説明

物品およびその製造方法

本発明は、一般化学式:R‐Si‐H(式中、Rは、有機基または無機基である)を有する化合物から形成された繊維を含む物品を提供する。この繊維は、その上に堆積された金属も有する。この物品は、2つの工程を含む方法によって形成される。この物品を形成させる方法は、組成物のエレクトロスピニングによって繊維を形成させる工程を含む。この方法は、この繊維に金属を堆積させて物品を形成させる工程も含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、物品およびその物品の製造方法に関する。より詳細には、この物品は、特定の化合物から形成され、その上に金属が堆積されている繊維を含む。
【背景技術】
【0002】
ミクロ‐およびナノ‐の直径を有する繊維の開発は、現在、産業界、学界、政府プログラムにおける活発な研究開発の焦点である。これらの種類の繊維は、多種多様な有機および無機材料、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリチオフェン、およびヨウ素をドープしたポリアセチレンなどから形成され得る。この種の繊維は、疎水性の生体ポリマー(例えば、タンパク質、多糖類、コラーゲン、フィブリノゲン、絹、およびヒアルロン酸など)、ならびに、ポリエチレンおよび合成親水性ポリマー(例えば、ポリエチレンオキシドなど)からも形成され得る。
【0003】
これらの種類の繊維の多くは、当分野でエレクトロスピニングとして知られた方法によって形成され得る。エレクトロスピニングは、電荷を用いて繊維マットを形成させる工程を含む用途の広い方法である。典型的には、エレクトロスピニングは、溶液をシリンジに投入する工程と、この溶液をシリンジポンプによりシリンジの先端に押しやって先端で液滴を形成させる工程とを含む。エレクトロスピニングは、通常、電圧を針に印加して、溶液の帯電ジェットを形成させる工程も含む。このジェットは、接地されたコレクターに堆積されるまで、静電反発力により連続的に長く伸ばされ、吹き付けられ、これによって不織繊維マットが形成される。
エレクトロスピニングによって形成された繊維は、医療用および特異な用途を含む多種多様な産業において利用することができる。より具体的には、これらの種類の繊維は、特定の複合体を補強するため使用されてきた。これらの繊維は、医療診断、ガスの分離、浸透圧、および水処理などに用いるナノメートルチューブを製造するためにも用いられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2006/17360号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多種多様な繊維が製造され、多くのさまざまな用途に使用されているが、官能化され、その上に金属が堆積されている繊維から形成された物品が形成される可能性が残されている。このような物品の形成方法を開発する余地も残されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、物品およびその物品の形成方法を提供する。この物品は、一般化学式:R‐Si‐Hを有する化合物から形成された繊維を含む。この繊維は、その上に堆積された金属も有する。この物品を形成させる方法は、この化合物のエレクトロスピニングによって繊維を形成させる工程を含む。本発明は、化合物と金属との反応生成物を含む繊維からなる物品も提供する。この物品は、本発明の方法を用いて、効率的かつ最小限の工程数で形成させることができる。加えて、エレクトロスピニングの工程によって、小さい直径を有する繊維を効率的に形成させること、および、繊維上に堆積された金属のナノ構造を含む階層的な構造を形成させることが可能になる。
【0007】
本発明のその他の利点は、添付の図面と関連させて考察しながら以下の詳細な記述を参照することによってより深く理解され、その真価が容易に認められるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】図1Aは、一般式:[RSiO1/2][SiO4/2](式中、Rは、メチル基である)によって表されるオルガノポリシロキサンを含む第一のケイ素モノマー90質量%と、重合度50を有し且つメチル水素シリコーンを含む第二のケイ素モノマー10質量%との重合生成物を含む化合物から形成された繊維上に堆積された、ロジウムナノ粒子の走査型電子顕微鏡画像である。
【図1B】図1Bは、図1Aで示したロジウムナノ粒子の拡大図である。
【図2A】図2Aは、一般式:[RSiO1/2][SiO4/2](式中、Rは、メチル基である)によって表されるオルガノポリシロキサンを含む第一のケイ素モノマー90質量%と、重合度50を有し且つメチル水素シリコーンを含む第二のケイ素モノマー10質量%との重合生成物を含む化合物から形成された繊維上に堆積された、白金ナノ粒子の走査型電子顕微鏡画像である。
【図2B】図2Bは、図2Aで示した白金ナノ粒子の拡大図である。
【図3A】図3Aは、一般式:[RSiO1/2][SiO4/2](式中、Rは、メチル基である)によって表されるオルガノポリシロキサンを含む第一のケイ素モノマー90質量%と、重合度50を有し且つメチル水素シリコーンを含む第二のケイ素モノマー10質量%との重合生成物を含む化合物から形成された繊維上に堆積された、銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡画像である。
【図3B】図3Bは、図3Aで示した銀ナノ粒子の拡大図である。
【図4A】図4Aは、一般式:[RSiO1/2][SiO4/2](式中、Rは、メチル基である)によって表されるオルガノポリシロキサンを含む第一のケイ素モノマー90質量%と、重合度50を有し且つメチル水素シリコーンを含む第二のケイ素モノマー10質量%との重合生成物を含む化合物から形成された繊維上に堆積された、パラジウムナノ粒子の走査型電子顕微鏡画像である。
【図4B】図4Bは、図4Aで示したパラジウムナノ粒子の拡大図である。
【図5A】図5Aは、一般式:[RSiO1/2][SiO4/2](式中、Rは、メチル基である)によって表されるオルガノポリシロキサンを含む第一のケイ素モノマー90質量%と、重合度50を有し且つメチル水素シリコーンを含む第二のケイ素モノマー10質量%との重合生成物を含む化合物から形成された繊維上に堆積された、金ナノ粒子の走査型電子顕微鏡画像である。
【図5B】図5Bは、図5Aで示した金ナノ粒子の拡大図である。
【図6A】図6Aは、一般式:[RSiO1/2][SiO4/2](式中、Rは、メチル基である)によって表されるオルガノポリシロキサンを含む第一のケイ素モノマー90質量%と、重合度50を有し且つメチル水素シリコーンを含む第二のケイ素モノマー10質量%との重合生成物を含む化合物から形成された繊維上に堆積された、イリジウムナノ粒子の走査型電子顕微鏡画像である。
【図6B】図6Bは、図6Aで示したイリジウムナノ粒子の拡大図である。
【図7A】図7Aは、ケイ素モノマーおよび有機モノマーの重合生成物を含む化合物から形成された繊維の走査型電子顕微鏡画像である。
【図7B】図7Bは、図7Aで示した繊維の拡大図である。
【図8A】図8Aは、第一および第二のケイ素モノマーの重合生成物を含む化合物から形成された繊維の走査型電子顕微鏡画像である。
【図8B】図8Bは、図8Aで示した繊維の拡大図である。
【図9】図9は、エレクトロスピニングされたものであり、かつ、一般化学式:R‐Si‐H(式中、Rは、有機基または無機基である)を有する化合物の反応生成物から形成された不織繊維を含む物品(例えば、マット)の走査型電子顕微鏡画像である。
【図10】図10は、エレクトロスピニング装置を一般的に説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、図9に示すように、繊維14を含む物品12を提供する。この物品12は、繊維14の単一の層を含んでいても、繊維14の複数の層を含んでいてもよい。したがって、物品12は、典型的には、少なくとも0.01μmの厚さを有する。より典型的には、物品12は、約1μm〜約100μm、より典型的には約25μm〜約100μmの厚さを有する。物品12は、何ら特定の繊維14の層の数のものに限定されず、1層以上有していればよい。繊維14は、当分野で知られた任意の方法によって形成させることができ、織物でも不織でもよく、物品12自体が織物であっても不織布であってもよく、ミクロ相分離を示していてよい。1つの実施態様では、繊維14および物品12は、不織であり、物品12はマットとしてさらに定義される。別の実施態様では、繊維14および物品12は不織であり、物品12は織物としてさらに定義される。あるいは、物品12は、膜であってよい。繊維14は、均一であっても不均一であってもよく、任意の表面粗度を有していてよい。1つの実施態様では、物品12は、コーティングである。物品12は、弾性を有していても有していなくてもよい布地または繊維製品であり得ることが企図されている。
【0010】
物品12は、超疎水性繊維マットであってよく、約150度の水接触角を示し得る。さまざまな実施態様では、物品12は、150°から180°、および155°から175°、160°から170°、および160°から165°の水接触角を示し得る。物品12は、15°未満の水接触角ヒステリシスを示し得る。さまざまな実施態様では、物品12は、0°から15°、5°から10°、8°から13°、および6°から12°の水接触角ヒステリシスを示す。物品12は、水接触角および/または水接触角ヒステリシスの等方性または異方性も示し得る。あるいは、物品12は、等方性の性質を示すドメインと異方性の性質を示すドメインとを含んでいてよい。
【0011】
繊維14は、任意の大きさおよび形状を有していてよく、典型的には円筒形である。典型的には、繊維14は、0.01μm〜100μm、より典型的には0.05μm〜10μm、最も典型的には0.1μm〜1μmの直径を有する。さまざまな実施態様では、繊維14は、1nm〜30ミクロン、1nm〜500nm、1nm〜100nm、100nm〜300nm、100nm〜500nm、50nm〜400nm、300nm〜600nm、400nm〜700nm、500nm〜800nm、500nm〜1000nm、1500nm〜300nm、2000nm〜5000nm、または3000nm〜4000nmの直径を有する。この繊維14は、典型的には5〜20ミクロンの大きさを有し、より典型的には、10〜15ミクロンの大きさを有する。しかし、繊維14は、なんら特定の大きさに限定されない。この繊維14は、しばしば「細繊維」と呼ばれ、ミクロン-スケールの直径を有する繊維(すなわち、少なくとも1ミクロンの直径を有する繊維)と、ナノメートル-スケールの直径を有する繊維(すなわち、1μ未満の直径を有する繊維)との両方を包含する。繊維14は、25℃〜500℃のガラス転移温度(T)を有していてよい。
【0012】
繊維14は、当分野で知られている任意の方法によって互いに連結されていてよい。例えば、繊維の重なり合ったところで一体に融合してもよいし、あるいは、物理的に別々であって、物品12中で繊維14が単に互いに重なり合っていてもよい。繊維14は、連結される場合、0.01〜100μmの細孔径を有する不織布またはマットを形成することが想定される。種々の実施態様では、この細孔径は、0.1〜100μm、0.1〜50μm、0.1〜10μm、0.1〜5μm、0.1〜2μm、または0.1〜1.5μmの大きさの範囲の細孔径を有する。細孔径が均一であっても不均一であってもよいことが理解されるであろう。すなわち、不織マットは、それぞれのドメインでまたはドメイン間で異なる細孔径を有するさまざまなドメインを含んでいてよい。さらに、繊維14は、任意の断面プロファイルを有していてよく、例えば、これらだけに限定されないが、リボン状断面プロファイル、楕円形の断面プロファイル、円形の断面プロファイル、およびこれらの組合せが挙げられる。図9に示すように、いくつかの実施態様では、繊維の「ビーズ」が観察され得、これらはほとんどの用途で許容され得る。ビーズ16の存在、繊維の断面プロファイル(円形からリボン状までさまざまである)、および繊維直径は、繊維14が形成される方法の関数である。この方法を以下にさらに詳述する。
【0013】
一部の実施態様では、繊維14は耐火性でもある。繊維14、特に繊維14を含む不織マットの耐火性は、アルミ箔基材上に堆積させた不織マットの材料見本でUL−94V−0垂直燃焼試験法を用いて試験する。このテストでは、不織マットの細長い一片を、炎の上で約10秒間保持する。炎をその後10秒間取り去り、さらに10秒間再び炎を適用する。サンプルは、その間、火災を拡げる熱い滴下物、残炎、および残じん、ならびにサンプルの高さ方向の燃焼距離について観察される。本発明による繊維14を含む不織マットでは、損傷を受けていない繊維14が、典型的に、燃焼した繊維の下に観測される。この不織マットの不完全燃焼は、難燃性物質の典型的な挙動であり、優れた耐火性とみなされる自己消火性を実証するものである。この不織マットは、UL 94 V−0等級を達成することさえできる。特定の理論に拘束されることは望まないが、この耐火性は、典型的に、繊維14中のケイ素原子に対する有機基の割合の低さに起因する。ケイ素原子に対する有機基の割合の低さは、繊維14中に、有機ポリマーおよび有機コポリマーが存在しないことに起因する。しかし、耐火性は、繊維14中のケイ素原子に対する有機基の割合の低さの他の要因に起因していることも想定される。
【0014】
繊維14は、一般化学式:R‐Si‐H(式中、Rは、有機基または無機基である)を有する化合物から形成される。このSi‐Hは、R基に結合した官能基であり、化合物全体を官能化する。Si‐H基は、R基のどの位置に結合していてもよい。例えば、Rがポリマーとしてさらに定義される場合、Si‐H基は、このポリマーの任意の原子に結合していてよく、ペンダント基または末端基に結合することに限定されない。このSi‐H基のケイ素原子に1つ以上の水素が結合していてもよいことを理解されたい。加えて、用語「基」は、当分野で一般に「部分」と呼ばれる、すなわち、化合物の特定部分を指すことを理解されたい。
【0015】
化合物は、モノマー、ダイマー、オリゴマー、ポリマー、プレポリマー、コポリマー、ブロックポリマー、スターポリマー、グラフトポリマー、ランダムコポリマー、およびこれらの組合せを含むことができる。上述したように、化合物は、一般式(R‐Si‐H)を有し、式中、Rは、有機基または無機基である。一般的な有機基の非限定的な例には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン化アシル基、アルコール基、ケトン基、アルデヒド基、カーボネート基、カルボキシレート基、カルボン酸基、エーテル基、エステル基、ペルオキシド基、アミド基、アラミド基、アミン基、イミン基、イミド基、アジド基、シアネート基、硝酸エステル基、ニトリル基、亜硝酸エステル基、ニトロ基、ニトロソ基、ベンジル基、トルエン基、ピリジン基、ホスフェート基、ホスフィン基、スルフィド基、スルホン基、スルホキシド基、チオール基、これらのハロゲン化誘導体、およびこれらの組合せが含まれる。一般的な無機基の非限定的な例には、シリコーン基、シロキサン基、シラン基、遷移金属化合物、およびこれらの組合せが含まれる。いくつかの実施態様では、化合物自体を、シリコーン、シロキサン基、シラン基、これらの有機誘導体、またはこれらの高分子誘導体としてさらに定義することができる。
【0016】
1つの実施態様では、化合物は、一般化学式:R‐Si‐Hを有するモノマーとしてさらに定義される。このモノマーは、任意の有機または無機モノマーであってよく、モノマーがSi‐Hで官能化されている限り、上述した任意の有機または無機基を含んでいてよく、あるいは以下に詳細に記述する任意のモノマーとして定義することができる。別の実施態様では、モノマーは、シラン、シロキサン、およびこれらの組合せから選択され、Si‐H基で官能化されている。さらなる実施態様では、モノマーは、オルガノシラン、オルガノシロキサン、およびこれらの組合せから選択され、Si‐H基で官能化されている。当然ながら、モノマーがシランまたは有機シランとしてさらに定義される場合には、シランまたは有機シランは、1個のSi‐H基を有していても、1個を超えるSi‐H基を有していてもよい。あるいは、化合物は、一般化学式:R‐Si‐Hを有するモノマーとポリマーとの混合としてさらに定義することができ、あるいはポリマーとしてさらに定義することができる。化合物がSi‐Hを含む限り、ポリマーはSi‐H基を有していなくてもよい。すなわち、モノマー、ポリマー、またはモノマーおよびポリマーの両方が、Si‐H基を含むことができる。ポリマーには、上述したモノマーまたは以下により詳細に記述するモノマーの重合生成物であってよい。化合物が、これらだけに限定されないが、導電性の有機または無機ポリマー、例えば、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリシラン、ポリビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ヨウ素でドープしたポリアセチレン、およびこれらの組合せなどを含む一種以上のポリマーを含んでいてよいことも想定される。1つの実施態様では、化合物は、一般化学式:R‐Si‐Hを有するモノマーとポリマーとの混合であって、モノマーがポリマー中に溶解されたものとしてさらに定義される。このモノマーおよび/またはポリマーは、任意の量で存在していてよい。さまざまな実施態様において、一般化学式:R‐Si‐Hを有するモノマーは、化合物中に、典型的には25質量%未満の量、最も典型的には10質量%未満の量で存在する。
【0017】
典型的には、化合物は、化合物が室温および大気圧下で揮発性とならない数平均分子量(M)を有する。しかし、化合物は、このような数平均分子量に限定されない。1つの実施態様では、化合物は、100,000g/モルを超える数平均分子量を有する。さまざまな他の実施態様では、化合物は、100,000〜5,000,000、100,000〜1,000,000、100,000〜500,000、200,000〜300,000、約250,000を超える、あるいは約150,000g/モルの数平均分子量を有する。化合物が一般化学式:R‐Si‐Hを有するとしてさらに定義される1つの実施態様では、化合物は、50,000g/モル未満の数平均分子量を有する。化合物がポリマーとしてさらに定義される別の実施態様では、化合物は、50,000g/モルを超える、あるいは典型的には100,000g/モルを超える数平均分子量を有する。しかし、モノマーは、50,000g/モルを超える数平均分子量を有していてよく、ポリマーは、100,000g/モル未満の数平均分子量を有していてよい。あるいは、化合物は、少なくとも約300g/モル、約1,000〜約2,000g/モル、または約2,000〜2,000,000g/モルの数平均分子量を有していてよい。他の実施態様では、化合物は、350g/モルを超える、約5,000〜約4,000,000g/モル、または約500,000〜2,000,000g/モルの数平均分子量を有していてよい。
【0018】
Rは、化合物が一般式:R‐Si‐Hを有する限り、少なくとも第一の有機モノマーと第二の有機モノマーとの重合生成物としてさらに定義することができる(すなわち、少なくとも第一の有機モノマーと第二の有機モノマーとの重合生成物が、Si‐Hで官能化されている)。これらの第一および第二の有機モノマーは、これらが重合化される能力を保有している限り、重合化された基を含んでいても、モノマーのままであってもよいことを理解されたい。第一および第二の有機モノマーは、アルキレン、スチレン、アクリレート、ウレタン、エステル、アミド、アラミド、イミド、およびこれらの組合せからなる群から選択することができる。あるいは、第一および第二の有機モノマーは、ポリイソブチレン、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアラミド、ポリエーテルイミド、およびこれらの組合せからなる群から選択することができる。1つの実施態様では、第一および第二の有機モノマーは、アクリレート、アルケノエート、カーボネート、フタレート、アセテート、イタコネート、およびこれらの組合せからなる群から選択することができる。アクリレートの好適な例としては、これらだけに限定されないが、アルキルヘキシルアテート、アルキルヘキシルメタクリレート、メタクリレート、メチルメタクリレート、グリシジルアテート、グリシジルメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、およびこれらの組合せが挙げられる。第一および第二の有機モノマーは、アクリレート官能基またはメタクリレート官能基だけを含んでいてよい。あるいは、第一および第二の有機モノマーは、アクリレート官能基とメタクリレート官能基との両方を含んでいてもよい。
【0019】
上記アルカノエートに戻って、好適なアルカノエートの例としては、これだけに限定されないが、アルキル-N-アルケノエートが挙げられる。好適なカーボネートの例としては、これらだけに限定されないが、アルキルカーボネート、アリルアルキルカーボネート、ジアリルカーボネート、およびこれらの組合せが挙げられる。好適なイタコネートの例としては、これだけに限定されないが、アルキルイタコネートが挙げられる。好適なアセテートの非限定的な例としては、アルキルアセテート、アリルアセテート、アリルアセトアセテート、およびこれらの組合せが挙げられる。好適なフタレートの非限定的な例としては、アリルフタレート、ジアリルフタレート、およびこれらの組合せが挙げられる。1分子当たり平均して少なくとも1個のフリーラジカル重合性基を有し且つ電子、イオン、正孔、および/またはフォノンを輸送することができる、導電性モノマー、ドーパント、および巨大分子の部類も有用である。第一および第二の有機モノマーが、アクリルオキシアルキル基、メタクリルオキシアルキル基、および/または不飽和有機基を含む含むことができ、これらだけに限定されないが、2〜12個の炭素原子を有するアルケニル基、2〜12個の炭素原子を有するアルキニル基、およびこれらの組合せが含まれることも想定される。不飽和有機基には、オリゴマー性および/またはポリマー性ポリエーテル中のラジカル重合性基が含まれ得る。第一および第二の有機モノマーは、置換されていても非置換であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、直鎖状であっても分岐状であってもよく、アルキル化および/またはハロゲン化されていてもよい。
【0020】
第一および第二の有機モノマーは、実質的にケイ素(すなわち、ケイ素原子および/またはケイ素原子を含む化合物)を含んでいなくてもよい。用語「実質的に含まない」は、第一および第二の有機モノマー100万部当たり、ケイ素原子を含む化合物が5,000部未満、より典型的には900部未満、最も典型的には100部未満であるケイ素の濃度を意味することを理解されたい。重合してRを形成する第一および第二の有機モノマーが、全くケイ素を含まないが、化合物は全体として一般式:R‐Si‐Hを有することも想定される。
【0021】
あるいは、Rは、化合物が一般式:R‐Si‐Hを有する限り、少なくともケイ素モノマーおよび有機モノマーの重合生成物としてさらに定義されることができる(すなわち、少なくともケイ素モノマーおよび有機モノマーの重合生成物がSi‐H基で官能化されている)。有機モノマーおよび/またはケイ素モノマーが、化合物中に任意の体積割合で存在していてよいことが想定される。さまざまな実施態様では、有機モノマーおよび/またはケイ素モノマーは、0.05〜0.9,0.1〜0.6、0.3〜0.5、0.4〜0.9、0.1〜0.9、0.3〜0.6、または0.05〜0.9の体積割合で存在する。
【0022】
有機モノマーは、前述した第一および/または第二の有機モノマーのいずれかであっても当分野で知られたモノマーいずれかであってもよい。用語「ケイ素モノマー」は、少なくとも1個のケイ素(Si)原子を含む任意のモノマーを含み、例えば、シラン、シラザン、シリコーン、シリカ、シレン、およびこれらの組合せなどが挙げられる。
【0023】
ケイ素モノマーには、アクリロキシアルキル-およにメタクリロキシアルキル-官能性シラン(アクリル官能性シランとも呼ばれる)、アクリロキシアルキル-およにメタクリロキシアルキル-官能性オルガノポリシロキサン、およびこれらの組合せが含まれ得る。ケイ素モノマーは、平均して少なくとも1個、あるいは2個のフリーラジカル重合性基を有していてもよく、不飽和有機基を含むフリーラジカル重合性基を平均0.1〜50モル%含んでいてよい。この不飽和有機基には、これらだけに限定されないが、アルケニル基、アルキニル基、アクリレート官能性基、メタクリレート官能性基、およびこれらの組合せが含まれ得る。不飽和有機基の「モル%」は、ケイ素モノマー中のシロキサン基を含む不飽和有機基のモル数の、化合物中のシロキサン基の全モル数に対する比に100を掛けた割合として定義される。さらに、ケイ素モノマーは、式:RSiO3/2(式中、Rは、水素原子、有機基、またはこれらの組合せである。但し、ケイ素モノマーが少なくとも1個の水素原子を含むことを条件とする)の単位を含んでいてよい。さらに、ケイ素モノマーは、トリ-sec-ブチルシラン、トリ-ブチルシラン、およびこれらの組合せから選択されるオルガノシランを含んでいてよい。
【0024】
ケイ素モノマーには、フリーラジカル重合性基に組み入れられる官能性基を有する化合物が含まれ得る。これらの化合物は、非ラジカル反応性官能基に関して単官能性であっても複数官能性であってもよく、シリコーンモノマーが重合して直鎖状ポリマー、分岐状ポリマー、コポリマー、架橋ポリマー、およびこれらの組合せとなることを可能にする。これらの官能基には、付加および/または縮合硬化性組成物に用いられる当分野で公知の任意の基が含まれる。
【0025】
ケイ素モノマーには、下記一般構造を有するオルガノシランが含まれ得る:
R’Si(OR’’)4−n
式中、nは、4以下の整数である。典型的には、R’およびR’’の少なくとも1つが、独立に、フリーラジカル重合性基を含む。しかし、R’および/またはR’’は、非フリーラジカル重合性基を含んでいてよい。R’および/またはR’’は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン原子、および有機基の1つを含んでいてよい。この有機基には、これらだけに限定されないが、アルキル基、ハロアルキル基、アリール基、ハロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、アクリレートおよびメタクリレート基が含まれる。1つの実施態様では、R’および/またはR’’には、それぞれ独立に、1〜5個の(C〜C)炭素原子の鎖を含む直鎖状および分岐状の炭化水素基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、ペンチル、イソブチル、sec-ブチル基など) 、炭素原子およびフッ素原子を有する直鎖状および分岐状のC〜C炭化水素基、芳香族基(フェニル、ナフチル、および縮合環系を含む)、C〜Cエーテル類、C〜Cオルガノハロゲン、C〜Cオルガノアミン、C〜Cオルガノアルコール、C〜Cオルガノケトン、C〜Cオルガノアルデヒド、C〜Cオルガノカルボン酸、およびC〜Cオルガノエステルが含まれ得る。より典型的には、R’および/またはR’’には、これらだけに限定されないが、1〜3個の(C〜C)炭素原子の鎖を含む直鎖状および分岐状の炭化水素基(メチル、エチル、プロピル、およびイソプロピル基など)、炭素原子およびフッ素原子を有する直鎖状および分岐状のC〜C炭化水素基、フェニル、C〜Cオルガノハロゲン、C〜Cオルガノアミン、C〜Cオルガノアルコール、C〜Cオルガノケトン、C〜Cオルガノアルデヒド、およびC〜Cオルガノエステルが含まれ得る。1つの実施態様では、R’および/またはR’’は、それぞれ独立に、芳香族基およびC〜C炭化水素基から選択され、但し、芳香族基およびC〜C炭化水素基の両方が、オルガノポリシロキサンに存在することを条件とする。あるいは、R’および/またはR’’は、架橋反応の生成物を表すことができ、この場合において、R’および/またはR’’は架橋器を表すことができる。あるいは、R’および/またはR’’は、それぞれ独立に、他の有機官能基を含んでいてもよく、他の有機官能基には、これらだけに限定されないが、グリシジル基、アミン基、エーテル基、シアネートエステル基、イソシアノ基、エステル基、カルボン酸基、カルボン酸塩基、スクシネート基、無水物基、メルカプト基、スフフィド基、アジド基、ホスホネート基、ホスフィン基、マスクしたイソシアノ基、水酸基、およびこれらの組合せが含まれ得る。一価の有機基は、典型的には1〜20個、より典型的には1〜10個の炭素原子を有する。この一価有機基には、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、およびこれらの組合せが含まれ得る。一価有機基には、さらに、アルキルオキシポリ(オキシアルキレン)基、これらのハロゲン置換体、およびこれらの組合せが含まれ得る。加えて、一価の有機基には、シアノ官能基、ハロゲン化炭化水素基、カルバゾール基、脂肪族不飽和基、アクリレート基、メタクリレート基、およびこれらの組合せが含まれ得る。
【0026】
ケイ素モノマーとしては、これらだけに限定されないが、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルとりメチルシラン、3-メタクリルオキシプロピルジメチルモノメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルジメチルモノメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメチルシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、1-ヘキセニルトリメトキシシラン、
ジ-(3-ブテニル-l-オキシ)ジメチルシラン、(テトラ-(アリルオキシシラン)(トリ-(3-ブテニル-l-)テトラ-(3-ブテニル-l-オキシ)シラン、3-ブテニル-l-オキシ・トリメチルシラン(オキシ)メチルシラン)、および/またはこれらの組合せを挙げることもできる。
【0027】
ケイ素モノマーは、直鎖状、分岐状、高度な分岐状、または樹脂状の構造を有していてよい。ケイ素モノマーは、アクリレート基またはメタクリレート基を少なくとも1個含んでいてよい。別の実施態様では、ケイ素モノマーは、ポリマー骨格を有する有機化合物とケイ素モノマーとを共重合させることによって形成される化合物であって、これによってコポリマー1個当たり平均して少なくとも1個の遊離のフリーラジカル重合性基が存在する化合物を含む。好適な有機化合物としては、これらだけに限定されないが、炭化水素をベースとするポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリオレフィン、ポリプロピレンおよびポリエチレン、ポリプロピレンコポリマー、ポリスチレン、スチレンブタジエン、およびアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、アラミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリウレア、ポリメタクリレート、部分的にフッ素化されたポリマーもしくはペルフルオロ化されたポリマー、フッ素化ゴム、末端不飽和炭化水素、オレフィン、ならびにこれらの組合せが挙げられる。ケイ素モノマーには、複数の有機官能性を有するポリマーを含むコポリマー、および、オルガノポリシロキサンと有機化合物との組合せも含まれ得る。コポリマーは、繰り返し単位を、ランダム、グラフト、またはブロック配置で含んでいてよい。
【0028】
さらに、ケイ素モノマーは、液体、ガム、または固体であってよく、任意の粘度を有していてよい。ケイ素モノマーが液体である場合、その粘度は、25℃にて0.001Pa・秒以上であってよい。ケイ素モノマーがガムまたは固体液体である場合、その樹脂または固体は、高温で流動可能となり得、あるいは剪断を適用することによって流動可能となり得る。
【0029】
ケイ素モノマーは、下記式の少なくとも1つを有する化合物を含んでいてもよい:
(a)RSiO(RSiO)(RSiO)SiR
(b)RSiO(RSiO)(RSiO)SiR
(c)RSiO(RSiO)(RSiO)SiR;および
(d)これらの組合せ。
式(a)において、aおよびbは、典型的には少なくとも1の平均値を有する。Rとしては、典型的には、一価の有機基、例えば、アクリル官能基、アルキル基、アルケニル基、およびアルキニル基、芳香族基、シアノアルキル基、ハロゲン化炭化水素基、アルケニルオキシポリ(オキシアルキレン)基、アルキルオキシポリ(オキシアルキレン)基、ハロゲンで置換されたアルキルオキシポリ(オキシアルキレン)基、アルコキシ基、アミノアルキル基、エポキシアルキル基、エステル基、水酸基、イソシアネート基、カルバメート基、アルデヒド基、無水物基、カルボン酸基、カルバゾール基、オキシム基、アミノ基死基、アルケノキシ基、アクリル基、アセトキシ基、これらの塩、これらのハロゲン化誘導体、およびこれらの組合せが挙げられる。Rには、典型的には、不飽和一価有機基が含まれる。この不飽和一価有機基としては、これらだけに限定されないが、アルケニル基、アルキニル基、アクリル基、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0030】
式(b)および(c)において、cおよびdは、整数であり、それぞれ典型的には20,000以下の平均値を有する。この式において、各Rは、独立に、Rと同じであっても異なっていてもよい。加えて、各Rは、独立に、上述したものと同様の不飽和有機基を含んでいてよい。
【0031】
さらに別の実施態様では、ケイ素モノマーとして、これらだけに限定されないが、1、3-ビス(メタクリロキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、l,3-ビス(アクリロキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(メタクリロキシメチル)テトラメチルジシロキサン、1、3-ビス(アクリロキシメチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω-メタクリロキシメチルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、メタクリロキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン、α,ω-アクリロキシメチルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、α,ω-アクリロキシプロピルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、ペンダント型アクリレートおよびメタクリレート官能性ポリマー(例えば、ポリ(アクリロキシプロピル-メチルシロキシ)コポリマーおよびポリ(メタクリロキシプロピル-メチルシロキシ)コポリマー)、複数のアクリレートおよびメタクリレート官能基を有するテレケイックポリジメチルシロキサン、ならびにこれらの組合せが挙げられる。使用に好適な他の化合物としては、これらだけに限定されないが、一官能性メタクリレートまたはメタクリレート末端オルガノポリシロキサンが挙げられる。ケイ素モノマーには、官能性の程度および/またはフリーラジカル重合性基が異なる液体の混合物が含まれ得る。例えば、ケイ素モノマーには、四官能性テレケイックポリジメチルシロキサンが含まれ得る。
【0032】
さらに、ケイ素モノマーには、下記構造を有するオルガノポリシロキサン樹脂が含まれ得る:
【化1】

式中、M、D、T、およびQは、それぞれ独立に、オルガノポリシロキサンの構造基の官能性を表している。具体的には、Mは一官能性基RSiO1/2を表し、Dは二官能性基RSiO2/2を表し、Tは三官能性基RSiO3/2を表し、Qは四官能性基SiO4/2を表す。
【0033】
ケイ素モノマーがオルガノポリシロキサン樹脂を含む場合、オルガノポリシロキサン樹脂には、MQ樹脂(RSiO1/2基およびSiO4/2基を含む)、TD樹脂(RSiO3/2基およびRSiO2/2基)、MT樹脂(RSiO1/2基およびRSiO3/2基を含む)、ならびにMTD樹脂(RSiO1/2基、RSiO3/2基、およびRSiO2/2基を含む)が含まれ得る。
【0034】
これらの樹脂において、各Rには、一価の有機基が含まれ得る。Rは、典型的には1〜20個、より典型的には1〜10個の炭素原子を含む。一価の有機基の好適な例には、これらだけに限定されないが、R’およびR’’に関して上に開示した基が含まれ得る。
【0035】
好適な樹脂のいくつかの有用な特定例には、これらだけに限定されないが、MメタクリロキシメチルQ樹脂、MメタクリロキシプロピルQ樹脂、MTメタクリロキシメチルT樹脂、MTメタクリロキシプロピルT樹脂、MDTメタクリロキシメチルフェニルT樹脂、MDTメタクリロキシプロピルフェニルT樹脂、Mビニルフェニル樹脂、TTメタクリロキシメチル樹脂、TTメタクリロキシプロピル樹脂、Tフェニルメタクリロキシメチル樹脂、Tフェニルメタクリロキシプロピル樹脂、TTフェニルメタクリロキシメチル樹脂、TTフェニルメタクリロキシプロピル樹脂、MQ樹脂、トリメチル末端封鎖MQ樹脂、T(Ph)樹脂、Tプロピル/T(Ph)樹脂、トリメチル末端封鎖MQ樹脂と直鎖状シリコーンとのブレンド、およびこれらの組合せ(式中、M、D、T、およびQは、上述により定義したものと同じである)が含まれ得る。
【0036】
代替的な実施態様では、Rは、化合物が一般式:R‐Si‐Hを有する限り、少なくとも2種のケイ素モノマーの重合生成物としてさらに定義することができる(すなわち、少なくとも2種のケイ素モノマーの重合生成物は、Si‐H基で官能化されている)。これらの実施態様では、Rは、実質的に炭素を含まない(すなわち、有機モノマーの重合生成物を含まない)ことができる。用語「実質的に含まない」は、炭素の濃度が、化合物100万部当たり炭素原子を含む化合物が5,000部未満、典型的には900部未満、最も典型的には100部未満である炭素の濃度を指すことを理解されたい。ケイ素モノマーが、全体として炭素を含まないことも想定される。これらの2種のケイ素モノマー前述したケイ素モノマーのいずれであってもよく、互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0037】
1つの実施態様では、Rには、化合物が一般式:R‐Si‐Hを有するようにSi‐Hで官能化されたオルガノポリシロキサンが含まれ得る。このオルガノポリシロキサンは、平均単位式:R’SiOy1/2(すなわち、RSiOy/2)を有するシロキサン単位を含んでいてよい。1つの実施態様では、Rは、無機基、有機基、およびこれらの組合せから選択され、xは約0.1〜2.2であり、yは約1.8〜3.9である。より典型的には、xは約0.1〜1.9であり、yは約2.1〜3.9である。最も典型的には、xは約0.5〜1.5であり、yは約2.5〜3.5である。説明のために、上の一般式、x、およびyは、オルガノポリシロキサンの平均式を表す。したがって、上の一般式は、M、D、T、および/またはQ単位、ならびにこれら単位の任意の組合せを含むオルガノポリシロキサンを表すことが理解されよう。当分野で知られているとおり、Mは一般式:RSiO1/2を表し、Dは一般式:RSiO2/2を表し、Tは一般式:RSiO3/2を表し、Qは一般式:SiO4/2を表す。上述の最も典型的なxおよびyの値を参照すると、これらの実施態様では、少なくともいくつかのQおよび/またはT単位を含むことが好ましく、これによってこれらの実施態様に、少なくとも一部の樹脂性成分(すなわち、M単位でその骨格が末端封鎖され、種としてD単位を含む純粋な直鎖状オルガノポリシロキサンとは対照的な、分岐状オルガノポリシロキサン)がもたらされる。1つの実施態様では、オルガノポリシロキサンはT単位だけを含む。別の実施態様では、オルガノポリシロキサンはMおよびQ単位だけを含む。別の実施態様では、オルガノポリシロキサンは、樹脂状成分と直鎖状成分との物理的ブレンド(すなわち、非化学的ブレンド)を含む。当然ながら、オルガノポリシロキサンは、M、D、T、および/またはQ単位の任意の組合せを含む可能性に加えて、別個の成分(MおよびD単位のみを含む成分、MおよびT単位のみを含む成分、M、D、およびT単位のみを含む成分、MおよびQ単位のみを含む成分、M、D、およびQ単位のみを含む成分、またはM、D、T、およびQ単位のみを含む成分)の任意の組合せを含む可能性を有することを理解されたい。
【0038】
上の一般式において、Rは、酸素含有基、酸素を含まない有機基、およびこれらの組合せの群から選択することができる。例えば、Rは、直鎖状または分岐状のC〜C炭化水素基であって、任意選択で、
1)アミノ基、
2)アルコール基、
3)ケトン基、
4)アルデヒド基、または
5)エステル基
を有していてよい炭化水素基の群から選択される置換基を含んでいてよい。
あるいは、Rは、芳香族基の群から選択される置換基を含んでいてよい。さらに、Rは、これらだけに限定されないが、上述したR’および/またはR’’基のいずれかを含んでいてよい。1つの実施態様では、Rは、架橋反応生成物を表し、この場合において、Rは、架橋基に加えて別のポリオルガノシロキサン鎖を表すことができる。。
【0039】
本発明の目的に好適なオルガノポリシロキサンの1つの特定例は、平均単位式:RSiO3/2(式中、Rは、フェニル基、メチル基、およびこれらの組合せの群から選択される)を有する単位を含む。本発明の目的に好適なオルガノポリシロキサンの別の特定例は、平均単位式:RSiO3/2(式中、Rは、フェニル基、プロピル基、およびこれらの組合せの群から選択される)を有する単位を含む。本発明の目的に好適なオルガノポリシロキサンの別の特定例は、トリメチル末端封鎖MQ樹脂である。本発明の目的に好適なオルガノポリシロキサンのさらに別の特定例は、トリメチル末端封鎖MQ樹脂と直鎖状ポリシロキサンとの4:1(質量%)ブレンドを含むポリオルガノシロキサンである。樹脂状成分と直鎖状ポリシロキサンとのブレンドは、特に、高い降伏応力および引張強度を含む優れた機械特性を有し、同時に有意に低い弾性率を有する物品12をもたらし、これによって、最小化された脆性および最大化された弾性を有する物品12(特に、繊維14を含む不織マット)がもたらされる。
【0040】
さらに、オルガノポリシロキサンは、下記式を有することができる:
(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2
式中、各Rは、独立に、無機基、有機基、およびこれらの組合せから選択され、同じであっても異なっていてもよく、上述した基または以下に記述する基のいずれを含んでいてもよい。加えて、wは0から約0.95であり、xは0から約0.95であり、yは0から1であり、zは0から約0.9であり、w+x+y+z=1である。あるいは、オルガノポリシロキサンは、前述したオルガノポリシロキサンの硬化生成物、またはオルガノポリシロキサンと硬化生成物との組合せを含んでいてもよい。上記式において、下付き文字w、x、y、およびzは、モル分率である。下付き文字wは、あるいは0から約0.8、あるいは0から約0.2の値を有し;下付き文字xは、あるいは0から約0.8、あるいは0から約0.5の値を有し;下付き文字yは、あるいは0.3から1、あるいは約0.5から1の値を有し;下付き文字zは、あるいは0から約0.5、あるいは0から約0.1の値を有する。1つの実施態様では、y+zは0.1未満であり、wおよびxは、それぞれ独立に、0より大である。したがって、この実施態様では、オルガノポリシロキサンがTおよび/またはQ単位を全く有さない(この場合、オルガノシロキサンはMDポリマーである)か、あるいはこのような単位の量が非常に低いことが明らかである。この実施態様では、オルガノポリシロキサンは、少なくとも約50,000g/モル、より典型的には少なくとも100,000G/モルの数平均分子量(M)を有する。当然ながら、y+zが0.1未満である実施態様ではオルガノポリシロキサン成分は、上述したとおり、所望の特性を達成するためにより高いMn値を有することが求められることを理解されたい。
【0041】
さらに、化合物は、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンがSi‐H基で官能化されている限り、オルガノポリシロキサンのブレンドを含むことができる。このブレンドには、式:(RSiO1/2w’(RSiO2/2x’(式中、Rは、無機基、有機基、およびこれらの組合せから選択され、w’およびx’は独立に0より大であり、w’+x’=1である)を有するオルガノポリシロキサンが含まれ得る。結果として、このオルガノポリシロキサンは、直鎖状オルガノポリシロキサンである。この式において、w’は、典型的には約0.003〜約0.5の範囲の数、より典型的には約0.003〜約0.05の範囲の数であり、x’は、典型的には約0.5〜約0.999の範囲の数、より典型的には約0.95〜約0.999の範囲の数である。
【0042】
オルガノポリシロキサンは、架橋を含んでいてもよい。この場合、オルガノポリシロキサンの架橋剤は、典型的には、公知の架橋メカニズムによって機能して、オルガノポリシロキサン内の個々のポリマーを架橋させることができる架橋可能な官能基を有する。オルガノポリシロキサンが架橋を含む場合、そのような架橋は、繊維14の形成前、形成中、または形成後に形成され得ることを理解されたい。したがって、繊維14中のオルガノポリシロキサンにおける架橋の存在は、必ずしも繊維14が架橋結合を含む組成物から形成されなければならないことを意味しない。架橋剤には、オルガノシロキサンを形成する任意の反応剤または反応剤の組合せが含まれ、これらだけに限定されないが、ヒドロシラン、ビニルシラン、アルコキシシラン、ハロシラン、シラノール、およびこれらの組合せが含まれる。
【0043】
化合物および/または繊維14が、組成物から形成され得ることも想定される。この組成物は、例えば、化合物と、以下に詳細に記述するキャリア溶媒とを含む溶液であってよい。したがって、このような組成物は、モノマー、ダイマー、オリゴマー、ポリマー、プレポリマー、コポリマー、ブロックポリマー、スターポリマー、グラフトポリマー、ランダムコポリマー、第一および第二の有機モノマー、有機モノマーおよびケイ素モノマー、少なくとも2種のケイ素モノマー、およびこれらの組合せであって、一般式:R‐Si‐Hを有する限り、化合物を形成させるための組成物であっても化合物である組成物であってもよいものを含んでいてよい。さまざまな実施態様では、組成物は、上述したオルガノポリシロキサン、上述した架橋剤、および/またはオルガノポリシロキサンとおよび架橋剤の両方の組合せを含む。別の実施態様では、組成物は、有機ポリマー、有機コポリマー、およびこれらの前駆体を全く含まない。この実施態様では、用語「有機ポリマー」は、炭素-炭素結合だけからんばる骨格を有するポリマーを包含する。ポリマーの「骨格」は、重合の結果として生成した鎖であって、個々の原子がその鎖に含まれている鎖を指す。1つの実施態様では、有機ホモポリマー、および全有機コポリマーが、特別に除外される。加えて、オルガノシロキサン-有機コポリマー(すなわち、ポリマーの骨格中に炭素原子とケイ素原子とを両方有するポリマー)も除外され得る。
【0044】
導入部分で記述したとおり、組成物は、キャリア溶媒を含んでいてもよい。1つの実施態様では、オルガノポリシロキサンおよび/または架橋剤、ならびに任意の添加剤および/または他のポリマーが、組成物の固体部分を形成することができ、繊維14が形成された後には繊維14中に留まる。この実施態様では、組成物は、オルガノポリシロキサンおよび/または架橋剤ならびに任意の添加剤および/または他のポリマーの、キャリア溶媒中の分散液として特徴付けられる。このキャリア溶媒の機能は、単に固体部分を運ぶことである。繊維14の形成中に、キャリア溶媒は、典型的には繊維14形成に用いる組成物から蒸発し、それによって組成物の固体部分を残す。本発明の目的に好適なキャリア溶媒には、固体部分との均質な溶液混合物の形成を可能にする任意の溶媒が含まれる。典型的には、キャリア溶媒は、固体部分を溶解することができ、かつ、約25℃の温度で約1から約760torrの範囲の蒸気圧を有する。典型的なキャリア溶媒は、(繊維14が形成される温度で)約2から約100の誘電率も有する。適する一般的なキャリア溶媒およびその物理特性を表1に示す。適する一般的なキャリア溶媒は、これらだけに限定されないが、エタノール、イソプロピルアルコール、トルエン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、メタノール、ジメチルホルムアミド、水、低分子量シリコーン、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルペンタシロキサン(D5)、オクタメチルトリシロキサン(MDM)、デカメチルテトラシロキサン(MD2M)、ドデカメチルペンタシロキサン(MD3M)、関連物質、ならびにこれらの組合せが挙げられる。加えて、適するキャリア溶媒は、低分子量シリコーン材料、例えば、シクロシロキサン、および25℃にて10センチストークス未満の粘度を有する直鎖状シロキサン、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などである。キャリア溶媒のブレンドを用いて、固体部分の溶解度、蒸気圧および誘電率の最も好ましい組合せを得ることができる。
【0045】
【表1】

【0046】
組成物は、粘度は、25℃にて少なくとも20センチストークスの粘度を有していてよい。さまざまな実施態様で、組成物は、25℃の定温で5rpmの回転速度で稼働する、熱電池およびSC4−31スピンドルを備えたブルックフィールド回転ディスク粘度計を用いて、少なくとも20センチストークス、より典型的には約30〜約100センチストークス、最も典型的には、約40〜約75センチストークスの粘度を有する。組成物は、0.1〜10、0.5〜10、1〜10,5〜8、または約6Pa・秒のゼロ剪断速度粘度を有していてもよい。加えて、第一および第二の有機モノマー、有機モノマーおよびケイ素モノマー、または少なくとも2種のケイ素モノマーは、組成物中に、組成物の全質量に基づいて、約5質量%〜95質量%で存在していてよい。さらに、組成物は、組成物の全質量に基づいて、約5質量%〜95質量%、より典型的には約35質量%〜95質量%、最も典型的には約50質量%〜70質量%の固形分を有していてよい。
【0047】
組成物は、0.01〜25mS/mの範囲の導電性を有していてよい。さまざまな実施態様では、組成物の導電性は、0.1〜10、0.1〜5、0.1〜1、0.1〜0.5の範囲にあり、あるいは約0.3mS/mである。組成物は、10〜100mN/mの表面張力を有していてもよい。さまざまな実施態様では、表面張力は、20〜80、20〜50の範囲である。1つの実施態様では、組成物の表面張力は、約30mN/mである。組成物は、1〜100の誘電率を有していてもよい。さまざまな実施態様では、誘電率は、5〜50、10〜70、または1〜20の間である。1つの実施態様では、組成物の誘電率は、約10である。
【0048】
繊維14に戻って、繊維14は、図1〜図6に示すように、その上に堆積された金属18を有する。用語「金属」には、金属元素、金属アロイ、金属イオン、金属原子、金属塩、有機金属化合物、金属粒子(物理的に結合された金属原子の塊、化学的に結合された金属原子の集まりを含む)、およびこれらの組合せが含まれ得ることを理解されたい。金属18は、当分野で知られている任意のものであってよく、繊維14上に、そのイオンとSi‐Hとの反応によって堆積され得るものであってよい。1つの実施態様では、金属18は、銅、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、およびこれらの組合せの群から選択される。別の実施態様では、金属18は、金前記、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、これらの塩、ならびにこれらの組合せの群から選択される。さらなる実施態様では、金属18は貴金属である。貴金属は、典型的には最も反応性が低いと考えられているにもかかわらず、本発明の目的については、貴金属は、化合物のSi‐Hと反応することができる。金属18は、貴金属または上述したいずれかの金属としてさらに定義することができる。
【0049】
金属18は、繊維14上に、当分野で知られている任意の方法で堆積させることができる。1つの実施態様では、金属18は、繊維14上に物理的に堆積する。別の実施態様では、金属18は、繊維14に結合して、図11に示すように、金属18が化学的に繊維14上に堆積する。さらなる実施態様では、金属18は、凝集して粒子となる。この粒子は、ナノ粒子、ナノパウダー、ナノクラスター、および/またはナノクリスタルであってよい。典型手には、粒子は、1〜500、より典型的には2〜100、最も典型的には5〜10ナノメートルの大きさを有する。当分野で知られているように、ナノ粒子、ナノパウダー、ナノクラスター、および/またはナノクリスタルには、少なくとも100nm未満の次元を有する微視的な(金属)粒子が含まれる。いかなる特定の理論に拘束されることも望まないが、これらの種類の粒子(例えば、ナノ粒子)は、活性領域の増大およびより高い活性に起因して、触媒、光の捕捉、および吸収に関連する用途に重要であろう高い表面積を有し得ると考えられる。粒子の大きさに起因して、量子閉じ込め効果が、粒子が特異な電子的、光学的、および/または時期的現象を示すことを可能にすることも考えられる。
【0050】
別の実施態様では、金属18は、繊維14上に堆積されたフィルムを形成する。このフィルムは、金属原子の単分子膜フィルムであり得る。金属18は、繊維14と接触していてよく、繊維14に結合していなくてよい。あるいは、金属18は、繊維14に結合していてもよい。1つの実施態様では、さまざまな金属原子が、繊維に接触していて、かつ、繊維に結合していない一方、他の原子は繊維に同時に結合している。典型的には、金属18は、化合物のSi‐Hと還元反応することによって繊維14に結合される。いかなる特定の理論に拘束されることも意図しないが、化合物のSi‐Hが、還元剤としての役割を果たし、金属18(例えば、金属のイオン)を、第一陽イオン状態からより低い陽イオン状態または元素状態(例えば、M)に還元することが考えられる。
【0051】
用語「金属」には、1つの金属または2以上の金属を含むことを理解されたい。言い換えれば、繊維14は、その上に堆積された単一の金属または2以上の金属を含み得る。当然ながら、「単一の金属」には、単一種の金属を指し、単一の金属原子に限定されないことを理解されたい。1つの実施態様では、繊維14は、その上に堆積された第一および第二の金属を含む。この第一および第二の金属、および任意の追加の金属は、互いに同じであっても異なっていてもよく、上述した金属のいずれであってもよい。第二の金属は、第一の金属が繊維14に結合されない場合であっても繊維14に結合され得る。あるいは、第二の金属は、繊維14に接触しているが、第一の金属が繊維14に結合している間は繊維14に結合されない。あるいは、第一および第二の金属の両方が、同時に繊維14に結合してもよく、あるいは同時に繊維14に結合されることまく繊維14に接触していてよい。
【0052】
1つの実施態様では、物品12は、化合物と金属18との反応生成物を含む繊維14からできている。別の実施態様では、物品12は、エレクトロスピニングされたものであり、化合物と、銅、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、およびこれらの組合せの群から選択される金属18との反応生成物から形成された不織繊維14を含むマットとしてさらに定義することができる。上述したとおり、化合物が金属18と反応する場合、典型的には、金属のイオンが化合物のSi‐Hによる還元反応によって反応する。これにより、金属イオンが、上述したとおり、第一の陽イオン状態からより低い陽イオン状態または元素状態に還元されると考えられる。これらの実施態様ではいずれも、化合物と金属18は、上述したものと同じであってよい。金属18が繊維14上に堆積される際に、繊維の色が変化し、元素状態の金属18の存在が示され得る。
【0053】
繊維14、化合物、および/または組成物は、添加剤を含むこともできる。添加剤には、これらだけに限定されないが、導電性改良剤、界面活性剤、塩、染料、着色剤、レベリング剤、およびこれらの組合せが含まれ得る。導電性改良剤成分は、優れた繊維の形成に貢献し得、特に繊維14がエレクトロスピニング工程(以下にさらに詳述する)によって形成される場合には、繊維14の直径を最小限にすることをさらに可能にする。1つの実施態様では、導電性改良材は、一般に、アミン、有機塩、および無機塩、ならびにこれらの組合せの群から選択される。典型的な導電性改良剤として、アミン、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、第三級スルホニウム塩、および無機塩と有機クリプタンドとの混合物が挙げられる。より典型的な導電性改良剤として、第四級アンモニウムをベースとした有機塩、以下に限定されないが、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、塩化フェニルトリメチルアンモニウム、塩化フェニルトリエチルアンモニウム、臭化フェニルトリメチルアンモニウム、ヨウ化フェニルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、ヨウ化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、ヨウ化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、およびヨウ化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムが挙げられる。添加剤成分は、繊維14に存在する場合、物品12中の繊維14の全質量に基づいて約0.0001から約25%、典型的には約0.001から約10%、より典型的には約0.01から約1%の量で存在することができる
【0054】
物品12に加えて、本発明は、物品12の製造方法も提供する。物品12は、これだけに限定されないが、エレクトロスピニング、エレクトロブローイング、およびこれらの組合せを含む、当分野で知られている任意の方法によって形成させることができる。1つの実施態様では、本方法は、化合物(化合物は、例えば溶媒と共に全体としての組成物に含められる)のエレクトロスピニングによって繊維14を形成させる工程を含む。このエレクトロスピニング工程は、当分野で知られている任意の方法によって実施することができる。エレクトロスピニングの工程では、図10で示すように、エレクトロスピニング装置20を利用する。当然ながら、本方法は、このような装置の使用には限定されない。
【0055】
当分野で知られているように、エレクトロスピニングの工程は、典型的には、電荷を用いて繊維14を形成させることを含む。典型的には、繊維14を形成させるための組成物を、シリンジ22に投入し、その組成物を、シリンジポンプを有するシリンジ22の先端24に送る。このシリンジポンプによって、繊維14を形成させるための組成物の流速をコントロールすることが可能になる。繊維14を形成させるための組成物のシリンジ22の先端24への流速は、繊維14の形成に影響を与え得る。シリンジ22の先端24への組成物の流速は、典型的には、約0.005ml/分から約10ml/分、典型的には約0.005ml/分から0.1ml/分、より典型的には約0.01ml/分から0.1ml/分、最も典型的には0.02ml/分から約0.1ml/分であり得る。1つの実施態様では、シリンジ22の先端24への組成物の流速は、約0.05ml/分であってよい。別の実施態様では、シリンジ22の先端24への組成物の流速は、約1ml/分であってよい。
【0056】
形成された後、液滴は、高圧電場に曝される。高圧電場の非存在下では、液滴は、その表面張力の結果として、通常、半球状にシリンジ22の先端24から射出する。電場を適用すると、典型的には、球状から円錐形状へのねじれが引き起こされる。液滴形状でのこのねじれについて一般に認められた説明は、液滴内の表面張力が電気力で中和されるということである。図10に示すように、組成物の狭い直径のジェット28がこの円錐の先端から放射される。特定のプロセス条件下で、組成物のジェット28は、図10に示すように、「ホイッピング(吹き付け:whipping)」の不安定性30の現象を受ける。このホイッピング不安定性により、ジェット28の分岐の繰り返しを生じ、繊維14の網目構造を産出する。繊維14は典型的にはコレクター板36上に集められる。組成物がキャリア溶媒を含む場合、キャリア溶媒は典型的にはエレクトロスピニング工程中に蒸発し、繊維14を形成させるための組成物の固体部分を後に残す。
【0057】
コレクター板36は、典型的には、固体の導電性材料、例えば以下に限定されないが、アルミニウム、スチール、ニッケル合金、シリコンウエハー、ナイロン(登録商標)布地、およびセルロース(例、紙)などから形成される。コレクター板36は、繊維14のエレクトロスピニングの間、繊維14を通る電子流のためのアースとしての役割を果たす。時間が経つにつれて、コレクター板36上に集められた繊維14の数が増加し、例えば不織繊維マットがコレクター板36上に形成される。あるいは、固体コレクター板36の使用に代えて、繊維14を、電気を通し、組成物または化合物の非溶媒である液体の表面で集め、これによって自立性物品、例えば、自立性不織マットなどを実現することができる。繊維14を集めるために用いることができる液体の一例は、水である。
【0058】
種々の実施態様では、エレクトロスピニングの工程は、図10に示すように、約10から約100キロボルト(kV)の発電能力を有する電源26(例えば、直流発電機など)からの電気の供給を含む。特に、シリンジ22は電気的に発電機26に接続される。液滴を高圧電場に曝す工程は、典型的には、シリンジ22に電圧を印加し、電流を流す工程を含む。印加電圧は、約5kVから約100kV、典型的には約10kVから約40kV、より典型的には約15kVから約35kV、最も典型的には約20kVから約30kVであり得る。一つの具体例では、印加電圧は、約30kVであり得る。流れる電流は、約0.01nAから約100,000nA、典型的には約10nAから約1000nA、より典型的には約50nAから約500nA、最も典型的には約75nAから約100nAであり得る。一つの具体例では、電流は約85nAである。
【0059】
電気を供給する工程の間、上述したように、コレクター板36は第一電極としての役割を果たし、図10に示すように、第二電極として役割する最上板40と組み合わせて用いることができる。コレクター板36と最上板40とは、典型的には、約0.001cmから約100cm、典型的には約20cmから約75cm、より典型的には約30cmから約60cm、最も典型的には約40cmから約50cmの距離で、互いに対して隔たっている。一つの実施態様では、コレクター板36と最上板40とは約50cmの距離で隔たっている。
【0060】
典型的には、エレクトロスピニングの際、60℃の周囲温度において化合物は固体または半固体である。より典型的には、エレクトロスピニングの際、60℃の加工温度において化合物は固体または半固体である。1つの実施態様では、エレクトロスピニングの工程は、溶液中の化合物をエレクトロスピンする工程(すなわち、最初の部分で述べたように、組成物をエレクトロスピンする工程)のとしてさらに定義される。
【0061】
エレクトロスピニングの工程に加えて、あるいはエレクトロスピニングの工程の変わりに、本方法は、化合物のエレクトロブローイングの工程を含むことができる。エレクトロブローイングの工程は、典型的には、組成物(例えば、本発明の組成物など)の液滴を、シリンジの先端に形成させ、この液滴を、高圧電場に曝す工程を含む。加えて、典型的には、吹き付けガスまたは供給ガスの流れを液滴に適用して、コレクター板上に繊維を形成させる。エレクトロブローイング法の非限定的な例および装置は、国際公開第2006/017360号に記載されている。特にこれらの方法および装置に向けられた国際公開第2006/017360号のこれらの節の記載を、参照により明示的に本明細書に組み込む。
【0062】
エレクトロスピニングの工程および/またはエレクトロブローイングの工程に加えて、本方法は、金属18を繊維14上に堆積させて、物品12を形成させる工程を含む。この堆積させる工程は、当分野で知られている任意の方法によって起こらせることができる。1つの実施態様では、堆積させる工程は、金属18と繊維14とを接触させる工程を含む。別の実施態様では、堆積させる工程は、金属18を、化合物のSi‐Hと反応させる工程を含む。さらに別の実施態様では、堆積させる工程は、化合物のSi‐Hを、金属18と還元反応によって反応させる工程を含む。堆積させる工程は、単一の金属または複数の金属を繊維上に堆積させる工程としてさらに定義することができる。1つの実施態様では、堆積させる工程は、繊維14を、以下に詳細に記述する金属18を含む溶液中に浸漬させる工程としてさらに定義することができる。
【0063】
あるいは、本方法が、化合物を、金属18を含む溶液中に浸漬させる工程を含むことも想定される。1つの実施態様では、堆積させる工程は、繊維14を、前記溶液中に浸漬させる工程としてさらに定義され、本方法は、化合物を、前記溶液に浸漬させる工程を含む。代替的な実施態様では、溶液は、水溶液である。別の実施態様では、金属18を、金属塩として溶液に添加する。この金属塩は、これらだけに限定されないが、ハライド塩(例えば、クロライドなど)、および一般化学式:[X][Y][Z]または[Y][Z]の塩(式中、Xは、金属、水素原子、または陽イオン生成種であり、Yは、本発明の金属18であり、Zは、陰イオン生成種である)が挙げられる。これらの塩のそれぞれにおいて、X、Y、およびZの電荷はゼロに調整するべきである。このような塩の具体例には、AuCl、PtCl、PdCl、RhCl、IrCl−xHO、NaAuCl、HAuCl、KPtCl、AgNO、Ag(OCOR)(式中、Rは、アルキル基またはアリール基である)、CuXまたはCuX(式中、Xは、ハロゲンである)、Cu(OOCR)(式中、Rは、アルキル基またはアリール基である)、およびこれらの組合せが含まれる。
【0064】
この方法は、繊維14のアニーリング工程を含むこともできる。この工程は、当技術分野で知られている任意の方法により達成することができる。一つの実施態様では、このアニーリング工程は、繊維14の疎水性を向上させるために用いることができる。別の態様では、アニーリング工程は、繊維14のミクロ相の規則性を高めることができる。アニーリング工程は物品12を加熱する工程を含んでいてよい。典型的には、アニーリング工程を実施するために、物品12を、約20℃の周囲温度より高い温度に加熱する。より典型的には、物品12を、約40℃から約400℃、最も典型的には約40℃から約200℃の温度に加熱する。物品12の加熱は、物品12内の繊維接合部の融合の増大、繊維14内での化学的または物理的結合の形成(一般に「架橋」といわれる)、繊維の1種以上の成分の揮発、および/または繊維14の表面モルホロジーの変化をもたらしうる。
【実施例】
【0065】
2つの系列の繊維および相当する不織マット(すなわち、本発明の物品)を、本発明の方法にしたがって形成させる。第一の系列の不織マットは、第一および第二のケイ素モノマーの重合生成物を含む化合物から形成された繊維を含む。第二の系列の不織マットは、ケイ素モノマーおよび有機モノマーの重合生成物を含む化合物から形成された繊維を含む。形成させた後、各繊維を金属含有溶液に曝して、繊維上に金属を堆積させ、本発明の物品を形成させる。
【0066】
[第一および第二のケイ素モノマーの重合生成物から形成された繊維]
一般式[RSiO1/2][SiO4/2](式中、Rは、メチル基である)によって表されるオルガノポリシロキサン4.8gと、重合度50を有し且つメチル水素シリコーン1.2gを、イソプロピルアルコールとジメチルホルムアミドとの1:1混合液4gに加え、混合して溶液を形成させる。混合後、溶液は、透明、無色、かつ均一である。次いで、この溶液を、シリンジに充填し、シリンジポンプに取り付けたシリンジのステンレススチールチップ(内径0.040インチ(0.10cm))に送る。シリンジポンプが、シリンジチップのところに溶液の液滴を形成する。チップの先端の液滴に電場を印加し、液滴が細い白色の繊維に引き伸ばされて、接地されたアルミニウム箔片上に噴出される(エレクトロスピニングにより繊維化する)。このエレクトロスピニング工程は、20cmのプレート間隔、チップの突出部3cm、電位差35kV、および流速10mL/時間で実施する。形成される白色繊維は、10ミクロンの平均直径を有し、図8Aおよび図8Bに示すように、いくらかのぽつぽつとした穴を有する滑らかな表面を有している。次いで、この繊維を、アルミニウム箔から掻き取り、さらなる反応に用いる。
【0067】
[ケイ素モノマーおよび有機モノマーの重合生成物から形成された繊維]
約168℃のTgを有するシリコーンポリエーテルイミドコポリマー12gと、重合度50を有し且つメチル水素シリコーン3gを、ジクロロメタンとジメチルホルムアミドとの2:1混合液48gに加え、混合して溶液を形成する。混合後、溶液は黄色且つ不透明である。次いで、この溶液を、シリンジに充填し、シリンジポンプに取り付けたシリンジのステンレススチールチップ(内径0.040インチ(0.10cm))に送る。シリンジポンプが、シリンジチップのところに溶液の液滴を形成する。チップの先端の液滴に電場を印加し、液滴が細い白色の繊維に引き伸ばされて、接地されたアルミニウム箔片上に噴出される(エレクトロスピニングにより繊維化する)。このエレクトロスピニング工程は、30cmのプレート間隔、チップの突出部3cm、電位差30kV、および流速1mL/分で実施する。形成される白色繊維は、10ミクロンの平均直径を有し、図7Aおよび図7Bに示すように、でこぼこの表面外観を有している。次いで、この繊維を、アルミニウム箔から掻き取り、さらなる反応に用いる。
【0068】
次いで、第一および第二のケイ素モノマーの重合生成物から形成された繊維を、金属で官能化した。すなわち、以下の方法にしたがって、次に金属を繊維上に堆積させる。
【0069】
[繊維上に堆積された金]
0.01gのAuClを、10gのHO/エタノール(1:1)溶液に添加する。次いで、ペトリ皿内の過剰量の前記の溶液中に、少量の繊維を置く。5分後、淡いマゼンタ色が繊維の表面上に視認可能となる。30分後、この色が深いマゼンタ(赤紫色)に変化する。この繊維の走査型電子顕微鏡画像は、図5Aおよび図5Bに示すように、繊維の表面上の分離した丸い隆起物の存在を示している。これらの隆起物は、直径5〜500nmの大きさの範囲にあり、繊維の全表面にわたって広がっている。化学分析電子分光法(ESCA)では、繊維の表面上に痕跡量の塩素(Cl)が検出されるだけであり、Au+3がSi‐Hによって還元されてAuナノ粒子を形成することを示している。その上に堆積された金属を含むこの繊維は、本発明の物品を形成する。
【0070】
[繊維上に堆積された銀]
0.01gのAgNOを、10gのHO/エタノール(1:1)溶液に添加し、無色の溶液を得る。次いで、ペトリ皿内の過剰量の前記の溶液中に、少量の繊維を置く。1時間後、黄色が繊維の表面上に視認可能となる。この繊維の走査型電子顕微鏡画像は、図3Aおよび図3Bに示すように、繊維の表面上の分離した丸い隆起物の存在を示している。これらの隆起物は、直径5〜500nmの大きさの範囲にあり、繊維の全表面にわたって広がっている。化学分析電子分光法(ESCA)では、繊維の表面上に痕跡量の窒素(N)が検出されるだけであり、Ag+1がSi‐Hによって還元されてAgナノ粒子を形成することを示している。その上に堆積された金属を含むこの繊維は、本発明の物品を形成する。
【0071】
[繊維上に堆積された白金]
0.01gのPtClを、9%のポリエチレングリコール、15%のポリ(エチレンオキシド)モノアリルエーテル、および76%の1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチル-3-(プロピル(ポリ(EO))ヒドロキシ)トリシロキサンのHO中0.1質量%溶液10gに添加し、黄灰色溶液を得る。次いで、ペトリ皿内の過剰量の前記の溶液中に、少量の繊維を置く。24時間後、明るい灰色が繊維の表面上に視認可能となる。この繊維の走査型電子顕微鏡画像は、図2Aおよび図2Bに示すように、繊維の表面上の分離した丸い隆起物の存在を示している。これらの隆起物は、直径5〜500nmの大きさの範囲にあり、繊維の全表面にわたって広がっている。化学分析電子分光法(ESCA)では、繊維の表面上に痕跡量の塩素(Cl)が検出されるだけであり、Pt+2がSi‐Hによって還元されてPtナノ粒子を形成することを示している。その上に堆積された金属を含むこの繊維は、本発明の物品を形成する。
【0072】
[繊維上に堆積されたパラジウム]
0.01gのPdClを、9%のポリエチレングリコール、15%のポリ(エチレンオキシド)モノアリルエーテル、および76%の1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチル-3-(プロピル(ポリ(EO))ヒドロキシ)トリシロキサンの0.1質量%溶液10gに添加し、明るい灰色の溶液を得る。次いで、ペトリ皿内の過剰量の前記の溶液中に、少量の繊維を置く。48時間後、黒色が繊維の表面上に視認可能となる。この繊維の走査型電子顕微鏡画像は、図4Aおよび図4Bに示すように、繊維の表面上の分離した丸い隆起物の存在を示している。これらの隆起物は、直径5〜500nmの大きさの範囲にあり、繊維の全表面にわたって広がっている。化学分析電子分光法(ESCA)では、繊維の表面上に痕跡量の塩素(Cl)が検出されるだけであり、Pd+2がSi‐Hによって還元されてPdナノ粒子を形成することを示している。その上に堆積された金属を含むこの繊維は、本発明の物品を形成する。
【0073】
[繊維上に堆積されたロジウム]
0.01gのRhClを、9%のポリエチレングリコール、15%のポリ(エチレンオキシド)モノアリルエーテル、および76%の1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチル-3-(プロピル(ポリ(EO))ヒドロキシ)トリシロキサンのHO中0.1質量%溶液10gに、約5gのエタノールとともに添加し、緑灰色の溶液を得る。次いで、ペトリ皿内の過剰量の前記の溶液中に、少量の繊維を置く。24時間後、橙色が繊維の表面上に視認可能となる。この繊維の走査型電子顕微鏡画像は、図1Aおよび図1Bに示すように、繊維の表面上の分離した丸い隆起物の存在を示している。これらの隆起物は、直径5〜500nmの大きさの範囲にあり、繊維の全表面にわたって広がっている。化学分析電子分光法(ESCA)では、繊維の表面上に痕跡量の塩素(Cl)が検出されるだけであり、Rh+3がSi‐Hによって還元されてRhナノ粒子を形成することを示している。その上に堆積された金属を含むこの繊維は、本発明の物品を形成する。
【0074】
[繊維上に堆積されたイリジウム]
0.01gのIrCl・xHOを、9%のポリエチレングリコール、15%のポリ(エチレンオキシド)モノアリルエーテル、および76%の1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチル-3-(プロピル(ポリ(EO))ヒドロキシ)トリシロキサンのHO中0.1質量%溶液10gに添加し、黄褐色の溶液を得る。次いで、ペトリ皿内の過剰量の前記の溶液中に、少量の調製した繊維を置く。24時間後、薄黄色が繊維の表面上に視認可能となる。この繊維の走査型電子顕微鏡画像は、図6Aおよび図6Bに示すように、繊維の表面上の分離した丸い隆起物の存在を示している。これらの隆起物は、直径5〜500nmの大きさの範囲にあり、繊維の全表面にわたって広がっている。化学分析電子分光法(ESCA)では、繊維の表面上に痕跡量の塩素(Cl)が検出されるだけであり、Ir+3がSi‐Hによって還元されてIrナノ粒子を形成することを示している。その上に堆積された金属を含むこの繊維は、本発明の物品を形成する。
【0075】
ケイ素モノマーおよび有機モノマーの重合生成物から形成される繊維は、次に金属で官能化される。すなわち、次に、以下の方法にしたがって、金属を繊維上に堆積させる。
【0076】
[繊維上に堆積された白金]
0.1gのPtClを、ビーカー中で500gのHO中に希釈した0.5gの9%のポリエチレングリコール、15%のポリ(エチレンオキシド)モノアリルエーテル、および76%の1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチル-3-(プロピル(ポリ(EO))ヒドロキシ)トリシロキサンからなる混合物の溶液に添加し、淡灰色の溶液を得る。4gの上記の繊維を次にこの溶液に入れ、磁気撹拌プレートで混合した。24時間後、灰色が繊維の表面上に視認可能となる。4日後、繊維は濃い灰色であり、溶液は無色である。この繊維の走査型電子顕微鏡画像は、繊維の表面上の分離した丸い隆起物の存在を示している。これらの隆起物は、直径5〜150nmの大きさの範囲にあり、繊維の全表面にわたって広がっている。化学分析電子分光法(ESCA)では、繊維の表面上に痕跡量のClが検出されるだけであり、Pt+2がSi‐Hによって還元されてPtナノ粒子を形成することを示している。その上に堆積された金属を含むこの繊維は、本発明の物品を形成する。
【0077】
上に示した例は、繊維がエレクトロスピニング(電気紡糸法)によって効率的に形成され、わずかな工程数で、本発明の方法を用いて、繊維上に金属が堆積されることを実証している。加えて、エレクトロスピニングの工程が、小さな直径を有する繊維の効率的な形成と、繊維上に堆積した金属のナノ構造を含む階層構造の形成を可能にしている。
【0078】
本発明を例示的方法で説明しているが、用いた用語は説明の性質のものであって、限定するものではないことを意図している。明らかに、本発明の多くの修飾及び変形が上記の教示に照らして可能であり、本発明は具体的に記載したものとは別のやり方で実施することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を含む物品であって、
前記繊維が、一般化学式:R‐Si‐H(式中、Rは、有機基または無機基である)を有する化合物から形成されたものであり、
前記繊維上に、前記化合物のSi‐Hによる金属の還元反応によって前記金属が堆積されている、物品。
【請求項2】
前記金属が、貴金属としてさらに定義される、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記金属が、銅、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、インジウム、白金、金、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項2に記載の物品。
【請求項4】
前記化合物が、一般化学式:R‐Si‐Hを有するモノマーとしてさらに定義される、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記モノマーが、シラン、シロキサン、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項4に記載の物品。
【請求項6】
Rが、少なくともケイ素モノマーおよび有機モノマーの重合生成物としてさらに定義される、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記ケイ素モノマーが、オルガノシラン、オルガノシロキサン、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項6に記載の物品。
【請求項8】
Rが、平均単位式:RSiOy/2(式中、Rは、有機基であり、xは0.1〜2.2の数であり、yは1.8〜3.9の数である)を有するシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサンを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項9】
Rが、少なくとも2種のケイ素モノマーの重合生成物としてさらに定義される、請求項1に記載の物品。
【請求項10】
前記ケイ素モノマーが、オルガノシラン、オルガノシロキサン、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項9に記載の物品。
【請求項11】
前記物品が不織である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の物品。
【請求項12】
前記繊維が、エレクトロスピニングされたものである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の物品。
【請求項13】
繊維を含む物品の製造方法であって、
A)化合物のエレクトロスピニングによって繊維を形成させる工程であって、前記化合物が、一般化学式:R‐Si‐H(式中、Rは、有機基または無機基である)を有する工程と、
B)前記化合物のSi‐Hによる金属の還元反応によって前記金属を前記繊維上に堆積させて、物品を形成させる工程と
を含む、方法。
【請求項14】
前記化合物を、前記金属を含む溶液中に浸漬させる工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記金属が、貴金属としてさらに定義される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記金属が、銅、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、インジウム、白金、金、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物が、一般化学式:R‐Si‐Hを有するモノマーとしてさらに定義される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記モノマーが、シラン、シロキサン、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
Rが、少なくともケイ素モノマーおよび有機モノマーの重合生成物としてさらに定義される、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
Rが、平均単位式:RSiOy/2(式中、Rは、有機基であり、xは0.1〜2.2の数であり、yは1.8〜3.9の数である)を有するシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサンを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
Rが、少なくとも2種のケイ素モノマーの重合生成物としてさらに定義される、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
不織繊維を含むマットであって、
前記不織繊維が、エレクトロスピニングされたものであり、かつ
(i)一般化学式:R‐Si‐H(式中、Rは、有機基または無機基である)を有する化合物と、
(ii)銅、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、インジウム、白金、金、およびこれらの組合せからなる群から選択される金属と
の反応生成物から形成されたものであり、
前記金属が、前記不織繊維上に、前記化合物のSi‐Hによる還元反応によって堆積されたものである、マット。
【請求項23】
A.一般化学式:R‐Si‐H(式中、Rは、有機基または無機基である)を有する化合物と、
B.銅、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、インジウム、白金、金、およびこれらの組合せからなる群から選択される金属と
の反応生成物を含む繊維からなる物品。
【請求項24】
前記金属が、銅、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、インジウム、白金、金、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記化合物が、一般化学式:R‐Si‐Hを有するモノマーとしてさらに定義される、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記モノマーが、シラン、シロキサン、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
Rが、少なくともケイ素モノマーおよび有機モノマーの重合生成物としてさらに定義される、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
Rが、少なくとも2種のケイ素モノマーの重合生成物としてさらに定義される、請求項23に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−504552(P2011−504552A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534962(P2010−534962)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/012956
【国際公開番号】WO2009/067230
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】