出装置となる。検出部は感圧手段からの出力信号を所定の濾波特性で濾波することや、所定の増幅度で増幅するなどを行う。
【0015】
これらの調整を行う信号レベル調整手段により、感圧手段の出力が微小な電圧であっても増幅して伝達することや、装置の取り付け場所の条件や、気象条件、使用者の必要に応じて濾波の特性や増幅、信号レベルの微調整を行い、適切な信号レベルで演算を行うことができる。
【0016】
第4の発明は、第1の発明において、演算手段は、感圧手段の出力信号の信号レベルが第1の判定閾値と第2の判定閾値とを超えた回数をカウントすることを特徴とした。
【0017】
これにより、物体が設置された時に、出力信号レベルが第1の判定閾値を超えるため、これをカウントしていき、更に物体の上にもう一つ物体を設置された場合に、出力信号レベルが第1の判定閾値を超えれば、更にカウントをしていくことで、現在物体が何個設置されているかを把握することができる。
【0018】
また、物体が移動させられた時は、カウントを減らしていくこで物体の個数を把握することが可能である。
【0019】
第5の発明は、第1の発明において、感圧手段として可撓性をもつケーブル状の圧電センサを使用した物体検出装置となる。これにより、加重ではなく、圧電センサが押圧などによる変位を受けて撓むことにより発生する信号レベルに基づき判定を行うものである。
【0020】
第6の発明は、第1の発明において、支持手段が押圧された場合に、支持手段に支持された感圧手段が撓みやすくなり検知感度が向上する。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の
形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
図1において、1はマット、2は感圧手段である圧電センサ(感圧手段)を支持する支持手段で、この圧電センサより柔らかい弾性体からなる。
【0023】
前記支持手段2は、EPDMや熱可塑性エラストマーのような合成樹脂の発泡体を用い、圧縮率(単位変位をもたらす荷重値)が圧電センサよりも小さくなるよう硬度、発泡率等を選択している。圧電センサは感圧手段としての可撓性を有したケーブル状である。
【0024】
3は制御ユニットで、圧電センサの端部に配設されている。
【0025】
本実施の形態では、マット1の全面に配設できるように支持手段2は折り返して配設してあるが、配設構成は図1に限定するものではない。また、支持手段2をマット1に配設しているが設置する対象はマットに限定するものではない。
【0026】
図2,図3において、圧電センサ4は、電極の断線・ショート検出用の抵抗体が内蔵された先端部5を備えている。
【0027】
さらに述べると、圧電センサ4は導体からなる中心電極6、圧電体層7、導体からなる外側電極8、および弾性体からなる被覆層9を備えている。
【0028】
前記圧電体層7はポリフッ化ビニリデン等の樹脂系の高分子圧電体を用いることも考えられるが、耐熱温度が上限で80℃程度であり、物体検出装置は屋外でも使用する可能性があり、特に夏季には直射日光によりマット1の表面温度が時には100℃近くの高温になることから、高分子圧電体を用いることは好ましくない。
【0029】
圧電体層7としては特定の樹脂基材中に圧電セラミックスの粉体を混合した複合圧電体を用いると100℃以上の高温耐久性を有することができ、このような複合圧電体を使用することが好ましい。
【0030】
図3は制御ユニット3の具体構成を示し、検出部10、演算手段11、報知部12で構成されている。
【0031】
前記報知部12は、例えば他への通信を行う通信手段や威嚇のための音や光や表示を行う威嚇手段を有しているが、ここでは通信手段や威嚇手段は図示していない。
【0032】
検出部10は、圧電センサ4からの出力信号を所定の濾波特性で濾波するフィルタ部13と、所定の増幅度で増幅を行うアンプ部14と、フィルタの特性や増幅率を変更できる信号レベル調整手段15を備えている。
【0033】
フィルタ部13の濾波特性としては、物体での押圧時の周波数は10Hz以下であり、特に3〜8Hzの範囲が多く、その他の周波数帯域は物体の押圧時以外の振動であるので、濾波特性としては例えば、3〜8Hzの信号成分を通過させるバンドパスフィルタとする。
【0034】
演算手段11は、メモリ部16、閾値調整手段17、出力信号算出部18、カウント部19、判定部20を備えている。
【0035】
以上のように構成された物体検出装置について、以下その動作、作用について図4を用
いて説明する。
【0036】
図4(a)は、マット1に物体を置いた場合の圧電センサ4の出力電圧をフィルタ部13、アンプ14を通して出力された信号Vの経時変化を示す特性、図4(b)はマット1から物体を持ち上げた場合の信号Vの径時変化を示す特性、図4(c)はマット1に物体を2個(2回)置いた後、1個の物体を1回持ち上げた時の信号Vの径時変化を示す特性である。
【0037】
まず、図4(a),(b)を用いて説明する。物体をマット1に置くと、物体による押圧でマットが撓み、その変形が支持手段2を介して圧電センサ4に印加される。
【0038】
支持手段2は圧電センサ4より柔軟性を有しているので、物体による押圧により支持手段2が圧縮されて、圧電センサ4も容易に変形する。
【0039】
図4(a)のT0で圧電センサ4は変形を開始し、その圧電効果により変形の加速度に応じた信号が出力される。
【0040】
圧電センサ4の出力電圧をフィルタ部13、アンプ14を通して出力された信号Vと、検出部10からの出力信号Vの信号レベルを算出し、算出開始閾値を超えた場合に、判定部20が最初に判定閾値1(I1)あるいは判定閾値2(I2)を超えたかを判定する。
【0041】
図4(a)では、判定閾値1(I1)を超えているため物体が置かれたと判定する。次に図4(b)では、物体が置かれている状態から持ち上げた時の出力信号Vを示しており、物体がマット1から持ち上げられると、物体による押圧で圧電センサ4が撓んでいる状態から押圧がなくなり、圧電センサ4が変形することで、出力信号Vが発生する。
【0042】
図4(b)のT1で物体が持ち上げられたことにより圧電センサ4は変形を開始し、その変形の加速度に応じた信号が出力される。
【0043】
圧電センサ4の出力電圧をフィルタ部13、アンプ14を通して出力された信号Vと、検出部10からの出力信号Vの信号レベルを算出し、算出開始閾値を超えた場合に、判定部20が最初に判定閾値1(I1)あるいは判定閾値2(I2)を超えたかを判定する。
【0044】
図4(b)では、最初に判定閾値2(I2)を超えているため物体が持ち上げられたと判定する。
【0045】
次に図4(c)を用いて説明する。これは、マット1に物体を2個(2回)置いた後、置いた物体を1個(1回)持ち上げた時の信号Vの径時変化を表しているが、図4(c)で示すように、まずマット1に物体が置かれると信号VがT2から圧電センサ4の変形が開始し、最初に判定閾値1(I1)を超えているため、カウント部19で物体が1個置かれたとカウントする。
【0046】
次に本実施の形態では、信号Vが算出開始閾値内に入っている場合の時間を計測し、所定時間以上経過した場合は、次に信号Vが判定閾値を超えた場合に初動時の信号であると判定するようにしている。
【0047】
本実施の形態では、T3からT4までの時間を計測し、所定時間以上であるため、次に判定閾値を超えた時に初動時の信号と判定しており、図4(c)では、判定閾値1(I1)を超えているためカウント部19で物体が2個置かれたとカウントする。
【0048】
次にT5からT6までの時間を計測し、所定時間以上であるため、次に判定閾値を超えた時に初動時の信号と判定しており、図4(c)で示すように、判定閾値2(I2)を超えているためカウント部19で物体が持ち上げられたと判定し、現在物体は1個置かれた状態であるとカウントする。
【0049】
このように、物体が現在何個置かれた状態であるかを判定することができる。
【0050】
本実施の形態の物体検出装置では、物体の上に更に物体が置かれた場合でも物体の個数をカウントしていくことができるため、利便性が向上する。
【0051】
また、信号レベル調整部15により、検知部10からの信号レベルが調整可能であり、設置状況等に応じて使用者が調整することが可能である。
【0052】
また、閾値調節手段17により、メモリ部16に記憶した各種判定のための閾値を変更できるようになっている。
【0053】
本実施の形態では、物体の個数のカウント方法として説明しているが、防犯用として物体が持ち去られた場合に警報を報知部12で発生させたりすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のように、本発明にかかる物体検出装置は、物体が持ち上げられたり、設置されたりしたことを精度良く検出し、防犯のみならず物体の個数管理等まで利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態におけるマットに感圧手段を取り付けた場合の物体検出装置の構成図
【図2】(a)は圧電センサと制御ユニットの構成図、(b)は(a)のB−B断面図
【図3】本発明の実施の形態における物体検出装置のブロック図
【図4】(a)は本発明の実施の形態における物体を置いた場合の信号Vの経時変化を示す特性図、(b)は物体を持ち上げた場合の信号Vの径時変化を示す特性図、(c)は物体を2個(2回)置いた後、置いた物体を1個(1回)持ち上げた時の信号Vの径時変化を示す特性図
【図5】従来の他の物体検出装置の構成図
【符号の説明】
【0056】
1 マット
2 支持手段
3 制御ユニット
4 感圧手段(圧電センサ)
10 検出部
11 演算手段
15 信号レベル調整手段
17 閾値調整手段
18 出力信号算出部
19 カウント部
20 判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の設置または持ち上げを受けて変形するように配設された感圧手段と、前記感圧手段の出力信号をもとに演算を行い、物体の持ち上げまたは設置を判定する演算手段とを具備し、前記演算手段は、第1の判定閾値と第2の判定閾値を記憶し、前記感圧手段の出力信号の信号レベルを算出する出力信号算出手段を有し、前記感圧手段の始動時の出力信号の信号レベルが前記第1の判定閾値を超えている場合に、物体が設置されたと判定し、前記出力信号の信号レベルが前記第2の判定閾値を超えている場合に、物体が持ち上げられたと判定する物体検出装置。
【請求項2】
演算手段は、第1の判定閾値と第2の判定閾値とを調整する閾値調整手段を有する請求項1記載の物体検出装置。
【請求項3】
感圧手段の出力信号の信号レベルを調整する信号レベル調整手段を有する請求項1記載の物体検出装置。
【請求項4】
演算手段は、前記感圧手段の出力信号の信号レベルが第1の判定閾値と第2の判定閾値とを超えた回数をカウントする請求項1記載の物体検出装置。
【請求項5】
感圧手段として可撓性をもつケーブル状の圧電センサを使用した請求項1記載の物体検出装置。
【請求項6】
感圧手段は弾性体からなる支持手段を介してマット状の部材に配設され、前記弾性体は前記感圧手段よりも柔軟な部材から構成した請求項1記載の物体検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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