説明

物品収納台車の制動装置

【課題】 一対の車輪に均等に制動を加える。
【解決手段】 ハンドルから引き出された操作側ケーブル36のワイヤ39が連結部材45の中心に回転自由に支持されるとともに、一対の固定車輪4に個別に配設された制動機構16から引き出された駆動側ケーブル37のワイヤ39が、連結部材45の両端に結合される。ハンドルを握ると、操作側のワイヤ39が引張され、連結部材45を介して両駆動側のワイヤ39が引張されることで、パッド23が固定車輪4に押し付けられる。(A)のように、一方パッド23の方が先に固定車輪4に押し付けられると、(B)のように連結部材45が回動しつつ他方のパッド23も直ちに固定車輪4に押し付けられ、左右のパッド23が揃って対応する固定車輪4に押し付けられた状態で、操作側のワイヤ39の引張操作が継続され、両固定車輪4に均等に制動が加えられる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、配膳車等の物品収納台車における制動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、配膳車の制動装置として、例えば実開平7−36764号公報等に記載されているように、本体の外面に設けられた操作ハンドルによりワイヤを引張操作し、これによりブレーキシューを車輪に押し付けることで制動を加えるようにしたものは公知である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところでこの種の配膳車に制動を加える場合、バランス等を考慮すると、例えば左右で対をなす車輪に同時に制動を掛けることが望ましい。このように2つの車輪に制動を加えるには、各車輪に個別にブレーキシューを配する一方、ワイヤの先端を2本に分岐してそれぞれをブレーキシューに連結することが考えられるが、分岐したワイヤの配索の具合や、各ブレーキシューの取付けの誤差等により、ワイヤが引張された場合に両ブレーキシューをそれぞれの車輪に均等に押し付けることは結構難しく、均等な制動力を得るためには熟練した調整が必要であるという問題があった。本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、一対の車輪に均等に制動を加えることができるようにするところにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、本体の底面に設けられた一対の車輪にそれぞれ制動部材が配され、前記本体の外面に設けられた操作部材によりワイヤを引張して前記各制動部材を対応する車輪に押し付けることで制動を加えるようにした物品収納台車の制動装置において、前記操作部材から引き出された操作側ワイヤの端部が連結部材に支持されるとともに、前記各制動部材から引き出された一対の駆動側ワイヤの端部が、前記連結部材における前記操作側ワイヤの支持部分を挟んだ両側にそれぞれ支持され、前記連結部材は前記操作側ワイヤの支持部分を中心として回動可能となっている構成としたところに特徴を有する。
【0005】請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記連結部材が収容可能で、かつ前記操作側ワイヤの端部を摺動可能に挿通する挿通部と、前記各駆動側ワイヤの端部を摺動可能に挿通する挿通部とを前記連結部材を挟んで対向状に設けてなる取付部材を有し、この取付部材が前記本体の底面に着脱可能とされているところに特徴を有する。
【0006】
【発明の作用及び効果】<請求項1の発明>操作側ワイヤが引張操作されると、連結部材を介して両駆動側ワイヤが引張されて制動部材が対応する車輪に押し付けられる。このとき、いずれか一方の制動部材が他方よりも先に車輪に押し付けられたとしても、連結部材が回動しつつ他方の制動部材も車輪に押し付けられ、両制動部材が揃って対応する車輪に押し付けられる。もって、両車輪に均等に制動を加えることができる。
<請求項2の発明>操作側ワイヤと駆動側ワイヤとを連結する部分が取付部材を利用してユニット化されているから、着脱の作業が簡単となる。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明を温冷配膳車に適用した一実施形態を添付図面に基づいて説明する。本実施形態の温冷配膳車は、図1に示すように、全体として矩形箱状をなす貯蔵室本体1(以下、単に本体という)を備えており、表裏両面が開放された形状で、天井壁、底壁並びに左右の側壁内に発泡ウレタン等の断熱材を充填した断熱箱体として構成されている。この本体1の底部の外周にはバンパ2が張り出し形成されているとともに、底面には移動用の車輪が装備されている。これらの車輪は、図2に示すように、長さ方向の一側(同図の左側)における奥行き方向の両端部と、長さ方向の他側における奥行き方向のほぼ中央部に、それぞれ向きが自在に変えられる自在車輪3が設けられているとともに、長さ方向の中央部における奥行き方向の両端部に、固定車輪4が設けられている。なお、長さ方向の一側における一対の自在車輪3の間には、ペダルロック5が装備されている。
【0008】本体1内では、断熱性の仕切壁7を挟んだ左右両側に温蔵室8と冷蔵室9が形成されて、これが左右2組形成されており、温食と冷食とを分けて載置することが可能なトレイ11が、仕切壁7を貫通しつつ両室8,9にわたって収容可能とされている。そしてこの配膳車は、本体1の左右両面の収容凹部13内に設けられた取っ手14により引き又は押し操作されることで、ほぼ長さ方向に沿って移動可能とされている。
【0009】続いて、配膳車に制動を加える部分の構造について説明する。大まかには、上記した一対の固定車輪4に個別に制動機構16が配されるとともに、図1に示すように、一方の取っ手14に操作用のハンドル32が設けられ、このハンドル32がケーブルを介して各制動機構16と連結されている。
【0010】まず、制動機構16の配設部分の構造は、以下のようである。固定車輪4の配設部分には、図3,4に示すように、上下両面の開口された細長い箱型の車輪用ブラケット17が取り付けられており、この車輪用ブラケット17内に、固定車輪4が長寸側の両側板17Aを貫通して設けられた軸18により回転自由に支持されている。この車輪用ブラケット17内における固定車輪4の一側(図4の右側)には、揺動ブラケット20が装備されている。この揺動ブラケット20は、縦長で固定車輪4よりも幅の広い溝型に形成されていて、開口を固定車輪4側に向けた姿勢で、車輪用ブラケット17の側板17Aの下端部において軸21により揺動可能に支持されている。揺動ブラケット20の下端部は、図4に示すように、バンパ2の下面よりも下方に突出している。
【0011】揺動ブラケット20の下端部には、ブレーキパッド23が装着されている。このパッド23は方形の板状に形成され、上面と背面とが開口された取付部材24の表面に貼着されている。この取付部材24が図3の矢線に示すように、揺動ブラケット20の下端部内に挿入され、揺動ブラケット20と取付部材24の側板の挿通孔25を貫通して頭部付きの軸26が挿通され、手前側の突出端にスナップピン27を打ち込むことで固定されている。揺動ブラケット20は、車輪用ブラケット17との間に装着された引張コイルバネ29の弾力により、軸21を中心として図4の反時計回り方向の揺動力が付勢され、常にはほぼ垂直姿勢を取るようになっており、パッド23は固定車輪4の前方に離間して対応した状態にある。また、パッド23の取付部材24の下面には、汚れ落とし用のブラシ30が固定車輪4側に向けて突出して設けられている。
【0012】上記した一方の取っ手14における真直部14Aの中央には、図5に示すように、ハンドル32が設けられている。このハンドル32は取付ブラケット33により軸34を中心として真直部14Aに接離する方向の揺動可能に取り付けられている。
【0013】続いて、ケーブルの配索構造を説明する。ケーブルとしては、1本の操作側ケーブル36と、一対の駆動側ケーブル37とを備えている。これらのケーブル36,37は、可撓性を有するチューブ38内にワイヤ39を摺動自由に挿通した構造である。一方、図2に示すように、本体1の底面における両固定車輪4の間の位置、より詳細には、一方(同図の下側)の固定車輪4に寄った位置に、ケーブルの連結機構41が装備されている。
【0014】この連結機構41は、図6及び図7に示すように、下面開放の扁平な箱型をなす収容ブラケット42を備えており、補強板43(図2参照)を介して四隅をネジ47で止めることにより本体1の底面に固定されている。収容ブラケット42の短寸側の側板42Aは長寸側と比べて背が高くされており、一方(図7の左側)の側板42Aの開口縁には、幅方向の中央部において1本の取付溝44が切り欠き形成されているとともに、他方の側板42Aの開口縁には、幅方向の中央部を挟んだ両側に一対の取付溝44が形成されている。また、収容ブラケット42内には、アングル状をなす連結部材45が収容可能とされており、この連結部材45には、3個の取付孔46A,46Bが開口されている。
【0015】上記したハンドル32には、操作側ケーブル36の一端側のワイヤ39が連結され、この操作側ケーブル36の他端側は、図5示すように、ハンドル32の収容凹部13の一方の側壁に向けて引き出されのち少し立ち上がり、そののち底部側に向けて折り返され、図2R>2に示すように底面に沿うようにして連結機構41に向けて配索される。この操作側ケーブル36のチューブ38の端末には筒形固定具48が嵌着され、図7の矢線に示すように、収容ブラケット42の取付溝44に通されて一対のナット49を締め付けることで固定されている。筒形固定具48から突出したワイヤ39の端末には目玉状の連結具50が固着されている。
【0016】この連結具50の中心孔50Aには、図8に示すように、少し背の高いカラー51が嵌装されており、このカラー51内に挿通されたネジ52の先端が、上記した連結部材45の真ん中の取付孔46Aに挿通され、その先端にナット53を螺合して締め付けることによって、連結具50がカラー51に対して回転自由に連結されている。
【0017】一対の駆動側ケーブル37のチューブ38の一端側には、同様の筒形固定具48が嵌着され、この筒形固定具48が、図4に示すように、対応する制動機構16の車輪用ブラケット17の短寸側の側板17Bの上端側の長孔54に挿通され、一対のナット49を締め付けることで固定されている。この筒形固定具48から突出したワイヤ39の端末に同様に目玉状の連結具50が固着され、この連結具50が、ピン60(図3参照)により揺動ブラケット20の上端部と連結されている。各駆動側ケーブル37の他端側は、図2に示すように、一旦同図の右側に引き出された後、連結機構41側に向けて折り返されている。なお、両ケーブル37は折り返されたところで結束されている。
【0018】両駆動側ケーブル37のチューブ38の他端にも同様に筒形固定具48が嵌着され、図7の矢線に示すように、収容ブラケット42の反対側の取付溝44にそれぞれ通されて一対のナット49を締め付けることで固定されている。連結部材45の両側の取付孔46Bには、図9に示すように、径方向の貫通孔55を備えたボルト56が平座金57を介して挿通されているとともに、その先端にバネ座金58を介してUナット59が螺合されている。そして、筒形固定具48から突出したワイヤ39の先端がボルト56の貫通孔55に挿通され、Uナット59を締め付けることにより、平座金57と連結部材45の水平面で挟持されることにより固定されている。
【0019】本実施形態は上記のような構造であって、続いてその作用を説明する。取っ手14を持って配膳車を移動させている最中に制動を掛ける必要が生じたら、取っ手14に装備されたハンドル32を握る。そうすると、操作側ケーブル36のワイヤ39が引張されて連結部材45が図6の左側に移動し、それに伴い両駆動側ケーブル37のワイヤ39も図2及び図4の矢線方向に引張される。それを受けて、揺動ブラケット20は、引張コイルバネ29を伸長させつつ、軸21を中心に図4の時計回り方向に揺動し、パッド23が固定車輪4の外周面に押し付けられることにより制動が加えられる。ハンドル32を外せば、引張コイルバネ29の復元弾縮力により揺動ブラケット20が元姿勢に復帰してパッド23が固定車輪4から離れ、制動が解除される。それに伴い、駆動側ケーブル37のワイヤ39、連結部材45並びに操作側ケーブル36のワイヤ39が逆方向に引き戻される。
【0020】ところで、上記した制動操作の際、図10(A)に模式的に示すように、同図の右側のパッド23の方が左側のパッド23よりも先に固定車輪4に押し付けられてしまう場合があり得る。このような場合は、同図(B)に示すように、連結部材45が同図の反時計回り方向に回動しつつ左側のパッド23も直ちに固定車輪4に押し付けられ、左右のパッド23が揃って対応する固定車輪4に押し付けられた状態で、操作側ケーブル36のワイヤ39の引張操作が継続され、もって両固定車輪4に均等に制動を加えることができる。逆に左側のパッド23が先に押し付けられた場合は、連結部材45が時計回り方向に回動しつつ直ちに右側のパッド23も押し付けられる。
【0021】以上説明したように本実施形態によれば、一対の固定車輪4に制動を加える場合に、操作側ケーブル36を1本にし、駆動側ケーブル37を分岐して制動機構16に連結するようにしたから、ハンドル32と両制動機構16の間を全長にわたって個別のケーブルで連結した場合と比較すると、ケーブルの配索スペースを減少することができる。しかも、操作側ケーブル36に連結部材45を回転可能に連結し、この連結部材45の両端に各駆動側ケーブル37を連結するようにしたから、両パッド23が固定車輪4に押し付けられるタイミングがずれた場合であっても、連結部材45を回動させつつ遅れた方のパッド23を直ちに追随して固定車輪4に押し付けることができ、もって両固定車輪4に均等に制動を加えることができる。なおこのとき、駆動側ケーブル37の固定位置を、操作側ケーブル36の支持位置から極力離しておけば、連結部材45の所定の回動角度に対して駆動側ケーブル37の引張ストロークが大きく取れるから、早期にパッド23を押し付けるに当たって有利となる。
【0022】連結機構41と制動機構16は、ユニット化された状態にあるから、これらを配膳車に対して新規に装備する場合にも簡単である。なお、連結機構41を装備する位置については、図11の実線41A又は鎖線41Bに示すように、車輪3,4が側方に来ない位置に設定すれば、その着脱がさらに容易となる。
【0023】また、連結機構41の収容ブラケット42に筒形固定具48を取り付ける部分において、その取付溝44を開口縁から切り欠き形成した形状としたから、予め両ナット49を螺合した状態で筒形固定具48を取付溝44に対して径方向に差し込むことができ、着脱を簡単かつ迅速に行うことができる。なお、取付溝44Aの形状を、図12に示すように、鈎形に形成して、その奥端まで筒形固定具48を差し込むようにすれば、仮にナット49が緩んだとしても、筒形固定具48が落下することが防止できる。
【0024】パッド23を設けた揺動ブラケット20は、固定車輪4を支持する車輪用ブラケット17に取り付けるようにしたから、格別の取付手段は不要である。また、パッド23は摩耗するために適宜に交換する必要がある。この場合、パッド23の取付位置は、図4に示すように、バンパ2の下方に突出した揺動ブラケット20の下端部に設定されているから、バンパ2の下方から手を入れ、スナップピン27を外して軸26を抜けば取付部材24ごと下方に引き抜くことができ、そののち新たなパッド23を装備した取付部材24を上記と逆の手順により取り付ければ良い。すなわち、パッド23の交換をバンパ2の下方から手を入れて簡単に行うことができる。
【0025】<他の実施形態>本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)制動部材としては、車輪と一体回転されるドラムの内周面に押し付けられるブレーキシューのようなものであってもよい。
(2)本発明は上記実施形態に例示した配膳車に限らず、車輪により移動可能とされた物品収納台車全般に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係る温冷配膳車の外観斜視図
【図2】 配膳車の底面図
【図3】 固定車輪と制動機構の配設部分を示す分解斜視図
【図4】 その一部切欠側面図
【図5】 配膳車の側面図
【図6】 連結機構部分を示す底面図
【図7】 その分解斜視図
【図8】 操作側ケーブルのワイヤを連結部材に支持する構造を示す一部切欠側面図
【図9】 駆動側ケーブルのワイヤを連結部材に固定する構造を示す一部切欠側面図
【図10】 ブレーキの片利きの補正動作を説明する概略平面図
【図11】 連結機構の配設位置の変形例を示す概略底面図
【図12】 ケーブルの取付溝の変形例を示す収容ブラケットの側面図
【符号の説明】
1…配膳車本体 4…固定車輪 16…制動機構 20…揺動ブラケット 23…ブレーキパッド 32…ハンドル 36…操作側ケーブル 37…駆動側ケーブル 38…チューブ 39…ワイヤ 41…連結機構 42…収容ブラケット 44…取付溝 45…連結部材 47…ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 本体の底面に設けられた一対の車輪にそれぞれ制動部材が配され、前記本体の外面に設けられた操作部材によりワイヤを引張して前記各制動部材を対応する車輪に押し付けることで制動を加えるようにした物品収納台車の制動装置において、前記操作部材から引き出された操作側ワイヤの端部が連結部材に支持されるとともに、前記各制動部材から引き出された一対の駆動側ワイヤの端部が、前記連結部材における前記操作側ワイヤの支持部分を挟んだ両側にそれぞれ支持され、前記連結部材は前記操作側ワイヤの支持部分を中心として回動可能となっていることを特徴とする物品収納台車の制動装置。
【請求項2】 前記連結部材が収容可能で、かつ前記操作側ワイヤの端部を摺動可能に挿通する挿通部と、前記各駆動側ワイヤの端部を摺動可能に挿通する挿通部とを前記連結部材を挟んで対向状に設けてなる取付部材を有し、この取付部材が前記本体の底面に着脱可能とされていることを特徴とする請求項1記載の物品収納台車の制動装置。

【図1】
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【図6】
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【図12】
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【図2】
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【図3】
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【図8】
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【図9】
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【図4】
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【図5】
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【図10】
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【図7】
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【図11】
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【公開番号】特開2000−337414(P2000−337414A)
【公開日】平成12年12月5日(2000.12.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−146346
【出願日】平成11年5月26日(1999.5.26)
【出願人】(000194893)ホシザキ電機株式会社 (989)
【Fターム(参考)】